説明

光ファイバ接続器とその作製方法

【課題】被覆付き光ファイバ同士を接続するための光ファイバ接続器およびその作製方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る光ファイバ接続器20は、対向する被覆付き光ファイバ17を支持する溝が形成された少なくとも2つの刃21と、被覆付き光ファイバを押さえる押さえ板23と、基板と押さえ板とに加圧するクランパ25とを具備する。クランパが縮むことによって圧力が加わり、刃が、被覆付き光ファイバの被覆を貫通してファイバガラスに2点以上で接触し、被覆付き光ファイバ同士を接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバガラスを被覆で覆った被覆付き光ファイバ同士を接続するための光ファイバ接続器およびその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光ファイバ同士の接続では、まず、ファイバガラスを覆った被覆を除去し、露出したガラス部を専用のカッタを用いて加工し、平滑なファイバ端面を形成する。次いで、融着装置やメカニカルスプライスなどの光ファイバ接続器を用いて、その端面同士を接続する。
【0003】
図1は、ファイバガラス10の断面図である。ファイバガラス10は、コアガラス11とクラッドガラス13から構成される。コアガラス11とクラッドガラス13には共に偏心がなく、クラッドガラス13の外径は高精度に作製されている。この特徴を生かし、被覆がないファイバガラスの接続には、メカニカルスプライスが適用される(例えば、非特許文献1参照)。しかし、被覆がないファイバガラスは脆弱であるため、接続作業時にファイバガラスが破損することが指摘されている。
【0004】
図2は、ファイバガラス10の表面が被覆15で覆われた光ファイバ17の断面(a)及び上面(b)を示す。光ファイバ17は、ファイバガラス10が露出していないため、接続作業時にファイバガラス10の破損を防ぐことができる。
【0005】
メカニカルスプライスは、内部にV溝を具備しており、そのV溝にファイバガラスを挿入し、対向させたファイバガラス同士を接続する。これは、図1に示すようにコアガラス11、クラッドガラス13共に偏心がなく、ファイバガラス10自身が高精度に作製されていることにより可能になる。このようなファイバガラス10をV溝内で対向させると、コアガラス11の位置ずれがなく、低損失の光ファイバの接続を行うことができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】FTTH施工技術 オプトロニクス株式会社 平成16年出版 P120〜124
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、被覆が付いた光ファイバでは、図3に示すように被覆部の中心18とファイバガラスの中心19がずれており、偏心しているため、メカニカルスプライス内のV溝内に被覆付き光ファイバを挿入し、対向させても、コアガラス11の位置がずれてしまい、接続損失が増加してしまう。よって、従来の光ファイバ接続器を用いた接続では、被覆部の偏心が原因で、被覆が付いた光ファイバの低損失の接続には対応できないという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被覆部が偏心している被覆付き光ファイバ同士の接続において、コアガラスの位置がずれない接続を実現することにある。また、本発明によると、被覆を除去しないでコアガラス同士を接続することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明に係る光ファイバ接続器は、基板上に固定された少なくとも2つの刃であって、対向する被覆付き光ファイバを支持する溝が形成された少なくとも2つの刃と、被覆付き光ファイバを押さえる押さえ板と、基板と押さえ板とに加圧するクランパとを具備する。クランパが縮んで基板と押さえ板とに圧力が加わることによって、少なくとも2つの刃が、被覆付き光ファイバの被覆を貫通してファイバガラスに2点以上で接触し、被覆付き光ファイバ同士を接続する。
【0010】
一実施例によると、少なくとも2つの刃の溝の形状は、V型、U型、または凹型としてもよい。また、少なくとも2つの刃は、被覆付き光ファイバの端面同士が突き合う位置とは反対の方向に傾かせてもよい。
【0011】
また、本発明に係る上記光ファイバ接続器の作製方法は、基板に、少なくとも2つの刃を固定する溝を形成し、刃を当該溝に固定した後、切削刃を光ファイバ接続器の長手方向に移動させることで刃を削ることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ファイバガラスの断面図である。
【図2】被覆付き光ファイバの断面(a)及び上面(b)を示す図である。
【図3】被覆付き光ファイバの偏心を示す図である。
【図4】本発明の一実施例に係る光ファイバ接続器(断面図)、およびそれを用いた被覆付き光ファイバの接続手順を示す図である。
【図5】本発明の一実施例に係る光ファイバ接続器(上面図)、およびそれを用いた被覆付き光ファイバの接続手順を示す図である。
【図6】本発明の一実施例に係る光ファイバ接続器の断面図である。
【図7】本発明の一実施例に係る光ファイバ接続器の作製方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施例について詳細に説明する。なお、複数の図面において同一の符号は同一物を表し、その繰り返しの説明は省略する。
【0014】
(実施例1)
図4(a)〜(c)は、実施例1に係る光ファイバ接続器20の断面図である。光ファイバ接続器20は、光ファイバ17を支持するV型の溝が形成された金属製の刃21を基板22上に備え、刃21に対して光ファイバ17を押圧する押さえ板23を備える。また、光ファイバ接続器20は、基板22と押さえ板23とに加圧するクランパ(板バネ)25を備え、クサビ27によって、光ファイバ17を挿入することができるように押さえ板23を支持することができる。
【0015】
次いで、図4(a)〜(c)及び図5を参照して、光ファイバ接続器20を用いた光ファイバ17の接続手順を説明する。
【0016】
まず、平坦なガラス端面を有する被覆付き光ファイバ17を、刃21と押さえ板23との間に挿入する(図4(a)参照)。このときの光ファイバ接続器20の上面図を図5に示す。図5を参照すると、刃21aと押さえ板23との間に被覆付き光ファイバ17aが挿入され、刃21bと押さえ板23との間に対向する被覆付き光ファイバ17bが挿入されている。
【0017】
次いで、クサビ27を外し、クランパ25が縮むことによる圧力を光ファイバ27に加える。そうすることで、刃21が光ファイバ17の被覆15に食い込む(図4(b)参照)。被覆15は、一般的に有機材料で形成されているので、金属製の刃21と比較すると柔らかく、加圧により刃21に食い込むことができる。なお、刃21は金属製のものに限らず、被覆15を貫くことができる硬度を有するものであればよい。
【0018】
さらに、十分にクランパ25が縮むことで、被覆15の下のファイバガラス10のガラス面が、刃21のV溝に接触する(図4(c)参照)。図示されるように、ファイバガラス10と刃21のV溝との接触点は2点である。なお、図1に関して上述したように、光ファイバガラス17を構成するコアガラス11とクラッドガラス13には偏心がなく、クラッドガラス13の外径も高精度に作製されているため、ファイバガラス10がV溝に2点で接触することで、対向するコアガラス11の高さ方向および横方向が同じ位置となるため、低損失な接続となる。
【0019】
本実施例では、刃21の溝の形状をV型としたが、溝の形状はV型に限定されない。すなわち、溝の形状は、ファイバガラス10の表面と刃21が2点以上で接触するものであればよく、対向するファイバガラス10の高さ方向および横方向の位置が同じ位置となることが重要である。例えば、刃21の溝の形状は、U型または凹型とすることもできる。溝の形状がU型または凹型である場合、ファイバガラス10の表面と刃21との接触は3点となる。
【0020】
(実施例2)
光ファイバ同士の接続時に、対向する2つの光ファイバの端面の間に間隙が生じると、その間隙が損失の原因となってしまう。そのため、低損失の光ファイバの接続には、そのような間隙を生じさせないことが求められる。図6は、実施例2に係る光ファイバ接続器の長手方向の断面図である。本実施例に係る光ファイバ接続器では、刃21a、21bが、被覆付き光ファイバ17a、17bの端面同士が突き合う位置とは反対の方向に傾いている。接続手順は実施例1に関して上述した手順と同様だが、クサビ27を抜き、押さえ板23とクランパ25により、被覆付き光ファイバに力が加わると(図6(a)参照)、対向する光ファイバ17は、刃21a、21bの傾きに従い互いに近づくように固定される(図6(b)参照)。よって、対抗する2つの光ファイバの端面の間の間隙を無くし、良好な低損失の接続を実現することができる。
【0021】
(実施例3)
上述したような光ファイバ接続器において、2つの刃21a、21bに形成された溝の高さおよび幅を含む形状が一致しない場合、接続する被覆付き光ファイバのコアガラス11の位置が異なってしまい、接続損失が増加してしまう。そこで、刃21a、21bの溝を同じ形状で、一括して作製する方法を図7を参照して説明する。図7(a)〜(d)は、光ファイバ接続器の側面図であり、図7(e)〜(h)は、光ファイバ接続器の断面図である。
【0022】
まず、基板22を準備し(図7(a)、(e)参照)、刃21a、21bを固定するための溝29を形成する(図7(b)、(f)参照)。次いで、溝29内に刃21a、21bを固定する(図7(c)、(g)参照)。そして、切削加工機30の刃31の高さを一定にし、光ファイバ接続器の長手方向に移動させることで、刃21a、21bを削る(図7(d)、(h)参照)。
【0023】
本方法によると、切削加工機30の刃31の高さが一定であるため、刃21a、21bに形成される溝24は、高さおよび幅を含む形状が同じになる。よって、被覆付き光ファイバ17を溝24に挿入したとき、対向するコアガラス11の高さ方向および横方向の位置が同じになり、低損失の接続を実現することができる。
【0024】
なお、図7(a)〜(h)では、切削加工機30の刃31の形状がV型の例を示したが、切削加工機30に取り付ける刃31の形状を、U型または凹型などに変えることで、簡便に溝24を異なる形状で作製することができる。
【0025】
なお、上記実施例1〜3では、光ファイバ接続器が2つの刃を具備するものとして説明したが、刃の数は2つに限定されるものではない。
【0026】
以上説明したように、本発明によると、被覆が偏心している被覆付き光ファイバ同士の接続において、低損失の接続を実現することができる。また、被覆を除去せずに被覆付き光ファイバ同士を接続することができる。
【符号の説明】
【0027】
10 ファイバガラス
11 コアガラス
13 クラッドガラス
15 被覆
17、17a、17b 被覆付き光ファイバ
18 被覆付き光ファイバの中心
19 ファイバガラスの中心
20 光ファイバ接続器
21、21a、21b 光ファイバ接続器の刃
22 基板
23 押さえ板
24 刃の溝
25 クランパ(板バネ)
27 クサビ
29 基板の溝
30 切削加工機
31 切削加工機の刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイバガラスが被覆で覆われた被覆付き光ファイバ同士を接続する光ファイバ接続器であって、
基板上に固定された少なくとも2つの刃であって、対向する前記被覆付き光ファイバを支持する溝が形成された少なくとも2つの刃と、
前記少なくとも2つの刃に支持された前記被覆付き光ファイバを押さえる押さえ板と、
前記基板と前記押さえ板とに加圧するクランパとを具備し、
前記クランパが縮んで前記基板と前記押さえ板とに圧力が加わることによって、前記少なくとも2つの刃が、前記被覆付き光ファイバの前記被覆を貫通して前記ファイバガラスに2点以上で接触し、前記被覆付き光ファイバ同士を接続することを特徴とする光ファイバ接続器。
【請求項2】
前記少なくとも2つの刃の溝の形状は、V型、U型、または凹型であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ接続器。
【請求項3】
前記少なくとも2つの刃は、前記被覆付き光ファイバの端面同士が突き合う位置とは反対の方向に傾いていることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバ接続器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の光ファイバ接続器の作製方法であって、
前記基板に、前記少なくとも2つの刃を固定する溝を形成し、前記少なくとも2つの刃を前記溝に固定した後、切削刃を前記光ファイバ接続器の長手方向に移動させることで前記少なくとも2つの刃を削ることを特徴とする光ファイバ接続器の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−257560(P2011−257560A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131397(P2010−131397)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】