説明

光ファイバテープ心線の製造方法及び製造装置

【課題】複雑な製造装置を用いることなく、隣接する光ファイバ間に確実に連結樹脂を塗布し、安定して光ファイバテープ心線を製造できる技術を提供する。
【解決手段】複数本の光ファイバを平行に配列した状態で走行させながら、連結樹脂を塗布し、硬化させてテープ状に一体化する光ファイバテープ心線を製造する際に、複数本の光ファイバのうち少なくとも1組の隣り合う光ファイバ間を離間させた状態で保持する仕切片を有するとともに、仕切片に連結樹脂を吐出する吐出口が形成されたダイスを用いる。そして、仕切片で区画された光ファイバ走行路において複数本の光ファイバを走行させながら、仕切片により離間された部分に吐出口から連結樹脂を吐出させ、光ファイバを集線した後、連結樹脂を硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数心の光ファイバが同一面内において平行に配列され、隣接する光ファイバが長手方向に連結されてなる光ファイバテープ心線の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの普及に伴い、光ファイバを一般家庭に直接引き込んで高速通信サービスを実現するFTTH(Fiber To The Home)が急速に拡大している。一般に、FTTHに用いられる光ファイバケーブルには、複数本の光ファイバテープ心線(以下、テープ心線)が束ねられて収容されている。この光ファイバケーブルからFTTH利用者宅に光ファイバを引き落とす場合には、光ファイバケーブルを中間分岐して所望のテープ心線を取り出し、このテープ心線から単心線を分離して取り出す必要がある。
【0003】
そこで、容易に単心分離できるとともに光ファイバケーブルの細径化・高密度化を実現すべく、種々のテープ心線が提案されている。例えば、特許文献1、2では、隣接する光ファイバ同士を長手方向に間欠的に連結したテープ心線(以下、間欠連結型テープ心線)が開示されている。
間欠連結型テープ心線は、複数本のテープ心線を束ねるときに柔軟に変形(丸めたり、折りたたんだり)できるので、光ファイバケーブルの細径化・高密度化に有効である。また、間欠連結型テープ心線には非連結部分(単心線部分)が存在するので、専用の工具なしで比較的容易に単心分離することができる。一方で、複数心の光ファイバ素線が所定の順序で配列されているので、容易に一括融着接続することができる。
【0004】
また、特許文献3〜5では、間欠連結型テープ心線の製造に適した製造方法及び製造装置が開示されている。
特許文献3では、連結樹脂を精度よく定量供給することができるディスペンサを利用し、ディスペンサの吐出口(ノズル)を光ファイバ素線の隣接部位に配置し、複数本の光ファイバ素線を密接させた状態で所望の部位に連結樹脂を塗布して硬化させることにより、間欠連結型テープ心線を製造する。
【0005】
特許文献4では、複数本の光ファイバ素線を離間させた状態で連結樹脂を塗布するコーティングダイスを用い、複数本の光ファイバ素線をコーティングダイスに挿通させることで連結結樹脂を塗布する。そして、複数本の光ファイバ素線を離間させた状態のまま、シャッターで部分的にマスクして第1UVランプを照射することで、硬化部分と未硬化部分を形成する。その後、複数本の光ファイバ素線を集線した状態で第2UVランプを照射することで未硬化部分を硬化させ、間欠連結型テープ心線を製造する。すなわち、1回目のUV照射で硬化しなかった未硬化部分において隣接する光ファイバ素線が連結され、1回目のUV照射で硬化した硬化部分では隣接する光ファイバ素線が連結されない。
【0006】
特許文献5では、特許文献4に記載の技術と同様に、コーティングダイスを用い、複数本の光ファイバ素線をコーティングダイスに挿通させることで連結結樹脂を塗布する。このとき、コーティングダイスの出口面に配置された堰き止め部材を移動させることにより、隣り合う光ファイバ素線間には連結樹脂が間欠的に横架した状態で塗布される。そして、複数本の光ファイバ素線を離間させた状態のままUVランプを照射することで未硬化部分を硬化させ、間欠連結型テープ心線を製造する。すなわち、連結樹脂が横架している部分でだけ隣り合う光ファイバ素線が連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−232972号公報
【特許文献2】特許第4143651号公報
【特許文献3】特開2003−241041号公報
【特許文献4】特開2010−2743号公報
【特許文献5】特開2010−33010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3に記載の技術では、ディスペンサを利用して連結樹脂を塗布するため、連結箇所を狙って連結樹脂を塗布しなければならないが、光ファイバ素線の外径(例えば0.25mm)と同等の間隔でディスペンサの吐出口(ノズル)を配置することは困難である。また、隣接する光ファイバ素線の間、すなわち連結箇所に対応する数分のディスペンサが必要となるため、製造装置が複雑・大型になり設備費用も増大する。さらには、光ファイバ素線を密接させた状態で連結樹脂を塗布するため、片側の配列面でだけ光ファイバ素線が連結される(塗布面の反対側には連結樹脂が回り込みにくい)こととなり、連結部で所望の接着強度を保持することが困難となる。
【0009】
特許文献4に記載の技術では、第1UVランプの照射をシャッターでマスクするために、少なくとも光ファイバ素線間を1mm程度の間隔でずらし、1mm幅のシャッターを高精度で開閉する機構が必要となるため、製造装置が複雑になり設備費用も増大する。さらには、光ファイバ素線の数が増加した場合、シャッター幅を広げるとともにフローティングダイスの出口面から集線ローラまでの距離を長くする必要性が生じるため、製造装置がさらに複雑・大型化してしまう。また、コーティングダイスの出口面から集線用ロールまでは光ファイバ素線を抑えるものがないため、光ファイバ素線の線ブレが生じてしまい、所望の連結態様を安定して実現できない虞がある。
【0010】
特許文献5に記載の技術では、隣り合う光ファイバ素線間を堰き止め部材で遮り、これらの光ファイバ素線に塗布された連結樹脂を掻き取ることにより、連結樹脂が横架していない部分を形成するため、掻き取った連結樹脂を除去する洗浄装置が必要となる。したがって、製造装置が複雑・大型化してしまい、設備費用も増大する。また、掻き取った連結樹脂がフローティングダイスの出口面や堰き止め部材に付着して硬化すると、所望の連結態様を実現できなくなるため、頻繁にメンテナンス作業が必要となる。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、複雑な製造装置を用いることなく、隣接する光ファイバ素線間に確実に連結樹脂を塗布し、安定して光ファイバテープ心線を製造できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、複数本の光ファイバを平行に配列した状態で走行させながら、連結樹脂を塗布し、硬化させてテープ状に一体化する光ファイバテープ心線の製造方法であって、
前記複数本の光ファイバ線のうち少なくとも1組の隣り合う光ファイバ間を離間させた状態で保持する仕切片を有するとともに、前記仕切片に前記連結樹脂を吐出する吐出口が形成されたダイスを用い、
このダイスの前記仕切片で区画された光ファイバ走行路において前記複数本の光ファイバを走行させながら、前記仕切片により離間された部分に前記吐出口から前記連結樹脂を吐出させ、
前記複数本の光ファイバを集線した後、前記連結樹脂を硬化させることを特徴とする。
ここで、光ファイバには、裸光ファイバに1次被覆を施した光ファイバ素線、光ファイ
バ素線に2次被覆を施した光ファイバ心線、光ファイバ素線又は光ファイバ心線を連結してテープ状に一体化したテープ心線が含まれる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光ファイバテープ心線の製造方法において、前記複数本の光ファイバに所定の張力が付加されるように制御することにより前記平行に配列した状態を保持することを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光ファイバテープ心線の製造方法において、前記仕切片の形状を変更することにより前記連結樹脂の塗布状態を変化させることを特徴とする。
ここで、塗布状態とは、連結樹脂の塗布長、塗布幅、塗布位置、塗布深さ(裏面側への回り込みを含む)を意味する。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れか一項に記載の光ファイバテープ心線の製造方法において、前記連結樹脂を長手方向に間欠的に塗布することを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の光ファイバテープ心線の製造方法において、前記光ファイバの走行速度に応じて前記連結樹脂の吐出量及び吐出タイミングを制御することを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の光ファイバテープ心線の製造方法において、前記仕切片を複数有するダイスを用い、
前記複数の仕切片に形成されたそれぞれの吐出口から前記連結樹脂を同じ吐出タイミングで吐出させることを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項4又は5に記載の光ファイバテープ心線の製造方法において、前記仕切片を複数有するダイスを用い、
前記複数の仕切片に形成されたそれぞれの吐出口から前記連結樹脂を異なる吐出タイミングで吐出させることを特徴とする。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項4又は5に記載の光ファイバテープ心線の製造方法において、前記仕切片を1又は複数有するダイスを前記光ファイバの走行方向に沿って複数配置し、
前記複数のダイスに形成された吐出口から前記連結樹脂を同じ吐出タイミングで吐出させることを特徴とする。
【0020】
請求項9に記載の発明は、請求項4又は5に記載の光ファイバテープ心線の製造方法において、前記仕切片を1又は複数有するダイスを前記光ファイバの走行方向に沿って複数配置し、
前記複数のダイスに形成された吐出口から前記連結樹脂を異なる吐出タイミングで吐出させることを特徴とする。
【0021】
請求項10に記載の発明は、請求項8又は9に記載の光ファイバテープ心線の製造方法において、前記複数のダイスの配置間隔を変更することにより幅方向に隣り合う前記連結樹脂の塗布間隔を変化させることを特徴とする。
【0022】
請求項11に記載の発明は、請求項1から3の何れか一項に記載の光ファイバテープ心線の製造方法において、前記連結樹脂を長手方向に連続的に塗布することを特徴とする。
【0023】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の光ファイバテープ心線の製造方法にお
いて、前記光ファイバの走行速度に応じて前記連結樹脂の吐出量を制御することを特徴とする。
【0024】
請求項13に記載の発明は、請求項1から12の何れか一項に記載の光ファイバテープ心線の製造方法において、前記連結樹脂として、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、又は熱硬化型樹脂を用いることを特徴とする。
【0025】
請求項14に記載の発明は、複数本の光ファイバを平行に配列した状態で走行させながら、連結樹脂を塗布する塗布装置と、
前記連結樹脂を硬化させる硬化装置と、を備え、前記複数本の光ファイバをテープ状に一体化する光ファイバテープ心線の製造装置において、
前記塗布装置が、前記複数本の光ファイバのうち少なくとも1組の隣り合う光ファイバ間を離間させた状態で保持する仕切片を有するとともに、前記仕切片に前記連結樹脂を吐出する吐出口が形成されたダイスと、
前記ダイスの前記仕切片で区画された光ファイバ走行路において走行している前記複数本の光ファイバに対して、前記仕切片により離間された部分に前記吐出口から前記連結樹脂を吐出させる樹脂供給制御部と、で構成されていることを特徴とする。
【0026】
請求項15に記載の発明は、請求項14に記載の光ファイバテープ心線の製造装置において、前記複数本の光ファイバが前記平行に配列した状態で保持されるように、前記複数本の光ファイバに付加される張力を調整する張力調整装置を備えることを特徴とする。
【0027】
請求項16に記載の発明は、請求項14又は15に記載の光ファイバテープ心線の製造装置において、前記樹脂供給制御部が、前記光ファイバの走行速度に応じて前記連結樹脂の吐出量及び吐出タイミングを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ダイスに形成された吐出口から連結樹脂を吐出するので、隣り合う光ファイバ素線間に確実に連結樹脂が塗布される。したがって、複雑な製造装置を用いることなく、隣接する光ファイバ素線間に確実に連結樹脂を塗布し、安定して光ファイバテープ心線を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施形態に係る光ファイバテープ心線の製造装置の一例を示す概略図である。
【図2】第1実施形態のダイスの概略を示す斜視図である。
【図3】第1実施形態のダイスの長手方向中央における断面図である。
【図4】第1実施形態のダイスを用いたときの連結樹脂の塗布状態の一例を示す断面図である。
【図5】第1実施形態のテープ心線製造装置で製造しうるテープ心線の連結パターンの一例を示す図である。
【図6】第1実施形態のテープ心線製造装置で製造しうるテープ心線の連結パターンの他の一例を示す図である。
【図7】第2実施形態の塗布装置を示す図である。
【図8】第2実施形態の一方のダイス(前段)の概略を示す斜視図である。
【図9】第2実施形態の一方のダイスの長手方向中央における断面図である。
【図10】第2実施形態の他方のダイス(後段)の概略を示す斜視図である。
【図11】第2実施形態の他方のダイスの長手方向中央における断面図である。
【図12】第2実施形態の一方のダイスを用いたときの連結樹脂の塗布状態の一例を示す断面図である。
【図13】第2実施形態の他方のダイスを用いたときの連結樹脂の塗布状態の一例を示す断面図である。
【図14】第2実施形態のテープ心線製造装置で製造しうるテープ心線の連結パターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1は、光ファイバテープ心線の製造装置(以下、テープ心線製造装置)の概略構成を示す図である。本実施形態では、4本の光ファイバ素線をテープ状に一体化して光ファイバテープ心線を製造する場合について説明する。
【0031】
図1に示すように、テープ心線製造装置1は、供給ドラム11、塗布装置12、硬化装置13、張力検出装置14、引取装置15、及び巻取ドラム16を備えて構成されている。
テープ心線製造装置1では、供給ドラム11から4本の光ファイバ素線10a〜10d(区別しない場合は光ファイバ素線10と表記する)が個別に繰り出される。供給ドラム11における光ファイバ素線10の繰り出し速度を制御することにより、光ファイバ素線に所定の張力が付加されるようになっている。光ファイバ素線10は、例えば外径0.125mmの裸光ファイバの外周に、一次被覆を施して外径0.25mmとしたものである。
【0032】
塗布装置12は、光ファイバ素線10を離間させた状態で走行させるダイス20と、ダイス20に形成された吐出口から連結樹脂を吐出させる際の吐出量・吐出タイミングを制御する樹脂供給制御部21と、で構成されている。塗布装置12において、供給ドラム11から繰り出された光ファイバ素線10は、ダイス20に挿通されて離間した状態で走行し、連結樹脂を塗布される。
樹脂供給制御部21は、連結樹脂の吐出量(吐出速度×吐出時間)を精度良く制御可能に構成されている。樹脂供給制御部21により連結樹脂の吐出量を制御する形態としては、エアータイプ、スクリュータイプ、ポンプタイプ、チューブタイプ、メカニカルタイプ等、種々の方式を採用することができる。また、連結樹脂には、例えば紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂が用いられる。
【0033】
塗布装置12により連結樹脂を塗布された光ファイバ素線10は並列に密接した状態で硬化装置13を通過する。硬化装置13において、光ファイバ素線10に塗布された連結樹脂は、紫外線若しくは電子線が照射され、又は冷却されることにより、硬化する。この工程により光ファイバ素線10が連結され、テープ心線100となる。
【0034】
張力検出装置14は、テープ心線100の張力を計測するセンサである。この張力検出装置14による計測結果に基づいて、例えば供給ドラム11における光ファイバ素線10の繰り出し速度を制御することにより、光ファイバ素線10には所定の張力が付加される。これにより、光ファイバ素線10を安定した状態(線ブレしない状態)で走行させることができるとともに、光ファイバ素線10が必要以上の張力により損傷するのを効果的に防止できるので、製造上の信頼性が確保される。
【0035】
引取装置(キャプスタンローラ)15は、制御装置(図示略)により回転速度が制御される。テープ心線100の走行速度(光ファイバ素線10の走行速度)は、この引取装置15の回転速度によって調整されることとなる。また、引取装置15の回転速度は、テープ心線100の走行速度を示す信号(走行速度信号)として、塗布装置12の樹脂供給制御部に入力される。
テープ心線100は、引取装置(キャプスタンローラ)15により所定の線速で引き取
られ、巻取ドラム16に巻き取られる。
【0036】
このように、テープ心線製造装置1においては、4本の光ファイバ素線10a〜10dを平行に配列した状態で走行させながら、塗布装置12で連結樹脂を塗布し、硬化装置13で連結樹脂を硬化させることにより、光ファイバ素線10がテープ状に一体化され、テープ心線100が製造される。
【0037】
第1実施形態では、塗布装置12において1個のダイス20を用いて、連結樹脂を塗布する。図2は第1実施形態に係るダイス20の概略を示す斜視図であり、図3はダイス20の長手方向中央における断面図である。
図2、3に示すように、ダイス20には、4本の光ファイバ素線10a〜10dを1本ずつに分離して走行させるための凹部201が長手方向に沿って平行に形成されている。凹部201の形状は、1本の光ファイバ素線10が内面に当接しながら走行しうるように、光ファイバ素線10と同じ又はわずかに大きい曲率半径の円弧状となっている。また、光ファイバ素線10との摩擦抵抗が小さくなるように、凹部201の内面には研磨加工が施されている。
【0038】
隣り合う凹部201、201間には、走行させる光ファイバ素線10を所定の間隔で離間させるために、仕切片202が設けられている。ダイス20では、3つの仕切片202により、隣り合う光ファイバ素線10a、10b、光ファイバ素線10b、10c、光ファイバ素線10c、10dがそれぞれ離間された状態とされる。
【0039】
それぞれの仕切片202の長手方向の略中央には、光ファイバ素線10に連結樹脂を吐出するための吐出口203が形成されている。吐出口203には、連結樹脂を供給する樹脂貯留タンク(図示略)が接続されており、樹脂供給制御部21により連結樹脂を吐出する際の吐出量・吐出タイミングが制御される(吐出制御)。例えば、塗布装置12にエアータイプのディスペンサを使用する場合、樹脂供給制御部21は圧力を制御することにより吐出量・吐出タイミングを制御する。
ここでは、吐出口203の口径を仕切片202の幅と同じにしているが、吐出口203の口径を仕切片202の幅より大きくしてもよい。
【0040】
なお、吐出口203における吐出制御を同一系統の樹脂供給制御部21で行うようにしてもよいし、吐出口203の一部における吐出制御を別系統の樹脂供給制御部21で行うようにしてもよい。装置構成を簡易化するためには、吐出口203における吐出制御を同一系統の樹脂供給制御部21で行うのが望ましい。また、同一系統の樹脂供給制御部21で吐出制御する場合、吐出口203に接続される樹脂貯留タンクを共用することができる。
【0041】
このように、第1実施形態のダイス20は、4本の光ファイバ素線10a〜10dを離間させた状態で保持する仕切片202を有するとともに、仕切片202に連結樹脂を吐出する吐出口203が形成されている。
【0042】
ここで、仕切片202の高さh及び幅wは、所望する連結樹脂の塗布状態に応じて適宜設定される。言い換えると、仕切片202の高さh及び幅w(すなわち仕切片202の形状)を変更することにより、連結樹脂の塗布状態を変化させることができる。塗布状態とは、塗布された連結樹脂表面の幅(塗布幅)、連結樹脂表面の位置(光ファイバの配列面からの距離、塗布位置)、連結樹脂の深さ(連結樹脂表面から下面までの距離、塗布深さ)及び連結樹脂の長さ(塗布長)である。
例えば、図2、3において、仕切片の高さhを低くし、仕切片202の幅wを広くすることにより、連結樹脂表面の位置を光ファイバ配列面に近づけるとともに、連結樹脂の塗
布幅を広くすることができる。
【0043】
また、仕切片202の高さh及び幅wは、光ファイバ素線10が確実に離間された状態で走行しうる程度、すなわち線ブレなどにより光ファイバ素線10が凹部201から脱離して、隣り合う光ファイバ素線10に接触しないように設定される。また、隣り合う光ファイバ素線10の離間距離を大きくしすぎると、吐出口203から吐出された連結樹脂が光ファイバ素線10間に塗布されなくなる虞があるので、この点も考慮して仕切片202の高さh及び幅wは設定される。
また、ダイス20の両壁204の高さは、両側の凹部201、201を走行する光ファイバ素線10a、10dがダイス20から脱離するのを防止しうる程度に設定される。
【0044】
塗布装置12では、このようなダイス20が、上方から光ファイバ素線10に押し付けられるように、浮遊可能に固定されている。光ファイバ素線10は、ダイス20に接触しながら凹部201に沿って走行することとなる。
【0045】
図4は、ダイス20を用いたときの連結樹脂の塗布状態の一例を示す断面図である。図4では、連結樹脂の表面を平坦に表しているが、樹脂表面がくぼみ形状となることもある。
ダイス20の吐出口203から連結樹脂Rを吐出させると、図4(a)に示すように、仕切片202の形状に応じて隣接する光ファイバ素線10の間に連結樹脂Rが塗布される。なお、連結樹脂Rの塗布状態(塗布幅、塗布位置、塗布深さ及び塗布長)は、ダイス20の仕切片202の形状に加えて、吐出口203からの吐出量と光ファイバ素線10の走行速度によって変化する。
【0046】
そして、光ファイバ素線10が並列に集線されることにより、図4(b)に示すように、連結樹脂Rが圧縮されて光ファイバ素線10の配列面の両側にほぼ均等に回りこむ。また、図示を省略するが、連結樹脂Rの塗布状態によっては、光ファイバ素線10を集線したときの塗布状態が配列面の表側と裏側とで異なる場合もある。連結部の連結強度を高める場合には、図4(b)に示すように連結樹脂Rを配列面の裏側まで回り込んだ状態にすることが望ましい。
この状態で、硬化装置13により連結樹脂Rが硬化され、光ファイバ素線10はテープ状に一体化される。
【0047】
このように、第1実施形態では、仕切片202で区画された光ファイバ走行路(凹部)201において4本の光ファイバ素線10a〜10dを走行させながら、仕切片202により離間された部分(光ファイバ素線10a、10bの間、光ファイバ素線10b、10cの間、光ファイバ素線10c、10dの間)に吐出口203から連結樹脂を吐出させ、その後、硬化装置13で連結樹脂を硬化させる。
【0048】
第1実施形態に係るテープ心線製造装置1では、ダイス20に形成された吐出口203から連結樹脂Rを吐出するので、隣り合う光ファイバ素線10a、10bの間、光ファイバ素線10b、10cの間、光ファイバ素線10c、10dの間に確実に連結樹脂Rが塗布される。したがって、複雑な製造装置を用いることなく、隣接する光ファイバ素線10間に確実に連結樹脂Rを塗布し、安定してテープ心線100を製造できる。
また、連結樹脂Rを光ファイバ素線10の配列面の両側にほぼ均等に回り込ませた状態で硬化させることができるので、光ファイバ素線10間を強固に接着することができる。
【0049】
第1実施形態のテープ心線製造装置1を用いることで、図5に示すように様々な連結パターンのテープ心線100を製造することができる。
例えば、ダイス20の吐出口203から連結樹脂を連続して吐出させることにより、隣
接する光ファイバ素線10間が連結樹脂R1〜R3で長手方向に一様に連結されたテープ心線100を製造することができる(図5(a)参照)。
この場合、光ファイバ素線10の走行速度に応じて連結樹脂の吐出量を制御する。具体的には、引取装置15から樹脂供給制御部21に入力される走行速度信号に応じて、樹脂供給制御部21が連結樹脂の吐出量及び吐出タイミングを制御する。これにより、光ファイバ素線10の走行速度の変化に追従して、所望の塗布状態(塗布幅)で連結樹脂を塗布することができる。
【0050】
また例えば、ダイス20の吐出口203から連結樹脂を断続的に所定のタイミングで吐出させることにより、隣接する光ファイバ素線10間が連結樹脂R1〜R3で長手方向に間欠的に連結されたテープ心線100を製造することができる(間欠連結型テープ心線、図5(b)〜(e)参照)。
この場合、光ファイバ素線10の走行速度に応じて連結樹脂の吐出量及び吐出タイミングを制御する。これにより、光ファイバ素線10の走行速度の変化に追従して、所望の塗布状態(塗布幅、塗布位置、塗布深さ、塗布長及び塗布間隔)で連結樹脂を塗布することができる。
なお、複数系統の樹脂供給制御部21によって塗布制御が行われる場合、吐出タイミングを制御するためのインターバル信号を同期させるのが望ましい。
【0051】
図5(b)に示す連結パターンでは、光ファイバ素線10a、10bを連結する連結樹脂R1、光ファイバ素線10b、10cを連結する連結樹脂R2、光ファイバ素線10c、10dを連結する連結樹脂R3が、同じ塗布長、塗布幅で、幅方向で一致して塗布されている。このような連結パターンは、例えば、3つの吐出口203から同じ吐出タイミングで連結樹脂を吐出させることで実現される。
3つの吐出口203における吐出制御が同一系統の樹脂供給制御部21によって行われるようにすれば、図5(b)に示す連結パターンが確実かつ容易に形成される。
【0052】
図5(c)に示す連結パターンでは、両側の連結樹脂R1、R3が、同じ塗布長、塗布幅で、幅方向で一致して塗布されている。また、中央の連結樹脂R2は、両側の連結樹脂R1、R3と同じ塗布長、塗布幅であるが、連結樹脂R1、R3と幅方向に重ならない位置に塗布されている。
このような連結パターンは、例えば、両側の吐出口203における吐出制御が同一系統の樹脂供給制御部21で行われ、中央の吐出口203における吐出制御が別系統の樹脂供給制御部21で行われるようにし、それぞれの樹脂供給制御部21で吐出タイミングをずらすことで実現される。
【0053】
図5(d)に示す連結パターンでは、両側の連結樹脂R1、R3が、同じ塗布長、塗布幅で、幅方向で一致して塗布されている。また、中央の連結樹脂R2は、両側の連結樹脂R1、R3に比較して塗布長が短く(塗布幅は同じ)、連結樹脂R1、R3と幅方向に重ならない位置に塗布されている。
このような連結パターンは、例えば、両側の吐出口203における吐出制御が同一系統の樹脂供給制御部21で行われ、中央の吐出口203における吐出制御が別系統の樹脂供給制御部21で行われるようにし、それぞれの樹脂供給制御部21で吐出タイミングをずらすとともに、吐出量(吐出時間)を異ならせることで実現される。
【0054】
図5(e)に示す連結パターンでは、両側の連結樹脂R1、R3が、同じ塗布長、塗布幅で、幅方向で一致して塗布されている。また、中央の連結樹脂R2は、両側の連結樹脂R1、R3に比較して塗布長が短く(塗布幅は同じ)、連結樹脂R1、R3と幅方向に重なる位置に塗布されている。
このような連結パターンは、例えば、両側の吐出口203における吐出制御が同一系統
の樹脂供給制御部21で行われ、中央の吐出口203における吐出制御が別系統の樹脂供給制御部21で行われるようにし、それぞれの樹脂供給制御部21で吐出タイミングをずらすとともに、吐出量(吐出時間)を異ならせることで実現される。
【0055】
このように、それぞれの吐出口203における連結樹脂の吐出タイミング又は吐出量を制御することにより、様々な連結パターンの間欠連結型テープ心線を容易に製造することができる。
なお、図5で示す連結パターンは、第1実施形態のテープ心線製造装置1で実現しうる連結パターンの一例であり、連結樹脂の塗布量及び塗布タイミングを適宜設定することで、他の連結パターンを実現できることは言うまでもない。例えば、3つの吐出口203における吐出制御が別系統の樹脂供給制御部21で行われるようにすれば、それぞれの樹脂供給制御部21で吐出タイミングをずらすとともに、吐出量(吐出時間)を異ならせることができる。
したがって、連結樹脂R1、R2、R3の塗布長、塗布幅、塗布ピッチ、他の連結樹脂との相対的な位置関係を容易に制御することができる。具体的には、図6(a)に示すように、光ファイバ素線10a、10bを連結する連結樹脂R1、光ファイバ素線10b、10cを連結する連結樹脂R2、光ファイバ素線10c、10dを連結する連結樹脂R3を、長手方向にずらして塗布することができる。また、図6(b)に示すように、両側の連結樹脂R1、R3の塗布ピッチがP1、中央の連結樹脂R2の塗布ピッチがP2となるように、異なる塗布ピッチで塗布することができる。
【0056】
[第2実施形態]
第2実施形態に係るテープ心線製造装置の基本的な構成は、第1実施形態のテープ心線製造装置1と同様であるので詳細な説明を省略する。
第2実施形態では、図7に示すように、塗布装置12において2個のダイス30、40を用いて、連結樹脂を塗布する。2個のダイス30、40における吐出制御を同一系統の樹脂供給制御部21で行うようにしてもよいし、ダイス30、40における吐出制御を別系統の樹脂供給制御部21で行うようにしてもよい。
具体的には、前段に配置されるダイス30により光ファイバ素線10b、10c間に連結樹脂を塗布し、後段に配置されるダイス40により光ファイバ素線10a、10b間及び光ファイバ素線10c、10d間に連結樹脂を塗布する。なお、ダイス40を前段に配置し、ダイス30を後段に配置しても構わない。
【0057】
図8は第2実施形態に係る一方のダイス30の概略を示す斜視図であり、図9はダイス30の長手方向中央における断面図である。
図8、9に示すように、ダイス30には、4本の光ファイバ素線10a〜10dを2本ずつに分離して走行させるための凹部301が長手方向に沿って平行に形成されている。凹部301の形状は、2本の光ファイバ素線10が内面に当接しながら走行しうるように、光ファイバ素線10と同じ又はわずかに大きい半径の2つの円を直線で繋いだ長円状の一部となっている。また、光ファイバ素線10との摩擦抵抗が小さくなるように、凹部301の内面には研磨加工が施されている。
【0058】
隣り合う凹部301、301間には、走行させる光ファイバ素線10を所定の間隔で離間させるために、仕切片302が設けられている。ダイス30では、1つの仕切片302により、隣り合う光ファイバ素線10b、10cが離間された状態となる。
【0059】
仕切片302の長手方向の略中央には、光ファイバ素線10に連結樹脂を吐出するための吐出口303が形成されている。吐出口303には、連結樹脂を供給する樹脂貯留タンク(図示略)が接続されており、樹脂供給制御部21により連結樹脂を吐出する際の吐出量・吐出タイミングが制御される(吐出制御)。
【0060】
このように、第2実施形態の一方のダイス30は、4本の光ファイバ素線10a〜10dのうち隣り合う光ファイバ素線10b、10cを離間させた状態で保持する仕切片302を有するとともに、仕切片302に連結樹脂を吐出する吐出口303が形成されている。
【0061】
図10は第2実施形態に係る他方のダイス40の概略を示す斜視図であり、図11はダイス40の長手方向中央における断面図である。
図10、11に示すように、ダイス40には、4本の光ファイバ素線10a〜10dを1本、2本、1本に分離して走行させるための凹部401A、401Bが長手方向に沿って平行に形成されている。両側の凹部401Aの形状は、1本の光ファイバ素線10が内面に当接しながら走行しうるように、光ファイバ素線10と同じ又はわずかに大きい曲率半径の円弧状となっている。また、中央の凹部401Bの形状は、2本の光ファイバ素線10が内面に当接しながら走行しうるように、光ファイバ素線10と同じ又はわずかに大きい半径の2つの円を直線で繋いだ長円状の一部となっている。また、光ファイバ素線10との摩擦抵抗が小さくなるように、凹部401A、401Bの内面には研磨加工が施されている。
【0062】
隣り合う凹部401A、401B間には、走行させる光ファイバ素線10を所定の間隔で離間させるために、仕切片402が設けられている。ダイス40では、2つの仕切片402により、隣り合う光ファイバ素線10a、10b、光ファイバ素線10c、10dが離間された状態となる。
【0063】
それぞれの仕切片402の長手方向の略中央には、光ファイバ素線10に連結樹脂を吐出するための吐出口403が形成されている。吐出口403には、連結樹脂を供給する樹脂貯留タンク(図示略)が接続されており、樹脂供給制御部21により連結樹脂を吐出する際の吐出量・吐出タイミングが制御される(吐出制御)。
【0064】
このように、第2実施形態の他方のダイス40は、4本の光ファイバ素線10a〜10dのうち隣り合う光ファイバ素線10a、10b、光ファイバ素線10c、10dを離間させた状態で保持する仕切片402を有するとともに、仕切片402に連結樹脂を吐出する吐出口403が形成されている。
【0065】
なお、ダイス30、40における各寸法は、第1実施形態のダイス20で説明したように適宜設定される。
【0066】
塗布装置12では、ダイス30、40が光ファイバ素線10の走行方向に沿って配置され(前段:ダイス30、後段:ダイス40)、上方から光ファイバ素線10に押し付けられるように、浮遊可能に固定されている。光ファイバ素線10は、ダイス30に接触しながら凹部301に沿って走行し、またダイス40に接触しながら凹部401A、401Bに沿って走行することとなる。
【0067】
図12は、ダイス30を用いたときの連結樹脂の塗布状態の一例を示す断面図である。図12では、連結樹脂の表面を平坦に表しているが、樹脂表面がくぼみ形状となることもある。
ダイス30の吐出口303から連結樹脂Rを吐出させると、図12(a)に示すように、仕切片302の形状に応じて隣接する光ファイバ素線10b、10cの間に連結樹脂Rが塗布される。なお、連結樹脂Rの塗布状態(塗布幅、塗布位置、塗布深さ及び塗布長)は、ダイス30の仕切片302の形状に加えて、吐出口303からの吐出量と光ファイバ素線10の走行速度によって変化する。
【0068】
そして、光ファイバ素線10b、10cが並列に集線した状態でダイス40に挿通されると、図12(b)に示すように、連結樹脂Rが圧縮されて光ファイバ素線10の配列面の両側にほぼ均等に回りこむ。また、図示を省略するが、連結樹脂Rの塗布状態によっては、光ファイバ素線10を集線したときの塗布状態が配列面の表側と裏側とで異なる場合もある。連結部の連結強度を高める場合には、図12(b)に示すように連結樹脂Rを配列面の裏側まで回り込んだ状態にすることが望ましい。
なお、連結樹脂Rが塗布された部分は、ダイス40の凹部401B(仕切片402のない部分)を走行するため、ダイス40を挿通するときに影響を受けることはなく、集線後の塗布状態は保持される。
【0069】
図13は、ダイス40を用いたときの連結樹脂の塗布状態の一例を示す断面図である。図13では、連結樹脂の表面を平坦に表しているが、樹脂表面がくぼみ形状となることもある。
ダイス40の吐出口403から連結樹脂Rを吐出させると、図13(a)に示すように、仕切片402の形状に応じて隣接する光ファイバ素線10a、10b間及び光ファイバ素線10c、10d間に連結樹脂Rが塗布される。なお、連結樹脂Rの塗布状態(塗布幅、塗布位置、塗布深さ及び塗布長)は、ダイス40の仕切片402の形状に加えて、吐出口403からの吐出量と光ファイバ素線10の走行速度によって変化する。
【0070】
そして、光ファイバ素線10が並列に集線されることにより、図13(b)に示すように、連結樹脂Rが圧縮されて光ファイバ素線10の配列面の両側にほぼ均等に回りこむ。また、図示を省略するが、連結樹脂Rの塗布状態によっては、光ファイバ素線10を集線したときの塗布状態が配列面の表側と裏側とで異なる場合もある。連結部の連結強度を高める場合には、図13(b)に示すように連結樹脂Rを配列面の裏側まで回り込んだ状態にすることが望ましい。
【0071】
このように、第2実施形態では、ダイス30により、仕切片302で区画された光ファイバ走行路(凹部)301において4本の光ファイバ素線10a〜10dを走行させながら、仕切片302により離間された部分(光ファイバ素線10b、10cの間)に吐出口303から連結樹脂を吐出させる。
その後、ダイス40により、仕切片402で区画された光ファイバ走行路(凹部)401A、401Bにおいて4本の光ファイバ素線10a〜10dを走行させながら、仕切片402により離間された部分(光ファイバ素線10a、10bの間及び光ファイバ素線10c、10dの間)に吐出口403から連結樹脂を吐出させる。
そして、光ファイバ素線10を集線した後、硬化装置13で連結樹脂を硬化させる。
【0072】
第2実施形態に係るテープ心線製造装置1では、ダイス30、40に形成された吐出口303、403から連結樹脂Rを吐出するので、隣り合う光ファイバ素線10a、10bの間、光ファイバ素線10b、10cの間、光ファイバ素線10c、10dの間に確実に連結樹脂Rが塗布される。したがって、複雑な製造装置を用いることなく、隣接する光ファイバ素線10間に確実に連結樹脂Rを塗布し、安定してテープ心線100を製造できる。
また、連結樹脂Rを光ファイバ素線10の配列面の両側にほぼ均等に回り込ませた状態で硬化させることができるので、光ファイバ素線10間を強固に接着することができる。さらには、吐出口の形成位置(連結樹脂を塗布する位置)が異なる複数のダイス30、40を用いて光ファイバ素線10に連結樹脂を塗布するので、ダイスの組み合わせにより様々な連結パターンを容易に実現することができる。
【0073】
第2実施形態のテープ心線製造装置1を用いることで、図14に示すように様々な連結
パターンのテープ心線100を製造することができる。なお、図14(a)〜(d)に示す連結パターンは、図5と同様であるので説明を省略する。
例えば、ダイス30の吐出口303から連結樹脂を連続して吐出させるとともに、ダイス40の吐出口403から連結樹脂を連続して吐出させることにより、隣接する光ファイバ素線10間が連結樹脂R1〜R3で長手方向に一様に連結されたテープ心線100を製造することができる(図14(a)参照)。
この場合、光ファイバ素線10の走行速度に応じて連結樹脂の吐出量を制御する。これにより、光ファイバ素線10の走行速度の変化に追従して、所望の塗布状態(塗布幅、塗布位置及び塗布深さ)で連結樹脂を塗布することができる。
【0074】
また例えば、ダイス30の吐出口303から連結樹脂を断続的に所定のタイミングで吐出させるとともに、ダイス40の吐出口403から連結樹脂を断続的に所定のタイミングで吐出させることにより、隣接する光ファイバ素線10間が連結樹脂R1〜R3で長手方向に間欠的に連結されたテープ心線100を製造することができる(間欠連結型テープ心線、図14(b)、(c)参照)。
この場合、光ファイバ素線10の走行速度に応じて連結樹脂の吐出量及び吐出タイミングを制御する。これにより、光ファイバ素線10の走行速度の変化に追従して、所望の塗布状態(塗布幅、塗布位置、塗布深さ、塗布長及び塗布間隔)で連結樹脂を塗布することができる。
【0075】
図14(b)に示す連結パターンとする場合、ダイス30とダイス40の配置間隔を、例えば連結樹脂R1〜R3の塗布ピッチPに一致させればよい。ダイス30で塗布される連結樹脂R2とダイス40で塗布される連結樹脂R1、R3は、1ピッチだけずれて同時に塗布されるので、2回の塗布制御により、幅方向で一致する連結樹脂R1〜R3が形成されることになる。なお、ダイス30とダイス40の配置間隔が、連結樹脂R1〜R3の塗布ピッチPの整数倍(2P、3P・・)であれば、図14(b)に示す連結パターンで連結樹脂R1〜R3を形成することができる。
【0076】
図14(c)に示す連結パターンとする場合、ダイス30とダイス40の配置間隔を、例えば連結樹脂R1、R3の塗布ピッチPの1/2とすればよい。ダイス30で塗布される連結樹脂R2とダイス40で塗布される連結樹脂R1、R3は、1/2ピッチだけずれて同時に塗布されるので、連結樹脂R2は連結樹脂R1、R3と幅方向で重ならない。なお、ダイス30とダイス40の配置間隔が、連結樹脂R1、R3の塗布ピッチPの整数倍(2P、3P・・)+1/2ピッチ、すなわち1.5P、2.5P・・であれば、図14(c)に示す連結パターンで連結樹脂R1〜R3を形成することができる。
【0077】
また、樹脂供給制御部21を、ダイス30、40のそれぞれに対応して別系統で設けるようにすれば、吐出タイミング及び吐出量を個別に制御することができるので、図14(d)、(e)に示す連結パターンを実現することができる。この場合、それぞれの樹脂供給制御部21において吐出タイミングを制御するためのインターバル信号を同期させるのが望ましい。
【0078】
このように、それぞれのダイス30、40における連結樹脂の吐出タイミング又は吐出量を制御することにより、様々な連結パターンの間欠連結型テープ心線を容易に製造することができる。また、ダイス30、40の配置間隔を変更することにより、幅方向に隣り合う連結樹脂の塗布間隔を容易に変化させることができる。
なお、図14で示す連結パターンは、第2実施形態のテープ心線製造装置1で実現しうる連結パターンの一例であり、連結樹脂の塗布量及び塗布タイミングを適宜設定することで、他の連結パターンを実現できることは言うまでもない。
【0079】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、実施形態では4心テープ心線を製造する場合について説明したが、本発明は2本、8本、12本等、複数本の光ファイバ素線を平行に配列してテープ状に一体化する光ファイバテープ心線を製造する場合に適用できる。
また、光ファイバ素線ではなく、光ファイバ素線に2次被覆を施した光ファイバ心線を複数本連結してテープ状に一体化する場合や、テープ心線(例えば2心テープ心線、間欠型テープ心線を含む)を複数本連結してテープ状に一体化する場合にも本発明を適用できる。
【0080】
また、第2実施形態のようにダイスを複数段配置する場合、ダイス間に硬化装置を設けて、前段のダイスで塗布された連結樹脂を硬化させた後で、後段のダイスに光ファイバ素線が導入されるようにしてもよい。
また、第1実施形態及び第2実施形態において、連結樹脂が塗布された光ファイバ素線間を離間させたまま硬化させれば、光ファイバ素線間に連結樹脂が介在するテープ心線を製造することができる。
【0081】
また、実施形態では、ダイスに複数の吐出口を形成する場合、長手方向の略中央に横並びに形成しているが、吐出口の一部又は全部を長手方向に位置をずらして形成してもよい。これにより、様々な連結パターンに容易に対応することが可能となる。
実施形態では、ダイスを光ファイバ素線に載置することによりダイスの凹部を光ファイバ走行路としているが、凹部の下方を、対応する凹部が形成された底壁で閉塞して挿通孔を形成し、この挿通孔を光ファイバ走行路としてもよい。
【0082】
さらに、実施形態では、ディスペンサにより連結樹脂の吐出制御を行う場合について例示したが、ダイス20、30、40の吐出口203、303、403の近傍に樹脂流路を開閉するシャッター機構(例えば開閉ピン)を設け、樹脂流路に連結樹脂を常時加圧した状態で充填しておき、シャッター機構の開閉により連結樹脂の吐出制御を行うようにしてもよい。
【0083】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0084】
1 テープ心線製造装置
10、10a〜10d 光ファイバ素線
11 供給ドラム
12 塗布装置
13 硬化装置
14 張力検出装置
15 引取装置
16 巻取ドラム
20 ダイス
21 樹脂供給制御部
100 テープ心線
201 凹部(光ファイバ走行路)
202 仕切片
203 吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の光ファイバを平行に配列した状態で走行させながら、連結樹脂を塗布し、硬化させてテープ状に一体化する光ファイバテープ心線の製造方法であって、
前記複数本の光ファイバ線のうち少なくとも1組の隣り合う光ファイバ間を離間させた状態で保持する仕切片を有するとともに、前記仕切片に前記連結樹脂を吐出する吐出口が形成されたダイスを用い、
このダイスの前記仕切片で区画された光ファイバ走行路において前記複数本の光ファイバを走行させながら、前記仕切片により離間された部分に前記吐出口から前記連結樹脂を吐出させ、
前記複数本の光ファイバを集線した後、前記連結樹脂を硬化させることを特徴とする光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項2】
前記複数本の光ファイバに所定の張力が付加されるように制御することにより前記平行に配列した状態を保持することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項3】
前記仕切片の形状を変更することにより前記連結樹脂の塗布状態を変化させることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項4】
前記連結樹脂を長手方向に間欠的に塗布することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項5】
前記光ファイバの走行速度に応じて前記連結樹脂の吐出量及び吐出タイミングを制御することを特徴とする請求項4に記載の光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項6】
前記仕切片を複数有するダイスを用い、
前記複数の仕切片に形成されたそれぞれの吐出口から前記連結樹脂を同じ吐出タイミングで吐出させることを特徴とする請求項4又は5に記載の光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項7】
前記仕切片を複数有するダイスを用い、
前記複数の仕切片に形成されたそれぞれの吐出口から前記連結樹脂を異なる吐出タイミングで吐出させることを特徴とする請求項4又は5に記載の光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項8】
前記仕切片を1又は複数有するダイスを前記光ファイバの走行方向に沿って複数配置し、
前記複数のダイスに形成された吐出口から前記連結樹脂を同じ吐出タイミングで吐出させることを特徴とする請求項4又は5に記載の光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項9】
前記仕切片を1又は複数有するダイスを前記光ファイバの走行方向に沿って複数配置し、
前記複数のダイスに形成された吐出口から前記連結樹脂を異なる吐出タイミングで吐出させることを特徴とする請求項4又は5に記載の光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項10】
前記複数のダイスの配置間隔を変更することにより幅方向に隣り合う前記連結樹脂の塗布間隔を変化させることを特徴とする請求項8又は9に記載の光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項11】
前記連結樹脂を長手方向に連続的に塗布することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項12】
前記光ファイバの走行速度に応じて前記連結樹脂の吐出量を制御することを特徴とする請求項11に記載の光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項13】
前記連結樹脂として、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、又は熱硬化型樹脂を用いることを特徴とする請求項1から12の何れか一項に記載の光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項14】
複数本の光ファイバを平行に配列した状態で走行させながら、連結樹脂を塗布する塗布装置と、
前記連結樹脂を硬化させる硬化装置と、を備え、前記複数本の光ファイバをテープ状に一体化する光ファイバテープ心線の製造装置において、
前記塗布装置が、前記複数本の光ファイバのうち少なくとも1組の隣り合う光ファイバ間を離間させた状態で保持する仕切片を有するとともに、前記仕切片に前記連結樹脂を吐出する吐出口が形成されたダイスと、
前記ダイスの前記仕切片で区画された光ファイバ走行路において走行している前記複数本の光ファイバに対して、前記仕切片により離間された部分に前記吐出口から前記連結樹脂を吐出させる樹脂供給制御部と、で構成されていることを特徴とする光ファイバテープ心線の製造装置。
【請求項15】
前記複数本の光ファイバが前記平行に配列した状態で保持されるように、前記複数本の光ファイバに付加される張力を調整する張力調整装置を備えることを特徴とする請求項14に記載の光ファイバテープ心線の製造装置。
【請求項16】
前記樹脂供給制御部が、前記光ファイバの走行速度に応じて前記連結樹脂の吐出量及び吐出タイミングを制御することを特徴とする請求項14又は15に記載の光ファイバテープ心線の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−118358(P2012−118358A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268888(P2010−268888)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】