光双極子トラップを用いた単層カーボンナノチューブの選別方法
本発明の態様では、集光レーザビームの電場は、単層カーボンナノチューブにおいて双極子を誘発する。単層カーボンナノチューブは1または複数の共鳴振動数を有する。レーザビームの振動数が、単層カーボンナノチューブの共鳴振動数より小さいと、単層カーボンナノチューブはトラップされ、レーザビームは単層カーボンナノチューブを第1のマイクロ流体層流から第2のマイクロ流体層流に移動させることができる。レーザビームの振動数が単層カーボンナノチューブの共鳴振動数より高いと、単層カーボンナノチューブは反発し、レーザビームは単層カーボンナノチューブを移動させることができない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
1.分野
本発明の態様は、単層カーボンナノチューブに関し、特に、単層カーボンナノチューブの選別に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2002年3月26日に出願された米国特許出願第10/107,833号の一部継続出願であり、それに対し優先権の恩典を主張する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術の説明
カーボンナノチューブは、1990年代初期に発見されて以来、かなりの関心を引いてきた。トランジスタ、デジタルメモリ、およびディスプレイ用小型電子エミッタから次世代の環境に優しい自動車用の水素ガス貯蔵装置まであらゆるものに対し利用の可能性がある。
【0004】
典型的には、潜在的ユーザが入手できる1バッチの単層カーボンナノチューブは、異なる型の単層カーボンナノチューブの混合物を有する。例えば、1バッチの単層カーボンナノチューブには、金属単層カーボンナノチューブおよび半導体単層カーボンナノチューブが存在する可能性がある。半導体単層カーボンナノチューブの中には、異なる長さ、直径、および/またはカイラリティの単層カーボンナノチューブが存在する可能性がある。各型の単層カーボンナノチューブは、異なる用途に特に適した異なる特性を(例えば、電気、化学、光学、機械特性)有する。通常、分離することができない混合物として生じるので、異なる単層カーボンナノチューブは、特定の用途のための特別な型の単層カーボンナノチューブを使用しようとすると、厄介なことになる可能性がある。
【発明の開示】
【0005】
例示的な態様の詳細な説明
図1は本発明の態様による、金属単層カーボンナノチューブから半導体単層カーボンナノチューブを選別するための過程100を示す流れ図である。過程100は、本発明の態様を理解するのに最も役に立つように、複数の別個の操作を順に実施するものとして記述されている。しかしながら、操作の記述順は、操作は必ずしも順序に依存するものではないこと、または、操作は示した順序で実施されないことを意味すると考えるべきである。当然、過程100は例示的な過程であり、他の過程を使用してもよい。
【0006】
ブロック102では、過程100は、標的クラスの単層カーボンナノチューブに対応する直径およびカイラリティ(例えば、アームチェア、ジグザグ、らせん(またはカイラル))を決定する。単層カーボンナノチューブは、グラファイトシートを丸めてエンドキャップを有する、または有さない継ぎ目のない筒としたストリップとしてモデル化することができる。壁が単原子の厚さしかないので、「単層」である。グラファイトシートを巻いて、シートの一端の原子がシートの他端の原子と一致するようにして、筒を生成させる。第1の原子から第2の原子に向かうベクトルはカイラルベクトルと呼ばれ、「カイラルベクトル」の長さは単層カーボンナノチューブの円周に等しい。単層カーボンナノチューブ軸の向きはカイラルベクトルに垂直である。
【0007】
図2は、カイラルベクトルおよびカイラル角を示す単層カーボンナノチューブの六角格子の平面図200である。カイラルベクトルChは六角格子上でCh=na1+ma2として規定される。ここで、a1およびa2は単位ベクトルであり、nおよびmは整数である。カイラル角θはa1により規定される向きに対し測定される。例示的な図200は、(n、m)=(4、2)で構成され、この単層カーボンナノチューブのユニットセルは、OAB’Bにより境界が示される。単層カーボンナノチューブを形成するために、このセルが丸められOがAに、BがB’に重なり、2つの端がキャップされることを想像せよ。
【0008】
異なる型のカーボンナノチューブは異なる値のnおよびmを有する。ジグザグナノチューブは(n、0)または(0、m)に対応し、カイラル角が0°であり、アームチェアナノチューブは(n、n)を有しカイラル角が30°であり、一方、カイラルナノチューブは一般的な(n、m)値を有し、カイラル角が0°と30°との間である。本発明の複数の態様では、走査型トンネル顕微鏡を使用して、単層カーボンナノチューブに対する原子構造を決定し、表示してもよい。
【0009】
異なる長さ、直径、および/またはカイラルベクトルを有する単層カーボンナノチューブは異なる電子特性を有する。例えば、そのカイラルベクトルにより、直径の小さな単層カーボンナノチューブは半導体単層カーボンナノチューブまたは金属単層カーボンナノチューブのいずれかとなる。金属単層カーボンナノチューブは、室温で電気を通す場合がある。半導体単層カーボンナノチューブは室温では電気を通さない。
【0010】
図1に戻ると、ブロック104では、過程100は、標的クラスの単層カーボンナノチューブの共鳴振動数を識別する。1つの態様では、特別な振動数の光を放射するレーザビームを、単層カーボンナノチューブの混合物全体で走査してもよい。光の電場成分は1または複数の単層カーボンナノチューブと相互作用する。電場成分は標的単層カーボンナノチューブにおいて双極子モーメントを誘発する。
【0011】
レーザビームの振動数が標的単層カーボンナノチューブの共鳴振動数と等しい場合、標的単層カーボンナノチューブで誘発された双極子は共鳴すると思われる。レーザビームの振動数が単層カーボンナノチューブの共鳴振動数よりも低いと、単層カーボンナノチューブはレーザビームに引き付けられる(すなわち、光学的にトラップされる)。レーザビームの振動数が単層カーボンナノチューブの共鳴振動数よりも高い場合、レーザビームは単層カーボンナノチューブと反発する。(レーザビームの振動数が、単層カーボンナノチューブの共鳴振動数前後である場合、単層カーボンナノチューブの光学トラッピングは不安定である。)
【0012】
電場内の中性粒子の誘発された双極子モーメントは、P=ε0χEにより表してもよい。Pは、レーザビームの電場内の中性粒子の単位体積当たりの双極子モーメント(または分極)である。ε0は自由空間の誘電率であり、定数である。χ(ω)は双極子となる(すなわち、分極された)中性粒子の電気分極率である。電気分極率χ(ω)は粒子の電子構造、ならびに周囲媒質(例えば、自由空間、水、など)に依存する。
【0013】
図3はレーザビーム振動数ωに対し、分極された中性粒子(すなわち、単層カーボンナノチューブ)の電気分極率χを示したグラフ300である。電気分極率は、複合関数(χ(ω)=χ’(ω)+iχ’’(ω))であり、分極させるように試みるレーザビーム振動数ωに依存する。グラフ300は、常に正である、電気分極率に対する虚数部分302および共鳴振動数と交わると(点306)符号が変わる実数部分304を示す。
【0014】
電気分極率の実数部分χ’(ω)の符号は、単層カーボンナノチューブがレーザビームの電場成分に引き付けられるか、それとも反発するかを決定する。実数部分χ’(ω)の符号が正であれば、レーザビームは単層カーボンナノチューブを引き付けると考えられる。実数部分χ’(ω)の符号が負であれば、レーザビームは単層カーボンナノチューブと反発する。電気分極率の実数部分χ’(ω)の符号は、レーザビームの振動数ωにより決定される。レーザビームの振動数ωが単層カーボンナノチューブの共鳴振動数より低い場合、電気分極率の実数部分χ’(ω)の符号は正である。レーザビームの振動数ωが単層カーボンナノチューブの共鳴振動数より高い場合、電気分極率の実数部分χ’(ω)の符号は負である。
【0015】
総相互作用系エネルギーU(すなわち、双極子モーメントとレーザビームの電場の積であるエネルギー)は、U=-1/2P・Eで表してもよく、ここで、Eはレーザビームの電場成分である。総相互作用系エネルギーUはまた、U=-1/2ε0χE2で表してもよい。このように、総相互作用系エネルギーUは電気分極率の実数部分χ’(ω)の符号および電子ビームの電場成分の強度E2に依存する。正のχ’(ω)では、Uはレーザ強度E2の増加と共に減少すると思われる。このように、正のχ’(ω)を有するナノチューブは、より高いレーザ強度の領域に移動する傾向がある。集光レーザビームでは、強度分布は普通ガウス分布であり、最も高い強度点がレーザビームの中心にあり、正のχ’(ω)を有する中性粒子(すなわち、ナノチューブ)は最も安定である(すなわち、系エネルギーUが最も低い)と考えられる。これが、光誘発双極子(光双極子)トラップの原理である。
【0016】
図1に戻ると、ブロック106では、過程100は標的クラスの単層カーボンナノチューブの共鳴振動数と直径およびカイラリティとの間の関係を決定する。図4は一例の半導体単層カーボンナノチューブに対するバンド構造400(単層カーボンナノチューブおよびグラファイトの状態密度(DOS)に対するエネルギー/γ0;点線はグラファイトを示す)を示すグラフである。
【0017】
例えば、半導体単層カーボンナノチューブバンドギャップ構造400は、E11s、E22s、などとして記録される複数のピーク対を含む。これらのピーク対は、単層カーボンナノチューブに対する一次元電子状態密度(DOS)におけるvan Hove特異点である。E11sは第1エネルギー分離(またはバンドギャップ)である。E22sは第2エネルギー分離(またはバンドギャップ)である。各ピーク対は、単層カーボンナノチューブに対する共鳴振動数を示す。このように、E11sは半導体単層カーボンナノチューブに対する第1バンドギャップおよび第1共鳴振動数を示し、E22sは半導体単層カーボンナノチューブに対する第2バンドギャップおよび第2共鳴振動数を示す。
【0018】
図5は、金属単層カーボンナノチューブに対するバンド構造500(単層カーボンナノチューブおよびグラファイトの状態密度(DOS)に関するエネルギー/γ0)を示すグラフである。金属単層カーボンナノチューブバンドギャップ構造500はまた、E11M、E22M、などとして記録される複数のピーク対を含む。E11Mは第1エネルギー分離であり、E22Mは第2エネルギー分離である。各ピーク対は、単層カーボンナノチューブに対する共鳴振動数を示す。このように、E11Mは金属単層カーボンナノチューブに対する第1バンドギャップおよび第1共鳴振動数を示す。E11Mとして記録される2つのピーク対が存在することに注意すべきである。これは、三角ワーピング効果(trigonal warping effect)(すなわち、単層カーボンナノチューブの一次元構造におけるFermi点付近での非対称性)により引き起こされるvan Hove特異点の分割による場合がある。
【0019】
金属ピーク対E11Mは半導体ピーク対E11Sよりもずっと大きく、半導体E22よりもさらに大きいことに注意すべきである。本発明の態様では、走査型トンネル顕微鏡を使用して、単層カーボンナノチューブに対する原子構造および電子状態密度を決定し、表示してもよい。
【0020】
対応するvan Hove特異点間のエネルギーギャップは、光学的に許容されたバンド間遷移エネルギーである。バンド間遷移エネルギーは、各単層カーボンナノチューブの直径およびカイラリティにより決定される。図6は。単層カーボンナノチューブの直径に関する単層カーボンナノチューブ共鳴振動数(すなわち、バンド間遷移エネルギー)のプロット600を示すグラフである。
【0021】
プロット600は、約0.4<dt<3.0ナノメートル(nm)の範囲の直径dtを有する考えられる単層カーボンナノチューブの全(n、m)値に対する伝導帯および価電子帯の1次元電子状態密度(DOS)におけるvan Hove特異点間の計算したエネルギー分離Eii(例えば、E11、E22、E33、など)を示す。単層カーボン-カーボンエネルギー重なり積分γ0に対する値は、2.9eVである。最も近い隣接炭素-炭素距離ac-cは、1.42オングストローム(Å)である。バンド間遷移Eiiにおける指数iは、第i van Hove特異点間の遷移を示し、i=1はE=0で得られるFermiエネルギーレベルに最も近い。
【0022】
Eiiが公知であれば、特別な単層カーボンナノチューブの直径およびカイラリティを決定することができる。単層カーボンナノチューブのバンドギャップはその直径に反比例することに注意すべきである。例えば、金属単層カーボンナノチューブでは、
である。半導体ナノチューブでは、
である。これは、単層カーボンナノチューブの直径が増加するにつれ、バンドギャップおよび共鳴振動数が減少することを意味する。
【0023】
カイラリティによって、単層カーボンナノチューブのバンド間遷移エネルギーEiiは、直径に対して反比例することから外れる場合がある(すなわち、
からはずれる場合がある)。上記のように、これは三角ワーピング効果によるvan Hove特異点の分割(金属単層カーボンナノチューブ)またはシフト(半導体単層カーボンナノチューブ)による。この三角ワーピング効果はnがmに等しくない場合にのみ起きる(すなわち、アームチェア単層カーボンナノチューブ)。
【0024】
図1に戻ると、ブロック108では、単層カーボンナノチューブの混合物がマイクロ流体システム内の1つの層に配置される。単層カーボンナノチューブの混合物は少なくとも1つの標的単層カーボンナノチューブを含む。
【0025】
図7は本発明の態様によるマイクロ流体システム700の上面図である。マイクロ流体システム700内の単層カーボンナノチューブの混合物は複数の単層カーボンナノチューブ702、704、706、708、710、712、714および716を含む。図示した態様では、単層カーボンナノチューブ714および716は標的単層カーボンナノチューブである。
【0026】
マイクロ流体システム700は、層流で互いに滑らかに隣接して流れる粘性流体(例えば、水)の1または複数の層(簡単にするために、各々、方向732および734で流れる2つの層720および722を図示する)を含む。1つの態様では、単層カーボンナノチューブナノチューブ混合物を層720内に配置してもよい。
【0027】
1つの態様では、層720および722の任意の一つの幅および高さは約1ミリメートル(mm)より小さくてもよい。
【0028】
層720および722の任意の一つにおける流体の流れは、レイノルズ数RNにより特徴づけることができる。これはRN=ρvd/ηにより表され、ここで、ρは流体密度であり、vは流体速度であり、ηは粘度であり、dは流れに関連する幾何学的寸法(例えば、層の幅および高さ)である。レイノルズ数が約2000未満の場合、流体の流れは層流である。レイノルズ数が約2000を超える場合、流体の流れは乱流である。
【0029】
例示的なマイクロ流体システム700はまた、レーザビーム730を含む。図1に戻ると、ブロック110では、レーザビーム730は単層カーボンナノチューブの混合物に誘導される。レーザビーム730は、標的単層カーボンナノチューブの共鳴振動数よりも低い振動数を有してもよい。レーザビーム730は、標的単層カーボンナノチューブにおいて電気双極子を誘導し、標的単層カーボンナノチューブをトラップする。
【0030】
1つの態様では、単層カーボンナノチューブ714および716は標的半導体単層カーボンナノチューブであり、レーザビーム730は半導体カーボンナノチューブ714および716をトラップする。
【0031】
アーク放電、レーザー切断、化学蒸着(CVD)、または他の方法を用いて製造した単層カーボンナノチューブは一定の直径分布を有する。例えば、公知の高圧CO不均化法(HiPCO)により製造した単層カーボンナノチューブの分布は、約0.8〜1.3nmにわたる直径を有する(領域602を参照のこと)。1つの態様では、レーザビームのエネルギーは0.55eV未満が選択される。この態様では、金属および半導体単層カーボンナノチューブのほとんどがトラップされる場合がある。レーザ振動数がE11MおよびE11Sでは単層カーボンナノチューブに対する共鳴振動数未満であるからである(すなわち、単層カーボンナノチューブの全てがトラップされる可能性がある)。
【0032】
別の態様では、レーザビームのエネルギーは約1.05eVで選択される。この態様では、半導体単層カーボンナノチューブのほとんどがリリースされ、全ての金属単層カーボンナノチューブがトラップされる可能性がある。レーザ振動数が、E11Mでは単層カーボンナノチューブに対する共鳴振動数より低く、E11Sでは単層カーボンナノチューブに対する共鳴振動数より高いからである(すなわち、金属単層カーボンナノチューブにおいてのみトラップが発生する可能性がある)。
【0033】
別の態様では、金属単層カーボンナノチューブを半導体単層カーボンナノチューブから選別した後、レーザビームのエネルギーを0.6〜1eVの間で調整する。この態様では、いくつかの半導体単層カーボンナノチューブがリリースされ、いくつかの半導体単層カーボンナノチューブがトラップされる。レーザ振動数が、E11Sで単層カーボンナノチューブに対する共鳴振動数より低く、E11Sで他の単層カーボンナノチューブに対する共鳴振動数より高いからである(すなわち、いくつかの単層カーボンナノチューブはトラップされる可能性があるが、他の半導体カーボンナノチューブはトラップされない可能性がある)。
【0034】
ブロック112では、半導体単層カーボンナノチューブ714および716が層720から層722に移動され、金属単層カーボンナノチューブ702、704、706、708、710、712が層720に残っている。例えば、レーザビーム730の焦点が層720から層722に移動してもよい。上記から、正のχ’(ω)を有する単層カーボンナノチューブは、強度分布がガウス分布である集光レーザビームではレーザビームの中心にあるより高いレーザ強度の領域に移動する傾向があること、を思い出すこと。このように、レーザビーム730の焦点が層720から層722に移動すると、半導体単層カーボンナノチューブ714および716は、層720から層722に移動する場合がある。
【0035】
1つの態様では、鏡(図示せず)を使用して、レーザビーム730の焦点の位置を変えてもよい。例えば、鏡の角度を連続して、または段々に変え、レーザビーム730の方向角を変えてもよい。
【0036】
ブロック114では、過程100は、半導体単層カーボンナノチューブ714および716を層722から1つの収集場所736に収集し、金属単層カーボンナノチューブ702、704、706、708、710、712を層720から別の収集場所738に収集する。
【0037】
群A、BおよびC半導体単層カーボンナノチューブの混合物から群B半導体単層カーボンナノチューブを分離するのに適した別の態様を説明する。A半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数がB半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数より高く、B半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数がC半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数より高いと仮定する。
【0038】
図8は、本発明の態様による、B半導体単層カーボンナノチューブをAおよびC半導体単層カーボンナノチューブから選別するための過程800を示す流れ図である。図9は、本発明の態様による過程800を実行するのに適したマイクロ流体システム900の上面図である。
【0039】
過程800は、本発明の態様を理解するのに最も役に立つ様式で、順に実施される複数の別個の操作として記述されている。しかしながら、記述されている操作の順は、操作が必ずしも順序に依存していないこと、または提示した順で実施されないことを意味すると考えるべきである。当然、過程800は例示の過程にすぎず、他の過程を使用してもよい。
【0040】
ブロック802では、レーザビーム930は、B半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数よりも低く、C半導体単層カーボンナノチューブよりも高い振動数ω1に調整される。
【0041】
ブロック804では、A、BおよびC半導体単層カーボンナノチューブの混合物を層流の第1のマイクロ流体層920中に配置する。
【0042】
ブロック806では、A、BおよびC半導体単層カーボンナノチューブの混合物はレーザビーム930に向かって流れ、レーザビーム930はAおよびB単層カーボンナノチューブをトラップする。
【0043】
ブロック808では、レーザビーム930の焦点が移動し、AおよびBの単層カーボンナノチューブが層流の第2マイクロ流体層922に移動し、C単層カーボンナノチューブが第1マイクロ流体層920中に残る。
【0044】
ブロック810では、レーザビーム930は、B半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数より高いが、A半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数より低い振動数ω2に調整される。
【0045】
ブロック812では、AおよびB半導体単層カーボンナノチューブの混合物はレーザビーム930まで流れ、レーザビーム930はA単層カーボンナノチューブをトラップする。
【0046】
ブロック814では、レーザビーム930により、A半導体単層カーボンナノチューブは層流の第3のマイクロ流体層924に移動し、一方、B単層カーボンナノチューブは第2マイクロ流体層922内に残る。
【0047】
ブロック816では、過程800はA半導体単層カーボンナノチューブを第3層924からコレクタ926に収集し、B半導体単層カーボンナノチューブを第2層922からコレクタ932に収集する。
【0048】
図10は本発明の別の態様による、A、B、およびC半導体単層カーボンナノチューブを選別するのに適したマイクロ流体システム1000を示す。この態様は、A半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数がB半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数よりも高く、B半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数がC半導体単層カーボンの共鳴振動数よりも高い場合に適している可能性がある。
【0049】
レーザビーム1002を、A半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数より低いがB半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数よりも高い振動数ω1に調整してもよい。レーザビーム1002はA半導体単層カーボンナノチューブをトラップし、A半導体単層カーボンナノチューブをマイクロ流体層1004からマイクロ流体層1006に、コレクタ1008まで移動させてもよい。BおよびC半導体単層カーボンナノチューブはマイクロ流体層1004内に残る。
【0050】
その後、レーザビーム1010を、B半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数より低いが、C半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数より高い振動数ω2に調整してもよい。レーザビーム1010はB半導体単層カーボンナノチューブをトラップし、B半導体単層カーボンナノチューブをマイクロ流体層1004からマイクロ流体層1006に、コレクタ1012まで移動させてもよい。C半導体単層カーボンナノチューブはマイクロ流体層1004内に残る可能性がある。
【0051】
レーザビーム1014を、C半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数より低い振動数ω3に調整してもよい。レーザビーム1014はC半導体単層カーボンナノチューブをトラップし、C半導体単層カーボンナノチューブをマイクロ流体層1004からマイクロ流体層1006に、コレクタ1016まで移動させてもよい。
【0052】
単層カーボンナノチューブ製造者により潜在的ユーザに提供される単層カーボンナノチューブのバッチは、非常に強いvan der Waals力により、共に凝集し、ロープと同様の束を形成することが非常に一般的である。本発明の1つの態様では、1つのバッチの単層カーボンナノチューブは、光双極子トラップを使用する選別前に機能化させてもよい。例えば、単層カーボンナノチューブのバッチを界面活性剤水溶液中に分散させ、ばらばらにする(un-bundle)。適した界面活性は公知である(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))。
【0053】
本発明の1つの態様では、調整可能なレーザがレーザビームを提供する。そのため、調整可能なレーザは振動数を走査し、または振動数間でスイッチすることができる場合がある。別の態様では、複数のレーザを使用してレーザビームを提供してもよい。レーザビームは同じ振動数を有してもよく、標的クラスの単層カーボンナノチューブの効率の高いトラッピングが得られる(すなわち、レーザビームを同時に標的クラスのカーボンナノチューブに向けて誘導してもよく、実質的に全ての標的クラスの単層カーボンナノチューブが1つのパスでトラップされる可能性がある)。またさらに、同じ振動数を有する複数のレーザビームを標的クラスのカーボンナノチューブに向けて順次誘導してもよく、そのため実質的に全ての標的クラスの単層カーボンナノチューブが順にトラップされる可能性がある。マイクロ流体の流れを横切るレーザビーム掃引速度は十分速くしてもよく、そのため、標的単層カーボンナノチューブが全て1つのパスで除去される可能性がある。
【0054】
簡単にするために、1つのマイクロ流体システムのみを記述しているが、態様では、複数のマイクロ流体システムを使用して単層カーボンナノチューブを選別してもよい。例えば、2またはそれ以上のマイクロ流体システムを、互いに同時に実行することができる。また、2またはそれ以上のマイクロ流体システムを互いに連続して実行することができる。本明細書の記述を読んだ後であれば、当業者は、どのように、2またはそれ以上のマイクロ流体システムを使用して本発明を実行するかを容易に認識すると思われる。
【0055】
図11は、本発明の態様により選別した単層カーボンナノチューブを使用するのに適したシステム1100のハイレベルブロック図である。システム1100は、単層カーボンナノチューブチップ1102、試料1106からのチップ1102の距離を制御するために接続された圧電チューブ1104、チップ1102からのトンネル電流を増幅するためのトンネル電流増幅器1108、チューブ1104上の電極1112および1114に電圧を印加するために接続された制御ユニット1110、および、試料1106の走査結果を示すためのディスプレイ1116を含む走査トンネル顕微鏡としてもよい。試料1106は、システム1100の一部ではないので、点線内で示す。本発明の態様により選別した単層カーボンナノチューブを使用するのに適した走査トンネル顕微鏡は公知である。
【0056】
本発明の態様により、バンドギャップ(すなわち、光双極子共鳴振動数)により選別された単層カーボンナノチューブを使用するのに適した他のシステムはトランジスタ製造システムを含む。例えば、多くの装置では、特別な装置上のトランジスタ全てが同じバンドギャップを有するように、トランジスタバンドギャップが制御される。これにより、確実に、全てのトランジスタが同じしきい電圧を有するようになる。本発明の態様により選別された単層カーボンナノチューブを用いるのに適した他のシステムは、電池製造システム、および燃料電池製造システムを含む。
【0057】
本発明の態様は、ハードウエア、ソフトウエア、またはそれらの組み合わせを使用して実行してもよい。ソフトウエアを用いる実行では、ソフトウエアは機械によりアクセス可能な媒体上に保存されてもよい。機械によりアクセス可能な媒体には、機械(例えば、コンピュータ、ネットワーク装置、パーソナルデジタルアシスタント、製造ツール、1組の1または複数のプロセッサを含む任意の装置、など)によりアクセス可能な形態の情報を提供する(すなわち、保存するおよび/または伝達する)任意のメカニズムが含まれる。例えば、機械によりアクセス可能な媒体は、書込可能なおよび書込できない媒体(例えば、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリ装置、など)、ならびに電気、光、音響、または他の形態の伝搬信号(例えば、搬送波、赤外線信号、デジタル信号など)を含む。
【0058】
本発明の図示した態様の上記記述は包括的なものではなく、また本発明を開示した厳密な形態に限定するものでもない。本発明の特定の態様、および本発明に対する実施例について、本明細書において説明目的で記述したが、当業者に認識されるように、本発明の態様の範囲内で様々な等価な改変が可能である。上記詳細な説明を参照すれば、本発明の態様に対しこのような改変を行うことが可能である。
【0059】
上記説明では、本発明の態様を完全に理解するために、多くの特定の詳細、例えば特別な過程、材料、装置などが提供される。しかしながら、当業者であれば、本発明の態様は、1または複数の特定の詳細がなくても、または他の方法、構成要素などを用いて、実施することができることを認識すると思われる。他の場合、この説明の理解をあいまいにしないように、周知の構造または操作を図示しておらず、または詳細に説明していない。
【0060】
本明細書を通して、「1つの態様」または「態様」という用語は、態様に関連させて記述した特別な特徴、構造、過程、ブロック、または特性が、本発明の少なくとも1つの態様に含まれることを意味する。このように、本明細書全体の様々な箇所で現れる「1つの態様で」または「態様で」という句は、必ずしも、その句が全て同じ態様を示すことを意味しない。特別な特徴、構造、または特性を、1または複数の態様で任意の適した様式で組み合わせてもよい。
【0061】
添付の請求の範囲で使用した用語は、明細書および請求の範囲で開示した特定の態様に、本発明の態様を限定するものと考えるべきでない。むしろ、本発明の態様の範囲は、完全に添付の請求の範囲により決定されるものであり、請求の範囲は、請求の範囲の解釈の確立された原則に従い考えられるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図面において、同様の符号は一般に、同一の、機能的に同様の、および/または構造的に等価な要素を示す。要素が初めて現れた図面は、符号内の最左数字により示される。
【図1】本発明の態様による、金属単層カーボンナノチューブから半導体単層カーボンナノチューブを選別するための過程を示した流れ図である。
【図2】カイラルベクトルおよびカイラル角を示す単層カーボンナノチューブの六角格子の平面図である。
【図3】共鳴振動数に関する電気分極率を示すグラフである。
【図4】半導体単層カーボンナノチューブに対する電子状態密度を示すグラフである。
【図5】金属単層カーボンナノチューブに対するバンドギャップ電子状態密度を示すグラフである。
【図6】単層カーボンナノチューブに対するバンドギャップと直径との間の関係を示すグラフである。
【図7】本発明の態様によるマイクロ流体システムの上面図である。
【図8】本発明の態様による半導体単層カーボンナノチューブを選別するための過程を示す流れ図である。
【図9】本発明の態様による図8で示した過程を実行するのに適したマイクロ流体システムの上面図である。
【図10】本発明の別の態様による半導体単層カーボンナノチューブを選別するのに適したマイクロ流体システムの上面図である。
【図11】本発明の複数の態様により選別された単層カーボンナノチューブを使用するのに適したシステムのハイレベルブロック図である。
【技術分野】
【0001】
背景
1.分野
本発明の態様は、単層カーボンナノチューブに関し、特に、単層カーボンナノチューブの選別に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2002年3月26日に出願された米国特許出願第10/107,833号の一部継続出願であり、それに対し優先権の恩典を主張する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術の説明
カーボンナノチューブは、1990年代初期に発見されて以来、かなりの関心を引いてきた。トランジスタ、デジタルメモリ、およびディスプレイ用小型電子エミッタから次世代の環境に優しい自動車用の水素ガス貯蔵装置まであらゆるものに対し利用の可能性がある。
【0004】
典型的には、潜在的ユーザが入手できる1バッチの単層カーボンナノチューブは、異なる型の単層カーボンナノチューブの混合物を有する。例えば、1バッチの単層カーボンナノチューブには、金属単層カーボンナノチューブおよび半導体単層カーボンナノチューブが存在する可能性がある。半導体単層カーボンナノチューブの中には、異なる長さ、直径、および/またはカイラリティの単層カーボンナノチューブが存在する可能性がある。各型の単層カーボンナノチューブは、異なる用途に特に適した異なる特性を(例えば、電気、化学、光学、機械特性)有する。通常、分離することができない混合物として生じるので、異なる単層カーボンナノチューブは、特定の用途のための特別な型の単層カーボンナノチューブを使用しようとすると、厄介なことになる可能性がある。
【発明の開示】
【0005】
例示的な態様の詳細な説明
図1は本発明の態様による、金属単層カーボンナノチューブから半導体単層カーボンナノチューブを選別するための過程100を示す流れ図である。過程100は、本発明の態様を理解するのに最も役に立つように、複数の別個の操作を順に実施するものとして記述されている。しかしながら、操作の記述順は、操作は必ずしも順序に依存するものではないこと、または、操作は示した順序で実施されないことを意味すると考えるべきである。当然、過程100は例示的な過程であり、他の過程を使用してもよい。
【0006】
ブロック102では、過程100は、標的クラスの単層カーボンナノチューブに対応する直径およびカイラリティ(例えば、アームチェア、ジグザグ、らせん(またはカイラル))を決定する。単層カーボンナノチューブは、グラファイトシートを丸めてエンドキャップを有する、または有さない継ぎ目のない筒としたストリップとしてモデル化することができる。壁が単原子の厚さしかないので、「単層」である。グラファイトシートを巻いて、シートの一端の原子がシートの他端の原子と一致するようにして、筒を生成させる。第1の原子から第2の原子に向かうベクトルはカイラルベクトルと呼ばれ、「カイラルベクトル」の長さは単層カーボンナノチューブの円周に等しい。単層カーボンナノチューブ軸の向きはカイラルベクトルに垂直である。
【0007】
図2は、カイラルベクトルおよびカイラル角を示す単層カーボンナノチューブの六角格子の平面図200である。カイラルベクトルChは六角格子上でCh=na1+ma2として規定される。ここで、a1およびa2は単位ベクトルであり、nおよびmは整数である。カイラル角θはa1により規定される向きに対し測定される。例示的な図200は、(n、m)=(4、2)で構成され、この単層カーボンナノチューブのユニットセルは、OAB’Bにより境界が示される。単層カーボンナノチューブを形成するために、このセルが丸められOがAに、BがB’に重なり、2つの端がキャップされることを想像せよ。
【0008】
異なる型のカーボンナノチューブは異なる値のnおよびmを有する。ジグザグナノチューブは(n、0)または(0、m)に対応し、カイラル角が0°であり、アームチェアナノチューブは(n、n)を有しカイラル角が30°であり、一方、カイラルナノチューブは一般的な(n、m)値を有し、カイラル角が0°と30°との間である。本発明の複数の態様では、走査型トンネル顕微鏡を使用して、単層カーボンナノチューブに対する原子構造を決定し、表示してもよい。
【0009】
異なる長さ、直径、および/またはカイラルベクトルを有する単層カーボンナノチューブは異なる電子特性を有する。例えば、そのカイラルベクトルにより、直径の小さな単層カーボンナノチューブは半導体単層カーボンナノチューブまたは金属単層カーボンナノチューブのいずれかとなる。金属単層カーボンナノチューブは、室温で電気を通す場合がある。半導体単層カーボンナノチューブは室温では電気を通さない。
【0010】
図1に戻ると、ブロック104では、過程100は、標的クラスの単層カーボンナノチューブの共鳴振動数を識別する。1つの態様では、特別な振動数の光を放射するレーザビームを、単層カーボンナノチューブの混合物全体で走査してもよい。光の電場成分は1または複数の単層カーボンナノチューブと相互作用する。電場成分は標的単層カーボンナノチューブにおいて双極子モーメントを誘発する。
【0011】
レーザビームの振動数が標的単層カーボンナノチューブの共鳴振動数と等しい場合、標的単層カーボンナノチューブで誘発された双極子は共鳴すると思われる。レーザビームの振動数が単層カーボンナノチューブの共鳴振動数よりも低いと、単層カーボンナノチューブはレーザビームに引き付けられる(すなわち、光学的にトラップされる)。レーザビームの振動数が単層カーボンナノチューブの共鳴振動数よりも高い場合、レーザビームは単層カーボンナノチューブと反発する。(レーザビームの振動数が、単層カーボンナノチューブの共鳴振動数前後である場合、単層カーボンナノチューブの光学トラッピングは不安定である。)
【0012】
電場内の中性粒子の誘発された双極子モーメントは、P=ε0χEにより表してもよい。Pは、レーザビームの電場内の中性粒子の単位体積当たりの双極子モーメント(または分極)である。ε0は自由空間の誘電率であり、定数である。χ(ω)は双極子となる(すなわち、分極された)中性粒子の電気分極率である。電気分極率χ(ω)は粒子の電子構造、ならびに周囲媒質(例えば、自由空間、水、など)に依存する。
【0013】
図3はレーザビーム振動数ωに対し、分極された中性粒子(すなわち、単層カーボンナノチューブ)の電気分極率χを示したグラフ300である。電気分極率は、複合関数(χ(ω)=χ’(ω)+iχ’’(ω))であり、分極させるように試みるレーザビーム振動数ωに依存する。グラフ300は、常に正である、電気分極率に対する虚数部分302および共鳴振動数と交わると(点306)符号が変わる実数部分304を示す。
【0014】
電気分極率の実数部分χ’(ω)の符号は、単層カーボンナノチューブがレーザビームの電場成分に引き付けられるか、それとも反発するかを決定する。実数部分χ’(ω)の符号が正であれば、レーザビームは単層カーボンナノチューブを引き付けると考えられる。実数部分χ’(ω)の符号が負であれば、レーザビームは単層カーボンナノチューブと反発する。電気分極率の実数部分χ’(ω)の符号は、レーザビームの振動数ωにより決定される。レーザビームの振動数ωが単層カーボンナノチューブの共鳴振動数より低い場合、電気分極率の実数部分χ’(ω)の符号は正である。レーザビームの振動数ωが単層カーボンナノチューブの共鳴振動数より高い場合、電気分極率の実数部分χ’(ω)の符号は負である。
【0015】
総相互作用系エネルギーU(すなわち、双極子モーメントとレーザビームの電場の積であるエネルギー)は、U=-1/2P・Eで表してもよく、ここで、Eはレーザビームの電場成分である。総相互作用系エネルギーUはまた、U=-1/2ε0χE2で表してもよい。このように、総相互作用系エネルギーUは電気分極率の実数部分χ’(ω)の符号および電子ビームの電場成分の強度E2に依存する。正のχ’(ω)では、Uはレーザ強度E2の増加と共に減少すると思われる。このように、正のχ’(ω)を有するナノチューブは、より高いレーザ強度の領域に移動する傾向がある。集光レーザビームでは、強度分布は普通ガウス分布であり、最も高い強度点がレーザビームの中心にあり、正のχ’(ω)を有する中性粒子(すなわち、ナノチューブ)は最も安定である(すなわち、系エネルギーUが最も低い)と考えられる。これが、光誘発双極子(光双極子)トラップの原理である。
【0016】
図1に戻ると、ブロック106では、過程100は標的クラスの単層カーボンナノチューブの共鳴振動数と直径およびカイラリティとの間の関係を決定する。図4は一例の半導体単層カーボンナノチューブに対するバンド構造400(単層カーボンナノチューブおよびグラファイトの状態密度(DOS)に対するエネルギー/γ0;点線はグラファイトを示す)を示すグラフである。
【0017】
例えば、半導体単層カーボンナノチューブバンドギャップ構造400は、E11s、E22s、などとして記録される複数のピーク対を含む。これらのピーク対は、単層カーボンナノチューブに対する一次元電子状態密度(DOS)におけるvan Hove特異点である。E11sは第1エネルギー分離(またはバンドギャップ)である。E22sは第2エネルギー分離(またはバンドギャップ)である。各ピーク対は、単層カーボンナノチューブに対する共鳴振動数を示す。このように、E11sは半導体単層カーボンナノチューブに対する第1バンドギャップおよび第1共鳴振動数を示し、E22sは半導体単層カーボンナノチューブに対する第2バンドギャップおよび第2共鳴振動数を示す。
【0018】
図5は、金属単層カーボンナノチューブに対するバンド構造500(単層カーボンナノチューブおよびグラファイトの状態密度(DOS)に関するエネルギー/γ0)を示すグラフである。金属単層カーボンナノチューブバンドギャップ構造500はまた、E11M、E22M、などとして記録される複数のピーク対を含む。E11Mは第1エネルギー分離であり、E22Mは第2エネルギー分離である。各ピーク対は、単層カーボンナノチューブに対する共鳴振動数を示す。このように、E11Mは金属単層カーボンナノチューブに対する第1バンドギャップおよび第1共鳴振動数を示す。E11Mとして記録される2つのピーク対が存在することに注意すべきである。これは、三角ワーピング効果(trigonal warping effect)(すなわち、単層カーボンナノチューブの一次元構造におけるFermi点付近での非対称性)により引き起こされるvan Hove特異点の分割による場合がある。
【0019】
金属ピーク対E11Mは半導体ピーク対E11Sよりもずっと大きく、半導体E22よりもさらに大きいことに注意すべきである。本発明の態様では、走査型トンネル顕微鏡を使用して、単層カーボンナノチューブに対する原子構造および電子状態密度を決定し、表示してもよい。
【0020】
対応するvan Hove特異点間のエネルギーギャップは、光学的に許容されたバンド間遷移エネルギーである。バンド間遷移エネルギーは、各単層カーボンナノチューブの直径およびカイラリティにより決定される。図6は。単層カーボンナノチューブの直径に関する単層カーボンナノチューブ共鳴振動数(すなわち、バンド間遷移エネルギー)のプロット600を示すグラフである。
【0021】
プロット600は、約0.4<dt<3.0ナノメートル(nm)の範囲の直径dtを有する考えられる単層カーボンナノチューブの全(n、m)値に対する伝導帯および価電子帯の1次元電子状態密度(DOS)におけるvan Hove特異点間の計算したエネルギー分離Eii(例えば、E11、E22、E33、など)を示す。単層カーボン-カーボンエネルギー重なり積分γ0に対する値は、2.9eVである。最も近い隣接炭素-炭素距離ac-cは、1.42オングストローム(Å)である。バンド間遷移Eiiにおける指数iは、第i van Hove特異点間の遷移を示し、i=1はE=0で得られるFermiエネルギーレベルに最も近い。
【0022】
Eiiが公知であれば、特別な単層カーボンナノチューブの直径およびカイラリティを決定することができる。単層カーボンナノチューブのバンドギャップはその直径に反比例することに注意すべきである。例えば、金属単層カーボンナノチューブでは、
である。半導体ナノチューブでは、
である。これは、単層カーボンナノチューブの直径が増加するにつれ、バンドギャップおよび共鳴振動数が減少することを意味する。
【0023】
カイラリティによって、単層カーボンナノチューブのバンド間遷移エネルギーEiiは、直径に対して反比例することから外れる場合がある(すなわち、
からはずれる場合がある)。上記のように、これは三角ワーピング効果によるvan Hove特異点の分割(金属単層カーボンナノチューブ)またはシフト(半導体単層カーボンナノチューブ)による。この三角ワーピング効果はnがmに等しくない場合にのみ起きる(すなわち、アームチェア単層カーボンナノチューブ)。
【0024】
図1に戻ると、ブロック108では、単層カーボンナノチューブの混合物がマイクロ流体システム内の1つの層に配置される。単層カーボンナノチューブの混合物は少なくとも1つの標的単層カーボンナノチューブを含む。
【0025】
図7は本発明の態様によるマイクロ流体システム700の上面図である。マイクロ流体システム700内の単層カーボンナノチューブの混合物は複数の単層カーボンナノチューブ702、704、706、708、710、712、714および716を含む。図示した態様では、単層カーボンナノチューブ714および716は標的単層カーボンナノチューブである。
【0026】
マイクロ流体システム700は、層流で互いに滑らかに隣接して流れる粘性流体(例えば、水)の1または複数の層(簡単にするために、各々、方向732および734で流れる2つの層720および722を図示する)を含む。1つの態様では、単層カーボンナノチューブナノチューブ混合物を層720内に配置してもよい。
【0027】
1つの態様では、層720および722の任意の一つの幅および高さは約1ミリメートル(mm)より小さくてもよい。
【0028】
層720および722の任意の一つにおける流体の流れは、レイノルズ数RNにより特徴づけることができる。これはRN=ρvd/ηにより表され、ここで、ρは流体密度であり、vは流体速度であり、ηは粘度であり、dは流れに関連する幾何学的寸法(例えば、層の幅および高さ)である。レイノルズ数が約2000未満の場合、流体の流れは層流である。レイノルズ数が約2000を超える場合、流体の流れは乱流である。
【0029】
例示的なマイクロ流体システム700はまた、レーザビーム730を含む。図1に戻ると、ブロック110では、レーザビーム730は単層カーボンナノチューブの混合物に誘導される。レーザビーム730は、標的単層カーボンナノチューブの共鳴振動数よりも低い振動数を有してもよい。レーザビーム730は、標的単層カーボンナノチューブにおいて電気双極子を誘導し、標的単層カーボンナノチューブをトラップする。
【0030】
1つの態様では、単層カーボンナノチューブ714および716は標的半導体単層カーボンナノチューブであり、レーザビーム730は半導体カーボンナノチューブ714および716をトラップする。
【0031】
アーク放電、レーザー切断、化学蒸着(CVD)、または他の方法を用いて製造した単層カーボンナノチューブは一定の直径分布を有する。例えば、公知の高圧CO不均化法(HiPCO)により製造した単層カーボンナノチューブの分布は、約0.8〜1.3nmにわたる直径を有する(領域602を参照のこと)。1つの態様では、レーザビームのエネルギーは0.55eV未満が選択される。この態様では、金属および半導体単層カーボンナノチューブのほとんどがトラップされる場合がある。レーザ振動数がE11MおよびE11Sでは単層カーボンナノチューブに対する共鳴振動数未満であるからである(すなわち、単層カーボンナノチューブの全てがトラップされる可能性がある)。
【0032】
別の態様では、レーザビームのエネルギーは約1.05eVで選択される。この態様では、半導体単層カーボンナノチューブのほとんどがリリースされ、全ての金属単層カーボンナノチューブがトラップされる可能性がある。レーザ振動数が、E11Mでは単層カーボンナノチューブに対する共鳴振動数より低く、E11Sでは単層カーボンナノチューブに対する共鳴振動数より高いからである(すなわち、金属単層カーボンナノチューブにおいてのみトラップが発生する可能性がある)。
【0033】
別の態様では、金属単層カーボンナノチューブを半導体単層カーボンナノチューブから選別した後、レーザビームのエネルギーを0.6〜1eVの間で調整する。この態様では、いくつかの半導体単層カーボンナノチューブがリリースされ、いくつかの半導体単層カーボンナノチューブがトラップされる。レーザ振動数が、E11Sで単層カーボンナノチューブに対する共鳴振動数より低く、E11Sで他の単層カーボンナノチューブに対する共鳴振動数より高いからである(すなわち、いくつかの単層カーボンナノチューブはトラップされる可能性があるが、他の半導体カーボンナノチューブはトラップされない可能性がある)。
【0034】
ブロック112では、半導体単層カーボンナノチューブ714および716が層720から層722に移動され、金属単層カーボンナノチューブ702、704、706、708、710、712が層720に残っている。例えば、レーザビーム730の焦点が層720から層722に移動してもよい。上記から、正のχ’(ω)を有する単層カーボンナノチューブは、強度分布がガウス分布である集光レーザビームではレーザビームの中心にあるより高いレーザ強度の領域に移動する傾向があること、を思い出すこと。このように、レーザビーム730の焦点が層720から層722に移動すると、半導体単層カーボンナノチューブ714および716は、層720から層722に移動する場合がある。
【0035】
1つの態様では、鏡(図示せず)を使用して、レーザビーム730の焦点の位置を変えてもよい。例えば、鏡の角度を連続して、または段々に変え、レーザビーム730の方向角を変えてもよい。
【0036】
ブロック114では、過程100は、半導体単層カーボンナノチューブ714および716を層722から1つの収集場所736に収集し、金属単層カーボンナノチューブ702、704、706、708、710、712を層720から別の収集場所738に収集する。
【0037】
群A、BおよびC半導体単層カーボンナノチューブの混合物から群B半導体単層カーボンナノチューブを分離するのに適した別の態様を説明する。A半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数がB半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数より高く、B半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数がC半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数より高いと仮定する。
【0038】
図8は、本発明の態様による、B半導体単層カーボンナノチューブをAおよびC半導体単層カーボンナノチューブから選別するための過程800を示す流れ図である。図9は、本発明の態様による過程800を実行するのに適したマイクロ流体システム900の上面図である。
【0039】
過程800は、本発明の態様を理解するのに最も役に立つ様式で、順に実施される複数の別個の操作として記述されている。しかしながら、記述されている操作の順は、操作が必ずしも順序に依存していないこと、または提示した順で実施されないことを意味すると考えるべきである。当然、過程800は例示の過程にすぎず、他の過程を使用してもよい。
【0040】
ブロック802では、レーザビーム930は、B半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数よりも低く、C半導体単層カーボンナノチューブよりも高い振動数ω1に調整される。
【0041】
ブロック804では、A、BおよびC半導体単層カーボンナノチューブの混合物を層流の第1のマイクロ流体層920中に配置する。
【0042】
ブロック806では、A、BおよびC半導体単層カーボンナノチューブの混合物はレーザビーム930に向かって流れ、レーザビーム930はAおよびB単層カーボンナノチューブをトラップする。
【0043】
ブロック808では、レーザビーム930の焦点が移動し、AおよびBの単層カーボンナノチューブが層流の第2マイクロ流体層922に移動し、C単層カーボンナノチューブが第1マイクロ流体層920中に残る。
【0044】
ブロック810では、レーザビーム930は、B半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数より高いが、A半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数より低い振動数ω2に調整される。
【0045】
ブロック812では、AおよびB半導体単層カーボンナノチューブの混合物はレーザビーム930まで流れ、レーザビーム930はA単層カーボンナノチューブをトラップする。
【0046】
ブロック814では、レーザビーム930により、A半導体単層カーボンナノチューブは層流の第3のマイクロ流体層924に移動し、一方、B単層カーボンナノチューブは第2マイクロ流体層922内に残る。
【0047】
ブロック816では、過程800はA半導体単層カーボンナノチューブを第3層924からコレクタ926に収集し、B半導体単層カーボンナノチューブを第2層922からコレクタ932に収集する。
【0048】
図10は本発明の別の態様による、A、B、およびC半導体単層カーボンナノチューブを選別するのに適したマイクロ流体システム1000を示す。この態様は、A半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数がB半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数よりも高く、B半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数がC半導体単層カーボンの共鳴振動数よりも高い場合に適している可能性がある。
【0049】
レーザビーム1002を、A半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数より低いがB半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数よりも高い振動数ω1に調整してもよい。レーザビーム1002はA半導体単層カーボンナノチューブをトラップし、A半導体単層カーボンナノチューブをマイクロ流体層1004からマイクロ流体層1006に、コレクタ1008まで移動させてもよい。BおよびC半導体単層カーボンナノチューブはマイクロ流体層1004内に残る。
【0050】
その後、レーザビーム1010を、B半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数より低いが、C半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数より高い振動数ω2に調整してもよい。レーザビーム1010はB半導体単層カーボンナノチューブをトラップし、B半導体単層カーボンナノチューブをマイクロ流体層1004からマイクロ流体層1006に、コレクタ1012まで移動させてもよい。C半導体単層カーボンナノチューブはマイクロ流体層1004内に残る可能性がある。
【0051】
レーザビーム1014を、C半導体単層カーボンナノチューブの共鳴振動数より低い振動数ω3に調整してもよい。レーザビーム1014はC半導体単層カーボンナノチューブをトラップし、C半導体単層カーボンナノチューブをマイクロ流体層1004からマイクロ流体層1006に、コレクタ1016まで移動させてもよい。
【0052】
単層カーボンナノチューブ製造者により潜在的ユーザに提供される単層カーボンナノチューブのバッチは、非常に強いvan der Waals力により、共に凝集し、ロープと同様の束を形成することが非常に一般的である。本発明の1つの態様では、1つのバッチの単層カーボンナノチューブは、光双極子トラップを使用する選別前に機能化させてもよい。例えば、単層カーボンナノチューブのバッチを界面活性剤水溶液中に分散させ、ばらばらにする(un-bundle)。適した界面活性は公知である(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))。
【0053】
本発明の1つの態様では、調整可能なレーザがレーザビームを提供する。そのため、調整可能なレーザは振動数を走査し、または振動数間でスイッチすることができる場合がある。別の態様では、複数のレーザを使用してレーザビームを提供してもよい。レーザビームは同じ振動数を有してもよく、標的クラスの単層カーボンナノチューブの効率の高いトラッピングが得られる(すなわち、レーザビームを同時に標的クラスのカーボンナノチューブに向けて誘導してもよく、実質的に全ての標的クラスの単層カーボンナノチューブが1つのパスでトラップされる可能性がある)。またさらに、同じ振動数を有する複数のレーザビームを標的クラスのカーボンナノチューブに向けて順次誘導してもよく、そのため実質的に全ての標的クラスの単層カーボンナノチューブが順にトラップされる可能性がある。マイクロ流体の流れを横切るレーザビーム掃引速度は十分速くしてもよく、そのため、標的単層カーボンナノチューブが全て1つのパスで除去される可能性がある。
【0054】
簡単にするために、1つのマイクロ流体システムのみを記述しているが、態様では、複数のマイクロ流体システムを使用して単層カーボンナノチューブを選別してもよい。例えば、2またはそれ以上のマイクロ流体システムを、互いに同時に実行することができる。また、2またはそれ以上のマイクロ流体システムを互いに連続して実行することができる。本明細書の記述を読んだ後であれば、当業者は、どのように、2またはそれ以上のマイクロ流体システムを使用して本発明を実行するかを容易に認識すると思われる。
【0055】
図11は、本発明の態様により選別した単層カーボンナノチューブを使用するのに適したシステム1100のハイレベルブロック図である。システム1100は、単層カーボンナノチューブチップ1102、試料1106からのチップ1102の距離を制御するために接続された圧電チューブ1104、チップ1102からのトンネル電流を増幅するためのトンネル電流増幅器1108、チューブ1104上の電極1112および1114に電圧を印加するために接続された制御ユニット1110、および、試料1106の走査結果を示すためのディスプレイ1116を含む走査トンネル顕微鏡としてもよい。試料1106は、システム1100の一部ではないので、点線内で示す。本発明の態様により選別した単層カーボンナノチューブを使用するのに適した走査トンネル顕微鏡は公知である。
【0056】
本発明の態様により、バンドギャップ(すなわち、光双極子共鳴振動数)により選別された単層カーボンナノチューブを使用するのに適した他のシステムはトランジスタ製造システムを含む。例えば、多くの装置では、特別な装置上のトランジスタ全てが同じバンドギャップを有するように、トランジスタバンドギャップが制御される。これにより、確実に、全てのトランジスタが同じしきい電圧を有するようになる。本発明の態様により選別された単層カーボンナノチューブを用いるのに適した他のシステムは、電池製造システム、および燃料電池製造システムを含む。
【0057】
本発明の態様は、ハードウエア、ソフトウエア、またはそれらの組み合わせを使用して実行してもよい。ソフトウエアを用いる実行では、ソフトウエアは機械によりアクセス可能な媒体上に保存されてもよい。機械によりアクセス可能な媒体には、機械(例えば、コンピュータ、ネットワーク装置、パーソナルデジタルアシスタント、製造ツール、1組の1または複数のプロセッサを含む任意の装置、など)によりアクセス可能な形態の情報を提供する(すなわち、保存するおよび/または伝達する)任意のメカニズムが含まれる。例えば、機械によりアクセス可能な媒体は、書込可能なおよび書込できない媒体(例えば、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリ装置、など)、ならびに電気、光、音響、または他の形態の伝搬信号(例えば、搬送波、赤外線信号、デジタル信号など)を含む。
【0058】
本発明の図示した態様の上記記述は包括的なものではなく、また本発明を開示した厳密な形態に限定するものでもない。本発明の特定の態様、および本発明に対する実施例について、本明細書において説明目的で記述したが、当業者に認識されるように、本発明の態様の範囲内で様々な等価な改変が可能である。上記詳細な説明を参照すれば、本発明の態様に対しこのような改変を行うことが可能である。
【0059】
上記説明では、本発明の態様を完全に理解するために、多くの特定の詳細、例えば特別な過程、材料、装置などが提供される。しかしながら、当業者であれば、本発明の態様は、1または複数の特定の詳細がなくても、または他の方法、構成要素などを用いて、実施することができることを認識すると思われる。他の場合、この説明の理解をあいまいにしないように、周知の構造または操作を図示しておらず、または詳細に説明していない。
【0060】
本明細書を通して、「1つの態様」または「態様」という用語は、態様に関連させて記述した特別な特徴、構造、過程、ブロック、または特性が、本発明の少なくとも1つの態様に含まれることを意味する。このように、本明細書全体の様々な箇所で現れる「1つの態様で」または「態様で」という句は、必ずしも、その句が全て同じ態様を示すことを意味しない。特別な特徴、構造、または特性を、1または複数の態様で任意の適した様式で組み合わせてもよい。
【0061】
添付の請求の範囲で使用した用語は、明細書および請求の範囲で開示した特定の態様に、本発明の態様を限定するものと考えるべきでない。むしろ、本発明の態様の範囲は、完全に添付の請求の範囲により決定されるものであり、請求の範囲は、請求の範囲の解釈の確立された原則に従い考えられるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図面において、同様の符号は一般に、同一の、機能的に同様の、および/または構造的に等価な要素を示す。要素が初めて現れた図面は、符号内の最左数字により示される。
【図1】本発明の態様による、金属単層カーボンナノチューブから半導体単層カーボンナノチューブを選別するための過程を示した流れ図である。
【図2】カイラルベクトルおよびカイラル角を示す単層カーボンナノチューブの六角格子の平面図である。
【図3】共鳴振動数に関する電気分極率を示すグラフである。
【図4】半導体単層カーボンナノチューブに対する電子状態密度を示すグラフである。
【図5】金属単層カーボンナノチューブに対するバンドギャップ電子状態密度を示すグラフである。
【図6】単層カーボンナノチューブに対するバンドギャップと直径との間の関係を示すグラフである。
【図7】本発明の態様によるマイクロ流体システムの上面図である。
【図8】本発明の態様による半導体単層カーボンナノチューブを選別するための過程を示す流れ図である。
【図9】本発明の態様による図8で示した過程を実行するのに適したマイクロ流体システムの上面図である。
【図10】本発明の別の態様による半導体単層カーボンナノチューブを選別するのに適したマイクロ流体システムの上面図である。
【図11】本発明の複数の態様により選別された単層カーボンナノチューブを使用するのに適したシステムのハイレベルブロック図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む方法:
レーザビームを、層流のマイクロ流体層内に配置されたカーボンナノチューブ混合物に誘導する段階であって、レーザビームは少なくとも1つの標的クラスのカーボンナノチューブの共鳴振動数より小さい振動数を有し、共鳴振動数は標的クラスのカーボンナノチューブの直径およびカイラリティにより決定され、混合物は少なくとも1つの標的クラスのカーボンナノチューブを含む、段階;
少なくとも1つのカーボンナノチューブをトラップする段階;ならびに
標的カーボンナノチューブを層流の第2のマイクロ流体層内に移動させる段階。
【請求項2】
標的クラスのカーボンナノチューブの共鳴振動数を識別する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
標的クラスのカーボンナノチューブの直径およびカイラリティを決定する段階をさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
標的クラスのカーボンナノチューブの直径、カイラリティおよび共鳴振動数の間の関係を決定する段階をさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの標的カーボンナノチューブを層流の第2のマイクロ流体層から収集する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
カーボンナノチューブの混合物をばらばらにする段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
標的クラスのカーボンナノチューブが、金属単層カーボンナノチューブである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
標的クラスのカーボンナノチューブが、半導体単層カーボンナノチューブである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
以下の段階をさらに含む、請求項1記載の方法であって、カーボンナノチューブの混合物が、別の標的クラスのカーボンナノチューブを含む方法:
カーボンナノチューブの混合物に別のレーザ振動数を有するレーザビームを誘導する段階であって、別のレーザ振動数は次のクラスのカーボンナノチューブの次の共鳴振動数より小さく、別の共鳴振動数が別の標的クラスのカーボンナノチューブの直径およびカイラリティにより決定される段階;
他の標的クラスのカーボンナノチューブをトラップする段階;ならびに
他の標的クラスのカーボンナノチューブを第3のマイクロ流体層に移動させる段階。
【請求項10】
以下の段階をさらに含む、請求項1記載の方法:
標的クラスのカーボンナノチューブの共鳴振動数よりも低いレーザ振動数を有する別のレーザビームをカーボンナノチューブの混合物に誘導する段階;
標的クラスのカーボンナノチューブをトラップする段階;および
標的カーボンナノチューブを第2のマイクロ流体層に移動させる段階。
【請求項11】
マイクロ流体層が、水である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
以下を含む装置であって、レーザビームが、標的カーボンナノチューブにおいて少なくとも1つの光双極子トラップを誘発し、標的カーボンナノチューブを第2のマイクロ流体中に移動させるように光学結合される装置:
標的クラスのカーボンナノチューブに対応する共鳴振動数より低い振動数を有するレーザビームを放射し、共鳴振動数は標的クラスのカーボンナノチューブの直径およびカイラリティから決定される、レーザ;
層流の第1のマイクロ流体層であって、第1のマイクロ流体層はカーボンナノチューブの混合物を有し、カーボンナノチューブの混合物は少なくとも1つの標的カーボンナノチューブを有する、第1のマイクロ流体層;ならびに
第1の流体層に近接する、層流の第2のマイクロ流体層。
【請求項13】
第1および第2のマイクロ流体層が、水を含む、請求項12記載の装置。
【請求項14】
標的クラスのカーボンナノチューブが、金属単層カーボンナノチューブである、請求項12記載の装置。
【請求項15】
標的クラスのカーボンナノチューブが、半導体単層カーボンナノチューブである、請求項12記載の装置。
【請求項16】
層流の第3のマイクロ流体層をさらに含み、第3のマイクロ流体層は第2のマイクロ流体層と近接している、請求項12記載の装置。
【請求項17】
レーザビームが、カーボンナノチューブの混合物において次の標的クラスのカーボンナノチューブに対応する共鳴振動数より低い次の共鳴振動数を放射するように結合され、次の共鳴振動数は、次の標的クラスのカーボンナノチューブの直径およびカイラリティにより決定され、レーザビームは次の標的クラスのカーボンナノチューブをトラップし、次の標的クラスのカーボンナノチューブを第3のマイクロ流体層に移動させるように光結合される、請求項16記載の装置。
【請求項18】
標的クラスのカーボンナノチューブを収集するための第1のコレクタをさらに含む、請求項12記載の装置。
【請求項19】
以下を含む、システム:
レーザビームを層流のマイクロ流体層中に配置されたカーボンナノチューブ混合物に誘導するように結合された装置であって、レーザビームは少なくとも1つの標的クラスのカーボンナノチューブの共鳴振動数より小さいレーザ振動数を有し、共鳴振動数は標的クラスのカーボンナノチューブの直径およびカイラリティにより決定され、混合物は少なくとも1つの標的クラスのカーボンナノチューブを含み、レーザビームは標的カーボンナノチューブを層流の第2のマイクロ流体層に移動させ、標的カーボンナノチューブを層流のマイクロ流体層から収集するための装置;ならびに
収集された標的カーボンナノチューブに結合された圧電チューブ。
【請求項20】
収集された標的カーボンナノチューブに結合された電流増幅器をさらに含む、請求項19記載のシステム。
【請求項21】
電流増幅器に結合されたディスプレイをさらに含む、請求項20記載のシステム。
【請求項22】
機械がアクセスすると、機械に下記段階を含む操作を実行させる、データを含む機械によりアクセス可能な媒体を含む、製造品:
レーザビームを層流のマイクロ流体層内に配置されたカーボンナノチューブの混合物に誘導する段階であって、レーザビームは少なくとも1つの標的クラスのカーボンナノチューブの共鳴振動数より小さい振動数を有し、共鳴振動数は標的クラスのカーボンナノチューブの直径およびカイラリティにより決定され、混合物は少なくとも1つの標的クラスのカーボンナノチューブを含む段階;
少なくとも1つの標的カーボンナノチューブをトラップする段階;ならびに
標的カーボンナノチューブを層流の第2のマイクロ流体層に移動させる段階。
【請求項23】
機械によりアクセス可能な媒体が、機械に、標的クラスのカーボンナノチューブの共鳴振動数を識別する段階を含む操作を実行させるデータをさらに含む、請求項22記載の製造品。
【請求項24】
機械によりアクセス可能な媒体が、機械に、標的クラスのカーボンナノチューブの共鳴振動数に対応する直径およびカイラリティを識別する段階を含む操作を実行させるデータをさらに含む、請求項23記載の製造品。
【請求項25】
機械によりアクセス可能な媒体が、機械に、標的クラスのカーボンナノチューブの直径、カイラリティおよび共鳴振動数の間の関係を決定する段階を含む操作を実行させるデータをさらに含む、請求項24記載の製造品。
【請求項26】
機械によりアクセス可能な媒体が、機械に、標的カーボンナノチューブを層流の第2のマイクロ流体層から収集する段階を含む操作を実行させるデータをさらに含む、請求項22記載の製造品。
【請求項27】
機械によりアクセス可能な媒体が、機械に、カーボンナノチューブの混合物をばらばらにする段階を含む操作を実行させるデータをさらに含む、請求項22記載の製造品。
【請求項1】
以下の段階を含む方法:
レーザビームを、層流のマイクロ流体層内に配置されたカーボンナノチューブ混合物に誘導する段階であって、レーザビームは少なくとも1つの標的クラスのカーボンナノチューブの共鳴振動数より小さい振動数を有し、共鳴振動数は標的クラスのカーボンナノチューブの直径およびカイラリティにより決定され、混合物は少なくとも1つの標的クラスのカーボンナノチューブを含む、段階;
少なくとも1つのカーボンナノチューブをトラップする段階;ならびに
標的カーボンナノチューブを層流の第2のマイクロ流体層内に移動させる段階。
【請求項2】
標的クラスのカーボンナノチューブの共鳴振動数を識別する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
標的クラスのカーボンナノチューブの直径およびカイラリティを決定する段階をさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
標的クラスのカーボンナノチューブの直径、カイラリティおよび共鳴振動数の間の関係を決定する段階をさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの標的カーボンナノチューブを層流の第2のマイクロ流体層から収集する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
カーボンナノチューブの混合物をばらばらにする段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
標的クラスのカーボンナノチューブが、金属単層カーボンナノチューブである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
標的クラスのカーボンナノチューブが、半導体単層カーボンナノチューブである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
以下の段階をさらに含む、請求項1記載の方法であって、カーボンナノチューブの混合物が、別の標的クラスのカーボンナノチューブを含む方法:
カーボンナノチューブの混合物に別のレーザ振動数を有するレーザビームを誘導する段階であって、別のレーザ振動数は次のクラスのカーボンナノチューブの次の共鳴振動数より小さく、別の共鳴振動数が別の標的クラスのカーボンナノチューブの直径およびカイラリティにより決定される段階;
他の標的クラスのカーボンナノチューブをトラップする段階;ならびに
他の標的クラスのカーボンナノチューブを第3のマイクロ流体層に移動させる段階。
【請求項10】
以下の段階をさらに含む、請求項1記載の方法:
標的クラスのカーボンナノチューブの共鳴振動数よりも低いレーザ振動数を有する別のレーザビームをカーボンナノチューブの混合物に誘導する段階;
標的クラスのカーボンナノチューブをトラップする段階;および
標的カーボンナノチューブを第2のマイクロ流体層に移動させる段階。
【請求項11】
マイクロ流体層が、水である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
以下を含む装置であって、レーザビームが、標的カーボンナノチューブにおいて少なくとも1つの光双極子トラップを誘発し、標的カーボンナノチューブを第2のマイクロ流体中に移動させるように光学結合される装置:
標的クラスのカーボンナノチューブに対応する共鳴振動数より低い振動数を有するレーザビームを放射し、共鳴振動数は標的クラスのカーボンナノチューブの直径およびカイラリティから決定される、レーザ;
層流の第1のマイクロ流体層であって、第1のマイクロ流体層はカーボンナノチューブの混合物を有し、カーボンナノチューブの混合物は少なくとも1つの標的カーボンナノチューブを有する、第1のマイクロ流体層;ならびに
第1の流体層に近接する、層流の第2のマイクロ流体層。
【請求項13】
第1および第2のマイクロ流体層が、水を含む、請求項12記載の装置。
【請求項14】
標的クラスのカーボンナノチューブが、金属単層カーボンナノチューブである、請求項12記載の装置。
【請求項15】
標的クラスのカーボンナノチューブが、半導体単層カーボンナノチューブである、請求項12記載の装置。
【請求項16】
層流の第3のマイクロ流体層をさらに含み、第3のマイクロ流体層は第2のマイクロ流体層と近接している、請求項12記載の装置。
【請求項17】
レーザビームが、カーボンナノチューブの混合物において次の標的クラスのカーボンナノチューブに対応する共鳴振動数より低い次の共鳴振動数を放射するように結合され、次の共鳴振動数は、次の標的クラスのカーボンナノチューブの直径およびカイラリティにより決定され、レーザビームは次の標的クラスのカーボンナノチューブをトラップし、次の標的クラスのカーボンナノチューブを第3のマイクロ流体層に移動させるように光結合される、請求項16記載の装置。
【請求項18】
標的クラスのカーボンナノチューブを収集するための第1のコレクタをさらに含む、請求項12記載の装置。
【請求項19】
以下を含む、システム:
レーザビームを層流のマイクロ流体層中に配置されたカーボンナノチューブ混合物に誘導するように結合された装置であって、レーザビームは少なくとも1つの標的クラスのカーボンナノチューブの共鳴振動数より小さいレーザ振動数を有し、共鳴振動数は標的クラスのカーボンナノチューブの直径およびカイラリティにより決定され、混合物は少なくとも1つの標的クラスのカーボンナノチューブを含み、レーザビームは標的カーボンナノチューブを層流の第2のマイクロ流体層に移動させ、標的カーボンナノチューブを層流のマイクロ流体層から収集するための装置;ならびに
収集された標的カーボンナノチューブに結合された圧電チューブ。
【請求項20】
収集された標的カーボンナノチューブに結合された電流増幅器をさらに含む、請求項19記載のシステム。
【請求項21】
電流増幅器に結合されたディスプレイをさらに含む、請求項20記載のシステム。
【請求項22】
機械がアクセスすると、機械に下記段階を含む操作を実行させる、データを含む機械によりアクセス可能な媒体を含む、製造品:
レーザビームを層流のマイクロ流体層内に配置されたカーボンナノチューブの混合物に誘導する段階であって、レーザビームは少なくとも1つの標的クラスのカーボンナノチューブの共鳴振動数より小さい振動数を有し、共鳴振動数は標的クラスのカーボンナノチューブの直径およびカイラリティにより決定され、混合物は少なくとも1つの標的クラスのカーボンナノチューブを含む段階;
少なくとも1つの標的カーボンナノチューブをトラップする段階;ならびに
標的カーボンナノチューブを層流の第2のマイクロ流体層に移動させる段階。
【請求項23】
機械によりアクセス可能な媒体が、機械に、標的クラスのカーボンナノチューブの共鳴振動数を識別する段階を含む操作を実行させるデータをさらに含む、請求項22記載の製造品。
【請求項24】
機械によりアクセス可能な媒体が、機械に、標的クラスのカーボンナノチューブの共鳴振動数に対応する直径およびカイラリティを識別する段階を含む操作を実行させるデータをさらに含む、請求項23記載の製造品。
【請求項25】
機械によりアクセス可能な媒体が、機械に、標的クラスのカーボンナノチューブの直径、カイラリティおよび共鳴振動数の間の関係を決定する段階を含む操作を実行させるデータをさらに含む、請求項24記載の製造品。
【請求項26】
機械によりアクセス可能な媒体が、機械に、標的カーボンナノチューブを層流の第2のマイクロ流体層から収集する段階を含む操作を実行させるデータをさらに含む、請求項22記載の製造品。
【請求項27】
機械によりアクセス可能な媒体が、機械に、カーボンナノチューブの混合物をばらばらにする段階を含む操作を実行させるデータをさらに含む、請求項22記載の製造品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−506643(P2007−506643A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528225(P2006−528225)
【出願日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/031404
【国際公開番号】WO2005/030640
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(591003943)インテル・コーポレーション (1,101)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/031404
【国際公開番号】WO2005/030640
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(591003943)インテル・コーポレーション (1,101)
【Fターム(参考)】
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