説明

光ファイバ断線型衝撃検知装置およびこれを用いた橋桁の衝突検知方法

【課題】有害な衝撃が検知対象物に加わったことを確実に検知できる光ファイバ断線型衝撃検知装置およびこれを用いた橋桁の衝突検知方法を提供する。
【解決手段】光ファイバ断線型衝撃検知装置100は、保護管1と、この保護管1に挿通されたPOF(プラスチック光ファイバ)2と、その保護管1内に挿入されると共に、POF2が内部に挿入されて、光ファイバを切断可能なコイル3とを備えている。検知対象物にとって有害な衝撃が保護管1に加わると、保護管1が潰れ、コイル3がPOF2を押し切り、POF2が光信号を伝送しなくなる。したがって、上記光信号に基づいて、検知対象物にとって有害な衝撃が保護管1に加わったことを確実に検知できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架道橋や跨線橋等の検知対象物が受ける衝撃を検知する光ファイバ断線型衝撃検知装置およびこれを用いた橋桁の衝突検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、桁下空頭制限高を越えた車が架道橋の橋桁に衝突することがあった。このため、上記橋桁の手前に防護桁を設置して、車が橋桁に衝突するのを防いでいる。しかし、上記防護桁を設置していても、車が防護桁を突破して橋桁に衝突する事故がある。
【0003】
上記橋桁と車の衝突事故が発生した場合、架道橋の管理会社には運転手や警察等から衝突事故の連絡が入る。これにより、上記管理会社は、事故現場に社員を送り、社員に架道橋の安全を確認させる。そして、上記管理会社は、架道橋の安全性を確認するまで、電車が架道橋を渡るのを禁止する。
【0004】
このように、上記管理会社の社員は、衝突事故の連絡を受けてから架道橋に向かって、架道橋の安全確認を現地で行う。このため、上記衝突事故の発生から橋桁の安全確認までの時間が長くなってしまう。この場合、電車が架道橋を長時間渡れなくなるため、衝突事故の発生から架道橋の安全確認までの時間の短縮が要請されている。
【0005】
上記要請に応じる場合、例えば特開2000−79839号公報(特許文献1)に開示された衝撃計測装置を架道橋の橋桁に設置する方法が考えられる。この衝撃計測装置は、加速度センサで検出した加速度に基づいて、計測対象物に加わった衝撃を計測する。
【0006】
しかしながら、上記衝撃計測装置では、架道橋の安全性を脅かす衝撃、つまり、有害な衝撃が、検知対象物に加わったことを確実に検知できない。
【0007】
より詳しく説明すると、上記架道橋に加わった衝撃を衝撃計測装置で検知する場合、上記加速度センサを橋桁に取り付けるが、その加速度センサが車の衝突箇所に近いと、橋桁に加わった衝撃が小さくても、加速度センサが大きな加速度を検出してしまう。その結果、上記衝撃が無害な衝撃(架道橋の安全性を脅かさない衝撃)であっても、有害な衝撃(架道橋の安全性を脅かす衝撃)として計測されてしまう。
【0008】
逆に、上記加速度センサが車の衝突箇所から遠いと、橋桁に加わった衝撃が大きくても、加速度センサは小さな加速度しか検出できない。その結果、上記衝撃が有害な衝撃であっても、無害な衝撃として計測されてしまう。
【特許文献1】特開2000−79839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の課題は、有害な衝撃が検知対象物に加わったことを確実に検知できる光ファイバ断線型衝撃検知装置およびこれを用いた橋桁の衝突検知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の光ファイバ断線型衝撃検知装置は、
保護管と、
上記保護管に挿入された光ファイバと、
上記保護管内に挿入されると共に、上記光ファイバが内部に挿入されて、上記光ファイバを切断可能なコイルと
を備えたことを特徴としている。
【0011】
上記構成の光ファイバ断線型衝撃検知装置によれば、上記保護管を検知対象物に取り付ける。そして、上記保護管に挿入された光ファイバの一端に光信号を供給し、光ファイバの他端から出る光信号を監視する。
【0012】
そして、上記検知対象物にとって有害な衝撃が保護管に加わった場合、保護管が潰れ、保護管の内面がコイルを光ファイバに押し付ける。その結果、上記コイルが光ファイバを押し切って、光ファイバの他端から出る光信号が変化する。
【0013】
一方、上記検知対象物に無害な衝撃が加わった場合、保護管は潰れない、または、少し凹むぐらいで済み、保護管の内面がコイルを光ファイバに押し付けない。このため、上記コイルが光ファイバを押し切らず、光ファイバの他端から出る光信号が変化しない。
【0014】
このように、上記検知対象物にとって有害な衝撃が保護管に加われば、光ファイバが断線して、光ファイバの他端から出る光信号が変化するので、有害な衝撃が架道橋に加わったことを確実に検知できる。
【0015】
また、例えば雷が検知対象物に落ちても、光ファイバ内の光信号は雷から悪影響を受け難いので、災害に対する耐性を高くすることができる。
【0016】
また、上記光ファイバは保護管に挿入されて保護管で覆われているので、悪戯で切断されるのを防ぐことができる。したがって、上記光ファイバ断線型衝撃検知装置による検知結果の信頼性を高くすることができる。
【0017】
なお、上記「有害な衝撃」とは、検知対象物が本来の目的を果たせなくする衝撃を指す。例えば、上記検知対象物が架道橋の橋桁である場合、「有害な衝撃」とは、橋桁を変形させて電車が架道橋を安全に渡れなくなる事態を引き起こす衝撃を指す。
【0018】
したがって、上記検知対象物が何であるのかによって、「有害な衝撃」の大きさが決まり、当然に、検知対象物が変われば、「有害な衝撃」の大きさも変わる。
【0019】
また、上記「有害な衝撃」の大きさが変わっても、保護管の厚みや材質を変更することにより対応することができる。
【0020】
一実施形態の光ファイバ断線型衝撃検知装置では、
上記光ファイバはU字状に折り曲げられて上記保護管に挿入されており、
上記U字状の光ファイバの部分は上記コイルの内部に挿入されている。
【0021】
上記実施形態の光ファイバ断線型衝撃検知装置によれば、上記光ファイバはU字状に折り曲げられて保護管に挿入されており、U字状の光ファイバの部分はコイルの内部に挿入されているので、U字状の光ファイバの部分はコイルによって切断され易い。
【0022】
したがって、上記検知対象物にとって有害な衝撃が保護管に加わって、保護管が潰れた場合、光ファイバが断線する可能性が高くなり、有害な衝撃の検知の確実性を高くすることができる。
【0023】
本発明の橋桁の衝突検知方法は、
本発明の光ファイバ断線型衝撃検知装置の上記保護管を橋桁に取り付けて、上記光ファイバ断線型衝撃検知装置の出力に基づいて、上記橋桁の衝突を検知することを特徴としている。
【0024】
上記構成の橋桁の衝突検知方法によれば、上記光ファイバ断線型衝撃検知装置の保護管を橋桁に取り付けて、光ファイバ断線型衝撃検知装置の出力に基づいて、橋桁の衝突を検知するので、橋桁に有害な衝撃を与える衝突を確実に検知することができる。
【0025】
一実施形態の橋桁の衝突検知方法では、
上記橋桁に交差する道路に設置されて上記橋桁に対向する防護桁に光電センサを取り付けて、上記光電センサの出力と、上記光ファイバ断線型衝撃検知装置の出力とに基づいて、上記橋桁の衝突を検知する。
【0026】
上記実施形態の橋桁の衝突検知方法によれば、上記橋桁に交差する道路に設置されて橋桁に対向する防護桁に光電センサを取り付けて、光電センサの出力と、光ファイバ断線型衝撃検知装置の出力とに基づいて、橋桁の衝突を検知するので、橋桁の衝突に関する誤検知を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の光ファイバ断線型衝撃検知装置によれば、保護管内にコイルを挿入すると共に、光ファイバをコイルの内部に挿入していて、このコイルが光ファイバを切断可能であるので、検知対象物にとって有害な衝撃が保護管に加われば、保護管が潰れ、コイルが光ファイバを押し切り、光ファイバが光信号を伝送しなくなる。
【0028】
したがって、上記保護管を検知対象物に取り付け、光ファイバにおける光信号の伝送状態に監視することにより、有害な衝撃が検知対象物に加わったか否かを確実に検知できる。
【0029】
本発明の橋桁の衝突検知方法は、上記光ファイバ断線型衝撃検知装置の保護管を橋桁に取り付けて、光ファイバ断線型衝撃検知装置の出力に基づいて、橋桁の衝突を検知するので、橋桁に有害な衝撃を与える衝突を確実に検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の光ファイバ断線型衝撃検知装置およびこれを用いた橋桁の衝突検知方法を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0031】
図1は上記光ファイバ断線型衝撃検知装置100の概略構成を示す模式図である。
【0032】
上記光ファイバ断線型衝撃検知装置100は、鋼製の保護管1と、この保護管1に挿通されたPOF(プラスチック光ファイバ)2と、その保護管1内に挿入されると共に、POF2が内部に挿入されて、光ファイバを切断可能なコイル3とを備えている。
【0033】
上記POF2はU字状に折り曲げられて保護管1に挿通されている。このU字状のPOF2の部分はコイル3の内部に挿入されている。そして、上記U字状のPOF2の部分における2つの直線部は径方向において互いに対向している。
【0034】
上記POF2の一端には発光素子4から出射された光信号が入射する。この光信号は、POF2に案内されてPOF2の他端から受光素子5に入射する。
【0035】
また、図示していないが、上記POF2のU字状に折り曲げられた部分は、一端が閉鎖されたPF(Plastic Flexible conduit)管内に挿入されて保護されている。
【0036】
上記構成の光ファイバ断線型衝撃検知装置100を用いて、図2に示す架道橋の橋桁101の衝突を検知する場合、保護管1を橋桁101のフランジ部に取り付ける。そして、上記発光素子4からPOF2の一端に光信号を供給し、POF2の他端から出た光信号を受光素子5に入射させる。この発光素子4および受光素子5は断線検知装置6内に収容されており、断線検知装置6が受光素子5の出力に基づいてPOF2の断線を検知するようになっている。
【0037】
そして、図3に示すように、橋桁101下を通過しようとする車103の積載物104が橋桁101に衝突すると、この衝突による衝撃が橋桁101にとって有害な衝撃であれば、保護管1が潰れ、保護管1の内面がコイル3をPOF2に押し付ける。これにより、上記POF2がコイル3によって押し切られて断線し、受光素子5に光信号が入射しなくなる。
【0038】
一方、上記積載物104による衝撃が橋桁101にとって無害な衝撃であれば、保護管1は潰れない、または、少し変形する。この場合、上記POF2の断線は発生せず、受光素子5に光信号が入射する。
【0039】
このように、上記積載物104による衝撃が橋桁101にとって有害な衝撃であれば、POF2が断線して、受光素子5に光信号が入射しなくなるので、有害な衝撃が橋桁101に加わったことを確実に検知できる。
【0040】
また、例えば雷が架道橋に落ちても、POF2内の光信号は雷から悪影響を受け難いので、災害に対する耐性を高くすることができる。
【0041】
また、上記POF2の大部分は保護管1およびPF管で覆われているので、悪戯で切断されるのを防ぐことができる。したがって、上記光ファイバ断線型衝撃検知装置100による検知結果の信頼性を高くすることができる。
【0042】
また、上記POF2はU字状に折り曲げられて保護管1に挿通されており、U字状のPOF2の部分はコイル3の内部に挿入されているので、U字状のPOF2の部分はコイル3によって切断され易い。したがって、上記橋桁101にとって有害な衝撃が保護管1に加わって、保護管1が潰れた場合、POF2が断線する可能性が高くなる。例えば、上記U字状のPOF2の部分における2つの直線部のうちの一方がコイル3で切断されなくても、その2つの2つの直線部のうちの他方がコイル3で切断され得る。したがって、上記有害な衝撃の検知の確実性を高くすることができる。
【0043】
また、上記橋桁101が有害な衝撃を受けた場合、図2に示すように、断線検知装置6は線路脇の特殊信号発光機102に信号を送る。その結果、上記特殊信号発光機102が停止信号を発光し、架道橋の通行が禁止される。この場合、上記橋桁101が有害な衝撃を受けてから、短時間で、特殊信号発光機102に停止信号を発光させることができる。したがって、安全でない架道橋に電車が進入するのを防ぐことができる。つまり、二次災害の発生を防ぐことができる。
【0044】
上記実施の形態では、POF2をU字状に折り曲げて保護管1に挿通していたが、POF2をU字状に折り曲げてPOF2の一部のみを保護管1に挿入するようにしてもよい。
【0045】
上記実施の形態では、保護管1にPOF2を挿通していたが、保護管1にGOF(ガラス光ファイバ)を挿通または挿入してもよい。
【0046】
上記実施の形態では、上記U字状に折り曲げられたPOF2を保護管1に1本挿通していたが、U字状に折り曲げられていない直線状のPOFまたはGOFを保護管1に複数本挿通または挿入してもよい。
【0047】
上記実施の形態では、光ファイバ断線型衝撃検知装置100の出力だけに基づいて、橋桁101の衝突を検知していたが、図4に示すように、光ファイバ断線型衝撃検知装置100、光電センサ200および監視カメラ300の出力に基づいて、橋桁601の衝突を検知してもよい。
【0048】
より詳しくは、光ファイバ断線型衝撃検知装置100の保護管1(図1参照)は架道橋600の橋桁601に取り付け、光電センサ200は防護桁800に取り付け、そして、監視カメラ300は橋桁601および防護桁800のそれぞれの近くに設置する。
【0049】
上記監視カメラ300は架道橋600よりも上流側に2台設置し、一方の監視カメラ300が上流側の橋桁601を撮影し、他方の監視カメラ300が上流側の防護桁800を撮影している。また、上記監視カメラ300は架道橋600よりも下流側にも2台設置しており、一方の監視カメラ300が下流側の橋桁601を撮影し、他方の監視カメラ300が下流側の防護桁800を撮影している。
【0050】
上記防護桁800は、橋桁601に対向するように、橋桁601に交差する道路700に設置されている。
【0051】
上記光ファイバ断線型衝撃検知装置100、光電センサ200および監視カメラ300からの情報は、監視盤500に送られ、この監視盤500から既設の通信網を介して架道橋の管理会社へ送られる。
【0052】
したがって、上記管理会社の社員は、架道橋600に行かなくても、光ファイバ断線型衝撃検知装置100、光電センサ200および監視カメラ300からの情報に基づいて、橋桁601の状態を正確に把握することができる。すなわち、上記橋桁601の衝突に関する誤検知を少なくすることができる。
【0053】
また、上記管理会社の社員は橋桁601の状態を正確に把握できるので、橋桁601に加わった衝撃が無害なものであるのにもかかわらず、橋桁601上の通行が禁止される事態を回避することができる。
【0054】
以上のように、本発明の光ファイバ断線型衝撃検知装置は、架道橋が有害な衝撃を受けたことを確実に検知するのに利用できるが、本発明の光ファイバ断線型衝撃検知装置の用途は架道橋の衝撃検知に限定されない。例えば、本発明の光ファイバ断線型衝撃検知装置は、跨線橋の側壁に取り付ければ落車を検知でき、また、落石の危険性がある場所に設置すれば落石を検知でき、また、ガードレール、電柱および標識等に取り付ければガードレール、電柱および標識等の破壊を検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は本発明の一実施の形態の光ファイバ断線型衝撃検知装置の概略構成の模式図である。
【図2】図2は上記光ファイバ断線型衝撃検知装置を用いた橋桁の衝突検知方法を説明するための模式図である。
【図3】図3は上記光ファイバ断線型衝撃検知装置を用いた橋桁の衝突検知方法を説明するための模式図である。
【図4】図4は上記光ファイバ断線型衝撃検知装置を用いた他の橋桁の衝突検知方法を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0056】
1 配管
2 POF
3 コイル3
101,601 橋桁
200 防護桁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護管と、
上記保護管に挿入された光ファイバと、
上記保護管内に挿入されると共に、上記光ファイバが内部に挿入されて、上記光ファイバを切断可能なコイルと
を備えたことを特徴とする光ファイバ断線型衝撃検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバ断線型衝撃検知装置において、
上記光ファイバはU字状に折り曲げられて上記保護管に挿入されており、
上記U字状の光ファイバの部分は上記コイルの内部に挿入されていることを特徴とする光ファイバ断線型衝撃検知装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ファイバ断線型衝撃検知装置の上記保護管を橋桁に取り付けて、上記光ファイバ断線型衝撃検知装置の出力に基づいて、上記橋桁の衝突を検知することを特徴とする橋桁の衝突検知方法。
【請求項4】
請求項3に記載の橋桁の衝突検知方法において、
上記橋桁に交差する道路に設置されて上記橋桁に対向する防護桁に光電センサを取り付けて、上記光電センサの出力と、上記光ファイバ断線型衝撃検知装置の出力とに基づいて、上記橋桁の衝突を検知することを特徴とする橋桁の衝突検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−25145(P2009−25145A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188381(P2007−188381)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)
【出願人】(592105620)ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社 (15)
【Fターム(参考)】