説明

光ファイバ切断装置

【課題】光ファイバを装置本体に位置決めした状態で、光ファイバにブレードを当接させることにより、光ファイバを切断するように構成された光ファイバ切断装置において、経済性を損なうことなく光ファイバの切断面を精度良く形成可能とする。
【解決手段】ブレード移動機構28によるブレード移動動作と連動して、ブレード20が光ファイバとの当接位置から退避位置へ移動する度に、ブレード下降機構210により、ブレード20をその刃先に沿って下方へ僅かずつ変位させる構成とする。これによりブレード20を毎回新しい刃先で光ファイバに当接させるようにする。その上で、ブレード20が下方へ所定量変位したとき、それ以上の変位を規制し、この変位規制によって、ブレード移動機構28およびブレード下降機構210に連結された連動機構40の動作を停止させてブレード移動動作を規制する。これによりブレード20の交換時期を確実に作業者に認識させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、光ファイバを装置本体に位置決めした状態で、光ファイバにブレードを当接させることにより、光ファイバを切断するように構成された光ファイバ切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光ファイバのコネクタを、現場(例えばオフィスや一般家庭等)での施工により組み立てる機会が多くなってきている。
【0003】
このため、従来より、光ファイバ切断装置として、例えば「特許文献1」に記載されているような、手作業で容易に光ファイバを切断可能に構成されたものが開発されてきている。
【0004】
その際、この「特許文献1」に記載された光ファイバ切断装置においては、外周縁に刃先が形成された円板状のブレードによって光ファイバを切断する度に、そのブレードを少しずつ回転させるように構成されている。
【0005】
また「特許文献2」には、ハンドルによってブレードをその刃先に沿った方向に変位させ得るように構成された光ファイバ切断装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−244403号公報
【特許文献2】特開平4−229009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記「特許文献1」や「特許文献2」に記載された光ファイバ切断装置を用いるようにすれば、ブレードを毎回新しい刃先で光ファイバに当接させることができ、これにより光ファイバの切断面を精度良く形成することが可能となる。
【0008】
しかしながら、これらに記載された光ファイバ切断装置においては、光ファイバに対するブレードの当接位置をずらすことができる構成となっているに過ぎないので、光ファイバの切断操作を何度も繰り返しているうちに同じ刃先が光ファイバに当接することとなり、このため光ファイバの切断面を精度良く形成することができなくなってしまう、という問題がある。
【0009】
一方、このような事態が発生する前にブレードを交換しようとしても、作業者は、その適正な交換時期が分からないので、ブレード交換のタイミングが遅くなりすぎて光ファイバの切断面を精度良く形成することができなくなったり、そのタイミングが早くなりすぎて経済性が損なわれてしまう、という問題がある。
【0010】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、光ファイバを装置本体に位置決めした状態で、光ファイバにブレードを当接させることにより、光ファイバを切断するように構成された光ファイバ切断装置において、経済性を損なうことなく光ファイバの切断面を精度良く形成することができる光ファイバ切断装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、ブレードが当接位置から退避位置へ移動する度に、ブレードをその刃先に沿った刃先方向の一方向へ僅かずつ変位させる構成とした上で、ブレードが上記一方向へ所定量変位したときそれ以上の変位を規制してブレード移動動作が行われなくなる構成とすることにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0012】
すなわち、本願発明に係る光ファイバ切断装置は、
光ファイバを装置本体に位置決めした状態で、上記光ファイバにブレードを当接させることにより、上記光ファイバを切断するように構成された光ファイバ切断装置において、
上記ブレードを、退避位置と上記光ファイバへの当接位置との間で移動させるブレード移動機構と、
このブレード移動機構によるブレード移動動作と連動して、上記ブレードが上記当接位置から上記退避位置へ移動する度に、上記ブレードを該ブレードの刃先に沿った刃先方向の一方向へ僅かずつ変位させる微小変位機構と、
上記ブレードが上記一方向へ所定量変位したとき、該ブレードのそれ以上の変位を規制する変位規制部材と、
この変位規制部材により上記ブレードの変位が規制されたとき、上記ブレード移動機構によるブレード移動動作を規制する動作規制機構と、を備えてなることを特徴とするものである。
【0013】
上記「刃先方向」は、ブレードの刃先に沿った方向であれば、その具体的な方向は特に限定されるものではない。
【0014】
上記「所定量」は、ブレードにおける刃先の形成範囲内の変位量であれば、その具体的な値は特に限定されるものではない。
【0015】
上記「変位規制部材」において、ブレードの変位を規制するための具体的な構成は特に限定されるものではない。
【0016】
上記「動作規制機構」は、変位規制部材によりブレードの変位が規制されたことに起因して、ブレード移動機構によるブレード移動動作を規制するように構成されたものであれば、そのブレード移動動作を規制するための具体的な構成は特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0017】
上記構成に示すように、本願発明に係る光ファイバ切断装置は、ブレード移動機構によるブレード移動動作と連動して、ブレードが光ファイバとの当接位置から退避位置へ移動する度に、微小変位機構により、ブレードをその刃先に沿った刃先方向の一方向へ僅かずつ変位させるように構成されており、そして、ブレードが上記一方向へ所定量変位したとき、変位規制部材によりそれ以上の変位を規制し、この変位規制に起因して動作規制機構によりブレード移動動作を規制するように構成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0018】
すなわち、ブレードが当接位置から退避位置へ移動する度に、ブレードがその刃先方向の一方向へ僅かずつ変位する構成となっているので、ブレードを毎回新しい刃先で光ファイバに当接させることができる。そしてこれにより、光ファイバの切断操作が繰り返して行われても、光ファイバの切断面を精度良く形成することができる。
【0019】
そして、このようにしてブレードの切断操作が何度も繰り返して行われた結果、ブレードが上記一方向へ所定量変位したときには、変位規制部材によりそれ以上の変位が規制されて、ブレード移動機構によるブレード移動動作が規制される構成となっているので、ブレードの交換時期を確実に作業者に認識させることができる。
【0020】
したがって、ブレードの交換のタイミングが遅くなりすぎて、光ファイバの切断面を精度良く形成することができなくなったり、そのタイミングが早くなりすぎて経済性が損なわれてしまうのを、未然に防止することができる。
【0021】
このように本願発明によれば、光ファイバを装置本体に位置決めした状態で、光ファイバにブレードを当接させることにより、光ファイバを切断するように構成された光ファイバ切断装置において、経済性を損なうことなく光ファイバの切断面を精度良く形成することができる。
【0022】
その際、上記「所定量」として、ブレードの刃先方向の幅と略同じ値に設定しておくようにすれば、ブレードを最大限に有効利用することができ、経済性の観点からより好ましい。
【0023】
上記構成において、微小変位機構を、装置本体に対して刃先方向に移動可能に支持された第1可動部材と、ブレードを支持した状態で、第1可動部材に対して刃先方向に相対変位可能に支持された第2可動部材と、この第2可動部材の第1可動部材に対する刃先方向の位置関係を調整するための調整部材とを備え、かつ、ブレードが当接位置から退避位置へ移動する度に、第1および第2可動部材が一体となって上記一方向へ僅かずつ変位する構成とし、そして、変位規制部材を、ブレードが上記一方向へ上記所定量分だけ変位したとき第2可動部材に当接する構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0024】
すなわち、ブレードが上記一方向へ上記所定量分だけ変位して、第2可動部材が変位規制部材に当接したら、1枚目のブレードで可能な切断動作が完了したものとして、この第2可動部材を調整部材の調整により変位規制部材との当接位置から上記一方向とは逆の方向へ上記所定量と同じ量だけ相対変位させることにより、これに支持されたブレードを初期位置に復帰させることができる。そして、この初期位置への復帰と共に、ブレードを新たなものと交換することにより、ブレード1枚分の切断動作を更新して新たなブレードでの切断動作を開始することができる。
【0025】
このような構成を採用した場合において、第2可動部材が調整部材の調整により変位規制部材との当接位置から上記一方向とは逆の方向へ上記所定量と同じ量だけ相対変位したとき、この第2可動部材に当接してそれ以上の相対変位を規制する第2の変位規制部材を備えた構成とすれば、この第2可動部材に支持されたブレードを初期位置に正確かつ容易に位置決めすることができる。
【0026】
また、第1可動部材の上記一方向への累積変位量が所定の設定値に達したとき、調整部材の調整による第2可動部材の上記一方向とは逆の方向へ相対変位を規制する第3の変位規制部材を備えた構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0027】
すなわち、第2可動部材は、ブレード1枚分の切断動作が完了する度に、調整部材の調整により上記一方向とは逆の方向へ相対変位することとなるが、一方、第1可動部材は、切断動作の更新にかかわらず上記一方向へ僅かずつ変位し続けることとなる。
【0028】
そこで、第1可動部材の上記一方向への累積変位量が所定の設定値に達したとき、調整部材の調整による第2可動部材の上記一方向とは逆の方向への相対変位を規制する構成とすることにより、ブレード1枚分の切断動作を何度か更新して行っているうちに調整部材が調整不能となった時点で、光ファイバ切断装置が機械寿命を迎えたことを作業者に確実に認識させることができる。そしてこれにより、光ファイバの切断面を精度良く形成することができる期間を超えて切断動作が行われてしまうのを未然に防止することができる。
【0029】
上記構成において、ブレード移動機構によるブレード移動動作と連動して、ブレードが当接位置から退避位置へ移動する度に、その移動回数に対応する量を表示する表示機構を備えた構成とすれば、ブレードの交換時期をブレード移動動作の規制により作業者に認識させるのに加えて、その交換時期が近づいたことを表示機構により視覚的に作業者に認識させることができる。また、この表示機構により、おおよその切断回数を随時作業者に知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本願発明の一実施形態に係る光ファイバ切断装置の外観を示す図であって、(a)は平面図、(b)、(c)、(d)は(a)のb方向、c方向、d方向矢視図
【図2】上記光ファイバ切断装置の要部を、操作レバー等を取り外した状態で示す、図1(a)と略同様の図
【図3】上記光ファイバ切断装置の要部を、操作レバー等を取り外した状態で示す、図1(b)と略同様の図
【図4】上記光ファイバ切断装置による光ファイバの切断工程を示す平面図
【図5】図4(e)のV部詳細図
【図6】図5のVI部詳細図
【図7】上記光ファイバ切断装置における各機構の動作シーケンスを示すタイミングチャート
【図8】上記光ファイバ切断装置における連動機構の基幹部分を構成するメインシャフトおよびその周辺構造を示す、部分断面平面図
【図9】上記光ファイバ切断装置における廃棄機構およびこれに関連する連動機構の要部を示す図
【図10】上記光ファイバ切断装置におけるクランプ駆動機構およびこれに関連する連動機構の要部を示す図
【図11】上記光ファイバ切断装置における操作レバーの閉操作および開操作によるクランプ用スライダおよび各可動ブロックの変位の様子を、上部開閉カムおよび下部開閉カムの位置変化と共に示す平面図
【図12】上記光ファイバ切断装置における撓み付与機構およびこれに関連する連動機構の要部を示す図
【図13】上記光ファイバ切断装置における操作レバーの閉操作によるアンビル、上部アンビルカムおよび下部アンビルカムの変位の様子を示す平面図
【図14】上記光ファイバ切断装置におけるテンション付与機構を示す図
【図15】上記光ファイバ切断装置におけるクランプ位置調整機構を示す図
【図16】上記光ファイバ切断装置におけるブレード移動機構およびこれに関連する連動機構の要部を示す図
【図17】上記光ファイバ切断装置におけるブレード下降機構およびこれに関連する連動機構の要部を示す図
【図18】上記ブレード下降機構の作用を説明するための図
【図19】上記光ファイバ切断装置におけるカウンタ駆動機構およびこれに関連する連動機構の要部を示す図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0032】
図1は、本願発明の一実施形態に係る光ファイバ切断装置10の外観を示す図であって、同図(a)は、その平面図であり、同図(b)、(c)、(d)は、同図(a)のb方向、c方向、d方向矢視図である。
【0033】
同図に示すように、本実施形態に係る光ファイバ切断装置10は、装置本体12と、この装置本体12に対して、その上端部において水平方向に延びる軸線Ax1回りに回動可能に支持された操作レバー14と、からなるハンドツール型の光ファイバ切断装置として構成されている。
【0034】
その際、操作レバー14は、手動操作により、同図(b)に2点鎖線で示す開位置(すなわち装置本体12の上面からの開き角度が75°程度と最も大きくなる位置)と閉位置(すなわち装置本体12の上面からの開き角度が0°となる位置)との間で回動し得るように構成されている。
【0035】
図2および3は、光ファイバ切断装置10の要部を、操作レバー14等を取り外した状態で示す、図1(a)および(b)と略同様の図である。
【0036】
これらの図にも示すように、本実施形態に係る光ファイバ切断装置10においては、光ファイバ2を装置本体12に位置決めした状態で、光ファイバ2にブレード20を当接させることにより、光ファイバ2を切断するように構成されている。その際、光ファイバ2は、装置本体12に位置決めされた状態では、軸線Ax1と直交する水平方向に延びた状態で配置されるようになっている。
【0037】
光ファイバ2は、芯線2Aに被覆2Bが施された構成となっている。その際、この光ファイバ2の先端部分は、所定長にわたって被覆2Bが除去されており、芯線2Aが露出した状態となっている。そして、この光ファイバ2は、その被覆2Bの部分においてファイバホルダ100に保持されている。
【0038】
装置本体12は、光ファイバ2をその切断位置の両側(すなわち光ファイバ2の先端側および基端側)でクランプする1対のクランプユニット22A、22Bと、光ファイバ2を両クランプユニット22A、22B間において撓ませる撓み付与機構24と、両クランプユニット22A、22B間において光ファイバ2にテンションを付与するテンション付与機構26と、ブレード20を退避位置と光ファイバ2への当接位置との間で移動させるブレード移動機構28とが、筐体30に収容された構成となっている。
【0039】
さらに、本実施形態においては、ブレード20の当接により切断された光ファイバ2の先端側切断片を廃棄するための廃棄機構50も、筐体30に収容された構成となっている。また、この筐体30には、光ファイバ2の先端側切断片を廃棄するための廃棄ボックス38が着脱可能に取り付けられている。
【0040】
なお、図2においては、説明の便宜上、1対のクランプユニット22A、22Bをやや簡略化して示しており、また、撓み付与機構24については、その主要構成要素であるアンビル34およびガイドピン36A、36Bのみを示しており、さらに、テンション付与機構26およびブレード移動機構28については、その配置のみを2点鎖線で示している(これらについては後に詳述する)。
【0041】
筐体30には、その幅方向中心位置に、ファイバホルダ100の外形形状に対応した形状のホルダ取付用凹部30aが形成されている。ファイバホルダ100は、この筐体30のホルダ取付用凹部30aに嵌め込まれることにより、装置本体12に位置決めされるようになっている。その際、光ファイバ2の先端部分は、筐体30の幅方向中心位置に形成された挿通溝30bから筐体30内に挿入されるようになっている。このとき筐体30内に挿入された状態にある光ファイバ2の経路を、以下「ファイバ挿通経路」という。
【0042】
この筐体30の上面には、図1(a)、(b)に示すようなインナカバー32が取り付けられている。そして、このインナカバー32により、ファイバホルダ100を介して装置本体12に位置決めされた状態にある光ファイバ2の先端部分を、1対のクランプユニット22A、22B、撓み付与機構24、テンション付与機構26およびブレード移動機構28と共に覆うようになっている。
【0043】
操作レバー14は、閉位置へ回動したときにインナカバー32を覆う大きさを有するレバー部材として構成されている。
【0044】
1対のクランプユニット22A、22Bは、いずれも固定ブロック22fと可動ブロック22mとこれらを支持するサポート部材22sとを備えた構成となっている。その際、これら各クランプユニット22A、22Bは、固定ブロック22fがサポート部材22sに固定される一方、可動ブロック22mが上下1対の引張りバネ150(図14(c)参照)によって固定ブロック22fへ向けて付勢された構成となっている。また、これら各クランプユニット22A、22Bの固定ブロック22fおよび可動ブロック22mは、SUS(ステンレス鋼)などの硬度の高い金属により構成されており、これにより光ファイバ2に強い圧接力を与えて精度の高い切断動作を可能とするようになっている。
【0045】
そして、これら各クランプユニット22A、22Bにおいては、その可動ブロック22mが、該可動ブロック22mと固定ブロック22fとで光ファイバ2をクランプするクランプ位置と、固定ブロック22fから離れて芯線2Aのクランプを解除するクランプ解除位置とを採り得るようになっている。その際、光ファイバ2の先端側(以下、単に「ファイバ先端側」という)に位置するクランプユニット22Aは、芯線2Aの部分をクランプし、光ファイバ2の基端側(以下、単に「ファイバ基端側」という)に位置するクランプユニット22Bは、被覆2Bの先端部分をクランプするようになっている。
【0046】
撓み付与機構24は、1対のクランプユニット22A、22Bの間に配置されたアンビル34と2つのガイドピン36A、36Bとを備えている。
【0047】
アンビル34は、鉛直方向に延びる軸線Ax2回りに2位置間で回動し得るように構成されている。このアンビル34は、反時計回りに退避位置まで回動した状態ではファイバ挿通経路にある光ファイバ2の芯線2Aとは非接触となり、一方、時計回りに当接位置まで回動した状態では光ファイバ2の芯線2Aと2箇所で当接して、これをS字状に撓ませるようになっている。
【0048】
2つのガイドピン36A、36Bは、ファイバ挿通経路に近接して配置されており、これにより光ファイバ2が筐体30内に挿入される際に、その先端部分をファイバ挿通経路に沿ってガイドするようになっている。また、両ガイドピン36A、36Bは、アンビル34を退避位置および当接位置の各々において位置決めするようになっている。
【0049】
1対のクランプユニット22A、22Bのうち、ファイバ先端側に位置するクランプユニット22Aは、その固定ブロック22f側の端部において鉛直方向に延びる軸線Ax3回りに回動し得るように構成されている。そして、テンション付与機構26は、このクランプユニット22Aを、他方のクランプユニット22Bと平行に延びる位置からファイバ先端側に所定角度回動させることにより、両クランプユニット22A、22Bによりクランプされた光ファイバ2の芯線2Aにテンションを付与するようになっている。
【0050】
本実施形態においては、1対のクランプユニット22A、22Bによるクランプ動作と、撓み付与機構24による撓み付与動作と、テンション付与機構26によるテンション付与動作と、ブレード移動機構28によるブレード20の当接位置への移動動作とが、操作レバー14を開位置から閉位置へ回動させる操作(以下「閉操作」という)により、この順序で重畳的に行われるようになっている。
【0051】
そして、これを実現するための連動機構40が装置本体12に設けられている。この連動機構40は、さらに、操作レバー14の閉操作が完了するまでの間に、1対のクランプユニット22A、22Bによるクランプ動作を解除させるように構成されている。なお、図2においては、連動機構40の配置のみを2点鎖線で示している(これについても後に詳述する)。
【0052】
廃棄機構50は、装置本体12に位置決めされた状態にある光ファイバ2に対して、その芯線2Aにおける先端部の下方近傍に位置するように配置された本体側ローラ52と、操作レバー14の閉操作の際に、本体側ローラ52に当接して該本体側ローラ52とで光ファイバ2の先端部を挟み込むレバー側ローラ54とを備えた構成となっている。
【0053】
そして、この廃棄機構50においては、連動機構40により、操作レバー14の開操作(すなわち閉操作とは逆の方向への回動操作)に連動して動作するようになっている。すなわち、操作レバー14の開操作によって廃棄機構50の本体側ローラ52が回転し、これに従動してレバー側ローラ54も回転するようになっている。そしてこれにより、ブレード20によって切断された光ファイバ2の先端側切断片をファイバ先端側へ送り出して廃棄ボックス38に廃棄するようなっている。
【0054】
図4は、本実施形態に係る光ファイバ切断装置10による光ファイバ2の切断工程を示す平面図である。
【0055】
まず、同図(a)に示すように、光ファイバ2の先端部分を、1対のクランプユニット22A、22Bの各々における固定ブロック22fとクランプ解除位置にある可動ブロック22mとの間の隙間に挿通させる。このとき、両クランプユニット22A、22Bは、ファイバ挿通経路と直交する水平方向に互いに平行に配置しておき、また、撓み付与機構24のアンビル34は反時計回りに退避位置まで回動させておき、さらに、ブレード20は退避位置まで後退させておく。
【0056】
次に、この状態で、同図(b)に示すように、各クランプユニット22A、22Bの可動ブロック22mを移動させて、可動ブロック22mと固定ブロック22fとで光ファイバ2をクランプする。
【0057】
次に、この状態で、同図(c)に示すように、アンビル34を時計回りに当接位置まで回動させて、光ファイバ2の芯線2AをS字状に撓ませる。
【0058】
次に、この状態で、同図(d)に示すように、クランプユニット22Aをファイバ先端側に所定角度回動させて、光ファイバ2の芯線2Aにテンションを付与する。
【0059】
次に、この状態で、同図(e)に示すように、ブレード20を前進させて光ファイバ2の芯線2Aに当接させることにより、この芯線2Aを切断する。
【0060】
次に、この状態で、同図(f)に示すように、クランプユニット22Aをクランプユニット22Bと平行になる元の位置まで回動させた後、各クランプユニット22A、22Bの可動ブロック22mをクランプ解除位置まで移動させる。そして、本体側ローラ52およびレバー側ローラ54の回転により、ブレード20によって切断された光ファイバ2の芯線2Aの先端側切断片2Aaをファイバ先端側へ送り出して廃棄する。
【0061】
図5は、図4(e)のV部詳細図である。
【0062】
同図に示すように、撓み付与機構24における2つのガイドピン36A、36Bのうち、ガイドピン36Aは、ファイバ挿通経路よりも固定ブロック22f側でかつブレード20よりもファイバ基端側に配置されており、また、ガイドピン36Bは、ファイバ挿通経路よりも可動ブロック22m側でかつブレード20よりもファイバ先端側に配置されている。これら各ガイドピン36A、36Bは、ファイバ挿通経路の高さ位置を中心とする上下所定幅の中間部分が、相対的に径が小さい小径部36Aa、36Baとして形成されている。そして、これら各ガイドピン36A、36Bは、その下端部において筐体30に固定されている。
【0063】
また、同図に示すように、撓み付与機構24のアンビル34は、軸線Ax2を中心とする略円柱状の部材として構成されている。
【0064】
その際、このアンビル34の回動中心となる軸線Ax2は、ブレード20よりもややファイバ先端側でかつファイバ挿通経路のよりもやや固定ブロック22f側に変位している。
【0065】
このアンビル34には、その上面に2つのアンビル部34A、34Bが形成されている。その際、アンビル部34Aは、ファイバ挿通経路よりも可動ブロック22m側でかつ軸線Ax2よりもファイバ基端側において、アンビル34の外周面へ向けて中心角90°程度で略扇形に拡がるように形成されている。一方、アンビル部34Bは、ファイバ挿通経路よりも固定ブロック22f側でかつブレード20よりもファイバ先端側において、軸線Ax2を含むようにして、アンビル34の外周面へ向けて中心角70°程度で略扇形に拡がるように形成されている。
【0066】
このアンビル34の上面における両アンビル部34A、34B以外の一般部34Cは、両アンビル部34A、34Bよりも段下がりで形成されている。そして、この一般部34Cにおける対角的に離れた2箇所には、軸線Ax2を中心として円弧状に延びる2つの長孔34a、34bが形成されている。そして、これら各長孔34a、34bにおいて各ガイドピン36A、36Bを上向きに挿通させるようになっている。
【0067】
そして、アンビル34は、時計回りに当接位置まで回動したとき、その各長孔34a、34bの反時計回り側の端面が各ガイドピン36A、36Bに当接して、当接位置に位置決めされ(図4(c)参照)、一方、反時計回りに退避位置まで回動したとき、その各長孔34a、34bの時計回り側の端面が各ガイドピン36A、36Bに当接して、退避位置に位置決めされるようになっている(図4(a)参照)。
【0068】
図6は、図5のVI部詳細図である。
【0069】
同図に示すように、アンビル部34Aは、その時計回り側の端面34Aaにおけるファイバ先端側の端部領域が、略台形状に突出する突出部34Aa1として形成されている。また、アンビル部34Bは、その時計回り側の端面34Baにおけるファイバ基端側の端部領域が、略楔状に突出する突出部34Ba1として形成されている。
【0070】
そして、これらアンビル部34Aの突出部34Aa1およびアンビル部34Bの突出部34Ba1は、アンビル34が時計回りに当接位置まで回動したとき、ファイバ挿通経路に沿った方向に離れた2位置において光ファイバ2の芯線2Aに当接して、これをファイバ挿通経路と直交する水平方向へ向けて互いに逆方向に押圧するようになっている。このとき、光ファイバ2の芯線2Aは、1対のクランプユニット22A、22BによりクランプされているのでS字状に撓むこととなる。
【0071】
ブレード20は、ブレード本体20Aと、このブレード本体20Aを支持する本体支持板20Bとで構成されている。
【0072】
ブレード本体20Aは、ダイヤモンド製の切断用チップ20A1と、これを支持するチップ支持部材20A2とで構成されている。その際、チップ支持部材20A2は、鉛直面に沿って延びる板状部材として構成されており、切断用チップ20A1は、このチップ支持部材20A2のファイバ挿通経路側の端面に沿って上下方向に3mm程度の長さで延びる断面楔形の部材として構成されている。
【0073】
このブレード本体20Aは、その切断用チップ20A1の刃先となる尖端20A1aを、本体支持板20Bの先端面20Baよりも僅かに後方側(すなわちファイバ挿通経路から離れる側)に位置させた状態で、そのチップ支持部材20A2において本体支持板20Bに接着により固定されている。
【0074】
本体支持板20Bの先端面20Baは、ファイバ挿通経路の高さ位置を中心とする上下所定幅の中間部分が、後方側へ凹んだ凹部20Ba1として形成されており、これにより光ファイバ2の芯線2Aとの干渉防止を図るようになっている(図16(c)参照)。切断用チップ20A1は、このチップ支持部材20A2のファイバ挿通経路側の端面に沿って上下方向に3mm程度の長さで延びる断面楔形の部材として構成されている。
【0075】
光ファイバ2の芯線2Aは、図6において、切断用チップ20A1の右側から左側へ向けて切断用チップ20A1から遠ざかるようにしてS字状に撓んた状態にあるので、ブレード20がこの芯線2Aとの当接位置まで前進したとき、その切断用チップ20A1の尖端20A1aは、芯線2Aの軸直交面に対してやや左側に傾斜した方向へ向けて当接することとなる。この状態から、さらにブレード20が前進すると芯線2Aが切断され、その切断面は、同図において2点鎖線で示すように、芯線2Aの軸直交面に対してやや右側に傾斜した平面に沿ったものとなる。
【0076】
ブレード20は、その切断用チップ20A1の尖端20A1aが光ファイバ2の芯線2Aとの当接位置まで前進したとき、その本体支持板20Bの先端面20Baがアンビル部34Aにおける端面34Aaの突出部34Aa1に近接し、さらにブレード20が前進すると、その本体支持板20Bの先端面20Baが突出部34Aa1に当接して、それ以上の前進が規制されるようになっている。そしてこれにより、光ファイバ2の芯線2Aに不用意に過負荷が掛からないようにしている。
【0077】
図7は、本実施形態に係る光ファイバ切断装置10における各機構の動作シーケンスを示すタイミングチャートである。
【0078】
同図に示すように、操作レバー14の閉操作が行われると、各機構においては連動機構40により以下の動作が順次行われる。
【0079】
すなわち、まず、同図(a)に示すように、廃棄機構50のレバー側ローラ54が、その本体側ローラ52から離れた退避位置からこれに当接する当接位置へ移動する。また、これと同時に、同図(b)に示すように、1対のクランプユニット22A、22Bの可動ブロック22mがクランプ解除位置からクランプ位置へ移動して、両クランプユニット22A、22Bにより光ファイバ2をクランプする。
【0080】
これらの動作が完了すると、同図(c)に示すように、撓み付与機構24のアンビル34が退避位置から当接位置へ回動して、光ファイバ2の芯線2AをS字状に撓ませる。
【0081】
この動作が完了すると、同図(d)に示すように、テンション付与機構26により、一方のクランプユニット22Aがファイバ先端側へ回動して、光ファイバ2の芯線2Aにテンションを付与する。
【0082】
この動作が完了すると、同図(e)に示すように、ブレード20が退避位置から当接位置へ移動して、光ファイバ2の芯線2Aを切断する。この芯線2Aの切断によりテンション付与は自動的に解除されるが、この切断完了後、クランプユニット22Aは、速やかに元の位置まで回動する。
【0083】
そして、このクランプユニット22Aが元の位置まで回動する動作が完了すると、同図(b)に示すように、1対のクランプユニット22A、22Bの可動ブロック22mがクランプ位置からクランプ解除位置へ移動して、光ファイバ2の芯線2Aに対するクランプを解除し、この時点で操作レバー14の閉操作が完了する。なお、この閉操作が完了したときのクランプ解除位置は、当初のクランプ解除位置よりも可動ブロック22mと固定ブロック22fとの間隔がやや広くなる位置に設定されている(図11(d)参照)。
【0084】
一方、操作レバー14の開操作が行われると、各機構においては連動機構40により以下の動作が順次行われる。
【0085】
すなわち、まず、同図(f)に示すように、廃棄機構50の本体側ローラ52が、そのレバー側ローラ54に当接した状態で回転を開始する。この回転は、操作レバー14の開操作が完了するまで継続して行われる。
【0086】
また、操作レバー14の開操作の開始と共に、同図(b)に示すように、1対のクランプユニット22A、22Bの可動ブロック22mが、固定ブロック22fとの間隔がクランプ解除位置よりもやや広くなる位置からクランプ解除位置へ移動する。
【0087】
その後、同図(e)に示すように、ブレード20が当接位置から退避位置へ移動する。
【0088】
その後、同図(c)に示すように、撓み付与機構24のアンビル34が当接位置から退避位置へ回動する。
【0089】
この回動の際に、同図(g)に示すように、ブレード20が僅かに下降する(これについては後述する)とともに、同図(h)に示すように、カウンタが僅かに回転する(これについても後述する)。
【0090】
アンビル34の退避位置への回動が完了すると、同図(a)に示すように、レバー側ローラ54が当接位置から退避位置へ移動し、操作レバー14の開操作が完了する。
【0091】
次に、本実施形態に係る光ファイバ切断装置10における各機構の詳細構造について説明する。
【0092】
図8は、光ファイバ切断装置10における連動機構40の基幹部分を構成するメインシャフト60およびその周辺構造を示す、部分断面平面図である。
【0093】
同図に示すように、メインシャフト60は軸線Ax1に沿って延びており、その軸線方向両端部において装置本体12の筐体30に回動可能に支持されており、さらにその軸線方向両側において操作レバー14に連結されている。
【0094】
このメインシャフト60には、該メインシャフト60に対して操作レバー14を固定するとともに廃棄機構50の本体側ローラ52を回転させるための第1レバー62と、1対のクランプユニット22A、22Bの可動ブロック22mを移動させるための第2レバー64と、撓み付与機構24のアンビル34を回動させるための第3レバー66と、廃棄機構50のレバー側ローラ54を当接位置と退避位置との間で移動させるためのカム68とが固定されている。
【0095】
また、このメインシャフト60には、操作レバー14を開位置へ向けて付勢するための捩りコイルバネ70が装着されている。そしてこれにより、操作レバー14の閉操作は、捩りコイルバネ70の弾性力に抗して操作レバー14を手動で回動させることにより行われ、一方、その開操作は、捩りコイルバネ70の弾性力により自動的に行われるようになっている。
【0096】
その際、第1レバー62、カム68および捩りコイルバネ70は、筐体30の幅方向中心線よりも(すなわちファイバ挿通経路よりも)固定ブロック22f側(図2参照)に配置されており、第2レバー64および第3レバー66は、筐体30の幅方向中心線よりも可動ブロック22m側(図2参照)に配置されている。
【0097】
図9は、廃棄機構50およびこれに関連する連動機構40の要部を示す図である。
【0098】
その際、同図(a)は、図8と同一の平面図であり、同図(b)は、連動機構40のうち第1レバー62に連結された部分を展開して示す平面図であり、同図(c)は、同図(a)のc−c線断面図であり、同図(d)は、同図(a)のd−d線断面図である。また、同図(e)は、同図(d)の要部を、操作レバー14が閉位置にある状態で示す図である。
【0099】
同図(b)、(c)、(d)に示すように、廃棄機構50の本体側ローラ52は、筐体30に固定されたフレーム部材74に対して、メインシャフト60の下方においてファイバ挿通経路と直交する水平方向に延びる軸線Ax4回りに回転可能に支持されている。
【0100】
一方、同図(a)、(b)、(d)に示すように、廃棄機構50のレバー側ローラ54は、メインシャフト60の下方近傍において、ローラ支持部材72に回転可能に支持されている。このローラ支持部材72は、フレーム部材74に回動可能に支持されている。その際、このローラ支持部材72には、レバー側ローラ54を本体側ローラ52との当接位置へ向けて付勢するための捩りコイルバネ76が装着されている。また、このローラ支持部材72には、カム68と係合可能な突起部72aが形成されている。
【0101】
同図(a)、(c)に示すように、第1レバー62は、セクタギヤ62Aにブラケット62Bが固定された構成となっており、そのブラケット62Bの部分において操作レバー14にネジ締め固定されている。
【0102】
また、同図(b)、(c)に示すように、この第1レバー62のセクタギヤ62Aは、ワンウェイクラッチ(図示せず)を備えた減速ギヤ列80を介して、本体側ローラ52の回転軸線Ax4に配置された状態で本体側ローラ52に固定されたギヤ82に連結されている。そしてこれにより、操作レバー14の開操作が行われたときのみ、本体側ローラ52を同図(c)において反時計回りに回転させるようになっている。
【0103】
同図(d)に示すように、操作レバー14が開操作により開位置の近くまで回動すると、ローラ支持部材72は、その突起部72aがカム68に当接して上方へ回動し、これによりレバー側ローラ54を本体側ローラ52から離れた退避位置へ移動させるようになっている。一方、同図(e)に示すように、操作レバー14が開位置およびその近傍位置以外の位置にあるときには、ローラ支持部材72は、その突起部72aがカム68から離れて下方へ回動し、これによりレバー側ローラ54を本体側ローラ52に当接させるようになっている。
【0104】
なお、同図(d)に示すように、操作レバー14の内面の所定位置には、クランプ解除ピン14a(これについては後述する)が設けられている。
【0105】
図10は、1対のクランプユニット22A、22Bを駆動するためのクランプ駆動機構18およびこれに関連する連動機構40の要部を示す図である。
【0106】
その際、同図(a)は、連動機構40のうち第2レバー64に連結された部分を展開して示す平面図であり、同図(b)は、同図(a)のb方向矢視図であり、同図(c)は、同図(a)のc−c線断面拡大図である。また、同図(d)は、押えレバー112を追加して示す、同図(a)と同様の図であり、同図(e)は、同図(d)のe方向矢視拡大図である。なお、同図(c)、(e)において「TOP」の矢印は、その矢印の向きが光ファイバ切断装置10の上端側であることを意味するものである(以下同様)。
【0107】
同図(a)、(b)に示すように、第2レバー64は、筐体30またはフレーム部材74(以下これらをまとめて「筐体側部材」という)に対してファイバ挿通経路と平行な方向に移動可能に支持されたスライダ部材84にリンク部材86を介して連結されている。このスライダ部材84は、鉛直方向に延びる軸線Ax5回りに回動可能なカム支持板92に連結されている。そしてこれにより、第2レバー64の回動運動が、スライダ部材84のファイバ挿通経路と平行な方向への直線往復運動に変換され、さらにカム支持板92の回動運動に変換されるようになっている。
【0108】
カム支持板92は円板状に形成されており、その下面には上部開閉カム94が固定されている。また、この上部開閉カム94の下方には、該上部開閉カム94とは独立して軸線Ax5回りに回動可能な態様でカム支持板92に支持された下部開閉カム96が配置されている。この下部開閉カム96は、図示しない捩りコイルバネを介して上部開閉カム94に連結されており、これにより上部開閉カム94に対して平面視において時計回りに付勢されるようになっている。これら上部開閉カム94および下部開閉カム96は、そのカム面大径部が同じ大きさとなるように形成されている。そして、下部開閉カム96の下方には、クランプ用スライダ110が配置されている。
【0109】
このクランプ用スライダ110には、そのファイバ挿通経路から最も離れた位置に上向きに突出するピン110aが設けられている。このクランプ用スライダ110は、そのピン110aにおいて上部開閉カム94および/または下部開閉カム96と係合することにより、カムフォロワとしてファイバ挿通経路と直交する水平方向へ直線往復動するようになっている。このクランプ用スライダ110には、ファイバ挿通経路と直交する水平方向に延びる1対の長孔110bが、その1対の側壁部に形成されている。
【0110】
1対のクランプユニット22A、22Bの可動ブロック22mには、ファイバ挿通経路と平行な方向に沿って互いに対向するように突出する1対のピン22m1が設けられている。これら各可動ブロック22mは、そのピン22m1においてクランプ用スライダ110の各長孔110bと係合している。その際、これら各可動ブロック22mはクランプ位置へ向けて付勢されているので、これによりクランプ用スライダ110もファイバ挿通経路に近づく方向へ付勢された状態となっている。
【0111】
同図(d)、(e)に示すように、カム支持板92の上方には、クランプ用スライダ110を各可動ブロック22mと共にファイバ挿通経路から離れる方向へ移動させるための押えレバー112が配置されている。
【0112】
この押えレバー112は、筐体側部材に対して、ファイバ挿通経路と平行な方向に延びる軸線Ax6回りに回動可能に支持されている。その際、この押えレバー112は、その回動軸に装着された捩りコイルバネ114によって上向きに付勢されている。また、この押えレバー112は、クランプ用スライダ110に形成された1対の突起部110cと係合する1対のピン112aを有している。
【0113】
そして、この押えレバー112は、操作レバー14が閉操作により閉位置の直前位置まで回動すると、そのクランプ解除ピン14aが当接して下方側へ押圧され、その両ピン112aにおいてクランプ用スライダ110をファイバ挿通経路から離れる方向へ押圧し、これにより両可動ブロック22mをクランプ解除位置(正確にはクランプ解除位置よりもさらに両固定ブロック22fからやや離れた位置)へ移動させるようになっている。
【0114】
同図(a)に示すように、上部開閉カム94および下部開閉カム96の外周縁近傍には、下部開閉カム96の回動を規制するためのカムストッパ116が配置されている。このカムストッパ116は、筐体側部材に対して、鉛直方向に延びる軸線回りに回動可能に支持されており、図示しないバネにより軸線Ax5へ向けて付勢されている。
【0115】
図11は、操作レバー14の閉操作および開操作によるクランプ用スライダ110および各可動ブロック22mの変位の様子を、上部開閉カム94および下部開閉カム96の位置変化と共に示す平面図である。
【0116】
その際、同図(a)は、操作レバー14が開位置にあるときの様子を示す図であり、同図(d)は、操作レバー14が閉位置にあるときの様子を示す図であり、同図(b)、(c)は、その中間位置にあるときの様子を段階的に示す図である。また、図(e)は、操作レバー14の開操作が行われている途中の様子を示す図である。
【0117】
同図(a)に示すように、操作レバー14が開位置にあるときには、クランプ用スライダ110のピン110aが上部開閉カム94のカム面大径部と係合しており、これにより両可動ブロック22mはクランプ解除位置に位置している。このとき、下部開閉カム96は、時計回り向きの端面においてカムストッパ116のピン116aと係合した状態となっている。
【0118】
この状態から、操作レバー14が閉操作により閉位置へ向けて回動を開始すると、これに伴って上部開閉カム94が時計回りにの回動を開始する。このとき、下部開閉カム96は、カムストッパ116のピン116aと係合しているため回動しない。
【0119】
同図(b)に示すように、操作レバー14が閉位置へ向けて多少回動して、上部開閉カム94が多少時計回りに回動すると、クランプ用スライダ110のピン110aが、上部開閉カム94のカム傾斜面に沿ってカム面小径部へ向けて移動し、これにより両可動ブロック22mはクランプ用スライダ110と共にクランプ位置へ移動する。このとき、下部開閉カム96は、そのカム傾斜面において、クランプ用スライダ110のピン110aに当接した状態となり、反時計回りに多少回動する。
【0120】
同図(c)に示すように、操作レバー14が閉位置へ向けてさらに回動して、上部開閉カム94がさらに時計回りに回動すると、カムストッパ116のピン116aが上部開閉カム94のカム面大径部に載り上げた状態となる。そして、操作レバー14が閉位置の近くまで回動すると、図10(e)に示すように、クランプ解除ピン14aが押えレバー112に当接して、押えレバー112が下方側へ回動し、この押えレバー112と係合するクランプ用スライダ110がファイバ挿通経路から離れる方向へ移動し、両可動ブロック22mはクランプ解除位置よりもさらに両固定ブロック22fから離れた位置まで移動する。これにより、下部開閉カム96はカムストッパ116のピン116aとの係合およびクランプ用スライダ110のピン110aとの係合が解除された状態となり、時計回りに回動する。
【0121】
同図(d)に示すように、時計回りに回動した下部開閉カム96は、そのカム面大径部から突出する突起部96aがクランプ用スライダ110のピン110aに当接した位置で、その回動を停止する。
【0122】
なお、同図(c)において、両可動ブロック22mを、同図(a)に示すクランプ解除位置よりもさらに両固定ブロック22fから離れた位置まで移動させるようになっているのは、クランプ用スライダ110のピン110aを、同図(b)に示す位置から、上部開閉カム94および下部開閉カム96のカム面大径部から離れた位置まで移動させることにより、その後の下部開閉カム96の時計回りの回動を円滑に行わせるようにするためである。このクランプ解除位置よりもさらに両固定ブロック22fから離れた位置までの移動量は、クランプ解除ピン14aによる押えレバー112の下方回動量により調整することができる。
【0123】
その後、同図(e)に示すように、操作レバー14が開操作により閉位置から開位置へ向けて回動すると、これに伴って上部開閉カム94は反時計回りに回動するが、時計回りに付勢された下部開閉カム96は回動しない。このとき、クランプ用スライダ110のピン110aは、下部開閉カム96のカム面大径部に当接した位置にあるので、上部開閉カム94の反時計回りの回動は円滑に行われる。そして、この回動の途中で、上部開閉カム94から下方へ突出するピン94aが下部開閉カム96の時計回り向きの端面に当接し、これにより、その後は、上部開閉カム94と下部開閉カム96とが一体となって反時計回りに回動する。
【0124】
そして、同図(a)に示す角度位置まで回動すると、カムストッパ116のピン116aが下部開閉カム96の時計回り向きの端面と再び係合して、初期状態に戻る。
【0125】
図12は、撓み付与機構24およびこれに関連する連動機構40の要部を示す図である。
【0126】
その際、同図(a)は、連動機構40のうち第3レバー66に連結された部分を展開して示す平面図であり、同図(b)は、同図(a)のb方向矢視図であり、同図(c)は、同図(a)のc方向矢視展開図である。
【0127】
同図(a)、(b)に示すように、第3レバー66は、筐体側部材に対してファイバ挿通経路と平行な方向に移動可能に支持されたスライダ部材122にレバー部材124を介して連結されている。このレバー部材124は、その中間部において、筐体側部材に対してファイバ挿通経路と直交する水平方向に延びる軸線Ax7回りに回動可能に支持されている。また、スライダ部材122は、鉛直方向に延びる軸線Ax8回りに回動可能なカムフォロワ126に連結されている。そしてこれにより、第3レバー66の回動運動がスライダ部材122のファイバ挿通経路と平行な方向への直線往復運動に変換され、さらにカムフォロワ126の回動運動に変換されるようになっている。
【0128】
このカムフォロワ126は、ギヤ128を介して、アンビル34の回動中心となる軸線Ax2上に配置されたギヤ130に連結されている。この軸線Ax2上には、ギヤ130の上方に、このギヤ130と一体で形成された下部アンビルカム132が配置されており、さらに、この下部アンビルカム132の上方に、捩りコイルバネ134を介して上部アンビルカム136が配置されている。この上部アンビルカム136は、アンビル34を支持する中心軸部材138に固定されている。一方、下部アンビルカム132は、中心軸部材138に対して回動可能に支持されている。なお、中心軸部材138は、筐体側部材に対して軸線Ax2回りに回動可能に支持されている。
【0129】
図13は、操作レバー14の閉操作によるアンビル34、上部アンビルカム136および下部アンビルカム132の変位の様子を示す平面図である。
【0130】
その際、同図(a1)〜(a5)は、アンビル34の変位の様子を示しており、同図(b1)〜(b5)は、上部アンビルカム136の変位の様子を同図(a1)〜(a5)に対応させて示しており、同図(c1)〜(c5)は、下部アンビルカム132の変位の様子を同図(a1)〜(a5)に対応させて示している。
【0131】
これらの変位の様子について説明する前に、その周辺構造について説明する。
【0132】
同図(c2)に示すように、捩りコイルバネ134は、その両端部が上部アンビルカム136から下方へ突出するピン136aと下部アンビルカム132から上方へ突出するピン132aとに係止されている。そして、この捩りコイルバネ134は、下部アンビルカム132が上部アンビルカム136に対して時計回りに相対的に回動すると、該下部アンビルカム132に対してこれを反時計回り回動させる弾性力を作用させるようになっている。
【0133】
下部アンビルカム132の外周面近傍には、テンション付加レバー142およびブレード移動用レバー144がカムフォロワとして配置されている。これらテンション付加レバー142およびブレード移動用レバー144は、図示しないバネにより下部アンビルカム132へ向けて付勢されている。
【0134】
その際、テンション付加レバー142は、その一端部のピン142aにおいて下部アンビルカム132のカム面に当接しており、その中間部において、筐体側部材に対して、鉛直方向に延びる軸線Ax9回りに回動可能に支持されている。そして、このテンション付加レバー142は、その他端部に形成されたフランジ部142bにおいてクランプユニット22A側の部材と係合するようになっている(図14(b)参照)。
【0135】
また、ブレード移動用レバー144は、その一端部のピン144aにおいて下部アンビルカム132のカム面に当接しており、その他端部において、筐体側部材に対して、鉛直方向に延びる軸線Ax10回りに回動可能に支持されている。そして、このブレード移動用レバー144は、そのピン144aにおいてブレード20側の部材と係合するようになっている(図16(a)参照)。
【0136】
同図(a1)に示すように、操作レバー14が開位置にあるときには、アンビル34は、退避位置(図4(a)参照)に位置しているが、その際、同図(b1)に示すように、上部アンビルカム136も、その反時計回り向きの端面において、筐体側部材から突出する固定ピン140と係合しており、時計回りの回動のみが許容される状態となっている。
【0137】
この状態から操作レバー14が閉位置へ向けて回動すると、下部アンビルカム132が、同図(c1)に示す位置から時計回りに回動し、これにより、捩りコイルバネ134を介して連結された上部アンビルカム136も下部アンビルカム132との位置関係を一定に維持したまま時計回りに連れ回り、これに固定されたアンビル34も時計回りに回動する。
【0138】
そして、操作レバー14が開位置から20°程度回動して、回動下部アンビルカム132が、同図(c2)に示す位置まで時計回りに回動すると、同図(a2)に示すように、アンビル34は、その各長孔34a、34bの時計回り側の端面に各ガイドピン36A、36Bが当接し、このとき光ファイバ2の芯線2AをS字状に撓ませる(図4(c)参照)。
【0139】
操作レバー14が閉位置へ向けてそれ以上回動しても、アンビル34は回動せず、これに固定された上部アンビルカム136もそれ以上は回動しないが、下部アンビルカム132は、捩りコイルバネ134の弾性力に抗しながら時計回りにさらに回動する。
【0140】
そして、操作レバー14が開位置から40°程度回動して、下部アンビルカム132が同図(c3)に示す位置まで時計回りに回動すると、テンション付加レバー142がファイバ先端側(図示矢印方向)へ回動する。そして、このテンション付加レバー142は、そのフランジ部142bにおいてクランプユニット22Aをファイバ先端側に所定角度回動させ、これにより光ファイバ2の芯線2Aにテンションを付与する(図4(d)参照)。
【0141】
さらに、操作レバー14が開位置から55°程度回動して、下部アンビルカム132が同図(c4)に示す位置まで時計回りに回動すると、ブレード移動用レバー144が図示矢印方向へ回動して、ブレード20を前進させる(図4(e)参照)。
【0142】
そして、操作レバー14が閉位置まで回動して、下部アンビルカム132が同図(c5)に示す位置まで時計回りに回動すると、テンション付加レバー142が逆方向に回動して、クランプユニット22Aを元の位置に戻した状態となる。
【0143】
図14は、テンション付与機構26を1対のクランプユニット22A、22Bと共に示す図である。
【0144】
その際、同図(a)は、これらを示す平面図であり、同図(b)は、同図(a)のb方向矢視図であり、同図(c)は、同図(a)のc方向矢視図である。
【0145】
同図(a)に示すように、1対のクランプユニット22A、22Bのうち、ファイバ先端側に位置するクランプユニット22Aには、そのサポート部材22sにおける可動ブロック22m側の端部に、下方へ向けてピン状に突出する突起部材152が固定されている。そして、同図(b)に示すように、このクランプユニット22Aは、その突起部材152において、テンション付加レバー142のフランジ部142bに対してファイバ基端側から当接するようになっている。
【0146】
また、このクランプユニット22Aには、そのサポート部材22sにおける可動ブロック22m側の端部に、引張りバネ154の一端部が取り付けられている。この引張りバネ154は、ファイバ挿通経路に沿ってファイバ先端側へ向けて延びるように配置されており、その他端部はレバー部材156の上端部に取り付けられている。このレバー部材156は、その中間部において、筐体側部材に対して、ファイバ挿通経路と直交する水平方向に延びる軸線回りに回動可能に支持されている。
【0147】
クランプユニット22Aは、引張りバネ154の弾性力によってファイバ先端側へ付勢されているが、この突起部材152においてテンション付加レバー142のフランジ部142bと当接しているので、そのファイバ先端側への移動が規制されている。そして、テンション付加レバー142がファイバ先端側へ回動すると、引張りバネ154の弾性力によって、クランプユニット22Aもテンション付加レバー142と共にファイバ先端側へ回動し、これにより光ファイバ2の芯線2Aにテンションを付与するようになっている。
【0148】
レバー部材156は、その下端部において調整ネジ158を介して筐体側部材に連結されている。この調整ネジ158は、レバー部材156の下端部と筐体側部材との間のファイバ挿通経路に沿った方向の間隔を調整するためのものである。そして、この調整ネジ158によって、引張りバネ154のテンションの初期値を調整することにより、光ファイバ2の芯線2Aに対して付与するテンションを適正な値に調整するようになっている。
【0149】
本実施形態に係る光ファイバ切断装置10は、図15に示すようなクランプ位置調整機構160を備えている。
【0150】
このクランプ位置調整機構160は、被覆2Bの部分の外径が異なる2種類の光ファイバ2に対して、その被覆2Bの先端部分を適切にクランプするためのものである。
【0151】
その際、同図(a)は、小径対応位置にあるクランプ位置調整機構160を1対のクランプユニット22A、22Bと共に示す、図14(a)と同様の図であり、同図(b)は、大径対応位置にあるクランプ位置調整機構160を示す、同図(a)と略同様の図である。
【0152】
同図に示すように、各クランプユニット22A、22Bの固定ブロック22fは、サポート部材22sに固定されているが、その際、ファイバ基端側に位置するクランプユニット22Bについては、その固定ブロック22fの固定位置を、クランプ位置調整機構160により、ファイバ挿通経路と直交する水平方向に関して2段階に調整することができる構成となっている。そしてこれにより、被覆2Bの部分の外径が異なる2種類の光ファイバ2(例えば被覆2Bの部分の外径がφ0.25mmに設定された光ファイバとφ0.9mmに設定された光ファイバ)に対して、その被覆2Bの先端部分を適切にクランプすることができる構成となっている。
【0153】
クランプ位置調整機構160は、クランプユニット22Bの固定ブロック22fに連結されたスライダ162と、このスライダ162と係合する直動カム164とを備えた構成となっている。
【0154】
スライダ162は、クランプユニット22Bの近傍において、筐体側部材から上方へ突出する固定ピン166と係合した状態で、ファイバ挿通経路と直交する水平方向に移動し得る構成となっている。その際、このスライダ162は、引張りバネ150(図14(c)参照)によって直動カム164に近づく方向に付勢されている。このスライダ162における可動ブロック22m側の端部には、下向きに突出するピン162aが設けられており、このピン162aにおいて直動カム164のカム面と係合している。
【0155】
直動カム164は、クランプユニット22Bの可動ブロック22m側の端部近傍において、筐体側部材に対して、ファイバ挿通経路に沿った方向に移動可能に支持されている。その際、この直動カム164は、筐体30の上面部に配置された切換えスイッチ170(図2参照)に固定されており、この切換えスイッチ170のスライド操作により、その移動が行われるようになっている。
【0156】
そして、同図(a)に示すように、直動カム164がファイバ基端側へ移動した状態では、スライダ162のピン162aが直動カム164のカム面傾斜部164aに当接して、固定ブロック22fを小径対応位置に位置決めし、これにより、小径の光ファイバ2における被覆2Bの先端部分を適切にクランプすることができるようにしている。一方、同図(b)に示すように、直動カム164がファイバ先端側へ移動した状態では、スライダ162のピン162aが直動カム164のカム面傾斜部164aの頂点を乗り越えてカム面平坦部164bに当接して、固定ブロック22fを大径対応位置に位置決めし、これにより、大径の光ファイバ2における被覆2Bの先端部分を適切にクランプすることができるようにしている。
【0157】
図16は、ブレード移動機構28およびこれに関連する連動機構40の要部を示す図である。
【0158】
その際、同図(a)は、これらをファイバ先端側から見て示す側面図であり、同図(b)は、同図(a)のb方向矢視図であり、同図(c)は、同図(a)のc部詳細図である。
【0159】
同図(a)、(b)に示すように、ブレード移動機構28は、ブレード移動用レバー144(図13(c4)参照)が、レバー部材182を介してブレード20と係合した構成となっている。
【0160】
その際、レバー部材182は、ファイバ挿通経路と直交する鉛直面に沿って延びるように配置されたレバー支持板184に対して、ファイバ挿通経路に沿った方向に延びる軸線Ax11回りに回動可能に支持されている。
【0161】
このレバー部材182は、その下端部に形成されたフランジ部182aにおいてブレード移動用レバー144のピン144aと当接しており、また、その上端部に設けられたピン182bにおいてブレード20の本体支持板20Bに形成された切欠き部20Baと係合している。さらに、このレバー部材182は、図示しないバネにより、同図(a)において時計回りに付勢されている。そして、このレバー部材182は、同図(a)において、ブレード移動用レバー144が右方向に移動することにより、反時計回りに回動して、ブレード20を左方向に移動させ、これを光ファイバ2の芯線2Aに当接させるようになっている。
【0162】
ブレード20は、その本体支持板20Bにおいてブレード支持ブロック188にネジ締めにより着脱可能に固定されている。このブレード支持ブロック188は、レバー支持板184に対して、その上端部に形成されたフランジ部184aの上面において、ファイバ挿通経路と直交する水平方向にスライド可能に支持されている。
【0163】
レバー支持板184は、筐体側部材に対して上下方向に移動可能に支持されている。その際、このレバー支持板184の下端部には上下方向に延びる長孔184bが形成されており、この長孔184bには、筐体側部材からファイバ挿通経路に沿った方向に延びる固定ピン192が係合している。また、このレバー支持板184の上部には、ファイバ挿通経路に沿った方向に延びるピン184cが設けられている。そして、このレバー支持板184は、これら固定ピン192およびピン184cに両端部が係止された引張りバネ186により下方へ付勢されている。
【0164】
このレバー支持板184は、ブレード20が光ファイバ2の芯線2Aを切断する度に、その切断用チップ20A1の尖端20A1aにおける芯線2Aとの当接位置を僅かずつ上方側へ変位させるためのブレード下降機構210の一部を構成している。
【0165】
なお、同図(c)に示すように、ブレード20の本体支持板20Bには、該本体支持板20Bにブレード本体20Aを固定する際に接着剤を塗布するための小孔20Bbが複数箇所に形成されている。
【0166】
図17は、ブレード下降機構210およびこれに関連する連動機構40の要部を示す図である。
【0167】
その際、同図(a)は、連動機構40のうち撓み付与機構24に連結された部分を示す平面図であり、同図(b)は、同図(a)のb方向矢視展開図であり、同図(c)は、ブレード下降機構210の要部を示す同図(a)のc方向矢視図である。
【0168】
同図(b)に示すように、撓み付与機構24のアンビル34を支持する中心軸部材138の下端部には、ワンウェイクラッチ212が取り付けられている。このワンウェイクラッチ212は、減速ギア列214およびウォームギヤ216を介して、ファイバ挿通経路と直交する水平方向に延びる軸線Ax12上に配置されたウォームホイール218に連結されている。その際、このワンウェイクラッチ212は、操作レバー14の開操作により、アンビル34が当接位置から退避位置へ向けて回動する際にのみ、その動力を減速ギア列214に伝達するように構成されている(図7(g)参照)。
【0169】
同図(a)に示すように、ウォームホイール218には、軸線Ax12に沿って延びるリードスクリュウ220が固定されており、このリードスクリュウ220にはリードナット222が螺合している。このリードナット222には、ファイバ先端側へ突出するピン222aが設けられている。そして、このリードナット222は、ワンウェイクラッチ212からの動力伝達によりウォームホイール218が回転すると、リードスクリュウ220に沿って固定ブロック側へ移動するようになっている。この移動は、減速ギア列214の存在により、操作レバー14の開操作が行われる度に僅かずつ行われるようになっている。
【0170】
同図(c)に示すように、リードナット222は、そのピン222aにおいてブレード下降機構210の水平スライダ232に連結されている。
【0171】
この水平スライダ232は、ファイバ挿通経路と直交する鉛直面に沿って配置されている。この水平スライダ232は略山形に形成されており、その下部には水平方向に延びる長孔232aが形成されており、また、その上部には上下方向に延びる長孔232bが形成されている。そして、この水平スライダ232は、その長孔232aにおいて、ファイバ挿通経路に沿って延びるようにして筐体側部材に固定された固定ピン234と係合している。
【0172】
この固定ピン234には、ファイバ挿通経路と直交する鉛直面に沿って配置された扇形レバー236が、その下端部の要の部分において固定されている。この扇形レバー236における外周面近傍の両端部には、ファイバ先端側へ向けて突出する1対のピン236a、236bが設けられている。そして、この扇形レバー236は、可動ブロック側のピン236aにおいて水平スライダ232の長孔232bと係合しており、固定ブロック側のピン236bにおいてファイバ挿通経路と直交する鉛直面に沿って配置された上下スライダ238の長孔238aと係合している。
【0173】
上下スライダ238の長孔238aは、水平方向に短く延びており、この長孔238aの近傍には、上下方向に長く延びる長孔238bが形成されている。そして、この上下スライダ238は、その長孔238bにおいて、ファイバ挿通経路に沿って延びるようにして筐体側部材に固定された上下1対の固定ピン242、244と係合している。
【0174】
そしてこれにより、このブレード下降機構210においては、水平スライダ232がリードナット222と共に固定ブロック側へ移動すると、扇形レバー236により運動方向が変換されて、上下スライダ238が下降するようになっている。
【0175】
図18は、ブレード下降機構210の作用を説明するための図である。
【0176】
その際、同図(a)は、図17(c)に対して更新ネジ246を追加して示す図であり、同図(b)、(c)、(d)は、同図(a)に対してさらにレバー支持板184を追加して示す図である。
【0177】
同図(a)に示すように、レバー支持板184のフランジ部184aには、更新ネジ246が支持されている。その際、この更新ネジ246は、その頭部246aをレバー支持板184のフランジ部184aに載置した状態で、そのネジ部を下向きに突出させるようにして、該フランジ部184aに対して回転可能に支持されている。また、上下スライダ238には、その上端部にフランジ部238cが形成されており、このフランジ部238cは更新ネジ246のネジ部246bと螺合している。
【0178】
同図(b)に示すように、レバー支持板184には、上下スライダ238の長孔238bに対応する位置に、上下方向に短く延びる2つの長孔184d、184eが、上下方向に所定間隔をおいて形成されている。そして、このレバー支持板184は、これら各長孔184d、184eにおいて各固定ピン242、244と係合している。その際、上側に位置する長孔184dは、下側に位置する長孔184eよりも短くかつ角張っており、これにより、レバー支持板184が上下方向に移動したとき、下側の長孔184eの端面に固定ピン244が当接する前に、上側の長孔184dの端面に固定ピン242が当接するようになっている。
【0179】
このレバー支持板184は、光ファイバ切断装置10の使用開始時点では、同図(a)に示すように、その上側の長孔184dの下端面に固定ピン242が当接した状態となっている。また、このとき、扇形レバー236は、その1対のピン236a、236bが同じ高さになるように配置された状態となっている。さらに、このとき、ブレード20の切断用チップ20A1は、その尖端20A1aの下端近傍部位において光ファイバ2の芯線2Aに当接するように配置された状態となっている。
【0180】
光ファイバ切断装置10の使用が開始されると、ブレード20により光ファイバ2の芯線2Aが切断される度に、リードナット222が固定ブロック側へ僅かずつ移動し、これに伴って水平スライダ232および扇形レバー236を介して上下スライダ238およびレバー支持板184が僅かずつ下降し、これによりレバー支持板184におけるレバー部材182の支持位置(すなわち軸線Ax11の位置)も僅かずつ下方に変位する。そしてこれにより、ブレード20の切断用チップ20A1における光ファイバ2の芯線2Aとの当接位置を僅かずつ(例えば0.14μmずつ)上方側へ変位させるようになっている。
【0181】
そして、ブレード20による切断動作が所定回数(例えば2万回)行われて、同図(b)に示すように、レバー支持板184における上側の長孔184dの上端面に固定ピン242が当接する位置までレバー支持板184が下降したら、ブレード20を新しいものに交換した後、更新ネジ246を調整して、同図(c)に示すように、レバー支持板184を光ファイバ切断装置10の使用開始時点の位置(同図(a)に示す位置)まで上昇させる。この更新ネジ246の調整は、レバー支持板184における上側の長孔184dの下端面に固定ピン242が当接する位置まで更新ネジ246を数回ドライバで回すことにより行われる。
【0182】
このとき、上下スライダ238は、更新ネジ246の調整分だけ、同図(a)に示す位置から下方に変位した状態となる。また、扇形レバー236は、更新ネジ246の調整分だけ、同図(a)に示す位置から時計回りに回動した状態となる。
【0183】
その後、新たなブレード20による切断動作が行われ、その切断動作が所定回数(例えば2万回)行われる度に、ブレード20の交換および更新ネジ246の調整が行われることとなる。
【0184】
そして、この更新作業が所定回数(例えば5回)繰り返して行われると、同図(d)に示すように、上下スライダ238は、下方への累積変位量が所定の設定値(例えば10mm)に達して、その長孔238bの上端面に固定ピン242が当接した状態となり、更新ネジ246の調整を行うことができない状態となる。また、このとき、扇形レバー236は、同図(a)に示す位置から時計回りに90°回動した状態となり、水平スライダ232の水平移動を上下スライダ238の下降運動に変換することができない状態となる。そしてこれにより、光ファイバ切断装置10が、例えば10万回の切断動作により、その機械寿命を迎えたことを、作業者に認識させるようになっている。
【0185】
図19は、カウンタ駆動機構250およびこれに関連する連動機構40の要部を示す図である。
【0186】
その際、同図(a)は、これらを示す平面図であり、同図(b)は、同図(a)のb方向矢視展開図である。また、同図(c)は、同図(a)のc方向矢視図であり、同図(d)は、同図(a)のd方向矢視図である。
【0187】
同図(a)に示すように、軸線Ax12上に配置されたウォームホイール218には、ギヤ252が一体で形成されている。このギヤ252は、減速ギア列254を介して、ファイバ挿通経路と直交する水平方向に延びる軸線Ax13回りに回転可能に支持されたシャフト256に固定されたギヤ258に連結されている。
【0188】
一方、同図(d)に示すように、筐体30の上面部には、表示窓30cが形成されている(図2参照)。この表示窓30cの下方には、筐体側部材に対してファイバ挿通経路と直交する水平方向に延びる軸線回りに回動可能に支持されたカウンタ260が配置されている。
【0189】
このカウンタ260は、カウンタギヤ260Aと、このカウンタギヤ260Aを略半周にわたって覆うようにして該カウンタギヤ260Aに固定されたギヤカバー260Bとで構成されている。このカウンタ260は、図示しないバネによって同図(d)において反時計回りに付勢されており、初期状態では、ギヤカバー260Bの時計回り側の端部が表示窓30cの下方近傍に位置するようになっている。
【0190】
このギヤカバー260Bの外周面には、ブレード20による光ファイバ2の芯線2Aの切断回数に応じた色の帯が設けられている。その際、この帯の色については、例えば、切断開始位置よりも時計回り側の帯状領域が白色、切断回数1〜2万回の帯状領域が黄色、2万回以上の帯状領域が赤色といった色分けがなされている。
【0191】
同図(d)に示すように、シャフト256には、クラッチレバー262がギヤ258の近傍に回動可能に支持されている。このクラッチレバー262には、ギヤ258と噛合するクラッチギヤ264が回転可能に支持されている。その際、このクラッチギヤ264は、カウンタ260の下方近傍に位置するようにして配置されている。クラッチレバー262は、引張りバネ266により同図(d)において時計回りに付勢されており、これによりクラッチギヤ264をカウンタ260のカウンタギヤ260Aと噛合させるようになっている。
【0192】
そして、同図(b)に示すアンビル34が当接位置から退避位置へ回動し、これによりワンウェイクラッチ212および減速ギア列214を介してウォームホイール218が回転すると、同図(a)に示す減速ギア列254、ギヤ258およびクラッチギヤ264を介して、カウンタ260が時計回りに回動するようになっている。この回動は、減速ギア列214、254の存在により、操作レバー14の開操作が行われる度に極僅かずつ行われ、これにより表示窓30cに表示されるギヤカバー260Bの色の帯の位置を極僅かずつ変化させるようになっている。そしてこれにより、作業者が目視でおおよその切断回数を把握することができるようにし、適切な時期にブレード20の交換を行うことができるようにしている。
【0193】
同図(d)に示すように、筐体30内の上部には、クラッチレバー262の先端部に上方から当接可能なリセットピン270が配置されている。また、筐体30の上面部における表示窓30cの近傍には、リセットピン270を押下するための小孔30dが形成されている(図2参照)。クラッチレバー262は、リセットピン270が押下されると下方へ回動し、これによりクラッチギヤ264とカウンタ260のカウンタギヤ260Aとの噛合が解除されるため、カウンタ260は図示しないバネの弾性力により反時計回りに回動して、初期位置に復帰するようになっている。そしてこれにより、作業者が、ブレード20を交換したとき、リセットピン270を押下することにより、表示窓30cに新たなブレード20に対する切断回数を表示させることができるようにしている。
【0194】
次に本実施形態の作用効果について説明する。
【0195】
本実施形態に係る光ファイバ切断装置10は、ブレード移動機構28によるブレード移動動作と連動して、ブレード20が光ファイバ2との当接位置から退避位置へ移動する度に、微小変位機構としてのブレード下降機構210により、ブレード20を下方(すなわち刃先に沿った刃先方向の一方向)へ僅かずつ変位させるように構成されており、そして、ブレード20が下方へ所定量変位したとき、変位規制部材としての固定ピン242によりそれ以上の変位を規制し、この変位規制によって、ブレード移動機構28およびブレード下降機構210に連結された動作規制機構としての連動機構40が動作を停止し、これによりブレード移動動作を規制するように構成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0196】
すなわち、ブレード20が当接位置から退避位置へ移動する度に、ブレード20が下方へ僅かずつ変位する構成となっているので、ブレード20を毎回新しい刃先で光ファイバ2に当接させることができる。そしてこれにより、光ファイバ2の切断操作が繰り返して行われても、光ファイバ2の切断面を精度良く形成することができる。
【0197】
そして、このようにしてブレード20の切断操作が何度も繰り返して行われた結果、ブレード20が下方へ所定量変位したときには、固定ピン242によりそれ以上の変位が規制されて、ブレード移動機構210によるブレード移動動作が規制される構成となっているので、ブレード20の交換時期を確実に作業者に認識させることができる。
【0198】
したがって、ブレード20の交換のタイミングが遅くなりすぎて、光ファイバ2の切断面を精度良く形成することができなくなったり、そのタイミングが早くなりすぎて経済性が損なわれてしまうのを、未然に防止することができる。
【0199】
このように本実施形態によれば、光ファイバ2を装置本体12に位置決めした状態で、光ファイバ2にブレード20を当接させることにより、光ファイバ2を切断するように構成された光ファイバ切断装置10において、経済性を損なうことなく光ファイバ2の切断面を精度良く形成することができる。
【0200】
その際、本実施形態に例示したように、上記「所定量」として、ブレード20における切断用チップ20A1の上下幅(すなわち3mm程度)と略同じ値(すなわち0.14μm×2万回=2.8mm)に設定しておくようにすれば、高価な切断用チップ20A1を最大限に有効利用することができ、経済性の観点からより好ましい。この場合において、切断用チップ20A1の上下方向の有効幅が限られているような場合には、その有効幅と略同じ値に上記「所定量」を設定するようにすればよい。
【0201】
しかも、本実施形態においては、ブレード下降機構210が、装置本体12に対して上下方向(すなわち刃先方向)に移動可能に支持された第1可動部材としての上下スライダ238と、ブレード20を支持した状態で、上下スライダ238に対して上下方向に相対変位可能に支持された第2可動部材としてのレバー支持板184と、このレバー支持板184の上下スライダ238に対する上下方向の位置関係を調整するための調整部材としての更新ネジ246とを備え、かつ、ブレード20が当接位置から退避位置へ移動する度に、上下スライダ238およびレバー支持板184が一体となって下方へ僅かずつ変位する構成となっており、そして、ブレード20が下方へ上記所定量分だけ変位したとき、レバー支持板184の長孔184dの上端面に固定ピン242が当接する構成となっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0202】
すなわち、ブレード20が下方へ上記所定量分だけ変位して、レバー支持板184の長孔184dの上端面に固定ピン242が当接したら、1枚目のブレード20で可能な切断動作が完了したものとして、このレバー支持板184を更新ネジ246の調整により固定ピン242との当接位置から上方(すなわち上記一方向とは逆の方向)へ上記所定量と同じ量だけ相対変位させることにより、これに支持されたブレード20を初期位置に復帰させることができる。そして、この初期位置への復帰と共に、ブレード20を新たなものと交換することにより、ブレード1枚分の切断動作を更新して新たなブレード20での切断動作を開始することができる。
【0203】
その際、本実施形態においては、レバー支持板184が更新ネジ246の調整により固定ピン242との当接位置から上方へ上記所定量と同じ量だけ相対変位したとき、このレバー支持板184の長孔184dの下端面に当接してそれ以上の相対変位を規制する第2の変位規制部材としての固定ピン242を備えているので、このレバー支持板184に支持されたブレード20を初期位置に正確かつ容易に位置決めすることができる。
【0204】
また、本実施形態においては、上下スライダ238の下方への累積変位量が所定の設定値に達したとき、この上下スライダ238の長孔238bの上端面に当接して、更新ネジ246の調整によるレバー支持板184の上方への相対変位を規制する第3の変位規制部材としての固定ピン242を備えているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0205】
すなわち、レバー支持板184は、ブレード1枚分の切断動作が完了する度に、更新ネジ246の調整により上方へ相対変位することとなるが、一方、上下スライダ238は、切断動作の更新にかかわらず下方へ僅かずつ変位し続けることとなる。
【0206】
その際、上下スライダ238の下方への累積変位量が所定の設定値に達したとき、更新ネジ246の調整によるレバー支持板184の上方への相対変位が規制されることにより、ブレード1枚分の切断動作を何度か更新して行っているうちに更新ネジ246が調整不能となった時点で、光ファイバ切断装置10が機械寿命を迎えたことを作業者に確実に認識させることができる。そしてこれにより、光ファイバ2の切断面を精度良く形成することができる期間を超えて切断動作が行われてしまうのを未然に防止することができる。
【0207】
また、本実施形態においては、ブレード移動機構210によるブレード移動動作と連動して、ブレード20が当接位置から退避位置へ移動する度に、その移動回数に対応する量を、筐体30の表示窓30cを介してギヤカバー260Bに表示する表示機構としてのカウンタ駆動機構250を備えているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0208】
すなわち、ブレード20の交換時期を、ブレード移動動作の規制により作業者に認識させるのに加えて、その交換時期が近づいたことを、カウンタ駆動機構250により視覚的に作業者に認識させることができる。また、このカウンタ駆動機構250により、おおよその切断回数を随時作業者に知らせることができる。
【0209】
さらに、本実施形態においては、1対のクランプユニット22A、22Bによる光ファイバ2のクランプ動作と、撓み付与機構24による光ファイバ2に対する撓み付与動作と、テンション付与機構26による光ファイバ2に対するテンション付与動作と、ブレード移動機構28による光ファイバ2との当接位置までのブレード移動動作とを、連動機構40により、装置本体12に回動可能に取り付けられた操作レバー14の閉操作に連動させて順次行わせる構成となっているので、簡単な操作で、光ファイバ2の切断面を軸直交面に対して所定の傾斜角度で安定的に形成することができる。
【0210】
その際、この連動機構40は、操作レバー14の開操作が行われるときのみブレード下降機構210への動力伝達を行う構成となっているので、その開操作が正常に行われなくなることによってブレード20の交換時期を作業者に認識させることができる。
【0211】
しかも、本実施形態においては、操作レバー14の開操作が捩りコイルバネ70の弾性力により自動的に行われる構成となっているので、その開操作が自動的に行われなくなることによってブレード20の交換時期を作業者に認識させることができる。
【0212】
上記実施形態においては、上下スライダ238の下方への累積変位量が所定の設定値に達したとき、更新ネジ246の調整によるレバー支持板184の上方への相対変位を規制するための構成として、水平スライダ232の水平移動を上下スライダ238の下降運動に変換不能とするとともに、固定ピン242を上下スライダ238の長孔238bの上端面に当接させることにより、更新ネジ246を調整不能とするようになっているが、これらのうちのいずれか一方により更新ネジ246を調整不能とすることも可能である。また、これらに加えて、あるいはこれらに代えて、上下スライダ238の下方への累積変位量が所定の設定値に達したとき、更新ネジ246のネジ部246bが上下スライダ238のフランジ部238cから外れる構成とすることにより、更新ネジ246を調整不能とする構成を採用することも可能である。
【0213】
上記実施形態においては、ブレード移動機構210によるブレード移動動作と連動して、ブレード20が当接位置から退避位置へ移動する度に、その移動回数に対応する量を表示する表示機構として、カウンタ駆動機構250を備えているものとして説明したが、このような構成に加えて、あるいはこれに代えて、上下スライダ238および筐体側部材のうちの一方に刻印を形成するとともに他方にスケールを形成して、その相対位置の変化により上記表示を行う構成とすることも可能である。このような構成を採用した場合においても、ブレードの交換時期が近づいたことを視覚的に作業者に認識させることができ、また、おおよその切断回数を随時作業者に知らせることができる。さらに、このような構成を採用した場合には、光ファイバ切断装置10の機械寿命が近づいたことも、視覚的に作業者に認識させることが可能となる。
【0214】
なお、上記実施形態において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【符号の説明】
【0215】
2 光ファイバ
2A 芯線
2Aa 先端側切断片
2B 被覆
10 光ファイバ切断装置
12 装置本体
14 操作レバー
14a クランプ解除ピン
18 クランプ駆動機構
20 ブレード
20A ブレード本体
20A1 切断用チップ
20A1a 尖端(刃先)
20A2 チップ支持部材
20B 本体支持板
20Ba 先端面
20Ba1 凹部
20Bb、30d 小孔
20Bc 切欠き部
22A、22B クランプユニット
22f 固定ブロック
22m 可動ブロック
22m1、110a、112a、116a、132a、136a、142a、144a、162a、182b、184c、222a、236a、236b ピン
22s サポート部材
24 撓み付与機構
26 テンション付与機構
28 ブレード移動機構
30 筐体
30a ホルダ取付用凹部
30b 挿通溝
30c 表示窓
30d 小孔
32 インナカバー
34 アンビル
34A、34B アンビル部
34Aa、34Ba 時計回り向きの端面
34Aa1、34Ba1 突出部
34C 一般部
34a、34b、110b、184b、184d、184e、232a、232b、238a、238b 長孔
36A、36B ガイドピン
36Aa、36Ba 小径部
38 廃棄ボックス
40 連動機構(動作規制機構)
50 廃棄機構
52 本体側ローラ
54 レバー側ローラ
60 メインシャフト
62 第1レバー
62A セクタギヤ
62B ブラケット
64 第2レバー
66 第3レバー
68 カム
70、114、134 捩りコイルバネ
72 ローラ支持部材
72a、110c 突起部
74 フレーム部材
80、214、254 減速ギア列
82 ギヤ
84 スライダ部材
86 リンク部材
92 カム支持板
94 上部開閉カム
96 下部開閉カム
100 ファイバホルダ
110 クランプ用スライダ
112 押えレバー
116 カムストッパ
122 スライダ部材
124、156、182 レバー部材
126 カムフォロワ
128、130、252、258 ギヤ
132 下部アンビルカム
136 上部アンビルカム
138 中心軸部材
140、166、192、234、244 固定ピン
142 テンション付加レバー
142b、182a、184a、238c フランジ部
144 ブレード移動用レバー
150、154、186、266 引張りバネ
152 突起部材
158 調整ネジ
160 クランプ位置調整機構
162 スライダ
164 直動カム
164a カム面傾斜部
164b カム面平坦部
170 切換えスイッチ
184 レバー支持板(第2可動部材)
188 ブレード支持ブロック
210 ブレード下降機構(微小変位機構)
212 ワンウェイクラッチ
214、254 減速ギア列
216 ウォームギヤ
218 ウォームホイール
220 リードスクリュウ
222 リードナット
232 水平スライダ
236 扇形レバー
238 上下スライダ(第1可動部材)
242 固定ピン(変位規制部材、第2の変位規制部材、第3の変位規制部材)
246 更新ネジ(調整部材)
246a 頭部
246b ネジ部
250 カウンタ駆動機構(表示機構)
256 シャフト
260 カウンタ
260A カウンタギヤ
260B ギヤカバー
262 クラッチレバー
264 クラッチギヤ
270 リセットピン
Ax1、Ax2、Ax3、Ax4、Ax5、Ax6、Ax7、Ax8、Ax9、Ax10、Ax11、Ax12、Ax13 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを装置本体に位置決めした状態で、上記光ファイバにブレードを当接させることにより、上記光ファイバを切断するように構成された光ファイバ切断装置において、
上記ブレードを、退避位置と上記光ファイバへの当接位置との間で移動させるブレード移動機構と、
このブレード移動機構によるブレード移動動作と連動して、上記ブレードが上記当接位置から上記退避位置へ移動する度に、上記ブレードを該ブレードの刃先に沿った刃先方向の一方向へ僅かずつ変位させる微小変位機構と、
上記ブレードが上記一方向へ所定量変位したとき、該ブレードのそれ以上の変位を規制する変位規制部材と、
この変位規制部材により上記ブレードの変位が規制されたとき、上記ブレード移動機構によるブレード移動動作を規制する動作規制機構と、を備えてなることを特徴とする光ファイバ切断装置。
【請求項2】
上記微小変位機構は、上記装置本体に対して上記刃先方向に移動可能に支持された第1可動部材と、上記ブレードを支持した状態で、上記第1可動部材に対して上記刃先方向に相対変位可能に支持された第2可動部材と、この第2可動部材の上記第1可動部材に対する上記刃先方向の位置関係を調整するための調整部材とを備え、上記ブレードが上記当接位置から上記退避位置へ移動する度に、上記第1および第2可動部材が一体となって上記一方向へ僅かずつ変位するように構成されており、
上記変位規制部材は、上記ブレードが上記一方向へ上記所定量分だけ変位したとき上記第2可動部材に当接するように構成されている、ことを特徴とする請求項1記載の光ファイバ切断装置。
【請求項3】
上記第2可動部材が上記調整部材の調整により上記変位規制部材との当接位置から上記一方向とは逆の方向へ上記所定量と同じ量だけ相対変位したとき、該第2可動部材に当接してそれ以上の相対変位を規制する第2の変位規制部材を備えている、ことを特徴とする請求項2記載の光ファイバ切断装置。
【請求項4】
上記第1可動部材の上記一方向への累積変位量が所定の設定値に達したとき、上記調整部材の調整による上記第2可動部材の上記一方向とは逆の方向への相対変位を規制する第3の変位規制部材を備えている、ことを特徴とする請求項2または3記載の光ファイバ切断装置。
【請求項5】
上記ブレード移動機構によるブレード移動動作と連動して、上記ブレードが上記当接位置から上記退避位置へ移動する度に、この移動の回数に対応する量を表示する表示機構を備えている、ことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の光ファイバ切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−168261(P2012−168261A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27382(P2011−27382)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000107642)スター精密株式会社 (253)
【出願人】(000227995)タイコエレクトロニクスジャパン合同会社 (340)
【Fターム(参考)】