説明

光ファイバテープ心線の検査装置、製造装置及び光ファイバテープ心線の検査方法

【課題】複数本の光ファイバ素線を並列させて間欠的に連結した光ファイバテープ心線において、インラインで光ファイバテープ心線に張力がかかった状態でも、被覆削れや断線、連結部の分離等を招来することなく、連結部間の分離部の長さ、分離部同士の間隔(周期)を測定することができる検査装置を提供する。
【解決手段】溝幅が光ファイバテープ心線1aの幅以上で底部に少なくとも一箇所の段差部9bが設けられたガイド溝9aを有するガイドローラ9と、ガイドローラ9によりガイドされる光ファイバテープ心線1aのエッジ部間の間隔、エッジ本数、または、表面の凹凸を測定する測定器10とを備え、光ファイバ素線1間が連結されていない箇所において段差部9bにより光ファイバ素線1,1間を分離させ、エッジ間隔、エッジ本数、または、凹凸により、光ファイバ素線1,1間が分離されていることを測定し、非連結箇所の長さ、周期を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の光ファイバ素線を並列させて間欠的に連結した光ファイバテープ心線の連結部についての検査装置、製造装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数本の光ファイバ素線を並列に連結した光ファイバテープ心線が提案されている。このような光ファイバテープ心線は、並列された複数本の光ファイバ素線を間欠的に連結して(長手方向の一定距離ごとに部分的に連結して)構成されている。
【0003】
このような光ファイバテープ心線については、特許文献1に記載されているように、光ファイバテープ心線の形状の狂いや、光ファイバテープ心線を構成する光ファイバ素線間のピッチの狂いを、一括してインラインで(製造中に)迅速かつ的確に判別できるモニター法が求められている。特許文献1には、光ファイバテープ化装置のダイスから引き出され紫外線照射装置を通過して硬化された直後のテープ表面に斜め上方から光線を当て、その反射光をインラインにおいてカメラによりイメージとして取り込み、予め用意している標準状態におけるイメージと、インラインにおいて取得されたイメージとを比較し、これらイメージ間のずれを判別基準値と比較して、光ファイバテープ心線の形状及び素線間ピッチの著しい狂いの有無を判別するようにした検査装置が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、光ファイバ素線とコート材との偏心寸法をインラインで測定し、これにより得られた測定結果を外部装置にフィードバックして、コート材の被覆厚を素線に対して均一とする装置が提案されている。すなわち、この装置においては、光ファイバテープ心線を一定速度で巻き取る際に、光ファイバテープ心線の一方の面に接触させた回転ドラムの回転速度と、光ファイバテープ心線の他方の面に接触させた回転ドラムの回転速度とを計測し、計測された各回転ドラムの回転速度と、各回転ドラムの半径と、光ファイバテープ心線の全体厚さとに基づいて、偏心寸法を演算するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−316329号公報
【特許文献2】特開平06−211546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、光ファイバ素線が間欠的に連結されて構成された光ファイバテープ心線は、張力をかけた状態で観察すると、光ファイバ素線同士が連結されていない分離部(切込みの入った箇所)でも、光ファイバ素線同士が接触した状態になっている。
【0007】
したがって、光ファイバ素線が間欠的に連結されて構成された光ファイバテープ心線をインラインで観察しても、分離部の長さ、分離部同士の間隔(周期)を測定することは困難である。
【0008】
特許文献1に記載された技術においては、光ファイバ素線同士の分離部があり、かつ、分離部を介して光ファイバ素線同士が接触している場合には、分離部の有無を判別することがきない。
【0009】
また、特許文献2に記載された技術は、コート材の偏心寸法を測定する技術であり、光ファイバ素線の間の分離部の有無を判別することはできない。
【0010】
光ファイバテープ心線を構成する光ファイバ素線同士の間に針状の治具を差し込み、光ファイバ素線間の隙間を広げて観察することも可能であるが、光ファイバ素線間の隙間を広げるために光ファイバ素線に過度の曲げや力を加えると、被覆削れや、断線、連結部(接着部)の分離等を招来する虞がある。
【0011】
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであって、複数本の光ファイバ素線を並列させて間欠的に連結した光ファイバテープ心線について、インラインで光ファイバテープ心線に張力がかかった状態であっても、被覆削れや、断線、連結部の分離等を招来することなく、連結部同士の間の分離部の長さ、分離部同士の間隔(周期)を測定することができる検査装置、製造装置及び検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の課題を解決し、前記目的を達成するため、本発明に係る光ファイバテープ心線の検査装置は、以下の構成を有するものである。
【0013】
〔構成1〕
複数本の光ファイバ素線が並列され間欠的に連結されてテープ化される光ファイバテープ心線をこの光ファイバテープ心線の製造工程中において検査する光ファイバテープ心線の検査装置であって、外周面に光ファイバテープ心線の幅以上の溝幅のガイド溝を有しこのガイド溝の底部に少なくとも一箇所の段差部を有し回転可能に支持され送り操作される光ファイバテープ心線をガイド溝によりガイドするガイドローラと、ガイドローラによりガイドされて送られる光ファイバテープ心線におけるエッジ部間の間隔を測定するエッジ間隔測定器、または、光ファイバテープ心線の画像を取得する手段及び取得画像中のエッジ本数を数えるエッジ本数測定器、あるいは、光ファイバテープ心線の表面の凹凸を測定する凹凸測定器とを備え、ガイド溝の段差部により、光ファイバテープ心線を構成する光ファイバ素線間をこれら光ファイバ素線間が連結されていない箇所において分離させ、エッジ間隔測定器、または、エッジ本数測定器、あるいは、凹凸測定器により、光ファイバ素線間が分離されていることを測定して、光ファイバ素線間が連結されていない箇所の長さ、または、周期を測定することを特徴とするものである。
【0014】
〔構成2〕
構成1を有する光ファイバテープ心線の検査装置において、光ファイバテープ心線の張力を調整する張力調整装置を備えたことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明に係る光ファイバテープ心線の製造装置は、以下の構成を有するものである。
【0016】
〔構成3〕
複数本の光ファイバ素線を並列させ間欠的に連結させてテープ化する光ファイバテープ心線の製造装置であって、複数本の光ファイバ素線に接着剤を塗布する塗布装置と、構成1、または、構成2を有する光ファイバテープ心線の検査装置と、光ファイバテープ心線の検査装置による測定結果に基づいて塗布装置を制御する制御装置とを備え、制御装置は、光ファイバテープ心線の検査装置による測定結果に基づいて塗布装置を制御することにより、光ファイバテープ心線における光ファイバ素線間が連結されていない箇所の長さ及び周期を所定の長さ及び周期とすることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明に係る光ファイバテープ心線の検査方法は、以下の構成を有するものである。
【0018】
〔構成4〕
複数本の光ファイバ素線が並列され間欠的に連結されてテープ化される光ファイバテープ心線をこの光ファイバテープ心線の製造工程中において検査する光ファイバテープ心線の検査方法であって、外周面に光ファイバテープ心線の幅以上の溝幅のガイド溝を設けこのガイド溝の底部に少なくとも一箇所の段差部を設け回転可能に支持したガイドローラを用いて送り操作される光ファイバテープ心線をガイド溝によりガイドし、ガイド溝の段差部により、光ファイバテープ心線を構成する光ファイバ素線間をこれら光ファイバ素線間が連結されていない箇所において分離させ、光ファイバテープ心線におけるエッジ部間の間隔を測定し、または、光ファイバテープ心線の画像を取得して取得画像中のエッジ本数を数え、あるいは、光ファイバテープ心線の表面の凹凸を測定して、光ファイバ素線間が分離されていることを測定して、光ファイバ素線間が連結されていない箇所の長さ、または、周期を測定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る光ファイバテープ心線の検査装置及び検査方法においては、ガイド溝の段差部により光ファイバテープ心線を構成する光ファイバ素線間をこれら光ファイバ素線間が連結されていない箇所において分離させ、エッジ間隔測定器、または、エッジ本数測定器、あるいは、凹凸測定器により、光ファイバ素線間が分離されていることを測定して、光ファイバ素線間が連結されていない箇所の長さ、または、周期を測定するので、インラインで光ファイバテープ心線に張力がかかった状態であっても、被覆削れや、断線、連結部の分離等を招来することなく、連結部同士の間の分離部の長さ、分離部同士の間隔(周期)を測定することができる。
【0020】
本発明に係る光ファイバテープ心線の製造装置においては、制御装置は、光ファイバテープ心線の検査装置による測定結果に基づいて塗布装置を制御することにより、光ファイバテープ心線における光ファイバ素線間が連結されていない箇所の長さ及び周期を所定の長さ及び周期とするので、被覆削れや、断線、連結部の分離等を招来することなく、連結部同士の間の分離部の長さ、分離部同士の間隔(周期)を所定の長さ及び周期とすることができる。
【0021】
すなわち、本発明は、複数本の光ファイバ素線を並列させて間欠的に連結した光ファイバテープ心線について、インラインで光ファイバテープ心線に張力がかかった状態であっても、被覆削れや、断線、連結部の分離等を招来することなく、連結部同士の間の分離部の長さ、分離部同士の間隔(周期)を測定することができる検査装置、製造装置及び検査方法を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る光ファイバテープ心線の検査装置が検査対象とする光ファイバテープ心線の構成を示す側面図である。
【図2】本発明に係る光ファイバテープ心線の検査装置を備えた本発明に係る光ファイバテープ心線の製造装置の構成を示す側面図である。
【図3】本発明に係る光ファイバテープ心線の検査装置のガイドローラの構成を示す断面図である。
【図4】エッジ本数測定器において得られる測定結果を示すグラフである。
【図5】実施例1においてエッジ間隔測定器により得られる測定結果を示すグラフである。
【図6】実施例2において検査対象とする光ファイバテープ心線の構成を示す側面図である。
【図7】実施例2における検査装置のガイドローラの構成を示す断面図である。
【図8】実施例2における検査装置のガイドローラ上の光ファイバテープ心線の状態を示す断面図である。
【図9】実施例2においてエッジ本数測定器により得られる測定結果を示すグラフである。
【図10】実施例2において、製造条件を変えた後にエッジ本数測定器により得られる測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は、本発明に係る光ファイバテープ心線の検査装置が検査対象とする光ファイバテープ心線の構成を示す側面図である。
【0025】
本発明に係る光ファイバテープ心線の検査装置が検査対象とする光ファイバテープ心線は、図1に示すように、複数本の光ファイバ素線1が並列され、これら光ファイバ素線1が接着剤により間欠的に連結されてテープ化された光ファイバテープ心線である。
【0026】
この光ファイバテープ心線を構成する光ファイバ素線1のそれぞれは、ガラス、または、石英からなる光ファイバがファイバ被覆によって被覆されて構成されている。そして、光ファイバテープ心線は、複数本の光ファイバ素線1が並列され、隣接する光ファイバ素線1間が、長さ方向について間欠的な位置(連結部)においてのみ接着剤により固着されて連結され、テープ化されて構成されている。
【0027】
この光ファイバテープ心線は、張力が掛かっているときには、図1中の(b)に示すように、連結部のみならず、光ファイバ素線1同士が連結されていない分離部においても、隣接する光ファイバ素線1同士が接触した状態となっている。そして、この光ファイバテープ心線は、張力が掛からない状態では、図1中の(a)に示すように、連結部のみにおいて隣接する光ファイバ素線1同士が接触し、分離部においては、隣接する光ファイバ素線1同士が離間した状態となる。
【0028】
本発明に係る光ファイバテープ心線の検査装置は、この光ファイバテープ心線をインライン(光ファイバテープ心線の製造工程中)において検査する検査装置である。この光ファイバテープ心線の検査装置は、本発明に係る光ファイバテープ心線の検査方法を実行して、光ファイバテープ心線の検査を行う。
【0029】
図2は、本発明に係る光ファイバテープ心線の検査装置を備えた本発明に係る光ファイバテープ心線の製造装置の構成を示す側面図である。
【0030】
この製造装置においては、図2に示すように、複数本の光ファイバ素線1は、まず、並列された状態で塗布装置2に送られる。この塗布装置2は、コーティングダイス3と、分離部形成部4とから構成されている。コーティングダイス3は、複数本の光ファイバ素線1に対して、紫外線硬化樹脂(接着剤)を塗布する。分離部形成部4は、各光ファイバ素線1の間の紫外線硬化樹脂を所定の周期で所定の長さに亘って分離させて、分離部を形成する。
【0031】
これら複数本の光ファイバ素線1は、次に、UV(紫外線)照射部5に送られる。UV照射部5では、各光ファイバ素線1に紫外線を照射し、光ファイバ素線1に塗布された紫外線硬化樹脂を硬化させる。
【0032】
紫外線硬化樹脂が硬化されることにより、各光ファイバ素線1は、紫外線硬化樹脂により、間欠的に、すなわち、長手方向の所定の間隔ごとの連結部において連結され、テープ化される。
【0033】
複数本の光ファイバ素線1がテープ化された光ファイバテープ心線1aは、線速制御部6及び張力調整装置(テンションレギュレータ)7を経て、検査装置である分離部測定部8に送られる。線速制御部6は、光ファイバテープ心線1aの引き取り速度(線速)を制御する。張力調整装置7は、送り操作される光ファイバテープ心線1aの張力を調整する。分離部測定部8は、ガイドローラ9と、測定器10とから構成されている。
【0034】
図3は、本発明に係る光ファイバテープ心線の検査装置のガイドローラの構成を示す断面図である。
【0035】
ガイドローラ9は、回転可能に支持されており、図3に示すように、外周面に光ファイバテープ心線1aの幅以上の溝幅のガイド溝9aを有している。このガイド溝9aの底部には、少なくとも一箇所の段差部9bが設けられている。この段差部9bの数は、1以上であって、検査対象となる光ファイバテープ心線1aを構成する光ファイバ素線1の本数より1だけ少ない数までの任意の数とすることができる。このガイドローラ9は、引き取られた光ファイバテープ心線1aをガイド溝9aによりガイドする。
【0036】
このガイドローラ9は、ガイド溝9aの段差部9bにより、図3中の(b)に示すように、光ファイバテープ心線1aを構成する光ファイバ素線1間を、これら光ファイバ素線1間が連結されていない分離部において分離させる。すなわち、段差部9b上に連結部が載っているときには、図3中の(a)に示すように、光ファイバテープ心線1aを構成する各光ファイバ素線1は、分離することなく、一体的な状態を維持する。そして、段差部9b上に分離部が載っているときには、図3中の(b)に示すように、光ファイバテープ心線1aを構成する各光ファイバ素線1は、段差部9bの高さに応じて分離する。
【0037】
測定器10は、エッジ間隔測定器、または、エッジ本数測定器、あるいは、凹凸測定器などである。エッジ間隔測定器は、ガイドローラ9によりガイドされて送られる光ファイバテープ心線1aにおけるエッジ部間の間隔を測定するものである。
【0038】
エッジ間隔測定器は、段差部9b上に連結部が載っているときには、図3中の(a)中のエッジ1からエッジ2までの距離、すなわち、光ファイバテープ心線1aの幅を検出する。そして、段差部9b上に分離部が載っているときには、図3中の(b)中のエッジ1からエッジ2までの距離、すなわち、光ファイバテープ心線1aのうちの一部の光ファイバ素線1,1(図3においては、2心の光ファイバ素線)の幅を検出する。
【0039】
エッジ本数測定器は、光ファイバテープ心線1aの画像を取得し、取得画像中のエッジ本数を数えるものである。エッジ本数測定器は、段差部9b上に連結部が載っているときには、図3中の(a)中のエッジ1及びエッジ2の本数、すなわち、エッジは2本であると検出する。そして、段差部9b上に分離部が載っているときには、図3中の(b)中のエッジ1乃至エッジ4までの本数、すなわち、エッジは4本であると検出する。
【0040】
凹凸測定器は、光ファイバテープ心線の表面の凹凸を測定するものである。凹凸測定器は、段差部9b上に連結部が載っているときには、図3中の(a)に示すように、光ファイバテープ心線1aの表面は平坦であることを検出する。そして、段差部9b上に分離部が載っているときには、図3中の(b)に示すように、光ファイバテープ心線1aの表面は平坦ではなく、凹凸があることを検出する。
【0041】
なお、測定器10の近傍には、適宜、照明装置11が設置される。また、測定器10は、光ファイバテープ心線1aの画像を取得する必要がある測定方法を実行する場合には、画像取得手段として、CCDカメラ装置等を備えている。
【0042】
そして、この製造装置においては、測定器10による測定結果は、制御装置となる制御部12に送られる。また、光ファイバテープ心線1aの線速の情報が、線速制御部6から制御部12に送られる。この制御部12は、エッジ間隔測定器、または、エッジ本数測定器、あるいは、凹凸測定器により、光ファイバ素線間が分離されていることが測定されると、この測定結果と光ファイバテープ心線1aの線速情報とに基づいて、光ファイバ素線1間が連結されていない分離部の長さ、または、分離部の周期を測定(算出)する。
【0043】
また、制御部12は、分離部測定部8における測定結果に基づいて、分離部形成部4、線速制御部6及び張力調整装置7を制御する。制御装置12は、分離部測定部8による光ファイバテープ心線1aの測定結果に基づいて塗布装置2の分離部形成部4を制御することにより、光ファイバテープ心線1aにおける分離部の長さ及び周期を所定の長さ及び周期とすることができる。
【0044】
また、制御部12は、分離部測定部8による測定結果に基づいて張力調整装置7を制御することにより、分離部における光ファイバ素線1が、段差部9bによって良好に分離されるように調整することができる。この検査装置においては、光ファイバテープ心線1aにある程度の張力が掛かった状態でも、段差部9bによって分離部の光ファイバ素線1同士を良好に分離させることができるため、光ファイバテープ心線1aの分離部をインラインにおいて測定することができる。
【0045】
なお、光ファイバテープ心線1aの張力は、光ファイバ素線4心あたり、300gf以下であることが望ましい。この検査装置においては、分離部測定部8における光ファイバテープ心線1aの張力を調節することができるように、張力調整装置7を経た光ファイバテープ心線1aを分離部測定部8に送るようにしている。張力の調整を行わなくとも、ライン中の光ファイバテープ心線1aの張力が、光ファイバ素線4心あたり300gf以下である場合には、張力調整装置7を設けないようにしてもよい。
【0046】
図4は、エッジ本数測定器において得られる測定結果を示すグラフである。
【0047】
測定器10がエッジ本数測定器である場合には、図4に示すように、光ファイバテープ心線1aの移動に応じてエッジ本数が変化する測定結果が得られる。この例では、エッジ本数が4本である区間と2本である区間とを合わせた区間が1周期である測定結果が得られている。
【0048】
ここで、光ファイバテープ心線1aの製造速度(線速)が120m/minで、1周期が平均0.15secであったとすると、連結部の周期(ピッチ)は0.3mであることがわかる。また、1周期中においてエッジ本数4本であった区間の割合から、1周期中の分離部の割合(長さ)も求めることができる。1周期中、エッジ本数が4本であった時間の割合が70%であったとすると、1周期中の分離部の割合(長さ)も70%であることがわかる。
【0049】
測定結果に基づいて、分離部形成部4を制御すれば、所定の周期及び長さの連結部を有する光ファイバテープ心線1aを製造することができる。例えば、測定された連結部の周期が所定の周期よりも長い場合には、周期を短くするため、制御部12が分離部形成部4の回転歯やシャッタの回転数を上げるように制御することにより、連結部の周期を短くすることができる。この場合には、光ファイバテープ心線1aの線速を調整しても、連結部の周期を調整することができる。
【0050】
同様にして、1周期中の分離部の割合(長さ)も制御することができる。分離部の割合が大きい場合には、分離部の割合を下げるため、制御部12が分離部形成部4の回転歯やシャッタが光ファイバ素線1,1間に差し込まれる時間割合を短くするように制御することにより、連結部の割合を下げることができる。
【0051】
エッジ本数が常に2本であったり、または、常に4本である場合には、2番目の光ファイバ素線(以下「光ファイバ素線#2」という。)と3番目の光ファイバ素線(以下「光ファイバ素線#3」という。)との間の分離部が正常に形成されていないことがわかる。このようなエラーが検知された場合には、光ファイバテープ心線1aの製造を止めることにより、不良屑を削減することができる。
【実施例1】
【0052】
図1に示すように、光ファイバ素線#2と光ファイバ素線#3との間に分離部がある4心の光ファイバテープ心線1aを製造しながら、分離部の測定を行った。
【0053】
使用した光ファイバ素線1の直径は、約250μmであり、光ファイバ素線#2、#3間の連結部の所定長さは、約100mmであり、光ファイバ素線#2、#3間の分離部の所定長さは、約200mmである。分離部の1周期の長さは、約300mmである。
【0054】
ガイドローラ9として、幅2.3mmのガイド溝9aを有するものを4個用いた。光ファイバテープ心線1aの進入側より、第1乃至第4のガイドローラとすると、これら第1乃至第4のガイドローラにおけるガイド溝9aの寸法は、以下の通りとした。
【0055】
第1のガイドローラ:幅2.3mm、深さ0.4mm
第2のガイドローラ:幅2.3mm、深さ0.4mm
第3のガイドローラ:幅2.3mmのうち、幅0.8mmは深さ0.4mm、幅1.5mmは深さ0.2mm
第4のガイドローラ:幅2.3mm、深さ0.4mm
つまり、第3のガイドローラのみが段差部9bを有している。
【0056】
測定器10としては、光ファイバテープ心線1aのエッジの本数と、各エッジ間の距離を測定する測定器を用いた。分離部測定部8における光ファイバテープ心線1aの張力は、250gf(4心)であった。
【0057】
光ファイバテープ心線1aの分離部が第3のガイドローラを通過するときには、4心の光ファイバ素線のうちの2心がガイド溝9aの深い側、他の2心がガイド溝9aの浅い側に乗ることにより、段差部9bの部分で、光ファイバ素線間に隙間が生ずる。
【0058】
このとき、測定器10においては、エッジが4本検知される。エッジ1とエッジ2との間の距離が2心の光ファイバ素線の幅で、エッジ3とエッジ4との間の距離が他の2心の光ファイバ素線の幅である。
【0059】
光ファイバテープ心線1aの連結部がガイドローラを通過するときには、この光ファイバテープ心線1aが段差部9bによって斜めに傾くことがあるが、光ファイバテープ心線1aは、破壊や分割等を起こすことなく、第3のガイドローラを通過する。
【0060】
このとき、測定器10においては、エッジが2本検知される。エッジ1とエッジ2との間の距離が4心の光ファイバ素線の幅である。なお、光ファイバテープ心線1aが傾いている場合には、エッジ1とエッジ2との間の距離は、正確には光ファイバテープ心線1aの幅に一致しない。
【0061】
図5は、この実施例においてエッジ間隔測定器により得られる測定結果を示すグラフである。
【0062】
この実施例における測定結果は、図5に示すように、エッジ1とエッジ2の間の距離が、2心の光ファイバ素線の幅(0.6mm)である区間と、4心の光ファイバ素線の幅(1.1mm)である区間とが、一定周期で繰り返されるものとなる。エッジ1とエッジ2の間の距離が2心の光ファイバ素線の幅である区間は、約0.03secであった。なお、エッジ1とエッジ2の間の距離が2心の光ファイバ素線の幅である区間では、エッジ3とエッジ4の間の距離も測定され、その距離は、2心の光ファイバ素線の幅(0.6mm)である。
【0063】
このとき、光ファイバテープ心線1aの線速は400m/minであり、測定結果の周期から、連結部の周期は、0.2mであることがわかった。
【0064】
なお、この実施例では、ガイドローラ9は、測定器10の前に2個、後に2個の計4個を設置しているが、ガイドローラ9の数は、4個に限らず、1個以上であればよい。また、第3のガイドローラ9のみが段差部9bを有しているが、測定器10の前後の1個以上のガイドローラ9が段差部9bを有していればよい。
【0065】
〔比較例1〕
前述した実施例と同様の装置を用いて、第1乃至第4の4個にガイドローラ9を、全て段差部9bを有さないものとした。ガイド溝9aの幅は2.3mmとし、深さは0.4mmとした。
【0066】
この場合には、分離部においても、光ファイバ素線1,1の間が分離されることがないため、エッジ1とエッジ2の間の距離は、常に4心の光ファイバ素線の幅(1.1mm)となった。
【0067】
〔比較例2〕
前述した実施例と同様の装置を用いて、ガイドローラ9の位置を、測定器10から前後に50cm離した位置とした。
【0068】
この場合には、段差部9bを有するガイドローラ9において分離部は開くが、このガイドローラ9と測定器10との間の距離が遠いため、線ぶれによるエラーや、開いた分離部が測定器10の周辺では閉じてしまうことにより測定できないエラーが増加した。
【0069】
〔比較例3〕
前述した実施例と同様の装置を用いて、分離部測定部8における光ファイバテープ心線1aの張力を、1kgf(4心)とした。
【0070】
この場合には、段差部9bを有するガイドローラ9において、分離部が充分に開かず、エッジを検出することが困難となり、測定エラーが増加した。
【実施例2】
【0071】
図6は、実施例2において検査対象とする光ファイバテープ心線の構成を示す側面図である。
【0072】
この実施例では、図6に示すように、光ファイバ素線#1と#2との間、光ファイバ素線#2と#3との間、及び、光ファイバ素線#3と#4との間のそれぞれに、周期的な連結部が交互に存在する4心の光ファイバテープ心線1aについて、分離部の測定を行った。
【0073】
この光ファイバテープ心線1aは、図6中のA断面において、光ファイバ素線#1と#2とが連結され、光ファイバ素線#3と#4とが連結されており、図6中のB断面において、光ファイバ素線#2と#3とが連結されており、A断面とB断面との間の位置においては、いずれの光ファイバ素線も連結されていない。つまり、この光ファイバテープ心線1aにおいては、光ファイバ素線#1、#2の連結部及び光ファイバ素線#3、#4の連結部と、光ファイバ素線#2、#3の連結部とが、交互に繰り返されている。
【0074】
図7は、実施例2における検査装置のガイドローラの構成を示す断面図である。
【0075】
この実施例においては、第3のガイドローラ9として、図7に示すように、ガイド溝9a内に、第1乃至第3の3個の段差部9b,9c,9dが形成されたものを用いた。第1の段差部9bは、光ファイバ素線#1、#2間を分離させるための段差部である。第2の段差部9cは、光ファイバ素線#2、#3間を分離させるための段差部である。第3の段差部9dは、光ファイバ素線#3、#4間を分離させるための段差部である。
【0076】
ガイド溝9の幅は2.3mm、深さは0.4mmである。ガイド溝9の深い部分の幅は、0.58mm、浅い部分の幅は、0.57mmである。
【0077】
第1、第2及び第4のガイドローラ9は、実施例1と同様のものを用いた。
【0078】
測定器10は、周期的に光ファイバテープ心線1aの側面写真を撮影する撮影部と、撮影した画像におけるエッジ及びエッジ本数を測定する測定部を備えたものを用いた。
【0079】
図8は、実施例2における検査装置のガイドローラ上の光ファイバテープ心線の状態を示す断面図である。
【0080】
測定器10の測定領域を光ファイバテープ心線1aのA断面部分が通過するときには、図8中の(a)に示すように、検出されるエッジの本数は、光ファイバ素線#1、#2の両側部のエッジ2本と、光ファイバ素線#3、#4の両側部のエッジ2本との計4本となる。
【0081】
測定器10の測定領域を光ファイバテープ心線1aのA断面とB断面との間の部分が通過するときには、図8中の(b)に示すように、検出されるエッジの本数は、光ファイバ素線#1の両側部のエッジ2本、光ファイバ素線#2の両側部のエッジ2本、光ファイバ素線#3の両側部のエッジ2本及び光ファイバ素線#4の両側部のエッジ2本の計8本となる。
【0082】
測定器10の測定領域を光ファイバテープ心線1aのB断面部分が通過するときには、図8中の(c)に示すように、検出されるエッジの本数は、光ファイバ素線#1の両側部のエッジ2本、光ファイバ素線#2、#3の両側部のエッジ2本及び光ファイバ素線#4の両側部のエッジ2本の計6本となる。
【0083】
図9は、実施例2においてエッジ本数測定器により得られる測定結果を示すグラフである。
【0084】
測定器10により得られる測定結果は、図9に示すように、エッジの本数が、4本、8本、6本、8本と変化する区間を1周期として変化するものとなる。
【0085】
光ファイバテープ心線の線速が200m/minで、1周期が0.03secであったので、連結部の周期は、0.1mであることがわかった。
【0086】
また。1周期中でエッジが4本測定された区間の長さ(時間)と、8本測定された区間の長さ(時間)と、6本測定された区間の長さ(時間)と、次に8本測定された区間の長さ(時間)との比率は、4:1:4:1であった。
【0087】
同じラインで条件を変更し、エッジが4本測定される領域(A断面部分)の割合を増やした光ファイバテープ心線1aの高速試作を実施した。作製したい光ファイバテープ心線の条件は、以下の通りである。
【0088】
製造速度(線速):400m/min
連結部の周期:0.1m
1周期中の各区間(エッジが4本、8本、6本、8本)の長さの比率
19:1:9:1
制御部12に作製したい光ファイバテープ心線の条件を入力すると、分離部を形成するための分離部形成部4のシャッタの回転数が2倍になり、かつ、光ファイバ素線#2、#3間へのシャッタの差込時間の割合が、4/10から19/30へ、光ファイバ素線#1、#2間及び光ファイバ素線#3、#4間へのシャッタ差込時間の割合が、4/10から9/30へ変更された。
【0089】
図10は、実施例2において、製造条件を変えた後にエッジ本数測定器により得られる測定結果を示すグラフである。
【0090】
測定器10により得られる測定結果は、図10に示すように、エッジの本数が、4本、8本、6本、8本と変化する区間を1周期として変化するものとなる。
【0091】
光ファイバテープ心線の線速が400m/minで、1周期が1.5msecであったので、連結部の周期は、0.1mであることがわかった。
【0092】
また。1周期中でエッジが4本測定された区間の長さ(時間)と、8本測定された区間の長さ(時間)と、6本測定された区間の長さ(時間)と、次に8本測定された区間の長さ(時間)との比率は、19:1:9:1であった。
【0093】
なお、本発明に係る光ファイバテープ心線の検査装置及び検査方法は、前述したような4心の光ファイバテープ心線に限定されず、2心、8心、あるいは、それ以外の心線数からなる光ファイバテープ心線に適用することが可能である。光ファイバテープ心線の心数や、分離部のある光ファイバ素線間の数に応じて、ガイドローラ9のガイド溝9aの幅と、段差部9bの数を変更すればよい。
【0094】
段差部9bの高さは、光ファイバテープ心線1aにおける光ファイバ素線1間の連結部の裂け易さに応じて調整することが望ましい。例えば、分離部を起点として連結部が裂け易い光ファイバテープ心線を検査する場合は、段差部9bの高さを低くすることが望ましい。この場合には、光ファイバテープ心線の張力を弱くして、分離部が容易に分離するようにすることが望ましい。
【0095】
本発明は、光ファイバテープ心線における分離部の長さを測定するものであるが、光ファイバテープ心線における不良、例えば、連結部に樹脂が塗布されず、光ファイバ素線がテープ化されていないことなどを検知する方法としても応用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、複数本の光ファイバ素線を並列させて間欠的に連結した光ファイバテープ心線の連結部についての検査装置、製造装置及び検査方法に適用される。
【符号の説明】
【0097】
1 光ファイバ素線
1a 光ファイバテープ心線
2 塗布装置
4 分離部形成部
7 張力調整装置
8 分離部測定部
9 ガイドローラ
9a ガイド溝
9b 段差部
10 測定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の光ファイバ素線が並列され間欠的に連結されてテープ化される光ファイバテープ心線を、この光ファイバテープ心線の製造工程中において検査する光ファイバテープ心線の検査装置であって、
外周面に前記光ファイバテープ心線の幅以上の溝幅のガイド溝を有し、このガイド溝の底部に少なくとも一箇所の段差部を有し、回転可能に支持され、送り操作される前記光ファイバテープ心線を前記ガイド溝によりガイドするガイドローラと、
前記ガイドローラによりガイドされて送られる前記光ファイバテープ心線におけるエッジ部間の間隔を測定するエッジ間隔測定器、または、前記光ファイバテープ心線の画像を取得する手段及び取得画像中のエッジ本数を数えるエッジ本数測定器、あるいは、前記光ファイバテープ心線の表面の凹凸を測定する凹凸測定器と
を備え、
前記ガイド溝の段差部により、前記光ファイバテープ心線を構成する光ファイバ素線間を、これら光ファイバ素線間が連結されていない箇所において分離させ、前記エッジ間隔測定器、または、前記エッジ本数測定器、あるいは、前記凹凸測定器により、前記光ファイバ素線間が分離されていることを測定して、前記光ファイバ素線間が連結されていない箇所の長さ、または、周期を測定する
ことを特徴とする光ファイバテープ心線の検査装置。
【請求項2】
前記光ファイバテープ心線の張力を調整する張力調整装置を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の光ファイバテープ心線の検査装置。
【請求項3】
複数本の光ファイバ素線を並列させ間欠的に連結させてテープ化する光ファイバテープ心線の製造装置であって、
前記複数本の光ファイバ素線に、接着剤を塗布する塗布装置と、
請求項1、または、請求項2記載の光ファイバテープ心線の検査装置と、
前記光ファイバテープ心線の検査装置による測定結果に基づいて前記塗布装置を制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、前記光ファイバテープ心線の検査装置による測定結果に基づいて前記塗布装置を制御することにより、前記光ファイバテープ心線における前記光ファイバ素線間が連結されていない箇所の長さ及び周期を所定の長さ及び周期とする
ことを特徴とする光ファイバテープ心線の製造装置。
【請求項4】
複数本の光ファイバ素線が並列され間欠的に連結されてテープ化される光ファイバテープ心線を、この光ファイバテープ心線の製造工程中において検査する光ファイバテープ心線の検査方法であって、
外周面に前記光ファイバテープ心線の幅以上の溝幅のガイド溝を設け、このガイド溝の底部に少なくとも一箇所の段差部を設け、回転可能に支持したガイドローラを用いて、送り操作される前記光ファイバテープ心線を前記ガイド溝によりガイドし、
前記ガイド溝の段差部により、前記光ファイバテープ心線を構成する光ファイバ素線間を、これら光ファイバ素線間が連結されていない箇所において分離させ、
前記光ファイバテープ心線におけるエッジ部間の間隔を測定し、または、前記光ファイバテープ心線の画像を取得して取得画像中のエッジ本数を数え、あるいは、前記光ファイバテープ心線の表面の凹凸を測定して、前記光ファイバ素線間が分離されていることを測定して、前記光ファイバ素線間が連結されていない箇所の長さ、または、周期を測定する
ことを特徴とする光ファイバテープ心線の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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