光ファイバデバイス
【課題】広帯域であってかつ波長平坦性が良好なパルス光を発生することができる光ファイバデバイスを提供すること。
【解決手段】所定の中心波長を有するパルス光の入力を受け付け該入力したパルス光よりも波長帯域が拡張されたパルス光を出力する光ファイバデバイスであって、直列に接続され、前記中心波長における波長分散値が負である複数の光ファイバを備え、前記複数の光ファイバは、クラッド部に対するコア部の比屈折率差が互いに異なるとともに、前記中心波長における波長分散値が互いに異なる光ファイバが隣接するように接続されている。
【解決手段】所定の中心波長を有するパルス光の入力を受け付け該入力したパルス光よりも波長帯域が拡張されたパルス光を出力する光ファイバデバイスであって、直列に接続され、前記中心波長における波長分散値が負である複数の光ファイバを備え、前記複数の光ファイバは、クラッド部に対するコア部の比屈折率差が互いに異なるとともに、前記中心波長における波長分散値が互いに異なる光ファイバが隣接するように接続されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の中心波長を有するパルス光の入力を受け付け、入力したパルス光よりも波長帯域が拡張されたパルス光を出力する光ファイバデバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光通信において、伝送容量の増大化・信号速度の高速化に伴い、送受信部及び中継部で光信号処理を行なう場合に、電気的な変換処理を行わずに、光のまま処理を行う全光信号処理技術が、今後のキーテクノロジーとして注目されている。このような全光信号処理を行うデバイスとして、光ファイバ中の非線形効果を用いた光ファイバデバイスや半導体を用いたデバイスなどが研究されている。
【0003】
スーパーコンティニュアム光源(以後SC光源と記載する)は、数十nm〜数百nmといった広帯域なスペクトルを有するパルス光であるスーパーコンティニュアム光(以後SC光と記載する)を発生するパルス光源であり、全光信号処理を行うためのデバイスとしてだけでなく、広帯域光通信用光源や光コヒーレントトモグラフィなどのセンシング用光源としての用途が期待されている(非特許文献1参照)。
【0004】
従来のSC光源は、種光源となるパルス光源、光増幅器、光ファイバから構成される。パルス光源から出力したパルス光は、光増幅器で増幅され光ファイバの入力端に入力する。光ファイバ中では、入力したパルス光によって非線形効果が発生し、この非線形効果によって、パルス光のスペクトルの帯域が拡張し、スペクトルがきわめて広帯域に広がったパルス光、すなわちSC光が光ファイバの出力端から出力する。なお、光ファイバ中で発生する非線形効果は、自己位相変調、相互位相変調、四光波混合、ラマン散乱など複数の非線形現象が混在した状態と考えられる。
【0005】
SC光源においては、その光学特性に対して、光ファイバの波長分散値の設定条件が大きく影響する。そして、SC光源は、光ファイバの波長分散値の設定条件によって大きく2つの方式がある。1つは、非特許文献2のように、光ファイバとして、パルス光の入力端側から出力端側に向かって、異常分散から正常分散に連続的に変化していく分散減少光ファイバを用いる方法である。もう1つは、非特許文献3のように、全長に渡って一様な正常分散の光ファイバを使用する方法である。なお、正常分散光ファイバを用いたSC光源は、スペクトルの平坦性が良いとともに、ノイズが少なくSNR(Signal to Noise Ratio)が良いという利点を有する。また、正常分散光ファイバ中で発生したSC光のスペクトルは、入力するパルス光の中心波長を中心として、長波長側及び短波長側に広がっていく。このとき、光ファイバの波長分散の絶対値が小さいほうが、スペクトルの広がりが大きいことが知られている。
【0006】
【非特許文献1】高良秀彦 他、“スーパーコンティニウム光源によるマルチ光キャリア発生” レーザー研究 第30巻 第1号 p.33 2002年1月
【非特許文献2】K.Mori、 H.Takara、 S.Kawanishi、 M.Saruwatari and T.Morioka “Flatly broadened supercotinuum spectrum generated in a dispersion decreasing fibre with convex dispersion profile” Electron.Lett.、Vol.33、 No.21、 pp.1806-1808、 1997
【非特許文献3】Y.Takushima F.Futami and K.Kikuchi “Generation of over 140-nm wide Super-Continuum from a Normal Dispersion Fiber by using a Mode-Locked Semiconductor Laser Source” IEEE Photon. Technol.Lett.、 Vol.10、 No.11、 pp.1560-1562 (1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般の光ファイバにおいては、波長が長くなるにつれて波長分散値が大きくなるように傾斜している、すなわち正の波長分散スロープを有している。そのため、光ファイバのゼロ分散波長より長波長側の波長領域では、波長分散が正値である異常分散領域となる。異常分散領域においてはスペクトルにMI(Modulation Instability;変調不安定性)が発生するので、SC光のスペクトルが異常分散領域にまで広がると、スペクトル上にノイズやリップルが多くなり、波長平坦性が損なわれるという問題があった。またSC光のスペクトルが正常分散領域内において広がる場合であっても、波長分散の絶対値が小さすぎると、スペクトルの波長に依存した変動が大きくなり、波長平坦性が損なわれるという問題があった。
【0008】
一方、光ファイバ中で発生するSC光を広帯域化する方法として、光ファイバの条長を長くし、光ファイバへ入力するパルス光の強度を高くして、光ファイバ中での非線形効果を増大させる方法がある。しかし、光ファイバの条長を長くしたり、パルス光強度を高くしたりすると、光ファイバ中でのSBS(Stimulated Brillouin Scattering;誘導ブリユアン散乱)が顕著に発生する。SBSは、あるしきい値以上の強度の光が入力すると発生し、入力した光の全てが透過されずに、ブリユアンシフトした光として後方に散乱されてしまう現象である。したがって、SBSしきい値以上の光を光ファイバに入力しても、光ファイバ中での非線形効果は増大しない。そのため、光ファイバへ入力するパルス光の強度には限界があり、SC光の広帯域化が困難であるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、広帯域であってかつ波長平坦性が良好なパルス光を発生することができる光ファイバデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る光ファイバデバイスは、所定の中心波長を有するパルス光の入力を受け付け該入力したパルス光よりも波長帯域が拡張されたパルス光を出力する光ファイバデバイスであって、直列に接続され、前記中心波長における波長分散値が負である複数の光ファイバを備え、前記複数の光ファイバは、クラッド部に対するコア部の比屈折率差が互いに異なるとともに、前記中心波長における波長分散値が互いに異なる光ファイバが隣接するように接続されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る光ファイバデバイスは、上記の発明において、前記複数の光ファイバは、前記中心波長における波長分散の絶対値が前記パルス光の入力端側から出力端側に向かって増加するように接続されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る光ファイバデバイスは、上記の発明において、前記複数の光ファイバは、前記中心波長における波長分散の絶対値が前記パルス光の入力端側から該入力端と出力端との間の所定の位置に向かって増加し、前記所定の位置から前記出力端側に向かって減少するように接続されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る光ファイバデバイスは、上記の発明において、前記複数の光ファイバは、前記比屈折率差が前記パルス光の入力端側から出力端側に向かって減少するように接続されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る光ファイバデバイスは、上記の発明において、前記複数の光ファイバは、前記比屈折率差が2%以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、広帯域であってかつ波長平坦性が良好なパルス光を発生することができる光ファイバデバイスを実現できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、図面を参照して本発明に係る光ファイバデバイスの実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。なお、本明細書において特に定義しない用語については、ITU−T(国際電気通信連合)G.650.1における定義、測定方法に従うものとする。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る光ファイバデバイスを用いたSC光源の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、このSC光源10は、所定の中心波長のパルス光を出力するパルス光源1と、パルス光源1に接続し、パルス光源1が出力したパルス光を増幅する光増幅器2と、光増幅器2に接続し、光増幅器2が増幅したパルス光の入力を受け付けて、波長帯域が拡張されたパルス光であるSC光を出力する光ファイバデバイス3とを備える。
【0018】
パルス光源1は、たとえば光ファイバレーザであり、中心波長1550nm、パルス幅2.0ps、繰り返し周波数10GHzのパルス光を出力する。光増幅器2は、たとえばダブルクラッド型のエルビウム−イットリビウム添加光ファイバ増幅器(EYDFA)であり、パルス光源1が出力したパルス光を最大30dBm程度にまで増幅する。
【0019】
光ファイバデバイス3は、直列に接続した第1段光ファイバ31と、第2段光ファイバ32とを備え、第1段光ファイバ31の一端である入力端3aから光増幅器2が増幅したパルス光の入力を受け付けて、第2段光ファイバ32の一端である出力端3bから波長帯域が拡張されたSC光を出力する。
【0020】
図2は、図1に示す光ファイバデバイスの各段光ファイバの断面概略図である。図2に示すように、第1段光ファイバ31は、コア部31aと、コア部31aの外周に形成され、コア部31aよりも屈折率が低いクラッド部31bとを有する。また、第2段光ファイバ32も同様に、コア部32aと、コア部32aの外周に形成され、コア部32aよりも屈折率が低いクラッド部32bとを有する。さらに、クラッド部31b、32bの外周には、図示しない紫外線硬化樹脂等からなる被覆を有する。
【0021】
第1段光ファイバ31と、第2段光ファイバ32とは、各コア部31a、31bの各クラッド部31b、32bに対する比屈折率差が互いに異なる。したがって、第1段光ファイバ31と、第2段光ファイバ32とは、ブリユアンシフト周波数が互いに異なるものとなる。その結果、光ファイバデバイス3は、同一の全長を有し比屈折率差が長手方向で一様な光ファイバと比較して、SBSのしきい値が高くなるので、SBSを発生させることなくより高い光強度のパルス光を入力することができ、より広帯域のSC光を発生させることができる。なお、各段光ファイバの比屈折率差が2%以上であれば、非線形効果がきわめて高くなるので、より広帯域のSC光を発生させることができる。
なお、比屈折率差は、各コア部31a、31bの屈折率の最高部の値をn1、各クラッド部31b、32bの屈折率をnc、としたとき、式(1)により定義される。
Δ={(n1−nc)/nc}×100 ・・・・・ (1)
【0022】
さらに、第1段光ファイバ31と、第2段光ファイバ32とは、波長1550nmにおける波長分散値が負、すなわち正常分散であって、かつ互いに異なる値になっている。図3は、図1に示す光ファイバデバイス3における長手方向の位置と波長1550nmにおける波長分散値との関係を示す図である。なお、長さL31の領域が第1段光ファイバ31に対応し、長さL32の領域が第2段光ファイバ32に対応する。図3に示すように、第1段光ファイバ31の波長分散値は、長手方向に対してほぼ一様に負の値D1(ps/nm/km)である。さらに、第2段光ファイバ32の波長分散値は、長手方向に対してほぼ一様であって、値D1より小さい負の値D2(ps/nm/km)である。
【0023】
ここで、前述のように、正常分散光ファイバ中で発生したSC光のスペクトルは、光ファイバを伝搬していくうちに、入力するパルス光の中心波長を中心として、長波長側及び短波長側に広がっていく。したがって、第2段光ファイバ32におけるSC光は、第1段光ファイバ31におけるSCよりも長波長側及び短波長側に広がっている。ここで、第2段光ファイバ32の波長分散値は、値D1より小さい負の値D2である。したがって、SC光が長波長側に広がったとしても、長波長側における波長分散値はその絶対値が十分に大きいものとなっており、MI等に起因するスペクトル上のノイズやリップルの増大が抑制される。その結果、第2段光ファイバ32において、波長平坦性が良好なSC光が発生する。
【0024】
以上説明したように、本実施の形態1に係る光ファイバデバイス3を用いれば、広帯域であってかつ波長平坦性が良好なSC光を発生することができる。
【0025】
なお、実施の形態1においては、接続する光ファイバを2段としたが、3段以上の光ファイバを接続し、波長分散の絶対値がパルス光の入力端側から出力端側に向かって増加するようしてもよい。接続する光ファイバの段数を増加することによって、光ファイバデバイスの長手方向におけるSC光のスペクトルの広がりに対応させて、長手方向における波長分散値の分布をより好適な値に設定することができる。
【0026】
また、接続する光ファイバのうち比屈折率差が最も高い光ファイバを第1段とし、その後比屈折率差が大きい順番に光ファイバを接続することが好ましい。このように、接続する光ファイバの比屈折率差がパルス光の入力端側から出力端側に向かって減少するように光ファイバを接続していれば、光ファイバデバイスにおいて、入力端側のパルス光の強度が高い位置に、比屈折率差が大きく非線形効果が効率的に発生しやすい光ファイバを配置することとなるので、非線形効果を効率的に発生させることができる。
【0027】
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2に係る光ファイバデバイスについて説明する。本実施の形態2に係る光ファイバデバイスは、3段の光ファイバが、該光ファイバの波長分散の絶対値がパルス光の入力端側から該入力端側と出力端との間の所定の位置に向かって増加し、この所定の位置から出力端側に向かって減少するように接続されている。
【0028】
図4は、本実施の形態2に係る光ファイバデバイスの側面概略図である。図4に示すように、光ファイバデバイス4は、直列に接続した第1段光ファイバ41と、第2段光ファイバ42と、第3段光ファイバ43とを備える。そして、実施の形態1と同様に、第1段光ファイバ41の一端である入力端4aから光増幅器が増幅したパルス光の入力を受け付けて、第3段光ファイバ43の一端である出力端4bから波長帯域が拡張されたSC光を発生させる。
【0029】
また、実施の形態1と同様に、第1段光ファイバ41、第2段光ファイバ42、第3段光ファイバ43は、それぞれ、コア部と、コア部の外周に形成され、コア部よりも屈折率が低いクラッド部とを有するとともに、比屈折率差が互いに異なっている。したがって、第1段光ファイバ41と、第2段光ファイバ42と、第3段光ファイバ43とは、ブリユアンシフト周波数が互いに異なるものとなるので、SBSしきい値が高くなる。したがって、SBSを発生させることなくより高い光強度のパルス光を入力して、より広帯域のSC光を発生させることができる。
【0030】
図5は、図4に示す光ファイバデバイス4における長手方向の位置と波長1550nmにおける波長分散値との関係を示す図である。なお、長さL41の領域が第1段光ファイバ41に対応し、長さL42の領域が第2段光ファイバ42に対応し、長さL43の領域が第3段光ファイバ43に対応する。図5に示すように、第1段光ファイバ41の波長分散値は、長手方向に対してほぼ一様に負の値D3(ps/nm/km)である。さらに、第2段光ファイバ42の波長分散値は、長手方向に対してほぼ一様であって、値D3より小さい負の値D4(ps/nm/km)である。さらに、第3段光ファイバ43の波長分散値は、長手方向に対してほぼ一様であって、値D4より大きい負の値D5(ps/nm/km)である。
【0031】
この光ファイバデバイス4においては、光ファイバデバイス3と同様に、第2段光ファイバ42の波長分散値が、値D3より小さい負の値D4であるから、第2段光ファイバ42において、SC光が長波長側に広がったとしても、長波長側における波長分散値の絶対値が十分に大きいものとなっており、スペクトル上のノイズやリップルの増大が抑制され、波長平坦性が良好なSC光が発生する。さらに、第3段光ファイバ43において、ノイズやリップルが増大しない程度に波長分散値の絶対値を小さくすることによって、第3段光ファイバ43中で発生する非線形効果を高めている。その結果、ノイズやリップルの増大が抑制されるとともに、さらに広帯域のSC光を発生させることができる。
【0032】
(実施例、比較例)
以下、本発明に係る光ファイバデバイスの実施例および比較例を詳細に説明する。なお、この実施例および比較例によりこの発明が限定されるものではない。
【0033】
図6は、本発明の実施例、比較例において使用する光ファイバの光学特性を示す図である。なお、各光学特性は波長1550nmにおける値である。また、Δはクラッド部に対するコア部の比屈折率差を示す。また、非線形定数γは、波長をλ、コア部の非線形屈折率をn2、有効コア断面積をAeffとして、γ=2πn2/(λAeff)と表される量である。図6に示すファイバ番号1〜3の光ファイバは、いずれも石英系光ファイバであって、コア部はGeを添加したシリカガラスからなり、クラッド部は屈折率調整用ドーパントを添加していない純シリカガラスからなる。また、その光学特性は、長手方向にほぼ一様である。さらに、ファイバ番号1〜3の光ファイバは、いずれも高非線形光ファイバであり、非線形定数γが標準のシングルモード光ファイバよりも約5倍以上大きく、非線形効果を効率的に発生できる。なお、このような高非線形光ファイバは、石英系の光ファイバにおいては、コア部へのGeの添加量を多くし、また有効断面積Aeffを小さくし、コア部への光の閉じ込めを強くすることで実現されている。
【0034】
つぎに、本発明の実施例1として、図6に示すファイバ番号1の光ファイバを第1段光ファイバとし、ファイバ番号2の光ファイバを第2段光ファイバとして接続し構成した光ファイバデバイスを準備した。なお、第1段、第2段光ファイバの条長は、いずれも200mであるので、実施例1の光ファイバデバイスの全長は400mである。同様に、実施例2として、ファイバ番号1、2、3の光ファイバをそれぞれ第1段、第2段、第3段光ファイバとして接続して構成した光ファイバデバイスを準備した。第1段〜第3段光ファイバの条長は、いずれも200mであるので、実施例2の光ファイバデバイスの全長は600mである。
【0035】
一方、比較例1として、ファイバ番号1の光ファイバ1種類のみで構成した光ファイバデバイスを準備した。同様に、比較例2、3として、それぞれファイバ番号2、3の光ファイバのみで構成した光ファイバデバイスを準備した。なお、比較例1〜3の光ファイバデバイスの全長はいずれも600mである。
【0036】
(連続光に対するSBS特性)
はじめに、連続光を入力した場合の各実施例、比較例の光ファイバデバイスのSBSの特性について説明する。図7〜9は、それぞれ比較例1〜3の光ファイバデバイスに波長1550nmの連続光を入力した場合に発生するブリユアン散乱光スペクトルを示す図である。なお、図7〜9のいずれにおいても、横軸はブリユアンシフト周波数を示し、縦軸は相対的なブリユアンゲインを示す。図7〜9に示すように、比較例1〜3の光ファイバデバイスは、比屈折率差が異なるので、ブリユアン散乱光スペクトルにおいて異なる周波数のブリユアンピークを有していた。
【0037】
図10は、比較例1〜3の光ファイバデバイスのブリユアンピーク周波数およびSBSしきい値を示す図である。図10において、SBSしきい値については、全長が600mの値は測定値であり、全長が200m、400mの値は測定値から計算した計算値である。なお、上記計算は、以下の式(2)〜(4)を用いて行なった。
【0038】
Pth=21(KAeff/gBLeff)(1+Δν/ΔνB) ・・・ (2)
Leff={1−exp(−αL)}/α ・・・ (3)
α=(ln10/10)a ・・・ (4)
ただし、Aeff;有効断面積、K;偏光状態に依存するパラメータ(入射光と散乱光が互いに平行な時はK=1、完全にランダムな時はK=2)、L;全長、Leff;有効長、ΔνB;ブリユアンピークのスペクトル幅、Δν;入力光のスペクトル線幅、gB;ピークにおけるブリユアン利得係数、α;損失係数(単位;/km)、a;損失係数(単位;dB/km)である。
【0039】
なお、損失係数aとして、図6に示す伝送損失の値を用いた。また、入力光のスペクトル線幅Δνは200kHzであり、図7〜9においてブリユアンピークのスペクトル幅は約30MHzであったので、式(2)において、(1+Δν/ΔνB)を1として計算を行なった。
【0040】
図10に示すように、比較例1〜3の光ファイバデバイスは、比屈折率差が異なるので、異なる周波数のブリユアンピークおよび異なるしきい値を有していた。また、いずれの光ファイバデバイスも、全長が長くなるにつれてSBSしきい値が低くなっていた。
【0041】
つぎに、実施例の光ファイバデバイスのSBSの特性について説明する。図11、12は、実施例2の光ファイバデバイスに、第3段光ファイバ側あるいは第1段光ファイバ側から、上記比較例の場合と同様の連続光を入力した場合に発生するブリユアン散乱光スペクトルを示す図である。図11、12に示すように、実施例2の光ファイバデバイスは、比屈折率差が異なる3段の光ファイバを接続したので、ブリユアン散乱光スペクトルにおいて主要な3つのブリユアンピークを有していた。
【0042】
図13は、実施例1、2の光ファイバデバイスのブリユアンピーク周波数およびSBSのしきい値を示す図である。
【0043】
図13と図10との比較から示されるように、実施例1の光ファイバデバイスのブリユアンピーク周波数は、9.20GHz、9.59GHzであり、比較例1、2の光ファイバデバイスのそれぞれのブリユアンピーク周波数とほぼ同じ値となっている。すなわち、実施例1の光ファイバデバイスのブリユアンピークは、構成する光ファイバの個々のブリユアンピークを重ねたものとなっている。実施例2も同様である。
【0044】
また、全長が400mである実施例1の光ファイバデバイスのSBSしきい値は、17.53dBmである。この値は、比較例1、2の光ファイバデバイスの全長が400mにおける計算値よりも約1〜4dBだけ高くなっており、全長が200mにおける計算値に近い値となっている。すなわち、実施例1の光ファイバデバイスにおいては、そのSBSしきい値は、光ファイバデバイスの全長が長いにもかかわらず、構成する光ファイバの個々の短い条長におけるSBSしきい値と対比できる程度の値となっている。すなわち、実施例1の光ファイバデバイスは、同一の全長を有し、長手方向で一様な光ファイバからなる比較例1〜3の光ファイバデバイスと比較して、SBSの発生がきわめて抑制されている。
【0045】
さらに、実施例2の光ファイバデバイスのしきい値は、全長が600mでありながら、17.68dBmであり、比較例1〜3の光ファイバデバイスの全長が600mにおける計算値よりも約3〜6dBだけ高くなっており、SBSの発生がさらに抑制されている。
【0046】
(パルス光に対するSBS特性)
つぎに、パルス光を入力した場合の各実施例、比較例の光ファイバデバイスのSBSの特性について説明する。はじめに、図6に示すファイバ番号1の光ファイバを長さ4880mとしたものをテスト光ファイバとして準備した。そして、このテスト光ファイバに、中心波長1550nm、パルス幅2.0ps、繰り返し周波数10GHzのパルス光を入力した場合のSBSしきい値を測定したところ、18.1dBmであった。この結果から、上述した式(2)を用いて、長さが200m、400m、600mの場合のそれぞれのSBSしきい値を計算したところ、その値は、それぞれ29.9dBm、27.0dBm、25.3dBmであった。この値を、図10に示した連続光を入力した場合のSBSしきい値と比較すると、全長が同じ条件では、パルス光入力の場合は、連続光入力の場合に比べ13.2dB程度SBSしきい値が高くなることが分かる。
【0047】
(SC光の特性)
つぎに、本発明の実施例、比較例の光ファイバデバイスにパルス光を入力した場合に発生するSC光の特性について、シミュレーション計算の結果を用いて説明する。図14は、実施例1−2、2−2および比較例1−2〜1−4の光ファイバデバイスの波長1550nmにおける波長分散特性を示す図である。
【0048】
なお、実施例1−2の光ファイバデバイスは、上述した実施例1の光ファイバデバイスと同様の構成を有する。そして、図14に示すように、第1段光ファイバの波長分散値は−1.2ps/nm/kmである。また、第2段光ファイバの波長分散値は−2.0ps/nm/kmである。また、第1段、第2段光ファイバの分散スロープは、いずれも0.022ps/nm2/kmである。
【0049】
同様に、実施例2−2の光ファイバデバイスは、上述した実施例2の光ファイバデバイスと同様の構成を有する。そして、第1段光ファイバの波長分散値は−1.1ps/nm/kmである。また、第2段光ファイバの波長分散値は−1.2ps/nm/kmである。さらに、第3段光ファイバの波長分散値は−1.1ps/nm/kmである。また、第1段〜第3段光ファイバの分散スロープは、いずれも0.022ps/nm2/kmである。
【0050】
同様に、比較例1−2〜1−4の光ファイバデバイスを構成する光ファイバは、波長分散値がそれぞれ−1.2ps/nm/km、−0.9ps/nm/km、−0.8ps/nm/kmであり、分散スロープが、いずれも0.022ps/nm2/kmである。また、条長はそれぞれ200m、400m、600mである。
【0051】
つぎに、各実施例、比較例の光ファイバデバイスにパルス光を入力した場合に発生するSC光の特性の計算結果について説明する。ここで、パルス光として、中心波長1550nm、パルス幅2.0ps、繰り返し周波数10GHzのガウス形状のパルス光を用いた。また、パルス光の強度については、各実施例、比較例の光ファイバデバイスのSBSしきい値と同値の平均光強度とした。なお、SBSしきい値は、図10および13に示した連続光入力の場合のSBSしきい値と、上述したパルス光と連続光とのSBSしきい値の比較結果とから算出した。
【0052】
図15は、各実施例、比較例において、SC光の特性の計算に用いる入力パルス光の平均強度を示す図である。なお、たとえば平均光強度が29.9dBmの場合のパルス光のピークパワーは43Wである。
【0053】
図16、17は、それぞれ実施例1−2の光ファイバデバイスの第1段、第2段光ファイバの出力端側におけるSC光のスペクトルを示す図である。また、図18〜20は、それぞれ実施例2−2の光ファイバデバイスの第1段〜第3段光ファイバの出力端側におけるSC光スペクトルを示す図である。また、図21〜23は、それぞれ比較例1−2〜1−4の光ファイバデバイスの出力端におけるSC光スペクトルを示す図である。なお、各実施例、比較例の光ファイバデバイスの波長分散値は、SC光が最も広がるように最適化されている。
【0054】
図24は、各実施例、比較例の光ファイバデバイスから出力するSC光のスペクトル帯域幅を示す図である。なお、スペクトル中のピークから光強度が10dB下がったレベルにおけるスペクトル帯域幅である10dB帯域幅と、3dB下がったレベルにおけるスペクトル帯域幅である3dB帯域幅を示している。なお、10dB帯域幅はスペクトル全体の幅を表しており、3dB帯域幅はスペクトルの平坦域を表していると考えられる。図24に示すように、各実施例の光ファイバデバイスの出力するSC光は、各比較例と同等以上の3dB帯域幅を維持しながら、比較例より広い10dB帯域幅を実現している。特に、実施例2−2の光ファイバデバイスにおいては、第3段光ファイバの波長分散の絶対値を、第2段光ファイバの波長分散の絶対値よりも小さくすることによって、パルス光の時間的形状の変化や、ピークパワーの減衰を補うようにしており、きわめて広帯域のSC光が発生している。
【0055】
つぎに、図25は、全長が同じである実施例2−2と比較例1−4との光ファイバデバイスに対して、入力するパルス光の平均光強度を変えた場合の、SC光の10dB帯域幅の変化を示す図である。図25に示すように、いずれの光ファイバデバイスにおいても、平均光強度が増加するについて10dB帯域幅が広がっていく。比較例1−4の光ファイバデバイスは、SBSしきい値すなわち有効な平均光強度の上限値が25.3dBmであり、この平均光強度における10dB帯域幅である55.0nmがSC光の広がりの上限である。しかしながら、実施例2−2の光ファイバデバイスは平均光強度の上限値が29.9dBmであり、対応する10dB帯域幅は81.5nmであり、きわめて広帯域のSC光を出力できる。
【0056】
ところで、上述したように、各実施例、比較例の光ファイバデバイスの波長分散値は、SC光が最も広がるように最適化されている。以下、比較例1−3を例として、最適化の手順について説明する。
【0057】
図26は、比較例1−3と同様の比屈折率差、非線形定数、および条長を有する光ファイバにおいて波長1550nmにおける波長分散値を変化させた場合のSC光スペクトルを示す図である。なお、入力するパルス光については、図15に示す比較例1−3の場合と同様のものとしている。図26に示すように、波長分散値が小さいほうがスペクトルの広がりは大きいが、小さすぎるとMIによるノイズやリップルが増加したり、スペクトルの平坦性が劣化したりする。図27は、図26に示す場合における波長1550nmの波長分散値と3dB帯域幅および10dB帯域幅との関係を示す図である。図27に示すように、3dB帯域幅および10dB帯域幅は、いずれも波長分散値が−0.9ps/nm/kmの場合にもっとも大きくなるので、比較例1−3においては波長分散値を−0.9ps/nm/kmとしている。なお、比較例1−2、1−4、実施例1−2、2−2についても、同様の方法で波長分散値の最適化を行なっている。
【0058】
つぎに、本発明の実施例3について説明する。図28は、実施例3の光ファイバデバイスにおいて接続する光ファイバの段番号と、それらの特性とを示す図である。なお、各光学特性は、ゼロ分散波長以外は、波長1550nmにおける値を示している。また、各段の光ファイバの条長はいずれも150mであり、光ファイバデバイスの全長は600mである。この実施例3に係る光ファイバデバイスは、比屈折率差が互いに異なる4本の光ファイバを、パルス光の入力端側から出力端側に向かって、比屈折率差が減少し、波長分散値の絶対値が増加するとともに、ゼロ分散波長が長波長側に移動するように接続している。
【0059】
以下、この実施例3の光ファイバデバイスに、実施例2−2の場合と同様に、中心波長1550nm、パルス幅2.0ps、繰り返し周波数10GHz、平均光強度29.9dBmのガウス形状のパルス光を入力した場合に発生するSC光の計算結果について説明する。
【0060】
図29〜32は、この実施例3の光ファイバデバイスにパルス光を入力した場合に、第1段〜第4段光ファイバの出力端側におけるSC光スペクトルを示す図である。図29〜32に示すように、SC光は、各段の光ファイバ中を伝搬するにつれてスペクトルが拡大する。一方、各段の光ファイバのゼロ分散波長は、後段になるにつれて長波長側に移動するように設定されている。
【0061】
ここで、上述したように、SC光が異常分散領域まで広がってしまうと、MIの発生によって、SC光のノイズ成分が増大する。しかしながら、実施例3の光ファイバデバイスは、各段の光ファイバにおいて、そのスペクトルの裾が常にゼロ分散波長より短波長側に位置するようにゼロ分散波長を設定しているので、SC光のスペクトルが拡大しても、SC光は常に正常分散領域に発生するようになっており、ノイズ成分の少ない、波長平坦性の良好なSC光が発生している。具体的には、図31に示す、光ファイバデバイスから出力するSC光は、その10dB帯域幅が80.86nmと十分広いとともに、3dB帯域幅が35.87nmとなっており、とくに波長平坦性が極めて良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態1に係る光ファイバデバイスを用いたSC光源の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す光ファイバデバイスの各段光ファイバの断面概略図である。
【図3】図1に示す光ファイバデバイスにおける長手方向の位置と波長1550nmにおける波長分散値との関係を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る光ファイバデバイスの側面概略図である。
【図5】図4に示す光ファイバデバイスにおける長手方向の位置と波長1550nmにおける波長分散値との関係を示す図である。
【図6】本発明の実施例、比較例において使用する光ファイバの光学特性を示す図である。
【図7】比較例1の光ファイバデバイスに波長1550nmの連続光を入力した場合に発生するブリユアン散乱光スペクトルを示す図である。
【図8】比較例2の光ファイバデバイスに波長1550nmの連続光を入力した場合に発生するブリユアン散乱光スペクトルを示す図である。
【図9】比較例3の光ファイバデバイスに波長1550nmの連続光を入力した場合に発生するブリユアン散乱光スペクトルを示す図である。
【図10】比較例1〜3の光ファイバデバイスのブリユアンピーク周波数およびSBSしきい値を示す図である。
【図11】実施例2の光ファイバデバイスに、第3段光ファイバ側から、比較例の場合と同様の連続光を入力した場合に発生するブリユアン散乱光スペクトルを示す図である。
【図12】実施例2の光ファイバデバイスに、第1段光ファイバ側から、比較例の場合と同様の連続光を入力した場合に発生するブリユアン散乱光スペクトルを示す図である。
【図13】実施例1、2の光ファイバデバイスのブリユアンピーク周波数およびSBSしきい値を示す図である。
【図14】実施例1−2、2−2および比較例1−2〜1−4の光ファイバデバイスの波長1550nmにおける波長分散特性を示す図である。
【図15】各実施例、比較例において、SC光の特性の計算に用いる入力パルス光の平均強度を示す図である。
【図16】実施例1−2の光ファイバデバイスの第1段光ファイバの出力端側におけるSC光のスペクトルを示す図である。
【図17】実施例1−2の光ファイバデバイスの第2段光ファイバの出力端側におけるSC光のスペクトルを示す図である。
【図18】実施例2−2の光ファイバデバイスの第1段光ファイバの出力端側におけるSC光のスペクトルを示す図である。
【図19】実施例2−2の光ファイバデバイスの第2段光ファイバの出力端側におけるSC光のスペクトルを示す図である。
【図20】実施例2−2の光ファイバデバイスの第3段光ファイバの出力端側におけるSC光のスペクトルを示す図である。
【図21】比較例1−2の光ファイバデバイスの出力端におけるSC光のスペクトルを示す図である。
【図22】比較例1−3の光ファイバデバイスの出力端におけるSC光のスペクトルを示す図である。
【図23】比較例1−4の光ファイバデバイスの出力端におけるSC光のスペクトルを示す図である。
【図24】各実施例、比較例の光ファイバデバイスから出力するSC光のスペクトル帯域幅を示す図である。
【図25】全長が同じである実施例2−2と比較例1−4との光ファイバデバイスに対して、入力するパルス光の平均光強度を変えた場合の、SC光の10dB帯域幅の変化を示す図である。
【図26】比較例1−3と同様の比屈折率差、非線形定数、および条長を有する光ファイバにおいて波長1550nmにおける波長分散値を変化させた場合のSC光スペクトルを示す図である。
【図27】図26に示す場合における波長1550nmの波長分散値と3dB帯域幅および10dB帯域幅との関係を示す図である。
【図28】実施例3の光ファイバデバイスにおいて接続する光ファイバの段番号と、それらの特性とを示す図である。
【図29】実施例3の光ファイバデバイスにパルス光を入力した場合に、第1段光ファイバの出力端側におけるSC光スペクトルを示す図である。
【図30】実施例3の光ファイバデバイスにパルス光を入力した場合に、第2段光ファイバの出力端側におけるSC光スペクトルを示す図である。
【図31】実施例3の光ファイバデバイスにパルス光を入力した場合に、第3段光ファイバの出力端側におけるSC光スペクトルを示す図である。
【図32】実施例3の光ファイバデバイスにパルス光を入力した場合に、第4段光ファイバの出力端側におけるSC光スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 パルス光源
2 光増幅器
3、4 光ファイバデバイス
3a、4a 入力端
3b、4b 出力端
10 SC光源
31、41 第1段光ファイバ
32、42 第2段光ファイバ
31a、32a コア部
31b、32b クラッド部
43 第3段光ファイバ
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の中心波長を有するパルス光の入力を受け付け、入力したパルス光よりも波長帯域が拡張されたパルス光を出力する光ファイバデバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光通信において、伝送容量の増大化・信号速度の高速化に伴い、送受信部及び中継部で光信号処理を行なう場合に、電気的な変換処理を行わずに、光のまま処理を行う全光信号処理技術が、今後のキーテクノロジーとして注目されている。このような全光信号処理を行うデバイスとして、光ファイバ中の非線形効果を用いた光ファイバデバイスや半導体を用いたデバイスなどが研究されている。
【0003】
スーパーコンティニュアム光源(以後SC光源と記載する)は、数十nm〜数百nmといった広帯域なスペクトルを有するパルス光であるスーパーコンティニュアム光(以後SC光と記載する)を発生するパルス光源であり、全光信号処理を行うためのデバイスとしてだけでなく、広帯域光通信用光源や光コヒーレントトモグラフィなどのセンシング用光源としての用途が期待されている(非特許文献1参照)。
【0004】
従来のSC光源は、種光源となるパルス光源、光増幅器、光ファイバから構成される。パルス光源から出力したパルス光は、光増幅器で増幅され光ファイバの入力端に入力する。光ファイバ中では、入力したパルス光によって非線形効果が発生し、この非線形効果によって、パルス光のスペクトルの帯域が拡張し、スペクトルがきわめて広帯域に広がったパルス光、すなわちSC光が光ファイバの出力端から出力する。なお、光ファイバ中で発生する非線形効果は、自己位相変調、相互位相変調、四光波混合、ラマン散乱など複数の非線形現象が混在した状態と考えられる。
【0005】
SC光源においては、その光学特性に対して、光ファイバの波長分散値の設定条件が大きく影響する。そして、SC光源は、光ファイバの波長分散値の設定条件によって大きく2つの方式がある。1つは、非特許文献2のように、光ファイバとして、パルス光の入力端側から出力端側に向かって、異常分散から正常分散に連続的に変化していく分散減少光ファイバを用いる方法である。もう1つは、非特許文献3のように、全長に渡って一様な正常分散の光ファイバを使用する方法である。なお、正常分散光ファイバを用いたSC光源は、スペクトルの平坦性が良いとともに、ノイズが少なくSNR(Signal to Noise Ratio)が良いという利点を有する。また、正常分散光ファイバ中で発生したSC光のスペクトルは、入力するパルス光の中心波長を中心として、長波長側及び短波長側に広がっていく。このとき、光ファイバの波長分散の絶対値が小さいほうが、スペクトルの広がりが大きいことが知られている。
【0006】
【非特許文献1】高良秀彦 他、“スーパーコンティニウム光源によるマルチ光キャリア発生” レーザー研究 第30巻 第1号 p.33 2002年1月
【非特許文献2】K.Mori、 H.Takara、 S.Kawanishi、 M.Saruwatari and T.Morioka “Flatly broadened supercotinuum spectrum generated in a dispersion decreasing fibre with convex dispersion profile” Electron.Lett.、Vol.33、 No.21、 pp.1806-1808、 1997
【非特許文献3】Y.Takushima F.Futami and K.Kikuchi “Generation of over 140-nm wide Super-Continuum from a Normal Dispersion Fiber by using a Mode-Locked Semiconductor Laser Source” IEEE Photon. Technol.Lett.、 Vol.10、 No.11、 pp.1560-1562 (1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般の光ファイバにおいては、波長が長くなるにつれて波長分散値が大きくなるように傾斜している、すなわち正の波長分散スロープを有している。そのため、光ファイバのゼロ分散波長より長波長側の波長領域では、波長分散が正値である異常分散領域となる。異常分散領域においてはスペクトルにMI(Modulation Instability;変調不安定性)が発生するので、SC光のスペクトルが異常分散領域にまで広がると、スペクトル上にノイズやリップルが多くなり、波長平坦性が損なわれるという問題があった。またSC光のスペクトルが正常分散領域内において広がる場合であっても、波長分散の絶対値が小さすぎると、スペクトルの波長に依存した変動が大きくなり、波長平坦性が損なわれるという問題があった。
【0008】
一方、光ファイバ中で発生するSC光を広帯域化する方法として、光ファイバの条長を長くし、光ファイバへ入力するパルス光の強度を高くして、光ファイバ中での非線形効果を増大させる方法がある。しかし、光ファイバの条長を長くしたり、パルス光強度を高くしたりすると、光ファイバ中でのSBS(Stimulated Brillouin Scattering;誘導ブリユアン散乱)が顕著に発生する。SBSは、あるしきい値以上の強度の光が入力すると発生し、入力した光の全てが透過されずに、ブリユアンシフトした光として後方に散乱されてしまう現象である。したがって、SBSしきい値以上の光を光ファイバに入力しても、光ファイバ中での非線形効果は増大しない。そのため、光ファイバへ入力するパルス光の強度には限界があり、SC光の広帯域化が困難であるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、広帯域であってかつ波長平坦性が良好なパルス光を発生することができる光ファイバデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る光ファイバデバイスは、所定の中心波長を有するパルス光の入力を受け付け該入力したパルス光よりも波長帯域が拡張されたパルス光を出力する光ファイバデバイスであって、直列に接続され、前記中心波長における波長分散値が負である複数の光ファイバを備え、前記複数の光ファイバは、クラッド部に対するコア部の比屈折率差が互いに異なるとともに、前記中心波長における波長分散値が互いに異なる光ファイバが隣接するように接続されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る光ファイバデバイスは、上記の発明において、前記複数の光ファイバは、前記中心波長における波長分散の絶対値が前記パルス光の入力端側から出力端側に向かって増加するように接続されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る光ファイバデバイスは、上記の発明において、前記複数の光ファイバは、前記中心波長における波長分散の絶対値が前記パルス光の入力端側から該入力端と出力端との間の所定の位置に向かって増加し、前記所定の位置から前記出力端側に向かって減少するように接続されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る光ファイバデバイスは、上記の発明において、前記複数の光ファイバは、前記比屈折率差が前記パルス光の入力端側から出力端側に向かって減少するように接続されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る光ファイバデバイスは、上記の発明において、前記複数の光ファイバは、前記比屈折率差が2%以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、広帯域であってかつ波長平坦性が良好なパルス光を発生することができる光ファイバデバイスを実現できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、図面を参照して本発明に係る光ファイバデバイスの実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。なお、本明細書において特に定義しない用語については、ITU−T(国際電気通信連合)G.650.1における定義、測定方法に従うものとする。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る光ファイバデバイスを用いたSC光源の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、このSC光源10は、所定の中心波長のパルス光を出力するパルス光源1と、パルス光源1に接続し、パルス光源1が出力したパルス光を増幅する光増幅器2と、光増幅器2に接続し、光増幅器2が増幅したパルス光の入力を受け付けて、波長帯域が拡張されたパルス光であるSC光を出力する光ファイバデバイス3とを備える。
【0018】
パルス光源1は、たとえば光ファイバレーザであり、中心波長1550nm、パルス幅2.0ps、繰り返し周波数10GHzのパルス光を出力する。光増幅器2は、たとえばダブルクラッド型のエルビウム−イットリビウム添加光ファイバ増幅器(EYDFA)であり、パルス光源1が出力したパルス光を最大30dBm程度にまで増幅する。
【0019】
光ファイバデバイス3は、直列に接続した第1段光ファイバ31と、第2段光ファイバ32とを備え、第1段光ファイバ31の一端である入力端3aから光増幅器2が増幅したパルス光の入力を受け付けて、第2段光ファイバ32の一端である出力端3bから波長帯域が拡張されたSC光を出力する。
【0020】
図2は、図1に示す光ファイバデバイスの各段光ファイバの断面概略図である。図2に示すように、第1段光ファイバ31は、コア部31aと、コア部31aの外周に形成され、コア部31aよりも屈折率が低いクラッド部31bとを有する。また、第2段光ファイバ32も同様に、コア部32aと、コア部32aの外周に形成され、コア部32aよりも屈折率が低いクラッド部32bとを有する。さらに、クラッド部31b、32bの外周には、図示しない紫外線硬化樹脂等からなる被覆を有する。
【0021】
第1段光ファイバ31と、第2段光ファイバ32とは、各コア部31a、31bの各クラッド部31b、32bに対する比屈折率差が互いに異なる。したがって、第1段光ファイバ31と、第2段光ファイバ32とは、ブリユアンシフト周波数が互いに異なるものとなる。その結果、光ファイバデバイス3は、同一の全長を有し比屈折率差が長手方向で一様な光ファイバと比較して、SBSのしきい値が高くなるので、SBSを発生させることなくより高い光強度のパルス光を入力することができ、より広帯域のSC光を発生させることができる。なお、各段光ファイバの比屈折率差が2%以上であれば、非線形効果がきわめて高くなるので、より広帯域のSC光を発生させることができる。
なお、比屈折率差は、各コア部31a、31bの屈折率の最高部の値をn1、各クラッド部31b、32bの屈折率をnc、としたとき、式(1)により定義される。
Δ={(n1−nc)/nc}×100 ・・・・・ (1)
【0022】
さらに、第1段光ファイバ31と、第2段光ファイバ32とは、波長1550nmにおける波長分散値が負、すなわち正常分散であって、かつ互いに異なる値になっている。図3は、図1に示す光ファイバデバイス3における長手方向の位置と波長1550nmにおける波長分散値との関係を示す図である。なお、長さL31の領域が第1段光ファイバ31に対応し、長さL32の領域が第2段光ファイバ32に対応する。図3に示すように、第1段光ファイバ31の波長分散値は、長手方向に対してほぼ一様に負の値D1(ps/nm/km)である。さらに、第2段光ファイバ32の波長分散値は、長手方向に対してほぼ一様であって、値D1より小さい負の値D2(ps/nm/km)である。
【0023】
ここで、前述のように、正常分散光ファイバ中で発生したSC光のスペクトルは、光ファイバを伝搬していくうちに、入力するパルス光の中心波長を中心として、長波長側及び短波長側に広がっていく。したがって、第2段光ファイバ32におけるSC光は、第1段光ファイバ31におけるSCよりも長波長側及び短波長側に広がっている。ここで、第2段光ファイバ32の波長分散値は、値D1より小さい負の値D2である。したがって、SC光が長波長側に広がったとしても、長波長側における波長分散値はその絶対値が十分に大きいものとなっており、MI等に起因するスペクトル上のノイズやリップルの増大が抑制される。その結果、第2段光ファイバ32において、波長平坦性が良好なSC光が発生する。
【0024】
以上説明したように、本実施の形態1に係る光ファイバデバイス3を用いれば、広帯域であってかつ波長平坦性が良好なSC光を発生することができる。
【0025】
なお、実施の形態1においては、接続する光ファイバを2段としたが、3段以上の光ファイバを接続し、波長分散の絶対値がパルス光の入力端側から出力端側に向かって増加するようしてもよい。接続する光ファイバの段数を増加することによって、光ファイバデバイスの長手方向におけるSC光のスペクトルの広がりに対応させて、長手方向における波長分散値の分布をより好適な値に設定することができる。
【0026】
また、接続する光ファイバのうち比屈折率差が最も高い光ファイバを第1段とし、その後比屈折率差が大きい順番に光ファイバを接続することが好ましい。このように、接続する光ファイバの比屈折率差がパルス光の入力端側から出力端側に向かって減少するように光ファイバを接続していれば、光ファイバデバイスにおいて、入力端側のパルス光の強度が高い位置に、比屈折率差が大きく非線形効果が効率的に発生しやすい光ファイバを配置することとなるので、非線形効果を効率的に発生させることができる。
【0027】
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2に係る光ファイバデバイスについて説明する。本実施の形態2に係る光ファイバデバイスは、3段の光ファイバが、該光ファイバの波長分散の絶対値がパルス光の入力端側から該入力端側と出力端との間の所定の位置に向かって増加し、この所定の位置から出力端側に向かって減少するように接続されている。
【0028】
図4は、本実施の形態2に係る光ファイバデバイスの側面概略図である。図4に示すように、光ファイバデバイス4は、直列に接続した第1段光ファイバ41と、第2段光ファイバ42と、第3段光ファイバ43とを備える。そして、実施の形態1と同様に、第1段光ファイバ41の一端である入力端4aから光増幅器が増幅したパルス光の入力を受け付けて、第3段光ファイバ43の一端である出力端4bから波長帯域が拡張されたSC光を発生させる。
【0029】
また、実施の形態1と同様に、第1段光ファイバ41、第2段光ファイバ42、第3段光ファイバ43は、それぞれ、コア部と、コア部の外周に形成され、コア部よりも屈折率が低いクラッド部とを有するとともに、比屈折率差が互いに異なっている。したがって、第1段光ファイバ41と、第2段光ファイバ42と、第3段光ファイバ43とは、ブリユアンシフト周波数が互いに異なるものとなるので、SBSしきい値が高くなる。したがって、SBSを発生させることなくより高い光強度のパルス光を入力して、より広帯域のSC光を発生させることができる。
【0030】
図5は、図4に示す光ファイバデバイス4における長手方向の位置と波長1550nmにおける波長分散値との関係を示す図である。なお、長さL41の領域が第1段光ファイバ41に対応し、長さL42の領域が第2段光ファイバ42に対応し、長さL43の領域が第3段光ファイバ43に対応する。図5に示すように、第1段光ファイバ41の波長分散値は、長手方向に対してほぼ一様に負の値D3(ps/nm/km)である。さらに、第2段光ファイバ42の波長分散値は、長手方向に対してほぼ一様であって、値D3より小さい負の値D4(ps/nm/km)である。さらに、第3段光ファイバ43の波長分散値は、長手方向に対してほぼ一様であって、値D4より大きい負の値D5(ps/nm/km)である。
【0031】
この光ファイバデバイス4においては、光ファイバデバイス3と同様に、第2段光ファイバ42の波長分散値が、値D3より小さい負の値D4であるから、第2段光ファイバ42において、SC光が長波長側に広がったとしても、長波長側における波長分散値の絶対値が十分に大きいものとなっており、スペクトル上のノイズやリップルの増大が抑制され、波長平坦性が良好なSC光が発生する。さらに、第3段光ファイバ43において、ノイズやリップルが増大しない程度に波長分散値の絶対値を小さくすることによって、第3段光ファイバ43中で発生する非線形効果を高めている。その結果、ノイズやリップルの増大が抑制されるとともに、さらに広帯域のSC光を発生させることができる。
【0032】
(実施例、比較例)
以下、本発明に係る光ファイバデバイスの実施例および比較例を詳細に説明する。なお、この実施例および比較例によりこの発明が限定されるものではない。
【0033】
図6は、本発明の実施例、比較例において使用する光ファイバの光学特性を示す図である。なお、各光学特性は波長1550nmにおける値である。また、Δはクラッド部に対するコア部の比屈折率差を示す。また、非線形定数γは、波長をλ、コア部の非線形屈折率をn2、有効コア断面積をAeffとして、γ=2πn2/(λAeff)と表される量である。図6に示すファイバ番号1〜3の光ファイバは、いずれも石英系光ファイバであって、コア部はGeを添加したシリカガラスからなり、クラッド部は屈折率調整用ドーパントを添加していない純シリカガラスからなる。また、その光学特性は、長手方向にほぼ一様である。さらに、ファイバ番号1〜3の光ファイバは、いずれも高非線形光ファイバであり、非線形定数γが標準のシングルモード光ファイバよりも約5倍以上大きく、非線形効果を効率的に発生できる。なお、このような高非線形光ファイバは、石英系の光ファイバにおいては、コア部へのGeの添加量を多くし、また有効断面積Aeffを小さくし、コア部への光の閉じ込めを強くすることで実現されている。
【0034】
つぎに、本発明の実施例1として、図6に示すファイバ番号1の光ファイバを第1段光ファイバとし、ファイバ番号2の光ファイバを第2段光ファイバとして接続し構成した光ファイバデバイスを準備した。なお、第1段、第2段光ファイバの条長は、いずれも200mであるので、実施例1の光ファイバデバイスの全長は400mである。同様に、実施例2として、ファイバ番号1、2、3の光ファイバをそれぞれ第1段、第2段、第3段光ファイバとして接続して構成した光ファイバデバイスを準備した。第1段〜第3段光ファイバの条長は、いずれも200mであるので、実施例2の光ファイバデバイスの全長は600mである。
【0035】
一方、比較例1として、ファイバ番号1の光ファイバ1種類のみで構成した光ファイバデバイスを準備した。同様に、比較例2、3として、それぞれファイバ番号2、3の光ファイバのみで構成した光ファイバデバイスを準備した。なお、比較例1〜3の光ファイバデバイスの全長はいずれも600mである。
【0036】
(連続光に対するSBS特性)
はじめに、連続光を入力した場合の各実施例、比較例の光ファイバデバイスのSBSの特性について説明する。図7〜9は、それぞれ比較例1〜3の光ファイバデバイスに波長1550nmの連続光を入力した場合に発生するブリユアン散乱光スペクトルを示す図である。なお、図7〜9のいずれにおいても、横軸はブリユアンシフト周波数を示し、縦軸は相対的なブリユアンゲインを示す。図7〜9に示すように、比較例1〜3の光ファイバデバイスは、比屈折率差が異なるので、ブリユアン散乱光スペクトルにおいて異なる周波数のブリユアンピークを有していた。
【0037】
図10は、比較例1〜3の光ファイバデバイスのブリユアンピーク周波数およびSBSしきい値を示す図である。図10において、SBSしきい値については、全長が600mの値は測定値であり、全長が200m、400mの値は測定値から計算した計算値である。なお、上記計算は、以下の式(2)〜(4)を用いて行なった。
【0038】
Pth=21(KAeff/gBLeff)(1+Δν/ΔνB) ・・・ (2)
Leff={1−exp(−αL)}/α ・・・ (3)
α=(ln10/10)a ・・・ (4)
ただし、Aeff;有効断面積、K;偏光状態に依存するパラメータ(入射光と散乱光が互いに平行な時はK=1、完全にランダムな時はK=2)、L;全長、Leff;有効長、ΔνB;ブリユアンピークのスペクトル幅、Δν;入力光のスペクトル線幅、gB;ピークにおけるブリユアン利得係数、α;損失係数(単位;/km)、a;損失係数(単位;dB/km)である。
【0039】
なお、損失係数aとして、図6に示す伝送損失の値を用いた。また、入力光のスペクトル線幅Δνは200kHzであり、図7〜9においてブリユアンピークのスペクトル幅は約30MHzであったので、式(2)において、(1+Δν/ΔνB)を1として計算を行なった。
【0040】
図10に示すように、比較例1〜3の光ファイバデバイスは、比屈折率差が異なるので、異なる周波数のブリユアンピークおよび異なるしきい値を有していた。また、いずれの光ファイバデバイスも、全長が長くなるにつれてSBSしきい値が低くなっていた。
【0041】
つぎに、実施例の光ファイバデバイスのSBSの特性について説明する。図11、12は、実施例2の光ファイバデバイスに、第3段光ファイバ側あるいは第1段光ファイバ側から、上記比較例の場合と同様の連続光を入力した場合に発生するブリユアン散乱光スペクトルを示す図である。図11、12に示すように、実施例2の光ファイバデバイスは、比屈折率差が異なる3段の光ファイバを接続したので、ブリユアン散乱光スペクトルにおいて主要な3つのブリユアンピークを有していた。
【0042】
図13は、実施例1、2の光ファイバデバイスのブリユアンピーク周波数およびSBSのしきい値を示す図である。
【0043】
図13と図10との比較から示されるように、実施例1の光ファイバデバイスのブリユアンピーク周波数は、9.20GHz、9.59GHzであり、比較例1、2の光ファイバデバイスのそれぞれのブリユアンピーク周波数とほぼ同じ値となっている。すなわち、実施例1の光ファイバデバイスのブリユアンピークは、構成する光ファイバの個々のブリユアンピークを重ねたものとなっている。実施例2も同様である。
【0044】
また、全長が400mである実施例1の光ファイバデバイスのSBSしきい値は、17.53dBmである。この値は、比較例1、2の光ファイバデバイスの全長が400mにおける計算値よりも約1〜4dBだけ高くなっており、全長が200mにおける計算値に近い値となっている。すなわち、実施例1の光ファイバデバイスにおいては、そのSBSしきい値は、光ファイバデバイスの全長が長いにもかかわらず、構成する光ファイバの個々の短い条長におけるSBSしきい値と対比できる程度の値となっている。すなわち、実施例1の光ファイバデバイスは、同一の全長を有し、長手方向で一様な光ファイバからなる比較例1〜3の光ファイバデバイスと比較して、SBSの発生がきわめて抑制されている。
【0045】
さらに、実施例2の光ファイバデバイスのしきい値は、全長が600mでありながら、17.68dBmであり、比較例1〜3の光ファイバデバイスの全長が600mにおける計算値よりも約3〜6dBだけ高くなっており、SBSの発生がさらに抑制されている。
【0046】
(パルス光に対するSBS特性)
つぎに、パルス光を入力した場合の各実施例、比較例の光ファイバデバイスのSBSの特性について説明する。はじめに、図6に示すファイバ番号1の光ファイバを長さ4880mとしたものをテスト光ファイバとして準備した。そして、このテスト光ファイバに、中心波長1550nm、パルス幅2.0ps、繰り返し周波数10GHzのパルス光を入力した場合のSBSしきい値を測定したところ、18.1dBmであった。この結果から、上述した式(2)を用いて、長さが200m、400m、600mの場合のそれぞれのSBSしきい値を計算したところ、その値は、それぞれ29.9dBm、27.0dBm、25.3dBmであった。この値を、図10に示した連続光を入力した場合のSBSしきい値と比較すると、全長が同じ条件では、パルス光入力の場合は、連続光入力の場合に比べ13.2dB程度SBSしきい値が高くなることが分かる。
【0047】
(SC光の特性)
つぎに、本発明の実施例、比較例の光ファイバデバイスにパルス光を入力した場合に発生するSC光の特性について、シミュレーション計算の結果を用いて説明する。図14は、実施例1−2、2−2および比較例1−2〜1−4の光ファイバデバイスの波長1550nmにおける波長分散特性を示す図である。
【0048】
なお、実施例1−2の光ファイバデバイスは、上述した実施例1の光ファイバデバイスと同様の構成を有する。そして、図14に示すように、第1段光ファイバの波長分散値は−1.2ps/nm/kmである。また、第2段光ファイバの波長分散値は−2.0ps/nm/kmである。また、第1段、第2段光ファイバの分散スロープは、いずれも0.022ps/nm2/kmである。
【0049】
同様に、実施例2−2の光ファイバデバイスは、上述した実施例2の光ファイバデバイスと同様の構成を有する。そして、第1段光ファイバの波長分散値は−1.1ps/nm/kmである。また、第2段光ファイバの波長分散値は−1.2ps/nm/kmである。さらに、第3段光ファイバの波長分散値は−1.1ps/nm/kmである。また、第1段〜第3段光ファイバの分散スロープは、いずれも0.022ps/nm2/kmである。
【0050】
同様に、比較例1−2〜1−4の光ファイバデバイスを構成する光ファイバは、波長分散値がそれぞれ−1.2ps/nm/km、−0.9ps/nm/km、−0.8ps/nm/kmであり、分散スロープが、いずれも0.022ps/nm2/kmである。また、条長はそれぞれ200m、400m、600mである。
【0051】
つぎに、各実施例、比較例の光ファイバデバイスにパルス光を入力した場合に発生するSC光の特性の計算結果について説明する。ここで、パルス光として、中心波長1550nm、パルス幅2.0ps、繰り返し周波数10GHzのガウス形状のパルス光を用いた。また、パルス光の強度については、各実施例、比較例の光ファイバデバイスのSBSしきい値と同値の平均光強度とした。なお、SBSしきい値は、図10および13に示した連続光入力の場合のSBSしきい値と、上述したパルス光と連続光とのSBSしきい値の比較結果とから算出した。
【0052】
図15は、各実施例、比較例において、SC光の特性の計算に用いる入力パルス光の平均強度を示す図である。なお、たとえば平均光強度が29.9dBmの場合のパルス光のピークパワーは43Wである。
【0053】
図16、17は、それぞれ実施例1−2の光ファイバデバイスの第1段、第2段光ファイバの出力端側におけるSC光のスペクトルを示す図である。また、図18〜20は、それぞれ実施例2−2の光ファイバデバイスの第1段〜第3段光ファイバの出力端側におけるSC光スペクトルを示す図である。また、図21〜23は、それぞれ比較例1−2〜1−4の光ファイバデバイスの出力端におけるSC光スペクトルを示す図である。なお、各実施例、比較例の光ファイバデバイスの波長分散値は、SC光が最も広がるように最適化されている。
【0054】
図24は、各実施例、比較例の光ファイバデバイスから出力するSC光のスペクトル帯域幅を示す図である。なお、スペクトル中のピークから光強度が10dB下がったレベルにおけるスペクトル帯域幅である10dB帯域幅と、3dB下がったレベルにおけるスペクトル帯域幅である3dB帯域幅を示している。なお、10dB帯域幅はスペクトル全体の幅を表しており、3dB帯域幅はスペクトルの平坦域を表していると考えられる。図24に示すように、各実施例の光ファイバデバイスの出力するSC光は、各比較例と同等以上の3dB帯域幅を維持しながら、比較例より広い10dB帯域幅を実現している。特に、実施例2−2の光ファイバデバイスにおいては、第3段光ファイバの波長分散の絶対値を、第2段光ファイバの波長分散の絶対値よりも小さくすることによって、パルス光の時間的形状の変化や、ピークパワーの減衰を補うようにしており、きわめて広帯域のSC光が発生している。
【0055】
つぎに、図25は、全長が同じである実施例2−2と比較例1−4との光ファイバデバイスに対して、入力するパルス光の平均光強度を変えた場合の、SC光の10dB帯域幅の変化を示す図である。図25に示すように、いずれの光ファイバデバイスにおいても、平均光強度が増加するについて10dB帯域幅が広がっていく。比較例1−4の光ファイバデバイスは、SBSしきい値すなわち有効な平均光強度の上限値が25.3dBmであり、この平均光強度における10dB帯域幅である55.0nmがSC光の広がりの上限である。しかしながら、実施例2−2の光ファイバデバイスは平均光強度の上限値が29.9dBmであり、対応する10dB帯域幅は81.5nmであり、きわめて広帯域のSC光を出力できる。
【0056】
ところで、上述したように、各実施例、比較例の光ファイバデバイスの波長分散値は、SC光が最も広がるように最適化されている。以下、比較例1−3を例として、最適化の手順について説明する。
【0057】
図26は、比較例1−3と同様の比屈折率差、非線形定数、および条長を有する光ファイバにおいて波長1550nmにおける波長分散値を変化させた場合のSC光スペクトルを示す図である。なお、入力するパルス光については、図15に示す比較例1−3の場合と同様のものとしている。図26に示すように、波長分散値が小さいほうがスペクトルの広がりは大きいが、小さすぎるとMIによるノイズやリップルが増加したり、スペクトルの平坦性が劣化したりする。図27は、図26に示す場合における波長1550nmの波長分散値と3dB帯域幅および10dB帯域幅との関係を示す図である。図27に示すように、3dB帯域幅および10dB帯域幅は、いずれも波長分散値が−0.9ps/nm/kmの場合にもっとも大きくなるので、比較例1−3においては波長分散値を−0.9ps/nm/kmとしている。なお、比較例1−2、1−4、実施例1−2、2−2についても、同様の方法で波長分散値の最適化を行なっている。
【0058】
つぎに、本発明の実施例3について説明する。図28は、実施例3の光ファイバデバイスにおいて接続する光ファイバの段番号と、それらの特性とを示す図である。なお、各光学特性は、ゼロ分散波長以外は、波長1550nmにおける値を示している。また、各段の光ファイバの条長はいずれも150mであり、光ファイバデバイスの全長は600mである。この実施例3に係る光ファイバデバイスは、比屈折率差が互いに異なる4本の光ファイバを、パルス光の入力端側から出力端側に向かって、比屈折率差が減少し、波長分散値の絶対値が増加するとともに、ゼロ分散波長が長波長側に移動するように接続している。
【0059】
以下、この実施例3の光ファイバデバイスに、実施例2−2の場合と同様に、中心波長1550nm、パルス幅2.0ps、繰り返し周波数10GHz、平均光強度29.9dBmのガウス形状のパルス光を入力した場合に発生するSC光の計算結果について説明する。
【0060】
図29〜32は、この実施例3の光ファイバデバイスにパルス光を入力した場合に、第1段〜第4段光ファイバの出力端側におけるSC光スペクトルを示す図である。図29〜32に示すように、SC光は、各段の光ファイバ中を伝搬するにつれてスペクトルが拡大する。一方、各段の光ファイバのゼロ分散波長は、後段になるにつれて長波長側に移動するように設定されている。
【0061】
ここで、上述したように、SC光が異常分散領域まで広がってしまうと、MIの発生によって、SC光のノイズ成分が増大する。しかしながら、実施例3の光ファイバデバイスは、各段の光ファイバにおいて、そのスペクトルの裾が常にゼロ分散波長より短波長側に位置するようにゼロ分散波長を設定しているので、SC光のスペクトルが拡大しても、SC光は常に正常分散領域に発生するようになっており、ノイズ成分の少ない、波長平坦性の良好なSC光が発生している。具体的には、図31に示す、光ファイバデバイスから出力するSC光は、その10dB帯域幅が80.86nmと十分広いとともに、3dB帯域幅が35.87nmとなっており、とくに波長平坦性が極めて良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態1に係る光ファイバデバイスを用いたSC光源の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す光ファイバデバイスの各段光ファイバの断面概略図である。
【図3】図1に示す光ファイバデバイスにおける長手方向の位置と波長1550nmにおける波長分散値との関係を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る光ファイバデバイスの側面概略図である。
【図5】図4に示す光ファイバデバイスにおける長手方向の位置と波長1550nmにおける波長分散値との関係を示す図である。
【図6】本発明の実施例、比較例において使用する光ファイバの光学特性を示す図である。
【図7】比較例1の光ファイバデバイスに波長1550nmの連続光を入力した場合に発生するブリユアン散乱光スペクトルを示す図である。
【図8】比較例2の光ファイバデバイスに波長1550nmの連続光を入力した場合に発生するブリユアン散乱光スペクトルを示す図である。
【図9】比較例3の光ファイバデバイスに波長1550nmの連続光を入力した場合に発生するブリユアン散乱光スペクトルを示す図である。
【図10】比較例1〜3の光ファイバデバイスのブリユアンピーク周波数およびSBSしきい値を示す図である。
【図11】実施例2の光ファイバデバイスに、第3段光ファイバ側から、比較例の場合と同様の連続光を入力した場合に発生するブリユアン散乱光スペクトルを示す図である。
【図12】実施例2の光ファイバデバイスに、第1段光ファイバ側から、比較例の場合と同様の連続光を入力した場合に発生するブリユアン散乱光スペクトルを示す図である。
【図13】実施例1、2の光ファイバデバイスのブリユアンピーク周波数およびSBSしきい値を示す図である。
【図14】実施例1−2、2−2および比較例1−2〜1−4の光ファイバデバイスの波長1550nmにおける波長分散特性を示す図である。
【図15】各実施例、比較例において、SC光の特性の計算に用いる入力パルス光の平均強度を示す図である。
【図16】実施例1−2の光ファイバデバイスの第1段光ファイバの出力端側におけるSC光のスペクトルを示す図である。
【図17】実施例1−2の光ファイバデバイスの第2段光ファイバの出力端側におけるSC光のスペクトルを示す図である。
【図18】実施例2−2の光ファイバデバイスの第1段光ファイバの出力端側におけるSC光のスペクトルを示す図である。
【図19】実施例2−2の光ファイバデバイスの第2段光ファイバの出力端側におけるSC光のスペクトルを示す図である。
【図20】実施例2−2の光ファイバデバイスの第3段光ファイバの出力端側におけるSC光のスペクトルを示す図である。
【図21】比較例1−2の光ファイバデバイスの出力端におけるSC光のスペクトルを示す図である。
【図22】比較例1−3の光ファイバデバイスの出力端におけるSC光のスペクトルを示す図である。
【図23】比較例1−4の光ファイバデバイスの出力端におけるSC光のスペクトルを示す図である。
【図24】各実施例、比較例の光ファイバデバイスから出力するSC光のスペクトル帯域幅を示す図である。
【図25】全長が同じである実施例2−2と比較例1−4との光ファイバデバイスに対して、入力するパルス光の平均光強度を変えた場合の、SC光の10dB帯域幅の変化を示す図である。
【図26】比較例1−3と同様の比屈折率差、非線形定数、および条長を有する光ファイバにおいて波長1550nmにおける波長分散値を変化させた場合のSC光スペクトルを示す図である。
【図27】図26に示す場合における波長1550nmの波長分散値と3dB帯域幅および10dB帯域幅との関係を示す図である。
【図28】実施例3の光ファイバデバイスにおいて接続する光ファイバの段番号と、それらの特性とを示す図である。
【図29】実施例3の光ファイバデバイスにパルス光を入力した場合に、第1段光ファイバの出力端側におけるSC光スペクトルを示す図である。
【図30】実施例3の光ファイバデバイスにパルス光を入力した場合に、第2段光ファイバの出力端側におけるSC光スペクトルを示す図である。
【図31】実施例3の光ファイバデバイスにパルス光を入力した場合に、第3段光ファイバの出力端側におけるSC光スペクトルを示す図である。
【図32】実施例3の光ファイバデバイスにパルス光を入力した場合に、第4段光ファイバの出力端側におけるSC光スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 パルス光源
2 光増幅器
3、4 光ファイバデバイス
3a、4a 入力端
3b、4b 出力端
10 SC光源
31、41 第1段光ファイバ
32、42 第2段光ファイバ
31a、32a コア部
31b、32b クラッド部
43 第3段光ファイバ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の中心波長を有するパルス光の入力を受け付け該入力したパルス光よりも波長帯域が拡張されたパルス光を出力する光ファイバデバイスであって、
直列に接続され、前記中心波長における波長分散値が負である複数の光ファイバを備え、前記複数の光ファイバは、クラッド部に対するコア部の比屈折率差が互いに異なるとともに、前記中心波長における波長分散値が互いに異なる光ファイバが隣接するように接続されていることを特徴とする光ファイバデバイス。
【請求項2】
前記複数の光ファイバは、前記中心波長における波長分散の絶対値が前記パルス光の入力端側から出力端側に向かって増加するように接続されていることを特徴とする請求項1に記載した光ファイバデバイス。
【請求項3】
前記複数の光ファイバは、前記中心波長における波長分散の絶対値が前記パルス光の入力端側から該入力端と出力端との間の所定の位置に向かって増加し、前記所定の位置から前記出力端側に向かって減少するように接続されていることを特徴とする請求項1に記載した光ファイバデバイス。
【請求項4】
前記複数の光ファイバは、前記比屈折率差が前記パルス光の入力端側から出力端側に向かって減少するように接続されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載した光ファイバデバイス。
【請求項5】
前記複数の光ファイバは、前記比屈折率差が2%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載した光ファイバデバイス。
【請求項1】
所定の中心波長を有するパルス光の入力を受け付け該入力したパルス光よりも波長帯域が拡張されたパルス光を出力する光ファイバデバイスであって、
直列に接続され、前記中心波長における波長分散値が負である複数の光ファイバを備え、前記複数の光ファイバは、クラッド部に対するコア部の比屈折率差が互いに異なるとともに、前記中心波長における波長分散値が互いに異なる光ファイバが隣接するように接続されていることを特徴とする光ファイバデバイス。
【請求項2】
前記複数の光ファイバは、前記中心波長における波長分散の絶対値が前記パルス光の入力端側から出力端側に向かって増加するように接続されていることを特徴とする請求項1に記載した光ファイバデバイス。
【請求項3】
前記複数の光ファイバは、前記中心波長における波長分散の絶対値が前記パルス光の入力端側から該入力端と出力端との間の所定の位置に向かって増加し、前記所定の位置から前記出力端側に向かって減少するように接続されていることを特徴とする請求項1に記載した光ファイバデバイス。
【請求項4】
前記複数の光ファイバは、前記比屈折率差が前記パルス光の入力端側から出力端側に向かって減少するように接続されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載した光ファイバデバイス。
【請求項5】
前記複数の光ファイバは、前記比屈折率差が2%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載した光ファイバデバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
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【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公開番号】特開2009−31605(P2009−31605A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196642(P2007−196642)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
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