説明

光ファイバの製造方法

【課題】光ファイバの外径制御の応答性を高めるとともに、外径が均一な光ファイバを製造すること。
【解決手段】加熱装置12と冷却装置14との間に設置された第1の外径測定部13が、線引きされた光ファイバ23の第1の外径を測定し、冷却装置14の下流側に設置された第2の外径測定部15が、光ファイバ23の第2の外径を測定し、制御部21が、第2の外径が所定の値となるよう第1の外径の目標値を設定し、さらに第1の外径が第1の外径の目標値と一致するよう線引き速度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ母材を加熱装置で溶融させて光ファイバ(ガラス)を線引きし、線引きされた光ファイバ(ガラス)を冷却装置で冷却してから被覆装置で被覆することにより光ファイバを製造する光ファイバの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの製造には、加熱装置で光ファイバ母材を加熱して溶融状態にして、光ファイバを線引きする方法が一般に用いられている。線引された直後の軟化状態にある光ファイバ(ガラス)は、冷却装置により強制的に冷却され、その後樹脂などにより被覆されて、光ファイバが製造される。ここで、線引き速度は、線引きされた光ファイバ(ガラス)の外径を所定の値に保つように制御される。なお以下では、断らない限り、光ファイバはガラス状態のものを指すものとする。
【0003】
例えば、特許文献1には、加熱炉により加熱溶融され、線引きされた光ファイバの外径を測定する第1の外径測定器が冷却装置の前に設置されるとともに、第1の外径測定器と同等の仕様の第2の外径測定器が冷却装置の後に設置されていて、引取装置の引き取り速度が所定の速度より遅いときには第1の外径測定器の測定値で引き取り速度を制御し、引取装置の引き取り速度が所定の速度より速いときには第2の外径測定器の測定値で引き取り速度を制御することにより、安定して外径制御を行う技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、光ファイバの線引き速度上昇時に、±4mm以上の範囲の視野を有する測定視野の広い外径測定器で光ファイバの外径を測定し、定常の線引き速度とした時には、上記外径測定器よりも測定視野の狭い別の外径測定器に切り替えて光ファイバの外径を測定することにより、高速で線引きする場合に外径制御を容易にする技術が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、光ファイバの線引き経路の途中に、線引きした光ファイバの外径を測定する外径測定器を線引き方向に所定間隔をあけて少なくとも2個配置し、所定の時間差をもって各外径測定器の信号を取り出して比較することにより、光ファイバの径異常の誤検出を減らす技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献4には、加熱部を出た直後の光ファイバの外径と、徐冷後の光ファイバの外径とを外径測定器で測定し、加熱部を出た直後の光ファイバの外径が、製品外径より大きくなるように、光ファイバ母材の送り速度と線引き速度を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−319129号公報
【特許文献2】特許第3301136号公報
【特許文献3】特開2005−119894号公報
【特許文献4】特許第4252891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の技術では、引取装置の引き取り速度が所定の速度より速いとき(高速走行時)に、加熱炉から遠い位置にある冷却装置の後に設置された第2の外径測定器の測定値で引取装置の引き取り速度が制御されるので、加熱炉と第2の外径測定器との間の距離が離れていることにより外径の制御に遅れが生じ、製造された光ファイバの外径がばらつく結果となる。
【0009】
また、特許文献2、3には、線引炉の近くで光ファイバの外径を測定することが示されているが、速い速度で線引きがなされる場合、線引炉の近くで測定される光ファイバの外径は、最終的に得られる光ファイバの外径よりも大きくなってしまう場合が多い。そのため、最終的に得られる光ファイバの外径が所定の値となるよう制御する場合に、線引炉の近くにおける光ファイバの外径の目標値をどのような値に設定すべきかの判定が難しくなる。
【0010】
また、特許文献4の技術では、加熱部を出た直後の光ファイバの外径と、徐冷後の光ファイバの外径とが一定となるよう制御しているが、徐冷炉を含む装置構成であるため、この制御を一般的な線引装置の構成に適用できるかどうかは不明である。また、特許文献4のように、加熱部を出た直後の光ファイバの外径と最終径とのオフセット量を予想し、加熱部を出た直後の位置でのファイバ径を一律に太めにしても、測定部での径と最終径との関係は線引き条件によりロット内・ロット間で変化するため、最終的に得られるファイバ径がばらつくことになる。
【0011】
本発明は、上述した実状に鑑みてなされたもので、光ファイバの外径制御の応答性を高めるとともに、外径が均一な光ファイバを製造することができる光ファイバの製造方法および光ファイバ製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による光ファイバの製造方法は、光ファイバ母材を加熱装置で溶融させて光ファイバを線引きし、線引きされた光ファイバを冷却装置で冷却してから被覆装置で被覆する光ファイバの製造方法で、加熱装置と冷却装置との間に設置された第1の外径測定部により、光ファイバの第1の外径を測定し、冷却装置の下流側に設置された第2の外径測定部により、光ファイバの第2の外径を測定し、第2の外径が所定の値となるよう第1の外径の目標値を設定し、第1の外径が第1の外径の目標値と一致するよう線引き速度を制御する。
【0013】
また、本発明による光ファイバの製造方法では、線引き速度が1400m/分以上とする。また、加熱装置と第1の外径測定部との間の距離を、線引き速度の制御に係るむだ時間Lと時定数Tとの比L/Tが2以下となるような設定とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、加熱装置と冷却装置との間の線引きされた直後の光ファイバの第1の外径が測定され、この外径が目標値と一致するよう線引き速度が制御される。これにより、光ファイバの外径制御の応答性を高めることができる。さらに、冷却装置の下流側において冷却後の光ファイバの第2の外径が測定され、この外径が所定の値となるように第1の外径の目標値が設定される。これにより、外径が均一な光ファイバを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る光ファイバ製造装置の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る光ファイバの外径制御の一例を示すブロック線図である。
【図3】第1の外径測定器の設置位置の決定方法について説明する図である。
【図4】実施例および比較例の一覧を示す図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る光ファイバ製造装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明による光ファイバの製造方法および光ファイバ製造装置について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る光ファイバ製造装置10の一例を示す図である。
図1に示すように、この光ファイバ製造装置10は、線引き炉11、加熱装置(ヒータ)12、第1の外径測定部13、冷却装置14、第2の外径測定部15、被覆装置(樹脂塗布ダイス)16、硬化炉17、ガイドローラ18、キャプスタン19、巻取りドラム20、および、制御部21を備える。
【0017】
線引き炉11には、光ファイバ母材22がセットされる。光ファイバ母材22は、その中心部にコア部を、コア部の周りにクラッド部を有する。光ファイバ母材22が加熱装置12により加熱されると、光ファイバ母材22は、その下端部が順に溶融して垂下し、光ファイバ23が線引きされる。
【0018】
この線引き工程において、垂下した光ファイバ23は冷却装置14により冷却され、続いて、被覆装置16により樹脂(保護被覆)が塗布され、次いで、光ファイバ23は硬化炉17に送られて、塗布された樹脂が固化される。保護被覆が施された光ファイバ23は、ガイドローラ18等を経由してキャプスタン19により引き取られ、さらに巻取りドラム20により巻き取られる。
【0019】
また、加熱装置12と冷却装置14との間には第1の外径測定部13が設置され、冷却装置14と被覆装置16との間には第2の外径測定部15が設置される。第2の外径測定部15が設置される位置は、光ファイバ23の外径が変化しなくなる位置とするのが望ましい。すなわち、第2の外径測定部15は、測定する光ファイバ23の外径が、最終的に製造したい光ファイバ23の外径と同じとなるような位置に設置されるものとする。
【0020】
第1の外径測定部13と第2の外径測定部15には、一般的な外径測定装置が用いられ、例えば、光ファイバ23の側面の投光画像をモニタして画像処理をすることにより、光ファイバ23の第1の外径および第2の外径をそれぞれの位置において測定する。
【0021】
制御部21は、第2の外径測定器15により測定される第2の外径の目標値を、最終的に製造したい光ファイバ23の外径に設定する。この設定値は予め光ファイバ製造装置10の操作者により入力される。続いて、制御部21は、第2の外径の目標値と、実際に測定された第2の外径との偏差を算出し、算出した偏差を用いて、第1の外径測定器13により測定される第1の外径の目標値を設定する。
【0022】
その後、制御部21は、第1の外径の目標値と、実際に測定された第1の外径との偏差を算出し、その偏差を用いてキャプスタン19の光ファイバ23の線引き速度(引き取り速度)を制御する。この線引き速度は非常に速く、本実施例に係る光ファイバの製造方法は、延伸による光ファイバの製造方法とは区別される。
【0023】
このように、第2の外径測定器15により測定される光ファイバ23の第2の外径を、加熱装置12の近くに設置された第1の外径測定器13の測定結果を用いて制御することができるので、光ファイバ23の外径制御の応答性が高まり、外径が均一な光ファイバ23を製造することができる。
【0024】
特に、線引き速度が1400m/分以上となる高速線引きにおいては、光ファイバ母材溶融部のネックダウンが、より引き伸ばされることになるため、第1の外径測定器13の位置で測定される第1の外径が、第2の外径測定器15の位置で測定される第2の外径よりも大きくなる場合が多く、第1の外径と最終的に製造したい光ファイバ23の外径とは異なることになる場合が多い。しかし、このような場合でも上記制御を行うことにより、外径が均一な光ファイバ23を製造できる。
【0025】
図2は、本発明の実施形態に係る光ファイバ23の外径制御の一例を示すブロック線図である。この外径制御は、制御部21により行われる。この外径制御では、まず、比較部30が、第2の外径測定器15により測定される第2の外径の目標値(最終的に製造したい光ファイバ23の外径)と、第2の外径測定器15により実際に測定された第2の外径との間の第2の外径の偏差を算出する。
【0026】
そして、コントローラ31は、第2の外径の偏差に基づいて第1の外径の目標値を設定し、比較部30により算出される第2の外径の偏差が小さくなるようにする。続いて、比較部32が、第1の外径の目標値と、第1の外径測定器13により実際に測定された第1の外径との間の第1の外径の偏差を算出する。
【0027】
その後、コントローラ33は、第1の外径の偏差に基づいてキャプスタン19の線引き速度を設定し、比較部32により算出される第1の外径の偏差が小さくなるようにする。
【0028】
ここで、第2の外径測定器15により測定される第2の外径の目標値と、第2の外径測定器15により実際に測定される第2の外径との偏差(第2の外径の偏差)から、第1の外径測定器13により測定される第1の外径の目標値を設定する制御(コントローラ31による制御)には、P制御(Proportional Control,比例制御)、I制御(Integral Control,積分制御)、PI制御(Proportional-Integral Control,比例積分制御)を用いることが好ましい。しかし、制御方法はこれらに限定されるものではない。
【0029】
また、第1の外径の目標値と、第1の外径測定器13により実際に測定される第1の外径との間の偏差(第1の外径の偏差)から、キャプスタン19の線引き速度を設定する制御(コントローラ33による制御)には、P制御、I制御、D制御(Derivative Control,微分制御)、PI制御、PID制御(Proportional-Integral-Derivative Control,比例積分微分制御)、D制御を変形した不完全微分制御、あるいは、これらを適宜組み合わせた各種制御が適用される。しかし、制御方法はこれらに限定されるものではない。
【0030】
なお、第1の外径測定器13を設置する位置は、例えば、以下のようにして決定する。図3は、第1の外径測定器13の設置位置の決定方法について説明する図である。外径制御を切った後、図3に示すように、線引き速度40をステップ状に変化させた場合、第1の外径測定器13により測定される光ファイバ23の外径変化41は次第に増大し、一定値42(ΔD)に近づくこととなる。
【0031】
ここで、光ファイバ23の外径変化41の変曲点44において外径変化41の接線を引き、その接線が時間軸と交わる時刻をt1、その接線が一定値42と交わる時刻をt2とすると、むだ時間Lはt1で表され、時定数Tはt2−t1で表される。この場合、第1の外径測定器13の設置位置が線引き炉11に近づくほど、むだ時間Lは短くなる。ここでは、L/Tが2以下になるよう、第1の外径測定器13を線引き炉11にできるだけ近づけて設置する。なお、L/T=2となる第1の外径測定器13の位置は、線速1400m/分で線引きする際には、加熱装置12の中心から4m弱の位置に相当し、2mのときは、L/Tはほぼ1になる。したがって、線速1400m/分で線引きする際には、加熱装置12の中心から第1の外径測定器13の中心までの距離を4m以内に、より好ましくは2m以内にすることにより、光ファイバ23の外径制御の応答性を高めることができる。
【0032】
また、L/Tの値は、近似式の最適フィッティングにより求めることとしてもよい。具体的には、図3の時間tに対する外径変化ΔDの変化実測曲線41に対して、下記の近似式を、例えば最小2乗法等を用いてフィッティングする。その結果得られた近似式のLとTから、L/Tが求められる。
【数1】

【0033】
また、ここで求められたΔD、L、Tの値に基づき、P制御、PI制御、PID制御のパラメータを最適化することも可能である。
【0034】
次に、図1の光ファイバ製造装置10を用いて光ファイバ23を製造した実施例および実施例との比較に用いる比較例について説明する。なお、図4に、実施例および比較例の一覧を示す。
【0035】
(実施例1)
図4に示すように、実施例1では、光ファイバ製造装置10において、加熱装置12の中心から第1の外径測定器13の中心までの距離D1を2m、加熱装置12の中心から第2の外径測定器15の中心までの距離D2を8m、線引き速度の設定値を1400m/分、第2の外径測定器15により測定される第2の外径の目標値を125μmとした。
【0036】
また、第2の外径の目標値と、第2の外径測定器15により実際に測定される第2の外径との偏差(第2の外径の偏差)から、第1の外径測定器13により測定される第1の外径の目標値を設定する制御にはPI制御を用い、第1の外径の目標値と、第1の外径測定器13により実際に測定される第1の外径との間の偏差(第1の外径の偏差)から、キャプスタン19の線引き速度を設定する制御には同じくPI制御を用いた。なお、L/Tの値は、ほぼ1である。この場合において、第1の外径の目標値は約140μm程度となり、製造された光ファイバ23の外径は125.00±0.13μmとなった。
【0037】
(実施例2)
図4に示すように、実施例2では、光ファイバ製造装置10において、線引き速度の設定値を1700m/分とし、その他の条件は、上記実施例1と同様に、加熱装置12の中心から第1の外径測定器13の中心までの距離D1を2m、加熱装置12の中心から第2の外径測定器15の中心までの距離D2を8m、第2の外径測定器15により測定される第2の外径の目標値を125μmとした。
【0038】
また、上記実施例1と同様に、第2の外径の目標値と、第2の外径測定器15により実際に測定される第2の外径との偏差(第2の外径の偏差)から、第1の外径測定器13により測定される第1の外径の目標値を設定する制御にはPI制御を用い、第1の外径の目標値と、第1の外径測定器13により実際に測定される第1の外径との間の偏差(第1の外径の偏差)から、キャプスタン19の線引き速度を設定する制御には同じくPI制御を用いた。実施例1と実施例2とを比較すると、実施例2では、線引き速度の設定値が実施例1よりも大きいため、L/Tの値は大きくなり、ほぼ1.3となる。この場合において、第1の外径の目標値は約150μm程度となり、製造された光ファイバ23の外径は125.00±0.22μmとなった。線引き速度が速くなったことにより、外径の変動は実施例1の場合よりも増加したものの、依然として良好といえる範囲である。
【0039】
(比較例1)
一方、図4の比較例1に示すように、実施例1と同じ線引き速度(1400m/分)、同じ第1の外径測定器13の位置(加熱装置12の中心から第1の外径測定器13の中心までの距離D1が2m)で、第2の外径測定器15を用いず、第1の外径測定器13による測定結果のみを用いて光ファイバ23の外径(第1の外径測定器13により測定される第1の外径の目標値)が125μmとなるよう線引き速度を制御した場合、製造された光ファイバ23の外径は115.20±0.52μmとなった。この比較例1では、第1の外径の目標値と、第1の外径測定器13により実際に測定される第1の外径との間の偏差(第1の外径の偏差)から、キャプスタン19の線引き速度を設定する制御にはPI制御を用いた。なお、L/Tの値は、実施例1と同じくほぼ1である。
【0040】
このように、第2の外径測定器15を用いない場合、第2の外径測定器15を用いる場合に比べて光ファイバ23の平均外径がずれ、外径の変動も大きくなった。これにより、図1に示す光ファイバ製造装置10による制御の優位性が明らかになった。
【0041】
(比較例2)
図4に示すように、比較例2では、実施例1、比較例1の線速(1400m/分)より線速が遅い場合に、第1の外径測定器13のみで制御した例を示す。
第2の外径測定器15を用いず、第1の外径測定器13による測定結果のみを用いて光ファイバ23の外径が125μmとなるよう線引き速度を制御した結果、製造された光ファイバ23の外径が125.00±0.29μmとなった。この比較例2では、加熱装置12の中心から第1の外径測定器13の中心までの距離D1を4m、線引き速度の設定値を1000m/分とし、上記比較例1と同様に、第1の外径測定器13により測定される第1の外径の目標値を125μmとした。また、上記比較例1と同様に、第1の外径の目標値と、第1の外径測定器13により実際に測定される第1の外径との間の偏差(第1の外径の偏差)から、キャプスタン19の線引き速度を設定する制御にはPI制御を用いた。なお、L/Tの値は、ほぼ1.5である。
【0042】
比較例2では、線引き速度が遅いため、光ファイバ23の平均外径および外径の変動は良好ではあるが、実施例1および2と比較すると、線引き速度が遅いにもかかわらず、外径の変動が大きくなっている。このように、比較例2による制御結果も、図1に示す光ファイバ製造装置10による制御の優位性を明らかにしている。但し、線引き速度が1000m/分と低いので、平均外径、外径変動は良好レベルの範囲内にはある。
【0043】
(比較例3)
図4に示すように、比較例3は、比較例2と同じ条件で、線速のみを速くして制御した例である。線速は、実施例1、比較例1と同じ線速(1400m/分)である。
この場合、製造された光ファイバ23の外径が125.10±0.57μmとなった。この比較例3では、線引き速度の設定値を1400m/分とし、その他の条件は、上記比較例2と同様に、加熱装置12の中心から第1の外径測定器13の中心までの距離D1を4m、第1の外径測定器13により測定される第1の外径の目標値を125μmとした。また、上記比較例2と同様に、第1の外径の目標値と、第1の外径測定器13により実際に測定される第1の外径との間の偏差(第1の外径の偏差)から、キャプスタン19の線引き速度を設定する制御にはPI制御を用いた。なお、L/Tの値は、ほぼ2.1である。
【0044】
比較例3では、線引き速度を比較例2に比べて速くしたことにより、光ファイバ23の平均外径が若干ずれ、外径の変動が大きくなっている。線速が同じ実施例1と比較すると、さらにその差は大きい。このように、比較例3による制御結果も、図1に示す光ファイバ製造装置10による制御の優位性を明らかにしている。
【0045】
(比較例4)
図4に示すように、比較例4は、比較例3と同じ条件で、第1の外径測定器13の位置のみ遠ざけて制御した例である。線速は、実施例1、比較例1,3と同じ線速(1400m/分)である。
この場合、製造された光ファイバ23の外径は125.00±1.25μmとなった。この比較例4では、加熱装置12の中心から第1の外径測定器13の中心までの距離D1を8mとし、その他の条件は、上記比較例3と同様に、線引き速度の設定値を1400m/分、第1の外径測定器13により測定される第1の外径の目標値を125μmとした。また、上記比較例3と同様に、第1の外径の目標値と、第1の外径測定器13により実際に測定される第1の外径との間の偏差(第1の外径の偏差)から、キャプスタン19の線引き速度を設定する制御にはPI制御を用いた。なお、L/Tの値は、ほぼ3.1である。
【0046】
比較例4では、第1の外径測定器13の位置を遠ざけたため、比較例1,3のように、光ファイバ23の平均外径がずれることは無かったが、外径の変動が非常に大きくなっている。線速が同じ実施例1と比較すると、さらにその差は大きい。このように、比較例4による制御結果も、図1に示す光ファイバ製造装置10による制御の優位性を明らかにしている。
【0047】
図5は、本発明の他の実施形態に係る光ファイバ製造装置10’の一例を示す図である。図5に示す光ファイバ製造装置10’は、図1に示す光ファイバ製造装置10における第1の外径測定部13の配置位置を、線引き炉11における光ファイバ23の出口部分に変更したものである。
【0048】
ここで、第1の外径測定部13を配置する線引き炉11の出口部分には、光ファイバ23を監視できるガラス窓を設け、このガラス窓から光ファイバ23の側面の投光画像をモニタして画像処理をすることにより、光ファイバ23の外径を測定する。光ファイバ23が高温状態にあり、輻射光を放出している場合には、第1の外径測定部13は光ファイバ23の撮像に必要な波長の光以外をカットする光学フィルタを用いることとしてもよい。これにより、第1の外径測定部13は、外径を安定して測定することができる。
【0049】
次に、図5の光ファイバ製造装置10’を用いて光ファイバ23を製造した結果の一例について説明する。
【0050】
(実施例3)
図4に示すように、実施例3では、光ファイバ製造装置10’において、加熱装置12の中心から第1の外径測定器13の中心までの距離D1を1mとし、その他の条件は、上記実施例2と同様、加熱装置12の中心から第2の外径測定器15の中心までの距離D2を8m、線引き速度の設定値を1700m/分、第2の外径測定器15により測定される第2の外径の目標値を125μmとした。
【0051】
また、上記実施例2と同様に、第2の外径の目標値と、第2の外径測定器15により実際に測定される第2の外径との偏差(第2の外径の偏差)から、第1の外径測定器13により測定される第1の外径の目標値を設定する制御にはPI制御を用い、第1の外径の目標値と、第1の外径測定器13により実際に測定される第1の外径との間の偏差(第1の外径の偏差)から、キャプスタン19の線引き速度を設定する制御にもPI制御を用いた。なお、L/Tの値は、ほぼ0.8である。この場合において、第1の外径の目標値は約180μm程度となり、製造された光ファイバ23の外径は125.00±0.10μmとなった。このように、実施例2より第1の外径測定器の位置をさらに加熱装置12の中心に近づけることにより、さらに外径変動を小さく抑えることができた。
【符号の説明】
【0052】
10,10’…光ファイバ製造装置、11,11’…線引き炉、12…加熱装置、13…第1の外径測定部、14…冷却装置、15…第2の外径測定部、16…被覆装置、17…硬化炉、18…ガイドローラ、19…キャプスタン、20…巻取りドラム、21…制御部、22…光ファイバ母材、23…光ファイバ、30,32…比較部、31,33…コントローラ、34,35…制御対象伝達関数。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ母材を加熱装置で溶融させて光ファイバを線引きし、線引きされた前記光ファイバを冷却装置で冷却してから被覆装置で被覆する光ファイバの製造方法であって、
前記加熱装置と前記冷却装置との間に設置された第1の外径測定部により、前記光ファイバの第1の外径を測定し、前記冷却装置の下流側に設置された第2の外径測定部により、前記光ファイバの第2の外径を測定し、該第2の外径が所定の値となるよう前記第1の外径の目標値を設定し、前記第1の外径が前記第1の外径の目標値と一致するよう線引き速度を制御することを特徴とする光ファイバの製造方法。
【請求項2】
前記線引き速度が1400m/分以上であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバの製造方法。
【請求項3】
前記加熱装置と前記第1の外径測定部との間の距離を、前記線引き速度の制御に係るむだ時間Lと時定数Tとの比L/Tが2以下となるように設定することを特徴とする請求項2に記載の光ファイバの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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