説明

光ファイバの製造方法

【課題】カットオフ波長の変動を良好に抑制して高品質な光ファイバを製造することが可能な光ファイバの製造方法を提供する。
【解決手段】予め測定した光ファイバ母材2の長手方向の屈折率分布に基づいてカットオフ波長の長手方向変動を予測するカットオフ波長予測処理と、線引張力とカットオフ波長との関係及び線引張力と被覆後張力との関係に基づいて、線引き後のガラスファイバ3のカットオフ波長が長手方向に一定となるような目標被覆後張力を決定する目標被覆後張力決定処理と、被覆後張力が目標被覆後張力となるように、線引炉12の炉温を制御する炉温制御処理とを含み、目標被覆後張力決定処理の際に、光ファイバ4の引き取り抵抗の変動に基づいて目標被覆後張力を補正する目標被覆後張力補正処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ母材を線引きして光ファイバを製造する光ファイバの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを製造する際、光ファイバの特性の一つであるカットオフ波長が光ファイバの長手方向において略均一になることが求められている。
光ファイバの製造方法として、光ファイバ母材の径方向の屈折率分布の長手方向変動を予め測定しておき、線引きの際に、ガラスファイバに生じている線引張力を測定しながら、線引張力の測定結果と光ファイバ母材の屈折率分布の長手方向変動の測定結果とに基づいて、ガラスファイバの径方向の屈折率分布の長手方向変動を抑制しつつガラスファイバのカットオフ波長が所定の値になるようにガラスファイバの線引張力を制御することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、光ファイバ母材の長手方向に複数箇所で、予め線引き後の光ファイバのカットオフ波長推定値を求めておき、線引き後の光ファイバのカットオフ波長が長手方向に所定の値になるように、線引き時にカットオフ波長推定値の変動に応じて長手方向に順次線引き張力を制御して線引きを行うことも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−314118号公報
【特許文献2】特開平8−217481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来では、光ファイバ母材の長手方向の屈折率分布を測定し、屈折率分布よりカットオフ波長の長手方向変動を推定し、予め測定されている線引張力とカットオフ波長との相関関係、及び線引張力と被覆後張力との相関関係から適切な線引張力と被覆後張力を決定し、ガラスファイバのカットオフ波長が所定の一定値になるように制御している。
【0006】
線引きしたガラスファイバに樹脂を被覆して光ファイバを製造する場合、外乱等により被覆径に変動が生じることがある。すると、光ファイバの外周面の面積も変動するため、被覆後張力が同じでも、ガラスファイバの線引張力が変動してしまう。また、実際に線引きされたガラスファイバからカットオフ波長を測定し、被覆後張力にフィードバックすると、カットオフ波長のデータが得られるまでの間に、ガイドローラや張力測定ローラなどの各種ローラが劣化することによってローラ抵抗が変動することがある。すると、被覆後張力と線引張力との関係にずれが生じることがあるが、このずれに基づいて被覆後張力をすぐに修正することは困難であった。
【0007】
そして、上記のような被覆径の変動や各種ローラにおけるローラ抵抗の変動などの引き取り抵抗の変動によって被覆後張力が変動するため、これを一定になるように制御すると、線引張力が変動することになり、その結果カットオフ波長も変動し、品質低下を招いてしまうおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、カットオフ波長の変動を良好に抑制して高品質な光ファイバを製造することが可能な光ファイバの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決することのできる本発明の光ファイバの製造方法は、線引炉で加熱され溶融された光ファイバ母材からガラスファイバを線引きし、前記ガラスファイバの周囲に樹脂を被覆して光ファイバを製造する光ファイバの製造方法であって、
予め測定した前記光ファイバ母材の長手方向の屈折率分布の変動に基づいてカットオフ波長の長手方向変動を予測するカットオフ波長予測処理と、
前記ガラスファイバの張力である線引張力と前記カットオフ波長との関係及び前記線引張力と前記光ファイバの張力である被覆後張力との関係に基づいて、線引き後の前記ガラスファイバのカットオフ波長が長手方向に一定となるような目標被覆後張力を決定する目標被覆後張力決定処理と、
前記被覆後張力が前記目標被覆後張力となるように、前記線引炉の炉温を制御する炉温制御処理とを含み、
前記目標被覆後張力決定処理の際に、前記光ファイバの引き取り抵抗の変動に基づいて前記目標被覆後張力を補正する目標被覆後張力補正処理を行うことを特徴とする。
【0010】
本発明の光ファイバの製造方法において、
前記目標被覆後張力を補正した補正目標被覆後張力P(g)を、
P=P0+A×(D−D0)
(但し、P0:補正前目標被覆後張力(g)、A:定数(g/μm)、D:光ファイバの被覆径(μm)、D0:基準被覆径(μm))
からなる補正式から導き出すことが好ましい。
【0011】
本発明の光ファイバの製造方法において、
前記光ファイバを最初にガイドする直下ローラの上流側の上流側張力F1及び前記直下ローラの下流側で前記被覆後張力を測定する張力測定ローラの下流側の下流側張力F2を測定し、
前記目標被覆後張力を補正した補正目標被覆後張力T(g)を、
T=T0+Δ(F2−F1)
(但し、T0:補正前目標被覆後張力(g)、Δ(F2−F1):F2とF1の差分値の前回測定時からの変動(g))
からなる補正式から導き出すことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光ファイバの被覆径の変動や光ファイバを下流側へ導く各種のローラのローラ抵抗の変動等によって変動する光ファイバの引き取り抵抗の変動に基づいて目標被覆後張力をきめ細かく補正することができる。これにより、カットオフ波長の変動を良好に抑制して高品質な光ファイバを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る光ファイバの製造方法を実施する装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】光ファイバの被覆後張力とガラスファイバのカットオフ波長との相関関係を示すグラフである。
【図3】光ファイバの被覆径と被覆後張力との相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る光ファイバの製造方法の実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
まず、本発明の光ファイバの製造方法によって光ファイバを製造する製造装置の例について説明する。
図1に示すように、製造装置1は、光ファイバ母材2を線引きしてガラスファイバ3を形成するとともに、そのガラスファイバ3の外周に樹脂を被覆して光ファイバ4を製造する装置である。
【0015】
製造装置1は、母材送り装置11、線引炉12、樹脂塗布装置13、紫外線照射装置15,16、直下ローラ17、キャプスタン18、ガイドローラ26,27、ダンサローラ19及び巻取りドラム20を有する。
母材送り装置11は、光ファイバ母材2を保持し、光ファイバ母材2を線引炉12内に配置する。線引炉12は、光ファイバ母材2の一端部を加熱して溶融させるための装置である。光ファイバ母材2の溶融した一端側を下方に線引きすることで、ガラスファイバ3が形成される。
【0016】
樹脂塗布装置13及び紫外線照射装置15,16は、ガラスファイバ3の線引方向において線引炉12の下流に配置されている。樹脂塗布装置13は、ガラスファイバ3の外周に紫外線硬化型の樹脂を塗布する。紫外線照射装置15,16は、樹脂塗布装置13によって塗布された樹脂に紫外線を照射して硬化させて第1,第2の被覆層を形成し、光ファイバ4を形成する。なお、ここでは、2層の被覆層となる樹脂を一つの樹脂塗布装置で塗布するデュアル方式を例に説明したが、一層ずつ各々の樹脂塗布装置で塗布して硬化させるタンデム方式であってもよい。
【0017】
キャプスタン18は、ベルト18aとローラ18bとを含んで構成されており、ベルト18aをローラ18bに押し付け、ローラ18bを回転させ、ベルト18aとローラ18bとの間に光ファイバ4を挟みこむことにより光ファイバ4を引き取ってダンサローラ19及び巻取りドラム20に送り出す。キャプスタン18に引き取られる光ファイバ4は、光ファイバ4を最初にガイドする直下ローラ17により走行方向が変えられる。キャプスタン18から送り出される光ファイバ4は、ダンサローラ19で弛みが取り除かれ、巻取りドラム20に巻き取られる。
【0018】
製造装置1は、ガラスファイバ外径測定装置21、線引張力測定装置22、被覆後外径測定装置23及び被覆後張力測定装置24を更に有する。ガラスファイバ外径測定装置21は、線引炉12と樹脂塗布装置13との間に配置されており、ガラスファイバ3の外径を測定する。被覆後外径測定装置23は、紫外線照射装置16と直下ローラ17との間に配置されており、被覆後の光ファイバ4の外径を測定する。ガラスファイバ外径測定装置21及び被覆後外径測定装置23は、例えば、レーザ光を用いた非接触式の測定装置である。
【0019】
線引張力測定装置22は、ガラスファイバ外径測定装置21と樹脂塗布装置13との間に配置されている。線引張力測定装置22は、線引きの際にガラスファイバ3に生じている線引張力を測定する。
【0020】
線引張力測定装置22には、一般的に接触式張力計が用いられることが多い。接触式張力計は、安価であり、測定精度が高いという利点がある一方、ガラスファイバ3に傷をつけることになるので、一般的に良好部を製造している間は、張力を測定することができない。接触式張力計以外にも、ガラスファイバ3の側方から円偏光の光を照射し、偏光状態の変化から、ガラスファイバ3に生じている線引張力の大きさを測定する方法もあるが、接触式張力計に比べ高価であり、測定精度も落ちる。このため、線引張力を直接測定する代わりに、以下で述べる被覆後張力を測定し、この被覆後張力から線引張力を求めることが多い。本実施形態では、線引張力測定装置22として、接触式張力計、光学式張力計のどちらを使用してもよい。
【0021】
被覆後張力測定装置24は、直下ローラ17とキャプスタン18との間に配置されている。被覆後張力測定装置24は、被覆後の光ファイバ4に生じている被覆後張力を測定する。
被覆後張力測定装置24は、光ファイバ4に接触された張力測定ローラ24aを備えている。被覆後張力測定装置24は、張力測定ローラ24aの中心軸に取り付けられており、光ファイバ4に生じている張力によって張力測定ローラ24aに加えられる力を測定する。そして、この力から光ファイバ4に生じている被覆後張力を求める。この被覆後張力は、線引張力に応じて変化し、線引張力と被覆後張力との間には比例関係が成立する。
【0022】
製造装置1は、制御装置25を更に有する。制御装置25は、線引炉12、ガラスファイバ外径測定装置21、線引張力測定装置22、被覆後外径測定装置23、被覆後張力測定装置24及びキャプスタン18等に電気的に接続されている。制御装置25には、ガラスファイバ外径測定装置21、線引張力測定装置22、被覆後外径測定装置23、被覆後張力測定装置24等の測定結果が入力される。
【0023】
次に、光ファイバ4を製造する場合について説明する。
まず、線引き開始前に、光ファイバ母材2の長手方向の複数箇所において径方向の屈折率分布をプリフォームアナライザで予め測定しておく。例えば、光ファイバ母材2の屈折率分布は測定箇所によってわずかに異なり、これにより光ファイバ母材2の屈折率分布の長手方向の変動がわかる。この測定の結果を制御装置25に入力する。
【0024】
次に、光ファイバ母材2を母材送り装置11に設置し、線引炉12内に配置する。線引炉12によって光ファイバ母材2の一端が加熱されて溶融され、引っ張られてガラスファイバ3が線引きされて形成される。
【0025】
線引きが開始されると、ガラスファイバ3の外径がガラスファイバ外径測定装置21で測定される。線引張力測定装置22が接触式張力計である場合は上記のように良好部の製造時には通常使用しないが、その後、必要に応じ、線引張力測定装置22によって線引張力を測定し、必要に応じて制御装置25に入力される。
【0026】
線引張力測定装置22を通過したガラスファイバ3は、樹脂塗布装置13及び紫外線照射装置15,16を順に通過する。これにより、ガラスファイバ3上に被覆層が形成され、ガラスファイバ3上に2層の被覆層を有する光ファイバ4が得られる。この光ファイバ4の外径が被覆後外径測定装置23で測定される。被覆後外径測定装置23を通過した光ファイバ4は、直下ローラ17、被覆後張力測定装置24、キャプスタン18、ガイドローラ26,27及びダンサローラ19を経て巻取りドラム20に巻き取られる。
【0027】
上記のように、光ファイバ母材2からガラスファイバ3を線引きして光ファイバ4を製造する際に、制御装置25は、予め測定しておいた光ファイバ母材2の長手方向の屈折率分布の変動に基づいて、カットオフ波長の長手方向変動を予測するカットオフ波長予測処理を行う。
【0028】
また、制御装置25は、線引きされるガラスファイバ3の線引張力とカットオフ波長との関係、及び線引張力と光ファイバ4に押し付けられる張力測定ローラ24aの荷重から求められる光ファイバ4の張力である被覆後張力との関係に基づいて、線引き後のカットオフ波長が長手方向に一定となるような目標被覆後張力を決定する目標被覆後張力決定処理を行う。
【0029】
そして、制御装置25は、被覆後張力が目標被覆後張力となるように、線引炉12の炉温を制御する炉温制御処理を行う。
【0030】
また、制御装置25は、目標被覆後張力決定処理の際に、張力測定ローラ24a及び直下ローラ17のそれぞれのローラ抵抗の変動及び光ファイバ4の被覆径の変動による光ファイバ4の引き取り抵抗の変動に基づいて目標被覆後張力を補正する目標被覆後張力補正処理を行う。
【0031】
この目標被覆後張力補正処理において、まず被覆径の変動による光ファイバ4の引き取り抵抗の変動を補正するため、制御装置25は、次式(1)に基づいて目標被覆後張力を補正した補正目標被覆後張力Pを算出する。
【0032】
P=P0+A×(D−D0)…(1)
但し、
P0:補正前目標被覆後張力(g)
A:被覆径変動と被覆後張力との相関から導き出される定数(g/μm)
D:光ファイバの被覆径(μm)
D0:基準被覆径(μm)
【0033】
制御装置25は、被覆後張力が、算出した補正目標被覆後張力Pとなるように、線引炉12の炉温を制御する。そして、例えば光ファイバ4の被覆径が単に増加しただけの場合は、目標被覆後張力が高くなるため、結果的に線引炉12の炉温を変化させず(被覆径による補正をしない場合には、被覆後張力が高くなるので、炉温を下げる制御を行うことになる)、光ファイバ4の被覆径が単に減少しただけの場合は、目標被覆後張力が低くなるため、同様に炉温を変化させないことになる。これにより、光ファイバ4の被覆径の変動による線引張力の変動を抑え、カットオフ波長への影響を極力抑えることができる。
【0034】
次に、制御装置25は、ハンディタイプの張力計などで測定した直下ローラ17の上流側の上流側張力F1及び張力測定ローラ24aの下流側の下流張力F2により、次式(2)に基づいて、これらの上流側張力F1及び下流側張力F2から目標被覆後張力を補正した補正目標被覆後張力Tを算出する。
【0035】
T=T0+Δ(F2−F1)…(2)
但し、
T0:補正前目標被覆後張力(g)
Δ(F2−F1):F2とF1の差分値の前回測定時からの変動(g)
【0036】
制御装置25は、被覆後張力が、算出した補正目標被覆後張力Tとなるように、線引炉12の炉温を制御する。そして、例えばローラ抵抗が増加した場合は、目標被覆後張力を予め高く設定し、ローラ抵抗が減少した場合は、目標被覆後張力を予め低く設定しておく。これにより、直下ローラ17や張力測定ローラ24aなどの各種のローラのローラ抵抗の変動による線引張力の変動を抑え、カットオフ波長への影響を極力抑えることができる。
【0037】
このように、上記実施形態に係る光ファイバの製造方法によれば、光ファイバ4の被覆径の変動または直下ローラ17や張力測定ローラ24aなどの各種のローラのローラ抵抗の変動等によって変動する光ファイバ4の引き取り抵抗に基づいて目標被覆後張力をきめ細かく補正することができる。これにより、カットオフ波長の変動を良好に抑制して高品質な光ファイバ4を製造することができる。
【0038】
次に、補正処理を行って光ファイバ4を製造する場合の具体例について説明する。
(光ファイバの製造)
母材径100mmの光ファイバ母材2を用い、ガラスファイバ3の目標径を125μm、光ファイバ4の基準被覆径(目標径)を245μmとし、線速1000m/分でガラスファイバ3を線引きして光ファイバ4を製造する。
【0039】
上記のように光ファイバ4を製造すると、被覆後張力と線引張力との関係は、一般的に略比例関係となる。
また、カットオフ波長λcと被覆後張力との関係も、図2に示すように、一般的に略比例関係となる。
【0040】
図3は、光ファイバ4の被覆径と被覆後張力との関係を示している。図3に示すように、線引張力が同じであっても、目標径245μmに対して、被覆径が細くなれば、被覆後張力も小さくなり、被覆径が太くなれば、被覆後張力も大きくなる。
【0041】
(補正の仕方)
被覆径と被覆後張力との相関については、図3に示すように一般的に略比例関係となる。図3の場合、被覆径が1μm変動すると被覆後張力も1g変動しており、被覆径変動と被覆後張力との相関から導き出される定数Aは、略A=1(g/μm)となる。
【0042】
これにより、例えば補正前目標被覆後張力P0を200gとして基準被覆径D0が245μmの光ファイバ4を製造する際に、実際の被覆後張力が210gで被覆径Dが244μmであった場合、補正目標被覆後張力Pは、上式(1)に基づいて、
P=P0+A(D−D0)
=200+1×(244−245)
=199g
となる。
【0043】
そして、制御装置25は、目標被覆後張力を200gから199gの補正目標被覆後張力Pに補正し、実際の被覆後張力210gに対して11g減少させた被覆後張力199gになるように、線引炉12の炉温を変更する。
【0044】
また、制御装置25は、直下ローラ17及び張力測定ローラ24aの変動分を、そのまま目標被覆後張力に反映させる補正を行う。
【0045】
ここで、直下ローラ17の上流側の上流側張力F1及び張力測定ローラ24aの下流側の下流側張力F2の測定値を、前回の測定値と比較し、その差分値Δ(F2−F1)を求める。
【0046】
例えば、上流側張力F1が215gから214gに変動し、下流側張力F2が230gから232gに変動した場合、差分値は、Δ(F2−F1)=(232−230)−(214−215)=2−(−1)=3gとなる。
【0047】
したがって、この場合、補正前目標被覆後張力T0を200gとすると、補正目標被覆後張力Tは、上式(2)に基づいて、
T=T0+Δ(F2−F1)
=200+3
=203g
となる。
【0048】
そして、制御装置25は、目標被覆後張力を、200gから203gの補正目標被覆後張力Tに補正し、線引炉12の炉温を変更する。
【0049】
(補正後のばらつき)
上記の補正処理を行って光ファイバ4を製造した結果、ガラスファイバ3のカットオフ波長は、非補正時で標準偏差σ=0.0151μmであったものが、本実施形態による補正を行ったことにより、標準偏差σ=0.0078μmとなり、カットオフ波長のばらつきを半減させることができた。
【符号の説明】
【0050】
2:光ファイバ母材、3:ガラスファイバ、4:光ファイバ、12:線引炉、17:直下ローラ、24a:張力測定ローラ、A:定数、D:被覆径、D0:基準被覆径、F1:上流側張力、F2:下流側張力、P,T:目標被覆後張力、P0:補正前目標被覆後張力、T0:補正前目標被覆後張力、Δ(F2−F1):F2とF1の差分値の前回測定時からの変動

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線引炉で加熱され溶融された光ファイバ母材からガラスファイバを線引きし、前記ガラスファイバの周囲に樹脂を被覆して光ファイバを製造する光ファイバの製造方法であって、
予め測定した前記光ファイバ母材の長手方向の屈折率分布の変動に基づいてカットオフ波長の長手方向変動を予測するカットオフ波長予測処理と、
前記ガラスファイバの張力である線引張力と前記カットオフ波長との関係及び前記線引張力と前記光ファイバの張力である被覆後張力との関係に基づいて、線引き後の前記ガラスファイバのカットオフ波長が長手方向に一定となるような目標被覆後張力を決定する目標被覆後張力決定処理と、
前記被覆後張力が前記目標被覆後張力となるように、前記線引炉の炉温を制御する炉温制御処理とを含み、
前記目標被覆後張力決定処理の際に、前記光ファイバの引き取り抵抗の変動に基づいて前記目標被覆後張力を補正する目標被覆後張力補正処理を行うことを特徴とする光ファイバの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバの製造方法であって、
前記目標被覆後張力を補正した補正目標被覆後張力P(g)を、
P=P0+A×(D−D0)
(但し、P0:補正前目標被覆後張力(g)、A:定数(g/μm)、D:光ファイバの被覆径(μm)、D0:基準被覆径(μm))
からなる補正式から導き出すことを特徴とする光ファイバの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ファイバの製造方法であって、
前記光ファイバを最初にガイドする直下ローラの上流側の上流側張力F1及び前記直下ローラの下流側で前記被覆後張力を測定する張力測定ローラの下流側の下流側張力F2を測定し、
前記目標被覆後張力を補正した補正目標被覆後張力T(g)を、
T=T0+Δ(F2−F1)
(但し、T0:補正前目標被覆後張力(g)、Δ(F2−F1):F2とF1の差分値の前回測定時からの変動(g))
からなる補正式から導き出すことを特徴とする光ファイバの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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