説明

光ファイバテープおよび光ケーブル

【課題】中間単心分離性が良好で、かつ、ケーブル製造時やケーブルから取り出す際の負荷に耐える十分な機械的特性、熱的特性を有する光ファイバテープ、およびこれを用いた光ケーブルを提供する。
【解決手段】並列配置された複数の光ファイバ単心線12と、これらを一括被覆するテープ層14とを備えた光ファイバテープ10であって、テープ層14は23℃におけるヤング率が700MPa〜1100MPaの樹脂からなり、かつ、このテープ層14に対する光ファイバ単心線12の1本あたりの密着力が0.025gf〜0.250gfである光ファイバテープ10、および、このような光ファイバテープ10を備えた光ケーブルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ単心線を複数本並列させ一体化した光ファイバテ−プ、および、そのような光ファイバテープを用いた光ケーブルに係り、さらに詳しくは、簡易な工具を用いて容易に中間単心分離可能な光ファイバテープ、および、そのような光ファイバテープを用いた光ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットなどの通信サービスの普及に伴い、通信事業者から一般加入者宅までの全区間を光ファイバで結ぶFTTH(Fiber To The Home)が急速に拡大してきている。このようなFTTHにおいて、加入者宅近傍の光配線網は、電柱を用いた架空配線が一般的であり、電柱に架渉した配線ケーブルから光ドロップケーブルを用いて加入者宅に引き落とす方式が主に採用されている。
【0003】
上記配線ケーブルには、ケーブル同士の接続や中間分岐の際の光ファイバ心線の取り出しの容易さなどの点から、スロットロッドの外周に複数のSZ溝を設け、これらのSZ溝に、光ファイバ単心線を複数本並列させ一体化した構造の光ファイバテープを複数枚積層して収納し、その外周に押えテープを巻き付け、さらにその上に外被を設けたスロット型光ケーブルが一般に用いられている。このようなケーブルにおいては、まず、SZ溝から光ファイバテープを取り出し、次いで、光ファイバテープを単心線に分離(中間単心分離)した後、この分離した単心線を光ドロップケーブルと接続することにより、加入者宅に引き落とされる。
【0004】
ところで、従来、溝内に収納した光ファイバテープから単心線へ中間単心分離するにあたっては、刃物類や剪断式の特殊な工具を用いてテープ層を切断し単心線に分離する方法が一般に用いられている。しかしながら、このような方法では、作業性が悪いばかりか、場合により刃が光ファイバを傷付けたり断線させたりすることがあった。このため、光ケーブル内の未使用の光ファイバテープに対し、中間単心分離作業を行わずに、光ファイバテープごと切断し、複数の光ファイバ単心線のうち1心だけを引き落とすこともあり、この場合、心線の利用効率が低くなるという問題があった。また、光ファイバテープ内の単心線の一部に活線がある場合、作業時の不用意な曲げによって伝送損失が増加し、伝送エラーを招くことがあった。この対策として、光ファイバテープをクランプで固定して直線状を維持する補助工具の使用が考えられるが、架空作業での補助工具の使用は困難である。このため、一般には回線を一旦停止したうえで作業を行っており、作業効率がさらに低下するという問題があった。
【0005】
そこで、このような問題を解決するため、上下またはその一方にナイロンなどの線材からなるブラシ片を備え、このブラシ片を光ファイバテープの上下両面に繰り返し押し当てるか、あるいは、押し当てた状態で光ファイバテープの長さ方向に相対的に移動させることにより、光ファイバテープのテープ層を傷付けたり剥いだりして、光ファイバ単心線へ分離する工具、および、このような工具により容易に中間単心分離可能な光ファイバテープが開発されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0006】
このような工具および光ファイバテープによれば、従来の刃物類や剪断式の特殊な工具を用いる方法に比べ、容易にかつ安全に光ファイバ単心線を中間分離することができ、また、中間単心分離時の損失増加もほとんどないため、活線のある光ファイバテープについても回線を一旦停止せずに中間単心分離が可能であることから、心線の利用効率および作業効率を大幅に向上させることができると期待される。
【0007】
しかしながら、上記光ファイバテープは、中間単心分離性に優れるものの、ケーブル製造時の負荷、例えば、光ファイバテープを複数枚積層乃至集合してスロットロッドのSZ溝内に収納する際の溝の側面や底面との接触や擦れ、外被押出し時の熱などにより、テープ層の剥離や削れ、単心線の分離(バラケ)などが発生することがあり、長期信頼性に乏しいという難点があった。
【0008】
また、光ファイバテープは、スロット型光ケーブルのみならず、配線ケーブルから加入者宅への引き落としに使用される光ドロップケーブルや、ビルやマンション内の構内配線に使用される光ケーブルなどにも、多心化、配線作業の効率化を目的に多用されてきている。このようなケーブルでは光ファイバテープはケーブル外被内に埋設されており、接続に際してはケーブル外被を引き裂いて光ファイバテープを取り出す必要があるが、上記の中間心線分離性の良好な光ファイバテープでは、その際に、光ファイバテープのテープ層に割れ、剥離、削れなどが生じたり、単心線の分離(バラケ)が生ずることがあった。
【特許文献1】特開2004−206048号公報
【特許文献2】特開2004−240014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような従来技術の課題に対処してなされたもので、簡易な工具を用いて容易に中間心線分離を行うことができ、かつ、ケーブル製造時やケーブルから取り出す際の負荷に耐える十分な機械的特性および熱的特性を有し、長期間に亘って良好な特性が保持される光ファイバテープ、およびこのような光ファイバテープを用いた光ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本願の請求項1に記載の発明の光ファイバテープは、並列配置された複数の光ファイバ単心線と、これらを一括被覆するテープ層とを備えた光ファイバテープであって、前記テープ層は23℃におけるヤング率が700MPa〜1100MPaの樹脂からなり、かつ、このテープ層に対する前記複数の光ファイバ単心線の1本あたりの密着力が0.025gf〜0.250gfであることを特徴とするものである。
【0011】
なお、本願明細書中、ヤング率の測定は、いずれも、JIS K 7113に準拠して測定した値であり、より具体的には、樹脂シートを作成し、JIS2号ダンベルに成形した試験片を、標線間距離25mm、引張速度1mm/分の条件で引張って求めたヤング率である。
【0012】
また、テープ層に対する光ファイバ単心線1本あたりの密着力は、以下に示す方法で測定した値である。
【0013】
まず、図7Aに示すように、光ファイバテープ1にカッターナイフ2の刃を押し当て光ファイバ単心線まで切り込んだ後、長さ方向に端部まで移動させて光ファイバテープ1の片面のテープ層を剥ぎ取る。次に、図7Bに示すように、光ファイバテープ1端部のテープ層3を約30mm手で剥いで折り返し、その先端を引張試験機の上チャック4Aで把持するとともに、テープ層3が剥ぎ取られた光ファイバ単心線5を下チャック4Bで把持する。両チャック4A、4B間の距離は約40mmとする。その後、上チャック4Aと下チャック4Bを互いに180度の方向に200m/分の速度で約50mm移動させ、テープ層3を剥離したときの荷重を測定する。測定は複数の試料について行い、その平均値を光ファイバテープ1に含まれる光ファイバ単心線5の心数で割った値を光ファイバ単心線1本あたりの密着力とする。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の光ファイバテープにおいて、隣り合う光ファイバ単心線の間の窪みに応じて前記テープ層に凹部が設けられおり、かつ、前記テープ層の厚さaが20μm以下であることを特徴とするものである。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載の光ファイバテープにおいて、前記凹部の深さbが、20μm〜80μmであることを特徴とするものである。
【0016】
また、請求項4に記載の発明の光ケーブルは、請求項1乃至3のいずれか1項記載の光ファイバテープを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の光ファイバテープによれば、ブラシ片を光ファイバテープの上下両面に繰り返し押し当てるか、あるいは、押し当てた状態で光ファイバテープの長さ方向に相対的に移動させることにより、光ファイバテープのテープ層を傷付けたり剥いだりして光ファイバ単心線へ分離するように構成された簡易な工具を用いて、容易にかつ安全に、また、活線があっても伝送損失を大きく増大させることなく光ファイバ単心線へ中間分離することができ、心線の利用効率および作業効率を十分に向上させることができる。しかも、ケーブル製造時やケーブルから取り出す際の負荷に耐える十分な機械的特性、熱的特性を有し、長期間に亘って良好な特性を保持することができる。また、本発明の光ケーブルによれば、このような優れた中間単心分離性と優れた長期信頼性を併せ持つ光ファイバテープを具備することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0019】
図1は本発明の光ファイバテープの一実施形態を示す断面図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の光ファイバテープ10は、光ファイバ単心線12を4本、同一平面上に密着させて並列させ、その外側にテープ層14を一括被覆した構造を有する。
【0021】
光ファイバ単心線12としては、例えば、光ファイバ上に紫外線硬化型樹脂などにより1層乃至複数層の保護被覆を設けたものや、このような保護被覆上にさらに着色層を設けたものが使用される。
【0022】
一方、テープ層14は、23℃におけるヤング率が700MPa〜1100MPaの樹脂により、このテープ層14に対する光ファイバ単心線12の1本あたりの密着力が0.025gf〜0.250gfとなるように被覆されている。
【0023】
テープ層14を形成する樹脂の23℃におけるヤング率が700MPa未満では、ケーブル製造時や光ファイバテープをケーブルから取り出す際に受ける応力や熱により、光ファイバテープにテープ層の剥離や削れ、テープ層の割れ、単心分離(バラケ)などが発生しやすくなる。また、逆に、23℃におけるヤング率が1100MPaを超えると、ブラシ片を光ファイバテープの上下両面に繰り返し押し当てるか、あるいは、押し当てた状態で光ファイバテープの長さ方向に相対的に移動させることにより、光ファイバテープのテープ層を傷付けたり剥いだりして光ファイバ単心線を分離するように構成された工具(以下、簡易分離工具と称する)による中間単心分離が困難になる。テープ層14を形成する樹脂は、23℃におけるヤング率が700MPa〜1100MPaであることが好ましい。
【0024】
また、テープ層14を形成する樹脂のヤング率がたとえ上記範囲にあっても、テープ層14に対する光ファイバ単心線12の1本あたりの密着力が0.025gfに満たないと、ケーブル製造時や光ファイバテープをケーブルから取り出す際に受ける応力や熱により、光ファイバテープにテープ層の剥離や単心分離(バラケ)などが発生しやすくなり、逆に、密着力が0.250gfを超えると、中間単心分離性が低下する。テープ層14に対する光ファイバ単心線12の1本あたりの密着力は、0.025gf〜0.250gfであることが好ましい。
【0025】
本実施形態のテープ層14には、隣り合う光ファイバ単心線12の間の窪みに応じて凹部16が設けられている。凹部16を設けたことにより、上記のような簡易分離工具を用いてテープ層14を傷付けたり剥いだりした後の単心分離が容易となる。このテープ層14の凹部16は、応力の集中によるテープ層14の割れや亀裂の発生、また、そのような割れや亀裂に起因する不要な単心分離を防止するため、滑らかな曲面で形成されていることが好ましい。
【0026】
本発明において、テープ層14の厚さaおよび凹部16の深さbは、特に限定されるものではないが、良好な中間単心分離性を維持しつつ、ケーブル製造時やケーブルから取り出す際の負荷によるテープ層の割れ、剥離、削れなどを防止して、光ファイバテープの長期信頼性を高める観点からは、テープ層14の厚さaは、20μm以下とすることが好ましい。ここで、テープ層14の厚さaは、図1に示すように、テープ層14の共通接線と光ファイバ単心線12の共通接線間の長さをいい、光ファイバテープ10の厚さの最大値をTmax(μm)とし、光ファイバ単心線12の外径をD(μm)としたとき、a=(Tmax−D)/2で求められる。
【0027】
また、テープ層14の凹部16の深さbは、テープ層14の共通接線とテープ層14の凹部16の底部間の長さであり、テープ層14の厚さaや光ファイバ単心線12の外径D(μm)にもよるが、通常、20μm〜80μmの範囲が好ましい。
【0028】
なお、光ファイバ単心線12の保護被覆および着色層、並びにテープ層14を構成する樹脂の種類としては、ウレタンアクリレート系樹脂やエポキシアクリレート系樹脂などの紫外線硬化型樹脂などが挙げられる。
【0029】
このように構成される光ファイバテープ10においては、並列する複数の光ファイバ単心線12を被覆するテープ層14が、23℃におけるヤング率が700MPa〜1100MPaの樹脂で構成され、かつ、テープ層14に対する光ファイバ単心線12の1本あたりの密着力が0.025gf〜0.250gfとされているので、簡易分離工具を用いて、極めて容易にかつ安全に光ファイバ単心線を中間単心分離することができ、心線の利用効率および作業効率の向上を図ることができる。また、中間単心分離作業の際の光伝送損失の変動が少ないため、中間分離すべき光ファイバテープ内に活線がある場合でも、回線を停止させることなく分離作業を行うことができる。そのうえ、ケーブル製造時やケーブルから光ファイバテープ10を取り出す際に光ファイバテープ10に加わる負荷で、光ファイバテープ10のテープ層14に割れ、剥離、削れなどが生じたり、不要な単心分離(バラケ)が発生することもなく、優れた長期信頼性を有することができる。
【0030】
以上、本発明を光ファイバ単心線が4本からなる4心光ファイバテープに適用した例について説明したが、本発明はこのような例に限定されるものではなく、図2や図3に示すように、2心光ファイバテープや8心光ファイバテープなどにも広く適用することができる。
【0031】
すなわち、図2に示す光ファイバテープ20は、図1に示す実施形態において、光ファイバ単心線12を2本、同一平面上に並列配置した例であり、また、図3に示す光ファイバテープ30は、図1に示す実施形態において、光ファイバ単心線12を8本、同一平面上に並列配置した例である。いずれの光ファイバテープ20、30においても、簡易分離工具を用いて容易にかつ安全に中間単心分離することができ、また、中間分離すべき光ファイバテープ内に活線がある場合でも、光ファイバの損失増加がほとんどないため、回線を停止させることなく分離作業を行うことができ、光ファイバテープの利用効率の向上および作業効率の向上を図ることができる。そのうえ、ケーブル製造時やケーブルから光ファイバテープ20、30を取り出す際に光ファイバテープ20、30に加わる負荷で、光ファイバテープ20、30のテープ層14に割れ、剥離、削れなどが生じたり、不要な単心分離(バラケ)が発生することもなく、優れた長期信頼性を有することができる。
【0032】
次に本発明の光ファイバテープを用いた光ケーブルについて説明する。
【0033】
図4は、本発明の光ファイバテープを用いた光ケーブルの一例を示す断面図である。
【0034】
この光ケーブル40は、加入者系光配線網の配線ケーブルとしての使用に適した、いわゆるスロット型光ケーブルと称するものであり、同図に示すように、中心に鋼線、FRP(繊維強化プラスチック)などからなる抗張力体41が埋設され、外周に長さ方向に延びる複数本(図面の例では、5本)のSZ撚りの溝(SZ溝)42が周方向にほぼ等間隔で設けられたポリエチレンなどからなるスロットロッド43を備えている。このスロットロッド43の各SZ溝42には、光ファイバテープ44が複数枚、例えば5枚ずつ積層されて収納されており、また、これらの外周には、押え巻層45を介して、ポリエチレンなどからなる外被46が設けられている。そして、光ファイバテープ44には、上述したような本発明の光ファイバテープが使用されている。図4において、47は、光ファイバテープ44の取り出しを容易にするために外被46下に縦添えされた引き裂き紐である。
【0035】
このような光ケーブル40においては、光ファイバテープ44として、簡易分離工具を用いて極めて容易にかつ安全に光ファイバ単心線に中間単心分離することができるとともに、ケーブル製造時の負荷でテープ層に割れ、剥離、削れなどが生じたり、単心分離(バラケ)が発生することもない光ファイバテープが使用されているため、一般加入者宅への光ファイバの引き落とし作業を短時間にかつ容易に行うことができるとともに、優れた長期信頼性を有している。
【0036】
図5は、本発明の光ファイバテープを用いた光ケーブルの他の例を示す断面図である。
【0037】
この光ケーブル50は、いわゆる架空光ドロップケーブルとしての使用に適した光ケーブルであり、同図に示すように、支持線部51とケーブル部52とこれらを連結する連結部53とから構成されている。支持線部51は、鋼線などからなる支持線54と、その外周に設けられた外被55とから構成されている。また、ケーブル部52は、1枚乃至複数枚(図面の例では、1枚)の光ファイバテープ56と、この光ファイバテープ56の上下に間隔をおいて並行に配置された鋼線、G−FRP(ガラス繊維強化プラスチック)、アラミド繊維強化プラスチックなど(図面の例では、直径0.4mmのG−FRP)からなる抗張力体57と、これらの外側に設けられた外被58とから構成されている。
【0038】
支持線部51の外被55、ケーブル部52の外被58および連結部53は、ポリエチレンやポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂の一括押出により形成されており、また、ケーブル部52の外被58の両側部のほぼ中央、光ファイバテープ56が位置する部分には、引き裂き用のノッチ58aが設けられている。ケーブル接続作業の際に、これらの引き裂き用ノッチ58aを起点に外被58を引き裂くことにより、光ファイバテープ56を容易に取り出すことができる。そして、光ファイバテープ56に、前述したような本発明の光ファイバテープが使用されている。
【0039】
このような光ケーブル50においては、光ファイバテープ56として、簡易分離工具を用いて極めて容易にかつ安全に光ファイバ単心線に中間単心分離することができるとともに、ケーブルから光ファイバテープを取り出す際の負荷でテープ層に割れ、剥離、削れなどが生じたり、単心分離(バラケ)が発生することもない光ファイバテープが使用されているため、ケーブル端末処理などに際して、必要に応じて容易に光ファイバ単心線へ分離することができるとともに、優れた長期信頼性を有している。
【0040】
なお、本発明においては、図5に示す光ケーブル50のケーブル部52のみで光ケーブルを構成することも可能である。このような光ケーブルは、いわゆる地下光ドロップケーブルとしての使用に適した光ケーブルであり、図5に示す光ケーブル50と同様、ケーブル端末処理などに際して、必要に応じて容易に光ファイバ単心線へ分離することができるとともに、優れた長期信頼性を有している。
【0041】
図6は、本発明の光ファイバテープを用いた光ケーブルのさらに他の例を示す断面図である。
【0042】
この光ケーブル60は、ビルやマンションなどの構内ケーブルとしての使用に適した光ケーブルであり、同図に示すように、1枚乃至複数枚(図面の例では、2枚)の光ファイバテープ61と、この光ファイバテープ61の上下に間隔をおいて並行に配置された鋼線、G−FRP、アラミド繊維強化プラスチックなど(図面の例では、直径0.7mmのG−FRP)からなる抗張力体62と、これらの外側に設けられた外被63とから構成されている。
【0043】
外被63は、ポリエチレンやポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂の一括押出により形成されており、また、光ファイバテープ61両側の外被63の上下両面には、引き裂き用のノッチ63aが設けられている。そして、光ファイバテープ61に、前述したような本発明の光ファイバテープが使用されている。
【0044】
このような光ケーブル60においては、光ファイバテープ61として、簡易分離工具を用いて極めて容易にかつ安全に光ファイバ単心線に中間単心分離することができるとともに、ケーブルから光ファイバテープを取り出す際の負荷でテープ層に割れ、剥離、削れなどが生じたり、単心分離(バラケ)が発生することもない光ファイバテープが使用されているため、ケーブル端末処理などに際して、必要に応じて容易に光ファイバ単心線へ分離することができるとともに、優れた長期信頼性を有している。
【実施例】
【0045】
次に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0046】
実施例1
外径125μmの石英ガラス系SM光ファイバ上に、ウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂からなる被覆を施し、さらにその上に着色層を設けた、外径250μmの光ファイバ単心線を、4本同一平面上に並列させながら、その外周にヤング率(23℃)が700MPaのウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂を被覆し硬化させて、厚さ(a)10μmで、隣り合う光ファイバ単心線の間の窪みに応じて滑らかな曲面で形成された深さ(b)50μmの凹部を有するテープ層を形成し、幅1.4mm、厚さの最大値(Tmax)270μm、テープ層に対する光ファイバ単心線の1本あたりの密着力が0.130gfの4心光ファイバテープを製造した。
【0047】
次いで、得られた光ファイバテープを用いて図4に示す光ケーブルを製造した。すなわち、外周に長さ方向に延びる5本のSZ溝42(深さ2mm)が設けられ、中心に直径2.0mmの単鋼線からなる抗張力体41が埋設された外径7.7mmのポリエチレン製のスロットロッド43の各SZ溝42に、上記光ファイバテープを5枚ずつ積層して収納し、その外側に押えテープを巻き付けるとともに、その上に引き裂き紐47を縦添えしつつ、押出し機に導入し、その外周にポリエチレンを押出被覆して、外径約12.5mmのスロット型光ケーブルを製造した。
【0048】
また、得られた光ファイバテープを用いて図5に示す光ドロップケーブルを製造した。すなわち、光ファイバテープ56、2本の直径0.4mmのG−FRPからなる抗張力体57と、直径1.2mmの単鋼線からなる支持線54とを、図5に示すように平行に並べた状態で押出し機に導入し、その外周にポリエチレンを一括押出被覆して、全体の幅が約2mm、同高さが約6mmの光ドロップケーブルを製造した。
【0049】
実施例2〜4、比較例1〜8
光ファイバ単心線の外周に被覆するテープ層の形成材料として、表1に示すようなヤング率を有するウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂を用いるとともに、テープ層に対する光ファイバ単心線の1本あたりの密着力がそれぞれ表1に示す値となるようにした以外は、実施例1と同様にして光ファイバテープを製造し、さらに、得られた各光ファイバテープを用いて、実施例1と同様にしてスロット型光ケーブルおよび光ドロップケーブルを製造した。
【0050】
上記各実施例および各比較例で得られた光ファイバテープに対し、簡易分離工具(例えば、特許文献2に記載のものと同等の工具)を用いて中間単心分離を試み、その分離性を評価した。また、スロット型光ケーブル製造時、溝に光ファイバテープを収納する際の、光ファイバテープのテープ層の剥離や削れおよび単心分離の状況を調べた。さらに、光ドロップケーブルから光ファイバテープを取り出し、その際の光ファイバテープのテープ層の剥離や削れおよび単心分離の状況を調べた。これらの評価結果を、表1に併せ示す。
【0051】
なお、中間単心分離性は、分離に要した時間(秒)、分離に要した簡易分離工具のテープ層上の移動回数(回)(一方向の移動を1回とカウント)および分離時の最大伝送損失増加量(dB)により評価した。
【0052】
【表1】

【0053】
上記の結果から明らかなように、本発明に係る光ファイバテープは、分離に要する時間が20秒以下、分離に要する簡易分離工具のテープ層上の移動回数が15回以下、分離時の最大伝送損失増加量(λ=1.55μm)が0.5dB以下であり、簡易分離工具を用いて容易に中間単心分離ができるとともに、活線があっても回線を停止させることなく分離作業を行うことができる。しかも、ケーブル製造時やケーブルから光ファイバテープを取り出す際の光ファイバテープのテープ層の剥離、削れ、単心分離(バラケ)が発生ずることもなく、良好な長期信頼性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の光ファイバテープの一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の光ファイバテープの他の例を示す断面図である。
【図3】本発明の光ファイバテープのさらに他の例を示す断面図である。
【図4】本発明の光ファイバテープを用いた光ケーブルの一例を示す断面図である。
【図5】本発明の光ケーブルを用いた光ケーブルの他の例を示す断面図である。
【図6】本発明の光ケーブルを用いた光ケーブルのさらに他の例を示す断面図である。
【図7A】テープ層と光ファイバ単心線との密着力の測定方法を説明する図である。
【図7B】テープ層と光ファイバ単心線との密着力の測定方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0055】
10,20,30,44,56,61…光ファイバテープ、12…光ファイバ単心線、14…テープ層、16…凹部、40,50,60…光ケーブル、42…SZ溝、43…スロットロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列配置された複数の光ファイバ単心線と、これらを一括被覆するテープ層とを備えた光ファイバテープであって、
前記テープ層は23℃におけるヤング率が700MPa〜1100MPaの樹脂からなり、かつ、このテープ層に対する前記複数の光ファイバ単心線の1本あたりの密着力が0.025gf〜0.250gfであることを特徴とする光ファイバテープ。
【請求項2】
隣り合う光ファイバ単心線の間の窪みに応じて前記テープ層に凹部が設けられおり、かつ、前記テープ層の厚さaが20μm以下であることを特徴とする請求項1記載の光ファイバテープ。
【請求項3】
前記凹部の深さbが、20μm〜80μmであることを特徴とする請求項1または2記載の光ファイバテープ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の光ファイバテープを備えたことを特徴とする光ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2006−208940(P2006−208940A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−23135(P2005−23135)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(306013120)昭和電線ケーブルシステム株式会社 (218)
【Fターム(参考)】