説明

光半導体素子収納用パツケージ

【目的】 リードピン支持板12,13の剥離が生じにくく、かつ光半導体素子の熱を効率良く外部に逃し得る光半導体素子収納用パッケージを提供する。
【構成】 光半導体素子収納用パッケージ1は、表面に光半導体素子17を固定する底体3(載置板)と、底体3の裏面に固定されたリードピン支持板12,13(絶縁基板)とを備えている。底体3は、高熱伝導性であり、かつ熱膨張率がリードピン支持板12,13の熱膨張率に実質的に等しくなるように積層された複数種の金属層(表面銅層5,裏面銅層6及びインバー合金層7)からなる。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、パッケージ、特に光半導体素子収納用パッケージに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の光半導体素子収納用パッケージは、コバール合金からなる光半導体素子載置板と、固定板の裏面に固定されたアルミナ製絶縁基板とを備えている。絶縁基板は、光半導体素子に電気的に接続されたリードピンを支持している。
【0003】
光半導体素子に電流が流されると、光半導体素子は発熱しながら発光する。光半導体素子から発せられた熱は、光半導体素子載置板を介して外部に放出される。なお、光半導体素子が高温になっても、コバール合金は絶縁基板と熱膨張率が近いため、絶縁基板が光半導体素子載置板から剥離しにくい。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
前記従来例の光半導体素子収納用パッケージでは、熱膨張率の観点から光半導体素子載置板にはコバール合金が使用されているが、コバール合金は熱伝導率が0.04cal/cm・sec・℃と低いため、光半導体素子から発生する熱を外部の冷却装置に効率良く伝達させることできない。このため、光半導体素子の温度が上昇しやすく、温度が上昇すると光半導体素子の光出力が不安定となる欠点を有していた。
【0005】
そこで、光半導体素子載置板に熱伝導率の良い銅を用いることが考えられるが、銅はアルミナからなる絶縁基板と熱膨張率が大きく異なるため、絶縁基板が光半導体素子載置板から剥離しやすくなる。
【0006】
本考案の目的は、絶縁基板の剥離が生じにくくかつ光半導体素子の熱を効率良く外部に逃がし得る光半導体素子収納用パッケージを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本考案に係る光半導体素子収納用パッケージは、表面に光半導体素子が載置される載置板と、前記載置板上に取着され、一部に伝熱板が嵌め込まれた枠体と、前記載置板の裏面に固定された絶縁基板とを備えている。載置板は高熱伝導性で、かつ熱膨張率が前記絶縁基板の熱膨張率に実質的に等しくなるように複数の金属層を積層した金属体からなる。
【0008】
【作用】
本考案に係る光半導体素子収納用パッケージでは、載置板は高熱伝導性であるため、光半導体素子から発せられた熱を枠体に嵌め込まれた伝熱板に効率良く逃がすことができる。また、載置板は熱膨張率が絶縁基板の熱膨張率に実質的に等しくなっているので、温度が変化しても絶縁基板が載置板から剥離しにくい。
【0009】
【実施例】
図1に、本考案の一実施例としての光半導体素子収納用パッケージ1を示す。
光半導体素子収納用パッケージ1は、主に、枠体2と、底体3(光半導体素子載置板)と、蓋体4とから構成されている。枠体2は、コバール合金からなる矩形状である。枠体2の下部には底体3が銀ろう等のろう材により接合されており、上部には蓋体4がシーム溶接により接合されている。
【0010】
底体3は、表面銅層5と裏面銅層6とがインバー合金層7を挟む積層状態に構成されている。各層の厚みの比は、表面銅層5:インバー合金層7:裏面銅層6が、1:2:1〜1:5:1の間に設定されている。この構成によれば、底体3の熱膨張率は、アルミナセラミックからなるリードピン支持板12,13(後述)の熱膨張率と実質的に等しくなる。また、図2に示すように、底体3には長手方向に沿って2本の溝3a,3bが形成されている。
【0011】
底体3の裏面、つまり裏面銅層6の下面には、アルミナセラミック製の細い板からなる1対のリードピン支持板12,13が銀ろう等のろう材により接合されている。リードピン支持板12,13には、それぞれ2個ずつリードピン14用の孔が形成されており、これらの孔内にリードピン14が銀ろう等のろう材により接合されている。リードピン14は、底体3の溝3a,3bを貫通して枠体2内に延びている。リードピン14は、底体3には接触しておらず、底体3とは電気的に絶縁された状態にある。
【0012】
枠体2の側面には、四角形の枠孔8が形成されており、枠孔8に銅等からなる伝熱板9が嵌め込まれ、銀ろう等のろう材により接合されている。伝熱板9の底面には、底体3の表面銅層5が接触し、銀ろう等のろう材により接合されている。伝熱板9の外側には、銅からなる固定板10が銀ろう等のろう材により接合されている。固定板10は2つの孔10aを有している。固定板10により、光半導体素子収納用パッケージ1は冷却装置(図示せず)に固定され得る。なお、前記固定板10は伝熱板9と同一材料とし、一体的に形成しておいてもよい。
【0013】
枠体2のもう一方の側面には、円形の孔2aが形成されている。孔2aには円筒状のパイプ11が挿入されて固定されている。パイプ11内には、光ファイバーケーブル(図示せず)が固定される。
【0014】
底体3の上面、つまり表面銅層5の上面には、ペルチェ素子15が固定されている。ペルチェ素子15は、リードピン14に電気的に接続されている。ペルチェ素子15上には、絶縁材料からなるチップキャリア16を介して光半導体素子17が固定されている。光半導体素子17は、チップキャリア16上に形成されたボンディングパッド(図示せず)とボンディングワイヤ18とを介して、リードピン14に電気的に接続されている。
【0015】
次に動作について説明する。
外部の図示しない制御装置から、リードピン14及びボンディングワイヤ18を通じて光半導体素子17とペルチェ素子15に電流を流す。すると、光半導体素子17は、入力信号に応じたレーザ光を発射する。光半導体素子17から発射された光信号は、パイプ11内に固定された光ファイバーケーブルによって外部に搬送される。
【0016】
光半導体素子17から発せられた熱は、電流が流されたペルチェ素子15により吸収され、底体3側に伝達される(ペルチェ効果)。この結果、光半導体素子17は一定の温度(25℃)に維持される。底体3の表面銅層5に伝達された熱は、伝熱板9及び固定板10を介して図示しない冷却装置に伝達される。このようにして、ペルチェ素子15からの熱は、熱伝導率の良い銅製の部分のみを介して外部に伝達されるので、光半導体素子17から発せられた熱を効率良く外部に逃すことができ、光半導体素子17に高温による光出力の不安定さを招来することは皆無となる。
【0017】
底体3は表面銅層5、インバー合金層7、裏面銅層6が前記比率で積層されているために、リードピン支持板12,13と熱膨張率が実質的に等しくなっている。そのため、光半導体素子17の発熱時に、大きな熱膨張率差によりリードピン支持板12,13から底体3から剥離することはない。しかも、表面銅層5と同じ厚みの裏面銅層6がインバー合金層7を間に挟んで配置されているため、底体3の熱変形は防止される。
【0018】
〔他の実施例〕
前記実施例では、表面銅層5及び裏面銅層6の間にインバー合金層7を挟んだ状態で底体3を形成したが、インバー合金の代わりにコバール合金を用いてもよい。コバール合金を用いた場合に、底体3とリードピン支持板12,13との熱膨張率を実質的に等しくするためには、表面銅層:コバール合金:裏面銅層の比率を1:3:1〜1:8:1の間に設定する。
【0019】
【考案の効果】
本考案に係る光半導体素子収納用パッケージでは、載置板が高熱伝導性であり、かつ熱膨張率が絶縁基板の熱膨張率に実質的に等しくなるように複数の金属層を積層した金属体からなっている。したがって、光半導体素子から発せられた熱は効率良く外部に逃げ、しかも絶縁基板が光半導体素子載置板から剥離しにくい 。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の一実施例としての光半導体素子収納用パッケージの縦断面図。
【図2】その分解斜視図。
【符号の説明】
1 光半導体素子収納用パッケージ
3 底体
5 表面銅層
6 裏面銅層
7 インバー合金層
9 伝熱板
12,13 リードピン支持板
17 光半導体素子

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】表面に光半導体素子が載置される載置板と、前記載置板上に取着され、一部に伝熱板が嵌め込まれた枠体と、前記載置板の裏面に固定された絶縁基板とを備えた光半導体素子収納用パッケージにおいて、前記載置板は、高熱伝導性で、かつ熱膨張率が前記絶縁基板の熱膨張率に実質的に等しくなるように複数の金属層を積層した金属体からなり、その一部が枠体に嵌め込まれた伝熱板に接触していることを特徴とする光半導体素子収納用パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】実開平5−15440
【公開日】平成5年(1993)2月26日
【考案の名称】光半導体素子収納用パツケージ
【国際特許分類】
【出願番号】実願平3−68253
【出願日】平成3年(1991)7月31日
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)