説明

光伝送システム、光伝送装置及び波長分散補償方法

【課題】消費電力の増大を抑制しつつ、高速な光伝送を実現すること。
【解決手段】ROADMノード100は、光信号を隣接するノードへ増幅中継するとともに、中継される光信号から光受信器300宛ての信号をドロップして光受信器300へ出力する。このとき、ROADMノード100は、ドロップされた後の信号をDCMによって波長分散補償し、光受信器300へ出力する。すなわち、ROADMノード100は、隣接するノードへ中継する光信号に対しては、DCMによる波長分散補償をせずに、自ノードにおけるドロップ信号に対してDCMによる波長分散補償を行う。光受信器300は、ドロップ信号を電気デジタル信号に変換し、変換により得られた電気デジタル信号に対する波長分散補償をDSPにおいて実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送システム、光伝送装置及び波長分散補償方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光伝送システムのさらなる高速化が望まれており、伝送レートを例えば10Gbit/s又は40Gbit/sから100Gbit/sに向上することが検討されている。伝送レートが向上すると、信号の伝送に関する条件を良好に保つことが要求され、伝送特性が厳しくなる。具体的には、100Gbit/sの伝送レートでは、10Gbit/s及び40Gbit/sの場合と比べて、必要なOSNR(Optical Signal to Noise Ratio:光信号対雑音比)が10倍程度高くなり、波長分散及びファイバ非線形効果による信号劣化量が100〜1000倍に大きくなると見積もられる。
【0003】
また、10Gbit/s及び40Gbit/sの光伝送システムでは、伝送路上に設けられる各ノードに波長分散補償器(Dispersion Compensation Module:以下、「DCM」という)が配置されており、DCMにおける光挿入損失によって伝送距離が制限される。したがって、伝送特性が厳しい100Gbit/sの光伝送システムでは、DCMにおける光伝送損失がさらに重大な問題となる。
【0004】
このような状況の下で、100Gbit/sの伝送レートでも10Gbit/s及び40Gbit/sと同等の伝送距離や波長間隔を実現するために有用な技術として、デジタルコヒーレント受信方式がある。デジタルコヒーレント受信方式は、送信側において位相変調された信号を受信側において高速デジタル信号処理によって波長分散補償し、復調する技術である。このようなデジタルコヒーレント受信方式によれば、NRZ(Non Return to Zero)変調方式又はRZ−DPSK(Return to Zero-Differential Phase Shift Keying)変調方式などの方式で光強度変調された10Gbit/s又は40Gbit/sの信号を直接検波受信方式で復調するよりも、波長分散耐力などを格段に向上することができる。このため、伝送路上の各ノードにおけるDCMを取り除き、受信側における高速なDSP(Digital Signal Processor:デジタル信号処理器)によって波長分散補償をすることが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−245706号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Oda S. et al. "112 Gb/s DP-QPSK Transmission Using a Novel Nonlinear Compensator in Digital Coherent Receiver"、Optical Fiber Communication - incudes post deadline papers, 2009. OFC 2009. Conference on、2009年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、デジタルコヒーレント受信方式を用いてDSPによる波長分散補償を行う場合、波長分散補償量が大きくなるほどDSPの消費電力が大きくなるという問題がある。すなわち、伝送路上の各ノードに配置されるDCMを除去し、受信側のDSPによって波長分散補償する場合には、DSPの回路規模が増大し、消費電力の肥大化を招く。
【0008】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、消費電力の増大を抑制しつつ、高速な光伝送を実現することができる光伝送システム、光伝送装置及び波長分散補償方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願が開示する光伝送システムは、1つの態様において、第1の隣接ノードから第2の隣接ノードへ光信号を中継する光伝送装置と、前記光伝送装置から光信号を受信する光受信装置とを備える光伝送システムである。前記光伝送装置は、前記第1の隣接ノードから光信号を受信する受信部と、前記受信部によって受信された光信号を前記第2の隣接ノードへ中継される光中継信号と前記光受信装置宛ての光分離信号とに分離する分離部と、前記分離部によって得られた光分離信号に生じている波長分散の一部を補償する補償部とを有する。前記光受信装置は、前記補償部によって波長分散の一部が補償された後の光分離信号を受信する受信部と、前記受信部によって受信された光分離信号を電気デジタル信号に変換する変換部と、前記変換部によって変換されて得られた電気デジタル信号に残存する波長分散をデジタル信号処理によって補償するデジタル処理部とを有する。
【0010】
また、本願が開示する光伝送システムは、他の態様において、第1の隣接ノードから第2の隣接ノードへ光信号を中継する光伝送装置と、前記光伝送装置に対して光信号を送信する光送信装置と、前記光伝送装置によって中継された光信号を受信する光受信装置とを備える光伝送システムである。前記光伝送装置は、前記第1の隣接ノードから光信号を受信する受信部と、前記光送信装置によって送信された光信号が前記光受信装置へ伝送される際に当該光信号に生じる波長分散の一部をあらかじめ補償する補償部と、前記受信部によって受信された光信号と前記補償部によって波長分散が補償された後の光信号とを混合して前記第2の隣接ノードへ送信する混合部とを有する。前記光受信装置は、前記送信装置から送信され前記光伝送装置及び前記第2の隣接ノードを経由した光信号を受信する受信部と、前記受信部によって受信された光信号を電気デジタル信号に変換する変換部と、前記変換部によって変換されて得られた電気デジタル信号に残存する波長分散をデジタル信号処理によって補償するデジタル処理部とを有する。
【発明の効果】
【0011】
本願が開示する光伝送システム、光伝送装置及び波長分散補償方法の1つの態様によれば、消費電力の増大を抑制しつつ、高速な光伝送を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施の形態1に係る光伝送システムの構成を示す図である。
【図2】図2は、実施の形態1に係る波長分散補償動作を示すフロー図である。
【図3】図3は、実施の形態2に係る光伝送システムの構成を示す図である。
【図4】図4は、実施の形態2に係るROADMノードの構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、実施の形態2に係る光送受信器の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、実施の形態2に係る波長分散補償動作を示すフロー図である。
【図7】図7は、実施の形態3に係るROADMノードの構成を示すブロック図である。
【図8】図8は、実施の形態3に係る波長分散補償動作を示すフロー図である。
【図9】図9は、実施の形態4に係るROADMノードの構成を示すブロック図である。
【図10】図10は、実施の形態4に係る最長パスの一例を示す図である。
【図11】図11は、実施の形態4に係るDCMの分散補償量を説明する図である。
【図12】図12は、累積波長分散の変化の一例を示す図である。
【図13】図13は、ROADMノードにおける信号劣化量を説明する図である。
【図14】図14は、DCMの集中配置による効果の例を示す図である。
【図15】図15は、ROADMノードの変形例を示すブロック図である。
【図16】図16は、ROADMノードの他の変形例を示すブロック図である。
【図17】図17は、ILAノードの構成例を示すブロック図である。
【図18】図18は、ROADMノードのさらに他の変形例を示すブロック図である。
【図19】図19は、ゲイン変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本願が開示する光伝送システム、光伝送装置及び波長分散補償方法の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る光伝送システムの構成を示す図である。図1に示す光伝送システムは、ROADM(Reconfigurable Optical/Add Drop Multiplexer)ノード100、ILA(In-Line Amplifier)ノード200及び光受信器300を有している。
【0015】
ROADMノード100は、光信号を隣接するノード(ROADMノード100又はILAノード200)へ増幅中継するとともに、中継される光信号から光受信器300宛ての信号を分離して(ドロップ(drop)して)光受信器300へ出力する。このとき、ROADMノード100は、ドロップされた後の信号をDCMによって波長分散補償し、光受信器300へ出力する。すなわち、ROADMノード100は、隣接するノードへ中継する光信号に対しては、DCMによる波長分散補償をせずに、自ノードにおいてドロップされる信号(以下、「ドロップ信号」という)に対してDCMによる波長分散補償を行う。このため、ROADMノード100によって中継される光信号については、DCMによる光挿入損失がない。
【0016】
ILAノード200は、光信号を隣接するノード(ROADMノード100又はILAノード200)へ増幅中継する。このとき、ILAノード200は、光信号に対してDCMによる波長分散補償をせずに増幅中継する。このため、ILAノード200によって中継される光信号についても、DCMによる光挿入損失がない。
【0017】
光受信器300は、ROADMノード100に接続されており、対応するROADMノード100においてドロップされたドロップ信号をDSPによる高速デジタル信号処理によって復調する。すなわち、光受信器300は、ドロップ信号を電気デジタル信号に変換し、変換により得られた電気デジタル信号に対する波長分散補償をDSPにおいて実行する。このとき、光受信器300へ入力されるドロップ信号は、既にROADMノード100のDCMによって波長分散補償されているため、DSPによる波長分散補償量を低減することができる。結果として、DSPの回路規模の増大を防止し、光受信器300における消費電力の増大を抑制することができる。
【0018】
次いで、上記のように構成された光伝送システムにおける波長分散補償動作について、図2に示すフロー図を参照しながら説明する。
【0019】
ROADMノード100及びILAノード200によって増幅中継される光信号は、光信号の宛先となる光受信器300に接続されたROADMノード100においてドロップされる(ステップS101)。ROADMノード100及びILAノード200によって中継される際には、DCMによる光信号の波長分散補償は行われていないため、この時点では、光信号にDCMによる光挿入損失がない。
【0020】
そして、ドロップされたドロップ信号は、DCMによって波長分散補償される(ステップS102)。すなわち、隣接するノードへ中継されることがないドロップ信号に対して、DCMによる波長分散補償が行われる。波長分散補償されたドロップ信号は、光受信器300へ出力される。
【0021】
そして、光受信器300へ入力されたドロップ信号は電気デジタル信号に変換され、得られた電気デジタル信号に対して、DSPによる波長分散補償が行われる(ステップS103)。これにより、DCM及びDSPによって十分な波長分散補償量が得られ、例えば100Gbit/sの高速な伝送レートの光信号についても、必要なOSNRを達成することが可能となる。
【0022】
なお、伝送距離が1500kmまでの範囲では、通常、伝送路における波長分散は0〜30000ps/nm程度となる。したがって、光受信器300のDSPによる波長分散補償量を例えば−20000〜+20000ps/nmの範囲とすれば、ROADMノード100のDCMによる波長分散補償量を−10000ps/nm程度とすれば良い。このようなDCMとしては、例えばファイバグレーディング型DCM、高次モードDCM(Higher-order mode DCM)又はDCF(Dispersion Compensating Fiber)ラマンなどを用いることが可能である。
【0023】
このように、光信号の波長分散補償をDCM及びDSPに分担することにより、ROADMノード100において光信号がドロップされた後にDCMによる−10000ps/nmの波長分散補償量が与えられ、光受信器300においてDSPによる−20000ps/nmまでの波長分散補償量が与えられる。すなわち、伝送距離が1500kmまでの範囲で発生し得る0〜30000ps/nmの波長分散を補償することが可能となる。
【0024】
以上のように、本実施の形態によれば、中継中の光信号に対しては波長分散補償を行わず、ROADMノードにおいてドロップされたドロップ信号に対してDCMによる波長分散補償を行い、さらに光受信器においてDSPによる波長分散補償を行う。このため、DCMによる光挿入損失を最低限に抑えるとともに、DSPに求められる波長分散補償量を低減して、DSPの回路規模の増大を防止することができる。結果として、消費電力の増大を抑制しつつ、高速な光伝送を実現することができる。
【0025】
(実施の形態2)
図3は、実施の形態2に係る光伝送システムの構成を示す図である。図3において、図1と同じ部分には同じ符号を付している。図3に示す光伝送システムは、ROADMノード100、ILAノード200及び光送受信器400を有している。なお、図3に示す光伝送システムは、例えば100Gbit/sの伝送レートで光信号を伝送している。
【0026】
ROADMノード100は、光信号を隣接するノード(ROADMノード100又はILAノード200)へ増幅中継するとともに、中継される光信号から光送受信器400宛ての信号をドロップして光送受信器400へ出力したり、中継される光信号に光送受信器400から入力された信号を混合したり(アド(add)したり)する。このとき、ROADMノード100は、実施の形態1と同様に、ドロップ信号をDCMによって波長分散補償し、光送受信器400へ出力する。
【0027】
ILAノード200は、光信号を隣接するノード(ROADMノード100又はILAノード200)へ増幅中継する。このとき、ILAノード200は、実施の形態1と同様に、光信号に対してDCMによる波長分散補償をせずに増幅中継する。
【0028】
光送受信器400は、ROADMノード100に接続されており、対応するROADMノード100においてドロップされたドロップ信号を高速デジタル信号処理によって復調する。また、光送受信器400は、接続されたROADMノード100に対して、他のROADMノード100に接続された光送受信器400宛ての信号を出力する。
【0029】
図4は、実施の形態2に係るROADMノード100の構成を示すブロック図である。図4に示すように、ROADMノード100は、アンプ110、OADM(Optical Add/Drop Multiplexer)スイッチ120、アンプ130及びDCM140を有している。
【0030】
アンプ110は、隣接するILAノード200(又はROADMノード100)によって中継され、自ノードに入力される光信号を増幅する。OADMスイッチ120は、光信号の分離・混合を行うスイッチである。具体的には、OADMスイッチ120は、自ノードに接続される光送受信器400宛ての信号を光信号からドロップするとともに、自ノードに接続される光送受信器400から入力される信号(以下「アド信号」という)を中継される光信号にアドする。アンプ130は、OADMスイッチ120から出力される光信号を増幅する。
【0031】
DCM140は、OADMスイッチ120によってドロップされたドロップ信号の波長分散補償を行う。具体的には、DCM140は、例えばファイバグレーディング型DCM、高次モードDCM又はDCFラマンなどを含み、ドロップ信号を通過させることにより、ドロップ信号の波長分散を補償する。DCM140が例えばファイバグレーディング型DCMを含む場合、ファイバグレーディング型DCMは、回折格子が刻まれたファイバを用いて、光が反射する位置を波長に応じて変えることにより波長分散補償を行う。このため、通常のファイバ型DCMによる波長分散補償を行う場合に比べて、DCM140は、波長分散補償量を大きくするとともに、光挿入損失及び非線形効果を低減することができる。また、DCM140が例えば高次モードDCM又はDCFラマンを含む場合にも、光挿入損失を低くすることができる。このようなDCM140は、波長分散補償後のドロップ信号を光送受信器400へ出力する。
【0032】
図5は、実施の形態2に係る光送受信器400の構成を示すブロック図である。図5に示す光送受信器400は、光源410a、410b、偏波・位相分離部420、信号変換部430、DSP440、位相変調部450及び偏波多重部460を有している。
【0033】
光源410a、410bは、CW(Continuous Wave)光源であり、連続光を発生させる。光源410aは、発生させた連続光を偏波・位相分離部420へ供給し、光源410bは、発生させた連続光を位相変調部450へ供給する。偏波・位相分離部420は、光源410aから供給される連続光を用いて、ROADMノード100から出力されるドロップ信号を偏波ごとかつ位相ごとの信号に分離する。すなわち、ROADMノード100においてドロップされるドロップ信号は、位相多重及び偏波多重されているため、偏波・位相分離部420は、ドロップ信号を各偏波の各位相の信号へ分離して、位相ごとの信号を取得する。
【0034】
信号変換部430は、偏波・位相分離部420から出力される位相ごとの信号を光電変換して電気信号に変換し、さらにA/D(Analog/Digital)変換を行って電気デジタル信号に変換する。そして、信号変換部430は、得られた電気デジタル信号をDSP440へ出力する。
【0035】
DSP440は、信号変換部430から出力される電気デジタル信号に対してデジタルコヒーレント受信方式を適用し、デジタル信号処理による波長分散補償及び復調を行う。そして、DSP440は、復調結果を受信データとして出力する。
【0036】
位相変調部450は、光源410bから供給される連続光を送信データに従って位相変調し、さらに位相多重を行う。すなわち、位相変調部450は、それぞれ位相変調されて得られる複数(例えば2つ)の位相変調信号を多重することにより、送信データよりも大きい(例えば2倍)レートの位相多重信号を生成する。したがって、例えば送信データの変調レートが25Gbaud(ギガボー)である場合には、位相変調部450は、2つの位相変調信号を多重することにより、50Gbit/sの位相多重信号を出力する。
【0037】
偏波多重部460は、位相変調部450から出力される位相多重信号を偏波多重する。すなわち、偏波多重部460は、複数の位相多重信号を互いに直交する偏波に多重することにより、位相多重信号よりも大きいレートのアド信号を生成する。例えば偏波多重部460は、2つの50Gbit/sの位相多重信号をそれぞれ水平偏波及び垂直偏波に多重することにより、100Gbit/sのアド信号を出力する。
【0038】
次いで、上記のように構成された光伝送システムにおける波長分散補償動作について、図6に示すフロー図を参照しながら説明する。以下においては、いずれかのROADMノード100に接続された光送受信器400から他のROADMノード100に接続された光送受信器400へ信号が伝送される場合について説明する。
【0039】
光送受信器400における送信データは、位相変調部450によって位相変調及び位相多重され、偏波多重部460によって偏波多重されることにより、アド信号となる。得られたアド信号は、ROADMノード100へ出力され、ROADMノード100のOADMスイッチ120によって、中継される光信号にアド信号がアドされる(ステップS201)。そして、光信号は、ROADMノード100及びILAノード200によって増幅中継されながら(ステップS202)、宛先の光送受信器400が接続されたROADMノード100まで伝送される。この過程で、光信号がDCMを通過することはなく、DCMによる光挿入損失は発生しない。
【0040】
そして、宛先の光送受信器400が接続されたROADMノード100に光信号が到達すると、このROADMノード100のOADMスイッチ120によって、中継される光信号から信号がドロップされる(ステップS203)。ドロップされたドロップ信号には、伝送距離に応じて例えば0〜30000ps/nm程度の範囲の波長分散が生じている。このようなドロップ信号は、DCM140を通過することにより、波長分散補償される(ステップS204)。DCM140による波長分散補償量は、例えば−10000ps/nm程度である。したがって、DCM140を通過後のドロップ信号には、最大で20000ps/nm程度の波長分散が残存している。
【0041】
DCM140を通過したドロップ信号は、光送受信器400へ出力され、光送受信器400の偏波・位相分離部420によって位相ごとの信号に分離され、信号変換部430によって光電変換され、電気信号に変換される(ステップS205)。さらに、得られた電気信号に対して信号変換部430によるA/D変換が行われ、電気デジタル信号に変換される(ステップS206)。得られた電気デジタル信号は、DSP440へ入力され、DSP440によって、デジタルコヒーレント受信方式を用いた波長分散補償が行われる(ステップS207)。DSP440による波長分散補償量は、例えば−20000〜+20000の範囲で調節可能であり、DCM140によって補償しきれなかった波長分散が補償される。例えば上述した例では、DCM140を通過後のドロップ信号に残存する波長分散は、最大で20000ps/nm程度であるため、DSP440は、−20000〜+10000ps/nm程度の波長分散補償を行えば良い。
【0042】
以上のように、本実施の形態によれば、ROADMノード100及びILAノード200によって中継される光信号に対しては波長分散補償を行わず、中継される光信号からドロップされた信号に対する波長分散補償をDCM140及びDSP440が分担する。このため、中継される光信号にDCMによる光挿入損失が発生することを防止するとともに、DSP440に要求される波長分散補償量を低減することができ、DSP440の消費電力を抑制することができる。結果として、例えば100Gbit/sの伝送レートでも十分な波長分散補償量及びOSNRを得ることができ、消費電力の増大を抑制しつつ、高速な光伝送を実現することができる。
【0043】
(実施の形態3)
実施の形態3の特徴は、ROADMノードによって中継される光信号に混合される前のアド信号に対してDCMによる波長分散補償を行う点である。したがって、本実施の形態に係る光伝送システムの構成及び光送受信器400の構成は、実施の形態2と同様であるため、その説明を省略する。本実施の形態においては、ROADMノード100の構成が実施の形態2とは異なっている。
【0044】
図7は、実施の形態3に係るROADMノード100の構成を示すブロック図である。図7において、図4と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。図7に示すROADMノード100は、図4に示すDCM140に代えてDCM150を有している。
【0045】
DCM150は、光送受信器400から出力されたアド信号がOADMスイッチ120によって光信号にアドされる前に波長分散補償を行う。具体的には、DCM150は、DCM140と同様に、例えばファイバグレーディング型DCM、高次モードDCM又はDCFラマンなどを含み、アド信号を通過させることにより、アド信号の波長分散を補償する。そして、DCM150は、波長分散補償後のアド信号をOADMスイッチ120へ出力する。
【0046】
アド信号は、光送受信器400から出力された直後の信号であり、長距離を伝送される前の信号であるため、通常は波長分散が発生していることはない。しかし、本実施の形態においては、DCM150がアド信号を通過させることにより、光信号の伝送によって将来発生すると想定される波長分散をあらかじめ補償しておく。これにより、中継中の光信号に対してDCMによる波長分散補償をしなくても、アド前のアド信号に対するDCM150による波長分散補償と、宛先の光送受信器400のDSP440による波長分散補償とで十分な波長分散補償量を得ることができる。
【0047】
次いで、上記のように構成された光伝送システムにおける波長分散補償動作について、図8に示すフロー図を参照しながら説明する。図8において、図6と同じ部分には同じ符号を付している。以下においては、いずれかのROADMノード100に接続された光送受信器400から他のROADMノード100に接続された光送受信器400へ信号が伝送される場合について説明する。
【0048】
光送受信器400における送信データは、位相変調部450によって位相変調及び位相多重され、偏波多重部460によって偏波多重されることにより、アド信号となる。得られたアド信号は、ROADMノード100へ出力され、ROADMノード100のDCM150を通過することにより、波長分散補償される(ステップS301)。DCM150による波長分散補償量は、例えば−10000ps/nm程度である。したがって、DCM150を通過後のアド信号には、あらかじめ−10000ps/nm程度の負の波長分散が発生していることになる。そして、伝送路における波長分散は通常正の波長分散であるため、アド信号に発生した負の波長分散は、光信号の伝送過程で相殺されることになる。
【0049】
波長分散補償後のアド信号は、OADMスイッチ120によって、中継される光信号にアドされる(ステップS201)。そして、光信号は、ROADMノード100及びILAノード200によって増幅中継されながら(ステップS202)、宛先の光送受信器400が接続されたROADMノード100まで伝送される。この過程で、光信号がDCMを通過することはなく、DCMによる光挿入損失は発生しない。
【0050】
そして、宛先の光送受信器400が接続されたROADMノード100に光信号が到達すると、このROADMノード100のOADMスイッチ120によって、中継される光信号から信号がドロップされる(ステップS203)。ここまでの伝送過程で、光信号には伝送距離に応じて例えば0〜30000ps/nm程度の範囲の波長分散が生じるが、上述したように、アド信号があらかじめ波長分散保証されているため、ドロップされたドロップ信号には、最大で20000ps/nm程度の波長分散が残存している。
【0051】
ドロップ信号は、光送受信器400へ出力され、光送受信器400の偏波・位相分離部420によって位相ごとの信号に分離され、信号変換部430によって光電変換され、電気信号に変換される(ステップS205)。さらに、得られた電気信号に対して信号変換部430によるA/D変換が行われ、電気デジタル信号に変換される(ステップS206)。得られた電気デジタル信号は、DSP440へ入力され、DSP440によって、デジタルコヒーレント受信方式を用いた波長分散補償が行われる(ステップS207)。DSP440による波長分散補償量は、例えば−20000〜+20000の範囲で調節可能であり、DCM150によってあらかじめ補償しきれなかった波長分散が補償される。例えば上述した例では、ドロップ信号に残存する波長分散は、最大で20000ps/nm程度であるため、DSP440は、−20000〜+10000ps/nm程度の波長分散補償を行えば良い。
【0052】
以上のように、本実施の形態によれば、ROADMノード100及びILAノード200によって中継される光信号に対しては波長分散補償を行わず、中継される光信号にアドされる信号に対してあらかじめDCM150が波長分散補償を行う。また、宛先の光送受信器400においてもDSP440が波長分散補償を行う。このため、中継される光信号にDCMによる光挿入損失が発生することを防止するとともに、DSP440に要求される波長分散補償量を低減することができ、DSP440の消費電力を抑制することができる。結果として、例えば100Gbit/sの伝送レートでも十分な波長分散補償量及びOSNRを得ることができ、消費電力の増大を抑制しつつ、高速な光伝送を実現することができる。
【0053】
(実施の形態4)
ところで、上記実施の形態1〜3においては、例えば100Gbit/sの高速な伝送レートの光信号のみが伝送される光伝送システムについて説明したが、光伝送システムの運用に当たっては、低速な現行の伝送レートの光信号を伝送することが要求されることがある。すなわち、光伝送システムは、デジタルコヒーレント受信方式で受信可能な光信号のみではなく、例えば直接検波方式で受信される10Gbit/s又は40Gbit/sの光信号にも対応することが望ましい。そこで、実施の形態4では、現行の伝送レートの光信号にも対応可能な光伝送システムについて説明する。
【0054】
本実施の形態においても、光伝送システムの構成及び光送受信器400の構成は、実施の形態2と同様であるため、その説明を省略する。ただし、光送受信器400は、従来の光強度変調によって送信データを変調したり、直接検波方式によってドロップ信号を復調したりしても良い。すなわち、光送受信器400は、例えば10Gbit/s又は40Gbit/sの現行の伝送レートの光信号を送受信しても良い。
【0055】
図9は、実施の形態4に係るROADMノード100の構成を示すブロック図である。図9において、図4と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。図9に示すROADMノード100は、図4に示すROADMノード100からDCM140を削除し、DCM160及びアンプ170を追加した構成となっている。
【0056】
DCM160は、アンプ110によって増幅された光信号の波長分散補償を行う。具体的には、DCM160は、例えばファイバ型DCM、ファイバグレーディング型DCM、高次モードDCM又はDCFラマンなどを含み、光信号を通過させることにより、中継される光信号の波長分散を補償する。アンプ170は、DCM160によって波長分散補償された光信号を増幅する。
【0057】
本実施の形態においては、中継される光信号に対しても、ROADMノード100においてDCM160による波長分散補償が行われる。ただし、ILAノード200ではDCMによる波長分散補償は行われないため、DCMによる光挿入損失は最低限に抑えられる。DCM160における波長分散補償量は、伝送される光信号がデジタルコヒーレント受信方式で受信可能な信号のみであるか否かによって異なる。換言すれば、光伝送システムにおいて伝送される光信号が、DSP440によって波長分散補償される例えば100Gbit/sの高速な光信号のみであるか、DSP440によっては波長分散補償されない例えば10Gbit/sの現行の光信号を混載するかによって、DCM160における波長分散補償量が異なる。
【0058】
伝送される光信号がデジタルコヒーレント受信方式で受信可能な信号のみである場合、DCM160による波長分散補償量は、比較的小さくても良い。すなわち、光送受信器400のDSP440によって補償しきれない波長分散を伝送路上に配置されたすべてのDCM160が分担して補償すれば良い。具体的には、例えば図10に示すように、光送受信器400−1から光送受信器400−2へ至るパス501が光伝送システムにおいて想定される最長パスである場合、この最長パス501を伝送される光信号は、3つのDCM160を経由することになる。このため、各DCM160の波長分散補償量は、光送受信器400−2のDSP440が補償しきれない波長分散を3等分した量であれば良いことになる。
【0059】
例えば、最長パス501において発生する波長分散が30000ps/nmであり、DSP440の波長分散補償量が−20000〜+20000ps/nmの範囲で調節可能であれば、補償しきれない波長分散は10000ps/nmである。そこで、3つのDCM160の波長分散補償量がそれぞれ−3500ps/nm程度であれば、3つのDCM160とDSP440の波長分散補償量の合計が−30500ps/nmとなり、十分に最長パス501における波長分散を補償することができる。要求される波長分散補償量が−3500ps/nmであれば、DCM160として、通常のファイバ型DCM(すなわち、分散補償ファイバ(DCF))を用いることも可能である。なお、最長パス501における波長分散を補償可能であれば、最長パス501より短い伝送路における波長分散も補償可能である。
【0060】
一方、伝送される光信号がデジタルコヒーレント受信方式で受信可能でない信号を混載する場合、DCM160による波長分散補償量は比較的大きい。すなわち、デジタルコヒーレント受信方式が適用されない信号に対しては、光送受信器400における波長分散補償量が小さいため、伝送路上で発生する波長分散の大部分を伝送路上に配置されたDCM160が分担して補償する。具体的に、各ROADMノード100のDCM160における波長分散補償量と光送受信器400において要求される波長分散補償量との関係を図示すると、図11に示すようになる。
【0061】
図11に示すように、例えばROADMノード100のDCM160における波長分散補償量がC1=−3500ps/nm程度であっても、光送受信器400における波長分散補償量がT1=−20000ps/nm程度であれば、伝送路で発生する波長分散を補償することができる。すなわち、デジタルコヒーレント受信方式を用いたDSP440による波長分散補償が可能であれば、DCM160の波長分散補償量は−3500ps/nm程度で十分であることがわかる。これに対して、DSP440による波長分散補償が行われず、波長分散補償量がT2=−3000ps/nm程度しかない光受信器が光伝送システムに混在する場合は、DCM160にC2=−9000ps/nm程度以上の波長分散補償量が要求される。このように、DSP440による波長分散補償が行われない例えば10Gbit/sの現行の光信号が混載して伝送される場合には、各DCM160に要求される波長分散補償量が大きくなるため、DCM160として例えばファイバグレーディング型DCMなどが用いられる。
【0062】
また、伝送される光信号がデジタルコヒーレント受信方式で受信可能でない信号を混載する場合は、各ROADMノード100のDCM160における波長分散補償量が均等とは限らない。すなわち、本実施の形態においては、DCMは、ILAノード200には配置されず、ROADMノード100に集中して配置されている。このため、隣接するROADMノード100との間の伝送距離に応じて各ROADMノード100のDCM160における波長分散補償量が決定される。
【0063】
具体的には、ROADMノード100及びILAノード200を含むすべてのノードにDCMを配置する場合は、図12に黒四角印で示すように、各ノードによって光信号が中継される度に波長分散が補償される。これに対して、本実施の形態のように、ROADMノード100にDCM160を集中配置する場合は、図12に黒丸印で示すように、ILAノード200によって光信号が中継される際には波長分散が累積していく。そして、位置502に配置されるROADMノード100によって光信号が中継される際に、ROADMノード100のDCM160によって、累積した波長分散がまとめて補償される。
【0064】
このため、前段のROADMノード100との間の伝送距離が長いほど、DCM160の波長分散補償量は大きくなる。このようにROADMノード100にDCM160を集中配置した場合でも、位置502に配置されるROADMノード100においては、すべてのノードにDCMを配置する場合と累積波長分散が等しくなる。したがって、ROADMノード100においてドロップされるドロップ信号の信号品質が劣化することはない。
【0065】
すなわち、すべてのノードにDCMを配置する場合は、図13に破線で示すように、伝送距離が増加するにつれて徐々に信号劣化量の指標となるQペナルティが増加する。一方、ROADMノード100にDCM160を集中配置する場合は、図13に実線で示すように、ROADMノード100以外の位置においてはQペナルティが非常に大きいものの、ROADMノード100が配置される位置503においてはQペナルティが小さくなる。このため、ROADMノード100においてはQペナルティを例えば2dBなどの基準値未満に抑制することができ、一定基準以上の伝送特性を確保することができる。
【0066】
ここで、本実施の形態に係る光伝送システムを実施の形態2に係る光伝送システムと比較しておく。これらの実施の形態に係る光伝送システムは、いずれもILAノード200にDCMを配置せず、ROADMノード100にDCMを集中配置している。図14は、DCMの集中配置による効果の例を示している。具体的には、図14は、実施の形態2及び本実施の形態に係る光伝送システムにおけるOSNRが全ノードにDCMを配置する場合のOSNRからどの程度改善されるかをノード間のスパン長に対応付けて示す図である。
【0067】
図14において、黒丸印は実施の形態2の光伝送システムに対応し、黒三角印は本実施の形態の光伝送システムに対応する。図14から明らかなように、実施の形態2及び本実施の形態の光伝送システムによれば、全ノードにDCMが配置される光伝送システムよりもOSNRを改善することができる。そして、本実施の形態においては、ROADMノード100によって中継される光信号がDCM160を通過するため、中継中の光信号に光挿入損失が生じ、実施の形態2よりもOSNRの改善分が小さいことがわかる。
【0068】
以上のように、本実施の形態によれば、ILAノード200によって中継される光信号に対しては波長分散補償を行わず、ROADMノード100へ入力された光信号に対してDCM160による波長分散補償を行う。そして、可能な場合には、光送受信器400のDSP440による波長分散補償も行う。このため、デジタルコヒーレント受信方式を適用するに当たっては、DSP440に要求される波長分散補償量を低減することができ、DSP440の消費電力を抑制することができる。また、デジタルコヒーレント受信方式が適用されない場合でも、DSP440を用いることなくROADMノード100に集中配置されたDCM160によって波長分散補償を行うことができる。
【0069】
なお、上記実施の形態4においては、ROADMノード100によって中継される光信号が常時DCM160を通過するものとして説明したが、デジタルコヒーレント受信方式の適用の可否が変化することにより、DCM160の有無を変更することが要求される場合があると考えられる。このため、ROADMノード100によって中継される光信号が必要に応じてDCM160を通過するか否かを切り替えられることが望ましい。
【0070】
そこで、ROADMノード100を例えば図15に示すような構成とすることが考えられる。すなわち、アンプ110とDCM160の間に光カプラ610を設けるとともに、DCM160とアンプ170の間にスイッチ620を設ける。こうすることにより、スイッチ620を切り替えて、DCM160を通過した光信号を中継するか、DCM160を通過しない光信号を中継するかを選択することが可能となる。したがって、例えば光送受信器400による波長分散補償では不十分な場合には、DCM160を通過した光信号を中継するようにスイッチ620を切り替え、DSP440が十分な波長分散補償を行う場合には、DCM160を通過しない光信号を中継するようにスイッチ620を切り替える制御などが可能である。
【0071】
同様に、例えば図16に示すように、光カプラ610をスイッチ630に代えた構成とすることも可能である。この構成では、スイッチ620及びスイッチ630の2つのスイッチを同時に切り替える制御が必要となるものの、光カプラ610による光挿入損失を防止することができる。また、同様に考えて、ILAノード200においてもDCMの有無を切り替え可能とすることができる。すなわち、図17に示すように、ILAノード200がアンプ210、スイッチ220、DCM230、スイッチ240及びアンプ250を有する構成とし、スイッチ220、240の切り替えにより、中継される光信号にDCM230を通過させるか否かを選択することができる。
【0072】
これらの構成例によれば、DCMによる波長分散補償が要求される場合には、それぞれのノードによって中継される光信号がDCMを通過するようにする一方、DCMによる波長分散補償が不要であれば、光信号がDCMを通過しないようにしてDCMによる光挿入損失を防止することができる。
【0073】
さらに、DCMの通過の有無が切り替えられる場合には、光信号がDCMを通過する場合と通過しない場合とでアンプ110、170のゲインを適正に制御することにより、光信号のOSNRをさらに向上することができる。この場合には、ROADMノード100を例えば図18に示すような構成とすることが考えられる。すなわち、図16に示したROADMノード100に、さらにVOA(Variable Optical Attenuator:可変光減衰器)180及び利得制御部190を追加する構成とすることが考えられる。
【0074】
VOA180は、アンプ110によって増幅された光信号を利得制御部190によって制御されるゲインで減衰する。すなわち、VOA180は、図中の位置bにおける光パワーよりも位置cにおける光パワーを小さくして、光信号がDCM160を通過する場合に生じる非線形効果を低減する。
【0075】
利得制御部190は、アンプ110、170及びVOA180のゲインを制御する。具体的には、利得制御部190は、スイッチ620、630によってDCM160の有無が切り替えられる場合に、切り替えの前後でアンプ110、170のゲインの合計値が変化しないように制御する。そして、利得制御部190は、スイッチ620、630の切り替えにより、光信号がDCM160を通過しなくなった場合には、アンプ110のゲインを可能な限り大きくする。同時に、利得制御部190は、アンプ110、170のゲインの合計値を変化させないように、アンプ170のゲインを小さくする。さらに、利得制御部190は、アンプ170から出力される光信号の光パワーがスイッチ620、630の切り替え前後で変化しないように、VOA180のゲインを調整する。
【0076】
図19は、図18中のa〜eの各位置における光パワーを示しており、DCM160の有無によるゲインの変化を示している。図19において、実線は、光信号がDCM160を通過する状態を示しており、破線は、光信号がDCM160を通過しない状態を示している。
【0077】
図19に示すように、光信号がDCM160を通過する場合には、位置c、dの間で光パワーが低下するのに対し、光信号がDCM160を通過しない場合には、位置c、dの間で光パワーが変化しなくなる。また、光信号がDCM160を通過する場合には、アンプ110、170のゲインが同程度(例えば20dB)であり、位置a、bの間における光パワーの増加と位置d、eの間における光パワーの増加とがほぼ同一である。これに対して、光信号がDCM160を通過しない場合には、アンプ110のゲインが大きくなり(例えば30dB)、その分アンプ170のゲインが小さくなる(例えば10dB)。
【0078】
このようにアンプ110、170のゲインが利得制御部190によって制御されることにより、ゲインの合計値は変化することがないまま、ROADMノード100の入力段におけるゲインを大きくすることができる。結果として、チルトの発生を防止することができ、光信号がDCM160を通過しなくなった場合のOSNRをさらに向上することができる。なお、VOA180のゲインは、位置eにおける光パワーがスイッチ620、630の切り替え前後で一致するように利得制御部190によって調整されている。
【0079】
以上の各実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0080】
(付記1)第1の隣接ノードから第2の隣接ノードへ光信号を中継する光伝送装置と、前記光伝送装置から光信号を受信する光受信装置とを備える光伝送システムであって、
前記光伝送装置は、
前記第1の隣接ノードから光信号を受信する受信部と、
前記受信部によって受信された光信号を前記第2の隣接ノードへ中継される光中継信号と前記光受信装置宛ての光分離信号とに分離する分離部と、
前記分離部によって得られた光分離信号に生じている波長分散の一部を補償する補償部とを有し、
前記光受信装置は、
前記補償部によって波長分散の一部が補償された後の光分離信号を受信する受信部と、
前記受信部によって受信された光分離信号を電気デジタル信号に変換する変換部と、
前記変換部によって変換されて得られた電気デジタル信号に残存する波長分散をデジタル信号処理によって補償するデジタル処理部とを有する
ことを特徴とする光伝送システム。
【0081】
(付記2)第1の隣接ノードから第2の隣接ノードへ光信号を中継する光伝送装置と、前記光伝送装置に対して光信号を送信する光送信装置と、前記光伝送装置によって中継された光信号を受信する光受信装置とを備える光伝送システムであって、
前記光伝送装置は、
前記第1の隣接ノードから光信号を受信する受信部と、
前記光送信装置によって送信された光信号が前記光受信装置へ伝送される際に当該光信号に生じる波長分散の一部をあらかじめ補償する補償部と、
前記受信部によって受信された光信号と前記補償部によって波長分散が補償された後の光信号とを混合して前記第2の隣接ノードへ送信する混合部とを有し、
前記光受信装置は、
前記送信装置から送信され前記光伝送装置及び前記第2の隣接ノードを経由した光信号を受信する受信部と、
前記受信部によって受信された光信号を電気デジタル信号に変換する変換部と、
前記変換部によって変換されて得られた電気デジタル信号に残存する波長分散をデジタル信号処理によって補償するデジタル処理部とを有する
ことを特徴とする光伝送システム。
【0082】
(付記3)第1の隣接ノードから第2の隣接ノードへ光信号を中継する光伝送装置と、前記光伝送装置から光信号を受信する光受信装置とを備える光伝送システムであって、
前記光伝送装置は、
前記第1の隣接ノードから光信号を受信する受信部と、
前記受信部によって受信された光信号に生じている波長分散の一部を補償する補償部と、
前記補償部によって波長分散の一部が補償された後の光信号を前期第2の隣接ノードへ中継される光中継信号と前記光受信装置宛ての光分離信号とに分離する分離部とを有し、
前記光受信装置は、
前記分離部によって得られた光分離信号を受信する受信部と、
前記受信部によって受信された光分離信号を電気デジタル信号に変換する変換部と、
前記変換部によって変換されて得られた電気デジタル信号に残存する波長分散をデジタル信号処理によって補償するデジタル処理部とを有する
ことを特徴とする光伝送システム。
【0083】
(付記4)前記光伝送装置は、
前記受信部によって受信された光信号を前記補償部経由で前記分離部へ出力させる経路と前記補償部を経由させずに前記分離部へ出力させる経路との切り替えを行う切替部をさらに有することを特徴とする付記3記載の光伝送システム。
【0084】
(付記5)前記光伝送装置は、
前記切替部によって切り替えられる経路の前段において光信号を増幅する第1の増幅部と、
前記切替部によって切り替えられる経路の後段において光信号を増幅する第2の増幅部と、
前記第1の増幅部及び前記第2の増幅部のゲインの合計値を一定に保ちながら、前記切替部による経路の切り替え前後でゲインの比を変更する利得制御部と
をさらに有することを特徴とする付記4記載の光伝送システム。
【0085】
(付記6)前記補償部は、
光信号が前記光受信装置によって受信されるまでの伝送距離に応じて当該光信号に生じる波長分散量のうち、前記デジタル処理部によって補償されない波長分散量を補償することを特徴とする付記1〜3のいずれかに記載の光伝送システム。
【0086】
(付記7)前記補償部は、
前記デジタル処理部によって補償されない波長分散量を、光信号が伝送される伝送路上に配置される光伝送装置の数で等分した波長分散量を補償することを特徴とする付記6記載の光伝送システム。
【0087】
(付記8)前記補償部は、
前記デジタル処理部によって補償されない波長分散量のうち、隣接する光伝送装置との間の距離に応じた波長分散量を補償することを特徴とする付記6記載の光伝送システム。
【0088】
(付記9)光信号を中継する中継経路部と、
前記中継経路部を通過して中継される光信号から分離して得られる光分離信号又は当該光信号に混合される光混合信号が通過する分岐経路部と、
前記分岐経路部を通過する光分離信号又は光混合信号に対して波長分散補償を行う補償部と
を有することを特徴とする光伝送装置。
【0089】
(付記10)光信号を受信する受信ステップと、
前記受信ステップにて受信された光信号を隣接ノードへ中継される光中継信号と光受信装置宛ての光分離信号とに分離する分離ステップと、
前記分離ステップにて得られた光分離信号に生じている波長分散の一部を補償する補償ステップと、
前記補償ステップにて波長分散の一部が補償された後の光分離信号を電気デジタル信号に変換する変換ステップと、
前記変換ステップにて変換されて得られた電気デジタル信号に残存する波長分散をデジタル信号処理によって補償するデジタル処理ステップと
を有することを特徴とする波長分散補償方法。
【0090】
(付記11)隣接ノードから光信号を受信する受信ステップと、
光送信装置が送信する光信号が送信先へ伝送される際に当該光信号に生じる波長分散の一部をあらかじめ補償する補償ステップと、
前記受信ステップにて受信された光信号と前記補償ステップにて波長分散が補償された後の光信号とを混合する混合ステップと、
前記混合ステップにて混合された光信号を他の隣接ノードへ中継される光中継信号と光受信装置宛ての光分離信号とに分離する分離ステップと、
前記分離ステップにて得られた光分離信号を電気デジタル信号に変換する変換ステップと、
前記変換ステップにて変換されて得られた電気デジタル信号に残存する波長分散をデジタル信号処理によって補償するデジタル処理ステップと
を有することを特徴とする波長分散補償方法。
【符号の説明】
【0091】
100 ROADMノード
110、130、170 アンプ
120 OADMスイッチ
140、150、160 DCM
180 VOA
190 利得制御部
400 光送受信器
410a、410b 光源
420 偏波・位相分離部
430 信号変換部
440 DSP
450 位相変調部
460 偏波多重部
610 光カプラ
620、630 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の隣接ノードから第2の隣接ノードへ光信号を中継する光伝送装置と、前記光伝送装置から光信号を受信する光受信装置とを備える光伝送システムであって、
前記光伝送装置は、
前記第1の隣接ノードから光信号を受信する受信部と、
前記受信部によって受信された光信号を前記第2の隣接ノードへ中継される光中継信号と前記光受信装置宛ての光分離信号とに分離する分離部と、
前記分離部によって得られた光分離信号に生じている波長分散の一部を補償する補償部とを有し、
前記光受信装置は、
前記補償部によって波長分散の一部が補償された後の光分離信号を受信する受信部と、
前記受信部によって受信された光分離信号を電気デジタル信号に変換する変換部と、
前記変換部によって変換されて得られた電気デジタル信号に残存する波長分散をデジタル信号処理によって補償するデジタル処理部とを有する
ことを特徴とする光伝送システム。
【請求項2】
第1の隣接ノードから第2の隣接ノードへ光信号を中継する光伝送装置と、前記光伝送装置に対して光信号を送信する光送信装置と、前記光伝送装置によって中継された光信号を受信する光受信装置とを備える光伝送システムであって、
前記光伝送装置は、
前記第1の隣接ノードから光信号を受信する受信部と、
前記光送信装置によって送信された光信号が前記光受信装置へ伝送される際に当該光信号に生じる波長分散の一部をあらかじめ補償する補償部と、
前記受信部によって受信された光信号と前記補償部によって波長分散が補償された後の光信号とを混合して前記第2の隣接ノードへ送信する混合部とを有し、
前記光受信装置は、
前記送信装置から送信され前記光伝送装置及び前記第2の隣接ノードを経由した光信号を受信する受信部と、
前記受信部によって受信された光信号を電気デジタル信号に変換する変換部と、
前記変換部によって変換されて得られた電気デジタル信号に残存する波長分散をデジタル信号処理によって補償するデジタル処理部とを有する
ことを特徴とする光伝送システム。
【請求項3】
第1の隣接ノードから第2の隣接ノードへ光信号を中継する光伝送装置と、前記光伝送装置から光信号を受信する光受信装置とを備える光伝送システムであって、
前記光伝送装置は、
前記第1の隣接ノードから光信号を受信する受信部と、
前記受信部によって受信された光信号に生じている波長分散の一部を補償する補償部と、
前記補償部によって波長分散の一部が補償された後の光信号を前期第2の隣接ノードへ中継される光中継信号と前記光受信装置宛ての光分離信号とに分離する分離部とを有し、
前記光受信装置は、
前記分離部によって得られた光分離信号を受信する受信部と、
前記受信部によって受信された光分離信号を電気デジタル信号に変換する変換部と、
前記変換部によって変換されて得られた電気デジタル信号に残存する波長分散をデジタル信号処理によって補償するデジタル処理部とを有する
ことを特徴とする光伝送システム。
【請求項4】
前記光伝送装置は、
前記受信部によって受信された光信号を前記補償部経由で前記分離部へ出力させる経路と前記補償部を経由させずに前記分離部へ出力させる経路との切り替えを行う切替部をさらに有することを特徴とする請求項3記載の光伝送システム。
【請求項5】
前記光伝送装置は、
前記切替部によって切り替えられる経路の前段において光信号を増幅する第1の増幅部と、
前記切替部によって切り替えられる経路の後段において光信号を増幅する第2の増幅部と、
前記第1の増幅部及び前記第2の増幅部のゲインの合計値を一定に保ちながら、前記切替部による経路の切り替え前後でゲインの比を変更する利得制御部と
をさらに有することを特徴とする請求項4記載の光伝送システム。
【請求項6】
前記補償部は、
光信号が前記光受信装置によって受信されるまでの伝送距離に応じて当該光信号に生じる波長分散量のうち、前記デジタル処理部によって補償されない波長分散量を補償することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光伝送システム。
【請求項7】
前記補償部は、
前記デジタル処理部によって補償されない波長分散量を、光信号が伝送される伝送路上に配置される光伝送装置の数で等分した波長分散量を補償することを特徴とする請求項6記載の光伝送システム。
【請求項8】
光信号を中継する中継経路部と、
前記中継経路部を通過して中継される光信号から分離して得られる光分離信号又は当該光信号に混合される光混合信号が通過する分岐経路部と、
前記分岐経路部を通過する光分離信号又は光混合信号に対して波長分散補償を行う補償部と
を有することを特徴とする光伝送装置。
【請求項9】
光信号を受信する受信ステップと、
前記受信ステップにて受信された光信号を隣接ノードへ中継される光中継信号と光受信装置宛ての光分離信号とに分離する分離ステップと、
前記分離ステップにて得られた光分離信号に生じている波長分散の一部を補償する補償ステップと、
前記補償ステップにて波長分散の一部が補償された後の光分離信号を電気デジタル信号に変換する変換ステップと、
前記変換ステップにて変換されて得られた電気デジタル信号に残存する波長分散をデジタル信号処理によって補償するデジタル処理ステップと
を有することを特徴とする波長分散補償方法。
【請求項10】
隣接ノードから光信号を受信する受信ステップと、
光送信装置が送信する光信号が送信先へ伝送される際に当該光信号に生じる波長分散の一部をあらかじめ補償する補償ステップと、
前記受信ステップにて受信された光信号と前記補償ステップにて波長分散が補償された後の光信号とを混合する混合ステップと、
前記混合ステップにて混合された光信号を他の隣接ノードへ中継される光中継信号と光受信装置宛ての光分離信号とに分離する分離ステップと、
前記分離ステップにて得られた光分離信号を電気デジタル信号に変換する変換ステップと、
前記変換ステップにて変換されて得られた電気デジタル信号に残存する波長分散をデジタル信号処理によって補償するデジタル処理ステップと
を有することを特徴とする波長分散補償方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−55088(P2011−55088A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199972(P2009−199972)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】