説明

光ルミネセンス蛍リン光体粒子を含む安全管理用製品

【課題】光ルミネセンス蛍リン光体粒子を含む安全管理用製品を提供すること。
【解決手段】 安全管理用製品は、0.1μmから10μmの体積平均粒径を有するとともに球状の形態である粒子であって、その少なくとも70体積パーセントが前記平均粒径の2倍以下である粒子を含む。それにより、安全管理を目的とした種々の製品を提供可能となり、しかも、粒子の粒径が小さく、かつ粒径分布も狭いので、得られるフィーチャーのサイズ及び複雑さを容易に制御できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍リン光粉体、蛍リン光粉体の製造方法、ならびに、表示装置などの、該粉体を使用した装置に関するものである。詳細には、本発明は、高度に制御された化学的及び物理的性質を有する蛍リン光粉体に関する。本発明は更に、スプレイ転換法によりこうした粉体を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍リン光体は外部のエネルギー源による励起により可視及び/または紫外線領域の電磁放射の有用量を放射する化合物である。この性質のため、蛍リン光化合物はテレビの陰極線管(CRT)スクリーン、発光素子や他の装置において長く使用されてきた。一般に無機蛍リン光化合物には少量の活性剤イオンをドープしたホスト材料が含まれる。
【0003】
蛍リン光粉体には、粉体の特定の用途に応じて異なる多くの条件が求められる。一般に蛍リン光粉体は、次の性質の内の1以上を有さなければならない。すなわち、高純度、高結晶度、小粒径、狭い粒径分布、球形状性、制御された表面の化学的性状、活性剤イオンの均一な分布、及び制御された多孔度である。これらの性質を適当に組合せることにより、蛍リン光強度が高く、寿命の長い、多くの用途に使用することが可能な蛍リン光粉体が得られる。また、表面を薄く均質な誘電体や半導体皮膜にて不動態化すなわちコーティングした蛍リン光粉体は多くの用途において有利である。
【0004】
蛍リン光粉体は、蛍リン光を発生させる励起の機構によって分類することが可能である。この点に関して、蛍リン光粉体を、陰極ルミネセンス、光ルミネセンス、エレクトロルミネセンス、または、X線蛍リン光体に分類することが可能である。
【0005】
陰極ルミネセンス蛍リン光粉体は、蛍リン光粉体が、通常は高エネルギー電子源である電子源によって励起されることにより発光する。例として、陰極ルミネセンス蛍リン光粉体はCRT装置に使用されている。最近では、陰極ルミネセンス蛍リン光粉体は、文字、グラフィックやビデオ出力が発光する先進的な表示装置に使用されている。詳細には、電界放出ディスプレイ(FED)などのフラットパネルディスプレイの分野が急速に発展しつつある。FEDは、先端から放射される電子によって刺激された蛍リン光体が、予め選択された色の光を放射するという作動原理においてCRTに似ている。
【0006】
光ルミネセンス蛍リン光粉体は、波長の異なる光(光子)によって励起されると光を放射する蛍リン光粉体である。例として、光ルミネセンス蛍リン光粉体は、一般的な産業用発光素子を含む蛍光要素に使用される。光ルミネセンス蛍リン光体は、ディスプレイスクリーンのバックライトとしても使用される。
【0007】
より最近では、光ルミネセンス蛍リン光粉体は、プラズマディスプレイなどの先進的な表示装置において使用されている。プラズマディスプレイパネルでは、複数の透明な層の間に封入されたガスが用いられ、このガスが電場によって励起されることにより紫外線を放射する。この紫外線がスクリーン上の光ルミネセンス蛍リン光体を刺激すると可視光が放射される。プラズマディスプレイは、対角線の長さが約20インチよりも大きい大型の表示装置において特に有用である。更に、光ルミネセンス蛍リン光粉体を、機密文書、貨幣、郵便物などの製造品の識別手段として使用することも可能である。
【0008】
エレクトロルミネセンス蛍リン光粉体は、電場によって励起されると発光する。エレクトロルミネセンス蛍リン光粉体は、厚膜及び薄膜エレクトロルミネセンスディスプレイなどのフラットパネルディスプレイにおいて使用することも可能である。薄膜及び厚膜エレクトロルミネセンスディスプレイ(TFEL)では、電場内で発光するガラス板と電極との間に封入されたエレクトロルミネセンス材料の薄膜が用いられる。エレクトロルミネセンス蛍リン光粉体は、エレクトロルミネセンスランプ(EL)においても用いられる。エレクトロルミネセンスランプでは、エレクトロルミネセンス蛍リン光粉体は高分子基板上に付着させられ、電場の作用によって発光する。
【0009】
X線蛍リン光粉体は、特に医療用装置のための光増幅器に使用される。
蛍リン光体粒子を製造するための多くの方法が提案されている。こうした方法の1つに固体法と呼ばれるものがある。この方法では、蛍リン光体の前駆物質を固体の状態に混合して加熱することにより、この前駆物質が反応して蛍リン光物質の粉体が形成される。例として、カセンガ(Kasenga)等に付与された特許文献1には、マンガン活性化珪酸亜鉛蛍リン光体(ZnSiO:Mn)の製造方法が開示されている。この方法では、酸化亜鉛、珪酸、及び炭酸マンガンなどの開始成分の混合物を乾燥配合し、この配合混合物を約1250℃で焼成する工程が行われる。得られた蛍リン光体はより小さな粒子に破砕または粉砕される。固体法や他の多くの製造方法では、磨砕工程を行って粉体の粒径を小さくする。この機械的磨砕工程によって蛍リン光体の表面が損傷し、死層が形成されて、蛍リン光粉体の輝度が損なわれる。
【0010】
蛍リン光粉体は、液体沈殿法によっても製造される。こうした方法では、蛍リン光体粒子の前駆物質を含む溶液を化学的に処理して蛍リン光体粒子または蛍リン光体粒子前駆物質を沈殿させる。通常これらの粒子を高温でか焼して蛍リン光化合物を生成する。この粒子は固体法における場合と同様、しばしば更なる粉砕を必要とする。
【0011】
更なる別の方法においては、蛍リン光粒子の前駆物質または蛍リン光体粒子を溶液中に拡散させ、これをスプレイ乾燥させて液体を蒸発させる。次いでこの蛍リン光粒子を高温で固体状に焼結して粉体を結晶化させて蛍リン光体を得る。例として、リツコ(Ritsko)等に付与された特許文献2には、酸化イットリウムを酢酸ユーロピウム溶液に拡散させてスラリーとし、これをスプレイ乾燥することによってY:Eu蛍リン光体を製造する方法が開示されている。スプレイ乾燥した粉体は、約1000℃にて2時間、更に1600℃にて約4時間か焼することによって酸化物に転換される。次いでこのか焼した粉体を軽く粉砕して清浄化し、有用な蛍リン光体粒子を回収する。
【0012】
マツダ(Matsuda)等に付与された特許文献3には、最大で20μmの平均粒径を有する蛍リン光粉体が開示されている。この蛍リン光体には、希土類酸化物、希土類オキシスルフィド、及びタングステン酸塩が含まれる。この粒子は、蛍リン光体粒子を熱プラズマ中で融合させ、急速に冷却することによって製造される。
【0013】
上記の技術にも関わらず、様々な用途において高度に制御された性質を有する蛍リン光粉体が依然求められている。所望の性質としては、一般に、高いルミネセンス強度、ほぼ球状の形状を有する粒子、粒径分布が狭いこと、高い結晶度ならびに良好な均質性などが挙げられる。粉体は良好な拡散性、及び均一な厚さを有する薄層に加工できる性能を有する必要がある。これらの性質を備えた蛍リン光粉体は表示装置及び他の先進的用途において特に有用であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第4925703号明細書
【特許文献2】米国特許第4948527号明細書
【特許文献3】米国特許第5644193号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、小粒径、球形形状、及び良好な結晶度を有する蛍リン光体を含む改良された粉体バッチを提供するものである。本発明は更に、こうした粉体バッチを使用した、高度な表示装置や発光要素などの蛍リン光粉体バッチならびに装置の製造方法を提供するものである。
【0016】
特に、光ルミネセンス蛍リン光体粒子を含む安全管理用製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の目的を解決するために、請求項1に記載の発明は、光ルミネセンス蛍リン光体粒子を含む安全管理用製品であって、粒子は、0.1μmから10μmの体積平均粒径を有するとともに球状の形態をしており、かつ粒子の少なくとも70体積パーセントが平均粒径の2倍以下である、安全管理用製品、を提供する。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の安全管理用製品において、蛍リン光体粒子は、イットリウム酸化物、イットリウム−ガドリニウム・ホウ酸塩、ケイ酸亜鉛、バリウム・マグネシウム・アルミン酸塩及びアルミン酸バリウムからなる群より選択される化合物を含む、ことをその要旨とする。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の安全管理用製品において、蛍リン光体粒子は、印刷された印の形状である、ことをその要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の安全管理用製品において、製品は通貨の形態である、ことをその要旨とする。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の安全管理用製品において、粒子は、0.3μmから5μmの体積平均粒径を有する、ことをその要旨とする。
請求項6に記載の発明は、請求項2に記載の安全管理用製品において、粒子はイットリウム酸化物を含む、ことをその要旨とする。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の安全管理用製品において、粒子は、Eu、Tb及びそれらの組み合わせからなる群より選択される微量添加物を更に含む、ことをその要旨とする。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項2に記載の安全管理用製品において、粒子はイットリウム−ガドリニウム・ホウ酸塩を含む、ことをその要旨とする。
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の安全管理用製品において、粒子は、Euを更に含む、ことをその要旨とする。
【0023】
請求項10に記載の発明は、請求項2に記載の安全管理用製品において、粒子はバリウム・マグネシウム・アルミン酸塩を含む、ことをその要旨とする。
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の安全管理用製品において、粒子は、Mn及びEuからなる群より選択される微量添加物を更に含む、ことをその要旨とする。
【0024】
請求項12に記載の発明は、請求項2に記載の安全管理用製品において、粒子はアルミン酸バリウムを含む、ことをその要旨とする。
請求項13に記載の発明は、請求項1に記載の安全管理用製品において、粒子の少なくとも90体積パーセントが平均粒径の2倍以下である、ことをその要旨とする。
【0025】
請求項14に記載の発明は、請求項1に記載の安全管理用製品において、粒子は、少なくとも25ナノメートルの平均結晶体サイズを有する結晶体を含む、ことをその要旨とする。
【0026】
請求項15に記載の発明は、請求項1に記載の安全管理用製品において、粒子は1原子パーセント以下の不純物を含む、ことをその要旨とする。
本発明は蛍リン光粉体及び該粉体の製造方法、ならびに該粉体を使用した装置に一般的に関する。蛍リン光体は、電子(陰極ルミネセンス蛍リン光体)、光子(光ルミネセンス蛍リン光体)、電場(エレクトロルミネセンス蛍リン光体)やX線エネルギー(X線蛍リン光体)などのエネルギー源によって刺激した場合に光、一般に可視光、を放射する。特定の蛍リン光体化合物の例を下記に列記した。蛍リン光体化合物の中にはこれらのカテゴリーの2以上に属するものがあることは理解されよう。
【0027】
本発明は一態様において粒子製品を調製するための方法を提供するものである。望ましい粒子状生成物の少なくとも1つの前駆体を含む、液体含有、流動可能な媒体がエアロゾル状に転化され、その媒体の液滴がキャリア・ガス内に分散、懸濁される。次にエアロゾル内の液滴から得られる液体を取り除いて望ましい粒子を分散状態で形成させるようにする。1つの実施形態では、上記粒子を分散状態にある間に組成的あるいは構造的に改変する。組成の改変には例えば粒子をコーティングすることが含まれる。構造の改変には例えば、粒子の結晶化、再結晶化や形態の変化が含まれる。ここでしばしば用いられる粉体という語は本発明による粒子状生成物を指している。しかしながら、粉体という用語はその粒子状生成物が乾燥していたり、あるいはいずれかの特殊な環境になければならないということを意味してはいない。この粒子状生成物は通常は乾燥状態で製造されるが、この粒子状生成物はペーストあるいはスラリなどの湿った環境に置かれてもよい。
【0028】
本発明のプロセスは小さな重量平均粒径を有する細かく分けられた粒子製品の製造に特によく適している。粒子を好ましい重量平均粒径内にすることに加えて、本発明によればこれらの粒子は所望の狭い粒径分布で生産され、それによって多くの使用目的にとって望ましい粒径均一性を提供してくれる。
【0029】
粒径及び粒径分布の制御に加えて、本発明の方法によれば組成、結晶度及び形態の異なる蛍リン光体粒子を製造するうえでの大きな柔軟性が提供される。例として、本発明を使用して単一の相のみかあるいは複数の相を有する多相粒子を含む均質な粒子を製造することが可能である。多相粒子の場合、これらの相は異なる形態で存在し得る。例として、1つの相を別の相の基質全体に均質に分散させることが可能である。また、1つの相によって内部のコアを形成し、別の相によってコアを包囲する被覆を形成することも可能である。以下により詳細に述べられるように他の構成も可能である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、粒径が小さく、かつ狭い粒度分布を有する球形の光ルミネセンス蛍リン光体粒子を含む安全管理用製品が提供された。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明によるプロセスの1つの実施の形態を示すプロセス構成図。
【図2】本発明によるエアロゾル発生装置の1つの実施の形態の横断面図。
【図3】本発明によるエアロゾル発生装置で使用するための49−トランスデューサ配列を示すトランスデューサ取付け板の平面図。
【図4】本発明による超音波発生装置で使用するための400−トランスデューサ配列のトランスデューサ取付け板の平面図。
【図5】図4に示されるトランスデューサ取付け板の側面図。
【図6】図4に示されるトランスデューサ取付け板の単一トランスデューサ取付け板容器の断面を示す部分側面図。
【図7】超音波トランスデューサを取付けるための別の実施の形態を示す断面の部分側面図。
【図8】本発明によるエアロゾル発生装置において使用するためのセパレータを固定するための底部固定板の平面図。
【図9】本発明によるエアロゾル発生装置において使用するためのセパレータの固定を補助する底部固定板を有する液体供給原料ボックスの平面図。
【図10】図9において示される液体供給原料ボックスの側面図。
【図11】本発明によるエアロゾル発生装置内のガスを移送するためのガス管の側面図。
【図12】本発明によるエアロゾル発生装置において使用するための超音波トランスデューサの位置にガスに送り込むために液体供給原料ボックス内に配置されたガス管の部分平面図。
【図13】本発明によるエアロゾル発生装置のためのガス分配構造の1つの実施の形態を示す図。
【図14】本発明によるエアロゾル発生装置のためのガス分配構造の別の実施の形態を示す図。
【図15】本発明によるエアロゾル発生装置のガス分配プレート/ガス管アセンブリの1つの実施の形態の平面図。
【図16】図15において示されるガス分配プレート/ガス管構造の1つの実施の形態の側面図。
【図17】本発明によるエアロゾル発生装置におけるトランスデューサの方向調整の1つの実施の形態を示す図。
【図18】本発明によるエアロゾル発生装置にガスを送り込むためのガス・マニフォルドの平面図。
【図19】図18に示されるガス・マニフォルドの側面図。
【図20】本発明によるエアロゾル発生装置において使用するためのフード構造の発生装置の蓋の平面図。
【図21】図20において示されている発生装置の側面図。
【図22】液滴分類装置を含む本発明によるプロセスの1つの実施の形態のプロセス構成図。
【図23】噴霧の分類で使用するための本発明によるインパクタの断面の平面図。
【図24】図23に示されるインパクタのフロー制御板の前面図。
【図25】図23に示されるインパクタの取付け板の前面図。
【図26】図23に示されるインパクタのインパクタ・プレート・アセンブリの前面図。
【図27】図26に示されるインパクタ・プレート・アセンブリの側面図。
【図28】粒子冷却装置を含む本発明による1つの実施の形態のプロセス構成図。
【図29】本発明によるガス急冷装置の平面図。
【図30】図29に示されるガス急冷装置の端部を示す図。
【図31】図29に示される急冷装置の穴の開いた導管の側面図。
【図32】サイクロンに結合された本発明によるガス急冷装置の1つの実施の形態を示す側面図。
【図33】粒子被覆装置を含む本発明による1つの実施の形態のプロセス構成図。
【図34】粒子改変装置を含む本発明による1つの実施の形態の構成図。
【図35】本発明に従って製造可能ないくつかの複合体粒子の種々の粒子形状の断面を示す図。
【図36】エアロゾル発生装置および火炉の間の乾燥ガスの付加を含む本発明によるプロセスのひとつの実施の形態の構成図。
【図37】従来技術に基づいた表示装置のピクセル領域を示す図。
【図38】本発明の一実施形態に基づいた表示装置のピクセル領域を示す図。
【図39】本発明の一実施形態に基づいたCRT装置を示す概略図。
【図40】本発明の一実施形態に基づいたCRT装置を示す概略図。
【図41】本発明の一実施形態に基づいた電界放出表示装置を示す概略図。
【図42】本発明の一実施形態に基づいたエレクトロルミネセンス表示装置の概略断面図。
【図43】本発明の一実施形態に基づいたエレクトロルミネセンス表示装置の展開図。
【図44】本発明の一実施形態に基づいたエレクトロルミネセンス灯を示す図。
【図45】本発明の一実施形態に基づいたプラズマ表示パネルを示す概略図。
【図46】本発明の一実施形態に基づいた蛍光発光要素を示す概略図。
【図47】本発明の一実施形態に基づいた発光要素管上に分散された光ルミネセンス蛍リン光粉体を示す概略図。
【図48】本発明の一実施形態に基づいたX線画像強調装置の使用を示す図。
【図49】本発明の一実施形態に基づいたX線画像強調装置の断面図。
【図50】本発明の一実施形態に基づいた蛍リン光粉体を示す走査型電子顕微鏡写真。
【図51】本発明の一実施形態に基づいた蛍リン光粉体の粒径分布を示す図。
【図52】本発明の一実施形態に基づいた蛍リン光粉体のX線回折パターンを示す図。
【図53】本発明の一実施形態に基づいた蛍リン光粉体の走査型電子顕微鏡写真。
【図54】本発明の一実施形態に基づいた蛍リン光粉体の粒径分布を示す図。
【図55】本発明の一実施形態に基づいた蛍リン光粉体のX線回折パターンを示す図。
【図56】本発明の一実施形態に基づいた蛍リン光粉体の走査型電子顕微鏡写真。
【図57】本発明の一実施形態に基づいた蛍リン光粉体の走査型電子顕微鏡写真。
【図58】本発明の一実施形態に基づいた蛍リン光粉体の粒径分布を示す図。
【図59】本発明の一実施形態に基づいた蛍リン光粉体の走査型電子顕微鏡写真。
【図60】本発明の一実施形態に基づいた蛍リン光粉体の粒径分布を示す図。
【図61】本発明の一実施形態に基づいた蛍リン光粉体のX線回折パターンを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1で、本発明のプロセスの1実施形態について述べる。望ましい粒子の少なくとも1種類の前駆体を含む液体供給原料2とキャリア・ガス104がエアロゾル発生装置106に送られて、そこでエアロゾルがつくられる。このエアロゾル108はその後炉110に送られて、エアロゾル108内の液体が除去されて、炉110を出て行くガス内に分散、懸濁された粒子112が生成される。そして、粒子112は粒子回収装置114内に回収されて、粒子状生成物116が生成される。
【0033】
ここで用いられている液体供給原料102はその供給原料が流動性の媒体であるように、流動可能な1つまたは複数の液体を主成分として含んでいる。液体供給原料102は液体成分だけで構成される必要はない。液体供給原料102は1つまたは複数の液相だけで構成されていてもよいし、液相に懸濁された粒子状物質を含んでいる場合もある。しかしながら、液体供給原料102は霧化されてエアロゾル108を形成するために充分に小さな粒径の液滴を形成することができなければならない。従って、液体供給原料102が懸濁された粒子を含んでいる場合は、これらの粒子はエアロゾル108内の液滴の粒径と比較して相対的に小さくなければならない。こうした懸濁粒子は通常粒径が1μmよりも小さく、好ましくは約0.5μmより小さく、より好ましくは約0.3μmよりも小さく、そして最も好ましくは約0.1μmよりも小さい粒径である。最も好ましくは、この懸濁された粒子はコロイド状である。懸濁された粒子は細かに分割された粒子、あるいは団粒化されたより小さな一次粒子で構成される団粒物質であってもよい。例えば、0.5μmの粒子はナノメートル・サイズの一次粒子の団粒であってもよい。液体供給原料102が懸濁された粒子を含んでいる場合、その粒子は通常液体原料の約10重量パーセント未満である。
【0034】
上に示したように、液体供給原料102は粒子112調製のための少なくとも1つの前駆体を含んでいる。前駆体は液体供給原料102の液相あるいは固相の物質である。しばしば、この前駆体はその液体供給原料102内の液体溶媒内に溶解された塩などの物質である。この前駆体は炉内部で、粒子112の生成に役立つ1つまたは複数の反応を受ける。また、前駆物質は化学反応を受けずにその粒子112の形成に寄与する場合もある。これは、例えば、液体供給原料102が前駆物質として炉110内部で化学的な修飾を受けない懸濁された粒子を含んでいる場合などである。いずれにせよ、粒子112は少なくともその前駆体にもともと起因する少なくとも1つの成分を含んでいる。
【0035】
液体供給原料102は複数の前駆体物質を含んでおり、それは単一の相に共に存在している場合もあれば、複数の相に個別に存在している場合もある。例えば、液体供給原料102は1つの液体媒体内に複数の前駆体を溶けた状態で含んでいる場合もある。別に、1つの前駆体物質は固体粒子状相であり、第2の前駆体物質が液相であってもよい。また、液体供給原料102が乳濁液で構成されている場合の時など、1つの前駆体物質は1つの液相内にあって、第2の前駆体が第2の液相内にあってもよい。異なる前駆体に由来する異なる成分が単一の材料相中に共存してもよく、粒子112が複数の相の複合体である場合には異なる成分が異なる材料相中に存在してもよい。本発明の蛍リン光体粒子の好ましい前駆体の特定の例を以下に更に詳しく述べる。
【0036】
キャリア・ガス104は液体供給原料102からつくりだされる液滴がエアロゾル形態で分散できるようないずれのガス性媒体で構成されてもよい。更にキャリア・ガス104はそのキャリア・ガスが粒子112の形成に拘わらないという意味で不活性であってもよい。また、このキャリア・ガスは粒子112の形成に関与する1つあるいは複数の活性成分を有していてもよい。その点で、キャリア・ガスは炉110内で反応して粒子112の形成に寄与する1つまたは複数の活性成分を有していてもよい。本発明の蛍リン光体粒子の好ましいキャリア・ガス組成については下記に詳しく述べる。
【0037】
エアロゾル発生装置106は液体供給原料102を霧化して、キャリア・ガス104が液滴を分散させ、エアロゾル108を形成できるような方法で液滴を形成する。この液滴は液体供給原料102からの液体を含んでいるが、液滴は液体によりその液滴中に保持されるような1つまたは複数の小さな粒子などの非液体物質を含んでいてもよい。例えば、粒子112が複合体粒子である場合、その複合体の1つの相が懸濁された前駆体粒子の形状でその液体供給原料内に存在し、その第2の相が炉110内でその液体供給原料102の液相内の1つまたは複数の前駆体からつくりだされてもよい。さらに、単にそれらの粒子を炉110内での処理後、あるいは処理中に行われる組成的あるいは構造的改変のためにそれら分子を分散させるという目的のためだけにそれら前駆体粒子が液体供給原料102内、従ってエアロゾル108の液滴内に含まれるような場合もあるであろう。
【0038】
本発明の1つの重要な態様は小さな平均粒径の、そして粒径分布範囲が狭い液滴でエアロゾル108を発生させることである。こうした方法で、粒子112は望ましい小さな粒径、そして狭い粒径分布でつくりだされ、これは多くの用途のために好適である。
【0039】
エアロゾル発生装置106は約1μm、好ましくは約2μmの下限、そして上限としては約10μm、好ましくは約7μm、より好ましくは約5μm、そして最も好ましくは約4μmの範囲の重量平均粒径を有する液滴を含むようにエアロゾル108を生成することができる。ほとんどの用途において、約2μmから約4μmの範囲の重量平均液滴粒径がより好ましく、用途によっては約3μmの重量平均液滴粒径が特に好ましい。エアロゾル発生装置はまた、より狭い粒径分布にてエアロゾル108をつくりだすこともできる。好ましくは、そのエアロゾル内の液滴は、その液滴の少なくとも約70%(より好ましくは少なくとも約80重量パーセント、そして最も好ましくは少なくとも約85%)の液滴が約10μm、より好ましくは少なくとも約70重量パーセント(より好ましくは少なくとも約80重量パーセント、そして最も好ましくは少なくとも約85重量パーセント)が5μm程度以上である。さらに、好ましくは約30重量パーセント以下、好ましくは約25重量パーセント以下、そして最も好ましくは約20重量パーセント以下の液滴がエアロゾル108内で重量平均液滴粒径の2倍以上の大きさを有している。
【0040】
本発明の別の重要な態様は過剰な量のキャリア・ガス104を消費せずにエアロゾルを発生させることである。エアロゾル発生装置105はそれが液滴形状で高含量あるいは高濃度の液体供給原料102を含むようにエアロゾル108をつくることができる。この点で、エアロゾル108は好ましくはエアロゾル108の1立方センチメートルあたり約1x10個の液滴、より好ましくは1立方センチメートルあたり約5x10個以上の液滴、さらにより好ましくは1立方センチメートルあたり約1x10個の液滴、そして最も好ましくは1立方センチメートルあたり約5x10個の液滴を含んでいる。エアロゾル発生装置106がそうした高含量エアロゾル108をつくりだすことができるというのは液滴平均粒径が小さく、液滴粒径分布が狭い液滴108の高品質を考えれば驚くべきことである。一般的に、エアロゾル内の液滴含量はエアロゾル108内のキャリア・ガス104に対する液体供給原料102の体積比率はエアロゾル108内のキャリア・ガス104の1リットルあたり液体供給原料102が約0.04ミリリットル以上、より好ましくはエアロゾル108内のキャリア・ガス104の1リットルあたり液体供給原料102が約0.083ミリリットル以上、より好ましくはキャリア・ガス104の1リットルあたり液体供給原料102が0.167ミリリットル以上、さらに好ましくはキャリア・ガス104の1リットルあたり液体供給原料102が約0.25ミリリットル以上、そして最も好ましくはキャリア・ガス104の1リットルあたり液体供給原料102が0.333ミリリットル以上である。
【0041】
高含量エアロゾル108をつくりだすエアロゾル発生装置106のこの能力はエアロゾル発生装置106が行うことができる以下に詳細に述べるような高液滴出力量を考えればさらに驚くべきである。エアロゾル108内の液体供給原料102の濃度が液体供給原料102の具体的な成分と属性、特にエアロゾル108における液滴の粒径に依存することは明らかであろう。例えば、平均液滴粒径が2μmから約4μmの範囲であった場合、液滴含量は好ましくはキャリア・ガス104の1リットルあたり液体供給原料102が約0.15ミリリットル以上、より好ましくはキャリア・ガス104の1リットルあたり液体供給原料102が約0.2ミリリットル以上、さらにより好ましくはキャリア・ガス104の1リットルあたり液体供給原料102が約0.2ミリリットル以上、そして最も好ましくはキャリア・ガス104の1リットルあたり液体供給原料102が約0.3ミリリットル以上である。ここでキャリア・ガス104のリットルという場合に、キャリア・ガス104は標準的な温度及び圧力条件下で占める体積を示している。
【0042】
炉110はエアロゾル108の液滴から液体を蒸発させて、粒子112の形成を可能にするためにエアロゾル108を加熱するのに適したいずれの装置であってもよい。最大平均ストリーム温度、あるいは転換温度は炉内を流れている時にエアロゾル・ストリームが達成できる最大平均温度を指している。これは一般的には炉内に挿入される温度プローブで判定される。本発明による蛍リン光体粒子の好ましい転換温度について以下により詳細に述べる。
【0043】
より長い滞留時間を実現することが可能であるが、多くの用途においては炉110内での加熱ゾーンでの滞留時間が一般的には約4秒以下であり、約1〜2秒など約2秒以下であることが好ましくい。しかしながら、この滞留時間は粒子112が与えられた熱伝導率に対して望ましい最大ストリーム温度を必ず達成するのに十分な長さでなければならない。この点で、滞留時間が非常に短い場合は、粒子112が望ましい温度範囲内で最大温度を達成できる限り、熱伝導率を増大させるためにより高い炉温度を用いることができるであろう。しかしながら、こうした作動モードは好ましくない。また、ほとんどの場合、炉110内の加熱ゾーンのほぼ終わりに来るまでは炉110内で最大ストリーム温度が達成されないようにするのが好ましい。例えば、加熱ゾーンはしばしばそれぞれ個別的に制御可能な複数の加熱部を有している場合がある。最大ストリーム温度は通常は最後の加熱部に来るまでは達成されるべきではなく、そしてより好ましくはその最後の加熱部の終わりに達するまで達成されるべきではない。これは材料の伝熱損失の可能性を減らす上で重要である。また、本明細書で使われる場合、滞留時間とは1つの材料が関連する処理装置を通過するための実際の時間を意味している。炉の場合、これは加熱によるガス膨張による速度の増大効果も含んでいる。
【0044】
通常、炉110はチューブ状の炉であり、従って、炉内に流入し、それを通過するエアロゾル108はその上で液滴が集められてしまうような鋭角的な突起部分には遭遇しない。鋭角的な表面での凝集で液滴が失われると、粒子112の収量が低下してしまう。しかしより重要なのは、鋭角的なエッジ部分で液体が蓄積されると望ましくない程度の多量の液滴がエアロゾル108内に再放出されてしまう場合があり、これは望ましくない程度に大型の粒子による粒子状生成物の汚染を引き起こしてしまう場合がある。また、時間が経過すると、鋭角的な表面でのそうした液体回収は処理装置の汚損を引き起こしたり、処理性能を損なってしまう場合がある。
【0045】
炉110はいずれの適切な材料でつくられた加熱チューブでも含むことができる。こうしたチューブは例えばムライト、シリカ(石英)、あるいはアルミナなどのセラミック素材であってもよい。また、チューブは金属製であってもよい。金属製チューブを使用することの利点は低コスト、急激な温度勾配、そして大きな熱ショックに耐える能力、加工性及び可溶接性、そしてそのチューブと他の処理装置との間の密封が簡単であることである。金属製チューブの使用に伴う問題点は作動温度に限界があること、そして一部の反応システムで反応性が増大することである。本発明において特に有用なチューブの種類としては、内面をアルミナでライニングした金属チューブなどのライニングした金属チューブがある。
【0046】
金属チューブが炉110内で使用される場合、それは好ましくは330ステンレス・チューブなどの高ニッケル含有量ステンレス・スチール合金、あるいはニッケルに基づく超合金である。上に述べたように、金属チューブを用いることの大きな利点の1つは他の処理装置で密封することが比較的簡単であることである。その点で、フランジ取付け具を他の処理装置で密封するためにそのチューブに直接溶接することができる。通常、粒子製造中に約1100℃の最大チューブ壁面温度を必要としない噴霧転換蛍リン光体粒子の場合には金属チューブが好ましい。本発明に基づいた蛍リン光体粒子の場合がこれにあてはまる。
【0047】
また、本発明について好ましい炉反応器を主に参照して説明したが、特に言及のない場合、火炎反応器あるいはプラズマ反応器を含む他の熱的反応器を代わりに用いることができるであろう。しかしながら、均一なストリーム温度を達成する上での炉の全体として均等な加熱特性の故に、炉反応器が好ましい。
【0048】
粒子回収装置114は粒子112を回収して粒子状生成物116を生成するためのいずれの適切な装置であってもよい。この粒子回収装置114の1つの好ましい実施の形態は、ガスからの粒子112を分離するために1つまたは複数のフィルターを用いている。そうしたフィルターはバッグ・フィルターを含め、どんなタイプのものでもよい。粒子回収装置の別の好ましい実施の形態は粒子112を分離するために1つあるいは複数のサイクロンを用いている。粒子発生装置114内で用いることができる他の装置としては静電沈殿装置がある。また、回収は主に粒子112が懸濁されているガス・ストリームの凝縮温度より高い温度で行われるべきである。さらに、回収は粒子112の団粒化を防ぐのに十分な程度に低い温度で行われるべきである。
【0049】
エアロゾル発生装置106は本発明のプロセスの操作にとってかなりの重要性をもっており、これは前にも述べたように高い液滴含量を有する高品質エアロゾルをつくりだすことができなければならない。図2を参照して、本発明によるエアロゾル発生装置106について説明する。エアロゾル発生装置106はそれぞれトランスデューサ・ハウジング122に搭載される複数の超音波トランスデューサ・ディスク120を含んでいる。トランスデューサ・ハウジング122はトランスデューサ取付け板124上に搭載されて、一連の超音波トランスデューサ・ディスク120を形成する。これら超音波トランスデューサ・ディスク120のためにはいずれの適切な間隔を用いてもよい。多くの場合、4センチメートル程度の超音波トランスデューサ・ディスク120の中心間間隔で十分である。図2に示されるように、エアロゾル発生装置106は7x7配列で49個のトランスデューサを含んでいる。このアレイ構成は図3に示す通りで、この図はトランスデューサ取付け板124上に搭載されたトランスデューサ・ハウジング122を示している。
【0050】
さらに図2で、トランスデューサ・ディスク120に対して一定の間隔を置いて配置されたセパレータ126は底部保持板128と上部保持板130との間に保持されている。ガス伝達チューブ132はガス分散マニフォルド134に接続されており、このガス分散マニフォルド134はガス伝達ポート136を有している。ガス分散マニフォルド134は発生装置蓋140で覆われている発生装置本体138内に収容されている。トランスデューサ・ディスク120を駆動するための回路を有するトランスデューサ駆動装置144は電気ケーブル146を介してトランスデューサ・ディスク120と電気的に接続されている。
【0051】
図2に示されているように、エアロゾル発生装置106の作動中、トランスデューサ・ディスク120は電気ケーブル146を介してトランスデューサ駆動装置144によって起動される。トランスデューサは好ましくは約1MHzから約5MHz、より好ましくは1.5MHzから約3MHzの範囲の周波数で振動する。一般に用いられる周波数は約1.6MHz及び約2.4MHzである。さらに、トランスデューサ・ディスク110のすべては狭い液滴粒径分布を有するエアロゾルが望ましい場合、ほぼ同じ周波数で作動されるべきである。これが重要なのは市販されているトランスデューサが厚みで最大10%程度異なる可能性があるからである。しかしながら、トランスデューサ・ディスク120は中央トランスデューサ周波数の5%以上及び以下の範囲内、より好ましくは2.5%以内、最も好ましくは1%の範囲内で作動するのが好ましい。これは、それらがすべて中央トランスデューサ厚みの5%以内、より好ましくは2.5%以内、そして、最も好ましくは1%以内を有するようにトランスデューサ・ディスク120を慎重に選択することで達成することができる。
【0052】
液体供給原料102は供給原料取入口149を通じて流入し、流動経路150を通じて流れ、供給原料取出口152を通じて出て行く。超音波透過性流体、通常水が水取入口154を通じて流入し、水槽容積156を満たし、流動経路158を通じて流れ、水取出口160を通じて出て行く。トランスデューサ・ディスクを冷却し、超音波透過性流体の過熱を防ぐために、超音波透過性流体の流量を適切なレベルに設定することが重要である。トランスデューサ・ディスク120からの超音波信号はその超音波透過性流体を介し、水槽156を通じ、最終的にはセパレータ126を通じて、流動経路150内の液体供給原料102内に到達する。
【0053】
超音波トランスデューサ・ディスク120からの超音波信号により霧化円錐部162はトランスデューサ・ディスク120に対応する位置にて液体供給原料102中で展開する。キャリア・ガス104がガス移送管132内に導入され、ガス移送ポート136を介してその霧化円錐部の近くまで運ばれる。キャリア・ガスの噴流はガス移送ポート136から霧化円錐部162上に衝突するような方向に出て行き、それによって霧化円錐部162から発生中の液体供給原料102の霧化液滴を掃引してエアロゾル108をつくりだし、このエアロゾル108はエアロゾル出口開口部164を通じてエアロゾル発生装置106から出て行く。
【0054】
キャリア・ガス104の効率的な使用はエアロゾル発生装置106の重要な側面である。図2に示されているエアロゾル発生装置106の実施の形態は1つの霧化円錐部162あたり2つのガス出口を有しており、これらのガス出口は霧化円錐部162間に形成されるトラフ上の液体媒体102上に配置されており、出て行くキャリア・ガス104が霧化円錐部162の表面上で水平方向に向けられて、それによって、液滴が超音波でエネルギーを付与された霧化円錐部162の周辺で形成される時に液滴を有効、効率的に掃引するために液体供給原料102の重要な部分にキャリア・ガス104が効率的に分散されるようにする。さらに、少なくとも、それを通じてキャリア・ガスがガス移送管から出て行くそれぞれのガス移送ポート136の開口部の一部はキャリア・ガス104が向けられる霧化円錐部の頂点より下側に位置していることが好ましい。ガス移送ポート136のこうした相対的位置関係はキャリア・ガス104を効率的に用いる上で非常に重要である。ガス移送ポート136の向きも重要である。好ましくは、ガス移送ポート136は霧化円錐部162でキャリア・ガス104の噴流を水平方向に向けるように配置されている。エアロゾル発生装置106は、ガス移送を液滴形成の位置に効率的に向けることができないエアロゾル発生装置設計と異なり、キャリア液体102の液滴の大きな含量を有するエアロゾル108の発生を可能にしてくれる。
【0055】
図2に示してあるように、エアロゾル発生装置106のもうひとつの重要な特徴はセパレータ126の使用であって、これはトランスデューサ・ディスク120をしばしば非常に腐食性が高い液体供給原料102との直接の接触から護るためのものである。セパレータ126のトランスデューサ・ディスク120の頂部より上の高さは通常はできるだけ小さくすべきで、多くの場合、約1センチメートルから約2センチメートルの範囲である。超音波トランスデューサ・ディスク120の頂部より上の流動経路内の液体供給原料の上部はエアロゾル発生装置がセパレータ126を含んでいるかどうかには関係無く、通常、約2センチメートルから約5センチメートルの範囲で、約3−4センチメートルの距離が望ましい。エアロゾル発生装置106はセパレータ126なしでも構成可能であるが、その場合液体供給原料102はトランスデューサ・ディスク120と直接接触しており、腐食性が非常に高い液体供給原料102はしばしばトランスデューサ・ディスク120の早期の故障を引き起こしてしまう場合がある。超音波結合を行わせるために水槽容積156内で超音波透過性流体の使用と組み合わせてセパレータ126を用いると、超音波トランスデューサ120の寿命がかなり延びる。しかしながら、セパレータ126を使用することの1つの難点は霧化円錐部162からの液滴生産の量が減ってしまうことで、その減少量はしばしば液体供給原料102が超音波トランスデューサ・ディスク102と直接接触している構成の場合と比較して2分の1あるいはそれ以下である。しかしながら、セパレータ126を用いても、本発明に従って用いられるエアロゾル発生装置106は上に述べたように高液滴含量のエアロゾルを大量につくりだすことができる。セパレータ126のための適切な材料は、例えば、(Dupont社から市販されているKapton(登録商標)膜)などのポリアミド類、及びその他のポリマー、ガラス、そしてプレキシガラスなどである。セパレータ126に対する主な必要条件は、それが超音波透過性で、腐食に対して抵抗性があり、そして防水性であることである。
【0056】
セパレータ126の使用に代わる1つの代替方式は腐食抵抗性保護皮膜を超音波トランスデューサ・ディスク120の表面上に被覆して、それによって液体供給原料102が超音波トランスデューサ・ディスク120の表面に接触することを防ぐ方法である。超音波トランスデューサ・ディスク120が保護皮膜を有している場合は、エアロゾル発生装置106は通常水槽容積156なしで構成され、液体供給原料102は超音波トランスデューサ・ディスク120上を直接流れることになる。こうした保護皮膜材料の例としては、金、TEFLON(登録商標)、エポキシ類、及び種々のプラスチック類である。こうした皮膜は一般的にはトランスデューサの寿命をかなり延長してくれる。また、セパレータ126なしで作動される場合、エアロゾル106は通常、セパレータ126が用いられる場合と比較して大幅に液滴含量が高いエアロゾル108をつくりだす。
【0057】
本発明のエアロゾル発生装置106の作動に関する1つの驚くべき発見は、液体供給原料102の温度及び水槽容積156の温度によってエアロゾル内の液滴含量が影響される場合があることである。液体供給原料102及び/または水槽容積156が昇温状態の水性液体を含んでいる場合、液滴含量はかなり上昇する。液体供給原料102及び/または水槽容積156の温度は好ましくは約30℃以上、より好ましくは35℃以上である。しかしながら、温度が高くなりすぎると、エアロゾル108内の液滴含量に対しては悪影響が生じる。従って、液体供給原料102及び/または水槽容積156の温度は通常は約50℃より低くなければならず、好ましくは約45℃以下である。液体供給原料102または水槽容積156をいずれの適切な方式ででも望ましい温度に保持することができる。例えば、エアロゾル発生装置106のうちで液体供給原料102がエアロゾル108に転化される部分は定常的な昇温状態に維持することができる。また、液体供給原料102はエアロゾル発生装置106とは切り離されている恒温槽からエアロゾル発生装置106に提供することも可能であろう。
【0058】
超音波トランスデューサのアレイに基づくエアロゾル発生装置106の設計は汎用的であり、種々の特別な用途のための種々の異なった発生装置サイズに対応するために容易に改変することができる。エアロゾル発生装置106は望ましい数だけの複数の超音波トランスデューサを含むように構成されてもよい。しかしながら、より小規模な生産の場合でも、エアロゾル発生装置106は少なくとも9個の超音波トランスデューサを有しており、より好ましくは少なくとも16個の超音波トランスデューサ、そしてさらに好ましくは少なくとも25個の超音波トランスデューサを有している。しかしながら、大規模な生産を行う場合は、エアロゾル発生装置106は少なくとも40個の超音波トランスデューサ、より好ましくは少なくとも100個の超音波トランスデューサ、そしてさらに好ましくは少なくとも400個の超音波トランスデューサを含んでいる。いくつかの大規模な用途においては、エアロゾル発生装置は少なくとも1000個の超音波トランスデューサを有している。
【0059】
図4−21は400個の超音波トランスデューサのアレイを含むエアロゾル発生装置106の構成を示す。先ず図4及び5で、トランスデューサ搭載板124はそれぞれ100個の超音波トランスデューサで構成される4つのサブアレイで配列された400個の超音波トランスデューサの設計と共に示されている。トランスデューサ搭載板124は前に図2を参照して述べた水槽容積156と類似の水槽内の超音波透過性流体、一般的には水を保持するための一体化された垂直方向壁172を有している。
【0060】
図4及び5に示されているように、400個のトランスデューサ取付け用レセプタクル174が望ましいアレイのための超音波トランスデューサを搭載するためにトランスデューサ取付け板124内に設けられている。図6に、1つのトランスデューサ取付け用レセプタクル174の側面図が示されている。取付けシート176は搭載のために超音波トランスデューサを受容し、取付けられた超音波トランスデューサはねじ穴178を介して所定の場所に固定される。取付け用レセプタクル176に対面してフレアーの入った開口部180が設けられ、その開口部180を通じて、上に図2に関連して述べたようにエアロゾル108を発生させる目的で超音波信号を発信することができる。
【0061】
さらに、トランスデューサ取付け板124の別の構成のための好ましいトランスデューサ取付け構成を図7に示す。図7に示されているように、超音波トランスデューサ・ディスク120はネジ溝を切ったレセプタクル179内にねじ込まれる圧縮ネジ177を使用してトランスデューサ取付け板124に取付けられる。圧縮ネジ177は超音波トランスデューサ・ディスクに力を加えて、トランスデューサ取付け板上のO−リング・シート182内に配置されているO−リング181を圧縮させてトランスデューサ取付け板124と超音波トランスデューサ・ディスク120間に密封状態を形成する。超音波トランスデューサ・ディスク120に対するO−リングの密着が保護シールの外側端部の内側にあって、液体が超音波トランスデューサ・ディスク120の端部から保護用表面皮膜の下側に入りこむのを防ぐので、上に述べたように、このタイプのトランスデューサ取付けは超音波トランスデューサ・ディスク120が保護用表面皮膜を含んでいる場合に特に好ましい。
【0062】
図8で、400個のトランスデューサのアレイのための底部保持板128はトランスデューサ取付け板124と(図4−5に示すように)係合する構成を有する。底部保持板128は80個の開口部を有しており、これらの開口部はそれぞれ20の開口部184で構成される4つのサブグループ186で構成されている。底部保持板128がトランスデューサ取付け板124と係合してトランスデューサ取付け板124と底部保持板128との間に水槽のための容積空間をつくりだす場合、これらの開口部184のそれぞれは(図4−5に示すように)5つのトランスデューサ取付け用レセプタクルに対応する。従って、開口部184は超音波トランスデューサによって発生された超音波トランスデューサ信号が底部保持板を通じて発信されるための経路を与える。
【0063】
図9及び10で、400−トランスデューサ・アレイのための液体供給原料ボックス190は(図8に示される)底部保持板126上に取付けるように設計された上部保持板130を有しており、セパレータ126(図示せず)がエアロゾル発生装置106が組み立てられた場合に底部保持板128と上部保持板130との間に保持される状態で示されている。液体供給原料ボックス190はエアロゾル発生装置の作動中に液体供給原料102を受け入れるための垂直方向に延びた壁面192を含んでいる。図9及び10に供給原料取入れ口148と供給原料取出し口152が示されている。調節可能な堰198はエアロゾル発生装置106の作動中、液体供給原料ボックス190内の液体供給原料102の液位を判定する。
【0064】
液体供給原料ボックス190の上部保持板130は80の開口部194を有しており、これらはそれぞれ20の開口部194で構成される4つのサブグループ196で配列されている。上部保持板130の開口部194はサイズが(図8に示す)底部保持板128の開口部184と対応している。エアロゾル発生装置106が組み立てられると、上部保持板130の開口部194と底部保持板128の開口部184の位置が揃えられ、セパレータ126がその間に配置されて、エアロゾル発生装置106が作動中、超音波信号が通過できるようにする。
【0065】
図9−11で、複数のガス管フィードスルー孔202が垂直方向に延びた壁面を通じて液体供給原料ボックス190の供給原料取入れ口148と供給原料取出し口152を含むアセンブリのいずれかの側に延びている。ガス管フィードスルー孔202はそれを通じて図11に示す設計を有するガス管208を挿入できるように設計されている。エアロゾル発生装置106が組み立てられると、ガス管208が各ガス管フィードスルー孔202を通じて挿入され、エアロゾル発生装置106の作動中に液体供給原料ボックス190内に展開する霧化円錐部にガスを移送するために、ガス管208内のガス移送ポート136が適切に配置され、上部保持板130内の開口部194に近接した位置の近くに位置的に合わせられる。ガス移送ポート136は通常約1.5ミリメートルから約3.5ミリメートルの範囲の孔である。
【0066】
図12は液体供給原料190の部分図で、ガス管208A、208B、及び208Cは上部保持板130の開口部194に近接して配置される。図12には、エアロゾル発生装置106が組み立てられた場合に超音波トランスデューサ・ディスク120が占有する相対的な位置も示されている。図12に示されているように、上記アレイの端部にあるガス管208Aは5つのガス移送ポート136を有している。ガス移送ポート136のそれぞれはキャリア・ガス104をエアロゾル発生装置106の作動時に超音波トランスデューサ・ディスク120の上部に展開されるそれぞれの霧化円錐部に移送する。上記アレイの端部から延びるガス管208Bはガス管208の両側にそれぞれ5個ずつ、全部で10個のガス移送ポート136を有する短い管である。従って、ガス管208Bは10個の超音波トランスデューサ・ディスク120のそれぞれに対応する霧化塩水分にガスを移送するためのガス移送ポート136を有している。第3のガス管208Cは10個の超音波トランスデューサ・ディスク120に対応する霧化円錐部にガスを移送する10個のガス移送ポート136も有しているより長めの管である。従って、図12に示される構成は1個の超音波トランスデューサ・ディスク120あたり1つのガス移送ポートを含んでいる。この場合のガス移送ポート136の密度は1つの超音波トランスデューサ・ディスク120あたり2つのガス移送ポートを含む図12に示すエアロゾル発生装置106の実施の形態の場合より低いが、図12に示す構成はそれでもガスを不必要に浪費することなく、高密度、高品質のエアロゾルをつくりだすことができる。
【0067】
図13に、図11に示されているガス分散構成におけるガス管208A、208B、及び208Cに関して示されているように、ガス管208の両側に配置されたガス移送ポートからキャリア・ガス104を移送するためのガス分散構成を有するエアロゾル発生装置106の作動中の霧化円錐部162に対するキャリア・ガス104の流れを示している。キャリア・ガス104はガス管208のそれぞれからの両方の方向を掃引する。
【0068】
キャリア・ガス104の別の、そして好ましい流れを図14に示す。図14に示されるように、キャリア・ガス104は各ガス管208の一方の側だけから移送される。これによって、すべてのガス管208から中心部212に向けてのキャリア・ガスの掃引をもたらす。これによってエアロゾル発生のより均一なパターンがもたらされ、これはエアロゾルをつくるためのキャリア・ガス104の使用効率を大幅に向上させる。従って、発生されるエアロゾルには液体液滴がより多く含まれる傾向がある。
【0069】
エアロゾル発生装置106内でキャリア・ガスを分散させるための別の構成を図15及び16に示す。この構成においては、ガス管208はガス移送プレート216のガス・フロー穴218に近接したガス分散プレート216から吊り下げられている。エアロゾル発生装置106内で、ガス分散プレート216は液体供給原料上に取付けられ、ガス・フロー穴はその下側の超音波トランスデューサと対応して配置されている。図16で、超音波発生装置106が作動中、霧化円錐部162はガス管208内のポートから延びたキャリア・ガス104が霧化円錐部に衝突し、ガス・フロー穴を通じて上方に流れるようにガス・フロー穴218を通じて展開する。従って、ガス・フロー穴218はエアロゾル形成のために霧化円錐部162の周辺にキャリア・ガス104を効率的に分散させるのを支援するように機能する。なお、ガス分散プレート218はいずれの数のガス管208及びガス・フロー穴218にでも対応できるようにすることができる。説明の都合上、図15及び16に示される実施の形態は2つのガス管208と16個のガス・フロー穴218だけを有している構成を示している。また、ガス管208なしで、ガス分散プレート216だけを単独で使用することも可能であろう。その場合、エアロゾル発生を効率的に行うために、ガス分散プレート216の下側でキャリア・ガス104の圧力は若干の陽圧に維持され、ガス・フロー穴218はガス・フロー穴218を通じてのキャリア・ガス104の適切な速度を維持するように大きさが調節される。しかしながら、そのモードで作動させるのは相対的に複雑であるので、こうした構造は好ましくない。
【0070】
霧化円錐部がキャリア・ガスの流れと同じ方向に向くように超音波トランスデューサを多少の角度を設けて取付け、その結果として霧化円錐部でのキャリア・ガスを方向調節することによってもエアロゾル発生の効率を向上させることができる。図17に超音波トランスデューサ・ディスク120を示す。超音波トランスデューサ・ディスク120は一定の角度114(通常は10度以下)の角度で傾斜されているので、霧化円錐部162も一定の角度で傾斜している。霧化円錐部162で方向付けられるキャリア・ガス104の流れの方向は霧化円錐部162の傾きの方向と同じ向きである。
【0071】
図18及び19で、400−トランスデューサ構成でガス管208に対してガスを送るためのガス・マニフォルド220が示されている。ガス・マニフォルド220はガス流通ボックス222と(図11に示す)ガス管208との接続のための配管スタブ222を含んでいる。ガス流通ボックス222内にガスをガス流通ボックス222全体に均等に流通させるのに役立つ流路を形成する2つのガス流通プレート226があり、ガスを配管スタブ224を通じての均等な移送を促進している。図18と19に示されているガス・マニフォルド220は11本のガス管208にガスを供給するように設計されている。400−トランスデューサ設計の場合、全部で4つのガス・マニフォルドが必要となる。
【0072】
図23と24で、400−トランスデューサ・アレイ設計の場合の発生装置蓋140が示されている。発生装置蓋140は(図9及び10に示されている)液体供給原料ボックス190と係合して、それを覆っている。発生装置蓋140は図20と21に示されているようにフードを有していて、その上で液滴が合体して失われたり、あるいはエアロゾル発生装置の正常な作動を妨害してしまう可能性もある鋭角的なエッジにエアロゾル108内の液滴が曝されずにエアロゾル108が簡単に回収できるようにしている。エアロゾル発生装置106が作動中、エアロゾル108は発生装置カバー140のエアロゾル出口開口部164を介して引き出されることになる。
【0073】
炉110に送られるエアロゾル・スチームは、多くの産業用途において必要とされるような高い液滴流速及び高液滴含量を有する。本発明によれば、上記炉に供給されるエアロゾル・スチームは好ましくは1時間あたり0.5リットル以上、より好ましくは1時間あたり約2リットル以上、そしてさらに好ましくは1時間あたり約5リットル以上、さらに好ましくは1時間あたり約10リットル以上、特に、1時間あたり約50リットル以上、そして最も好ましくは1時間あたり約100リットル以上の液滴流量を含んでおり、液滴含量はキャリア・ガス1リットルあたり約0.04ミリリットル以上、好ましくは1リットルのキャリア・ガス104あたり約0.083ミリリットル以上の液滴、より好ましくは1リットルのキャリア・ガス104あたり約0.167ミリリットル以上、さらに好ましくは1リットルのキャリア・ガス104あたり0.25ミリリットル以上、特に1リットルのキャリア・ガス104あたり0.33ミリリットル以上、そして最も好ましくは1リットルのキャリア・ガス104あたり約0.83ミリリットル以上である。
【0074】
上記の他、本発明に基づけば、液体供給材料中の前駆体の濃度を調節するための手段が与えられることが有利であることが示されている。より詳細には、エアロゾル製造の際、前駆体溶液は、液体から選択的に水が蒸発するために濃度が高まる場合があることが示されている。したがって、この液にほぼ連続的または周期的に水を供給することが望ましい。場合により、液から前駆体が選択的に蒸発するような場合には少量の前駆体を加えることも必要な場合がある。
【0075】
本発明によるエアロゾル発生装置106は比較的狭い粒径分布を有する微小粒径の液滴の濃縮された高品質エアロゾルをつくりだす。しかしながら、多くの用途に対しては、本発明のプロセスは液滴を炉110内に導入する前にエアロゾル108内の液滴をさらに粒径で分類することによってその効率がさらに向上される。こうした方法で、粒子状生成物116内の粒子の粒径と粒径分布はさらに制御される。
【0076】
図22はそうした液滴分類を含む本発明によるプロセスの1つの実施の形態を含むプロセス・フロー図である。図22で、エアロゾル発生装置106からのエアロゾル108は液滴分類装置280に送られ、そこで大き過ぎる液滴はエアロゾル108から取り除かれて分類されたエアロゾル282がつくられる。除去された大き過ぎる液滴からの液体284は液滴分類装置280から引き出される。引き出された液体284は追加的な液体供給原料102の調製で使用するために好適に再循環される。
【0077】
所定の粒径以上の液滴を除去するために、いずれの適切な液滴分類装置でも用いることができる。例えば、過剰粒径の液滴を除去するためにサイクロンを用いることができる。しかしながら、多くの用途にとっての好ましい液滴分類装置はインパクタである。本発明で使用するためのインパクタの1つの実施の形態を図23−27を参照して以下に示す。
【0078】
図23に示されるように、インパクタ288はフロー電通管286内に配置されたフロー制御プレート290とインパクタ・プレート・アセンブリ292を有している。このフロー制御プレート290は取付け板294上に簡便に取付けられる。
【0079】
フロー制御プレート290はドレイン296及び314を通じて除去するためにインパクタ・プレート・アセンブリ292上に大きすぎる粒径の液滴が適切に衝突するようにする上で望ましい制御された流動特性を有する方法で、上記インパクタ・プレート・アセンブリ292の方向へのエアロゾル・ストリームの流れを導くために用いられる。フロー制御プレート290の1つの実施の形態を図24に示す。フロー制御プレート290はエアロゾル108の流れを望ましい流動特性でインパクタ・プレート・アセンブリ292の方向に導くための一連の円形フロー・ポート296を有している。
【0080】
取付け板294の詳細を図25に示す。取付け板294は取付けフランジ298を有しており、大径フロー開口部300がそれを開けられてエアロゾル18が(図24に示す)フロー制御プレート290のフロー・ポート296にアクセスできるようにしている。
【0081】
図26及び27で、インパクタ・プレート・アセンブリ292の1つの実施の形態が示されている。インパクタ・プレート・アセンブリ292はインパクタ・プレート302とフロー伝導管286の位置側にインパクタ・プレート302を取付けるために用いられる取付けブラケット403及び306を含んでいる。インパクタ・プレート302とフロー・チャンネル・プレート290は所定の粒径以上の液滴がそれらの粒子が流動方向を変えてインパクタ・プレート302周辺を浮遊するには大き過ぎるモーメントを持つように成形されている。
【0082】
インパクタ288の作動中、エアロゾル発生装置106からのエアロゾル108は上流フロー制御プレート290を通過して流れる。エアロゾル内の液滴のほとんどはインパクタ・プレート302の周辺を浮遊し、下流フロー制御プレート290を通じて出ていき、分類されたエアロゾル282内に入り込む。エアロゾル108のインパクタ・プレート302の周辺を浮遊するには大き過ぎる液滴はインパクタ・プレート302にぶつかり、ドレイン296を通じて排出され、(図23で示されているように)排出された液体284と共に回収される。
【0083】
図22に示されているインパクタ・プレート302の構成はこのインパクタ・プレート302にとって可能な多数の構成の1つだけを示すものに過ぎない。例えば、インパクタ288がインパクタ・プレート302を通じて垂直に延びるフロー・スリットとは位置的にずれた垂直方向に延びるフロー・スリットを有する上流フロー制御プレート290を含んでいて、フロー制御プレート290とインパクタ・プレート302の間の位置的なずれによる流れの変化についていくには大き過ぎる液滴がインパクタ・プレート302にぶつかって排出されるような構成も可能であろう。他の構成も可能である。
【0084】
本発明の1つの好ましい実施の形態において、液滴分類装置280は通常約15μm以上の大きさの液滴をエアロゾル108から取り除くように、より好ましくは約10μm以上の大きさの液滴を取り除くように、さらに好ましくは約8μm以上の大きさの粒径の液滴を取り除くように、そして最も好ましくは約5μm以上の大きさの液滴を取り除くように構成される。液滴分類装置内の液滴分類粒径は好ましくは約15μm以下、より好ましくは約10μm以下、より好ましくは約8μm以下、そして最も好ましくは約5μm以下である。分類カット・ポイントとも呼ばれる分類粒径はその粒径の液滴の半分が取り除かれ、その粒径の液滴の半分が捕捉されるような粒径のことである。しかしながら、特別な用途に応じて、液滴分類粒径は、例えばインパクタ・プレート302とフロー制御プレート290との間の間隔を変えたり、あるいはフロー制御プレート290内の噴流の速度を増減したりするなどの方法で変えることができる。
【0085】
本発明によるエアロゾル発生装置106は最初に比較的狭い粒径分布の液滴を有する高品質エアロゾル108をつくるので、通常、そのエアロゾル108内の液体供給原料108の約30重量パーセントは液滴分類装置288内で排出液284として取り除かれ、好ましくは約25重量パーセントが取り除かれ、さらに好ましくは約20重量パーセント以下が取り除かれ、そして最も好ましくは約15重量パーセントが取り除かれる。エアロゾル108から除去される液体供給原料102の量をできるだけ少なくすることは高品質粒状生成物116の収率を向上させるために商業的な装置では特に重要である。しかしながら、エアロゾル発生装置106の装置が非常に優れているので、炉に大きすぎる液滴のない望ましい状態を得るうえでインパクタや他の液滴分類装置は使う必要はないことがしばしばである。本発明によるプロセスでは構造や手順の複雑さ、あるいはインパクタの使用に伴う液体損失を回避することができるので、この点は大きな利点である。
【0086】
本発明のプロセスのいくつかの適用例では、粒子112を炉110の出力から直接回収することも可能である。しかしながら、多くの場合は、粒子回収装置114内での粒子112の回収より前に炉110を出ていく粒子112を冷却するのが望ましいであろう。図28に本発明によるプロセスの1つの実施の形態が示されているが、この実施の形態では、炉110から出ていく粒子112が粒子冷却装置320に送られて、冷却された粒子ストリーム322がつくりだされ、それが粒子回収装置114に送られるようになっている。この粒子冷却装置320は粒子112を粒子回収装置114に導入するのに望ましい温度まで冷却することができるものであればいずれの冷却装置であってもよいが、従来の熱交換器構造のものは好ましくない。これは、従来の熱交換器構造は通常高温の粒子が懸濁されているエアロゾル・ストリームを冷たい表面に触れさせるからである。そうした状況では、その熱交換器の冷たい表面上に加熱粒子112が伝熱作用で付着して粒子112のかなりの損失が起きてしまう。本発明によれば、ガス急冷装置が従来の熱交換器と比較して伝熱損失をかなり減らしてくれる粒子冷却装置320として使用するために設けられている。
【0087】
図29−31に、ガス急冷装置330の1つの実施の形態が示されている。このガス急冷装置は冷却装置ハウジング334内に穴の開いた導管332を含んでおり、環状スペース336が冷却装置ハウジング334とその穴の開いた導管332との間に配置されている。急冷ガス取入れボックス338はこの環状スペース336と流体連通しており、その内部にエアロゾル取出し導管340の一部が配置されている。穴の開いた導管332はエアロゾル取出し同感340とエアロゾル取入れ導管342との間に延びている。2つの急冷ガス供給管が上記急冷ガス取入れボックス338の開口部に取付けられている。特に図31で、穴開き管332が示されている。この穴開き管332は複数の開口部345を有している。この穴開き導管332がガス急冷装置330内に組み込まれると、環状スペース336から急冷ガス346が穴開き導管332の内部スペース348に流れ込めるようにする。開口部345は丸い穴として示してあるが、スリットなどどんな形状の穴を用いてもよい。また、この穴開き導管332は多孔性スクリーンであっても差し支えない。2つの熱放射シールド347が炉からの下流への放射熱を防いでいる。しかしながら、ほとんどの例では、炉から下流への熱放射は通常は重要な問題とはならないので、熱放射シールドを用いる必要はないであろう。その使用に伴う粒子損失の故に、熱放射シールド347の使用は好ましくない。
【0088】
さらに、図29−31を参照して、ガス急冷装置330の動作について説明する。作動中、ガス・ストリームに担持され、その内部に分散された粒子112はエアロゾル取入れスペース348を通じてガス急冷装置330に入り、穴の開いた導管332の内部空間に流入する。急冷ガス346は急冷ガス供給管344を通じて急冷ガス取入れボックス338内に導入される。この急冷ガス取入れボックス338に入った急冷ガス346はエアロゾル取出し導管340の外部表面につきあたり、その急冷ガスがらせん上の渦巻き状態で環状スペース336内に流れ込んで、そこで急冷ガスは穴の開いた導管332の壁面の開口部345内を流れる。好ましくは、このガスは上記内部空間348内に流れ込んだ後も一定の渦巻き動作を保持している。このようにして、粒子112はガス急冷装置の壁面への粒子の損失を低いレベルに維持したまま迅速に冷却される。このようにして、急冷ガス346は穴の開いた導管332の周囲、あるいは周辺全体の周辺、そして穴の開いた導管332の全長上の穴の開いた導管332の内部空間348内に半径方向で入り込む。急冷ガス346は高温粒子112と混合してそれを冷却し、この高温粒子はその後冷却された粒子ストリーム322としてエアロゾル取出し導管から出て行く。この冷却された粒子ストリーム322はその後粒子を回収するために粒子回収装置114に送ることができる。この冷却された粒子ストリーム322の温度はより多量の、あるいはより少量のガスを導入するによって制御される。また、図29に示されているように、急冷ガス346は粒子の流れに対しては向流で急冷装置330内に送られる。また、この急冷装置は急冷ガス346が粒子112の流れと同方向の流れにて急冷装置内に送られるように構成されてもよい。ガス急冷装置に送られる急冷ガス346の量はつくられる具体的な物質と具体的な作動条件に依存する。しかしながら、用いられる急冷ガス346の量は粒子112を含むエアロゾル・ストリームの温度を望ましい温度まで低下させるのに十分でなければならない。一般的に、粒子112は少なくとも200℃以下、そして多くの場合それ以下の温度まで冷却される。粒子112をどの程度まで冷却できるかの唯一の限界は、冷却される粒子ストリーム322がそのストリーム内の別の凝集可能な上記と同様水の凝集温度以上でなければならないということである。冷却された粒子ストリーム322の温度は、多くの場合約5℃から約120℃の範囲である。
【0089】
穴の開いた導管322の内部空間に全周及び全長に沿って半径方向に急冷ガスが入り込むので、冷たい急冷ガスのバッファが穴の開いた導管332の内壁に沿って形成され、それによってその穴の開いた導管322の冷たい壁面上への伝熱性付着による高温粒子112の損失が大幅に低減される。作動中、開口部345から出て行き内部空間346内に流入する急冷ガス346は穴の開いた導管332の穴の開いた壁面に向けて径方向外側に向かう方向の穴の開いた導管内での粒子112の伝熱速度より大きな半径方向速度(穴の開いた導管の円形断面中心に向かう半径方向速度)を有していなければならない。
【0090】
図29−31で、ガス急冷装置330はほぼ定常的な断面形状及び面積を有するガス急冷装置を通じての粒子112のための流路を含んでいる。好ましくは、上記ガス急冷装置330を通じての流路は炉110及びエアロゾル108をエアロゾル発生装置106から炉110に移送する導管を通じての流路と同じ断面形状及び面積を有している。しかしながら、1つの実施の形態で、粒子回収装置114に入る前の断面積を減らすことが必要になる場合もある。これは、例えば粒子回収装置が冷却された粒子ストリーム322内のガスから冷却された粒子ストリーム322内の粒子を分離するためのサイクロンを含んでいるような場合である。これは、サイクロン分離装置への高取込み速度が必要であるからである。
【0091】
図32で、ガス流冷装置330の1つの実施の形態がサイクロン分離装置392との組み合わせで示されている。穴の開いた導管322はサイクロン分離装置392に供給するために適切な値まで流速を徐々に高めるために徐々に小さくなる断面積を有している。このサイクロン分離装置392にはサイクロン分離装置392からの最終的なクリーンアップのためのバッグ・フィルター394が取り付けられている。分離された粒子はサイクロン分離装置392からの底流と共に出て行き、いずれの通常の容器内にでも回収することができる。サイクロン分離装置の使用は重量平均粒径が約1μmより大きな粉体に対して特に好ましいが、望ましい程度の分離を行うためには一連のサイクロンが必要になる場合もある。サイクロン分離は重量平均粒径が約1.5μm以上の粒子の場合に特に好ましい。更に高密度の材料に対してサイクロン分離は最も適している。サイクロンを使用して粒子が分離される場合、粒子は組成が約5以上の比重を有するものであることが好ましい。
【0092】
別の実施の形態で、本発明によるプロセスは炉を出て行く粒子の組成の改変を組み込むこともできる。最も一般的には、この組成的改変はその粒子112上で、例えば被覆材で粒子112を被覆するなど、その粒子112の相とは異なった物質相の形成を含んでいる。本発明によるプロセスの、粒子被覆を含む1実施形態を図33内に示す。図33に示すように、炉110を出て行く粒子112は粒子被覆装置350に送られ、そこでその粒子112の外部表面上に被覆が置かれて被覆粒子352が形成され、それによって、粒子状生成物116を調製するために粒子回収装置114に送られる。粒子被覆装置350において用いられる被覆方法について下記により詳細に述べる。
【0093】
さらに図33で、1つの好ましい実施の形態で、粒子112が本発明によるプロセスで被覆されると、粒子112は上にも述べたように本発明によるエアロゾル・プロセスを通じてでも製造される。しかしながら、本発明によるプロセスは液体沈降などの別の経路で異なったプロセスで予め製造された粒子を被覆するためにも用いることができる。液体沈降などの別の経路で製造された粒子を被覆する場合は、その粒子はその製造の時点から粒子が炉110内で乾燥した粒子を形成するためのエアロゾル108を調製するためにスラリー形態でエアロゾル発生装置106内に導入されるのが好ましく、こうして形成された粒子を次に粒子被覆装置350内で被覆することができる。製造の時点から被覆まで粒子を分散状態に保持することで、団粒化と、粒子をエアロゾル発生装置106に供給するために液体供給原料内に再分散する必要がある場合の粒子の再分散に関連した問題を回避することができる。例えば、最初に液体媒体から析出された粒子の場合、エアロゾル発生装置106に対する液体供給原料102を形成するために再懸濁された沈殿粒子を含む媒体を用いることが可能であろう。なお、粒子被覆装置350は炉110の内部的拡張であっても、別個の装置であってもよい。
【0094】
本発明によるさらに別の実施の形態で、炉110内における粒子112の形成に続いて、粒子112を構造的に改変して、望ましい物理的及び化学的性質を付加することができる。図34で、炉110を出て行く粒子112は粒子改変装置360に送られ、そこで粒子は構造的に改変されて改変粒子362を形成し、次にその改変粒子が粒子状生成物116の調製のために粒子回収装置に送られる。この粒子改変装置360は通常は焼成炉などの炉であり、炉110と一体化されていてもよいし、別個の加熱装置であってもよい。いずれにせよ、粒子112をつくるために炉110で要求される条件とは別個に粒子改変にとって適切な条件が提供できるように、粒子改変装置360が炉110からは独立した温度制御を持っていることが重要である。従って、粒子改変装置360は通常粒子112の望ましい構造的及び/または化学的改変を行えるように温度制御された環境と必要な滞留時間を提供する。
【0095】
粒子改変装置360内で行われる構造的改変はその粒子112の結晶構造あるいは形状に対するいずれの改変であってもよい。好ましくは、粒子112は粒子112を更に転換し密度を高めるために、あるいはその粒子112を多結晶型または単結晶型の蛍リン光体に再結晶化させるために、粒子改変装置360内で熱処理する。また、特に複合体粒子112の場合、粒子は異なった物質層の粒子112内で再分散するのに十分な時間焼成してもよい。こうした処理における特に好ましいパラメータを以下により詳細に述べる。
【0096】
本発明によって炉110内でつくられる複合体粒子の最初の形状は、関連する具体的な物質と具体的な処理条件によっていろいろな形態を取り得る。本発明によって製造可能ないくつかの粒子形状の例を図35に示す。これらの形状は、炉110から最初につくられた段階で粒子であってもよく、あるいは粒子改変装置360内での構造改変の結果によるものであってもよい。さらに、この複合体粒子は図35に示すような形状属性の混合であってもよい。
【0097】
本発明のプロセスによるエアロゾル発生について、超音波エアロゾル発生装置を参照して上に述べた。超音波発生装置の使用は、非常に高品質で高密度のエアロゾルが発生されるので、本発明によるプロセスに対して好ましい。しかしながら、いくつかの例で、本発明のプロセスによるエアロゾル発生は具体的な用途に応じて異なった設計構成を有する場合もある。例えば、重量平均粒径が約3μm以上の大きめの粒子が望ましい場合、スプレイ・ノズル噴霧器が好ましい。しかしながら、より小さな粒子を使用する場合、特に約3μm以下の粒子、好ましくは本発明の蛍リン光体粒子においてしばしば望ましい約2μmよりも小さい粒子を使用した装置の場合は、ここに述べられているような超音波発生装置が特に好ましい。その点で、本発明による超音波発生装置は平均粒径が約0.2μmから約3μmの粒子をつくる場合に特に好ましい。
【0098】
超音波エアロゾル発生装置は医療用途や家庭加湿器などに使われているが、スプレイ熱分解粒子製造のための超音波発生装置の使用は主に小規模で実験的な状況に限定されている。しかしながら、図5−24を参照して上に述べた本発明による超音波エアロゾル発生装置は平均粒径が小さく、粒径分布も狭い高品質粉体の商業生産によく適している。この点で、このエアロゾル発生装置は高液滴付加の高品質エアロゾルを高い生産量でつくりだす。こうした小さな液滴粒径、狭い粒径分布、高液滴付加、そして高生産量の組み合わせは、通常、不十分に狭い粒径分布、望ましくない程度に低い液滴含量、あるいは受け入れられない程度に低い生産量という欠陥の少なくとも1つを抱えている既存のエアロゾル発生装置を上回る利点を有している。
【0099】
本発明による超音波発生装置を慎重で制御可能な設計を通じて、粒径が約1μmから約10μm、好ましくは約1μmから約5μmの粒径範囲、より好ましくは約2μmから約4μmの粒径範囲の液滴の約70重量パーセント以上(そして好ましくは約80重量パーセント以上)を有するエアロゾルを作り出すことができる。
【0100】
また、本発明による超音波発生装置はエアロゾル形態の液体供給原料を高速で提供することができる。上に述べたような高液体含量での液体供給量は好ましくは1つのトランスデューサで1時間あたり約25ミリリットル、より好ましくは1つのトランスデューサで1時間あたり約37.5ミリリットル、さらに好ましくは1つのトランスデューサで1時間あたり50ミリリットル以上、そして最も好ましくは1つのトランスデューサで1時間あたり約100ミリリットル以上である。こうした高レベルの性能は商業運転のためには望ましく、本発明によって超音波トランスデューサ・アレイ上に配置された1つの前駆体槽を含む比較的簡単な設計によって実現される。この超音波発生装置は高液滴含量及び液滴の狭い粒径分布で高い生産量でエアロゾルを生産するためにつくられている。この発生装置は好ましくは1時間あたり液滴0.5リットル以上の割合で、より好ましくは1時間あたり液滴約2リットル以上の割合で、さらに好ましくは1時間あたり液滴約5リットル以上の割合で、さらに好ましくは1時間あたり液滴約10リットル以上の割合で、そして、最も好ましくは1時間あたり液滴約40リットル以上の割合でエアロゾルを生産する。例えば、図7−24を参照して説明したようにエアロゾル発生装置が400個のトランスデューサを有している構成の場合、エアロゾル発生装置は、好ましくは1時間あたり液体供給原料10リットル以上の総生産量、より好ましくは1時間あたり液体供給原料約15リットル以上、さらに好ましくは1時間あたり液体供給原料20リットル以上、そして最も好ましくは1時間当たり液体供給原料約40リットル以上の総生産量で上に述べたような高液滴含量を有する高品質エアロゾルを生産することができる。
【0101】
ほとんどの操作条件下で、こうしたエアロゾル発生装置を用いると、つくられるすべての粒子状生成物の総生産量は好ましくは1つのトランスデューサで1時間あたり約0.5グラム以上、より好ましくは1つのトランスデューサで1時間あたり約1.0グラム以上、そして最も好ましくは1つのトランスデューサで1時間あたり2.0グラム以上である。単位時間当たりに生成する粉体の質量はその化合物の分子量に影響される。
【0102】
粒子状物質を製造するための本発明によるプロセスの1つの重要な側面は実験室規模のシステムと比較しての炉内で発生される独特な流動特性である。本発明による炉110内でのフローに対して達成される最大レイノルズ数は非常に高く、通常は500以上、好ましくは1000以上、そしてより好ましくは2000以上である。しかしながら、ほとんどの例で、この炉内での最大レイノルズ数は10,000を上回ることはなく、好ましくは5,000を上回らない。これは炉内でのフローのレイノルズ数が通常は50以下で、50を超えることはめったにない実験室規模のシステムとは基本的に異なっている。
【0103】
レイノルズ数は流体の流れを特徴付ける無次元量で、円形断面導管を通じてのフローの場合は以下のように定義される。
Re=ρvd/μ
ここで、ρ=流体密度
v=流体平均速度
d=導管内径
μ=流体粘度
なお、密度、速度、及び粘度に関する値は炉110の長さに応じて変化する。
炉110内での最大レイノルズ数は、ガス速度は加熱された場合のガス膨張により非常に高い値であるので、通常、最大レイノルズ数平均ストリーム温度が最大の場合に達成される。
【0104】
高レイノルズ数での流動条件下で作動する場合の問題点の1つは成分の望ましくない揮発が実験室規模のシステムで見られるような流動特性を有するシステムの場合より起こり易いことである。本発明においてこの揮発の問題が起きるのは、その炉が通常熱伝達能力の限界から、炉が定常壁面熱フラックス・モードにおいて加熱ゾーンの実質的な部分で作動されるからである。これは、加熱負荷が十分に小さく、システムが熱伝達上制約を受けないので、均一壁面温度モードで炉の加熱ゾーンのほとんどの作動が通常その作動に関与する実験室規模の炉の操作とはかなり違っている。
【0105】
本発明によれば、通常、粒子製造のために、エアロゾル・ストリームを炉の加熱ゾーンでできるだけ迅速に望ましい温度まで加熱することが望ましい。この炉内での流動特性と熱伝達限度の故に、エアロゾルの急速加熱中に、壁面温度がそのストリームに対しての最大平均目標温度をかなり上回ってしまう場合がある。平均ストリーム温度が望ましい範囲内にあっても、壁面温度が非常に高くなってその壁面に近接した構成部品が非常に高くなり過ぎてその構成部品を不都合に揮発させてしまう可能性があるので、これは問題である。炉の壁面近くの揮発は望ましい粒径範囲外の超微小粒子を大量に発生させてしまう可能性がある。
【0106】
従って、本発明によれば、炉内での流動特性が炉のいずれかの出入り口を通じてのレイノルズ数が500を超えるように、より好ましくは1,000を超えるように、そして最も好ましくは2,000を超えるような場合に、炉内の最大壁面温度が最終的に生成される粒子の望ましい成分が約26.7Pa(200ミリトール)、より好ましくは13.3Pa(100ミリトール)以下、そして最も好ましくは約6.67Pa(50ミリトール)以下の蒸気圧を示す温度以下に保持されるべきである。さらに、炉内の最大壁面温度は最終成分が少なくとも部分的に誘導されるような中間成分が最終生成物の成分に関して示した強度を上回らないような蒸気圧を示すような温度以下に保持されるべきである。
【0107】
炉の壁面温度を揮発化問題が起きてしまうレベル以下に保持することに加えて、これが望ましい平均ストリーム温度を犠牲にしないで達成されることも重要である。最大平均ストリーム温度は粒子が望ましい高密度を有するのに十分な高さのレベルに維持されるべきである。しかしながら、最大平均ストリーム温度は通常は最終的に生成される粒子内の成分、あるいは最終粒子内の成分が少なくとも部分的に誘導される中間成分が約13.3Pa(100ミリトール)、好ましくは約6.67Pa(50ミリトール)、そして最も好ましくは約3.33Pa(25ミリトール)を上回らない蒸気圧を示すような温度である。
【0108】
最大壁面温度と最大ストリーム温度が不都合な揮発化が起きる温度以下に維持されている限り、一般的には、ストリームをできるだけ迅速に加熱して、炉内で最大ストリーム温度が達成されたらできるだけ迅速につくられた粒子を取り出すことが望ましい。本発明の場合、炉の加熱ゾーン内での平均滞留時間は約1〜2秒のような約4秒間以下に通常保たれる。
【0109】
高いエアロゾル流量を含む本発明のプロセスの作動に関する別の重要な問題は最終粒子状生成物内に組み込むことが意図される物質のシステム内での損失である。システム内での物質損失は、システムが適正に稼動されないと極めて高くなる可能性がある。システム損失が高過ぎると、プロセスは多くの物質の粒状生成物の製造での使用には使えなくなる。このことは実験室規模のシステムでは主要な問題として考慮の対象にはされてこなかった。
【0110】
本発明によるプロセスを用いた場合に起こり得る損失の1つの大きな可能性は加熱エアロゾル・ストリームがより冷たい表面上にある場合に起きる伝熱損失である。この点で、前にも述べたように、本発明によるプロセスで急冷装置を使用すると過度に高い伝熱損失を発生させないで粒子を冷却する効率的な方法が提供される。しかしながら、炉の終点近くと、炉と冷却装置間で発生する損失の可能性も存在する。
【0111】
炉の終点近くでの伝熱損失はその炉の加熱ゾーンをその炉の加熱ゾーンの終点近くまで、そして少なくとも加熱ゾーンの最後の3分の1までは最大ストリーム温度が達成されないように作動することによってかなり制御できることが分かっている。加熱ゾーンが複数の加熱部を含んでいる場合、最大平均ストリーム温度は通常最後の加熱部までは発生しない。さらに、加熱ゾーンは通常その炉の終点にできるだけ近くまで延長すべきである。これは通常高温の炉の取出口を密封するため必要を回避するために炉の出口ポイントを低温に維持する従来の考え方とは反対の考え方である。しかしながら、このようにして炉の出口部分を冷却すると伝熱損失がかなり増大する。本発明による炉内では滞留時間が非常に短いことから、炉の終点での伝熱損失につながる可能性のある操作上の問題点は大幅に減少する。
【0112】
通常、エアロゾルは炉を出た途端に冷却されるのが望ましい。これは可能なことではない。しかしながら、炉の出口と冷却装置との間の滞留時間をできるだけ短くすることは可能である。さらに、炉の出口と冷却装置の入口との間にあるエアロゾル導管を断熱することが望ましい。より好ましいのはその導管を断熱し、さらに好ましくは、その導管の壁面温度が少なくともエアロゾル・ストリームの平均ストリーム温度程度の高さになるようにその導管を加熱することである。さらに、冷却中の伝熱損失を防ぐようにエアロゾルが急速に冷却されるような方法で冷却装置が作動することが望ましい。上に述べた急冷装置は低損失で冷却を行う上で非常に有効である。さらに、伝熱損失の可能性を非常に低く保つためには、炉内での最大ストリーム温度の達成とエアロゾルが約200℃以下の平均ストリーム温度に冷却される個所の間のエアロゾル・ストリームの滞留時間が約2秒以下、より好ましくは約1秒以下、さらに好ましくは約0.5秒以下、そして最も好ましくは約0.1秒以下であることが好ましい。多くの場合、炉において実現される最大平均ストリーム温度は約700℃よりも高い。さらに、炉内の加熱ゾーンの開始地点から平均ストリーム温度が約200℃以下となる個所までの総滞留時間が通常約5秒以下、好ましくは約3秒以下、より好ましくは約2秒以下、そして最も好ましくは約1秒以下である。
【0113】
伝熱損失の可能性がある上記プロセスの別の部分は、粒子が最終的に回収されるまでの粒子冷却後である。適切に粒子回収を行うことはシステム内での損失を低下する上で非常に重要である。エアロゾル・ストリーム内の水の不都合な凝縮を防ぐためにエアロゾル・ストリームが依然として昇温状態にあるので、粒子冷却後の伝熱損失の可能性はかなり大きい。従って、粒子回収装置の表面がより冷たいとかなりの伝熱損失につながる可能性がある。
【0114】
粒子が最終的に回収される前の伝熱損失の可能性を減らすためには、冷却装置と粒子回収との間の移送はできるだけ短時間にすることが重要である。好ましくは急冷装置からの出力はすぐにフィルター装置あるいはサイクロンなどの粒子分離装置に送られる。この点で、炉内での最大ストリーム温度の達成と粒子の最終的な回収との間のエアロゾルの総滞留時間は好ましくは約2秒間、より好ましくは約1秒以内、より好ましくは約0.5秒間、そして最も好ましくは約0.1秒間以下である。さらに、炉内の加熱ゾーンでの開始地点と粒子の最終回収地点との間の滞留時間は約6秒間、より好ましくは約3秒間、さらに好ましくは約2秒間、そして最も好ましくは約1秒間以下である。さらに、伝熱損失の可能性は冷却装置と粒子回収装置との間の導管部分を断熱することによって、より好ましくは粒子回収のためにフィルターが用いられる場合は上記フィルター周囲を断熱することによってさらに減少させることができる。さらに、内部機器表面が少なくともエアロゾル・ストリームの平均ストリーム温度よりやや暖かくなるように、冷却装置と粒子回収装置との間で導管部分を加熱することによって損失の可能性がさらに減少される。さらに、粒子回収のためにフィルターを使用する場合は、そのフィルターを加熱することも可能であろう。例えば、断熱は断熱材をフィルター装置に巻きつけて、その断熱層内部の電線でそのフィルター装置の壁面をフィルター装置のフィルター要素の温度より高い望ましい昇温状態にして、それによってフィルター装置の壁面に対する伝熱性粒子損失を減少させることで行うことができるであろう。
【0115】
伝熱損失を減らすために注意深く操作しても、一定の損失は依然として発生するであろう。例えば、一部の粒子はサイクロンやフィルター・ハウジングなどの粒子回収装置の壁面に吸着されて失われるであろう。こうした損失を減らし、その分だけ生成物収量を増大させるための1つの方法は粒子回収装置の内部を定期的に洗浄してその側面にくっついた粒子を除去することである。ほとんどの場合、水が粒子の成分の1つに悪影響を及ぼさない限り、洗浄用の流体は水である。例えば、粒子回収装置は平行回収経路を含んでいてもよい。そうすれば、一方の経路を活性粒子回収に用いつつ、他方を洗浄することも可能である。この洗浄には装置を切り離さないで自動的、あるいは手作業でフラッシングすることも含まれる。また、洗浄されるべき装置を切り離して、徹底的に洗浄するためにその機器の内部にアクセスできるようにしてもよい。平行回収経路を設けることに代わる方法としては、時々そのプロセスを単に中止して、装置を洗浄のために切り離すことができるようにしてもよい。切り離された装置は清潔な装置と取り替えて、切り離された装置の洗浄中にそのプロセスを再開することも可能であろう。
【0116】
例えば、サイクロンあるいはフィルター装置を定期的に切り離して、内壁に付着した粒子を水洗浄で除去することも可能であろう。この粒子をその後、低温乾燥機内で通常約50℃以下の低温で乾燥することができる。
【0117】
このシステム内で損失が発生し得る、従って操作上の問題が発生する可能性のある別の領域はエアロゾル発生装置の取出し口と炉の取入れ口との間である。ここでの損失は伝熱によるものではなく、むしろエアロゾルから発生し、導管及び装置表面に衝突してそこで凝集する液体によるものである。この損失は物質収量の観点からすると望ましくないが、その損失はそのプロセスの他の側面により悪影響を及ぼす可能性がある。例えば、表面に集る水は大型の液滴を発生させる可能性があり、これは粒子状生成物を不都合に汚染させてしまう大型の粒子の発生につながる可能性がある。さらに、蓄積された液体が炉に達すると、その液体は炉管内で過度の温度勾配を発生させてしまい、これが特にセラミックス製炉管の場合に炉管故障を引き起こす可能性がある。システム内での望ましくない液体蓄積の可能性を減らすための1つの方法は、前にも述べたように十分な排出を行うことである。この点で、蓄積された液体が炉に達するのを防ぐために、排出口をできるだけ炉に近づけて配置すべきである。しかしながら、この排出口はストリーム温度が排出個所で約80℃より低くなるように炉の前方の十分に離れた位置に配置されねばならない。
【0118】
望ましくない液体蓄積の可能性を減らす別の方法は、エアロゾル派製装置の取出口と炉の取入口との間の導管をほぼ定常的な断面積及び形状を有するようにすることである。好ましくは、エアロゾル発生取出口から始まり、炉内を通過し、少なくとも冷却装置取入口まで続く導管はほぼ定常的な断面積と形状を有している。
【0119】
望ましくない液体蓄積の可能性を減らす別の方法は、エアロゾル発生装置と炉の取入口との間の導管の少なくとも一部、好ましくはその全長を加熱することである。例えば、この導管を加熱テープで包んでその導管の内壁をエアロゾルの温度より高く保持することは可能であろう。その場合、エアロゾルは伝熱特性から導管の中心に向けて集中する傾向がある。従って、導管壁面あるいは炉への移行部を形成する他の表面にぶつかるエアロゾル液滴はより少なくなる。
【0120】
望ましくない液体蓄積の可能性を減らす別の方法はエアロゾル発生装置と炉との間のエアロゾルに乾燥ガスを導入することである。図36に、炉110に入る前にエアロゾル108に対して乾燥ガス118を加えるプロセスの1つの実施の形態を示す。乾燥ガス118を付加すると、エアロゾル108内の水分の少なくとも一部、好ましくはエアロゾル108内の水分のほとんど全部が蒸発して乾燥したエアロゾル108が形成され、それが炉110内に導入される。
【0121】
乾燥ガス118はほとんどの場合乾燥空気であるが、いくつかの例では、乾燥した窒素ガスあるいは別の乾燥ガスを用いることが望ましい場合もある。十分な量の乾燥ガス118が用いられると、エアロゾル118の液滴はほぼ完全に乾燥して炉110内に導入するためのエアロゾル形態での乾燥した前駆体粒子が好適に形成され、その炉内部でその前駆体粒子が熱分解されて望ましい粒子状生成物をつくる。また、乾燥ガスの使用は、通常、特に炉110の取入口近くの重要な領域でのエアロゾルの液滴と導管壁面の接触の可能性を低下させる。この点で、乾燥ガスを導入するための好ましい方法はエアロゾル108内への半径方向からの導入である。例えば、図29−31を参照して上に述べたように、ほとんど同じ急冷装置としての構造を有する装置を用いることが可能であろう。その場合、装置の内部流動経路内を流れるエアロゾル108と乾燥ガスは穴の開いた導管の穴の開いた壁面を通じて導入される。エアロゾル118を乾燥させるための乾燥ガスの使用に代わる別の方法は炉110内に導入する前にエアロゾル108を乾燥するために炉の前に低温熱予備加熱器/乾燥機を使用する方法である。しかしながら、この代替方法は好ましくない。
【0122】
液体蓄積による損失の可能性を減らすためのさらに別の方法は、エアロゾル・ストリームがエアロゾル発生装置から炉に、そして炉内で垂直方向に流れるような装置構成でプロセスを行うことである。小さな粒径の粒子、約1.5μmより小さな粒子の場合、この垂直方向の流れは好ましくは垂直方向上向きの流れである。約1.5μm以上のものなど大きな粒径の場合、この垂直方向の流れは好ましくは垂直方向下向きの流れである。
【0123】
さらに、本発明のプロセスによれば、発生装置の取出口から粒子の回収までの総システム保持時間は通常10秒間以下、好ましくは約7秒間以下、より好ましくは約5秒間以下、そして最も好ましくは約3秒間以下であるので、システム損失の可能性はかなり削減される。
【0124】
多くの蛍リン光体は、その粉体が望ましい物理的、化学的、及び発光特性を有するように通常の方法を用いてつくるのが難しい場合がある。多くの蛍リン光体化合物は標準的なスプレイ熱分解性技術を用いてもつくるのが難しい場合もある。
【0125】
これらの化合物はスプレイ転化と呼ばれるプロセスを用いて本発明によって好適につくることができる。スプレイ転化は、上に述べたように、後で望ましい性質を有する特定の蛍リン光体に転化することができる中間粒子状生成物をつくりだすのに用いられる。この中間生成物は以下に述べるような、小さな粒径や狭い粒径分布などの望ましい形状的性質の多くを持っている。さらに、この中間粒子は蛍リン光体化合物を形成するのに必要な化学的成分を個別的に含んでいる。これは共混合されている異なった成分の個々の粒子とは区別される。本発明の中間前駆体粒子は低めの温度で、しかも少ない程度の団粒化で対応する蛍リン光体に好適に転化することができる。
【0126】
上に述べたように、硝酸塩などの水溶性前駆体とコロイド状シリカなどの不溶性前駆体を含む前駆体物質は液体溶液内に入れられ、霧化され、約1000℃程度以下の比較的低温で、通常低結晶性酸化物相に転化される。上記中間前駆体粒子は小さな粒径と、好ましくは以下に詳細に述べるような狭い粒径分布を有している。中間前駆体粒子はその後さらに昇温状態で加熱処理などの処理が加えられて転化され、高い結晶性と優れた発光特性を有する蛍リン光体化合物を形成する。上記中間体粒子は望ましい粒径を有しており、その後での熱処理中に団粒化が避けられるので、得られた粉体はその粒径を小さくしたり固い団粒を減らしたりするためにさらに粉砕する必要はない。得られた最終生成物は高度に結晶性の高い、望ましい形状及び発光性を有する蛍リン光体粉体である。平均粒径と形状特性は中間生成物の特性で判定される。
【0127】
従って、これらの前駆体は約750℃から950℃の範囲、好ましくは約750℃の範囲でスプレイ転化して、通常低結晶性の均一な混合物を形成することができる。この中間粒子をその後例えば1100℃から1600℃の温度で加熱して、高い結晶度と良好な発光性を有する蛍リン光体粒子を形成することができる。
【0128】
本発明は陰極ルミネセンス(CL)、エレクトロルミネセンス(EL)、光ルミネセンス(PL)、及びX線(XR)ルミネセンス蛍リン光体など幅広い蛍リン光体に適用できる。蛍リン光体は通常ホスト物質と呼ばれる基質化合物を含んでおり、蛍リン光体は特殊な色を放射するための、あるいはルミネセンス特性を強化するための、アクチベータ・イオンと呼ばれる1つまたは複数の微量添加物も含んでいる。本発明が適用可能なホスト物質の例としては、イットリウム酸化物、イットリウム酸硫化物、ガドリニウム酸硫化物、硫化亜鉛、硫化カルシウム及び硫化ストロンチウムなどの硫化物、ケイ酸亜鉛及びケイ酸イットリウム、チオ没食子酸亜鉛、没食子酸カルシウム及び没食子酸ストロンチウムなどのなどの没食子酸塩、アルミン酸バリウムあるいはバリウム・マグネシウム・アルミン酸塩(BAM)及びホウ酸イットリウム−ガドリニウムなどのホウ酸塩などがある。本発明による蛍リン光体化合物の具体的な例を表1に示す。
【0129】
【表1】

本発明によれば、液体供給原料は好ましくは蛍リン光体粒子を形成する化学成分を含んでいる。例えば、液体供給原料は硝酸塩、塩化物、硫酸塩、及び蛍リン光体成分の水酸化物かシュウ酸塩を含んでいる。加えて、この液体供給原料はSiOやAlなどの粒子状前駆体を含んでいる場合もある。粒子状のSiOはケイ酸塩化合物のための好ましい前駆体であり、高度の結晶構造を有する蛍リン光体粉体を得るためには過剰のシリカを提供するのが好適である。
【0130】
酸化イットリウム蛍リン光体粒子を製造するための好ましい前駆体は硝酸イットリウム、Y(NOA6HOである。硝酸塩は通常水に対して非常に可溶性が高く、その溶液は非常に濃度が高くても低粘性である。酸化イットリウムを形成するための通常の反応メカニズムは次のようである。
【0131】
2Y(NO+HO――――>Y+H
酸化イットリウム製造のための前駆体溶液は好ましくは約4−約6重量パーセントの前駆体を含んでいるべきであることが知られている。
【0132】
同様に、イットリウム酸硫化物は、その内部で中間前駆体粒子が後でHSなどの硫化物含有雰囲気内で加熱処理される低結晶性酸化物を形成している同様の前駆体系から好適につくることができる。
【0133】
ZnSiO:Mnなどのケイ酸塩を製造するための好ましい前駆体はZnとMnの場合、金属塩、特に硝酸金属塩である。シリカ成分の場合は、分散粒状シリカを使用するのが好ましい。ケイ酸亜鉛を製造するためには、前駆体溶液が過剰なシリカを含んでいるべきであることも分かっている。例えば、好ましい前駆体溶液は約10原子パーセントのシリカを含んでいることも見出された。ケイ酸イットリウムは硝酸亜鉛の代わりに硝酸イットリウムを用いて同様に製造することができる。
【0134】
硫化亜鉛はチオウレア及び硝酸亜鉛を含む前駆体溶液から製造することができる。Y(Ga,Al)12はすべて金属塩で構成される溶液からも製造することができるし、粒状アルミナを含むこともできる。
【0135】
SrGaなどのチオシュウ酸塩は硝酸塩などの塩類から製造することができ、空気中で熱分解して、主にSrGaなどの低結晶性酸化物で構成される中間前駆体粒子をつくりだす。その後、この中間前駆体粒子を硫黄含有雰囲気内で処理してその酸化物を硫化物相に転化する。
【0136】
酸化物に基づく蛍リン光体は通常単純な金属塩から製造することができる。例えば、SrGaは炭酸ストロンチウム及び硝酸ガリウムから製造することができるし、CaGaは炭酸カルシウム及び硝酸ガリウムから製造することができる。
【0137】
本発明によるユーロピウム微量添加バリウム・マグネシウム・アルミン酸(BAM:Eu)蛍リン光体を製造するためには、液体供給原料は硝酸塩、塩化物、硫酸塩、水酸化物、あるいはシュウ酸塩などの蛍リン光体成分を含むことができる。好ましい1つの実施の形態によれば、BAM:EuはBAMホスト物質のための硝酸バリウム、硝酸マグネシウム、及び燻蒸(粒状)アルミナ及びEu微量添加物イオンを提供するための硝酸ユーロピウム、あるいはMn微量添加物を提供するための硝酸マンガンから形成される。酸化アルミニウムへの前駆体として硝酸アルミニウムは好ましくないことが分かっているが、アルミナ、あるいはボーエマイトなどの同様のアルミニウム化合物が好ましい。また、予想外のことであるが、この前駆体溶液はBAMを形成するために化学当量的に必要な量以上のアルミニウムを含んでいなければならないことが分かった。1つの好ましい実施の形態で、少なくとも約20原子パーセントのアルミニウムが前駆体溶液に加えられる。アルミン酸バリウムも同様の方法で製造することができる。約5−10重量パーセントの前駆体が溶液中に存在していることが好ましい。
【0138】
(Y,Gd)BOはイットリウム及び硝酸塩などのガドリニウム塩、及びホウ酸で構成される前駆体溶液から形成される。好ましくは、前駆体溶液は過剰な量のホウ酸を含んでおり、それは高度に結晶性の(Y,Gd)BO粉体を好適に形成する。蛍リン光体化合物の相当重量を基準として約5−約10重量パーセント、より好ましくは約7−8の重量パーセント前駆体濃度を用いることが好ましい。
【0139】
上に述べた前駆体溶液/分散液は液体内での沈殿を避けるために、前駆体が好ましくは不飽和である。溶液は好ましくは、例えば、約1−50重量パーセント、より好ましくは約1−15重量パーセントの蛍リン光体化合物を得るのに十分な前駆体を含んでいるべきである。つまり、溶液濃度は蛍リン光体化合物の相当重量を基準として測定される。蛍リン光体粒子の最終的な粒径も前駆体濃度の影響を受ける。一般的に、液体供給原料内の前駆体濃度が低ければ低いほど、より小さな粒径の粒子が形成される。
【0140】
上に述べたように、上記液体供給原料は好ましくは微量添加物(アクチベータ・イオン)前駆体、通常は硝酸塩などの可溶性金属塩を含んでいる。前駆体の相対濃度はホスト物質内のアクチベータ・イオンの濃度を変えるために調節することができる。
【0141】
この溶媒は好ましくは操作し易さを目的として水性であるが、トルエンなどの他の溶媒も望ましい。しかしながら、有機溶媒の使用は蛍リン光体粒子内に望ましくない炭素夾雑物をもたらす可能性がある。さらに、この水溶液のpHはその溶液内の前駆体の可溶性特性を変えるために好適に調節することができる。
【0142】
上記に加えて、この液体供給原料は粒子の形成に寄与する他の添加物を含んでいてもよい。例えば、その粒子の結晶度及び/または密度を増大させるためにフラックス剤を加えることもできる。金属硝酸塩などの金属塩溶液に尿素を添加して、その溶液からつくられる粒子の密度を増大させることができる。1つの実施の形態で、金属塩溶液内の蛍リン光体化合物のモル数を基準として測定して最大約1モル当量の尿素を前駆体溶液に加える。前駆体溶液に少量、例えば1重量パーセントのホウ酸を加えると、粉体の組成を基本的に変えずに結晶度を向上させることができる。さらに、以下でより詳細に検討するように粒子が被膜された蛍リン光体粒子でなければならない場合は、上記蛍リン光体化合物と被膜の両方に対する前駆体を、その内部で被膜前駆体が不揮発性あるいは揮発性種である前駆体溶液内で用いることができる。
【0143】
本発明による蛍リン光体粒子を製造するために、キャリア・ガスはその内部で液体供給原料からつくられる液体がエアロゾル形態で分散することができるいずれのガス性媒体を含んでいてもよい。また、キャリア・ガスは蛍リン光体粒子の形成に関与しないという意味で不活性であってもよい。また、キャリア・ガスは蛍リン光体粒子の形成に関与する1つまたは複数の活性成分を含んでいてもよい。その点で、キャリア・ガスは炉内で反応して蛍リン光体粒子の形成に貢献する1つまたは複数の反応性成分を含んでいてもよい。本発明による蛍リン光体粒子のスプレイ転化のための多くの適用例において、空気は酸素を提供するための満足すべきキャリア・ガスである。他の例で、窒素などの不活性ガスが必要な場合もある。
【0144】
本発明の蛍リン光体が金属酸化物で被膜された蛍リン光体などの被膜された蛍リン光体である場合、金属酸化物被膜に対する前駆体は金属酢酸塩、塩化物、アルコキシド、あるいはハロゲン化合物である。こうした前駆体は高温で反応して対応する金属酸化物を形成し基質リガンドあるいはイオンを除去することが知られている。例えば、水蒸気が存在している場合は、SiClをSiO被膜の前駆体として用いることができる。
【0145】
SiCl+2H(g)――――>SiO2(s)+4HCl(g)
SiClは揮発性が高く、室温では液体であり、このことは反応器への移送をより制御しやすくしてくれる。三塩化アルミニウム(AlCl)はアルミナ被膜を形成するために同様の方法で用いることができる。
【0146】
金属アルコキシドは加水分解によって金属酸化物膜をつくるために用いることができる。水分子はアルコキシドM−O結合と反応して、M−O−M結合を形成して対応するアルコールをきれいに除去する。
【0147】
Si(OEt)+2HO――――>SiO+4EtOH
ほとんどの金属アルコキシドは妥当な高い蒸気圧を有しており、従って、被膜前駆体として適している。
【0148】
金属酢酸塩は酢酸無水物除去によって熱的に活性化されると簡単に分解するので、被膜前駆体としても有益である。
Mg(OCCH――――>MgO+CH(O)OC(O)CH
金属酢酸塩は水溶性で、それほど高価でないので、被膜前駆体として好適である。
【0149】
被膜は多数の異なったメカニズムで粒子表面に形成することができる。1つまたは複数の前駆体は揮発して、高温の蛍リン光体粒子表面に融合し、さらに、熱的に反応して、化学蒸着(CVD)によって薄膜の形成をもたらす。CVDで付着される好ましい被覆は金属酸化物及び元素金属などである。さらに、この被膜は物理的蒸着(PVD)によって形成され、この場合、被膜物質は物理的に粒子の表面上に付着する。PVDによって付着される好ましい被膜は有機性物質と元素金属である。また、ガス性前駆体はガス相で反応して、例えば約5ナノメートル以下の小さな粒子を形成し、それはより大きな粒子表面に拡散してその表面に焼結され、被膜を形成する。この方法はガス対粒子転化(GPC)と呼ばれる。こうした被膜反応がCVD、PVD、あるいはGPCによって起きるかどうかは前駆体分圧、水分圧、及びガス・ストリーム内での粒子の濃度などの反応条件に依存している。別の可能な表面被覆方法は粒子の活性を粒子内に最初に含まれていた以外の別の物質に転化させるために蒸気相反応物との反応によって粒子の表面を表面転化させることである。
【0150】
さらに、PbO、MoO、あるいはVを被膜が粒子表面に濃縮で付着されるように反応器内に導入することもできる。さらに、蛍リン光体粉体を他の方法で被覆させることもできる。例えば、蛍リン光体粉体と被膜の両方に可溶性の前駆体を、被膜前駆体が不揮発性(例えばAl(NO)あるいは揮発性(例えば、OAcが酢酸塩であるSn(OAc))である前駆体溶液内で用いることができる。別の方法で、コロイド状の前駆体及び可溶性蛍リン光体前駆体を用いてその蛍リン光体上に粒子状コロイド性被膜を形成することができる。
【0151】
上に述べた方法でつくられた蛍リン光体粉体は熱分解ステップ中に結晶性蛍リン光体化合物に十分に転化することができる。しかしながら、粉体を中間形態にスプレイ転化するのが好ましい。そして、その中間前駆体粉体をルミネセンス蛍リン光体化合物に転化し、さらに、その粉体の結晶性(平均結晶体粒径)を増大するためにスプレイ転化された中間前駆体粒子を加熱することも必要である。従って、上に述べたように、この粉体を一定時間、そして所定の環境内で熱処理することができる。増大された結晶性は好適に明度を向上させると共に、蛍リン光体粒子の効率も向上させる。こうした熱処理ステップが行われる場合は、熱処理温度及び時間は粒子間での焼結をできるだけ減らすように選択すべきである。表IIは好ましい転化及び熱処理条件での本発明による好ましい蛍リン光体粉体の実例を示す。
【0152】
【表2】

熱処理時間は好ましくは約2時間以下で、1分程度に短い場合もある。団粒化を減らすためには、中間粒子を好ましくは粒子の団粒化を最小限度にするために十分な攪拌をしながら熱処理される。熱処理中に攪拌するための1つの好ましい方法は粉体を回転キルンで熱処理することで、その場合、粉体はその主要軸を中心に回転している円筒状の炉を通じて常に移動される。
【0153】
さらに、この蛍リン光体の結晶性は、前駆体溶液内あるいは形成後のアニーリング・ステップ内でフラックス剤を用いて向上させることができる。フラックス剤はその試薬と物質を共に加熱すると、そのフラックス剤がない場合に同じ温度で同じ時間だけ加熱した場合と比較してその物質の結晶度を向上させる薬剤である。フラックス剤は通常、共晶物を形成させ、粒子境界で液相を発生させて、分散効率を向上させる。フラックス剤、例えばNaClやKClなどのアルカリ金属ハロゲン化物、あるいは尿素(CO(NH)などの有機化合物を前駆体溶液に加えて、後で行われる形成中に粒子の結晶度及び/または密度を改良することができる。また、フラックス剤をそれらが回収された後で、蛍リン光体粉体バッチと接触させることができる。熱処理後、フラックス剤は蛍リン光体粉体の結晶度を向上させるので、従って、その蛍リン光体粉体の明度などの他の性質も向上させる。また、複合体粒子の場合、それらの粒子を異なった物質相の粒子内での分散を可能にするのに十分な時間焼成することもできる。
【0154】
蛍リン光体ホスト物質をアクチベータ・イオンと共に、通常約30原子パーセントの量、そして好ましくは約0.02から約20原子パーセントの量で微量添加することもできる。アクチベータ・イオンの好ましい濃度は、以下に詳細に述べるように組成物及びその蛍リン光体の用途によって変わる。アクチベータ・イオンはまた適切な酸化状態でもなければならない。
【0155】
本発明の1つの利点は、そのアクチベータ・イオンがホスト物質内に均一に分散されることである。固体状態方法で調製された蛍リン光体粉体は特に小さな粒子では均一なアクチベータ・イオンの濃度を与えてくれず、そして溶液ルートも沈殿速度の違いからアクチベータ・イオンの均一な分散を可能にしてくれない。
【0156】
好ましい粉体特性はその蛍リン光体粉体の具体的な用途に依存する。それにも拘わらず、ほとんどの用途に対して一般的には粉体が、小さな粒径、狭い粒径分布、球状形状、高い結晶性、制御された多孔性、そしてホスト物体内でのアクチベータ・イオンの均一な微量添加物分布などの1つ、あるいは複数の特性を持つべきであると述べられている。その後、一次粒径をMicrotrac測定器内での光散乱によって測定される。これは装置内で粒子を付着させるために用いられるペーストやスラリーなどの液体媒体内での粒子の分散を促進するので、有益な分散特性を良好に測定することを可能にしてくれる。従って、ここで言われている粒径は一次粒径、つまり、柔らかい団粒の分散後の粒径を意味している。
【0157】
本発明によれば、蛍リン光体粉体は小さな平均粒径を有する粒子を含んでいる。蛍リン光体粉体の好ましい平均粒径はその流体粉体の用途によって変わるが、蛍リン光体粉体の平均流体は少なくとも約0.1μm、より好ましくは少なくとも約0.3μmである。さらに、平均粒径は約20μm以下である。ほとんどの用途の場合、平均粒径は好ましくは約10μm以下であり、好ましくは約5μm以下、そしてより好ましくは0.3μmから約3μmなど、約3μm以下である。ここで用いられている平均粒径とは体積平均粒径である。
【0158】
本発明によれば、蛍リン光体粉体の粉体バッチは粒子の大部分がほぼ同じ粒径を有するような狭い粒径分布を有している。好ましくは、粒子の少なくとも約70体積パーセント、より好ましくは少なくとも約80体積パーセントは平均粒径の2倍以下の大きさである。従って、平均粒径が約2μmの場合、少なくとも約70体積パーセントが4μm以下であることが好ましく、少なくとも粒子の約80体積パーセントが4μm以下であることがより好ましい。さらに、粒子の少なくとも約70体積パーセント、より好ましくは粒子の少なくとも約80体積パーセントが平均粒径の約1.5倍以下であることがより好ましい。従って、平均粒径が約2μmの場合、少なくとも粒子の約70パーセントが3μm以下であることが好ましく、粒子の少なくとも約80体積パーセントが約3μm以下であることが望ましい。
【0159】
ここで述べられているプロセスで製造される粉体、特に後処理ステップを通過した粉体は一般的には一次球状粒子の柔らかい団粒として出て行く。マイクロメートル・レベルの粒径の粒子はその比較的高い表面エネルギーの故に、より大型の粒子と比較して団粒化しやすいことは当業者には良く知られている。こうした柔らかな団粒が液体媒体中で超音波処理によって、あるいはふるいをかけることで容易に分散されることも当業者にはよく知られている。ここに述べられている平均粒径及び粒径分布は水などの媒体中で粉体のサンプルを界面活性剤と混合して超音波バスあるいは筒内で短時間超音波露出させて測定される。超音波処理は柔らかい団粒を一次球状粒子内に分散させるのに十分なエネルギーを供給する。
【0160】
さらに、本発明によれば、蛍リン光体粒子の上記の平均粒径及び粒径分布は熱分解処理中につくられる中間前駆体粒子にも当てはまる。つまり、粒子の粒径及び粒径分布は熱分解後の熱処理中ほとんど変化しない。最終的な蛍リン光体粉体の形状特性は中間前駆体粒子の性質によって基本的には決められる。
【0161】
本発明による蛍リン光体粒子は通常多数の金属結晶体で構成されている。本発明によれば、蛍リン光体は高い結晶性を有しており、粒子が少数の大型結晶体だけを含むように,平均結晶体粒径が平均粒径とほぼ同じであることが好ましい。粒子の平均粒径は好ましくは少なくとも約25ナノメートルであり、より好ましくは少なくとも約40ナノメートル、そして最も好ましくは少なくとも約60ナノメートル、そして最大でも約80ナノメートルである。1つの実施の形態で、平均結晶体粒径は少なくとも約100ナノメートルである。それは粒径と関係しているので、平均結晶体粒径は好ましくは平均粒径の少なくとも約10パーセント、より好ましくは少なくとも約20パーセント、さらに好ましくは少なくとも約30パーセントである。こうした高い結晶性の蛍リン光体は発光効率と明るさを結晶体がより小さな蛍リン光体粒子と比較して増大させると考えられている。
【0162】
本発明による蛍リン光体は好適に高度の純度を有しており、つまり低レベルの不純物を含んでいる。不純物は最終製品には意図されない物質であり、蛍リン光体の性質に否定的な影響を及ぼす物質である。従って、アクチベータ・イオンは不純物とはみなされない。本発明による蛍リン光体内の不純物のレベルは好ましくは約1以下の原子パーセント以下、より好ましくは約0.1以下の原子パーセント以下、さらに好ましくは約0.01原子パーセント以下である。本発明による蛍リン光体の一部はその蛍リン光体の性質の妨げにはならない第2の相を含んでいる場合もある。例えば、本発明によるZnSiOは好適にやや過剰のシリカを用いて製造され、従って、この粒子はZnSiO基質全体に分散されたシリカ結晶を含んでいる。こうした第2の相は不純物とはみなされない。
【0163】
中空粒子の形成はスプレイ熱分解においては一般的な現象で、スプレイ転化において起こり得る。中空粒子は蛍リン光体粉体の多数の用途で不都合な場合がある。本発明においては、中空あるいは濃密粒子の形成は熱分解温度、滞留時間、前駆体の選択、及び溶液濃度の組み合わせで制御可能であることが見出されている。例えば、熱分解温度と滞留時間を一定にすると、溶液濃度が約5重量パーセント程度上昇して、一部の粉体の形状は多目の中空粒子の存在を示す。
【0164】
本発明による蛍リン光体粒子はまた形状がほぼ球状である。つまり、粒子の形状がギザギザであったり、不規則であったりしない。分散してより小さな平均厚みで装置を均一に被覆できるので、球状粒子は特に好適である。それらの粒子はほぼ球状であるが、それらの粒子は結晶体粒径が増大するとほぼ球状の形状を維持しつつ、多少小さな面が発生する場合もある。
【0165】
さらに、本発明による蛍リン光体は好適に低表面積である。これらの粒子はほぼ球状で、与えられた質量の粉体の表面積を減少させる。さらに、粉体バッチから大型粒子を除去することでそうした大型粒子の開口孔に関連した多孔性がなくなる。大型粒子を除去することで、粒子は好適にも低表面積を持つ。表面積は通常粒子の表面のアクセス可能な孔の表面積も含む粉体の表面積を示すBET窒素吸着法で測定される。与えられた粒子粒径分布に対して、粉体質量あたりの表面積の値が低いということは通常固体、あるいは非多孔性粒子を示す。表面積が少ないと、水分による劣化など粉体の不都合な表面反応に対する影響の受けやすさが減る。この特性はそうした粉体の寿命を延長するという利点を提供してくれる。
【0166】
本発明による蛍リン光体粒子は粒子表面への汚染物質の付着が少ないので通常滑らかで清潔である。例えば、液体沈殿ルートで製造される粒子によく見られるような洗剤による汚染がない。粒子は粉砕処理を必要としていないので、その粒子表面は粉砕処理から発生して粉体の光輝を減少させる重大な表面欠陥を含んでいない。
【0167】
加えて、本発明による粉体バッチは団粒化することがほとんどなく、つまり、粒子の固い団粒を含んでいない。固い団粒は2つ以上の粒子と共融して1つの大きな粒子として振舞う。固い団粒はほとんどの用途で不都合である。固い団粒は粉体バッチの蛍リン光体粒子の約1重量パーセント以下であることが好ましい。より好ましくは、粒子の約0.5重量パーセントが固い団粒状態であり、より好ましくは粒子の約0.1重量パーセント以下が固い団粒状態である。固い団粒が存在している場合、それらは例えばジェット・ミルなどの方法を用いて除去することができる。
【0168】
本発明による1つの実施の形態によれば、蛍リン光体は複合体蛍リン光体であり、その内部で個々の粒子は少なくとも第1の蛍リン光体相とその蛍リン光体に結合した少なくとも第2の相を含んでいる。好ましくは、この第2の相は第1の蛍リン光体相の基質内に分散されている。この第2の相は異なった蛍リン光体化合物でもよく、あるいは非蛍リン光体化合物であってもよい。こうした複合体はそれでなければ使うことができないような装置内で蛍リン光体化合物の蛍リン光体の使用を可能にしてくれる。さらに、1つの粒子内の異なった蛍リン光体化合物は選択された色の放出を可能にしてくれる。これら2つの蛍リン光体化合物の放出は結合してほぼ白色の光を発生させる可能性もある。他の利点も実現される。例えば、陰極ルミネセンス用途の場合、基質物質は放出電子を加速して、粒子のルミネセンスを増大させる場合がある。
【0169】
本発明の別の実施の形態によれば、蛍リン光体粒子は表面改変あるいは被覆蛍リン光体粒子で、粒子状被膜(図35d)あるいは粒子の外面をほぼ包んだ非粒子状(膜)被膜(図35a)を含んでいる。この被膜は半導体や有機化合物などの金属、非金属化合物を含む伝導性金属物質であってもよい。
【0170】
被膜はしばしば水分や他の影響による蛍リン光体粉体の劣化を減少させる上で望ましい。本発明による薄い均一の被膜は好適に腐食条件下での蛍リン光体粉体の使用を可能にしてくれる。被覆はまた、アクチベータ・イオンが1つの粒子から別の粒子に移動できなくするように分散バリアをつくり、発光特性を変えることができる。被膜は粒子の表面エネルギーを制御することもできる。
【0171】
この被膜は金属、金属酸化物、あるいは金属硫化物などの他の無機化合物であってもよいし、あるいは有機化合物であってもよい。例えば、SiO,MgO,Al,ZnO、SnO、あるいはInで構成されるグループから選択される金属酸化物などの金属酸化物被膜も好適に使用できる。特に好ましいのはSiOとAlである。SnO、あるいはInなどの半導体酸化物被膜も一部の用途では好適である。さらに、ジルコニウム蛍リン光体あるいはアルミニウム蛍リン光体などの蛍リン光体被膜も一部の用途での使用に適している。
【0172】
この被膜は比較的薄く、均一でなければならない。この被膜は粒子全体を包んでいるべきであるが、その被膜が発光の妨げにはならない程度の薄さでなければならない。好ましくは、この被膜の平均厚さは約200ナノメートル以下、好ましくは約100ナノメートル以下、そしてより好ましくは約50ナノメートル以下である。被膜は好ましくは蛍リン光体粒子を完全に包んでいるべきであり、従って、少なくとも約2ナノメートル、より好ましくは少なくとも約5ナノメートルの厚みを有しているべきである。1つの実施の形態で、この被膜は平均厚さが約2−50ナノメートル、例えば約2−10ナノメートルである。さらに、粒子は望ましい性質を達成するために粒子を完全に包む複数の被膜を含んでいてもよい。
【0173】
粒子状であれ、非粒子状であれ、被膜はその蛍リン光体の光特性を変えるために顔料あるいはその他の物質を含んでいる場合もある。顔料は酸化鉄(Fe)、硫化カドミウム化合物(CdS)あるいは硫化水銀化合物(HgS)などの化合物を含んでいてもよい。緑色あるいは青色の顔料は酸化コバルト(CoO)、アルミン酸コバルト(CoAl)、酸化亜鉛などである。顔料被膜は蛍リン光体から出て行く一定の波長の光を吸収することができ、それによって、色対照性及び純度を高めるフィルターとしての役割を果たす。さらに、静電付着などの付着プロセスを実行するために適切な表面帯電特性を達成するため、有機性あるいは無機性の誘電性被膜を用いることもできる。
【0174】
加えて、蛍リン光体粒子をPMMA(ポリメチルメタクリレート)、ポリスチレン、あるいは流動性媒体内での粒子の分散及び懸濁を助ける界面活性剤など同様に有機性化合物などの有機性化合物で被覆することができる。有機性の被膜は好ましくはその厚みが約100ナノメートル以下であり、基本的に粒子周囲に濃密、連続的に配置される。この有機性被膜は好適に蛍リン光体の腐食を防ぐと同時に、ペーストやその他の流動媒体内での粒子の分散特性を向上させることができる。
【0175】
被膜は約1−3の単層被膜など、1つあるいは複数の単層被膜で構成することもできる。単層被膜は有機性または無機性の分子と蛍リン光体粒子の表面との反応によって基本的に1つの分子膜厚を形成することで形成される。特に蛍リン光体粉体の表面とハロゲン−、アミノ−シラン、例えば、ヘキサメチルシラザンあるいはトリメチルシルクロライドなどの機能化された有機シランとの反応による単層被膜の形成によって、蛍リン光体粉体の疎水性及び親水性を改変、制御できる。金属酸化物(例えば、ZnOやSiO)あるいは金属硫化物(例えばCuS)の単層被膜を形成することができる。炭層被膜は種々のペースト組成物及び他の遊動性媒体内での蛍リン光体粉体の分散特性の一層の制御を可能にする。
【0176】
単層被膜はすでに有機性あるいは無機性被膜で被覆された蛍リン光体粉体にも適用して、(より集めの被膜の使用を通じて)腐食特性をより制御したり、(単層被膜の使用を通じて)蛍リン光体の分散性をより良く制御することができる。
【0177】
上に述べた粉体特性の直接の結果として、本発明による蛍リン光体粉体はこれまでに知られている蛍リン光体粉体では見られない独特で好適な特性を提供する。
本発明による蛍リン光体粉体はしばしば量子効率とも呼ばれる高い効率を提供してくれる。効率は励起エネルギーの放出される可視光子への全体的な転化を意味している。本発明による蛍リン光体粉体の高い効率は高い結晶度及びホスト物質内でのアクチベータ・イオンの均一な分散、及びほぼ欠陥のない粒子表面などによるものと考えられる。
【0178】
蛍リン光体粉体は放出スペクトル特性あるいは色度とも呼ばれるよく制御された色特性も有している。この重要な性質はホスト物質の組成、アクチベータ・イオンの均一な分布、及び粉体の高い純度を精密に制御する能力によるものである。
【0179】
この蛍リン光体は持続性とも呼ばれる崩壊時間においてもより改良されている。
持続性とは光放出がそのピーク輝度の10%まで崩壊するのにかかる時間である。表示用途の場合、長期崩壊時間を有する蛍リン光体の場合、画像がその表示内で移動する時にぼやけた画像になってしまう。本発明による蛍リン光体粉体の改良された(減少された)崩壊時間は主としてホスト物質内でのアクチベータ・イオンの均一な分布によるものと考えられる。
【0180】
この蛍リン光体粉体はまた先行技術による蛍リン光体より高い輝度を有している。つまり、エネルギー(電子、光子、電界、あるいはX線)がかけられた状態で、本発明による蛍リン光体はより多量の光を発生させる。
【0181】
従って、本発明による蛍リン光体は従来の蛍リン光体粉体では見られない性質の独特の組み合わせを有している。この粉体は例えば、ペーストやスラリーなどの液体媒体などの多数の中間生成物を形成するのに好適に用いることができ、さらに、多数の装置に組み込んで、その装置が本発明による蛍リン光体粉体の特性から直接もたらされるより改善された性質を有するようにすることができる。
【0182】
蛍リン光体粉体は通常、ダスティング、電子写真あるいは静電沈殿などの乾燥粉体の直接付着を含む種々の方法で装置表面あるいは装置表面上に付着され、別の付着方法はインクジェット印刷、注射器からの液体伝達、マイクロペン、トナー、スラリー付着、ペーストに基づく方法、及び電気泳動など液体媒体を用いる。これらすべての付着方法で、本発明で述べられている粉体は他の方法でつくられた粉体と比較して多数の明確な利点を示す。例えば、小さな、球状の、そして狭い分布粒径の粒子は液体媒体により容易に分散され、それらはより長期間分散された状態を保ち、別の方法でつくられた粉体と比較してより滑らかで細かい特性を有するプリントを可能にしてくれる。
【0183】
多くの用途の場合、蛍リン光体はペーストに分散されてから、発光層を得るために表面に塗布される。本発明による粉体はそうしたペーストに分散された場合に多くの利点を提供してくれる。例えば、これらの粉体は広い粒径分布の非球状粉体よりよく分散し、従って、より薄いそして団粒部分が少ないより均一な層を形成することができる。こうした厚膜は蛍リン光体層内での粉体密度が増大しているのでより明るい表示をつくりだす。処理ステップの数も好適に減少される。
【0184】
こうした中間生成物の1つの好ましい種類は厚膜インクとも呼ばれる厚膜ペースト組成物である。これらのペーストは蛍リン光体粒子を表示装置で使用する場合など、基板上に塗布するのに有用である。
【0185】
厚膜プロセスにおいては、機能性粒子状相を含む粘着性ペーストが基板上にスクリーン印刷される。ステンレス鋼、ポリマー、ナイロンあるいは同様の不活性素材で形成された多孔性スクリーンを広げて、固いフレームに取り付ける。印刷されるべきパターンに応じて、スクリーン上に所定のパターンが形成される。例えば、紫外線に影響を受け易い乳剤をそのスクリーンに塗布して、そのデザイン・パターンのポジティブあるいはネガティブ画像を通じて露出させることができる。そしてそのスクリーンを現像して、パターン領域内の乳剤の部分を取り除く。
【0186】
次に、スクリーンをスクリーン印刷装置に取り付けて、薄膜ペーストをそのスクリーン上に付着させる。そして印刷されるべき基板をスクリーンを下側に配置して、ペーストをそのスクリーンの横方向に置かれたスクイージーによってスクリーンを通じて基板上に押出す。このようにして、ペースト状物質のトレース及び/またはパッドのパターンを基板上に移すことができる。ペーストを所定のパターンで塗布された基板を次に乾燥、焼成処理して、そのペーストを基板上に固化、接着させる。線の輪郭を向上させるためには、塗布したペーストをさらに電子写真技術などの方法で処理して、基板から望ましくない物質を取り除く。
【0187】
厚膜ペーストは複雑な化学的特性を有しており、一般的には機能相、結合材相、及び有機媒体相を有している。機能相は基板にルミネセンス層を与える本発明による蛍リン光粉体を含んでいる。それら粒子の粒径、粒径分布、表面の化学的性質などはすべてペーストの流動性に影響を及ぼす。
【0188】
結合材相は、例えば、金属酸化物あるいはガラス片粉体の混合物などである。通常結合材としてPbOに基づくガラスが用いられる。この結合材の機能はその膜の焼結を制御し、その機能相の基板への接着及び/またはその機能相の焼結を促進することである。反応性化合物はその機能相の基板への接着を促進するためにペーストに含んでいてもよい。
【0189】
厚膜ペーストは溶媒、ポリマー、樹脂、及びペーストに対して適切な流動特性を提供することを主な機能とするその他の有機物の混合物である有機性媒体ペーストも含んでいる。液体溶媒はそれらの成分を均一なペーストに混合するのに役立ち、そのペーストを基板に塗布するとほとんどが揮発してしまう。通常、この溶媒はメタノール、エタノール、テルピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトール・アセテート、脂肪酸アルコール、エステル類、アセトンなどである。他の有機性媒体成分はシックナー(有機結合材と呼ばれることもある)、安定剤、表面活性剤、加湿剤などである。シックナーはペーストに十分な粘度を与えると共に、非焼成状態で結合剤としての役割も果たす。シックナーの例としてはエチル・セルロース、ポリビニル・アセテート、アクリル酸樹脂、セルロース樹脂、ポリエステル、ポリアミドなどの樹脂類である。安定剤は酸化及び劣化を減少させ、ペーストの粘度を安定させたり、pHを調節したりする。例えば、トリエタノールアミンは一般的に使われている安定剤である。加湿剤及び表面活性化剤は厚膜ペースト技術の分野ではよく知られており、トリエタノールアミン及び燐酸エステルなどである。
【0190】
厚膜ペーストのそれぞれの成分は機能相がペースト全体に均一に分散したほぼ均一なブレンドをつくりだすために望ましい割合で混合される。粉体は多くの場合ペーストに分散させ、その後、ペーストを混合するためにロール・ミルを何回も通過させる。このロール・ミルはペースト内の柔らかい団粒を好適に粉砕してくれる。通常、厚膜ペーストは60−80重量パーセントなど約5−約95重量パーセントの本発明による蛍リン光粉体を含む機能相を含んでいる。
【0191】
蛍リン光体ペースト組成物は米国特許第4,724,161;4,724,161;4,806,389;及び4,902,567に開示されており、これらは参照によってその全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0192】
厚膜ペーストのいくつかの適用例では、上に述べたような標準的な厚膜技術を用いることで達成できるより高い耐久性が要求される場合もある。結果として、一部の厚膜ペーストはより小さな幅とピッチで線及びトレースの形成を可能にする光画像形成能力を有している。このタイプのプロセスにおいては、光活性厚膜ペーストがほぼ上に述べたように基板に塗布される。このペーストは、例えば、ポリビニル・アルコールなど架橋結合されていない液体媒体である。そしてそのペーストを乾燥してフォトマスクを通じて紫外線に露出させて、露出された部分をポリマー化し、そしてペーストを現像してそのペーストの望ましくない部分を取り去る。この技術により、より高度の密度の線と画素の形成が可能になる。上に述べた技術と本発明による複合体粉体を組み合わせると、通常の粉体を用いた通常の技術と比較してより高い解像度と耐久性を持った装置の製造が可能になる。
【0193】
さらに、マスク経由での紫外線の代わりにレーザーを用いることもできる。レーザーを表面上でパターンに合わせて走査し、それによってマスクの使用が不必要になる。レーザー光はガラスやポリマーをその融点以上に加熱しないように十分に低エネルギーのものとする。ペーストの非照射領域が取り除かれて、パターンだけが残る。
【0194】
同様に、従来のペースト技術はペーストから媒体を取り除き、粒子を相互に融合させたりあるいはそれらを何らかの意味で修正するために基板を加熱する。レーザーを用いればペースト層を局所的に加熱して、そのペースト層を走査することでパターンを形成することができる。レーザーによる加熱はペースト層だけに限定され、ペースト媒体を除去し、基板を過度に加熱することなくペースト内の粉体を加熱する。これによってガラスやポリマー性基板を損傷することなしにペーストを用いて運ばれた粒子を加熱することが可能になる。
【0195】
この複合体粉体のために他の付着方法も用いることができる。例えば、粉体を付着させるためにスラリー法を用いることができる。この粉体は通常ケイ酸カリウム及びポリビニル・アルコールなどの薬剤を含む水性スラリー内に分散され、これは粉体の基板表面への接着を強化する。例えば、スラリーを基板上に注いで、その表面上に安定するまで放置する。粉体が基板上で固まったら、上澄液を取り除いて、残った蛍リン光体粉体層を乾燥させる。
【0196】
蛍リン光体粒子は電気泳動あるいは静電技術を用いてでも付着させることができる。これらの粒子を荷電して、反対の荷電を持った基板表面部分と接触させる。この層は通常粒子を基板に接着させるための塗料が塗られている。シャドウ・マスクを用いて基板表面上に望ましいパターンをつくりだすこともできる。
【0197】
インクジェット・プリンティングは粉体を所定のパターンに付着させるためのもうひとつの方法である。蛍リン光体粉体を液体媒体内に分散させて、パターンをつくりだすようにコンピュータ制御されたインクジェット・プリンティング・ヘッドを用いて基板上に分散させる。粒子粒径が小さく、小さな粒子粒径分布と球状形態を有する本発明による粉体を高度の密度及び解像度を有するパターンに印刷することができる。液体媒体中に分散された蛍リン光体粉体を用いた他の付着方法としてはマイクロペンあるいは注射器付着があり、この場合、粉体が分散されて、ペンあるいは注射器を用いて基板上に塗布、乾燥される。
【0198】
粘着質の物質をパターン状に表面に送り出すためにインクジェットあるいはマイクロペン(小さな注射器)を用いてパターンを形成することもできる。そして粉体をその粘着性物質上に移す。この転写はいろいろな方法で行うことができる。粉体で被覆したシートをその粘着性パターン上に広げる方法もある。この場合、粉体は粘着性パターンには付着するが、残りの表面部分には付着しない。その粘着性領域に直接粉体を移送するためにノズルを用いることもできる。
【0199】
素材を表面に直接付着させるための方法の多くは一度付着された粒子を加熱してそれらを焼結させ層の密度を高めることを必要とする。高密度化はその粒子を含んでいる液体に1つの分子前駆体を含めることで達成することができる。粒子/分子前駆体混合物をインクジェット、マイクロペン、及び他の液体分配方法を用いて直接基板上に書き出す。その後に、炉内で加熱したり、あるいはレーザーなどの局所化エネルギー源を用いて加熱してもよい。加熱によって分子前駆体がその粒子内に含まれる機能性物質に変わり、それによって粒子間の空間を機能性物質で充填する。
【0200】
このように、本発明によってつくられた蛍リン光粉体はそうした液体あるいは乾燥粉体に基づく付着方法で付着させるとより滑らかな蛍リン光体層をもたらす。粉体層が滑らかであればある程、他の方法でつくられた粉体と比較して、粒子の平均粒径は小さくなり、より球状性が高く、粒径分布も小さな粒子が得られる。より滑らかな蛍リン光体粉体は種々の用途において有益であり、特に高解像度が重要な表示装置で蛍リン光体が用いられるような用途においては有益である。例えば、蛍リン光体層が写真に使われる光をつくりだすような表示装置内のより滑らかな蛍リン光体粉体層は、撮影された画像の解像度及び明確さの向上をもたらす。
【0201】
種々の付着技術は粉体、特に粉体の輝度を劣化させることが多い。その一例は写真印画、スクリーン・プリント、あるいはマイクロペンやその他で直接手書きされるペーストを形成するために使われる3−ロール・ミルである。表面上に一度付着された蛍リン光体の輝度を増大させる方法は、レーザー(アルゴン、クリプトン・イオン、YAG、エキサイマなど)を照射する方法である。レーザー光は粒子の温度を高くし、それによってそれらを焼成して、輝度を増大させる。レーザーはガラスを融点以上には加熱せずに粒子の局所的加熱を行えるので、ガラスやポリマー性基板上の粒子にレーザー加熱を行うことができる。この方式は本発明による蛍リン光体粉体にとって有益である。
【0202】
表面に付着された蛍リン光体粒子相はプラズマ、水分、電子、光子などから層を保護するために被覆しなければならない場合が多い。被膜はスパッタリングで形成することができるが、この方法は基板上の望ましくない場所への付着を避けるためにマスクを必要とする。金属酸化物及び他の物質のレーザー誘発化学蒸着(LCVD)によって、他の領域を被覆せずに蛍リン光体粒子を被覆させるための局所的付着を可能にする。CVDを行わせる粒子のレーザー加熱はガラスやポリマーを融点以上には加熱せずに粒子の局所的加熱を行えるので、ガラスやポリマー性基板上の粒子にレーザー加熱を行うことができる。
【0203】
本発明による蛍リン光体粉体は通常の蛍リン光体粉体では見られない性質の独特の組み合わせを有している。これらの粉体は装置が本発明による蛍リン光体粉体の特性から直接もたらされる大幅に改良された性能を有する多数の装置で用いることができる。これらの装置としてはルミネセンスランプ及び情報やグラフィックスを視覚的に提供するための表示装置などである。こうした表示装置はテレビジョンなどのCRTに基づく表示装置、及びフラットパネルディスプレイなどである。フラット・パネルは従来の画像管を使わずにグラフィックと画像を示し、電力消費量も低い比較的薄い装置である。一般的に、フラットパネルディスプレイは表示パネル上に選択的に分散された蛍リン光体粉体を含んでおり、その励起源はそのパネルの後側にそれに近接されて配置されている。
【0204】
表示装置の場合、蛍リン光体層ができるだけ薄く、空隙もできるだけ少ないことが望ましい。図37は通常の蛍リン光体粉体を用いた画素での大型団粒化粒子を示している。装置3700は透明な表示スクリーンを有しており、FEDの場合、透明な電極層3704も含んでいる。蛍リン光体粒子3706は画素3708内に分散されている。蛍リン光体粒子は大型、団粒化されており、表面に多数の空隙と不均一性がある。これは輝度の減少と画質の低下につながる。
【0205】
図38は本発明による粉体を用いてつくられた同じ装置を示している。この装置は透明な表示スクリーンと透明な電極3814を含んでいる。蛍リン光体粉体3816は画素3818内に分散されている。これらの画素は通常の画素と比較してより薄く、均一性も高い。好ましい実施の形態で、画素を構成する蛍リン光体層の平均的厚みはその粉体の平均粒径の約3倍以下、好ましくは上記平均的粒径の2倍以下、そしてより好ましくは平均的粒径の約1.5倍以下である。こうした独特の特性が可能なのは、その蛍リン光体粒子の粒径が小さく、粒径分布が狭く、そして球状の形状をしていることなどによる。従って、この装置はより小さく、より均一な画素を形成できることと、かなり高い輝度により光散乱が大幅に減少され非ルミネセンス粒子によって失われる光の量が減少するのでずっと高い解像度を実現する。
【0206】
具体的に、本発明による蛍リン光体粉体の輝度はその層の薄さ、及び密度の高さによって強化される。粉体層は適切な粒径分布、好ましくは2モード分布の球状粒子によって形成されており、より薄く、明るい層がもたらされる。
【0207】
陰極線管を用いるCRT装置は、テレビジョンやコンピュータ・モニターなどの従来の表示装置を含む。CRTは表示スクリーンから所定の領域(画素)に配置されている陰極ルミネセンス蛍リン光体粒子で、1つあるいは複数の陰極からの電子を選択的に放出することで作動する。この陰極線管は表示装置から一定の距離に置かれ、この表示装置はスクリーンの粒径が大きくなると大きくなる。一定の画素で選択的に電子ビームを一定方向に向けることで、高解像度、フルカラー表示を行うことができる。
【0208】
CRT表示装置を図39に図式的に示す。この装置3902はその装置の背後部分に配置された陰極線管3904、3906、及び3908を含んでいる。この陰極線管は電子3910などの電子を発生させる。かけられる20−30kVの電圧が電子を表示画面3912の方に加速させる。カラーCRTでは、表示画スクリーンは図40に示すように赤(R)、緑(G)及び青(B)蛍リン光体でパターン化されている。3色の蛍リン光体画素は、グループ3914のように非常に近接して配置されており、多色画像をつくりだす。グラフィック出力は例えば電磁石3916などの手段を用いて表示スクリーン3012の方向に選択的に電子を向けることでつくりだされる。電子ビームは左から右、及び上から下にラスターされて、動画をつくりだす。電子は誤った蛍リン光体に向けられた電子を阻止するために開口金属マスクでもフィルタリングされる。
【0209】
蛍リン光体粉体は通常スラリーを用いてCRT表示スクリーンに塗布される。このスラリーは蛍リン光体粒子を、その溶液内での上記粒子の分散を助けるPVA(ポリビニル・アルコール)及びその他の有機化合物や金属クロム酸塩を含んでいる場合もある水溶液中に懸濁させることによって形成される。表示スクリーンをスピン・コーターなどの被覆装置内に配置して、スラリーをその表示スクリーンの内側表面上に付着させ、表面全体に広げる。表面を全体的に被覆すると同時に過剰なスラリーを振りとばすために表示スクリーンを回転させる。そしてスクリーン上のスラリーを乾燥させて、所定の点状あるいは線状パターンを有するシャドウ・マスクを通じて露出させる。露出された膜は現像され、過剰な蛍リン光体粉体は洗い流されて、所定の画素パターンを有する蛍リン光体スクリーンが形成される。異なった色の蛍リン光体がフルカラー表示をつくりだせるようにこのプロセスを連続的に行うことができる。
【0210】
一般的に、非常に均一な蛍リン光体粉体層厚で画素を形成することが望ましい。
蛍リン光体は表示スクリーンから剥離すべきでなく、色付きの蛍リン光体との相互汚染が起きてはならない。これらの特性は蛍リン光体粒子の形状、粒径、及び表面の状態によってもかなり影響を受ける。
【0211】
CRT装置は通常、そのルミネセンス要求が高いので、薄膜蛍リン光体以外の陰極ルミネセンス蛍リン光体粒子を用いる。そのスクリーンが本発明による蛍リン光体粒子など小さな粒径と均一な粒径分布を有する粒子でつくられている場合、粉体化蛍リン光体スクリーン上の画像の解像度を向上させることができる。CRT装置上の画像品質は粒子のパッキング空隙、蛍リン光体粒子の層の数など陰極ルミネセンスの発生に関連した要素によっても影響を受ける。つまり、電子ビームによって励起されない粒子は装置を通じての発光の透過を抑止するだけである。大型粒子及び団粒化した粒子は両方とも空隙をつくり、光透過ロスの増大にさらに寄与する。空隙内での反射でかなりの量の光が散乱されてしまう可能性がある。さらに、高解像度画像を得るためには、蛍リン光体層は薄く非常に均一な厚みを持っていなければならない。理想的には、蛍リン光体層の平均的な厚みはその蛍リン光体粒子の平均的な厚みの約1.5倍程度である。
【0212】
CRTは通常約20kVから30kVの高電圧で作動する。CRTのために用いられる陰極ルミネセンス蛍リン光体は高い輝度と優れた色度を有しているべきである。CRT装置で特に有益な陰極ルミネセンス蛍リン光体は緑色に対してはZnS:CuあるいはAl、青色に対してはZnS:Ag、そして赤に対してはYS:Euである。蛍リン光体粒子は本発明によってホスト物質の劣化あるいはアクチベータ・イオンの拡散を防ぐために好適に被覆することができる。シリカあるいはケイ酸塩被膜も蛍リン光体スラリーの流動性を改善することができる。これらの粒子は放出される光の性質を改変、強化するために粒子状のFeなどの顔料被膜を含むこともできる。
【0213】
同じ原理で作動する他のCRTに基づく装置はヘッドアップ及びヘッドダウン表示装置である。ヘッドアップ表示装置は例えばパイロットなどユーザーの目の近くに配置される小型で高解像度の表示装置で、ユーザーが注意をそらさなくてもよいように情報を提供することができる装置である。こうした表示装置は非常に高い輝度と良好な解像度を有している。同様に、ヘッドダウン装置は、例えば、パイロットにデータを提供するために航空機のコックピット内で用いられる。こうした蛍リン光体も明るく、長い寿命を有していなければならない。本発明による小型で、球状の蛍リン光体はそうした用途には理想的に適している。
【0214】
陰極ルミネセンス蛍リン光体を用いた他の装置は真空発光装置(VFD)である。VFDは約500ボルト以下、例えば40ボルトの励起電圧で作動する。最も一般的なVFD蛍リン光体は現在の段階ではZnO:Zn(赤)である。ZnS:CdS及びZn、Cd:Sも緑と赤に有効である。上に述べたように、本発明の蛍リン光体粉体はこうした低電圧装置で特に好適である。
【0215】
高解像度テレビジョン(HDTV)の導入は投射テレビジョン(PTV)に対する関心を増大させている。この方式では、3つの独立の陰極線管が粒子状蛍リン光体を含む管のフェースプレート上に投射されて3色投射画像を形成する。これら3つの画像は反射によって表示スクリーン上に投射され、フルカラー画像を形成する。画像形成で用いられる大きな倍率の故に、この陰極線管のフェースプレート状の蛍リン光体を強い、そして小さな電子スポットで励起する必要がある。
【0216】
最大励起密度は通常の陰極線管の場合の100倍以上である。通常、励起密度を上げると蛍リン光体の効率が低下する。上に述べたような理由から、本発明による陰極ルミネセンス蛍リン光体粉体はHDTV装置で特に有用である。
【0217】
CRTに基づく1つの問題点はそれが大型でかさばり、スクリーン・粒径に対して奥行きが大きすぎることである。従って、多くの用途で、CRTに基づく装置の代わりに用いるべきフラット・パネルの開発に大きな関心が集っている。フラット・パネルは軽量、携帯性、そして電力消費の少なさなど、CRTと比較して多数の利点を提供してくれる。フラットパネルディスプレイは単色、カラー表示装置のいずれの場合でも可能である。フラット・パネルは最終的には壁などにかけることができる薄い製品でテレビジョンなどのCRT装置に取って代わるであろうと考えられている。現在、フラットパネルディスプレイはCRT装置に比較してより薄く,軽量で、その消費電力もより少なくすることができるが、視覚品質とコスト・パフォーマンスがCRT装置より劣っている。
【0218】
CRT装置で陰極ルミネセンス蛍リン光体を効率的に起動させるために従来必要とされている高電子電圧と小電流はフラット・パネルの開発の妨げとなっていた。電界放出表示装置などのフラットパネルディスプレイのための蛍リン光体はより低い電圧、高電流密度、そして既存のCRT装置で用いられている蛍リン光体より高い効率で作動する。約12kVなどそうした装置で用いられる低い電圧はかけられる電圧に応じて数マイクロメートルから数十ナノメートルの範囲までの電子侵入深度をもたらす。従って、蛍リン光体粒子の粒径と結晶度を制御することは装置の性能にとって重要な意味を持つ。大型あるいは団粒化した粉体を用いた場合は、電子の小部分だけが蛍リン光体と相互作用する。広い粒径分布の蛍リン光体粉体を用いた場合も非均一な画素及び準画素が形成され、ぼんやりした画像がつくられてしまう。
【0219】
さらに、本発明による蛍リン光体粉体は励起電圧が12kV以下、例えば約8kV、そして好ましくは5kV以下などの励起電圧に対して特に適している。これは粉砕された粉体と比較して粒子の表面がクリーンであることと、表面欠陥が少ないことによる。
【0220】
フラットパネルディスプレイの1つのタイプは電界放出表示装置(FED)である。これらの装置は画像品質を維持しつつ、CRTのような粒径、重量、及び電力消費に関する問題をなくしてくれるので、従って、ラップトップ・コンピュータなどの携帯用電子装置にとっては特に有用である。FEDは表示装置の各画素に割り当てられた数千のエミッタを有するマトリクス・アレイ内に配置された低電力放出の数百万のコールド・マイクロチップから電子を発生させる。このマイクロチップ・エミッタは通常陰極ルミネセンス蛍リン光体スクリーンから約0.2ミリメートルの位置に配置されている。これによって薄い、軽量の表示装置が可能になる。
【0221】
図41は本発明の1つの実施の形態によるFED装置を高倍率で示す断面図である。このFED装置4180はバッキング・プレート4186に取り付けられた陰極4184上に搭載された複数のマイクロチップ・エミッタ4182を含んでいる。この陰極はゲートあるいはエミッタ・グリッドと絶縁セパレータ4190によって分離されている。陰極4184に向き合って、そして真空で隔てられて、蛍リン光体画素4192と透明な陽極4194を含むフェースプレート・アセンブリ4191がある。蛍リン光体画素層はペーストあるいは電気泳動で付着させることができる。FEDはその上に陽極4194がプリントされる透明なガラス基板4196を有している。作動中、正電圧がこのエミッタ・グリッド4188にかけられて、エミッタ・チップ4182上に強力な電場を形成する。電子4198はフェースプレート4191に移動して、高い正電圧に維持される。フェースプレート・コレクタ・バイアスは通常約1000ボルトである。数千のマイクロチップ・エミッタ4182をその表示装置の各画素のために用いることができる。
【0222】
FED装置に特に有用な陰極ルミネセンス蛍リン光体は緑色のためのSrGa:Eu、青色のためのSrGa、そして赤色のためのZnS:Agなどのチオシュウ酸塩などである。赤色のためにY:Euを用いることもできる。ZnS:AgあるいはCuも高電圧FED装置のために用いることができる。YSiOP:TbあるいはEuも有益である。FED装置で使用する場合、これらの蛍リン光体は好ましくは、例えば、非常に薄い金属酸化物被膜で被覆することが望ましいが、それは高い電子ビーム電流密度が硫黄を含んだ蛍リン光体ホスト物質の破壊や分解を引き起こす可能性があるからである。SiO及びAlなどの誘導体被膜も用いることができる。さらに、SnOやInなどの半導性被膜も二次電子を吸収する上で特に好適である。
【0223】
硫黄含有FED蛍リン光体のための被膜は好ましくはその平均的な膜厚が約1−10ナノメートル、より好ましくは約1−5ナノメートルである。約10ナノメートルを超える厚さの被膜は1−2kV電子の電子浸透が約10ナノメートル程度であるので、装置の明るさを低下させてしまう。こうした薄い被膜は上に述べたように好適に単層被膜でも可能である。
【0224】
FEDをさらに開発する上での主要な障害は十分な蛍リン光体粉体がないことである。FEDは低電圧蛍リン光体物質、つまり、約500ボルト以下など低負荷電圧下でも十分な光と高い電流密度を発生する蛍リン光体を必要とする。本発明による陰極ルミネセンス粉体はそうした低い負荷電圧下でも向上された輝度を示し、本発明による被覆された蛍リン光体粉体は高電流密度下での劣化に抵抗する。向上した輝度はその粒子の結晶性の高さ及び高純度によるものである。粉砕処理などのプロセスのせいで低結晶度及び不純度が高い蛍リン光体粒子は望ましい高い輝度を有していない。本発明による蛍リン光体粒子は10,000時間以上など、長時間にわたって輝度と色度を維持する能力を有している。さらに、蛍リン光体の球状形状は光の散乱を低下させ、従って、表示装置の視覚特性を改良してくれる。これらの粒子の小さな平均粒子は、低負荷電圧のせいで電子浸透深度がわずか数ナノメートルであるので、好適である。
【0225】
本発明は陰極ルミネセンス表示装置など他の表示装置にも適用できる。EL表示装置は非常に薄い構造で、非常に高解像度の画像をつくりつつ、対角線方向で数インチなど非常に小さなスクリーン・粒径にすることができる。これらの表示装置はその粒径が非常に小さいので、航空機のコックピット、小さな携帯用表示装置、及びヘッドアップ表示装置など非常に厳格な基準を必要とする多くの軍事的用途でも用いられる。これらの表示装置は2つの電極間に高い電圧をかけることで機能する。EL表示装置は最も一般的にはAC電気信号で駆動される。これらの電極は半導性蛍リン光体薄膜と接触しており、大きな電圧差が高温電子を発生させ、それらは蛍リン光体を透過し、励起及び発光を可能にする。
【0226】
EL法事装置を図42及び43に図式的に示す。このEL表示装置4220は2つの絶縁層4224と4226間に挟まれた蛍リン光体層4222を含んでいる。絶縁層の後側にバックプレート4228があり、これは列電極4230を含んでいる。この装置の表面にはガラス製のフェースプレート4232があり、これは透明なインジウム錫酸化物などでつくられた透明な行電極4234を含んでいる。
【0227】
現在の陰極ルミネセンス表示装置構成は薄膜蛍リン光体層4222を利用しており、通常は蛍リン光体粉体を用いていないが、本発明による非常に小さな単分散蛍リン光体粉体の使用はこうした装置で使用する場合に好適である。例えば、小さな単分散粒子を厚膜ペーストを用いてガラス基板上に付着させることができ、焼結させてよく結合した膜をつくることができ、従って、そうした膜を付着させるために現在用いられている高価なそして素材が限定されたCVD技術に取って代わる可能性がある。このようなよく結合された膜は大きな、団粒化した蛍リン光体粒子からはつくれないであろう。同様に、複合体蛍リン光体は現在陰極ルミネセンス表示装置で持ちられている比較的高価な多重積層スタックに代わるものとしての可能性を持っている。従って、この蛍リン光体と誘電性材料で構成される複合体蛍リン光体粉体を利用する可能であろう。
【0228】
陰極ルミネセンス表示装置で思量するのに特に好ましい蛍リン光体はZns:Cu、Cas:Ce、SrS:RE(RE=希土類)、そしてZnS:Mnなどの金属硫化物である。さらに、SrCaBa1−x−y:Ceなどの混合金属も用いることができる。さらに本発明にチオシュウ酸塩も陰極ルミネセンス表示装置での使用に利点を持っている。好ましくは約5−7原子パーセントのEuを含むSrGa:Eu、そして好ましくは約0.5−3原子パーセントのCeを含むCaGa:Ceなどの酸化物に基づく蛍リン光体も有用である。
【0229】
本発明による陰極ルミネセンス蛍リン光体粉体の別の使用法は陰極ルミネセンスランプにおける使用である。陰極ルミネセンスランプはポリマー性基板などの固い、あるいはフレキシブルな基板上で形成され、普通は、膜スイッチ、移動電話、時計、パーソナル・デジタル・アシスタントなどのためのバックライトとして用いられる。単純な陰極ルミネセンスランプを図44に図式的に示す。装置4440は2つの電極4444及び4446に挟まれた電極と、透明でなければならない前部電極4444を含んでいる。この複合体層4442はポリマー基質4450内に分散された蛍リン光体粒子を含んでいる。
【0230】
陰極ルミネセンスランプは高速道路信号やそれと同様の装置で使用するためにステンレス鋼などの固い基板上に形成することもできる。この固い装置は蛍リン光体粒子層、セラミックス層、そして透明な伝導性電極層を含んでいる。
【0231】
陰極ルミネセンスランプも、高速道路の標識などでの使用ためにステンレス鋼などの固い基板上にも形成することができる。この固い装置も蛍リン光体粒子層、セラミック誘電層及び透明な誘導電極層を含んでいる。これらの装置は半導体セラミック陰極ルミネセンスランプ(SSCEL)としてしばしば引用される。これらの固い装置を形成するために、蛍リン光体粉体が通常、固い基板上に噴霧される。
【0232】
陰極ルミネセンスランプ製造は現在、その材料としてZnS蛍リン光体粉体ホスト材料などの単純な金属硫化物のみを用いている。ZnS:Cuは青色を発生させ、ZnS:Mn,Cuはオレンジ色を発生させる。これらの金属は、特に他の色を発生させるためのフィルターにかける場合、その信頼性と輝度は貧弱である。デザイナーに対して新しい市場分野に浸透する能力を提供するために、それ以外の色を発生させるための信頼性が高く、輝度も高い粉体が特に陰極ルミネセンスランプ産業のために絶対的に必要である。蛍リン光体層は、光の散乱を防ぎ、水の浸入を最小限に抑えるために、輝度を犠牲にすることなく、厚みを薄くし、かつ密度を高くすることが望ましい。輝度の高い陰極ルミネセンスランプは厚みの薄い蛍リン光体層を必要とし、この蛍リン光体層はこれまでの方法では製造することの出来ないような粒子径の小さい蛍リン光体粉体を必要とする。これらの薄い層はまた蛍リン光体粉体をあまり使用しない。現在使用されているELランプは平均粒子径が5μmかそれ以上の粉体を利用している。粒子径が小さくその分布幅の狭い本発明の蛍リン光体粉体は輝度、信頼性が高く、使用寿命も長いELランプの製造を可能にする。さらに本発明の蛍リン光体粉体は、蛍リン光体層が輝度や他の好ましい性質を犠牲にすることなく厚みを薄くすることができるELランプの製造も可能にする。従来のELランプはおよそ100μmの厚みの蛍リン光体層を有している。本発明による粉体は、例えば10μmなど、15μm以下の蛍リン光体層を有するELランプの製造を可能にするという利点を持つ。この蛍リン光体層の厚みは重量平均粒子径の約3 倍以下、より好ましくは2倍以下であるのが理想的である。
【0233】
上に述べたように、陰極ルミネセンスランプで使用するための好ましい陰極ルミネセンス蛍リン光体は青や青―緑のためにはZnS:Cu、オレンジ色のためにはZnS:Mn,Cuを含んでいる。ELランプに適用するのに好適な他の材料としては、他の色を発色させるためにBaS:RE,CuあるいはMn,CaS:REあるいはMn、SrS:REあるいはMn及びSrCaBa1−x−yS:REを含んでいる(ここでREは希土類元素を示す)。CaS:GaあるいはCu及びSrS:GaあるいはCuも有益である。SrGa及びCaGaなどの本発明によるチオシュウ酸塩蛍リン光体なども陰極ルミネセンスランプでの使用に特に有益である。上で述べたように、これらの蛍リン光体の多くは従来の技術では製造することが出来ず、ELランプの製造には実用化されないでいた。ELランプで用いられる際、これらの蛍リン光体は加水分解や他の拒絶反応による蛍リン光体の劣化を防ぐために被覆することが必要である。これらの被膜は約2から50ナノメートルの平均的な厚みを持つのが望ましい。
【0234】
AC粉体EL(ACEL)に用いられる陰極ルミネセンス粉体は通常、適度に導電性のある相をその表面にあるいは内部に含んでいることを必要とする。例として、ZnS:Cuは各粒子の中に銅硫化物結晶体を含むZnSホストとして存在していることが知られている。この銅硫化物結晶体はZnS格子内の微量添加物を刺激して光の放射を起こす電界の源である。酸化物に基づく、微量添加金属没食子酸塩(MGa)などの他の陰極ルミネセンス粉体の場合には、これらの粉体は各粒子内の伝導性の追加的相あるいは粒子表面上の伝導性被覆なども含んでいるべきである。例えば、本発明のこの実施の形態によれば、ZnGaはZnOなどの追加的伝導相で被覆されるかあるいはそれを含んでいる場合は良好な性能を示す。
【0235】
上に述べたように、陰極ルミネセンスランプは携帯電話やページャーや個人デジタル・アシスタントや腕時計、計算機といった小型の電子機器においてアルファベットを表示するためのバックライトとしてますますその役割が重要になってきている。これらは計器版や携帯広告表示装置、安全ライト、救助や安全装置のための緊急ライト、写真のバックライト、膜スイッチ及び他の同様な用途に対しても有用である。陰極ルミネセンス装置に伴う問題の一つは、これらが通常、光を作り出すために交流電圧(AC)の使用を必要とすることである。実用的な直流(DC)陰極ルミネセンス(DCEL)装置の開発に重大な障害となるのは、蛍リン光体粉体がDC電界のもとで適切に機能しなければならない点である。DC電界のもとで機能する蛍リン光体粉体は少なくとも3つの必要条件、すなわち;1)粒子の平均粒径が小さいこと;2)粒径が均一であること、つまり、粒径分布が狭く大きい粒子や団粒などを含んでいないこと、そして;3)粒子が良好なルミネセンス、特に高い輝度を有する、という条件を満たさねばならない。本発明の蛍リン光体粉体はこれらの必要性を好適に満たすことができる。従って、本発明による陰極ルミネセンス蛍リン光体粉体はDC電圧をAC電圧に変換する変換器を必要とせず陰極ルミネセンス装置の使用を好適に実現することができる。こうした装置は現時点では市場に流通可能とは思われていない。DC電圧を使用する装置に使用する場合、前記蛍リン光体粒子を、例えば銅メタルなどの金属など、導電性化合物あるいは銅硫化物などの導電性化合物の薄い層で被覆するのが好ましい。
【0236】
本発明は光ルミネセンス蛍リン光体にも適用できる。光ルミネセンス蛍リン光体はプラズマ表示装置である。プラズマ表示装置は電流CRT同士と比肩できる程度の画像品質を有しており、対角線の長さを20−60インチ程度の大きな粒径にまで簡単にスケール・アップすることができる。この表示装置は明るく軽量で、厚みは約1.5−3インチである。プラズマ表示装置は蛍光照明と同様に機能する。プラズマ表示においては、プラズマ源、通常はガス混合物は向き合って配置されたアドレス可能な電極アレー間に配置されており、高エネルギーの電場がそれらの電極間で発生される。臨界電圧に達すると、プラズマがガスから形成され、UV光子がプラズマによって放出される。カラー・プラズマ表示装置はガラス・フェースプレートの内側に付着された3色光ルミネセンス蛍リン光体粒子を含んでいる。この蛍リン光体は光子によって照射されると選択的に光を放出する。プラズマ表示装置は比較的低い電流で作動し、ACまたはDC信号で駆動することができる。ACプラズマ・システムは電極上で誘導層を用い、それがコンデンサを形成する。このインピーダンスは電流を制限し、ガス混合体に必要な電荷を提供する。
【0237】
プラズマ表示装置の断面を図45に示す。プラズマ表示装置4540は平行な位置関係で向きあった2つのパネル4542及び4544を有している。通常はキセノンを含む作業ガスがこれら2つの向きあったパネル4542及び4544の間に配置、密封されている。後部パネル4544は間隔をおいて平行な位置関係にある複数の電極(4548)(陰極)がプリントされているバッキング・プレート4546を含んでいる。絶縁体4550がこれらの電極を覆っており、スペーサー4552が後部パネルを前部パネル4542から分離するために用いられる。
【0238】
前部パネル4542は視聴者(V)が見た場合は透明なガラス・フェースプレート4554を含んでいる。このガラス・フェースプレート4554の後部表面に複数の電極4556(陽極)が間隔をおいて平行な位置関係でプリントされている。絶縁体4558がこの電極を光ルミネセンス蛍リン光体粉体4560の画素から分離している。蛍リン光体粉体4560は通常厚膜ペーストを用いて塗布される。この表示装置4540が組み立てられると、電極4548と4556は相互に垂直な位置関係になって、XYグリッドを形成する。従って、蛍リン光体粉体の各画素は交差電極4548と4556によって定義されるXY座標にアドレスすることで起動される。
【0239】
プラズマ表示装置で現在問題となっていることのひとつは蛍リン光体粒子の崩壊時間が長いことで、これは動く画像のテールをつくりだしてしまう。蛍リン光体の化学的性質を制御することで、こうした崩壊に関連した問題を減少させることができる。さらに、球状で、団粒化しないというこの蛍リン光体粒子の性質はプラズマ表示パネルの解像度を向上させる。
【0240】
プラズマ表示装置は通常キセノン・ガス組成物を用いて作動する。4−6原子パーセントEuが微量添加された本発明によるY:Eu蛍リン光体は赤色を表示するプラズマ表示装置にとって有用である。14−20原子パーセントEuを含む(Y,Gd)BO蛍リン光体も赤色のために有用である。さらに、好ましくは0.05−2原子パーセントMnを含む本発明によるZnSiO:Mn蛍リン光体は緑色の発色に有用である。本発明によるBAM蛍リン光体、特に約8−12原子パーセントEuを含むものは青色の発色に有用である。この蛍リン光体はプラズマによる劣化を減らすためにMgOなどによって好適に被覆することができる。
【0241】
本発明による光ルミネセンス蛍リン光体は安全管理目的のための特殊タッグとしても有用である。この用途においては、通常の照明の下では検出できない蛍リン光体が特殊なエネルギーで照射されると見えるようになる。
【0242】
安全管理のために、蛍リン光体粒子をインクジェットや注射器の使用、あるいはスクリーン印刷などの標準的なインク付着法によって表面に塗布することができる液体内に分散される。本発明による蛍リン光体粒子は粒径が小さく、粒径分布も狭いので、プリントされたフィーチャー・粒径と複雑さをさらによく制御できるようにしてくれる。本発明による方法は通常の方法では使えない蛍リン光体化合物の独特な組み合わせも可能にする。こうした蛍リン光体は通貨や秘密資料、爆発物及び軍需品、あるいは確認を必要とする他のいずれの物品にでも塗布することができる。蛍リン光体粉体はインク内に分散させて、資料や郵便封筒など他の物品上に印を形成するために用いることができる。
【0243】
安全管理目的のために有益な蛍リン光体化合物は、好ましくは6−9原子パーセントのEuを含むY:Euである。14−20原子パーセントのEuを含む(Y,Gd)BO:Euも有用である。こうした蛍リン光体は赤外線で励起されると可視光を放出する。本発明による蛍リン光体はこうした応用例で多くの利点を提供する。例えば、この粒子の小さな粒径と単分散性は粒子を少量でも供給できるようにしている。
【0244】
上に述べたことに加えて、本発明による蛍リン光体は電子ビーム付着、スパッタリングなどによる蛍リン光体薄膜付着のための標的物質としても用いることができる。これらの粒子を固めてそのプロセスのための標的を形成することができる。これら粒子内のアクチベータ・イオンの均一な濃度はより均一で明るい膜をもたらす。
【0245】
さらに、本発明による光ルミネセンス蛍リン光体粒子は通常の頭上照明管やラップトップ・コンピュータで一般的に用いられるLCD装置に後側から光を与えるために用いられるランプなどを含め蛍光照明要素として使用することができる。通常、こうした表示装置のための励起源は水銀蒸気を含んでいる。
【0246】
蛍光管状照明要素を図48に図式的に示す。照明要素4600は通常水銀を含むガス組成物を含んで密封されているガラス管4602を含んでいる。ガラス管4602の端部はガス組成物をイオン化して、それによってそのガラス管4602の内側表面上に配置された光ルミネセンス蛍リン光体4608を刺激する電極4604及び4606を含んでいる。異なった色の蛍リン光体の混合体は蛍光照明装置で通常望まれる白色光をつくりだす。
【0247】
図47はガラス管4602上の本発明による蛍リン光体4608をクローズアップして示している。小さくて球状の蛍リン光体はその平均的厚みが蛍リン光体粒子4608の平均粒径の3倍以下に減少された均一な薄膜を形成する。この均一で薄い表面は通常の蛍リン光体粉体と比較してより少ない消費電力で、明るい、そして均一な光を好適に発生する。なお、この照明要素は種々の形状、形式を持つことが出来、多くの場合、LCDバックライトとして使用するため非常に細い管状の形状をしている。こうしたLCDバックライトは、それらが粉体がその照明要素内に容易に分散するように小さくて、球状であり、そして狭い粒径分布を有している蛍リン光体粉体を必要とするので、こうしたLCDバックライトは特に適用可能である。
【0248】
:Euを含んだこうした蛍光照明装置こうした好ましい光ルミネセンス蛍リン光体、特に約6−約9原子パーセントのEuを含んだもの、約14−約20原子パーセントEuを含んだ(Y,Gd)BO:Euも有益である。他の有用な蛍リン光体には特に約0.05−約2原子パーセントのMnを含んだZnSiO:Mn、及び約6−約12原子パーセントのEuを含んだBAM:Euなどがある。白色光要素をつくるために上にのべたこれらの蛍リン光体の組み合わせを用いることができる。これら照明要素を形成するためには、蛍リン光体粒子は通常スラリーなどの液体媒体中に分散されて、その後、ガラス管の内部に塗布され、乾燥して蛍リン光体層を形成する。
【0249】
本発明はLEDにも適用される。LED(発光ダイオード)は外部電気回路により電源が与えられると特定の波長の光を放出する個体装置である。LEDの利点はその輝度の高さと消費電力が低いことである。LED効率は通常45ルーメン/ワット程度であり、蛍光ランプの場合は約12ルーメン/ワット程度である。LEDは蛍光電球や恐らくは蛍光ランプの代わりに家庭及び交通信号や大面積表示装置及び安全管理用装置など商業用照明のために用いることが計画されている。安全管理装置として使用する場合、蛍リン光体は書類、通貨、パスポート、スタンプ、銀行カードなどで用いられ、LEDは蛍リン光体発光を行うことで物品の正当性を確認するために用いられるであろう。
【0250】
LEDは通常GaNあるいは(In、Ga)NあるいはGap、GaAs、あるいはZnSeなどの3/5あるいは2/6組成物などの窒化物に基づいている。ポリマーLEDも知られている。これらの物質の性質とそのバンド−ギャップは放出される光の波長を決め、放出された光はUVから赤色光線の間の範囲の波長を有している。
【0251】
現在、最も一般的なLEDは約450nm程度の波長を有している。LEDに基づく白色光源を持つことが望ましいが、これはLEDだけでは不可能である。しかしながら、LEDにより放出された光の色は、そのLEDによって放出された光が蛍リン光体粉体を励起して、その蛍リン光体粉体が異なった波長で光を発光するようにLEDの上部に光ルミネセンス蛍リン光体粉体などの発光物質の層を配置することで改変することができる。適切な蛍リン光体粉体を選択することで、白色LEDをつくることができる。青色−白色LEDの例はYAG:Ceであり、この場合YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)はY1512である。(Y,Gd)1512:Ce及び(Y,Gd)(Ga,Al)12:Ceなど、微妙な色温度の変化をもたらす組成上の多数の変更が可能である。
【0252】
LED装置のために有用な他の物質はBAM:Euなど既存のプラズマTV蛍リン光体である。今後の世代のLEDは現在照明で用いられるものなど、UV範囲の光を放出するように最適化されたUV励起蛍リン光体であり、プラズマTV産業は表示のためのRGBカラーを実現する上で有用であろう。IR範囲の光を放出するLEDも存在しており、そしてIRを可視光線に変える上でアップコンバータ蛍リン光体が有用であろう。
【0253】
本発明による粉体は上に述べたようなLED装置で特に有用であろう。特に、この蛍リン光体粉体は、それらの粉体の粉砕処理が不必要であるので高い効率を有しており、清浄で欠陥のない表面をもたらす。その球状粒子形状と2モード粒径分布はより優れた蛍リン光体層特性を通じてより高い輝度をもたらすであろう。さらに、スプレイ処理の多方面での可能性は複合体組成物を含めて既存の、そして新しい組成物の形成も可能にしてくれる。
【0254】
本発明はまた、X線蛍リン光体に対しても適用できる。本発明によるX線蛍リン光体を用いての1つの好ましい装置はX線画像強調装置である。図48に示されているように、対象物4802がX線源4804と画像強化スクリーン4806との間に配置される。画像強調スクリーンの背後に、画像を捕らえる写真フィルム4808が配置されている。X線が対象4802を通過すると、一部は吸収され、屈折されて、得られるX線パターンが強化スクリーン4806上に投射される。このスクリーン4806はX線蛍リン光体を含んでおり、この蛍リン光体がX線エネルギーを可視光線に転化し、そしてその光が写真フィルム4808にあたって、画像をつくりだす。
【0255】
X線画像強化スクリーンの断面を図49に示す。スクリーン4900は2つの強化スクリーン4902及び4904を含んでいる。これらのスクリーンはそれぞれベース4906及び4908と、X線蛍リン光体の層4910及び4912を含んでいる。X線はX線蛍リン光体にあたり、このX線蛍リン光体が可視光線を放出して、写真フィルム4919上に画像を形成する。
【0256】
X線画像形成用の蛍リン光体は高いX線吸収能力、高密度、及びそのフィルムの感度に合った青色あるいは緑色発光を発生させる。こうした必要条件を満たす特定のX線蛍リン光体は好ましくは約5−約20原子パーセントのTbを含むGdS:Tb、好ましくは約10−約20原子パーセントのTbを含む(Y,Gd)BO:Tbなどである。他のX線蛍リン光体はLuSiO、GdTaO、PbHfO、HfO、及びGdGa12などである。CaWO、SrWO、及びPbWOなどのタングステン酸塩も有益である。
【0257】
本発明によるX線蛍リン光体製品はそれらの蛍リン光体が高い輝度を有する薄い、均一な層を形成できるので強化スクリーンの製造にとって好適である。この蛍リン光体の高い相対密度は画像増強装置の効率と解像度も向上させる。
【実施例】
【0258】
イットリウム酸化物蛍リン光体粉体バッチを本発明に基づいて製造した。Y及び8.6原子パーセントEuを含む蛍リン光体をつくるために硝酸イットリウムと硝酸ユーロピウムで構成される水溶性蛍リン光体溶液を形成した。総蛍リン光体濃度は最終製品上で7.5重量パーセントであった。
【0259】
溶液は1.6MHzの周波数で超音波トランスデューサを用いて霧化された。空気はキャリア・ガスとして用いられ、エアロゾルは800℃の温度のチューブ式加熱炉を通じて移送された。加熱炉内での総居留時間は約1−2秒であった。800℃で熱分解することにより低結晶性のイットリウム化合物の中間前駆体粒子が形成された。
【0260】
中間前駆体粒子はその後、空気中で1400℃の温度で60分間、バッチ・モードで加熱された。加熱ランプ量は10EC/分である。
創られた粉体を図50のSEM顕微鏡写真に示す。また粒子径分布を図51に示す。平均粒子径は2.476μmであり、粒子の90パーセントは4.150μm以下の大きさである。図52に示すX線回折パターンは粒子がほぼ相純粋なYであることを示している。
【0261】
ケイ酸亜鉛粉体バッチを本発明に基づいて製造した。硝酸亜鉛と硝酸マンガンで構成される前駆体溶液をコロイド状シリカを用いて調製した(Cabot L−90,Cabot Corporation,Massachusetts)。50モルパーセント・シリカ過剰分は前駆体液内で用いられ、マンガンの濃度は5原子パーセントである。総前駆体濃度は最終製品で約7.5重量パーセントであった。液体溶液は1.6MHzの周波数で超音波トランスデューサを用いて霧化された。空気がキャリア・ガスとして用いられ、エアロゾルは900℃の温度のチューブ式加熱炉を通じて移送された。加熱炉内での総滞留時間は1−2秒であった。900℃で熱分解することによって、低い結晶性をもつ中間前駆体粒子が出来上がった。
【0262】
中間前駆体粒子はその後、空気中で1175℃の温度で60分間、バッチ・モードにて加熱された。加熱ランプ量は10EC/分であった。
つくられた粉体を図53のSEM顕微鏡写真に示す。粒子径分布は図54に示されている。平均粒子径は2.533μmであり、粒子の90パーセントは4.467μmの大きさであった。図55のX線回折パターンは粒子がほぼ相純粋なZnSiOであることを示している。
【0263】
チオシュウ酸塩の製造のために、2モル当量硝酸ガリウム(Ga(NO)及び1モル当量硝酸ストロンチウム(Sr(NO)を含む水溶液を作成した。硝酸ユーロピウム硝酸(Eu(NO)の約0.05モル当量も加えられた。
【0264】
水溶液を約1.6MHzの周波数の超音波トランスデューサを用いてエアロゾルに転化した。エアロゾルは、前記溶液をスプレイ転化するため、約800℃の温度に加熱された加熱炉を通じて、空気中を移送された。中間生成物は平均粒子径が小さく、低純度のSrGa酸化物であった。
【0265】
酸化物中間前駆体性製品はその後、HS及び窒素を1:1の割合で含む流動ガス下で900℃で約20分間加熱された。その結果できた粉体は実質的に良好な結晶性及び良好な発光質を有する相純粋なSrGa:Eu(3原子パーセントEu)であった。
【0266】
別の実施例で、ストロンチウム、炭酸塩、硝酸ガリウム及び硝酸ユーロピウムを好適な割合で配合することによってSrGa:Euを調製した。総前駆体濃度は5重量パーセントであった。
【0267】
液体溶液は1.6MHzの周波数で超音波トランスデューサ用いて霧化された。空気がキャリア・ガスとして用いられ、エアロゾルは800℃に加熱される加熱炉を通じて移送された。このプロセスで約4原子パーセントEuを有するSrGa:Euが形成された。この粉体を図56に示す。
【0268】
以下の実施例は本発明に基づくBAM蛍リン光体粉体及びその粉体を製造する方法の利点を示すものである。
1.BAM前駆体の選択
アルミニウム硝酸塩水和物(Al(NO・9HO)を用いて、Ba0.95Eu0.05MgAl1017(すなわち微量添加物としての原子パーセントユーロピウム)に基づいて5重量パーセント溶液がつくられた。前記溶液を攪拌すると硝酸バリウムの結晶性沈殿物が得られた。4当量分のエチレン・グリコールをキレート剤として加えたところ、硝酸バリウムの溶解性が増大した。しかし沈殿物は残存した。
【0269】
硝酸アルミニウムを含み5、7.5及び10重量パーセントの総前駆体濃度を有する同様な溶液を調製した。ポリエーテルを第二キレート剤として加えたところ、硝酸バリウムの溶解性が増大した。この結果を表IIIに示す。
【0270】
【表3】

実施例BAM−1&BAM−2で得られた溶液を約1.6MHzの周波数で超音波発生装置を用いて霧化し、ここに述べられているように、750℃の温度で加熱炉を通じて移送した。実施例BAM−1からは多少の粉体が回収されたが、両方ともわずかしか霧化されなかった(低収率)。回収された粉体の外見は茶色/黒色であった。流動形成ガス(7%H/93%N)の存在下で前記粉体を1350℃まで加熱することによって、X線回折で示されるような相純粋な灰色粉体を製造した。さらに空気中で1350℃の温度で2時間加熱処理を加えることで白色の相純粋な粉体を製造した。
【0271】
しかし、前駆体としての硝酸アルミニウムは硝酸バリウムにともなう溶解性の問題を克服するための実用的な代替品にはならないと結論された。
2.BAM処理温度
上に述べたように、燻蒸粒子状アルミナが前駆体成分として選択された。硝酸ユーロピウム、硝酸バリウム及びマ硝酸グネシウムを最終BAM組成物でその総前駆体濃度が7.5重量パーセントとなるような割合で、残留前駆体として用いられた。溶液はエアロゾルを形成するために約1.6MHzの周波数で超音波トランスデューサを用いて霧化された。このエアロゾルは表IVに示すようないろいろな温度でチューブ式加熱炉を通じて移送された。
【0272】
【表4】

700℃以下では硝酸バリウムは十分には分解しなかった。スプレイ転化中間製品をつくるための好適な温度範囲は少なくとも約700℃から好ましくは800℃から900℃の間であると結論づけられた。
【0273】
スプレイ転換中間粉体のそれぞれのサンプルを10%H/90%Nの形成ガス下で2時間1500℃で加熱処理し、各粉体のサンプルは空気中で1時間、1400℃の温度下で加熱処理した。各ポストの処理でつくられた粉体は相純粋ではなく(BaAl不純物)、形成ガス内で処理される粉体と空気中で処理される粉体とのX線回折パターンには事実上相違はなかった。
3.BAM前駆体濃度
上記確認されたアルミン酸塩不純物を除去するために、前記前駆体溶液の金属化学当量を変化させた。溶液及び処理の結果を表Vに要約して示す。すべての溶液は約1.6MHzの周波数で超音波霧化器を用いてエアロゾルに転化され、加熱炉の中で750℃の温度でスプレイ転化された。
【0274】
【表5】

実施例BAM−8、9及び10でマグネシウム含有量を増加させてもアルミン酸バリウム相の減少にはつながらなかった。しかし、バリウム及びマグネシウムの割合を一定に維持しながらアルミニウムの含有量を減少させると、相純粋なBAMが製造された。従って、相純粋BAMの製造のためには40%かそれ以上の前駆体内のアルミニウムの過剰分の存在が望ましいということが結論づけられた。
【0275】
光ルミネセンス(PL)データは、おそらくユーロピウムのEu2+状態への還元によって還元性雰囲気で処理される粉体の場合に最高の強度となることを示している。
前記の例に基づいて、BAM粉体が以下のように製造した。硝酸バリウMム、硝酸ユーロピウム、硝酸マグネシウム及びコロイド状アルミナを、BAMの当量に基づいて約8重量パーセントの濃度を有する前駆体溶液内に形成した。ユーロピウムは5原子パーセントで組み込まれた。溶液は約1.6MHzの周波数で超音波トランスデューサを用いて霧化した。エアロゾルはスプレイ転換された中間前駆体粉体を形成するために950℃の反応温度で、チューブ式加熱炉内で熱分解された。粉体はその後、H/N雰囲気の下で1450℃の温度で、2時間加熱処理された。この粉体を図57の顕微鏡写真に示す。粉体の粒子径分布は図58に示されている。平均粒子径は1.88μmであり、重量による粒子の90%は大きさの面では3.51μm以下であった。粉体は強い光ルミネセンスを示した。
【0276】
またイットリウム・ガドリニウムホウ酸塩粉体バッチも本発明に基づいて製造した。3及び16原子パーセントのEu濃度のY:Gd率を有するa(Y,Gd)BOをつくるために、硝酸イットリウム、硝酸ガドリニウム、硝酸ユピウム及びホウ酸を含む液体溶液を形成した。総前駆体濃度は最終生成物に基づいて8.0重量パーセントである。
【0277】
液体溶液は1.6MHzの周波数で超音波トランスデューサを用いて霧化された。空気はキャリア・ガスとして用いられ、エアロゾルは950℃の温度を有するチューブ式加熱炉を通じて移送された。加熱炉内での総滞留時間は約1−2秒である。950℃での熱分解を行ったところ、低い結晶性を有する中間前駆体粒子が得られた。
【0278】
中間前駆体粒子はその後、空気中で1150℃の温度で60分間バッチ・モードで加熱された。加熱ランプ量は10EC/分であった。
つくられた粉体を図59のSEM顕微鏡写真に示す。粒子径分布は図60に示されている。平均粒子径は2.139μmであり、前記粒子の90パーセントは3.608μm以下の大きさであった。図61のX線回折パターンは粒子がほぼ相純粋なホウ酸イットリウム及び高い結晶性を有するホウ酸ガドリニウムであることを示している。
【0279】
X線蛍リン光体化合物、X線蛍リン光体として有用なY1.88Gd0.12SiO:Ce,を本発明に基づいて製造した。0.5原子パーセントのCeを含む前述の化合物をつくるために、硝酸イットリウム、硝酸ガドリニウム、硝酸セリウム及びコロイド状シリカ(Cabot HS−5、Cabot Corporation,Boyertown,PA)を含む前駆体溶液が形成された。総前駆体濃度は最終化合物の当量に基づいて5重量パーセントであった。液体は1.6MHzの周波数で超音波トランスデューサ操作を用いてエアロゾルに霧化され、エアロゾルは中間前駆体粒子をつくるために約650℃の温度を有する加熱炉を通じて移送された。
【0280】
中間前駆体粒子はその後空気中で1350℃の温度で1時間バッチ焼成された。つくられた粉体は粒子径が小さく、粒子径分布が狭かった。
上に本発明のいろいろな実施例が詳細に示したが、これらの実施例の改変及び適用が可能であることは当業者にも自明であろう。しかし、それらの修正や適用も本発明の精神及びその範囲内であることは容易に理解されよう理解されるところであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ルミネセンス蛍リン光体粒子を含む安全管理用製品であって、
前記粒子は、0.1μmから10μmの体積平均粒径を有するとともに球状の形態をしており、かつ前記粒子の少なくとも70体積パーセントが前記平均粒径の2倍以下である、安全管理用製品。
【請求項2】
前記蛍リン光体粒子は、イットリウム酸化物、イットリウム−ガドリニウム・ホウ酸塩、ケイ酸亜鉛、バリウム・マグネシウム・アルミン酸塩及びアルミン酸バリウムからなる群より選択される化合物を含む、請求項1に記載の安全管理用製品。
【請求項3】
前記蛍リン光体粒子は、印刷された印の形状である、請求項1に記載の安全管理用製品。
【請求項4】
前記製品は、通貨の形態である、請求項1に記載の安全管理用製品。
【請求項5】
前記粒子は、0.3μmから5μmの体積平均粒径を有する、請求項1に記載の安全管理用製品。
【請求項6】
前記粒子はイットリウム酸化物を含む、請求項2に記載の安全管理用製品。
【請求項7】
前記粒子は、Eu、Tb及びそれらの組み合わせからなる群より選択される微量添加物を更に含む、請求項6に記載の安全管理用製品。
【請求項8】
前記粒子はイットリウム−ガドリニウム・ホウ酸塩を含む、請求項2に記載の安全管理用製品。
【請求項9】
前記粒子は、Euを更に含む、請求項8に記載の安全管理用製品。
【請求項10】
前記粒子はバリウム・マグネシウム・アルミン酸塩を含む、請求項2に記載の安全管理用製品。
【請求項11】
前記粒子は、Mn及びEuからなる群より選択される微量添加物を更に含む、請求項10に記載の安全管理用製品。
【請求項12】
前記粒子はアルミン酸バリウムを含む、請求項2に記載の安全管理用製品。
【請求項13】
前記粒子の少なくとも90体積パーセントが前記平均粒径の2倍以下である、請求項1に記載の安全管理用製品。
【請求項14】
前記粒子は、少なくとも25ナノメートルの平均結晶体サイズを有する結晶体を含む、請求項1に記載の安全管理用製品。
【請求項15】
前記粒子は1原子パーセント以下の不純物を含む、請求項1に記載の安全管理用製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図51】
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【図52】
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【図54】
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【図55】
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【図58】
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【図60】
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【図61】
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【図50】
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【図53】
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【図56】
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【図57】
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【図59】
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【公開番号】特開2010−272544(P2010−272544A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183169(P2010−183169)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【分割の表示】特願2000−567645(P2000−567645)の分割
【原出願日】平成11年8月26日(1999.8.26)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】