説明

光ファイバユニット内蔵形電力ケーブル用終端接続部

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電力ケーブル用終端接続部に関し、特に、高電圧部からの引き下げ用光ファイバユニットを電力ケーブルの終端部と共通の碍管内に内蔵させた光ファイバユニット内蔵形電力ケーブル用終端接続部に関する。
【0002】
【従来の技術】電力ケーブル終端接続部において、高電圧部から低電圧部に光信号を伝送する場合、高電圧部から光ファイバを引き下すことによって実現できるが、光ファイバは耐電圧特性の長期維持が難しく、これを実用化することは極めて困難となっている。すなわち、このような条件下では、光ファイバに高電圧が印加されるため、外被補強層と心線間の空気層の存在や外被補強層自体の絶縁強度の低さから使用中に侵入した湿気によって空気層間が閃絡したり、外被補強層の劣化によって光ファイバが損傷したり、外被補強層の炭化現象によって外被補強層表面が閃絡したりする可能性がある。
【0003】このような問題がある中、電力ケーブル終端接続部とは別置の碍管内に光ファイバを収納し、それに絶縁性の油,コンパウンド,ガス等を封入して高電圧部から光ファイバを引き下すことが一部で実施されている。この場合、更に高信頼性を得たいときは光ファイバを碍管上下部で切り離し、シールを兼ねたガラス板を通して光伝送を行う方法が採用されている。
【0004】一方、最近では電力ケーブル終端接続部に、光学式の電界センサや磁界センサを取り付けて様々な目的に使用されることが多くなってきている。その一例として、事故区間の判定があり、地中線と架空線の何れで事故が発生したかを判定するのに適用されている。この場合、高電圧部から光ファイバを引き下すことが困難なため、電力ケーブル終端接続部(碍管)のグランド側に位置する下部金具にこれらのセンサを取り付けるのが一般的になっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の電力ケーブル終端接続部における光ファイバの引き下し構造によると、電力ケーブル終端接続部とは別置の碍管に光ファイバを収容させているため、終端接続部を含めた全体の構造が大型化して大きなスペースを要すると共に、コストアップになるという不都合がある。
【0006】また、事故区間の判定を行う場合、電力ケーブル終端接続部の下部金具にセンサを取り付けているため、終端接続部内の事故の場合、架空線と判定される可能性があり、判定精度が悪いものになっている。
【0007】従って、本発明の目的は全体の構造の大型化やコストアップを招かずに光ファイバの耐電圧特性を向上させると同時に事故区間判定の精度を向上させることができる光ファイバ内蔵形電力ケーブル用終端接続部を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は上記問題点に鑑み、全体の構造の大型化やコストアップを招かずに光ファイバの耐電圧特性を向上させると同時に事故区間判定の精度を向上させるため、電力ケーブル用終端接続部の碍管内に上部金具,及び下部金具によって支持されて配置された1本,或いは複数本の光ファイバユニットを設けた光ファイバユニット内蔵形電力ケーブル用終端接続部を提供するものである。
【0009】上記光ファイバユニットは、上部金具,及び下部金具によって支持される第1,及び第2の光コネクタと、第1,及び第2の光コネクタ間に直線状に設けられた光ファイバと、光ファイバの外周を被って第1,及び第2の光コネクタにかけて施されたモールド樹脂体より構成されている。
【0010】上記第1の光コネクタは電力ケーブルの電流,及び電圧を検出するセンサに接続され、上記第2の光コネクタは測定器へ接続されている。このセンサは、導体引出棒の外周に配置された光学式の磁界センサ,及び電界センサである。
【0011】
【実施例】以下、本発明の光ファイバユニット内蔵形電力ケーブル用終端接続部について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】図1には、本発明の一実施例の断面構造が示されている。この電力ケーブル用終端接続部は、補強絶縁23を有した電力ケーブル22と、電力ケーブル22の段剥ぎ部から露出した導体25と接続された導体引出棒6と、電力ケーブル22と導体引出棒6の接続部を包囲する碍管13と、導体引出棒6を気密的に支持する上部金具11と、電力ケーブル22を気密的に支持する下部金具14と、碍管13の内部に収容された絶縁油24と、上部金具11と下部金具14によって両端を支持され、碍管13の内部に直線状に配置された光ファイバユニット12を有して構成されている。
【0013】上部金具11は、コロナシールド7によって包囲されていると共に導体引出棒6に光式磁界センサ19を、また、コロナシールド7の外側に光電界センサ20を設けて構成されている。光電界センサ20にはコロナシールド7と一体化する保護カバー21が設けられている。
【0014】光ファイバユニット12は、パッキングシールを介して上部金具11と下部金具14を貫通しており、貫通した両端部は上部光ユニット固定部10と下部光ユニット固定部15によって上部金具11と下部金具14に固定されていると共に、上端側には上部光コネクタが、また、下端側には保護カバー17によって包囲された下部光コネクタ16がそれぞれ接続されている。上部光コネクタ9には光ファイバ8を介して光式磁界センサ19と光式電界センサ20が接続され、また、下部光コネクタ16には光ファイバ18を介して測定器(図示せず)がそれぞれ接続されている。すなわち、2つのセンサからの光信号は光ファイバユニット12を介して測定器に伝送されるようになっている。
【0015】また、光ファイバユニット12の上部金具11,及び下部金具14への固定については、碍管13の長さ公差,光ファイバユニット12の熱伸縮を考慮して上部光ユニット固定部10,又は下部光ユニット固定部15の何れか一方だけを固定し、他方は軸方向にある程度スライドできるようにしてから行うことが望ましい。また、碍管13に内蔵される光ファイバユニット12は1本に限らず、電力ケーブル22の円周方向に複数本配置しても良い。
【0016】図2には、本発明に適用される光ファイバユニットの一例が示されている。この光ファイバユニット12は、光ファイバ(テンションメンバや外被等がない光ファイバ心線)3の両端に保護筒2と一体化した光レセプタクル(光コネクタ)1を接続し、両光レセプタクル1を覆うと共に両保護筒2間にかけて円形棒状のエポキシ樹脂4を一体成形して形成されている。尚、光ファイバ3の外周をエポキシ樹脂で覆わずにそのまま碍管13に収容しても良い。
【0017】以上の構成において、光式磁界センサ19,或いは光式電界センサ20から光信号が出力されると、上部金具11の光ファイバ8を介して上部光コネクタ9に伝送され、次いで光ファイバユニット12を介して下部光コネクタ16まで伝送される。下部光コネクタ16に伝送された光信号は光ファイバ18を介して測定器まで伝送され、そこで事故区間の判定を行う。
【0018】以上述べたように、本発明は電力ケーブル用終端接続部の碍管に光ファイバユニットを内蔵させ、事故区間判定用のセンサを上部金具に取り付けることによって、全体の構造を複雑化させないで光ファイバユニットの耐電圧特性を向上させることができ、布設スペースの低減,コストダウンを図りながら、事故区間判定の精度を向上させることができる。
【0019】以上の実施例では、電力ケーブル用気中終端接続部の例を示したが、これに限定するものではなく、一部の構造を見直すことにより同じ原理で他の終端接続部(例えば、油中,SF6 ガス中終端接続部)にも適用することができる。また、ケーブル以外のGIS等の機器でも高電圧部からの光信号の引き出しに適用することも可能である。以上の実施例では、光ファイバがエポキシ樹脂等で被覆されて直線状に設けられているが、被覆を有しない光ファイバを碍管内のスペースに応じて曲線的に設けることも可能である。
【0020】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の光ファイバ内蔵形電力ケーブル用終端接続部によると、電力ケーブル用終端接続部の碍管内に上部金具,及び下部金具によって支持されて直線状に配置された1本,或いは複数本の光ファイバユニットを設けたため、全体の構造の大型化やコストアップを招かずに光ファイバの耐電圧特性を向上させると同時に事故区間判定の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の一実施例を示す断面図。
【図2】一実施例に係る光ファイバユニットを示す断面図。
【符号の説明】
1 光レセプタクル 2 保護筒
3 光ファイバ 4 エポキシ樹脂
6 導体引出棒 7 コロナシールド
8 光ファイバ 9 上部光コネクタ
10 上部光ユニット固定部 11 上部金具
12 光ファイバユニット 13 碍管
14 下部金具 15 下部光ユニット固定部
16 下部光コネクタ 17 保護カバー
18 光ファイバ 19 光式磁界センサ
20 光式電界センサ 21 保護カバー
22 電力ケーブル 23 補強絶縁
24 絶縁油 25 導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】 碍管の一端に設けられた上部金具によって電力ケーブルの段剥ぎ部より露出した導体に接続された導体引出棒を支持し、前記碍管の他端に設けられた下部金具によって前記電力ケーブルの非段剥ぎ部の外周部を支持し、前記碍管内に補強絶縁部によって絶縁補強された前記電力ケーブルの前記段剥ぎ部を収容した電力ケーブルの終端接続部において、前記上部金具,及び前記下部金具によって両端を支持され、前記碍管内に配置された1本,或いは複数本の光ファイバユニットを設けてなり、当該光ファイバユニットは、前記上部金具,及び前記下部金具によって支持される第1,及び第2の光コネクタと、前記第1,及び第2の光コネクタ間に直線状に設けられた光ファイバと、前記光ファイバの外周を被って前記第1,及び第2の光コネクタにかけて施されたモールド樹脂体より構成されてなることを特徴とする光ファイバユニット内蔵形電力ケーブル用終端接続部。
【請求項2】 前記第1の光コネクタは前記電力ケーブルの電流,及び電圧を検出するセンサに接続され、前記第2の光コネクタは測定器へ接続される請求項1の光ファイバユニット内蔵形電力ケーブル用終端接続部。
【請求項3】 前記センサは、前記導体引出棒の外周に配置された光学式の磁界センサ,及び電界センサである請求項2の光ファイバユニット内蔵形電力ケーブル用終端接続部。

【図1】
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【図2】
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【特許番号】特許第3006333号(P3006333)
【登録日】平成11年11月26日(1999.11.26)
【発行日】平成12年2月7日(2000.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−28591
【出願日】平成5年1月25日(1993.1.25)
【公開番号】特開平6−225436
【公開日】平成6年8月12日(1994.8.12)
【審査請求日】平成10年3月10日(1998.3.10)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【参考文献】
【文献】特開 平5−40205(JP,A)
【文献】特開 昭64−54369(JP,A)
【文献】実開 昭61−169434(JP,U)
【文献】特公 平4−19778(JP,B2)
【文献】実公 平1−27393(JP,Y2)