説明

光ファイバ母材運搬用台車

【課題】構成の複雑化ならびに大型化を招くことなく、多種径の母材を載置可能な載置部を備えた光ファイバ母材運搬用台車を提供することを課題とする。
【解決手段】最小径の母材12−1の最下端と母材12−1が下部の支持ローラ13a1,13a2に接触する接点とを結ぶ直線がなす角度θ1と、最小径と最大径の間の直径の母材12−2,12−3の最下端と母材12−2,12−3が下部の支持ローラ13a1,13a2または上部の支持ローラ13b1,13b2に接触する接点とを結ぶ直線がなす角度θ2,θ3と、最大径の母材12−4の最下端と母材12−4が上部の支持ローラ13b1,13b2に接触する接点とを結ぶ直線がなす角度θ4とが、107°〜133°の角度の範囲内におさまるように下部の支持ローラ13a1,13a2ならびに上部の支持ローラ13b1,13b2が載置部11に取り付けられて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ母材を載置部に横向きに載置して運搬する光ファイバ母材運搬用台車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外径の違いによらず環状体を保持して移動させる台車としては、例えば以下に示す文献に記載されたものが知られている(特許文献1参照)。この文献に記載された技術では、環状体の外周面底部が支持ローラのいずれかに当接して、この外周面底部の曲率に沿って揺動レバーが揺動する。これにより、環状体の外径が変わってもこれに対応して総ての支持ローラをそれぞれ当接させ、環状体の外周面が部分的に潰れて食い込まないようにその重量が略均等に支えられる。この結果、外径の違いに関係なく環状体を回転可能に支持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−292404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術では、環状体の外周面底部の曲率に沿って揺動する揺動レバーが必要になっていた。このように、外径が異なる環状体を保持する機構として、可動部を設けることで、構成の複雑化ならびに大型化を招くおそれがあった。
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、構成の複雑化ならびに大型化を招くことなく、多種径の母材を安定して載置可能な載置部を備えた光ファイバ母材運搬用台車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、載置部に光ファイバの母材を載置して運搬する光ファイバ母材運搬用台車において、載置部は、対向する下部の支持ローラと対向する上部の支持ローラとで母材を周面方向に回転可能に支持して載置し、下部の支持ローラの対向距離は、上部支持ローラの対向距離より小さく、載置部に載置される複数種の直径の母材は、下部の支持ローラまたは上部の支持ローラのいずれかの支持ローラによって支持され、複数種の直径の母材の内、最小径の母材の最下端と最小径の母材が下部の支持ローラに接触する接点とを結ぶ直線がなす角度と、最小径と最大径の間の直径の母材の最下端と最小径と最大径の間の直径の母材が下部の支持ローラまたは上部の支持ローラに接触する接点とを結ぶ直線がなす角度と、最大径の母材の最下端と最大径の母材が上部の支持ローラに接触する接点とを結ぶ直線がなす角度とが、107°〜133°の角度の範囲内におさまるように下部の支持ローラならびに上部の支持ローラが前記載置部に取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、下部の支持ローラならびに上部の支持ローラは、複数種の直径の母材を支持する際に、母材の最下点と支持ローラとの接点との結ぶ直線がなす角度が107°〜133°の範囲内におさまるように載置部に取り付けられるので、複数種の直径の母材のいずれの母材も安定して載置して運搬することが可能となる。この結果、構成の複雑化ならびに大型化を招くことなく、多種径の母材を載置して運搬可能な光ファイバ母材運搬用台車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態1に係る光ファイバ母材運搬用台車における載置部の構成を示す断面図である。
【図2】載置部に母材が載置された状態を模式的に示す断面図である。
【図3】支持ローラの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて本発明を実施するための実施形態を説明する。
【0009】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1に係る光ファイバ母材運搬用台車における載置部の構成を示す断面図であり、図2は載置部に母材が載置された状態を模式的に示す断面図である。
【0010】
図1において、台車の載置部11には、全長が1500mm程度で、直径が80mm、110mm、120mm、170mm程度の直径の光ファイバの母材12が横向きに載置される。載置部11の長手方向の両端部には、母材12に回転可能に当接して支持する支持ローラ13がそれぞれ設けられ、両端部の支持ローラ13により横向きに載置された母材12の両端部が支持される。支持ローラ13は、母材12が載置部11に載置されて当接した状態で、母材12を周面方向に回転可能となるように載置部11に取り付けられている。支持ローラ13は、母材12に接触する周面が、図3に示すように、中央部の直径が両端部の直径に比べて大きく中央部が膨れた太鼓状に形成されている。これにより、母材12は支持ローラ13に対して点接触で当接される。支持ローラ13は、軸受けとしてボールベアリングを用いて載置部11に設置される。
【0011】
支持ローラ13は、載置部11の下部に載置部11の下端から同一の高さに対向して配置された下部の支持ローラ13a1,13a2と、載置部11の上部に載置部11の下端から同一の高さに対向して配置された上部の支持ローラ13b1,13b2とで構成される。
【0012】
載置部11に載置される母材12の内で、最も径の小さい最小直径(80mm程度)の母材12−1が載置された場合には、母材12−1は下部の支持ローラ13a1,13a2に接触して支持される。載置部11に載置される母材12の内で、中間径(110mm程度)の母材12−2が載置された場合には、母材12−2は下部の支持ローラ13a1,13a2に接触して支持される。載置部11に載置される母材12の内で、中間径(120mm程度)の母材12−3が載置された場合には、母材12−3は上部の支持ローラ13b1,13b2に接触して支持される。載置部11に載置される母材12の内で、最も径の大きな最大直径(170mm程度)の母材12−4が載置された場合には、母材12−4は上部の支持ローラ13b1,13b2に接触して支持される。
【0013】
ここで、図2(a)に示すように、母材12−1と下部の支持ローラ13a1との接点をA11とし、母材12−1と下部の支持ローラ13a2との接点をA12とする。また、下部の支持ローラ13a1,13a2に支持された状態の母材12−1の最下点をC1とする。母材12−1の最下点C1と接点A11とを結ぶ直線L11と、最下点C1と接点A12とを結ぶ直線L12とがなす角度θ1は、概ね107°〜133°程度の範囲内に設定され、例えば109.7°程度に設定される。角度θ1の上記値は、実験などの経験から知見を得たデータである。角度θ1を上記範囲内の角度に設定することで、母材12−1は、下部の支持ローラ13a1,13a2によって安定して支持され、下部の支持ローラ13a1,13a2から逸脱して運搬用台車から落下することは抑制される。
【0014】
図2(b)に示すように、母材12−2と下部の支持ローラ13a1との接点をA12とし、母材12−2と下部の支持ローラ13a2との接点をA22とする。また、下部の支持ローラ13a1,13a2に支持された状態の母材12−2の最下点をC2とする。母材12−2の最下点C2と接点A21とを結ぶ直線L21と、最下点C2と接点A22とを結ぶ直線L22とがなす角度θ2は、概ね107°〜133°程度の範囲内に設定され、例えば128.56°程度に設定される。角度θ2の上記値は、実験などの経験から知見を得たデータである。角度θ2を上記範囲内の角度に設定することで、母材12−2は、下部の支持ローラ13a1,13a2によって安定して支持され、下部の支持ローラ13a1,13a2から逸脱して運搬用台車から落下することは抑制される。
【0015】
このように、下部の支持ローラ13a1,13a2は、母材12−1,12−2を支持する際に、上記角度θ1,θ2が上記値の範囲内、すなわち107°〜133°程度となるように載置部11に取り付けられて設置される。
【0016】
一方、図2(c)に示すように、母材12−3と上部の支持ローラ13b1との接点をB31とし、母材12−3と上部の支持ローラ13b2との接点をB32とする。また、上部の支持ローラ13b1,13b2に支持された状態の母材12−3の最下点をC3とする。母材12−3の最下点C3と接点B31とを結ぶ直線L31と、最下点C3と接点B32とを結ぶ直線L32とがなす角度θ3は、概ね107°〜133°程度の範囲内に設定され、例えば109.47°程度に設定される。角度θ3の上記値は、実験などの経験から知見を得たデータである。角度θ3を上記範囲内の角度に設定することで、母材12−3は、上部の支持ローラ13b1,13b2によって安定して支持され、上部の支持ローラ13b1,13b2から逸脱して運搬用台車から落下することは抑制される。
【0017】
図2(d)に示すように、母材12−4と上部の支持ローラ13b1との接点をB41とし、母材12−4と上部の支持ローラ13b2との接点をB42とする。また、上部の支持ローラ13b1,13b2に支持された状態の母材12−4の最下点をC4とする。母材12−4の最下点C4と接点B41とを結ぶ直線L41と、最下点C4と接点B42とを結ぶ直線L42とがなす角度θ3は、概ね107°〜133°程度の範囲内に設定され、例えば131.17°程度に設定される。角度θ4の上記値は、実験などの経験から知見を得たデータである。角度θ4を上記範囲内の角度に設定することで、母材12−4は、上部の支持ローラ13b1,13b2によって安定して支持され、支持ローラ13b1,13b2から逸脱して運搬用台車から落下することは抑制される。
【0018】
このように、上部の支持ローラ13b1,13b2は、母材12−3,12−4を支持する際に、上記角度θ3,θ4が上記値の範囲内、すなわち107°〜133°程度となるように載置部11に取り付けられて設置される。
【0019】
このような構成を採用することで、4種類の異なる直径の母材12の内、最小径の母材12−1ならびに中間径の母材12−2は、対向した下部の支持ローラ13a1,13a2に当接して支持される。一方、中間径の母材12−3ならびに最大径の母材12−4は、対向した上部の支持ローラ13b1,13b2に当接して支持される。
【0020】
これにより、構成の複雑化や大型化を招くことなく、簡単な構成の1台の台車で4種類の直径の母材12を安定して載置し運搬することが可能となる。これにより、母材12の直径毎に専用の台車を用意する必要はなくなり、コストの削減を図ることができる。
【0021】
母材12は、支持ローラ13によって周面方向に回転可能に載置されるので、載置された母材12を回転される際に1人で作業することが可能となり、作業性が向上する。
【0022】
支持ローラ13の軸受けをボールベアリングとすることで、支持ローラ13を円滑に回転されることが可能となる。これにより、載置させた母材12をスムーズに回転させることができ、安全に作業を行うことが可能となる。
【0023】
支持ローラ13は、中央部が膨らんだ太鼓状のローラで構成しているので、載置された母材12との接触面積を単なる円筒状のものに比べて少なくすることができる。これにより、母材12と支持ローラ13との接触抵抗を低減することが可能となり、円滑に母材12を回転させることが可能となる。
【符号の説明】
【0024】
11…載置部
12(12−1〜12−4)…母材
13(13a1,13a2,13b1,13b2)…支持ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置部に光ファイバの母材を載置して運搬する光ファイバ母材運搬用台車において、
前記載置部は、対向する下部の支持ローラと対向する上部の支持ローラとで母材を周面方向に回転可能に支持して載置し、前記下部の支持ローラの対向距離は、前記上部支持ローラの対向距離より小さく、前記載置部に載置される複数種の直径の母材は、前記下部の支持ローラまたは上部の支持ローラのいずれかの支持ローラによって支持され、前記複数種の直径の母材の内、前記最小径の母材の最下端と前記最小径の母材が前記下部の支持ローラに接触する接点とを結ぶ直線がなす角度と、前記最小径と最大径の間の直径の母材の最下端と前記最小径と最大径の間の直径の母材が前記下部の支持ローラまたは前記上部の支持ローラに接触する接点とを結ぶ直線がなす角度と、前記最大径の母材の最下端と前記最大径の母材が前記上部の支持ローラに接触する接点とを結ぶ直線がなす角度とが、107°〜133°の角度の範囲内におさまるように前記下部の支持ローラならびに前記上部の支持ローラが前記載置部に取り付けられる
ことを特徴とする光ファイバ母材運搬用台車。
【請求項2】
前記支持ローラは、中央部の直径が両端部の直径に比べて大きく、その周面が太鼓状に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ母材運搬用台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−62130(P2012−62130A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205313(P2010−205313)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】