説明

光モジュール

【課題】光通信装置本体へ活線挿入される際の突入電流や電圧変動を配線基板の配線密度に関わらず抑制でき、且つ信頼性を確保できる光モジュールを提供する。
【解決手段】光モジュール10は、配線基板18を備える。配線基板18は、光通信装置本体のコネクタ端子102bと接触する複数の端子パターン8を有する。複数の端子パターン8のうち、電源用端子パターン82及び信号用端子パターン84は、挿抜方向に並ぶ複数の端子部分82a,82b及び84a,84bにそれぞれ分割されている。複数の端子部分82a,82b同士は抵抗素子86を介して電気的に接続されており、抵抗素子86が、配線基板18の内部に埋め込まれている。同様に、複数の端子部分84a,84b同士は抵抗素子90を介して電気的に接続されており、抵抗素子90が、配線基板18の内部に埋め込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信装置本体に対して挿抜可能な光モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信システムにおいて、ホスト機器(光通信装置)の電源を切らずに該ホスト機器のスロットへの挿入及び抜き取りが可能な、活線挿抜(ホットプラガブル)型の光モジュールが多く用いられている。そして、このような活線挿抜型の光モジュールにおいては、ホスト機器側の回路を保護するため、ホスト機器のスロットへ活線挿入する際に電源ラインに生じる突入電流や信号ラインに生じる電圧変動などを抑制することが求められる。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された活線挿抜回路装置では、プリント基板上に配置されたバスラインの端子を分割して抵抗素子で繋ぐことにより、ホスト機器側のコネクタへ該端子を活線挿入する際にホスト機器側のバスラインの動作レベルを乱さないようにしている。また、特許文献2に開示されたコンタクト構造では、活線挿抜用の電気コネクタに使用されるコンタクトにおいて、コンタクトの先端から中間部にかけて抵抗材料層を埋め込んで平坦な接触面を形成し、相手側コンタクトとの接触初期段階に抵抗材料層を介して接触させることにより、電流サージ等を防止している。
【0004】
【特許文献1】特開2001−034365号公報
【特許文献2】特開平11−297391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された構成では、次の問題がある。すなわち、一般的に端子近傍は実装禁止領域となっており、抵抗素子を端子から離れた場所に配置しなければならない。しかも、配線基板上において端子寄りの領域は配線密度が過密になる傾向があるので、抵抗素子と端子とを接続するための配線パターンの追加が困難であることが多い。
【0006】
また、特許文献2に開示された構成では、抵抗材料層が相手側コンタクトと接触するような構成となっているが、一般的に抵抗材料は端子材料(主に金属)よりも脆いので、金属製の相手側コンタクトとの幾度の接触により欠損や剥離が生じてしまい、信頼性が確保できない。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、光通信装置本体へ活線挿入される際の突入電流や電圧変動を配線基板の配線密度に関わらず抑制でき、且つ信頼性を確保できる光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の光モジュールは、光通信装置の一部をなし、光通信装置本体に対して挿抜可能な光モジュールであって、発光ユニット及び受光ユニットのうち少なくとも一方を含む光機能部と、光機能部と電気的に接続された電子部品を搭載し、光通信装置本体のコネクタ端子と接触する端子パターンを縁部に有する配線基板とを備え、少なくとも一つの端子パターンが、挿抜方向に並ぶ複数の端子部分に分割され、該複数の端子部分同士が抵抗素子を介して電気的に接続されており、抵抗素子が、配線基板の内部に埋め込まれていることを特徴とする。
【0009】
上記した光モジュールにおいては、配線基板に設けられた端子パターンが、挿抜方向に並ぶ複数の端子部分に分割され、隣り合う端子部分同士が抵抗素子を介して電気的に接続されている。従って、この光モジュールを光通信装置本体のコネクタに活線挿入する際には、配線基板の配線は、先ず抵抗素子を介して光通信装置本体のコネクタ端子と電気的に接続され、その後にコネクタ端子と短絡される。これにより、電源ラインにおける突入電流や信号ラインにおける電圧変動が好適に抑制されるので、光通信装置本体側の回路を効果的に保護できる。
【0010】
また、上記した光モジュールにおいては、複数の端子部分間の抵抗素子が配線基板の内部に埋め込まれるので、抵抗素子を端子パターンの近傍に配置することが可能となる。従って、配線基板の配線密度に関わらず、上記構成を適用できる。また、上記した光モジュールにおいては、光通信装置本体側のコネクタ端子と接触するのは端子パターンの複数の端子部分であり、抵抗素子はコネクタ端子と接触しないので、一般的な端子と同等の信頼性を確保できる。
【0011】
また、光モジュールは、配線基板が、端子パターンとして、配線基板の接地ラインに対応する接地用端子パターン、電源ラインに対応する電源用端子パターン、及び信号ラインに対応する信号用端子パターンを有しており、少なくとも一つの端子パターンが、電源用端子パターンを含むことを特徴としてもよい。これにより、電源ラインにおける突入電流を好適に抑制できる。
【0012】
また、光モジュールは、配線基板が、端子パターンとして、配線基板の接地ラインに対応する接地用端子パターン、電源ラインに対応する電源用端子パターン、及び信号ラインに対応する信号用端子パターンを有しており、少なくとも一つの端子パターンが、信号用端子パターンを含むことを特徴としてもよい。これにより、信号ラインにおける電圧変動を好適に抑制できる。
【0013】
また、光モジュールは、複数の端子部分同士で互いに対向する辺が、配線基板とコネクタ端子との接触領域の長手方向と斜めに交差する方向に沿っていることを特徴としてもよい。上記した光モジュールにおいては、光通信装置本体へ挿入される際に、上記接触領域が端子パターンの複数の端子部分を移動する。このとき、当該接触領域が複数の端子部分の隙間を通過する必要があるが、この光モジュールによれば、この隙間を通過する間もコネクタ端子は端子パターンの何れかの端子部分に常に接触できるので、光通信装置本体側のコネクタ端子と光モジュール側の端子パターンとの接触状態を好適に持続できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光通信装置本体へ活線挿入される際の突入電流や電圧変動を配線基板の配線密度に関わらず抑制でき、且つ信頼性を確保できる光モジュールを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る光モジュールの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1及び図2は、本発明の好適な一実施形態である光モジュールの構成を示す図である。図1は、本実施形態の光モジュール10を示す平面図であり、図2は、図1に示した光モジュール10のI−I線に沿った側面断面図である。本実施形態の光モジュールは、光通信装置の一部をなし、光通信装置本体に対して活線挿抜可能な光トランシーバである。なお、図2には、光通信装置本体側のコネクタ(ホストコネクタ)102も図示されている。
【0017】
図1及び図2に示すように、光モジュール10は、発光ユニット12と、受光ユニット14と、複数の電子部品16を搭載した配線基板18と、ハウジング40とを備える。このうち、発光ユニット12及び受光ユニット14は、本実施形態における光機能部20を構成している。
【0018】
発光ユニット12は、電気的な送信信号を光信号に変換して光通信装置の外部へ送信するための構成要素であり、配線基板18の前縁部に配置される。発光ユニット12は、発光素子(例えばレーザダイオード)等を内部に有する略円筒状のパッケージ12aと、光を案内するための略円筒状の光案内部12bとを有する。この光案内部12bは、光ファイバが挿通されたフェルールや、それを保持するスリーブなどを含んでいる。パッケージ12aのベースからは、3本のリードピン24が延設されている。これらのリードピン24は、例えば、信号ライン(正相)用ピン、信号ライン(逆相)用ピン、信号ライン(モニタフォトダイオード電流)用ピンからなる。
【0019】
受光ユニット14は、光通信装置へ送られてきた光信号を電気的な受信信号に変換するための構成要素であり、配線基板18の前縁部に発光ユニット12と並んで配置される。受光ユニット14は、受光素子(例えばフォトダイオード)及びプリアンプ等を内部に有する略円筒状のパッケージ14aと、光を案内するための略円筒状の光案内部14bとを有する。この光案内部14bは、光ファイバが挿通されたフェルールや、それを保持するスリーブなどを含んでいる。パッケージ14aのベースからは、5本のリードピン26が延設されている。これらのリードピン26は、例えば、信号ライン(正相)用ピン、信号ライン(逆相)用ピン、電源ライン(フォトダイオード逆バイアス)用ピン、電源ライン(Vcc)用ピン、接地ライン用ピンからなる。
【0020】
配線基板18は、外形が略長方形状をなす樹脂多層プリント配線基板である。この配線基板18の表面18a及び裏面18bの双方には、発光ユニット12のリードピン24と電気的に接続されて発光ユニット12の駆動制御を行うドライバICや、受光ユニット14のリードピン26と電気的に接続されて受光ユニット14から受け取った信号の処理を行うICなどを含む複数の電子部品16が搭載されている。
【0021】
また、配線基板18の裏面18bの後縁部には、光通信装置本体の実装基板100に搭載されたホストコネクタ102と電気的に接触するための複数の端子パターン8が形成されている。これら複数の端子パターン8は、接地ライン用の端子パターン、電源ライン用の端子パターン、信号ライン用の端子パターン等を含んでいる。
【0022】
ハウジング40は、配線基板18の後縁部付近に設けられたホストコネクタ収容部42と、発光ユニット12及び受光ユニット14の前方に設けられた光コネクタ収容部44と、配線基板18の表面18aに沿って延びる上壁部46とを有する。光コネクタ収容部44は、光ファイバ106と接続された光コネクタ104(図2参照)が収容される一対の収容穴44a,44bを有している。これら一対の収容穴44a及び44bは、それぞれ発光ユニット12及び受光ユニット14に対応して設けられている。
【0023】
光モジュール10は、図2に示すように、光通信装置本体の実装基板100に設けられたホストコネクタ102に対して挿入及び抜出される。その挿抜方向Aは、配線基板18の前後方向と一致している。ホストコネクタ102は、配線基板18と嵌合する凹部102aを有し、この凹部102aには、配線基板18の後縁部に設けられた複数の端子パターン8と電気的に接触する複数のコネクタ端子102bが設けられている。従って、配線基板18の後縁部がホストコネクタ102に挿入されることにより、配線基板18の端子パターン8とホストコネクタ102のコネクタ端子102bとの電気的な接続が図られる。また、本実施形態の光モジュール10は、ホストコネクタ102に挿入される際に光通信装置本体の電源を落とす必要のない、いわゆる活線挿抜(ホットプラグ)可能な構成となっている。
【0024】
ここで、端子パターン8の構成について、更に詳細に説明する。図3は、端子パターン8の構成を示す裏面図である。また、図4は、図3に示した端子パターン8のII−II線(またはIII−III線)に沿った断面図である。
【0025】
図3及び図4に示すように、複数の端子パターン8は、配線基板18の後縁部(すなわち配線基板18の後端18cの近傍)の裏面18bにそれぞれ設けられており、挿抜方向Aに沿ってそれぞれ延びている。複数の端子パターン8は、配線基板18の接地ライン28に対応する接地用端子パターン80と、電源ライン30に対応する電源用端子パターン82と、信号ライン32(シリアルバス等のバスライン、二値信号を送る制御信号ラインなど)に対応する信号用端子パターン84とを含んでいる。
【0026】
これらの端子パターン8のうち、電源用端子パターン82は、挿抜方向Aに沿って並ぶ複数の端子部分82a及び82bに分割されている。複数の端子部分82a及び82bは、配線基板18の内部に埋め込まれた抵抗素子86を介して電気的に接続されている。また、信号用端子パターン84は、挿抜方向Aに沿って並ぶ複数の端子部分84a及び84bに分割されている。複数の端子部分84a及び84bは、配線基板18の内部に埋め込まれた抵抗素子90を介して電気的に接続されている。
【0027】
すなわち、図4に示すように、抵抗素子86は配線基板18の内部において電源用端子パターン82の下部に埋め込まれている。抵抗素子86の一端は、埋込配線88aを介して電源用端子パターン82の端子部分82aと電気的に接続されている。抵抗素子86の他端は、埋込配線88bを介して電源用端子パターン82の端子部分82bと電気的に接続されている。また、抵抗素子90は配線基板18の内部において信号用端子パターン84の下部に埋め込まれている。抵抗素子90の一端は、埋込配線92aを介して信号用端子パターン84の端子部分84aと電気的に接続されている。抵抗素子90の他端は、埋込配線92bを介して信号用端子パターン84の端子部分84bと電気的に接続されている。
【0028】
また、図3に示すように、配線基板18の後端18cから接地用端子パターン80までの距離D1は、後端18cから電源用端子パターン82までの距離D2、及び後端18cから信号用端子パターン84までの距離D3よりも短くなっている。また、後端18cから信号用端子パターン84までの距離D3は、後端18cから接地用端子パターン80までの距離D1、及び後端18cから電源用端子パターン82までの距離D2よりも長くなっている。従って、本実施形態の端子パターン8においては、上記した各距離D1〜D3の関係は、D1<D2<D3となっている。
【0029】
なお、各端子パターン8の寸法を例示すると次のとおりである。各端子パターン8の幅は、0.6mmである。各端子パターン8の長さ(複数の端子部分を含む場合は、全ての端子部分を含む両端間の長さ)は、接地用端子パターン80が3.0mmであり、電源用端子パターン82が2.6mmであり、信号用端子パターン84が2.2mmである。各端子パターン同士の間隔は、0.2mmである。また、各端子パターン8の構成材料を例示すると、銅(配線材、厚さ38μm)、ニッケル(ベース材、厚さ2μm)、及び金(表面被覆材、厚さ1μm)が好適である。また、配線基板18の構成材料を例示すると、耐然性ガラス基材エポキシ樹脂積層板(FR−4)やポリイミド基板(リジッドフレックス基板の場合)などが好適である。配線基板18の厚さは、例えば1mmである。
【0030】
以上の構成を有する光モジュール10の作用のうち、端子パターン8に関する作用について説明する。この光モジュール10を光通信装置本体のホストコネクタ102に活線挿入すると、まず、接地用端子パターン80が、ホストコネクタ102側の対応するコネクタ端子と接触する。これにより、光通信装置本体の基準電位(GND電位)と光モジュール10の基準電位とが一致する。
【0031】
続いて挿入を続けると、電源用端子パターン82の端子部分82bが、ホストコネクタ102側の対応するコネクタ端子と接触する。これにより、光通信装置本体から光モジュール10へ電源電圧が供給されるが、このとき、電流は抵抗素子86を介して電源ライン30へ流れる。その後、光モジュール10が更に挿入されると、電源用端子パターン82の端子部分82aがコネクタ端子と接触し、コネクタ端子と電源ライン30とが短絡する。これにより、電源ライン30へ通常の電源電圧が供給される。
【0032】
続いて挿入を続けると、信号用端子パターン84の端子部分84bが、ホストコネクタ102側の対応するコネクタ端子と接触する。これにより、光通信装置本体の信号ライン(バスラインや二値信号ラインなど)と光モジュール10側の信号ライン32とが電気的に接続されるが、このとき、これらの信号ラインは抵抗素子90を介して接続される。その後、光モジュール10が更に挿入されると、信号用端子パターン84の端子部分84aがコネクタ端子と接触し、コネクタ端子と信号ライン32とが短絡する。これにより、信号ライン32と光通信装置本体との間で電気信号を入出力することが可能となる。
【0033】
本実施形態の光モジュール10により得られる効果について説明する。ここで、図5(a)に示すグラフG1は、従来の端子パターンを有する光モジュールをホストコネクタに活線挿入したときに電源ラインに生じる突入電流の波形の一例を示すグラフである。また、図5(b)に示すグラフG2は、本実施形態の光モジュール10をホストコネクタ102に活線挿入したときの電源電流の波形の一例を示すグラフである。なお、図5(a)及び図5(b)は、光モジュール側の電源用端子パターンと光通信装置本体側のコネクタ端子とが時刻tに接触した場合を示している。
【0034】
一般的に、電源ラインは低インピーダンスであり、また、バイパスコンデンサなどの容量素子が負荷として接続されているので、従来の光モジュールでは、ホストコネクタ端子に接触した瞬間、容量素子を充電するための大きな電流(突入電流)が流れる(図5(a)の波形B)。これにより、光通信装置本体の電源回路に負荷を与えてしまう。これに対し、本実施形態の光モジュール10においては、電源ライン30が、まず抵抗素子86を介して光通信装置本体側の電源ラインと接続される。従って、突入電流の発生を抑え、電源電流値はなだらかに上昇する(図5(b)の波形B)。その後、光モジュール10が更に挿入されることで電源ライン30と光通信装置本体側の電源ラインとが短絡する。
【0035】
このように、本実施形態の光モジュール10によれば、活線挿入時の電源ライン30における突入電流を好適に抑制できるので、光通信装置本体側の電源回路を効果的に保護できる。
【0036】
図6(a)に示すグラフG3は、従来の端子パターンを有する光モジュールをホストコネクタに活線挿入したときの、光通信装置本体側の信号ラインの電圧変化の一例を示すグラフである。また、図6(b)に示すグラフG4は、本実施形態の光モジュール10をホストコネクタ102に活線挿入したときの、光通信装置本体側の信号ラインの電圧変化の一例を示すグラフである。なお、図6(a)及び図6(b)においても、光モジュール側の信号用端子パターンと光通信装置本体側のコネクタ端子とが時刻tに接触するものとする。
【0037】
一般的に、光モジュール側の信号ラインは、光通信装置本体と未接続のとき、その電位が不定となっていることがある。従って、従来の光モジュールでは、ホストコネクタ端子に接触した瞬間、光モジュール側の信号ライン(電位不定)と光通信装置本体側の信号ラインとが短絡することにより、光通信装置本体側の信号ラインに大きな電圧変動が生じることがある(図6(a)の波形C)。これに対し、本実施形態の光モジュール10においては、信号ライン32が、まず抵抗素子90を介して光通信装置本体側の信号ラインと接続される。従って、信号ライン32の不定電位による影響を抑え、光通信装置本体側の信号ラインの電圧変動を低減できる(図6(b)の波形C)。
【0038】
また、信号ラインにシリアルバスが含まれる場合、光モジュールを活線挿入する際においても、光通信装置本体側のシリアルバスは他のデバイス等と通信している。従って、従来の光モジュールでは、ホストコネクタ端子と信号用端子パターンとの接触によりサージ等のノイズが発生し、シリアルバス通信を妨害するおそれがある。これに対し、本実施形態の光モジュール10によれば、信号ライン32が先ず抵抗素子90を介して光通信装置本体側の信号ラインと接続されるので、ノイズの発生を抑制し、シリアルバス通信への影響を低減できる。なお、このような効果は、シリアルバスに限らず、バス接続される全ての回路に有効である。
【0039】
このように、本実施形態の光モジュール10によれば、活線挿入時の光通信装置本体側の信号ラインにおける電圧変動やノイズを好適に抑制できるので、光通信装置本体側の信号ラインを効果的に保護できる。
【0040】
また、本実施形態の光モジュール10においては、抵抗素子86,90が配線基板18の内部に埋め込まれるので、抵抗素子86,90を端子パターン8の近傍に配置することが可能となる。従って、複数の端子部分82a及び82b(84a及び84b)を抵抗素子86(90)を介して接続する構成を、配線基板18の配線密度に関わらず適用できる。また、電源用端子パターン82及び信号用端子パターン84においては、光通信装置本体側のコネクタ端子102bと接触するのは複数の端子部分82a,82b及び84a,84bであり、抵抗素子86及び90はコネクタ端子102bと接触しないので、一般的な端子パターンと同等の信頼性を確保できる。
【0041】
また、本実施形態のように、配線基板18の後端18cから接地用端子パターン80までの距離D1は、後端18cから電源用端子パターン82までの距離D2、及び後端18cから信号用端子パターン84までの距離D3よりも短いことが好ましい。これにより、活線挿入の際には、光モジュール10において接地電位が確定した後に電源ライン30及び信号ライン32が光通信装置本体と導通するので、光モジュール10側の回路を好適に保護できる。
【0042】
また、本実施形態のように、配線基板18の後端18cから信号用端子パターン84までの距離D3が、後端18cから接地用端子パターン80までの距離D1、及び後端18cから電源用端子パターン82までの距離D2よりも長いことが好ましい。これにより、活線挿入の際には、光モジュール10に電源電圧が好適に供給された状態で信号の入出力を開始できるので、光モジュール10側の回路を好適に保護できる。
【0043】
なお、本実施形態においては、光モジュール10がホストコネクタ102へ活線挿入される際に、コネクタ端子102bと電源用端子パターン82(または信号用端子パターン84)との接触領域が、端子部分82b(84b)から端子部分82a(84a)へ移動する。このとき、当該接触領域が必然的に端子部分82a(84a)と端子部分82b(84b)との隙間を通過する。従って、端子部分82a(84a)と端子部分82b(84b)との隙間は、該隙間を接触領域が通過する際にコネクタ端子102bが端子部分82a及び82b(84a及び84b)のいずれか少なくとも一方と接触するように設定されることが好ましい。或いは、端子部分82a(84a)と端子部分82b(84b)との隙間は、一般的なモジュール挿入速度を考慮しつつ、コネクタ端子102bが端子部分82a及び82b(84a及び84b)のいずれにも接触しない時間が規定以下となるように設定されてもよい。
【0044】
(変形例)
図7(a)は、本実施形態の変形例に係る端子パターン94の構成を示す図である。また、図7(b)は、本実施形態の別の変形例に係る端子パターン96の構成を示す図である。また、図7(c)は、ホストコネクタ102が有するコネクタ端子102bの一般的な形状を示す斜視図である。
【0045】
図7(a)を参照すると、端子パターン94は、複数の端子部分94a及び94bに分割されている。各端子部分94a及び94bは、配線基板18の内部に埋め込まれた抵抗素子76を介して互いに電気的に接続されている。各端子部分94a及び94b同士で互いに対向する各端子部分94a及び94bの辺94c及び94dは、配線基板18(図1,図2参照)とコネクタ端子102b(図7(c))とが接触する領域(接触領域E)の長手方向と交差する方向(本変形例では、傾斜した方向)に沿って形成されている。
【0046】
また、図7(b)を参照すると、端子パターン96は、複数の端子部分96a及び96bに分割されている。各端子部分96a及び96bは、配線基板18の内部に埋め込まれた抵抗素子78を介して互いに電気的に接続されている。各端子部分96a及び96b同士で互いに対向する各端子部分96a及び96bの辺96c及び96dは鋸刃形状に形成されており、各辺96c,96dにおいて該鋸刃形状を構成する各線分は、接触領域Eの長手方向と交差する方向(傾斜方向)に沿っている。
【0047】
ここで、接触領域Eの形状は、コネクタ端子102bの形状に依存する。図7(c)に示すように、一般的なコネクタ端子102bは、光モジュールの挿抜を容易にするために、配線基板との接触部位Fが折れ曲がった形状をしている。また、光モジュール側の端子パターンとの接触面積を確保するために、コネクタ端子102bの断面は幅広に形成される。従って、接触領域Eの形状は一般的に細長くなり、その長手方向は挿抜方向Aと直交することが多い。なお、本変形例における接触領域Eの長手方向は、挿抜方向Aと直交する方向に限られるものではない。
【0048】
光モジュールの電源用端子パターン及び信号用端子パターンが有する複数の端子部分は、本変形例のような形状であってもよい。光モジュールがホストコネクタ102へ挿入される際には、コネクタ端子102bと端子パターン94(または96)との接触領域Eが、挿抜方向Aに沿って、端子パターン94(96)の端子部分94b(96b)から端子部分94a(96a)へ移動する。このとき、接触領域Eが各端子部分94a及び94b(96a及び96b)の隙間を通過する必要があるが、本変形例によれば、この隙間を通過する間もコネクタ端子102bは端子パターン94(96)の何れかの端子部分に常に接触できるので、ホストコネクタ102のコネクタ端子102bと光モジュール側の端子パターン94(96)との接触状態を好適に持続できる。
【0049】
本発明による光モジュールは、上記実施形態に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態においては、複数の端子パターンのうち電源用端子パターン及び信号用端子パターンが複数の端子部分に分割されているが、複数の端子パターンのうち少なくとも一つの端子パターンが複数の端子部分に分割されることにより、当該端子パターンに対応する信号ライン(または電源ライン)において、本発明の効果を好適に得ることができる。例えば、電源用端子パターン及び信号用端子パターンのうちいずれか一方のみが複数に分割される構成など、様々な態様が可能である。
【0050】
また、上記実施形態及び変形例では、端子パターンが2つの端子部分に分割されているが、端子パターンは3つ以上の端子部分に分割されていてもよい。この場合、配線基板に埋め込まれた抵抗素子を介して隣り合う端子部分同士が接続されるとよい。これにより、本発明の効果を更に効果的に得ることができる。
【0051】
また、上記実施形態では、本発明の適用が可能な光モジュールの一例として、発光ユニット及び受光ユニットの双方を備える光トランシーバについて説明した。しかしながら本発明は、発光ユニット及び受光ユニットのうちいずれか一方のみを備える光モジュールに対しても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、本発明の好適な一実施形態である光モジュールの構成を示す平面図である。
【図2】図2は、図1に示した光モジュールのI−I線に沿った側面断面図である。
【図3】図3は、端子パターンの構成を示す裏面図である。
【図4】図4は、図3に示した端子パターンのII−II線(またはIII−III線)に沿った断面図である。
【図5】図5(a)は、従来の端子パターンを有する光モジュールをホストコネクタに活線挿入したときに電源ラインに生じる突入電流の波形の一例を示すグラフである。図5(b)は、本実施形態の光モジュールをホストコネクタに活線挿入したときの電源電流の波形の一例を示すグラフである。
【図6】図6(a)は、従来の端子パターンを有する光モジュールをホストコネクタに活線挿入したときの、光通信装置本体側の信号ラインの電圧変化の一例を示すグラフである。図6(b)は、本実施形態の光モジュールをホストコネクタに活線挿入したときの、光通信装置本体側の信号ラインの電圧変化の一例を示すグラフである。
【図7】図7(a)は、変形例に係る端子パターンの構成を示す図である。図7(b)は、別の変形例に係る端子パターンの構成を示す図である。図7(c)は、ホストコネクタが有するコネクタ端子の一般的な形状を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
8…端子パターン、10…光モジュール、12…発光ユニット、14…受光ユニット、16…電子部品、18…配線基板、20…光機能部、24,26…リードピン、28…接地ライン、30…電源ライン、32…信号ライン、80…接地用端子パターン、82…電源用端子パターン、82a,82b,84a,84b…端子部分、84…信号用端子パターン、86,90…抵抗素子、102…ホストコネクタ、102b…コネクタ端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光通信装置の一部をなし、光通信装置本体に対して挿抜可能な光モジュールであって、
発光ユニット及び受光ユニットのうち少なくとも一方を含む光機能部と、
前記光機能部と電気的に接続された電子部品を搭載し、前記光通信装置本体のコネクタ端子と接触する端子パターンを縁部に有する配線基板と
を備え、
少なくとも一つの前記端子パターンが、挿抜方向に並ぶ複数の端子部分に分割され、該複数の端子部分同士が抵抗素子を介して電気的に接続されており、
前記抵抗素子が、前記配線基板の内部に埋め込まれていることを特徴とする、光モジュール。
【請求項2】
前記配線基板が、前記端子パターンとして、前記配線基板の接地ラインに対応する接地用端子パターン、電源ラインに対応する電源用端子パターン、及び信号ラインに対応する信号用端子パターンを有しており、
前記少なくとも一つの端子パターンは、前記電源用端子パターンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記配線基板が、前記端子パターンとして、前記配線基板の接地ラインに対応する接地用端子パターン、電源ラインに対応する電源用端子パターン、及び信号ラインに対応する信号用端子パターンを有しており、
前記少なくとも一つの端子パターンは、前記信号用端子パターンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記複数の端子部分同士で互いに対向する辺が、前記配線基板と前記コネクタ端子との接触領域の長手方向と斜めに交差する方向に沿っていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−287854(P2007−287854A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112150(P2006−112150)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】