光ファイバホルダおよびそれを備えた光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具
【課題】光ファイバの切断工具に対して容易に取り外しができ、光ファイバの正確な切断が可能な低コストの光ファイバホルダ、および、それを備えた光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具を提供する。
【解決手段】光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具のホルダ取付部に着脱可能に取付けられ、光ファイバの位置を保持する光ファイバホルダであって、光ファイバホルダは、筐体部と、筐体部内に形成された光ファイバを保持する保持部を備え、筐体部の弾性変形によってホルダ取付部に予圧をもって固定されることを特徴とする光ファイバホルダ。
【解決手段】光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具のホルダ取付部に着脱可能に取付けられ、光ファイバの位置を保持する光ファイバホルダであって、光ファイバホルダは、筐体部と、筐体部内に形成された光ファイバを保持する保持部を備え、筐体部の弾性変形によってホルダ取付部に予圧をもって固定されることを特徴とする光ファイバホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具のホルダ取付部に着脱可能に取付けられ、光ファイバの位置を保持する光ファイバホルダ、および、それを備えた光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバどうしを接続する方法の1つに、融着接続方法がある。この方法によると、被覆除去工具で光ファイバ素線の先端部の被覆を除去すし、このように被覆が除去され露出した光ファイバを所定の長さに光ファイバ切断工具によって切断し、次いで融着接続装置によって、光ファイバの先端どうしを突き合わせて融着する。一般的に被覆除去や切断の際には、光ファイバは光ファイバホルダを介して被覆除去工具や光ファイ切断工具に位置決めされる。
【0003】
図12および図13に従来の光ファイバ切断工具を示す。図12は、光ファイバ切断工具の蓋部を開いた状態を示す概略図である。図13は、光ファイバ切断工具の蓋部を閉じた状態を示す概略図である。図12および図13を参照して、従来の光ファイバ切断工具の構造および光ファイバ切断工具カッタを用いて光ファイバを切断する方法を以下に説明する。
【0004】
図12に示すように、光ファイバを切断する光ファイバ工具100は、例えば、金属製の本体部101と、本体部の上部に取り付けられる蓋部102からなっている。本体部の上面103には、光ファイバまたはテープ心線を保持する光ファイバホルダを位置決めするホルダガイド104が設けられ、図示しない光ファイバホルダがホルダガイドに配置され位置決めされる。ホルダガイドは、例えば、矩形の凹部からなっている。
【0005】
上面103の中央部には円形の刃部105が露出する露出孔106が形成され、本体部の上面103の下方から露出孔を経て刃部が上方に突出して露出する。本体部101には、スライド自在のスライダ107が装着され、スライダ107に刃部105が取り付けられ固定されている。本体部の上面に形成された露出孔106の両側部には露出孔を挟むように、一対の下部クランプ108が設けられている。
【0006】
蓋部102は、支軸を介して本体部の上面に、ねじりバネ114によって開閉自在に取り付けられている。蓋部102の本体部と対向する面には、枕部111、および、一対の上部クランプ109が設けられている。蓋部が閉じられると、一対の上部クランプ109は、対応する一対の下部クランプ108と共に光ファイバを挟み込む。
【0007】
枕部111は、(図示しない)圧縮バネの反発によって通常は突出した状態であり、光ファイバに曲げを与える状態に保持されている。刃部105のスライドと枕部111の移動とが、連動するように配置されている。即ち、枕部111には、下方に伸びる枕部支持片110が配置され、他方、刃部のスライダには、上部に突き出て枕部支持片110に当接する突起部115が設けられている。光ファイバに傷をつけるまでの段階は、枕部支持片110と突起部115が当接して枕部111が光ファイバと非接触の状態に押し戻される。光ファイバに傷が付けられると、突起部115は、枕部支持片の下方を通り過ぎ、圧縮バネの押圧力により枕部が突出されて光ファイバに曲げを加えて、光ファイバが切断される。
【0008】
上述の光ファイバ切断工具は次のようにして光ファイバを切断する。
即ち、光ファイバ心線の端部における被覆を除去して光ファイバを露出した状態で、光ファイバホルダに保持する。このとき、光ファイバが光ファイバホルダから露出した状態にしておく。蓋部102を開き、光ファイバが保持された光ファイバホルダをホルダガイド104で位置決めする。光ファイバは、上下部クランプによって挟み込まれる。このときは、上述したように枕部支持片が突起部に当接して枕部が押し戻された状態にある。次に、スライダをスライドさせて、刃部を光ファイバに接触させて傷をつける。光ファイバに傷が付けられると、上述したように、枕部支持片の下方を突起部が通過し、枕部が突出した状態に復帰されて、光ファイバに曲げを与える。光ファイバには刃部の両側において上下部クランプによって挟みこまれているので、張力が与えられて光ファイバが破断される。切断が終わると、光ファイバカッタから光ファイバホルダを外し、光ファイバホルダから光ファイバ心線を取り出す。
【0009】
上述したように光ファンバを光ファイバホルダに予め保持しておき、光ファイバが保持された光ファイバホルダを光ファイバ切断工具や被覆除去工具に位置決めするもののほか、工具に光ファイバホルダに固定しておき、固定された光ファイバホルダに光ファイバを保持するものもある。図9および図10は、光ファイバホルダを工具に固定する従来の方法を模式的に示す図である。
なお、以下は光ファイバ切断工具を例に説明する。図9は、平面図、図10は側面図をそれぞれ概略示す。光ファイバを一定の長さにカットする切断工具では、光ファイバ心線またはテープ心線の固定および位置決めを容易にするために、光ファイバを工具に固定する光ファイバホルダを使用する。図9および図10に示すように、光ファイバやテープ心線を保持する光ファイバホルダをネジ等によって、光ファイバ切断工具のホルダ取付部にネジ121によって固定されている。
【0010】
その他、ボールプランジャーを用いて、取り外し可能な光ファイバホルダもある。なお、いずれの場合においても、光ファイバホルダ、ホルダ取付部、ホルダガイドは典型的には金属などの硬い材質からできていた。
【特許文献1】特開2001−356216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した光ファイバホルダをネジで固定する方法は、所望の位置に光ファイバホルダを配置するのに時間がかかり、更に、光ファイバホルダの取り外しにドライバー等の工具が必要であり、外部で光ファイバの切断作業を行うときには特定の工具を準備しなければならず、取り外しが容易でなかった。また、あらかじめ光ファイバ心線に取り付けるホルダの場合は、図11に示すように、例えば、光ファイバ切断工具100の光ファイバホルダ120の位置決めをするホルダガイド104は、光ファイバホルダの取り外しが容易なように、所定のクリアランス123を備えている。クリアランスは光ファイバホルダの取り外しを容易にするけれども、ホルダガイド内での微小な動きが可能である。従って、ホルダガイドに光ファイバホルダを配置するだけでは、クリアランスが存在するので、光ファイバホルダが微小な動きをしないようにがホルダガイドに配置し、固定することは困難であり、光ファイバを斜めにカットしてしまったり、位置がずれたりする状態であった。
【0012】
この場合は、光ファイバを再度カットする必要があり、気づかずにこのまま光コネクタやメカニカルスプライス(光ファイバ接続部品)を組み立てると、接続損失が規格内に収まらず再組み立てが必要になり工事に時間がかかってしまうという問題点があった。更に、ボールプランジャー等の部品を用いてホルダを固定する場合には、光ファイバカッタの部品点数が増えてしまって高価になってしまうという問題点がある。
更に、FTTHの普及によって、現地での工事時間の短縮がもとめられている。
【0013】
従って、この発明の目的は、光ファイバの切断工具に対して容易に取り外しができ、光ファイバの正確な切断が可能な低コストの光ファイバホルダ、および、それを備えた光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上述した従来技術の問題点を解決すべく鋭意研究の結果なされたものである。
この発明の光ファイバホルダの第1の態様は、光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具のホルダ取付部に着脱可能に取付けられ、前記光ファイバの位置を保持する光ファイバホルダであって、
前記光ファイバホルダは、筐体部と、前記筐体部内に形成された光ファイバを保持する保持部を備え、前記筐体部の弾性変形によって前記ホルダ取付部に予圧をもって固定されることを特徴とする光ファイバホルダである。
【0015】
この発明の光ファイバホルダの第2の態様は、前記光ファイバホルダは前記筐体部と一体的に形成された固定部材を備え、前記固定部材又は/及び前記筐体部の弾性変形によって前記ホルダ取付部に予圧をもって固定されることを特徴とする光ファイバホルダである。
【0016】
この発明の光ファイバホルダの第3の態様は、前記固定部材又は/及び筐体部の弾性変形は、前記保持部に伝播しないことを特徴とする光ファイバホルダである。
【0017】
この発明の光ファイバホルダの第4の態様は、前記固定部材又は/及び筐体部の弾性変形は、前記保持部に伝播しないよう、前記筐体部又は前記固定部材に空洞部を備えたことを特徴とする光ファイバホルダである。
【0018】
この発明の光ファイバホルダの第5の態様は、前記固定部材又は/及び筐体部の弾性変形は、前記保持部に伝播しないよう、前記筐体部又は前記固定部材に薄肉部を備えたことを特徴とする光ファイバホルダである。
【0019】
この発明の光ファイバホルダの第6の態様は、前記光ファイバホルダは係止凸部を有し、前記ホルダ取付部の係止凹部と係止されて固定されることを特徴とする光ファイバホルダである。
【0020】
この発明の光ファイバホルダの第7の態様は、前記光ファイバホルダは係止凹部を有し、前記ホルダ取付部の係止凸部と係止されて固定されることを特徴とする光ファイバホルダである。
【0021】
この発明の光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具の第1の態様は、上述した態様の光ファイバホルダを備えた光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具である。
【0022】
この発明の光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具の第2の態様は、光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具であって、前記工具は、前記光ファイバの位置を保持する光ファイバホルダが着脱自在に取付られるホルダ取付部を備え、
前記ホルダ取付部の弾性変形によって前記光ファイバホルダが前記ホルダ取付部に予圧をもって固定されることを特徴とする光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具である。
【0023】
この発明の光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具の第3の態様は、前記ホルダ取付部は係止凸部を有し、前記光ファイバホルダの係止凹部と係止されて固定されることを特徴とする光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具である。
【0024】
この発明の光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具の第4の態様は、前記ホルダ取付部は係止凹部を有し、前記光ファイバホルダの係止凸部と係止されて固定されることを特徴とする光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具である。
【発明の効果】
【0025】
この発明によると、工具を使用しないで光ファイバホルダを取り外しすることができる。更に、光ファイバホルダとホルダ取付部は予圧をもって固定されるのでがたつきを無くし光ファイバをより正確に切断することができる。また、上述の予圧は光ファイバホルダの筐体部自体の弾性変形や、筐体部と一体的に形成された固定部材の弾性変形、あるいはホルダ取付部の弾性変形によって付加されるので、ボールプランジャなど予圧を付加するための特別な機構を設ける必要がない。即ち、この発明によると、光ファイバの切断工具に対して容易に取り外しができ、工事時間を短縮することができ、光ファイバの正確な切断が可能な低コストの光ファイバホルダ、および、それを備えた光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
この発明の光ファイバホルダおよびそれを備えた光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具を図面を参照しながら詳細に説明する。
この発明の光ファイバホルダの第1の態様は、光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具のホルダ取付部に着脱可能に取付けられ、前記光ファイバの位置を保持する光ファイバホルダであって、
前記光ファイバホルダは、筐体部と、前記筐体部内に形成された光ファイバを保持する保持部を備え、前記筐体部の弾性変形によって前記ホルダ取付部に予圧をもって固定されることを特徴とする光ファイバホルダである。
【0027】
即ち、光ファイバホルダは、光ファイバを切断またはその被覆を除去する工具のホルダ取付部に脱着可能に取り付けられる。光ファイバは、筐体と筐体内に形成された光ファイバを保持する保持部とを備えている。筐体部は所定の弾性を備えた材料で形成され、筐体部そのもの、または、筐体部の一部が弾性変形して、ホルダ取付部に予圧をもって固定される。換言すれば、筐体部そのものが弾性変形して、ホルダ取付部に予圧をもって固定される。
【0028】
筐体部は、筐体部と例えば樹脂の一体成形などにより一体的に形成された固定部材を、更に備えていてもよい。即ち、筐体部の一部が例えば突出して突出部を形成し、突出部及び/又は筐体部が弾性変形して、光ファイバホルダをホルダ取付部に予圧をもって固定する。ところで、筐体部の弾性変形量が大きい場合は筐体部に形成された光ファイバ保持部にも弾性変形が伝播し光ファイバの位置決め精度を低下させるが、固定部材を設けた場合は筐体部の弾性変形が少ない場合でも固定部材が弾性変形することで十分な予圧を生じさせることができるので有効である。また、筐体部自体を十分に弾性変形させるには着脱作業に支障をきたすほどの大きな力を必要とする場合であっても、固定部材の肉厚などを小さめにすることで適正な着脱力を設定することもできる。また、筐体部や固定部材に空洞部や薄肉部を設けた場合は光ファイバ保持部への弾性変形の伝播をより効果的に抑制できる。
【0029】
図1は、この発明の光ファイバホルダの1つの態様を説明する模式図である。図1に示すように、光ファイバホルダ1は、筐体部9と、保持部3と、更に突起状の固定部材4、空洞部5を備えている。この態様においては、筐体部9と固定部材4はPOM(可能ならPOMの正式名称、詳細説明を追加して下さい。)の一体成形により形成されている。
【0030】
図2は、この発明の光ファイバホルダを光ファイバを切断する工具に取り付けた状態を説明する概略平面図である。工具の本体部には刃部15が備えられ、刃部15の両側には光ファイバの被覆を除去して光ファイバ6を露出した状態で固定するクランプ18が刃部15を挟むように配置されている。光ファイバホルダ1は、工具本体の上面部8に設けられた例えば矩形の凹部からなるホルダ取付部7に嵌め込まれる。図2に示すように、光ファイバホルダ1をホルダ取付部7に嵌め込むと筐体部9及び固定部材4は弾性変形する。即ち、、筐体部9の側面に形成された固定部材4とホルダ取付部7の側壁には予圧が生じがたつくことなく固定できる。
【0031】
固定部材4に対応する筐体部内部の位置には空洞部5が形成されており、筐体部及び固定部材の弾性変形が空洞部5によって吸収される。即ち、筐体部9及び固定部材4の弾性変形は保持部3に伝播することはない。なお、空洞部5を設けることにより筐体部9が変形しやすくなり着脱に要する力を低減することもできる。
【実施例1】
【0032】
図3は、光ファイバホルダをホルダ取付部に固定する1例を説明する部分断面の模式図である。この態様の光ファイバホルダ1は、筐体部9のみの弾性変形によって、ホルダ取付部に予圧をもって固定される。図3に示すように、矩形の凹部からなるホルダ取付部7の凹部の幅dの長さよりも光ファイバホルダ1の幅方向の長さの方が大きく、光ファイバホルダ1そのものが弾性変形して、ホルダ取付部の凹部内に押し込まれる。即ち、光ファイバホルダの弾性変形によって予圧をもってホルダ取付部の両側壁部に固定される。この場合には、固定部材などを設けないので筐体部9のみを成形すればよく低コストで実現できる。
【実施例2】
【0033】
図4は、光ファイバホルダをホルダ取付部に固定する他の例を説明する部分断面の模式図である。この態様の光ファイバホルダ1は、筐体部9の底面にホルダ取付部に向かって突出する1対の脚状の固定部材11、11を備えており、ホルダ取付部には、1対の脚部11、11に対応する突出部12を備えている。1対の固定部材11、11は対向するそれぞれの内側の壁面の間に突出部12を挟みこむように配置される。
【0034】
光ファイバホルダの1対の固定部材及び筐体部9はPOMで一体成形により形成され、所望の弾性を備えており、1対の固定部材11、11脚部の弾性変形によって予圧をもってホルダ取付部の柱状の突出部に固定される。この場合には実施例1のように筐体部9自体を弾性変形させる場合に比べて、光ファイバ保持部に弾性変形が伝播しにくく、光ファイバの位置決め精度の低下を抑制しやすい。また、他の設計要因により決定される筐体部9の寸法に関わらずに固定部材11、11の寸法を決定できるので、着脱力の設定の自由が高くなる。
【実施例3】
【0035】
図5は、光ファイバホルダをホルダ取付部に固定する他の状況を説明する部分断面の模式図である。この態様の光ファイバホルダ1は、筐体部9の底面中央部にホルダ取付部に向かって突出する脚状の固定部材13を備えており、ホルダ取付部7の中央部には、固定部材13に対応する凹状のホルダ取付部14を備えている。固定部材13はホルダ取付部14に予圧をもって嵌め込まれ、工具と光ファイバホルダが固定される。この場合にも実施例1のように筐体部9自体を弾性変形させる場合に比べて、光ファイバ保持部に弾性変形が伝播しにくく、光ファイバの位置決め精度の低下を抑制しやすい。また、他の設計要因により決定される筐体部9の寸法に関わらずに固定部材11、11の寸法を決定できるので、着脱力の設定の自由が高くなる。
【実施例4】
【0036】
図6は、光ファイバホルダをホルダ取付部に固定する他の例を説明する部分断面の模式図である。この態様の光ファイバホルダ1は、実施例1と同様に筐体部9のみの弾性変形によって、ホルダ取付部に予圧をもって固定される。図6に示すように、矩形の凹部からなるホルダ取付部7の凹部の幅dの長さよりも光ファイバホルダ1の幅方向の長さの方が大きく、光ファイバホルダ1そのものが弾性変形して、ホルダ取付部の凹部内に押し込まれる。即ち、光ファイバホルダの弾性変形によって予圧をもってホルダ取付部の両側壁部に固定される。本態様が実施例1と異なる点は、光ファイバホルダ1の筐体部9の両側端部には、筐体部の長手方向(即ち、光ファイバの軸方向)に沿って、それぞれ空洞部20が設けられている。空洞部20は例えば断面形状が矩形からなっている。
【0037】
筐体部9の弾性変形は、空洞部5によって吸収される。即ち、筐体部9及び固定部材4の弾性変形は保持部3に伝播することはない。なお、空洞部5を設けることにより筐体部9が変形しやすくなり着脱に要する力を低減することもできる。なお、変形を吸収する断面形状が矩形空洞部の代わりに、完全に空洞ではなく、図中の横方向の変形を吸収する薄肉部であってもよい。
【実施例5】
【0038】
図7は、光ファイバホルダをホルダ取付部に固定する他の例を説明する部分断面の模式図である。光ファイバホルダ1は、工具本体の上面部8に設けられた例えば矩形の凹部からなるホルダ取付部7に嵌め込まれる。この態様においては、ホルダ取付部7の両側壁中央部には横方向に突出する係止凸部21が形成されている。光ファイバホルダ1は、筐体部の両側面中央部にホルダ取付部7の係止凸部21に対応する、係止凹部26を備えている。係止凸部21および係止凹部26の断面形状は、図に示すように概ね三角形であっても、矩形であってもよい。光ファイバホルダ1の筐体部の両側面に形成された係止凹部26が、ホルダ取付部7の両側壁中央部に形成された係止凸部21と係止されて固定される。
【0039】
光ファイバホルダの筐体部9は所望の弾性を備えており、筐体部9の弾性変形によって予圧をもってホルダ取付部に固定されるが、筐体部9とホルダ取付部の摩擦以外に係止凸部21、係止凹部26の係止が固定に寄与するので位置決めがより容易であり少ない着脱力で着脱が可能である。なお、図7においては係止凸部21をホルダ取付部側に、係止凹部26を光ファイバホルダ側に設けたが、図8に示すように、係止凸部21を光ファイバホルダ側に、係止凹部26をホルダ取付部側に設けてもよい。
【実施例6】
【0040】
実施例1乃至5においては、光ファイバホルダの筐体部9や固定部材を弾性変形させてホルダ取付部に予圧をもって固定していたが、光ファイバホルダは従来通り例えば金属などの硬い材料で形成し、ホルダ取付部をバネ材、樹脂など弾性変形し得る材質で形成し、ホルダ取付部を弾性変形させて光ファイバホルダを予圧をもって固定してもよい。この場合に実施例5に示すよう、係止凸部と係止凹部を係止させる態様を組合わせることも勿論可能である。また、光ファイバホルダの筐体部や固定部材及び、ホルダ取付部の双方を弾性変形させ、予圧をもって固定することもできるのはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この発明によると、光ファイバの切断工具に対して容易に取り外しができ、工事時間を短縮することができ、光ファイバの正確な切断が可能な低コストの光ファイバホルダ、および、それを備えた光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具を提供することができ、産業上利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、この発明の光ファイバホルダの1つの態様を説明する模式図である。
【図2】図2は、この発明の光ファイバホルダを光ファイバを切断する工具に取り付けた状態を説明する概略平面図である。
【図3】図3は、光ファイバホルダをホルダ取付部に固定する状況を説明する部分断面の模式図である。
【図4】図4は、光ファイバホルダをホルダ取付部に固定する他の状況を説明する部分断面の模式図である。
【図5】図5は、光ファイバホルダをホルダ取付部に固定する他の状況を説明する部分断面の模式図である。
【図6】図6は、光ファイバホルダをホルダ取付部に固定する他の状況を説明する部分断面の模式図である。
【図7】図7は、光ファイバホルダをホルダ取付部に固定する他の状況を説明する部分断面の模式図である。
【図8】図8は、光ファイバホルダをホルダ取付部に固定する他の状況を説明する部分断面の模式図である。
【図9】図9は、光ファイバホルダをファイバガイドに固定する従来の方法を模式的に示す図である。
【図10】図10は、光ファイバホルダをファイバガイドに固定する従来の方法を模式的に示す図である。
【図11】図11は、光ファイバホルダをファイバガイドに固定する従来の別の方法を模式的に示す図である。
【図12】図12は、蓋部を開放した従来の光ファイバカッタを示す斜視図である。
【図13】図13は、蓋部を閉じた従来の光ファイバカッタを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
・ 光ファイバホルダ
2.光ファイバ心線
3.保持部
4.突起部
5.空洞部
6.光ファイバ
7.ホルダ取付部
8.上面部
9.筐体部
11、13、22.脚部
12.突出部
14.窪み部
15.刃部
18.クランプ
20.空洞部
21、23.係止凸部
25、26.係止凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具のホルダ取付部に着脱可能に取付けられ、光ファイバの位置を保持する光ファイバホルダ、および、それを備えた光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバどうしを接続する方法の1つに、融着接続方法がある。この方法によると、被覆除去工具で光ファイバ素線の先端部の被覆を除去すし、このように被覆が除去され露出した光ファイバを所定の長さに光ファイバ切断工具によって切断し、次いで融着接続装置によって、光ファイバの先端どうしを突き合わせて融着する。一般的に被覆除去や切断の際には、光ファイバは光ファイバホルダを介して被覆除去工具や光ファイ切断工具に位置決めされる。
【0003】
図12および図13に従来の光ファイバ切断工具を示す。図12は、光ファイバ切断工具の蓋部を開いた状態を示す概略図である。図13は、光ファイバ切断工具の蓋部を閉じた状態を示す概略図である。図12および図13を参照して、従来の光ファイバ切断工具の構造および光ファイバ切断工具カッタを用いて光ファイバを切断する方法を以下に説明する。
【0004】
図12に示すように、光ファイバを切断する光ファイバ工具100は、例えば、金属製の本体部101と、本体部の上部に取り付けられる蓋部102からなっている。本体部の上面103には、光ファイバまたはテープ心線を保持する光ファイバホルダを位置決めするホルダガイド104が設けられ、図示しない光ファイバホルダがホルダガイドに配置され位置決めされる。ホルダガイドは、例えば、矩形の凹部からなっている。
【0005】
上面103の中央部には円形の刃部105が露出する露出孔106が形成され、本体部の上面103の下方から露出孔を経て刃部が上方に突出して露出する。本体部101には、スライド自在のスライダ107が装着され、スライダ107に刃部105が取り付けられ固定されている。本体部の上面に形成された露出孔106の両側部には露出孔を挟むように、一対の下部クランプ108が設けられている。
【0006】
蓋部102は、支軸を介して本体部の上面に、ねじりバネ114によって開閉自在に取り付けられている。蓋部102の本体部と対向する面には、枕部111、および、一対の上部クランプ109が設けられている。蓋部が閉じられると、一対の上部クランプ109は、対応する一対の下部クランプ108と共に光ファイバを挟み込む。
【0007】
枕部111は、(図示しない)圧縮バネの反発によって通常は突出した状態であり、光ファイバに曲げを与える状態に保持されている。刃部105のスライドと枕部111の移動とが、連動するように配置されている。即ち、枕部111には、下方に伸びる枕部支持片110が配置され、他方、刃部のスライダには、上部に突き出て枕部支持片110に当接する突起部115が設けられている。光ファイバに傷をつけるまでの段階は、枕部支持片110と突起部115が当接して枕部111が光ファイバと非接触の状態に押し戻される。光ファイバに傷が付けられると、突起部115は、枕部支持片の下方を通り過ぎ、圧縮バネの押圧力により枕部が突出されて光ファイバに曲げを加えて、光ファイバが切断される。
【0008】
上述の光ファイバ切断工具は次のようにして光ファイバを切断する。
即ち、光ファイバ心線の端部における被覆を除去して光ファイバを露出した状態で、光ファイバホルダに保持する。このとき、光ファイバが光ファイバホルダから露出した状態にしておく。蓋部102を開き、光ファイバが保持された光ファイバホルダをホルダガイド104で位置決めする。光ファイバは、上下部クランプによって挟み込まれる。このときは、上述したように枕部支持片が突起部に当接して枕部が押し戻された状態にある。次に、スライダをスライドさせて、刃部を光ファイバに接触させて傷をつける。光ファイバに傷が付けられると、上述したように、枕部支持片の下方を突起部が通過し、枕部が突出した状態に復帰されて、光ファイバに曲げを与える。光ファイバには刃部の両側において上下部クランプによって挟みこまれているので、張力が与えられて光ファイバが破断される。切断が終わると、光ファイバカッタから光ファイバホルダを外し、光ファイバホルダから光ファイバ心線を取り出す。
【0009】
上述したように光ファンバを光ファイバホルダに予め保持しておき、光ファイバが保持された光ファイバホルダを光ファイバ切断工具や被覆除去工具に位置決めするもののほか、工具に光ファイバホルダに固定しておき、固定された光ファイバホルダに光ファイバを保持するものもある。図9および図10は、光ファイバホルダを工具に固定する従来の方法を模式的に示す図である。
なお、以下は光ファイバ切断工具を例に説明する。図9は、平面図、図10は側面図をそれぞれ概略示す。光ファイバを一定の長さにカットする切断工具では、光ファイバ心線またはテープ心線の固定および位置決めを容易にするために、光ファイバを工具に固定する光ファイバホルダを使用する。図9および図10に示すように、光ファイバやテープ心線を保持する光ファイバホルダをネジ等によって、光ファイバ切断工具のホルダ取付部にネジ121によって固定されている。
【0010】
その他、ボールプランジャーを用いて、取り外し可能な光ファイバホルダもある。なお、いずれの場合においても、光ファイバホルダ、ホルダ取付部、ホルダガイドは典型的には金属などの硬い材質からできていた。
【特許文献1】特開2001−356216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した光ファイバホルダをネジで固定する方法は、所望の位置に光ファイバホルダを配置するのに時間がかかり、更に、光ファイバホルダの取り外しにドライバー等の工具が必要であり、外部で光ファイバの切断作業を行うときには特定の工具を準備しなければならず、取り外しが容易でなかった。また、あらかじめ光ファイバ心線に取り付けるホルダの場合は、図11に示すように、例えば、光ファイバ切断工具100の光ファイバホルダ120の位置決めをするホルダガイド104は、光ファイバホルダの取り外しが容易なように、所定のクリアランス123を備えている。クリアランスは光ファイバホルダの取り外しを容易にするけれども、ホルダガイド内での微小な動きが可能である。従って、ホルダガイドに光ファイバホルダを配置するだけでは、クリアランスが存在するので、光ファイバホルダが微小な動きをしないようにがホルダガイドに配置し、固定することは困難であり、光ファイバを斜めにカットしてしまったり、位置がずれたりする状態であった。
【0012】
この場合は、光ファイバを再度カットする必要があり、気づかずにこのまま光コネクタやメカニカルスプライス(光ファイバ接続部品)を組み立てると、接続損失が規格内に収まらず再組み立てが必要になり工事に時間がかかってしまうという問題点があった。更に、ボールプランジャー等の部品を用いてホルダを固定する場合には、光ファイバカッタの部品点数が増えてしまって高価になってしまうという問題点がある。
更に、FTTHの普及によって、現地での工事時間の短縮がもとめられている。
【0013】
従って、この発明の目的は、光ファイバの切断工具に対して容易に取り外しができ、光ファイバの正確な切断が可能な低コストの光ファイバホルダ、および、それを備えた光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上述した従来技術の問題点を解決すべく鋭意研究の結果なされたものである。
この発明の光ファイバホルダの第1の態様は、光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具のホルダ取付部に着脱可能に取付けられ、前記光ファイバの位置を保持する光ファイバホルダであって、
前記光ファイバホルダは、筐体部と、前記筐体部内に形成された光ファイバを保持する保持部を備え、前記筐体部の弾性変形によって前記ホルダ取付部に予圧をもって固定されることを特徴とする光ファイバホルダである。
【0015】
この発明の光ファイバホルダの第2の態様は、前記光ファイバホルダは前記筐体部と一体的に形成された固定部材を備え、前記固定部材又は/及び前記筐体部の弾性変形によって前記ホルダ取付部に予圧をもって固定されることを特徴とする光ファイバホルダである。
【0016】
この発明の光ファイバホルダの第3の態様は、前記固定部材又は/及び筐体部の弾性変形は、前記保持部に伝播しないことを特徴とする光ファイバホルダである。
【0017】
この発明の光ファイバホルダの第4の態様は、前記固定部材又は/及び筐体部の弾性変形は、前記保持部に伝播しないよう、前記筐体部又は前記固定部材に空洞部を備えたことを特徴とする光ファイバホルダである。
【0018】
この発明の光ファイバホルダの第5の態様は、前記固定部材又は/及び筐体部の弾性変形は、前記保持部に伝播しないよう、前記筐体部又は前記固定部材に薄肉部を備えたことを特徴とする光ファイバホルダである。
【0019】
この発明の光ファイバホルダの第6の態様は、前記光ファイバホルダは係止凸部を有し、前記ホルダ取付部の係止凹部と係止されて固定されることを特徴とする光ファイバホルダである。
【0020】
この発明の光ファイバホルダの第7の態様は、前記光ファイバホルダは係止凹部を有し、前記ホルダ取付部の係止凸部と係止されて固定されることを特徴とする光ファイバホルダである。
【0021】
この発明の光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具の第1の態様は、上述した態様の光ファイバホルダを備えた光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具である。
【0022】
この発明の光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具の第2の態様は、光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具であって、前記工具は、前記光ファイバの位置を保持する光ファイバホルダが着脱自在に取付られるホルダ取付部を備え、
前記ホルダ取付部の弾性変形によって前記光ファイバホルダが前記ホルダ取付部に予圧をもって固定されることを特徴とする光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具である。
【0023】
この発明の光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具の第3の態様は、前記ホルダ取付部は係止凸部を有し、前記光ファイバホルダの係止凹部と係止されて固定されることを特徴とする光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具である。
【0024】
この発明の光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具の第4の態様は、前記ホルダ取付部は係止凹部を有し、前記光ファイバホルダの係止凸部と係止されて固定されることを特徴とする光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具である。
【発明の効果】
【0025】
この発明によると、工具を使用しないで光ファイバホルダを取り外しすることができる。更に、光ファイバホルダとホルダ取付部は予圧をもって固定されるのでがたつきを無くし光ファイバをより正確に切断することができる。また、上述の予圧は光ファイバホルダの筐体部自体の弾性変形や、筐体部と一体的に形成された固定部材の弾性変形、あるいはホルダ取付部の弾性変形によって付加されるので、ボールプランジャなど予圧を付加するための特別な機構を設ける必要がない。即ち、この発明によると、光ファイバの切断工具に対して容易に取り外しができ、工事時間を短縮することができ、光ファイバの正確な切断が可能な低コストの光ファイバホルダ、および、それを備えた光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
この発明の光ファイバホルダおよびそれを備えた光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具を図面を参照しながら詳細に説明する。
この発明の光ファイバホルダの第1の態様は、光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具のホルダ取付部に着脱可能に取付けられ、前記光ファイバの位置を保持する光ファイバホルダであって、
前記光ファイバホルダは、筐体部と、前記筐体部内に形成された光ファイバを保持する保持部を備え、前記筐体部の弾性変形によって前記ホルダ取付部に予圧をもって固定されることを特徴とする光ファイバホルダである。
【0027】
即ち、光ファイバホルダは、光ファイバを切断またはその被覆を除去する工具のホルダ取付部に脱着可能に取り付けられる。光ファイバは、筐体と筐体内に形成された光ファイバを保持する保持部とを備えている。筐体部は所定の弾性を備えた材料で形成され、筐体部そのもの、または、筐体部の一部が弾性変形して、ホルダ取付部に予圧をもって固定される。換言すれば、筐体部そのものが弾性変形して、ホルダ取付部に予圧をもって固定される。
【0028】
筐体部は、筐体部と例えば樹脂の一体成形などにより一体的に形成された固定部材を、更に備えていてもよい。即ち、筐体部の一部が例えば突出して突出部を形成し、突出部及び/又は筐体部が弾性変形して、光ファイバホルダをホルダ取付部に予圧をもって固定する。ところで、筐体部の弾性変形量が大きい場合は筐体部に形成された光ファイバ保持部にも弾性変形が伝播し光ファイバの位置決め精度を低下させるが、固定部材を設けた場合は筐体部の弾性変形が少ない場合でも固定部材が弾性変形することで十分な予圧を生じさせることができるので有効である。また、筐体部自体を十分に弾性変形させるには着脱作業に支障をきたすほどの大きな力を必要とする場合であっても、固定部材の肉厚などを小さめにすることで適正な着脱力を設定することもできる。また、筐体部や固定部材に空洞部や薄肉部を設けた場合は光ファイバ保持部への弾性変形の伝播をより効果的に抑制できる。
【0029】
図1は、この発明の光ファイバホルダの1つの態様を説明する模式図である。図1に示すように、光ファイバホルダ1は、筐体部9と、保持部3と、更に突起状の固定部材4、空洞部5を備えている。この態様においては、筐体部9と固定部材4はPOM(可能ならPOMの正式名称、詳細説明を追加して下さい。)の一体成形により形成されている。
【0030】
図2は、この発明の光ファイバホルダを光ファイバを切断する工具に取り付けた状態を説明する概略平面図である。工具の本体部には刃部15が備えられ、刃部15の両側には光ファイバの被覆を除去して光ファイバ6を露出した状態で固定するクランプ18が刃部15を挟むように配置されている。光ファイバホルダ1は、工具本体の上面部8に設けられた例えば矩形の凹部からなるホルダ取付部7に嵌め込まれる。図2に示すように、光ファイバホルダ1をホルダ取付部7に嵌め込むと筐体部9及び固定部材4は弾性変形する。即ち、、筐体部9の側面に形成された固定部材4とホルダ取付部7の側壁には予圧が生じがたつくことなく固定できる。
【0031】
固定部材4に対応する筐体部内部の位置には空洞部5が形成されており、筐体部及び固定部材の弾性変形が空洞部5によって吸収される。即ち、筐体部9及び固定部材4の弾性変形は保持部3に伝播することはない。なお、空洞部5を設けることにより筐体部9が変形しやすくなり着脱に要する力を低減することもできる。
【実施例1】
【0032】
図3は、光ファイバホルダをホルダ取付部に固定する1例を説明する部分断面の模式図である。この態様の光ファイバホルダ1は、筐体部9のみの弾性変形によって、ホルダ取付部に予圧をもって固定される。図3に示すように、矩形の凹部からなるホルダ取付部7の凹部の幅dの長さよりも光ファイバホルダ1の幅方向の長さの方が大きく、光ファイバホルダ1そのものが弾性変形して、ホルダ取付部の凹部内に押し込まれる。即ち、光ファイバホルダの弾性変形によって予圧をもってホルダ取付部の両側壁部に固定される。この場合には、固定部材などを設けないので筐体部9のみを成形すればよく低コストで実現できる。
【実施例2】
【0033】
図4は、光ファイバホルダをホルダ取付部に固定する他の例を説明する部分断面の模式図である。この態様の光ファイバホルダ1は、筐体部9の底面にホルダ取付部に向かって突出する1対の脚状の固定部材11、11を備えており、ホルダ取付部には、1対の脚部11、11に対応する突出部12を備えている。1対の固定部材11、11は対向するそれぞれの内側の壁面の間に突出部12を挟みこむように配置される。
【0034】
光ファイバホルダの1対の固定部材及び筐体部9はPOMで一体成形により形成され、所望の弾性を備えており、1対の固定部材11、11脚部の弾性変形によって予圧をもってホルダ取付部の柱状の突出部に固定される。この場合には実施例1のように筐体部9自体を弾性変形させる場合に比べて、光ファイバ保持部に弾性変形が伝播しにくく、光ファイバの位置決め精度の低下を抑制しやすい。また、他の設計要因により決定される筐体部9の寸法に関わらずに固定部材11、11の寸法を決定できるので、着脱力の設定の自由が高くなる。
【実施例3】
【0035】
図5は、光ファイバホルダをホルダ取付部に固定する他の状況を説明する部分断面の模式図である。この態様の光ファイバホルダ1は、筐体部9の底面中央部にホルダ取付部に向かって突出する脚状の固定部材13を備えており、ホルダ取付部7の中央部には、固定部材13に対応する凹状のホルダ取付部14を備えている。固定部材13はホルダ取付部14に予圧をもって嵌め込まれ、工具と光ファイバホルダが固定される。この場合にも実施例1のように筐体部9自体を弾性変形させる場合に比べて、光ファイバ保持部に弾性変形が伝播しにくく、光ファイバの位置決め精度の低下を抑制しやすい。また、他の設計要因により決定される筐体部9の寸法に関わらずに固定部材11、11の寸法を決定できるので、着脱力の設定の自由が高くなる。
【実施例4】
【0036】
図6は、光ファイバホルダをホルダ取付部に固定する他の例を説明する部分断面の模式図である。この態様の光ファイバホルダ1は、実施例1と同様に筐体部9のみの弾性変形によって、ホルダ取付部に予圧をもって固定される。図6に示すように、矩形の凹部からなるホルダ取付部7の凹部の幅dの長さよりも光ファイバホルダ1の幅方向の長さの方が大きく、光ファイバホルダ1そのものが弾性変形して、ホルダ取付部の凹部内に押し込まれる。即ち、光ファイバホルダの弾性変形によって予圧をもってホルダ取付部の両側壁部に固定される。本態様が実施例1と異なる点は、光ファイバホルダ1の筐体部9の両側端部には、筐体部の長手方向(即ち、光ファイバの軸方向)に沿って、それぞれ空洞部20が設けられている。空洞部20は例えば断面形状が矩形からなっている。
【0037】
筐体部9の弾性変形は、空洞部5によって吸収される。即ち、筐体部9及び固定部材4の弾性変形は保持部3に伝播することはない。なお、空洞部5を設けることにより筐体部9が変形しやすくなり着脱に要する力を低減することもできる。なお、変形を吸収する断面形状が矩形空洞部の代わりに、完全に空洞ではなく、図中の横方向の変形を吸収する薄肉部であってもよい。
【実施例5】
【0038】
図7は、光ファイバホルダをホルダ取付部に固定する他の例を説明する部分断面の模式図である。光ファイバホルダ1は、工具本体の上面部8に設けられた例えば矩形の凹部からなるホルダ取付部7に嵌め込まれる。この態様においては、ホルダ取付部7の両側壁中央部には横方向に突出する係止凸部21が形成されている。光ファイバホルダ1は、筐体部の両側面中央部にホルダ取付部7の係止凸部21に対応する、係止凹部26を備えている。係止凸部21および係止凹部26の断面形状は、図に示すように概ね三角形であっても、矩形であってもよい。光ファイバホルダ1の筐体部の両側面に形成された係止凹部26が、ホルダ取付部7の両側壁中央部に形成された係止凸部21と係止されて固定される。
【0039】
光ファイバホルダの筐体部9は所望の弾性を備えており、筐体部9の弾性変形によって予圧をもってホルダ取付部に固定されるが、筐体部9とホルダ取付部の摩擦以外に係止凸部21、係止凹部26の係止が固定に寄与するので位置決めがより容易であり少ない着脱力で着脱が可能である。なお、図7においては係止凸部21をホルダ取付部側に、係止凹部26を光ファイバホルダ側に設けたが、図8に示すように、係止凸部21を光ファイバホルダ側に、係止凹部26をホルダ取付部側に設けてもよい。
【実施例6】
【0040】
実施例1乃至5においては、光ファイバホルダの筐体部9や固定部材を弾性変形させてホルダ取付部に予圧をもって固定していたが、光ファイバホルダは従来通り例えば金属などの硬い材料で形成し、ホルダ取付部をバネ材、樹脂など弾性変形し得る材質で形成し、ホルダ取付部を弾性変形させて光ファイバホルダを予圧をもって固定してもよい。この場合に実施例5に示すよう、係止凸部と係止凹部を係止させる態様を組合わせることも勿論可能である。また、光ファイバホルダの筐体部や固定部材及び、ホルダ取付部の双方を弾性変形させ、予圧をもって固定することもできるのはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この発明によると、光ファイバの切断工具に対して容易に取り外しができ、工事時間を短縮することができ、光ファイバの正確な切断が可能な低コストの光ファイバホルダ、および、それを備えた光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具を提供することができ、産業上利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、この発明の光ファイバホルダの1つの態様を説明する模式図である。
【図2】図2は、この発明の光ファイバホルダを光ファイバを切断する工具に取り付けた状態を説明する概略平面図である。
【図3】図3は、光ファイバホルダをホルダ取付部に固定する状況を説明する部分断面の模式図である。
【図4】図4は、光ファイバホルダをホルダ取付部に固定する他の状況を説明する部分断面の模式図である。
【図5】図5は、光ファイバホルダをホルダ取付部に固定する他の状況を説明する部分断面の模式図である。
【図6】図6は、光ファイバホルダをホルダ取付部に固定する他の状況を説明する部分断面の模式図である。
【図7】図7は、光ファイバホルダをホルダ取付部に固定する他の状況を説明する部分断面の模式図である。
【図8】図8は、光ファイバホルダをホルダ取付部に固定する他の状況を説明する部分断面の模式図である。
【図9】図9は、光ファイバホルダをファイバガイドに固定する従来の方法を模式的に示す図である。
【図10】図10は、光ファイバホルダをファイバガイドに固定する従来の方法を模式的に示す図である。
【図11】図11は、光ファイバホルダをファイバガイドに固定する従来の別の方法を模式的に示す図である。
【図12】図12は、蓋部を開放した従来の光ファイバカッタを示す斜視図である。
【図13】図13は、蓋部を閉じた従来の光ファイバカッタを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
・ 光ファイバホルダ
2.光ファイバ心線
3.保持部
4.突起部
5.空洞部
6.光ファイバ
7.ホルダ取付部
8.上面部
9.筐体部
11、13、22.脚部
12.突出部
14.窪み部
15.刃部
18.クランプ
20.空洞部
21、23.係止凸部
25、26.係止凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具のホルダ取付部に着脱可能に取付けられ、前記光ファイバの位置を保持する光ファイバホルダであって、
前記光ファイバホルダは、筐体部と、前記筐体部内に形成された光ファイバを保持する保持部を備え、前記筐体部の弾性変形によって前記ホルダ取付部に予圧をもって固定されることを特徴とする光ファイバホルダ。
【請求項2】
前記光ファイバホルダは前記筐体部と一体的に形成された固定部材を備え、前記固定部材又は/及び前記筐体部の弾性変形によって前記ホルダ取付部に予圧をもって固定されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバホルダ。
【請求項3】
前記固定部材又は/及び筐体部の弾性変形は、前記保持部に伝播しないことを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバホルダ。
【請求項4】
前記固定部材又は/及び筐体部の弾性変形は、前記保持部に伝播しないよう、前記筐体部又は前記固定部材に空洞部を備えたことを特徴とする請求項3に記載の光ファイバホルダ。
【請求項5】
前記固定部材又は/及び筐体部の弾性変形は、前記保持部に伝播しないよう、前記筐体部又は前記固定部材に薄肉部を備えたことを特徴とする請求項4に記載の光ファイバホルダ。
【請求項6】
前記光ファイバホルダは係止凸部を有し、前記ホルダ取付部の係止凹部と係止されて固定されることを特徴とする請求項1乃至5いずれか一つに記載の光ファイバホルダ。
【請求項7】
前記光ファイバホルダは係止凹部を有し、前記ホルダ取付部の係止凸部と係止されて固定されることを特徴とする請求項1乃至5いずれか一つに記載の光ファイバホルダ。
【請求項8】
請求項1乃至8いずれか一つに記載の光ファイバホルダを備えた
光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具。
【請求項9】
光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具であって、前記工具は、前記光ファイバの位置を保持する光ファイバホルダが着脱自在に取付られるホルダ取付部を備え、
前記ホルダ取付部の弾性変形によって前記光ファイバホルダが前記ホルダ取付部に予圧をもって固定されることを特徴とする光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具。
【請求項10】
前記ホルダ取付部は係止凸部を有し、前記光ファイバホルダの係止凹部と係止されて固定されることを特徴とする請求項9に記載の光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具。
【請求項11】
前記ホルダ取付部は係止凹部を有し、前記光ファイバホルダの係止凸部と係止されて固定されることを特徴とする請求項9に記載の光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具。
【請求項1】
光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具のホルダ取付部に着脱可能に取付けられ、前記光ファイバの位置を保持する光ファイバホルダであって、
前記光ファイバホルダは、筐体部と、前記筐体部内に形成された光ファイバを保持する保持部を備え、前記筐体部の弾性変形によって前記ホルダ取付部に予圧をもって固定されることを特徴とする光ファイバホルダ。
【請求項2】
前記光ファイバホルダは前記筐体部と一体的に形成された固定部材を備え、前記固定部材又は/及び前記筐体部の弾性変形によって前記ホルダ取付部に予圧をもって固定されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバホルダ。
【請求項3】
前記固定部材又は/及び筐体部の弾性変形は、前記保持部に伝播しないことを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバホルダ。
【請求項4】
前記固定部材又は/及び筐体部の弾性変形は、前記保持部に伝播しないよう、前記筐体部又は前記固定部材に空洞部を備えたことを特徴とする請求項3に記載の光ファイバホルダ。
【請求項5】
前記固定部材又は/及び筐体部の弾性変形は、前記保持部に伝播しないよう、前記筐体部又は前記固定部材に薄肉部を備えたことを特徴とする請求項4に記載の光ファイバホルダ。
【請求項6】
前記光ファイバホルダは係止凸部を有し、前記ホルダ取付部の係止凹部と係止されて固定されることを特徴とする請求項1乃至5いずれか一つに記載の光ファイバホルダ。
【請求項7】
前記光ファイバホルダは係止凹部を有し、前記ホルダ取付部の係止凸部と係止されて固定されることを特徴とする請求項1乃至5いずれか一つに記載の光ファイバホルダ。
【請求項8】
請求項1乃至8いずれか一つに記載の光ファイバホルダを備えた
光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具。
【請求項9】
光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具であって、前記工具は、前記光ファイバの位置を保持する光ファイバホルダが着脱自在に取付られるホルダ取付部を備え、
前記ホルダ取付部の弾性変形によって前記光ファイバホルダが前記ホルダ取付部に予圧をもって固定されることを特徴とする光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具。
【請求項10】
前記ホルダ取付部は係止凸部を有し、前記光ファイバホルダの係止凹部と係止されて固定されることを特徴とする請求項9に記載の光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具。
【請求項11】
前記ホルダ取付部は係止凹部を有し、前記光ファイバホルダの係止凸部と係止されて固定されることを特徴とする請求項9に記載の光ファイバを切断又はその被覆を除去する工具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−30377(P2006−30377A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−205982(P2004−205982)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【復代理人】
【識別番号】100092989
【弁理士】
【氏名又は名称】片伯部 敏
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【復代理人】
【識別番号】100092989
【弁理士】
【氏名又は名称】片伯部 敏
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]