説明

光ファイバ付フェルール及びこれを使用した光コネクタ

【課題】 組立作業中に光ファイバが折れることのない新規光ファイバ付フェルール及びこれを使用した光コネクタの提供。
【解決手段】 一端から他端まで貫通した貫通孔を有するフェルール本体と、前記貫通孔内に導入された光ファイバとを有する光ファイバ付フェルールにおいて、前記貫通孔が、フェルール本体の前記一端から前記他端に至る途中まで形成された、径が同一である管部と、前記途中から前記他端側に形成された、前記他端に向かって径が大きくなるテーパ部と、から構成されており、光ファイバの一端が、フェルール本体の前記一端に位置しており、光ファイバの他端が、前記貫通孔の前記管部内に位置しており、更に、光ファイバの前記他端には、光ファイバのコアと同等の屈折率を有する屈折率整合フィルムが備えられていることを特徴とする、光ファイバ付フェルール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
光ファイバと光ファイバを接続するための光コネクタに関し、より詳細には、作業現場において、作業性のよい光ファイバ付フェルール及び当該フェルールを使用した光コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバと他の部品と光学接続を行なうために、光ファイバの端部に光コネクタが設けられる。一般的な現場取り付け光コネクタは、図6の概略図に示すように、外観を形成するコネクタつまみ部分810と、プラグ部分820と、ブーツ830から構成される。プラグ部分の側面にくさびWを挿して、光ファイバを挿入し、挿入後抜き取って、光コネクタを組み立てる。図7(a)は、光コネクタを組み立てたときの概略断面図である。当該プラグ部分820は、光ファイバ822を内蔵したフェルール821と、当該フェルール内部の光ファイバ822と位置合わせして他の光ファイバと接続するための位置あわせ機構823と、これらを保持するためのプラグハウジング824を有する。図7(b)に示すように、ここで使用されるフェルールの片端部は当該端部に合わせて光ファイバの端面が形成されている。もう一方のフェルールの端部からは光ファイバが突き出ている。図7(a)に示すように、当該突き出した光ファイバを位置あわせ機構823により、マッチングオイル825を介して別の光ファイバに接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−292708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コネクタの組立作業において、光ファイバ付フェルールから突き出た光ファイバに少しの力がかかると当該光ファイバが折れてしまうため、作業性が悪かった。そこで、本発明は、組立作業中に光ファイバが折れることのない新規光ファイバ付フェルール及びこれを使用した光コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明(1)は、一端から他端まで貫通した貫通孔(例えば、貫通孔101)を有するフェルール本体(例えば、フェルール本体102)と、前記貫通孔内に導入された光ファイバ(例えば、光ファイバ103)とを有する光ファイバ付フェルールにおいて、
前記貫通孔が、フェルール本体の前記一端から前記他端に至る途中まで形成された、径が同一である管部(例えば、管部101a)と、前記途中から前記他端側に形成された、前記他端に向かって径が大きくなるテーパ部(例えば、テーパ部101b)と、から構成されており、
光ファイバの一端が、フェルール本体の前記一端に位置しており(例えば、光ファイバ端部103aとフェルール端部102a)、
光ファイバの他端が、前記貫通孔の前記管部内に位置しており、更に、光ファイバの前記他端には、光ファイバのコアと同等の屈折率を有する屈折率整合フィルムが備えられている(例えば、光ファイバ端部103b)ことを特徴とする、光ファイバ付フェルール(例えば、光ファイバ付フェルール100)である。
【0006】
本発明(2)は、光ファイバの前記一端とフェルール本体の前記一端とから構成される光ファイバ付フェルールの端面が研磨されている、前記発明(1)の光ファイバ付フェルールである。
【0007】
本発明(3)は、前記発明(1)又は(2)の光ファイバ付フェルールを有する、光プラグ(例えば、プラグ200)である。
【0008】
本発明(4)は、前記発明(3)の光プラグを有する、光コネクタ(例えば、光コネクタ300)である。
【0009】
本発明(5)は、前記発明(4)の光コネクタと、光コネクタの構成部材である光ファイバ付フェルール内の光ファイバとは異なる光ファイバとを有し、
前記屈折率整合フィルムを介して、光ファイバ付フェルール内の光ファイバと当該光ファイバとは異なる前記光ファイバとが光路接続されていることを特徴とする、光ファイバケーブル(例えば、光ファイバケーブル400)である。
【0010】
本発明(6)は、一端から他端まで貫通し、フェルール本体の前記一端から前記他端に至る途中まで形成された、径が同一である管部と、前記途中から前記他端側に形成された、前記他端に向かって径が大きくなるテーパ部と、から構成されている貫通孔を有するフェルール本体内に、前記テーパ部の形成された側から、光ファイバの一端面に屈折率整合フィルムが形成された屈折率整合フィルム付光ファイバを、当該フィルムとは反対方向の端から光学用接着剤を浸けながら挿入し、屈折率整合フィルム付端部を前記管部内に位置調整する、光ファイバ挿入工程と、
前記光ファイバ挿入工程で挿入した光ファイバを固定する、光ファイバ固定工程と、
前記光ファイバ固定工程後、フェルール外部に突き出した光ファイバを切断する、光ファイバ切断工程と、
を有する、光ファイバ付フェルールの製造方法である。
【0011】
本発明(7)は、前記光ファイバ挿入工程前に、光ファイバの端面に屈折率整合フィルムを形成する、屈折率整合フィルム形成工程を更に有する、前記発明(6)の製造方法である。
【0012】
本発明(8)は、前記光ファイバ切断工程後に、切断した光ファイバの切断面を有する光ファイバ付フェルールの端面を研磨する、研磨工程を更に有する、前記発明(6)又は(7)の製造方法である。
【0013】
ここで、本特許請求の範囲及び本明細書における用語の定義を説明する。「光ファイバのコアと同等の屈折率を有する」とは、光ファイバのコアと屈折率と近い屈折率整合フィルムであれば特に限定されないが、フレネル反射の回避による伝送損失の面からそれぞれの屈折率の差が±0.1以内であることが好ましく、特に0.05以内であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光ファイバが光ファイバ付フェルールの外部に突き出していないため、組立作業中に光ファイバに力がかかることにより、当該光ファイバが折れることがなくなるので、特に組立現場において、作業性が向上するという効果を奏する。更に、光ファイバフェルールに別途、位置あわせ機構を設けることなく、フェルールの貫通孔のテーパ部から光ファイバを挿入することにより光学接続できるため、作業性が向上する。すなわち、位置あわせ機構を別途設ける必要がなくなるため、組立作業の際にこれらを合わせる手間が省けるのみならず、位置あわせ機構とフェルールを別体として設けた場合と比較して、これらの相対的な位置関係が変化することなく、しっかりと固定されるため、作業性がよくなる。そして、従来使用されるマッチングオイルでは長時間の使用により液体であるオイルの流出による性能劣化が生じるが、屈折率整合フィルムを使用することにより、長時間使用への耐久性がよくなるという効果を奏する。
【0015】
本発明(2)によれば、光ファイバ付フェルール内の光ファイバの端部(フェルール端面)が研磨されていることにより、現場で研磨作業を行なうことなく、すばやく光コネクタの組立作業ができるという効果を奏する。
【0016】
本発明(3)によれば、組立作業が容易な光プラグを提供可能であるという効果を奏する。
【0017】
本発明(4)、(5)によれば、組立作業が容易な末端に光プラグを有する光ケーブルを提供可能であるという効果を奏する。加えて、従来のマッチングオイルを使用したコネクタでは、光ファイバの接続し直し(光ファイバのコネクタへの挿し直し)が困難であったが、屈折率整合フィルムを使用することで接続し直しが容易かつ接続し直しをしても性能劣化の少ない光プラグを有する光ケーブルを提供可能であるという効果も奏する。
【0018】
本発明(6)〜(8)によれば、フェルール内に屈折率整合フィルムの形成された端部を有する光ファイバ付フェルールを製造することが出来るという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(a)は、本最良形態に係る光ファイバ付フェルールの概念斜視図であり、図1(b)は、本最良形態に係る光ファイバ付フェルールの概念断面図である。
【図2】図2(a)は、プラグ200の概念斜視図であり、図2(b)は、プラグ200のA−A’断面概略図である。
【図3】図3は、本最良形態に係る光コネクタ300及び光ファイバケーブル400の概略構成図である。
【図4】図4は、基準実験Aの回路図である。
【図5】図5は、評価実験の回路図である。
【図6】図6は、従来の光コネクタ及び光ファイバケーブルの概略図ある。
【図7】図7(a)は、従来の光コネクタの概略断面図であり、図7(b)は、従来の光ファイバ付フェルールの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本最良形態に係る光ファイバ付フェルール100の概略構成図である。図1(a)は、本最良形態に係る光ファイバ付フェルール100の概念斜視図であり、図1(b)は、本最良形態に係る光ファイバ付フェルールの概念断面図である。本最良形態に係る光ファイバ付フェルール100は、一端から他端まで貫通した貫通孔101を有するフェルール本体102と、前記フェルール本体の貫通孔101内に導入された光ファイバ103とを有する。ここで、貫通孔101は、フェルール本体の前記一端から前記他端に至る途中まで形成された、径が同一である管部101aと、前記途中から前記他端まで形成された、前記他端に向かって径が大きくなるテーパ部101bと、から構成されている。更に、当該光ファイバ103の一方の端部103aが、前記フェルール本体の管部101aが形成されている側の端部102aに形成されており、前記光ファイバのもう一方の端部103bが、前記管部101a内にある。加えて、当該端部103bには、光ファイバのコアと同等の屈折率を有する屈折率整合フィルム105が備えられている。以下、各構成について詳細に説明する。
【0021】
まず、本最良形態に係る光ファイバ付フェルールのフェルール本体102は、特に限定されないが、ジルコニアセラミックス、ガラス、SUS等の金属、または硬質プラスチックなどの材料を使用することが可能であるが、これらの中でも、ジルコニアセラミックスが好適に用いられる。
【0022】
フェルール本体102は、円筒形状をしていることが好適である。尚、フェルール本体の末端の形状は特に限定されず、図1に示すように平面であってもよいし、面取り形状としてもよいし、ステップを設けてもよいし、角度をつけた構造としてもよいし、半球面としてもよい。
【0023】
また、フェルール本体102の中心部には、光ファイバを通すための管部101aが設けられている。当該管部101aの径は、特に限定されないが、光ファイバの径とのクリアランスを0.5〜1.5μm、つまり、現在主流の光ファイバとの関係では0.1255〜0.1265mmとすることが好適である。このクリアランスは、管部101aへの光ファイバの挿入性と、付き合わせた光ファイバ同士の位置ずれによる接続損失低減のバランスを考慮して、適宜設計可能である。本最良形態に係るフェルール本体102には、一方のフェルール端部102bに向かって径が大きくなるテーパ部101bが更に形成されている。このように、貫通孔101の一方の出口をテーパ形状として、光ファイバを挿入し易くし、更に貫通孔に光ファイバを挿入することによって光ファイバの位置あわせが可能であるので、スリーブ等の位置あわせ機構を別途設ける必要がなくなる。すなわち、位置あわせ機構一体的に有する光ファイバ付フェルールとなる。尚、図1に示した例では、テーパ部101bがフェルール本体102の端部102bからただちに形成されるよう構成したが、光ファイバを収容するための管部及び当該管部と直結したテーパ部を備えている限り限定されず、例えば以下の形態でもよい。即ち、フェルール本体102内には、フェルール本体102の一端(102a)から第一地点(フェルール本体102の一端から他端に至る途中箇所)までは径が略同一である第一管部101aが形成され、フェルール本体102の前記第一地点から第二地点(フェルール本体102の前記第一地点から他端に至る途中箇所)までは径が大きくなるテーパ部101bが形成され、フェルール本体102の前記第二地点から他端までは径が略同一である第二管部101cが形成されている形態(即ち、第一管部の径=テーパ部の最少径、第二管部の径=テーパ部の最大径)である。
【0024】
フェルール本体102の内部には、光ファイバ103が設けられている。ここで、光ファイバは、フェルール本体102の端部102aに一方の端部103aが形成されており、もう一方の端部は、管部101a内に形成されている。このように構成することにより、図7(b)に示した従来の光ファイバ付フェルールのように光ファイバ単体で光ファイバ付フェルールの外に突き出した部分がないので、作業中に光ファイバが折れやすいという問題が解消でき、作業性がよくなる。また、光ファイバの端部103bは、管部101a内に位置する(即ち、外部の光ファイバを挿入する際、挿入方向を基準としてテーパ101bよりも下流に位置する)。これにより、管部101aの中心軸から多少ずれて光ファイバを挿入したとしても、更に挿入すると当該ずれはテーパ部の傾斜により中心軸側に修正される結果、フェルール内の光ファイバ103と外部の光ファイバの位置あわせを行なうことが可能となる。
【0025】
光ファイバの端部が形成されている前記光ファイバ付フェルールの端面が、他の光ファイバと接続可能とするため光ファイバの端部を含めて研磨されていることが好適であるが、研磨しなくても接続可能である。例えば、後述する屈折率整合フィルムを光ファイバの端部に設けることにより、他の光ファイバとの光学接続が可能となる。
【0026】
光ファイバ103の管部101a内に導入された光ファイバ103の端部103bには、屈折率整合フィルム105が設けられている。ここで、屈折率整合フィルムとは、前記光ファイバのコアと同等の屈折率を有する固体状又はゲル状の物体を意味する。また、屈折率整合フィルムは、平坦な形状に限定されず、例えば、半球形状であっても光ファイバの端部と光ファイバの端部とを勘合した際に、当該端部の隙間を埋めることが可能であればよい。
【0027】
また、屈折率整合フィルムの厚さは、特に限定されないが、例えば、5〜150μmとすることが好適である。厚さが5μm以下の場合、屈折率整合フィルムが破れやすくなるため、光ファイバと光ファイバ付フェルールの端面とを合わせる際に、屈折率整合フィルムが損壊される可能性がある。そのため、屈折率整合フィルムが光ファイバの端面を覆うことができなくなり、光ファイバの接続面において光学的特性が低下する可能性がある。また、厚さが5μm以下の場合、光ファイバと屈折率整合フィルムが均一に密着する状態をつくりにくくなる。特に、光ファイバの端面に欠けがある場合には、密着性が得られ難くなる。また、屈折率整合フィルムの厚さは、150μm以上の場合、光のロスが大きくなって光学的特性が低下する可能性がある。150μm以下の厚さとすると光のロスが小さくなるので好適である。
【0028】
屈折率整合フィルム105は、光ファイバに接触したときに、適度なタック性を伴って、光ファイバの端部に密着するフィルムであることが好適である。更に、光ファイバとの間で脱着性を有し、凝集破壊せず、光ファイバを脱着した際、光ファイバ端面に付着しない材料を選択するのが好ましい。また、屈折率整合フィルムは、熱や振動等の外的要因により、光ファイバの間隔の伸縮が起きても光ファイバ端面同士の間で保持されるのが好ましい。光ファイバの間隔は数μm程度の範囲で変化するため、その範囲の変化に対応できるものであればよく、したがって、屈折率整合フィルムの膜厚は5μm以上であることが好ましい。また、組立において、フィルムの粘着性は、光ファイバ付フェルールの端部に付着保持できるレベルであればよい。粘着性が高いと、ファイバ接続後、もう一度切り離す必要が発生した場合は、ファイバ端面側に付着してしまい、屈折率整合フィルムのファイバと接触した部分だけが、剥離してしまうことが起きる。
【0029】
屈折率整合フィルムとして、具体的には、高分子材料、例えばアクリル系、エポキシ系、ビニル系、シリコーン系、ゴム系、ウレタン系、メタクリル系、ナイロン系、ビスフェノール系、ジオール系、ポリイミド系、フッ素化エポキシ系、フッ素化アクリル系等の各種粘着剤を使用することができる。また必要に応じてこれらを混合したり、硬化剤、フッ素樹脂やフィラーを加えたりして用いることができる。中でも、耐環境性及び接着性、その他の面から、アクリル系粘着剤またはシリコーン系粘着剤が特に好ましい。また、適宜架橋剤、添加剤、軟化剤、粘着調整剤等の添加により接着力、濡れ性を調節してもよく、耐水性や耐湿性、耐熱性を付加してもよい。なお、材料、作製方法によっては多孔構造になることもあるが、光学接続時に押圧力を加えることにより圧縮すれば、空気をなくすことができ、光損失に影響を与えない。また、屈折率の調整は前記材料の適宜配合により容易に調製可能である。
【0030】
ここで、本最良形態に係る光ファイバ付フェルールの製造方法について説明する。本最良形態に係る光ファイバ付フェルールの製造方法は、光ファイバ挿入工程と、光ファイバ固定工程と、光ファイバ切断工程とを有する。更に、前記光ファイバ挿入工程前に、屈折率整合フィルム形成工程を有していてもよいし、光ファイバ切断工程後に研磨工程を有していてもよい。以下、各工程を詳述することとする。
【0031】
まず、屈折率整合フィルム形成工程では、光ファイバの端部に屈折率整合フィルムを形成する。屈折率整合フィルム形成工程の手法は特に限定されないが、例えば、特開2007−183383号公報に記載された被膜形成方法を用いることが特に好適である。より詳細には、光ファイバ又は液状屈折率整合体の少なくとも一方を帯電させた状態で、その端面を液状屈折率整合体の液面に近接させ、該液状屈折率整合体を前記光ファイバの端面に吸着させた後、該吸着された液状屈折率整合体を固化させることにより光ファイバの端部に屈折率整合フィルムを形成することができる。このような工程により、光ファイバの帯電量及び液状屈折率整合体の液面に対する移動量、並びに液状屈折率整合体の粘度を調整することで、光ファイバ端面に対する液状屈折率整合体の吸着量を調整することが可能となり、屈折率整合体の形状や厚みを安定させ易くなる。また、本工程により光ファイバ端面のみに屈折率整合フィルムを形成することができるので、後述する光ファイバ挿入工程において、屈折率整合フィルムが端面から剥離し難くなる。ここで、液状屈折率整合体とは、例えば、屈折率整合フィルムを構成する材料の溶液である。この場合、吸着された液状屈折率整合体の溶媒を揮発させて固化する。
【0032】
次に、光ファイバ挿入工程では、本最良形態に係るフェルール本体102内に、前記フェルール本体102のテーパ部101bが形成されている側から、光ファイバの端面に屈折率整合フィルムが形成された屈折率整合フィルム付光ファイバを、当該フィルムとは反対方向の端から、光学用接着剤を浸けながら挿入し、屈折率整合フィルム付端部を管部101a内に位置調整する。尚、光学用接着剤は、フェルールと光ファイバを固定するための接着剤であれば、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂系、ポリイミド樹脂系の接着剤等、公知の光学用接着剤を使用することが可能である。
【0033】
次に、光ファイバ固定工程では、前記光ファイバ挿入工程で挿入した光ファイバを固定する。固定方法は特に限定されないが、例えば、光ファイバが挿入されたフェルールを加熱することにより固定することが可能である。
【0034】
次に、光ファイバ切断工程では、前記光ファイバ固定工程後、フェルール外部に突き出した光ファイバを切断する。このとき、フェルールの端面にあわせて、光ファイバを切断する。
【0035】
最後に、研磨工程では、切断した光ファイバの切断面を有する光ファイバ付フェルールの端面を研磨する。研磨は公知の方法により行なうことができるが、例えば、光ファイバ付フェルールをコネクタ研磨機にセットして端面研磨を行なうことが可能である。
【0036】
図2は、本最良形態に係るプラグ200の概略図である。図2(a)は、プラグ200の概念斜視図であり、図2(b)は、プラグ200のA−A’断面概略図である。
プラグ200は、本最良形態に係る光ファイバ付フェルール100と、前記光ファイバ付フェルールのテーパ部101bを有する端部102bに設けられているプラグフレーム220と、前記光ファイバ付フェルールや前記プラグフレーム等を保持するプラグハウジング230とを有する。図2(b)に示すように、プラグフレームの貫通孔に、光ファイバOを通して、本最良形態に係る光ファイバ付フェルールのテーパ部101bの開孔口に光ファイバを挿入し、屈折率整合フィルム105を介して、光ファイバ103と接続構造を形成する。
【0037】
図3は、本最良形態に係る光コネクタ300及び光ファイバケーブル400の概略構成図である。光コネクタ300は、プラグ200と、当該プラグを保持するコネクタつまみ部310とを有する。更に、光ファイバが折れ曲がらないようにブーツ320を有していてもよい。図3のように各パーツを組み合わせて、光コネクタ300と光ファイバOを組み立てて、光ファイバケーブル400を形成する。
【実施例】
【0038】
<実施例1>
以下、本発明の光コネクタ製造方法について、実施例を用いてさらに詳細に説明する。なお、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
まず、屈折率整合フィルム付き素線ファイバ(巴川製紙所社製、FITWELL、FW1―20―EF、屈折率:1.46、膜厚:20μm、全長:50mm、被覆除去長:50mm)を用意し、その加工他端からジルコニアフェルール(パイロットプレシジョン社製、SCキャピラリ、外径2.5mm、内径125.5μm)に光学用接着剤(エポテック社製、353ND)を浸けながら挿入し、整合フィルム側ファイバ端面がフェルール中央部(5mm程度)になったところで、150℃で1時間加熱することで光ファイバとジルコニアフェルールを固定した。その後、挿入側ファイバを切断し、切断後の光ファイバ付きフェルールをコネクタ研磨機(精工技研社製、SFP―550S)にセットし、挿入側の端面研磨を行なって、更に、図1(b)に示される100の構造体を作製した。
次に、ジルコニア割りスリーブ220(アダマント社製、ASC―SLタイプ)と光ファイバ付きフェルール100をプラグハウジング230(材質:ポリブチルテレフタレート、ガラスフィラー20%配合)に組み込み、図2(b)に示す構造を作製した。以上のようにして実施例1の光コネクタを作製した。
【0039】
<比較例1>
まず、光ファイバ心線(古河電工社製、外径250μm、クラッド外径125μm、全長:30mm、被覆除去長:30mm)を用意し、その端部からジルコニアフェルール(パイロットプレシジョン社製、SCキャピラリ、外径2.5mm、内径125.5μm)に光学用接着剤(エポテック社製、353ND)を浸けながら挿入し、光ファイバ素線が5mm程度でたところで切断する。その後、150℃で1時間加熱することで光ファイバとジルコニアフェルールを固定し、固定後挿入側ファイバを切断して光ファイバ付フェルールを作製した。作製した光ファイバ付フェルールの突き出し側を、コネクタ研磨機(精工技研社製、SFP―550S)にセットし、研磨を行なうことで片端面を研磨した突き出し光ファイバ付フェルールを作製した。
次に、V溝基板(ハタ研削社製、1V溝基板)と押し付け用ガラス板、突き出し光ファイバ付フェルールをプラグハウジング230(材質:ポリブチルテレフタレート、ガラスフィラー20%配合)に組み込み、光ファイバ端部にマッチングオイル(古河電工社製、S918X−31)を塗布し、比較例1の光コネクタを作製した。
【0040】
<比較例2>
屈折率整合フィルムの代わりにマッチングオイル(古河電工社製、S918X−31)を塗布した以外は、実施例1と同様にして比較例2の光コネクタを作製した。
実施例および比較例の光コネクタについて、以下の方法で評価した。
【0041】
(評価方法)
<光コネクタの組立>
実施例および比較例の光コネクタについて、端部より光ファイバ心線(古河電工社製、外径250μm、クラッド外径125μm)を用意し、その一端から30mmの範囲で被覆を除去して、光コネクタに挿入し、内蔵ファイバに当たったところで固定し、評価用接続構造を作製した。
【0042】
<接続損失測定>
[基準実験A]
接続損失0の標準状態を示すために基準実験Aを行った。図4は、基準実験Aの回路図である。符号600は光パワーメータ(商品名:OPTICAL MULTI POWER METER Q8221、ADVANTEST社製)、EはFCコネクタ、BはSCコネクタ、F3はFCコネクタとSCコネクタをそれぞれ両端に有する石英系シングルモードの光ファイバ(FCコネクタ、SCコネクタ付光ファイバ250μm心線、長さ1m、住友電気工業社製)、CはSCアダプタ、F4は一端にSCコネクタを有する石英系シングルモードの光ファイバ(SCコネクタ付光ファイバ250μm心線、長さ1m、住友電気工業社製)、F5は一端にFCコネクタを有する石英系シングルモードの光ファイバ(FCコネクタ付光ファイバ250μm心線、長さ1m、住友電気工業社製)である。UはF4ファイバとF5ファイバを融着接続を行なった接続点である。なお、光パワーメータ600は、センサーユニットとして商品名:Q82208を、1.55μmを用い、LDユニットとして商品名:Q81212を用いた。
【0043】
まず、光ファイバF3を用意し、FCコネクタを光パワーメータ600の入射用端子に接続した。次いで、SCコネクタをSCアダプタCに接続した。次いで、光ファイバF4を用意し、SCコネクタをSCアダプタと接続した。次いで、光ファイバF5を用意し、FCコネクタを光パワーメータ600の出射用端子に接続した。次いで光ファイバF4と光ファイバF5を融着接続器(古河電工社製、S122M8)を用いて融着接続を行なった。この状態で波長1550nmの光を入射用端子から5回入射させ、出射用端子から出射された光パワーを測定した。そして、5回の平均値を基準値Aとした。
【0044】
[実施例及び比較例の評価]
次に、実施例1の光コネクタについて接続損失を評価した。図6は、評価実験の回路図である。光ファイバF4に代えて、実施例1に係るコネクタDを有する石英系シングルモードの光ファイバF6(SCコネクタ付光ファイバ250μm心線、長さ1m、住友電気工業社製)を用いた以外は基準実験Aと同様にして光パワーを測定した。また、コネクタ組立作業の繰り返し性を評価するために、光パワーを測定後、コネクタDと光ファイバF6の固定を解除し、コネクタDと光ファイバF6を離間させ、再度コネクタDと光ファイバF6を固定した。以上の組立作業を繰り返したときの光パワー測定値と基準値Aとの差異を実施例1の接続損失とした。その測定結果を表1に示す。サンプル数3(試験番号1〜3)組立作業の繰り返しは5回である。なお、評価基準としては、接続損失が0.30dB未満であれば実用上問題がなく、0.15dB未満であれば特に優れている。比較例1、比較例2の光コネクタについても、コネクタDの部分に各のコネクタを使用して同様に評価した。
【0045】
<評価結果>
表1から明らかなように、実施例1光コネクタでは、組立の繰り返しによる接続損失に実用上問題がなかった。これに対し、比較例1および比較例2の光伝送媒体は繰り返し接続回数2回目以降の接続損失が0.30dBを超えており実用上問題があり光コネクタ機能を有さなかった。また、比較例1では、フェルール端部からファイバが飛び出しているため、コネクタ製造上の歩留りが悪くなることは明らかである。また、比較例2ではマッチングオイルが流れ出る恐れがあり、マッチングオイルを溜めておく液溜まりを作製するのは困難であるため、実用上の問題がある。
【0046】
【表1】

【符号の説明】
【0047】
100:光ファイバ付フェルール
101:貫通孔
102:フェルール本体
103:光ファイバ
104:テーパ部
105:屈折率整合フィルム
200:プラグ
300:光コネクタ
400:光ファイバケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端から他端まで貫通した貫通孔を有するフェルール本体と、前記貫通孔内に導入された光ファイバとを有する光ファイバ付フェルールにおいて、
前記貫通孔が、フェルール本体の前記一端から前記他端に至る途中まで形成された、径が同一である管部と、前記途中から前記他端側に形成された、前記他端に向かって径が大きくなるテーパ部と、から構成されており、
光ファイバの一端が、フェルール本体の前記一端に位置しており、
光ファイバの他端が、前記貫通孔の前記管部内に位置しており、更に、光ファイバの前記他端には、光ファイバのコアと同等の屈折率を有する屈折率整合フィルムが備えられていることを特徴とする、光ファイバ付フェルール。
【請求項2】
光ファイバの前記一端とフェルール本体の前記一端とから構成される光ファイバ付フェルールの端面が研磨されている、請求項1記載の光ファイバ付フェルール。
【請求項3】
請求項1又は2記載の光ファイバ付フェルールを有する、光プラグ。
【請求項4】
請求項3記載の光プラグを有する、光コネクタ。
【請求項5】
請求項4記載の光コネクタと、光コネクタの構成部材である光ファイバ付フェルール内の光ファイバとは異なる光ファイバとを有し、
前記屈折率整合フィルムを介して、光ファイバ付フェルール内の光ファイバと当該光ファイバとは異なる前記光ファイバとが光路接続されていることを特徴とする、光ファイバケーブル。
【請求項6】
一端から他端まで貫通し、フェルール本体の前記一端から前記他端に至る途中まで形成された、径が同一である管部と、前記途中から前記他端側に形成された、前記他端に向かって径が大きくなるテーパ部と、から構成されている貫通孔を有するフェルール本体内に、前記テーパ部の形成された側から、光ファイバの一端面に屈折率整合フィルムが形成された屈折率整合フィルム付光ファイバを、当該フィルムとは反対方向の端から光学用接着剤を浸けながら挿入し、屈折率整合フィルム付端部を前記管部内に位置調整する、光ファイバ挿入工程と、
前記光ファイバ挿入工程で挿入した光ファイバを固定する、光ファイバ固定工程と、
前記光ファイバ固定工程後、フェルール外部に突き出した光ファイバを切断する、光ファイバ切断工程と、
を有する、光ファイバ付フェルールの製造方法。
【請求項7】
前記光ファイバ挿入工程前に、光ファイバの端面に屈折率整合フィルムを形成する、屈折率整合フィルム形成工程を更に有する、請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
前記光ファイバ切断工程後に、切断した光ファイバの切断面を有する光ファイバ付フェルールの端面を研磨する、研磨工程を更に有する、請求項6又は7記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−64779(P2011−64779A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213248(P2009−213248)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】