説明

光ファイバ素線

【課題】良好な密着性を維持しつつ、被覆樹脂の硬化性を損なうことなく、経時的な破断強度、及び製造直後の破断強度が十分に大きい放射線硬化型樹脂組成物を被覆した光ファイバ素線を提供する。
【解決手段】ベース樹脂と、一般式(A)で示され且つ分子構造中にメルカプト基を有さない化合物の群から選択される2種以上のY基が異なるシランカップリング剤とを含む放射線硬化型樹脂組成物を被覆した光ファイバ素線10。


(式中、mは0又は1を表し、nは0〜3の整数を表し、Xは非加水分解性基を表し、Yは加水分解性基を表し、ZはH又はアルキル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石英ガラスからなる光ファイバの外周に被覆層を形成するための放射線硬化型樹脂組成物を被覆した光ファイバ素線に関する。
【背景技術】
【0002】
純シリカなどの石英系ガラスからなる光ファイバに、樹脂層を被覆した構造の光ファイバ素線は、通常、線引機で石英系ガラス母材を溶融線引きして光ファイバを形成した後、その外周にコーティングダイス等によって硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させることにより形成される。
【0003】
このような光ファイバ素線においては様々な特性が要求されるが、その中でZSA(Zero Stress Aging)特性(高温高湿度等の過酷な状況における無応力での強度劣化)は、高温高湿雰囲気下において樹脂被覆層が耐久性を有し被覆された光ファイバの破断強度の低下を防止するための特性である。ZSA特性は光ファイバのガラス面と樹脂被覆層との密着性との相関がある。
【0004】
光ファイバ素線のZSA特性や密着性の向上を目的とし、例えば、特許文献1では硬化性樹脂組成物にシランカップリング剤を添加することが開示されている。特許文献2では、シランカップリング剤を選択し、メルカプト基含有シラン、例えばγ−メルカプトプロピルトリメトキシシランを使用することによって、さらに特性を改善することを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−33931号公報
【特許文献2】特開2003−95706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2のようにメルカプト基含有シランを使用した場合、硬化性樹脂組成物中に存在するメルカプト基が重合阻害剤として働き、被覆樹脂の硬化性が低下することが懸念される。
また、製造効率の観点から製造直後の破断強度が十分に大きく、一定時間経過後の破断強度がそれよりもさらに大きくする必要がある。
本発明は、従来の光ファイバ素線における上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、シランカップリング剤の添加により得られる効果、特に良好な密着性を維持しつつ、被覆樹脂の硬化性を損なうことなく、且つ、製造直後および一定時間経過後の破断強度も十分に大きい光ファイバ素線を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
被覆用樹脂組成物が光ファイバに塗布されると、樹脂組成物中のシランカップリング剤がまずガラス界面に移動し、次に加水分解反応により活性化した後、脱水縮合反応することによって光ファイバのガラス表面に保護層を形成し、密着性を向上させると考えられる。
【0008】
この時使用されるシランカップリング剤のタイプの代表例を例えば(A)又は(B)とし、被覆用樹脂組成物被覆後の時間経過と破断強度の関係を考察するところ、図2に示す関係が考えられる。図2では、時間の経過につれて破断強度が強くなっていく様子が示されているが、これは樹脂の硬化後もシランカップリング剤のガラス界面への移動が行われ、ガラスと樹脂との結合箇所が増えることによるものであり、破断強度は、おおよそ2、3カ月で飽和すると考えられる。
シランカップリング剤(A)を用いた場合、製造直後の破断強度は大きいが、その後の破断強度の増加は非常に緩やかで最終的にそれほど強い破断強度は得られない。そのため、製造時のスクリーニング工程(大きめの張力を与えてそれに耐えられない弱い部分はあらかじめ切断する工程であり、以下に述べる端末加工時ほどの破断強度は要求されない)ではほとんど破断しないため製造効率は良いが、光ファイバ素線の端末加工がされる際(通常、製造後数カ月後)、光ファイバが破断する頻度が増える。
一方、シランカップリング剤(B)を用いた場合、初期は破断強度の立ち上がりが遅く破断強度が不十分なため、製造時のスクリーニング工程で切断される頻度が増え、製造効率が悪くなるが、最終的に強い破断強度が得られるため、光ファイバ素線の端末加工時における破断の心配がほとんどない。
【0009】
なお、カップリング剤の添加量と破断強度は、添加量が少ない範囲では添加量が増えるほど破断強度が向上するという関係にあるが、ある添加量以上になると破断強度は向上することなく飽和する。図2はその飽和時の添加量における塗布後の時間経過と破断強度の関係を示すものである。
【0010】
本発明の発明者らは、上記考察に基づき鋭意検討を行った結果、図2における(A)に代表される比較的早期に機能発現するが、特性向上が小さいシランカップリング剤と、(B)に代表される機能発現は遅いが、特性向上が大きいシランカップリング剤とを適宜混合して用いることで、図2の(A+B)のグラフに示されるように、制御範囲が広がり、安定した破断強度の向上を迅速に進めることができることを見出した。また、これらのシランカップリング剤の特定の構造を特定の比率で配合することによって、より良好な破断強度が得られることを見出した。
【0011】
さらに本発明の発明者らは、硬化性低下の抑制について検討し、シランカップリング剤を重合阻害剤として作用させないためには、メルカプト基を含まないシランカップリング剤を使用すべきであることを確認した。
本発明は、上記知見に基づいて達成されたものである。
即ち、本発明は以下の通りである。
【0012】
(1)石英ガラスからなる光ファイバの外周に放射線硬化型樹脂組成物をコーティングして硬化することにより光ファイバに接する被覆層が形成された光ファイバ素線であって、前記放射線効果型樹組成物が、ベース樹脂と、下記一般式(A)で示され且つ分子構造中にメルカプト基を有さない化合物の群から選択される2種以上のY基が異なるシランカップリング剤とを含み、各シランカップリング剤をベース樹脂100質量部に対して0.3質量部以上含むものである光ファイバ素線。
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、mは0又は1を表し、nは0〜3の整数を表し、Xは非加水分解性基を表し、Yは加水分解性基を表し、ZはH又はアルキル基を表す。)
【0015】
(2)Y基がメトキシ基のシランカップリング剤と、Y基がエトキシ基のシランカップリング剤とを含む前記(1)に記載の光ファイバ素線。
(3)メトキシ基とエトキシ基の数の比が10:1〜1:10である前記(2)に記載の光ファイバ素線。
(4)前記被覆層の弾性率が0.8MPa以下である前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の光ファイバ素線。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光ファイバ被覆用放射線硬化型樹脂組成物において、特定の構造のシランカップリング剤を2種以上含有することにより、良好な密着性を維持しつつ、被覆樹脂の硬化性を損なうことなく、且つ、製造直後および一定時間経過後の破断強度が十分に大きい光ファイバ素線を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の光ファイバ素線の一例を示す模式断面図である。
【図2】被覆用樹脂組成物の被覆後の時間経過と破断強度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の光ファイバ素線についての好ましい実施形態を詳細に説明する。
【0019】
上述のように、本発明の光ファイバ素線は、石英ガラスからなる光ファイバの外周に放射線硬化型樹脂組成物をコーティングして硬化することにより光ファイバに接する被覆層が形成されたものであって、該放射線効果型樹組成物が、ベース樹脂と、下記一般式(A)で示され且つ分子構造中にメルカプト基を有さない化合物の群から選択される2種以上のY基が異なるシランカップリング剤とを含む。
【0020】
【化2】

【0021】
(式中、mは0又は1を表し、nは0〜3の整数を表し、Xは非加水分解性基を表し、Yは加水分解性基を表し、ZはH又はアルキル基を表す。)
【0022】
1.ベース樹脂
本発明におけるベース樹脂としては、放射線硬化性を有するものであれば特に制限はされないが、例えば、オリゴマー、モノマー、光開始剤を含有するものが好ましい。
【0023】
該オリゴマーとしては、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、或いはそれらの混合系が挙げられる。
【0024】
該ウレタンアクリレートとしては、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、水酸基含有アクリレート化合物、を反応させて得られるものが挙げられる。
ポリオール化合物としては、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、などが挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、2,4-トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、などが挙げられる。水酸基含有アクリレート化合物としては、2-ヒドロキシアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、などが挙げられる。
【0025】
該モノマーとしては、環状構造を有するN−ビニルモノマー、例えばN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルフォリンが挙げられる。これらのモノマーを含むと硬化速度が向上するので好ましい。この他、イソボルニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジシクロペンタニルアクレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレートなどの単官能モノマーや、ポリエチレングリコールジアクリレートまたはトリシクロデカンジイルジメチレンジアクリレートなどの多官能モノマー、が用いられる。
【0026】
該光開始剤としては、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等が挙げられる。また、酸化防止剤、光増感剤などが添加されていても良い。
【0027】
硬化後の樹脂については、上述のように硬化後もシランカップリング剤が移動していることを考慮すると、その移動を妨げないために硬化後の低架橋密度のものが好ましい。その指標としては、シランカップリング剤が含まれる被覆層(後述する内層14に相当)の弾性率を0.8MPa以下とするものが好ましい。その外に弾性率が600〜1500MPaの被覆層を設けて機械的強度を大きくする。
【0028】
2.シランカップリング剤
本発明におけるシランカップリング剤は、上記一般式(A)で示される。
式中、mは0又は1を表し、nは0〜3の整数を表す。
Xは非加水分解性基を表し、好ましくはアルキル基、(アルキル基変性)アミノ基、グリシジル基、フェニル基、ビニル基、スチリル基、(メタ)アクリロイル基、ウレイド基、イソシアネート基である。Xをこのような基とすることで、シランカップリング剤のガラス界面への移動を促進し、密着性が向上する。
【0029】
Yは加水分解性基を表し、好ましくはアルコキシ基、アセトキシ基、ハロゲン基であり、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基である。Yをこれらの基とすることで、シランカップリング剤の加水分解及び脱水縮合速度がコントロールされ、シランカップリング剤自体の分子量の増大を抑制することができるので、シランカップリング剤の樹脂組成物中での移動性を維持することができ、密着性が向上する。また、異なるY基を2種以上含むことで、製造直後および一定期間(数ヶ月)後の破断強度を大きくすることができる。また、さらに好ましくはY基がメトキシ基のシランカップリング剤とY基がエトキシ基のシランカップリング剤とを含むことが好ましく、この場合、該メトキシ基とエトキシ基の数の比は10:1〜1:10であることがさらに好ましい。
ZはH又はアルキル基を表し、好ましくは、H又はCHである。このように鎖長の短い基を用いることで、シランカップリング剤が樹脂中を移動し易くする。若しくは密着性向上のために、Z基の数を0とし、X基の数を増やすこともできる。
【0030】
また、シランカップリング剤の分子構造中にはメルカプト基は含まれない。これにより樹脂組成物の重合阻害を抑制できるので、硬化性を向上させることができる。
【0031】
このようなシランカップリング剤としては、例えば、ジエトキシメチルシラン、ジエトキシドデシルメチルシラン、ジエトキシメチルオクタデシルシラン、ジアセトキシメチルシラン、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランを挙げることができ、なかでもテトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランが好ましい。
【0032】
本発明における各シランカップリング剤の含有量は、ベース樹脂100質量部に対して0.3質量部以上である。含有量をこの範囲とすることで、硬化後の樹脂の硬化性と密着性のバランスが、良好になる。
【0033】
本発明の一実施形態に係る光ファイバ素線10を図1に示す。光ファイバ素線10は、石英ガラスからなる光ファイバ13の外周に、本発明の光ファイバ被覆用放射線硬化型樹脂組成物により形成された内層14を含む被覆層16を有する。被覆層は複数あってもよいが、シランカップリング剤を添加するのはガラスに接する層である。光ファイバ13は、コア部11とクラッド部12とからなり、例えば、コア部にはゲルマニウムを添加した石英を用いることができ、クラッド部には純石英、或いはフッ素が添加された石英を用いることができる。また内層14の外周に、さらに外層15を積層して設けることができる。
内層14の弾性率は0.8MPa以下であることが好ましい。これにより密着性を向上させる所望の架橋度となっていることが確認される。
【0034】
図1において、例えば、光ファイバ13の径(D2)は125μm程度である。またコア部11の径(D1)は7〜15μm程度であることが好ましい。樹脂層が二層の場合は、内層14の厚さは12〜45μmである。光ファイバ素線10の径(D3)は250μmであることが好ましい。
【0035】
(光ファイバ素線の製造方法)
本発明の光ファイバ素線は、石英ガラスからなる光ファイバの外周に、本発明の光ファイバ被覆用放射線硬化型樹脂組成物をコーティングして硬化することにより被覆層(被覆層が複数ある場合は最内層)を形成することで製造される。
例えば、石英系ガラス母材を溶融紡糸して得られた光ファイバの周囲に本発明の光ファイバ被覆用放射線硬化型樹脂組成物を塗布し、紫外線照射装置内で紫外線を照射することで該樹脂組成物を硬化させる方法を一実施態様として挙げることができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明に係る実施例及び比較例を用いた評価試験の結果を示し、本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0037】
(実施例1〜6,比較例1〜5)
【0038】
[内層14を構成するための紫外線硬化型樹脂組成物]
ウレタンアクリレートオリゴマーをモノマーにより希釈することで粘度を調整後、光開始剤を添加したものをベース樹脂とした。
オリゴマーとしては、ポリプロピレングリコール、2,4−トリレンジイソシアネート、2−ヒドロキシエチルアクリレートを約1:2:2の割合で反応させたものを用い、モノマーとしては、N−ビニルカプロラクタム、イソボルニルアクリレートを用いた。光開始剤としては、2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイドを用いた。
このベース樹脂100重量部に対し、シランカップリング剤として下記表1に記載のものを表1に記載の添加量にて添加し、樹脂組成物を調製した。
【0039】
[光ファイバ素線の作製]
光ファイバは、石英を主成分とするコア径が8μm、クラッド径が125μmのもの(比屈折率差Δnは1.0%)を使用した。そして、該光ファイバの外周面に、前記した方法に準じて、上記の紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させてなる内層14を被覆して、さらにその上に上記ベース樹脂のみからなる樹脂組成物(シランカップリング剤非添加)を硬化させてなる外層15を被覆して外径が250μmとなる光ファイバ素線を作製した。
[光ファイバ素線の評価]
作製した光ファイバ素線について、以下の評価試験(密着性、硬化性、破断強度)を行った。結果を表1に示す。
【0040】
(試験方法)
1.密着性
製造直後、製造60日後の光ファイバ素線について、光ファイバ素線の樹脂被覆層に、カミソリで刃先がガラス表面に届かない深さで切れ目を入れ、切れ目を挟んだ一方の樹脂被覆層を台紙に貼り付けて台紙を固定し、他方の光ファイバ素線を把持して引っ張った。光ファイバ(ガラス部分)が台紙に固定された樹脂被覆層から引き抜かれる時の引っ張り強さを測定し、0.5kg未満を×、0.5〜1.5kgを○、1.5kgを超えるものを×とした。
2.硬化性
放射線硬化型樹脂組成物に紫外線を30mJ/cm照射して硬化させたフィルムの弾性率と紫外線を300mJ/cm照射して硬化させたフィルムの弾性率の比が0.80未満を×、0.80以上を○とした。
3.破断強度
製造直後、製造60日後の光ファイバ素線について、引張試験機の引張速度を5mm/分として測定し、製造直後については5.4kg未満を×、5.4kg以上を○とし、製造60日後については5.6kg未満を×、5.6kg以上を○とした。
4.総合評価
硬化性、密着性、破断強度の全項目について評価し、全項目が、○の評価となったものを良好とし、それ以外を不良とした。
【0041】
【表1】

【0042】
なお、表1中に記載のシランカップリング剤はそれぞれ以下の通りである。
(1)TMOS:テトラメトキシシラン
(2)TEOS:テトラエトキシシラン
(3)MPTS:メルカプトプロピルトリメトキシシラン
(4)TAcOS:テトラアセトキシシラン
【0043】
上記表1の結果に示すように、上記一般式(A)で示されるシランカップリング剤について2種以上のY基が異なるものを規定量用いた光ファイバ被覆用放射線硬化型樹脂組成物にかかる実施例1〜6では、硬化性、密着性、破断強度の製造直後と60日後ともに全て良好な信頼性の高い光ファイバ素線を得ることができた。ただし、Y基がメトキシ基のシランカップリング剤と、Y基がアセトキシ基のシランカップリング剤とを含む実施例4では、製造後7日後では密着性、破断強度が不十分であった。これに対してY基がメトキシ基のシランカップリング剤と、Y基がエトキシ基のシランカップリング剤とを含む他の実施例は製造後7日後でも密着性、破断強度が十分であった。
一方、シランカップリング剤を用いない比較例1では、密着性、破断強度ともに不良であり、またシランカップリング剤を1種のみ使用した比較例2及び3では、十分な破断強度が得られなかった。比較例3は製造直後の密着性も不良であった。シランカップリング剤含有量が適切ではない、比較例4では60日後の密着性、破断強度が充分ではなかった。メルカプト基を含むシランカップリング剤を用いた比較例5では、硬化性が充分ではなかった。
【符号の説明】
【0044】
10 光ファイバ素線、11 コア部、12 クラッド部、13 光ファイバ、 14 内層(被覆層)、15 被覆(外)層、16 被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ガラスからなる光ファイバの外周に放射線硬化型樹脂組成物をコーティングして硬化することにより光ファイバに接する被覆層が形成された光ファイバ素線であって、前記放射線効果型樹組成物が、ベース樹脂と、下記一般式(A)で示され且つ分子構造中にメルカプト基を有さない化合物の群から選択される2種以上のY基が異なるシランカップリング剤とを含み、各シランカップリング剤をベース樹脂100質量部に対して0.3質量部以上含むものである光ファイバ素線。
【化1】


(式中、mは0又は1を表し、nは0〜3の整数を表し、Xは非加水分解性基を表し、Yは加水分解性基を表し、ZはH又はアルキル基を表す。)
【請求項2】
Y基がメトキシ基のシランカップリング剤と、Y基がエトキシ基のシランカップリング剤とを含む請求項1に記載の光ファイバ素線。
【請求項3】
メトキシ基とエトキシ基の数の比が10:1〜1:10である請求項2に記載の光ファイバ素線。
【請求項4】
前記被覆層の弾性率が0.8MPa以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の光ファイバ素線。

【図1】
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【図2】
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