説明

光ピックアップ装置

【課題】 光ディスクに設けられている信号記録層に記録されている信号の読み出し動作を行う光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】 コリメートレンズを光軸方向へ変位させるとき回転駆動されるモーター15と、該モーター15によって回転駆動されるとともに螺旋状の送り溝16Aが周縁に形成されているリードスクリュー16と、前記コリメートレンズが固定されるとともにガイドシャフト14により光軸方向への変位を可能に支持されているレンズホルダー12を備え、前記レンズホルダー12に前記リードスクリュー16に形成されている送り溝16Aに係合する係合突起18、19を一体的に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに記録されている信号の読み出し動作や光ディスクに信号の記録動作をレーザー光によって行う光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップ装置から照射されるレーザー光を光ディスクの信号記録層に照射することによって信号の再生動作や信号の記録動作を行うことが出来る光ディスク装置が普及している。
【0003】
光ディスク装置としては、CDやDVDと呼ばれる光ディスクを使用するものが一般に普及しているが、最近では記録密度を向上させた光ディスク、即ちBlu−ray規格の光ディスクを使用するものが商品化されている。
【0004】
Blu−ray規格の光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行うレーザー光としては、波長が短いレーザー光、例えば波長が405nmの青紫色光が使用されている。また、Blu−ray規格の光ディスクにおける信号記録層とディスク表面との間に設けられている保護層の厚さは、0.1mmであり、この信号記録層から信号の読み出し動作を行うために使用される対物レンズの開口数は、0.85と規定されている。
【0005】
斯かる光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行う光ピックアップ装置について図3を参照にして説明する。
【0006】
図3において、1は例えば波長が405nmの青紫色光であるレーザー光を放射するレーザーダイオード、2は前記レーザーダイオード1から放射されるレーザー光が入射される回折格子であり、レーザー光を0次光であるメインビーム、+1次光及び−1次光である2つのサブビームに分離する回折格子部2aと入射されるレーザー光をS方向の直線偏光光に変換する1/2波長板2bとより構成されている。
【0007】
3は前記回折格子2を透過したレーザー光が入射される偏光ビームスプリッタであり、S偏光光に変換されたレーザー光の多くを反射し、P方向に偏光されたレーザー光を透過させる制御膜3aが設けられている。4は前記レーザーダイオード1から放射されたレーザー光の中の前記偏光ビームスプリッタ3の制御膜3aを透過したレーザー光が照射される位置に設けられているモニター用光検出器であり、その検出出力は前記レーザーダイオード1から放射されるレーザー光の出力を制御するために使用される。
【0008】
5は前記偏光ビームスプリッタ3の制御膜3aにて反射されたレーザー光が入射される位置に設けられている1/4波長板であり、入射されるレーザー光を直線偏光光から円偏光光に、また反対に円偏光光から直線偏光光に変換する作用を成すものである。6は前記1/4波長板5を透過したレーザー光が入射されるとともに入射されるレーザー光を平行光に変換するコリメートレンズであり、収差補正用モーター7によって光軸方向、即ち矢印A及びB方向へ変位せしめられるように構成されている。前記コリメートレンズ6の光軸方向への変位動作によって光ディスクDの信号記録層Lとディスク面との間に設けられている保護層の厚さに基づいて生じる球面収差を補正するように構成されている。
【0009】
8は前記コリメートレンズ6を透過したレーザー光が入射される位置に設けられている立ち上げミラーであり、入射されるレーザー光の出射方向を90度変更し、該レーザー光を光ディスクDの信号記録層Lに集光させるべく設けられている対物レンズ9方向に反射させる作用を成すものである。
【0010】
斯かる構成において、前記レーザーダイオード1から放射されたレーザー光は、回折格子2、偏光ビームスプリッタ3、1/4波長板5、コリメートレンズ6及び立ち上げミラー8を介して対物レンズ9に入射された後、該対物レンズ9の集光動作によって光ディスクDの信号記録層Lにレーザースポットとして照射されるが、該信号記録層Lに照射されたレーザー光は戻り光として対物レンズ9側へ反射されることになる。
【0011】
光ディスクDの信号記録層Lから反射された戻り光は、対物レンズ9、立ち上げミラー8、コリメートレンズ6及び1/4波長板5を通して偏光ビームスプリッタ3の制御膜3aに入射される。このようにして偏光ビームスプリッタ3の制御膜3aに入射される戻り光は、前記1/4波長板5による位相変更動作によってP方向の直線偏光光に変更されている。従って、斯かる戻り光は前記制御膜3aにて反射されることはなく、制御用レーザー光Lcとして該制御膜3aを透過することになる。
【0012】
10は前記偏光ビームスプリッタ3の制御膜3aを透過した制御用レーザー光Lcが入射されるセンサーレンズであり、PDICと呼ばれる光検出器11に設けられている受光部に制御用レーザー光Lcを集光させて照射する作用を成すものである。前記光検出器11には、周知の4分割センサー等が設けられており、メインビームの照射動作によって光ディスクDの信号記録層Lに記録されている信号の読み取り動作に伴う信号生成動作及び非点収差法によるフォーカシング制御動作を行うための信号生成動作、そして2つのサブビームの照射動作によってトラッキング制御動作を行うための信号生成動作を行うように構成されている。斯かる各種の信号生成のための制御動作は、周知であるので、その説明は省略する。
【0013】
前述したように光ピックアップ装置は構成されているが、斯かる構成において、前記対物レンズ9は、光ピックアップ装置の基台に4本または6本の支持ワイヤーによって光ディスクDの信号面に対して垂直方向、即ちフォーカシング方向への変位動作及び光ディスクDの径方向、即ちトラッキング方向への変位動作を可能に支持されているレンズホルダーと呼ばれる部材に搭載されている。
【0014】
以上に説明したように光ピックアップ装置は構成されているが、次に斯かる構成の光ピックアップ装置の信号読み出し動作について説明する。
【0015】
信号記録層Lに記録されている信号の読み出し動作を行うための操作を行うと、レーザーダイオード駆動回路(図示せず)からレーザーダイオード1に対して前もって設定されているレーザー出力を得るための駆動信号が供給され、該レーザーダイオード1から所望の出力のレーザー光が放射されることになる。
【0016】
前記レーザーダイオード1から放射されたレーザー光は回折格子2に入射され、該回折格子2に組み込まれている回折格子部2aによってメインビームとサブビームに分離されるとともに1/2波長板2bによってS方向の直線偏光光に変換される。前記回折格子2を透過したレーザー光は偏光ビームスプリッタ3に入射され、該偏光ビームスプリッタ3に設けられている制御膜3aによって多くのレーザー光が反射されるとともに一部のレーザー光が透過せしめられる。
【0017】
前記制御膜3aを透過したレーザー光はモニター用光検出器4に照射されるので、その照射されるレーザー光のレベルに応じたモニター信号が該モニター用光検出器4より出力されることになる。従って、斯かるモニター信号を利用してレーザーダイオード1に供給される駆動信号のレベルを制御することによってレーザーダイオード1から放射されるレーザー光の出力を所望のレベルになるように制御することが出来る。斯かる動作は、一般にレーザーの自動出力制御動作と呼ばれているものであり、その説明は省略する。
【0018】
前記偏光ビームスプリッタ3に設けられている制御膜3aにて反射されたレーザー光は1/4波長板5に入射されて直線偏光光から円偏光光に変換された後にコリメートレンズ6に入射される。前記コリメートレンズ6に入射されたレーザー光は平行光に変換されて立ち上げミラー8に入射されることになる。
【0019】
前記立ち上げミラー8に入射されたレーザー光は、該立ち上げミラー8によって反射された後対物レンズ9に入射される。このように前記対物レンズ9には前述した光学経路を通してレーザー光が入射されるので、該対物レンズ9による集光動作が行われることになる。前記対物レンズ9による集光動作によって光ディスクDの信号記録層Lにレーザースポットが生成されるが、同時に該信号記録層Lからレーザー光が戻り光として反射されることになる。
【0020】
斯かる信号記録層Lにて反射される戻り光は、対物レンズ9に対して光ディスクD側から入射されることになるが、前記対物レンズ9に入射された戻り光は、立ち上げミラー8、コリメートレンズ6及び1/4波長板5を介して偏光ビームスプリッタ3に設けられている制御膜3aに入射される。前記制御膜3aに入射された戻り光は1/4波長板5によってP方向の直線偏光光に変換されているので、該制御膜3aにて反射されることはなく全てが制御用レーザー光Lcとして該制御膜3aを透過することになる。
【0021】
前記制御膜3aを透過した戻り光である制御用レーザー光Lcは、センサーレンズ10に入射され、該センサーレンズ10によって非点収差を付加されて光検出器11に設けられている受光部に照射される。斯かる制御用レーザー光Lcが光検出器11の受光部に照射される結果、該光検出器11の受光部に組み込まれている4分割センサー等からメインビーム及びサブビームの照射スポットの位置変化や形状変化に基づく検出信号を抽出することが出来る。
【0022】
斯かる検出信号からフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号を生成することによって対物レンズ9のフォーカス方向への変位動作及びトラッキング方向への変位動作を制御し、信号記録層Lに所望の形状のレーザースポットを生成するフォーカシング制御動作や信号記録層Lに設けられている信号トラックに対してレーザースポットを追従させるトラッキング制御動作を行うことが出来る。
【0023】
光ピックアップ装置におけるフォーカシング制御動作及びトラッキング制御動作を行うことによって光ディスクDの信号記録層Lに記録されている信号の読み出し動作を行うことが出来るが、斯かる読み出し動作にて得られる再生信号は、光検出器11から生成されるRF信号を周知のように復調することによって情報データとして得ることが出来る。
【0024】
以上に説明したように光ピックアップ装置は構成されているが、光ディスクDの表面と信号記録層Lとの間に設けられている保護層の厚さの相違によって球面収差が発生するので、コリメートレンズ6を光軸方向へ変位させることによって球面収差を補正するように構成されている。
【0025】
コリメートレンズ6の光軸方向への変位動作は収差補正用モーター7の回転駆動動作によって行われるが、斯かるコリメートレンズ6を変位させるための駆動機構として特許文献1に記載されているようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特開2009−301697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
コリメートレンズを光軸方向へ変位させる駆動機構は、特許文献1に記載されているようにモーターによって回転駆動されるスクリューシャフトの回転力を利用してコリメートレンズが固定されているレンズホルダーを変位させるように構成されているが、スクリューシャフトの回転力をレンズホルダーに伝達する手段としてナットと呼ばれる部材が使用されている。
【0028】
ナットを使用する駆動機構は、部品点数の増加に伴って構造が複雑になるので、組立工数の増加を招き、そのため製造コストが高くなるだけでなく、駆動機構を小型化することが困難になるため光ピックアップ装置の小型化に対して大きな問題になっている。
【0029】
本発明は、斯かる問題を解決することが出来る光ピックアップ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、球面収差を補正するためにコリメートレンズを光軸方向へ変位させるとき回転駆動されるモーターと、該モーターによって回転駆動されるとともに螺旋状の送り溝が周縁に形成されているリードスクリューと、前記コリメートレンズが固定されるとともにガイドシャフトにより光軸方向への変位を可能に支持されているレンズホルダーを備え、該レンズホルダーに前記リードスクリューに形成されている送り溝に係合する係合突起を一体的に形成したことを特徴とするものである。
【0031】
また、本発明は、レンズホルダーに設けられる係合突起を一対形成したことを特徴とするものである。
【0032】
そして、本発明は、一対の係合突起をレンズホルダーの変位方向に配列したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0033】
本発明の光ピックアップ装置は、コリメートレンズが固定されるレンズホルダーにリードスクリューの周縁に形成されている螺旋状の送り溝に係合する係合突起を一体的に形成したので、ナット等の別個の部材を設ける必要がない。従って、コリメートレンズの駆動機構が簡潔になるので、組立工数を少なくすることが出来、その結果光ピックアップ装置の製造コストを低くすることが出来る。
【0034】
また、本発明は、リードスクリューに設けられている送り溝に係合する係合突起を一対設けたので、ガタツキを抑えることが出来るという利点を有している。
【0035】
そして、本発明は、一対の係合突起をレンズホルダーの変位方向に配列したので、リードスクリューの回転変位力をレンズホルダーに対して円滑に伝達することが出来るという利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る光ピックアップ装置の一部断面斜視図である。
【図2】本発明に係る光ピックアップ装置の要部断面図である。
【図3】本発明に係る光ピックアップ装置の光学構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
レーザーダイオードから放射されるレーザー光を対物レンズの集光動作にて生成されるレーザースポットによって光ディスクの信号記録層に記録されている信号の読み出し動作を行うとともにコリメートレンズの光軸方向への変位動作によって球面収差を補正するように構成された光ピックアップ装置に関し、コリメートレンズの変位動作を行う駆動機構の構成を簡潔にするものである。
【実施例1】
【0038】
図1は本発明の光ピックアップ装置に組み込まれるコリメートレンズの駆動機構を示す一部断面斜視図である。同図において、12はコリメートレンズが固定されるレンズホルダーであり、コリメートレンズが取付固定される取付孔13が形成されているとともにガイドシャフト14によって光軸方向、即ち矢印A及びB方向への変位を可能に支持されている。
【0039】
15はコリメートレンズの変位動作時回転駆動されるモーター、16は前記モーター15によって回転駆動されるリードスクリューであり、その周縁には螺旋状の送り溝16Aが形成されている。17は前記モーター15を支持する支持基板であり、前記リードスクリュー16の一端を回転可能に支持する作用を有している。
【0040】
18及び19は前記レンズホルダー12に一体的に形成されている第1係合突起及び第2係合突起であり、図1及び図2に示すように前記リードスクリュー16に形成されている送り溝16Aに係合するように構成されている。また、20及び21は前記第1係合突起18及び第2係合突起19の対向部に該第1係合突起18及び第2係合突起19と同様に前記レンズホルダー12に一体的に形成されている第1支持部及び第2支持部であり、図2に示すように前記リードスクリュー16の下方に軽く接触するように設けられている。即ち、斯かる構成によれば、リードスクリュー16を前記第1係合突起18及び第2係合突起19と第1支持部20及び第2支持部21とによって挟むように接触するように構成されている。
【0041】
斯かる構成によればリードスクリュー16がモーター15によって回転駆動されると、該リードスクリュー16の周縁に形成されている送り溝16Aに係合されている第1係合突起18及び第2係合突起19に対して矢印Aまたは矢印B方向への変位力が作用することになる。その結果、前記第1係合突起18及び第2係合突起19が一体的に形成されているレンズホルダー12に対して矢印Aまたは矢印B方向への変位力が作用することになるので、該レンズホルダー12はガイドシャフト14にて案内されながら矢印Aまたは矢印B方向、即ち光軸方向へ変位せしめられる。
【0042】
このようにしてモーター15の回転駆動動作によってレンズホルダー12が光軸方向に変位せしめられるので、該レンズホルダー12に取り付けられているコリメートレンズを光軸方向へ変位させることが出来る。従って、光ディスクの保護層の厚みの変化に伴って発生する球面収差を前記コリメートレンズの変位動作によって補正することが出来る。
【0043】
リードスクリュー16を回転駆動させるモーター15として、回転角度を精度良く制御することが出来るステッピングモーターを使用すればコリメートレンズの変位位置を正確に調整することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、Blu−ray規格の光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行う光ピックアップ装置のように精度が要求される光ピックアップ装置に実施した場合に非常に大きな効果を奏する。
【符号の説明】
【0045】
1 レーザーダイオード
3 偏光ビームスプリッタ
6 コリメートレンズ
7 収差補正用モーター
9 対物レンズ
12 レンズホルダー
14 ガイドシャフト
15 モーター
16 リードスクリュー
16A 送り溝
18 第1係合突起
19 第2係合突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーダイオードから放射されるレーザー光を対物レンズの集光動作にて生成されるレーザースポットによって光ディスクの信号記録層に記録されている信号の読み出し動作を行うように構成されているとともにコリメートレンズを光軸方向へ変位させることによって球面収差を補正するように構成された光ピックアップ装置であり、コリメートレンズを光軸方向へ変位させるとき回転駆動されるモーターと、該モーターによって回転駆動されるとともに螺旋状の送り溝が周縁に形成されているリードスクリューと、前記コリメートレンズが固定されるとともにガイドシャフトにより光軸方向への変位を可能に支持されているレンズホルダーに前記リードスクリューに形成されている送り溝に係合する係合突起を一体的に形成したことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
係合突起を一対形成したことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
一対の係合突起をレンズホルダーの変位方向に配列したことを特徴とする請求項2に記載の光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−33562(P2013−33562A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167913(P2011−167913)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(504464070)三洋オプテックデザイン株式会社 (315)
【Fターム(参考)】