説明

光ファイバアレイ

【課題】大規模の二次元光ファイバアレイを高い配列精度かつ、簡易な製造方法を用いて低コストで提供する。
【解決手段】複数の光ファイバ7と、これらの光ファイバ7をそれぞれ嵌入して保持する光ファイバ用貫通孔が中心に設けられた複数の光ファイバ継ぎ口手段(フェルール8、フランジ13)とを備える。これらの光ファイバ継ぎ口手段をそれぞれ嵌合させる複数の貫通ガイド孔(ガイド孔11)が設けられた複数の整列基板3〜6を備える。これらの複数の整列基板3〜6を整列した状態で保持するフレーム2とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信等で使用される光スイッチ、アイソレータ、光コネクション装置の入出力部、半導体レーザ、フォトダイオードと光ファイバとの光結合部品あるいは多芯光コネクタを構成する光ファイバアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
基幹ネットワークは、データトラヒックの急激な増大に伴い、大容量化が強く求められている。この基幹ネットワークにおいて、伝送路部分には、WDM(wavelength division multiplexing)技術を利用した大容量光ネットワークが既に導入されている。しかしながら、ノード部分は、光信号を電気信号に一旦変換し、電気スイッチで方路の切り替えを行った後、光信号に再び変換して伝送路部分に戻す構成が採られている。
【0003】
このような光信号と電気信号とを変換する装置は、信号帯域の向上に伴って、コストや消費電力が大幅に上昇することが指摘されている(非特許文献1参照)。このため、光信号をそのままの状態でスイッチングする光スイッチを利用することが検討されている。特に、光スイッチ内の配線に光導波媒体を用いることなく、光ビームをスイッチ内部の結線(光接続)やスイッチ間の結線に利用するフリースペース型の光スイッチは、小型化が可能であるため、大規模ルータのスイッチ部への実用化が検討されている。
【0004】
このようなフリースペース型の従来の光スイッチとしては、例えば非特許文献2に記載されているものがある。非特許文献2に開示されている光スイッチの概略構成を図5に示す。図5に示す光スイッチ100は、光ファイバアレイ102と、マイクロレンズアレイ103と、マイクロ可動ミラーアレイ104と、固定ミラー105とから構成されたものである。光ファイバアレイ102は、ファイバ整列用部材を用いることで、光ファイバ102aがある一定の間隔をあけて二次元的あるいは一次元的に整列配置されたものである。
【0005】
マイクロレンズアレイ103は、マイクロレンズ103aが空間光ビーム接続装置と同様にある一定の間隔をおいて二次元的あるいは一次元的に整列配置されたものである。マイクロ可動ミラーアレイ104は、マイクロマシン技術を用いて半導体基板上に形成された能動素子であるマイクロ可動ミラー104aが一次元的あるいは二次元的に複数配列されたものであり、ミラー面の傾き角度θが動的に各々変化可能となるように形成されている。なお、図5において、各部分は、容易に理解できるように、一次元の配列として描いてある。
【0006】
このようなフリースペース型の従来の光スイッチ100においては、光ファイバアレイ102の各光ファイバ102aから出射した光信号106は、マイクロレンズアレイ103の各マイクロレンズ103aにより平行光に変換されてから、マイクロ可動ミラーアレイ104の各マイクロ可動ミラー104aで反射された後、固定ミラー105で反射され、マイクロ可動ミラーアレイ104のマイクロ可動ミラー104aで再度反射されて、マイクロレンズアレイ103のマイクロレンズ103aを介して光ファイバアレイ102の光ファイバ102aへ最終的に集光される。
【0007】
このように構成された光スイッチ100によれば、マイクロ可動ミラーアレイ104のマイクロ可動ミラー104aの傾き角度θを調整することにより、光信号106の進行方向を切り替え、光信号106を光ファイバアレイ102の目的とする光ファイバ102aへ案内することができる。ここで示した光ファイバ102aとマイクロレンズ103aとから構成される光学系、すなわち光ファイバ102a内部を伝搬する光信号を光ビームへ変換し、あるいは前記光ビームと光ファイバ102aを光結合するために用いられる光学系は、一般に光コリメータと呼称されている。
【0008】
上記光スイッチ100において入出力光ファイバ間の接続損失は、光コリメータを構成する光ファイバ102aとマイクロレンズ103aとの光軸ずれにより生じた光ビームの光軸傾きに起因する光ビームと出力光ファイバ102aとの結合損失、レンズ開口からのケラレ損失、およびマイクロ可動ミラー4aにおけるケラレ損失が支配的である。さらに、上記光軸ずれにより光軸傾きを引き起こした光ビームは、隣接チャンネルに対してクロストークを発生させ、光通話路品質の劣化を引き起こす。
【0009】
特に、二次元光コリメータアレイにおいては、各光ファイバとレンズとの光軸ずれ量は、光ファイバアレイにおけるファイバ配列誤差により大きく影響される。このため、二次元光コリメータアレイでは、アレイ作製精度の向上が強く求められている。なお、ここに示した光ファイバアレイは、光スイッチの他に、同様に光ビームを結線に用いる光アイソレータや光インタコネクション装置にも適用されている。また、半導体レーザやフォトダイオードと光ファイバとの結合部にも適用されている。
【0010】
ここで、フリースペース型の光スイッチに用いられている従来の二次元の光ファイバアレイの概略構造の一例を図6によって説明する。図6に示す二次元光ファイバアレイ110は、光ファイバ111を支持するV溝基板112とファイバ抑え板113とを多層に積層することによって形成されている。V溝基板112は、複数のV字形の溝112aが形成されており、光ファイバ111をこの溝112aに収納した状態で保持している。ファイバ抑え板113は、前記溝112aの開口部分を閉塞している。このファイバ抑え板113とV溝基板112との間には接着剤が充填されている。
【0011】
このため、光ファイバ111は、V溝基板112とファイバ抑え板113とに接着されて固定されることになる。なお、ファイバ抑え板113に重ねられているV溝基板112も、接着剤によってファイバ抑え板113に接着されている。前記V溝基板112としては、セラミック,ガラス、シリコンなどの基板に、精密加工技術を用いてV字形の溝112aを形成されたものが広く使われている。このV溝基板112においては、基板面に対して水平方向の光ファイバ配列誤差を1μm以下に抑えることが可能とされている。
【0012】
二次元の光ファイバアレイの他の従来例(MT型の光コネクタのフェルール)の概略構造を図7に示す。図7に示す二次元の光ファイバアレイ120は、光ファイバ121がフェルール122の整列用のガイド孔122a内に各々挿入され、接着剤の充填用孔122bから注入された接着剤で固定されている。
前記フェルール122は、熱収縮時や成型後に生じる変形量が小さいポリマ系熱可塑性材料(熱可塑性樹脂)が使用され、加熱された当該材料を金型内に押し出して冷却して成型する「トランスファー成型法」により作製されている。一般に、トランスファー成型法に代表されるプラスチック成形技術は、大量生産に適しており、高精度な光ファイバアレイを低コストに作成することを可能としている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】A.S.Morris III,"In search of transparent networks",IEEE Spectrum,pp47-51(Oct.2001)
【非特許文献2】D. T. Neilson, et. al., “Fully provisioned 112x112 micro-mechanical optical cross connect with 35.8Tb/s demonstrated capacity", OFC2000. paper-PD12-1, (2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところが、図6に示したような二次元の光ファイバアレイ110においては、以下のような問題があった。以下の説明では、光ファイバ111の光軸をZ方向、V溝基板112の積層方向をY方向、Z軸およびY軸に対してそれぞれ垂直な光ファイバ111の配列方向をX方向と定義する。
【0015】
(1)まず、V溝基板112を積層する場合、同基板112上に配列された光ファイバ111の中心位置を、上下の基板間で基板112に対し水平な方向(X方向)について±1〜2μm以内の精度で位置合わせする必要がある。このため、V溝基板112の外形の精度を前記と同程度に高めて基板端部を治具等に当接させるか、そうでない場合はV溝基板112そのものに何らかの位置決め機構を設け、あるいは光ファイバ111の端面が露出する側のV溝基板端面を観察しながら同基板間の相対位置を微調整して位置合わせを行うことになり、高精度な機械加工あるいは実装技術が要求される。
【0016】
さらに、位置合わせした後に同基板間を接着固定するため、接着材による硬化収縮の影響を考慮する必要がある。この収縮による位置の制御は困難である。また、V字形の溝112aを作製する基板自体にも±3〜5μm程度の厚さのばらつきが存在する。このため、二次元の光ファイバアレイ110では、光ファイバ111の配列精度、特にV溝基板112の積層方向(Y方向)に対する前記配列精度を向上させるにも限界がある。
【0017】
(2)また、規模の拡大に伴って、光ファイバ111の数をV溝基板112と平行な方向(X方向)に増やすと、V溝基板112の反りによって光ファイバ111の配列誤差が生じやすくなり、また、V溝基板112の積層数を増やすと、V溝基板112の厚さや接着剤の厚さのばらつきに起因して光ファイバ111の配列誤差が生じやすくなってしまう。V溝基板112を高い寸法精度で形成したとしても、接着剤の厚みのばらつきや硬化収縮により、全体の配列誤差が大きくなってしまう。接着剤層の厚みのばらつきや硬化収縮の影響を抑制するために接着剤層を薄く形成すると、接着剤層が適切な厚みを有していなければ接着特性が不十分になって長期信頼性を確保できなくなることがある。このため、接着剤層の厚みを適正な厚みに形成することは容易ではない。
【0018】
(3)一般に、V溝基板112は、半導体やガラスやセラミックス等の基板に精密機械加工やエッチングプロセスでV字形の溝112aを形成することにより作製される。しかし、このような高精度な機械加工やプロセスを伴う製造方法は、大量生産に適さず、製造コストの低減を図ることが困難である。
(4)また、V溝基板112に整列させる光ファイバ111の外径は50μm〜125μmと非常に細く、かつ表面を保護する被覆が取り除かれた状態であるため破断しやすい。破断しない場合であっても微小な傷が表面に形成されて将来的に断線の原因となることがあるため、取り扱いには注意を要する。
【0019】
また、V溝基板112の外側に引き出された光ファイバ111には、一般に外径250μmの一次被覆が施されており表面は保護されているが、機械強度が低いため、わずかな張力が加えられたり、V溝基板112の端部に応力が集中したりするだけで折れることがある。このため、光ファイバ111をアレイ化した後に断線が発生するなどして製造歩留まりを下げることがあり、図6に示す二次元の光ファイバアレイ110の組み立てコストの削減は難しい。
以上の理由により、図6に例示した二次元の光ファイバアレイ110について、大規模の2次元光ファイバアレイを高精度な配列精度で実現することは技術的に困難である。
【0020】
他方、図7に示したような二次元の光ファイバアレイ120においては、以下のような問題があった。一般に、光コリメータを構成する光ファイバ及びレンズと空気との屈折率境界面には、反射の影響を避けるため、誘電体多層膜から構成される無反射コート膜を形成するようにしている。この無反射コート膜の形成には、多くの場合、蒸着法が用いられるが、蒸着法では、一般的に膜の形成過程において、形成対象が数百℃以上の高温環境下に晒されることになる。
【0021】
図7に示すフェルール122を用いる場合、複数の光ファイバ121が各々ガイド孔122a内に挿入され、各光ファイバ121がフェルール122により保持された状態で、各光ファイバ121の光入出射端面の研磨や、研磨した光入出射端面に対する無反射コート膜の形成を行う。ところが、フェルール122を構成する熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度が180〜200℃近辺にあり、フェルール122とともに蒸着法を用いて無反射コート膜を形成することは、耐熱性の点で困難である。
【0022】
また、図7に示したような二次元の光ファイバアレイ120では、光ファイバ121を被覆のない状態でフェルール122に挿入するため、光ファイバ121の配列数が増えるほど組立が難しくなる問題があった。具体的には、フェルール122のガイド孔122aの内部で光ファイバ121が破断し、ガイド孔122aを詰まらせてしまうことがある。また、全てのガイド孔122aに光ファイバ121を通して固定する以前に一部の光ファイバ121が抜けてしまった場合は、挿入済みの光ファイバ121の根元をかき分けながら抜けたガイド孔122aへ光ファイバ121を再挿入しなければならず、組立作業が著しく煩雑になる。
【0023】
このため、組立の歩留まりの低下、および組立時間の増加を招き、組立コストを削減するには限界があった。また、被覆のない光ファイバ121を取り扱うため、組立時に光ファイバ表面に傷が形成され、長期信頼性の低下を招く恐れもあった。
図7に示すフェルール122は、熱可塑性樹脂を用いたトランスファー成型により形成され、光ファイバ121の配列精度は成型時に形成されるガイド孔122aの製造精度により決定される。このフェルール122を成型により製造する場合、成形型に対しある収縮率で形状が成型部材に転写される。
【0024】
成型部材の寸法が数十mm角のような比較的小さい場合には収縮率を精度良く見積もることができ、数回の型修正により数ミクロンの精度でガイド孔122aを設けることが可能である。しかし、さらに大きな部材を成型により製造する場合、収縮率の部材内での不均一さや部材間でのばらつきが顕著になり、ガイド孔122aの配列精度の劣化は避けることができない。そのため百ポートを超えるような大規模なファイバアレイ用のフェルール122を成型法で作成することは非常に困難になる。
【0025】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、百ポートを超えるような大規模の二次元光ファイバアレイを高い配列精度かつ、簡易な製造方法を用いて低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
この目的を達成するために、本発明に係る光ファイバアレイは、複数の光ファイバと、これらの光ファイバをそれぞれ嵌入して保持する光ファイバ用貫通孔が中心に設けられた複数の光ファイバ継ぎ口手段と、これらの光ファイバ継ぎ口手段をそれぞれ嵌合させる複数の貫通ガイド孔が設けられた複数の整列基板と、これらの複数の整列基板を整列した状態で保持するフレームとを備えたものである。
【0027】
本発明は、前記発明において、前記光ファイバ継ぎ口手段は、前記光ファイバを保持するフェルールと、このフェルールを保持するフランジとによって構成されているものである。
本発明は、前記発明において、前記整列基板と前記フレームとは、互いに嵌合する案内構造を有するものである。
【0028】
本発明は、前記発明において、前記フレームは、前記複数の整列基板の相対位置を調整する調整機構を有するものである。
本発明は、前記発明において、前記複数の整列基板は、それぞれトランスファー成型法によって形成されているものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、光ファイバを保持した光ファイバ継ぎ口手段を整列基板の貫通ガイド孔に嵌合させることにより、光ファイバを整列基板の所定の位置に装着することができる。このため、光ファイバを簡単かつ高い配列精度で整列基板に取付けることができる。
【0030】
各整列基板に対する光ファイバの位置の精度は、光ファイバと光ファイバ継ぎ口手段との嵌合部の精度と、光ファイバ継ぎ口手段と整列基板との嵌合部の精度とに依存して決まる。これらの嵌合部は、いずれも誤差が許容範囲内に入るように形成することが可能である。また、複数の整列基板は、フレームによって整列させられるから、個々の整列基板は、製造時の貫通ガイド孔の累積配列誤差が許容範囲内に入る大きさに形成することができる。
【0031】
したがって、本発明によれば、光ファイバを簡単に取り付けることができるとともに、高い精度で位置決めすることが可能になるから、百ポートを越える大規模な二次元光ファイバアレイの配列誤差を極めて小さくすることができ、かつこのような二次元光ファイバアレイを低コストで提供できるようになる。
【0032】
前記光ファイバ継ぎ口手段を、前記光ファイバを保持するフェルールと、このフェルールを保持するフランジとによって構成することにより、光ファイバ端面の研磨や無反射コーティング処理が容易になり、結果として歩留りを向上させることが可能になる。
前記整列基板とフレームとがそれぞれ、互いに嵌合する案内構造を有することにより、整列基板間の相対位置誤差を低減させ、アレイ配列の高精度化が可能になる。
【0033】
前記フレームが前記複数の整列基板の相対位置を調整する調整機構を有することにより、組立時のアセンブル誤差を補正し、より高精度な配列が可能になる。
前記複数の整列基板をトランスファー成型法によって形成することにより、低コスト化と高精度化の両立が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1の実施形態における光ファイバアレイの構成を示す斜視図である。
【図2】光ファイバ継ぎ口手段の構成を示す斜視図で、同図においてはフェルールとフランジの一部を破断した状態で描いてある。
【図3】図1に示した光ファイバアレイの分解斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態における光ファイバアレイの構成を示す分解斜視図である。
【図5】フリースペース型の光スイッチの概略的な構成を示す構成図である。
【図6】従来の二次元の光ファイバアレイの概略的な構造を示す斜視図である。
【図7】従来の二次元の光ファイバアレイの概略的な構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
はじめに、本発明の第1の実施の形態における光ファイバアレイについて説明する。図1は、本実施の形態における光ファイバアレイの構成を示す斜視図である。この実施の形態による光ファイバアレイ1は、図1および図3に示すように、全体が略額縁状に形成されたフレーム2と、このフレーム2に取付けられた複数の整列基板3〜6と、これらの整列基板3〜6に光ファイバ7を装着するためのフェルール8などを備えている。
【0036】
前記フェルール8は、図2に示すように、円筒状に形成されており、光ファイバ7の先端部分に設けられている。このフェルール8は、後述する整列基板3〜6に穿設された多数のガイド孔11(図3参照)にそれぞれ嵌合する形状に形成されている。ガイド孔11は、整列基板3〜6を光ファイバ7の光軸と平行な方向に貫通している。このガイド孔11によって、本発明でいう貫通ガイド孔が構成されている。
【0037】
光ファイバ7は、図2に示すように、フェルール8の中央部を貫通する貫通孔12に嵌入されて固定されている。この光ファイバ7の光入出射端面7aは、フェルール8の先端面8aに露出している。各整列基板3〜6にフェルール8を介して装着された複数の光ファイバ7の光入出射端面7aは、互いに平行になるよう整列されている。
フェルール8には、図2に示すように、光ファイバ7の先端部の被覆が取り除かれて、コアとクラッドとからなる導波路の露出した部分が嵌入されている。
【0038】
また、フェルール8における光ファイバ7が挿入される一端部には、この一端部と光ファイバ7とを保護するためにフランジ13が設けられている。このフランジ13は、内径の太い部分と細い部分とから構成され、内径の太い部分にフェルール8の前記一端部が嵌入され、細い部分に被覆付きの光ファイバ7が嵌入されている。この実施の形態においては、フェルール8とフランジとによって本発明でいう光ファイバ継ぎ口手段が構成されている。
【0039】
フェルール8は、光ファイバ7を保持するための部品であり、現在一般に市販されている。この一般に市販されているフェルール8は、内径の中心と外径の中心とのずれ量である偏芯量が1μm以下であり、非常に高い精度を有している。なお、光ファイバの光入出射端面7aは、フェルール8の端面8aと同一平面上に位置するように形成されている。本実施の形態によるフェルール8は、例えばジルコニア等の耐熱性の高い材料を用いて形成されている。このため、上述したように光ファイバ7をフェルール8に保持した状態において、光ファイバ7の光入出射端面7aに蒸着法による無反射コート膜を形成することが可能となる。なお、フェルール8はジルコニアの他、アルミナや金属、結晶化ガラス等の他の材料を使用して形成することができる。
【0040】
前記各整列基板3〜6は、それぞれ製造時の貫通ガイド孔の累積配列誤差が許容範囲内に入るような大きさに形成されている。この実施の形態による各整列基板3〜6には、前記多数のガイド孔11が予め定めた間隔で4行×4列の配列となるように位置付けられている。また、各整列基板3〜6の外縁部には、フレーム2の位置決めピン14(図3参照)を嵌合させるために複数のピン孔15が穿設されている。この実施の形態によるピン孔15は、各整列基板3〜6にある四箇所の角部のうち、4個の整列基板3〜6を同一平面上に位置するように集合させた集合体の中央部に位置する角部を除く他の三箇所の角部に穿設されている。
【0041】
前記フレーム2は、合成樹脂、金属あるいはセラミックなどの材料によって額縁状に形成されており、整列基板3〜6を取付けるために複数の位置決めピン14が立設されている。これらの位置決めピン14は、整列基板3〜6の前記ピン孔15と対応する位置に位置付けられている。これらの位置決めピン14を整列基板3〜6のピン孔15に嵌合させることによって、各整列基板3〜6をフレーム2に対して高精度に位置決めすることができる。この実施の形態においては、前記位置決めピン14とピン孔15とによって、本発明でいう案内構造が構成されている。
【0042】
この実施の形態による整列基板3〜6は、例えば、ポリマ系熱可塑性材料(熱可塑性樹脂)から構成されたものである。これらの整列基板3〜6に穿設されたガイド孔11の内径は、フェルール8の外径に対応し、かつその孔形状は、フェルール8の外形状に略等しい形状に形成されている。なお、整列基板3〜6は、ポリマ系熱可塑性材料の他、金属やセラミック、またガラスなどを使用して形成することができる。
【0043】
これらの材料を機械加工、あるいは金型を用いて成型することにより、各々のガイド孔11の位置を、二次元アレイの全領域において±2μm以下の高精度で配列させることが可能になり、かつフレーム2に対するピン孔15の位置精度も同様の精度で形成することができる。特に、整列基板3〜6を熱可塑性樹脂によって形成する場合、トランスファー成型法により高い精度を保ちつつ安価に作製することが可能である。
【0044】
アレイ規模が大きくなった場合、1つの整列基板内に全てのガイド孔を設ける構成を採ると整列基板が大型化する。この場合、ガイド孔の配列精度は、整列基板の製造精度により制限されるため、高精度に配列することは困難になる。この製造精度の制限は、機械加工の場合には工具の送り誤差の累積に、また成型の場合には成型部材の収縮率の不均一さなどに起因するものである。本発明においては、1つの整列基板3〜6の大きさをガイド孔11の配列精度が損なわれることがない大きさに制限し、複数の整列基板3〜6をフレーム2上に整列させることでアレイ規模が大きくても高い配列精度を有する光ファイバアレイ1を実現することができる。
【0045】
以上に説明した本実施の形態における光ファイバアレイ1においては、例えば、整列基板3〜6のガイド孔11やピン孔15の位置や形状等を高い寸法精度で形成し、また、フェルール8の外形や、フェルール8貫通孔128aの内径および偏心等を高い精度で形成すれば、フェルール8を介して整列基板3〜6に固定される複数の光ファイバ7が、誤差の極めて小さい状態で二次元に配列される。さらに、整列基板3〜6をフレーム2に位置決めピン14とピン孔15とからなる案内構造を介して配列することにより、大規模の二次元光ファイバアレイを作製することが可能となる。
【0046】
[第2の実施の形態]
次に、図4を用いて本発明の第2の実施の形態における光ファイバアレイについて説明する。図4において、前記図1〜図3によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0047】
図4に示す光ファイバアレイ1のフレーム2は、整列基板3〜6を取付けるための4個の内側フレーム21と、これらの内側フレーム21を支持するための外側フレーム22とを備えている。整列基板3〜6は、前記内側フレーム21にピン14とピン孔15との嵌合により取付けられている。内側フレーム21は、略L字状に形成されており、外側フレーム22の内側の四隅となる位置に収容された状態で外側フレーム22に板ばね23を介して支持されている。
【0048】
板ばね23は、L字状に形成された内側フレーム21の横方向延在部21aと外側フレーム22との間と、内側フレーム21の縦方向延在部21bとの間に設けられている。この実施の形態による板ばね23は、内側フレーム21と外側フレーム22との間で横方向(図4においてはX方向)と縦方向(図4においてはY方向)とに延在する形状、すなわちいわゆるクランク軸状に形成されている。このように内側フレーム21が板ばね23を介して外側フレーム22に支持されていることにより、内側フレーム21は外側フレーム2に対して微小な寸法だけ変位することができる。詳述すると、この内側フレーム21は、前記横方向(X方向)および縦方向(Y方向)に平行移動することができるとともに、光ファイバ7の光軸の軸線回りに傾動する(図4に示す角度θ)ことができる。
【0049】
内側フレーム21と外側フレーム2との間には、たとえばマイクロメータや送りねじなどの機構部品24が設けられている。なお、この機構部品24は、各整列基板3〜6と外側フレーム2との間に設けることもできる。この実施の形態においては、前記機構部品24によって、本発明でいう調整機構が構成されている。
【0050】
この機構部品24を使用して内側フレーム21に図4におけるX,Yおよびθ方向へ強制変位を与えることにより、内側フレーム21(整列基板3〜6)の外側フレーム22に対する位置、角度の微調整が可能になる。マイクロメータや送りねじなどの機構部品24を整列基板3〜6のそれぞれについて装備することで、各整列基板3〜6間の相対位置を調整することができ、光ファイバアレイ組立時の誤差を低減し、より高い配列精度を有する二次元光ファイバアレイを構成できる。
【符号の説明】
【0051】
1…光ファイバアレイ、2…フレーム、3〜6…整列基板、7…光ファイバ、7a…光入出射端面、8…フェルール、8a…端面、11…ガイド孔、13…フランジ、14…ピン、15…ピン孔、21…内側フレーム、22…外側フレーム、23…板ばね、24…機構部品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバと、
これらの光ファイバをそれぞれ嵌入して保持する光ファイバ用貫通孔が中心に設けられた複数の光ファイバ継ぎ口手段と、
これらの光ファイバ継ぎ口手段をそれぞれ嵌合させる複数の貫通ガイド孔が設けられた複数の整列基板と、
これらの複数の整列基板を整列した状態で保持するフレームとを備えたことを特徴とする光ファイバアレイ。
【請求項2】
請求項1記載の光ファイバアレイにおいて、
前記光ファイバ継ぎ口手段は、前記光ファイバを保持するフェルールと、
このフェルールを保持するフランジとによって構成されていることを特徴とする光ファイバアレイ。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の光ファイバアレイにおいて、
前記整列基板と前記フレームとは、互いに嵌合する案内構造を有することを特徴とする光ファイバアレイ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちいずれか一つに記載の光ファイバアレイにおいて、
前記フレームは、前記複数の整列基板の相対位置を調整する調整機構を有することを特徴とする光ファイバアレイ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちいずれか一つに記載の光ファイバアレイにおいて、
前記複数の整列基板は、それぞれトランスファー成型法によって形成されていることを特徴とする光ファイバアレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−2738(P2011−2738A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147389(P2009−147389)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年1月22日 社団法人電子情報通信学会発行の「電子情報通信学会技術研究報告(信学技報 Vol.108 No.419)」に発表
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】