説明

光反射体

【課題】色彩及び模様の多様性を備えるとともに色彩及び模様を好適に表出させることが可能な、意匠性に優れた光反射体を提供する。
【解決手段】例えば、釣りの疑似餌Gにおける眼球として好適に用いられる光反射体Rを、反射面11を貝殻Sにより構成してなる基材1と、この基材1を覆うように設けられ中央部分21の厚みWaが周縁部分22の厚みWbよりも大きい透明隆起層2とを具備するものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々のものに用いられる光反射体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光の反射する態様を種々変化させることにより見る側の注意を惹かせるようにした光反射体が種々存在している。このような光反射体の一例としては、例えば、携帯電話やデジタルカメラ等の外面に単一又は複数貼り付けて用いられる装飾などを挙げることができる(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
上述のような光反射体の具体的な構成としては、着色をしたベース上に装飾用の透明な石を取り付けてなるものが典型である。かかる典型的なものにおいては、そのベース上に描かれる色彩及び模様が人工的に設定されたものであるため、完成品の意匠が概して単調で予測可能な範囲のものに止まることが多い。また、ベース上の色彩及び模様が複雑なものであったとしても、人工的なものではそのバリエーションに限界があり、さらには、このようなものに対して複雑な模様を効果的に表出させるような特段の工夫はなされていなかった。
【0004】
以上のように、従来の光反射体は、色彩及び模様の多様性に欠けるとともに色彩及び模様を表出させるための具体的な方策が採られていない場合がほとんどで、意匠的にも必ずしも見る側を満足させるものであるとは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−6690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたもので、色彩及び模様の多様性を備えるとともに色彩及び模様を好適に表出させることが可能な、意匠性に優れた光反射体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の光反射体は、反射面を貝殻により構成してなる基材と、この基材を覆うように設けられ中央部分の厚みが周縁部分の厚みよりも大きい透明隆起層とを具備してなることを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、基材の反射面を貝殻により構成してなるものであるため、貝殻特有の天然の模様により人為的には実現することが困難な多様性のある模様を表わすことができ、意匠性に優れた光反射体を実現することができる。しかも、前記基材を覆うように中央部分の厚みが周縁部分の厚みより大きい透明隆起層を備えてなるものであるため、前記透明隆起層を介して貝殻特有の天然の模様を適度に乱反射又は屈折させて表すことができ、見る側に対して変化に富んだ模様を表出させることができるものとなる。
【0009】
なお、光反射体の好適な用途としては、魚釣りで使用される疑似餌の眼球として用いられるものを挙げることができる。このようなものであれば、疑似餌の眼球に複雑で多様性のある模様を表出させることができるため、疑似餌を狙う魚やイカといった泳魚等の注意を好適に引き付け得るものとなる。
【0010】
さらに、前記基材が円形をなすとともに前記円形の基材の中心部分に前記疑似餌における眼球の黒目部分に相当する印刷を施してなるものであって、当該基材を覆うように前記透明隆起層を設けているものであれば、疑似餌の眼球を外観上、本物に極めて近似したものにできるとともに、天然の貝殻の模様を前記透明隆起層を介して見る側に表出させるので、疑似餌を狙う泳魚等の注意を好適に引き付け得るものとなる。
【0011】
なお、疑似餌に本発明を適用した他の態様としては、魚釣りで使用される疑似餌の所定箇所に設けられ、泳魚等の標的として用いられるものを挙げることができる。このようなものであれば、多様性のある模様を表出させた標的を疑似餌に設けることができるので、疑似餌を狙う泳魚等の注意を好適に引き付け得るものとなる。
【0012】
本発明である光反射体は、所定の対象物に取り付けて使用される装飾としても好適に用いることができる。このようなものであれば、人為的には実現することが困難な貝殻特有の多様性のある模様を利用できるとともに、その模様を適度に乱反射又は屈折させた、見る側の嗜好に沿った多様性のある外観を備えた装飾を提供することができるものとなる。なお、「所定の対象物」とは、例えば、パソコン、携帯電話、デジタルカメラ等の電子機器類や、財布、各種ケース、キーホルダ等の身の回り品のほか、人間の爪(ネイル)などが該当する。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、色彩及び模様の多様性を備えるとともに色彩及び模様を好適に表出させることが可能な、意匠性に優れた光反射体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明である光反射体を疑似餌に適用したものを示す概略図。
【図2】本発明の一実施形態を示す斜視図。
【図3】同実施形態における側面図。
【図4】本発明の他の実施形態を複数示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図面1〜3を参照して説明する。
【0016】
本発明の一実施形態である光反射体Rは、魚釣りで使用される疑似餌Gに適用されたものである。なお、ここでは、主に本発明に係る光反射体が、釣りで使用される疑似餌Gの眼球(光反射体)Rとして用いられる場合について説明する。
【0017】
疑似餌Gの眼球R(光反射体R)は、反射面11を貝殻Sにより構成してなる基材1と、この基材1を覆うように設けられ中央部分21の厚みWaが周縁部分22の厚みWbよりも大きい透明隆起層2とを具備してなるものである。
【0018】
疑似餌Gは、魚釣りで使用されるものであり、一般にルアーとも称されるものである。疑似餌Gは、魚や虫などの外形を模したもので、捕食に来る泳魚等を引っ掛けて捕えるために例えば尾ヒレに相当する部分に針G1が設けられている。本実施形態に係る疑似餌Gは、一般的な魚の形状を模したもの(例えば、いわゆるエギ等が相当する)であり、左右両側面の所定箇所に眼球Rを取り付けた態様のものである。
【0019】
以下、光反射体である眼球Rの基材1及び透明隆起層2について、図2及び図3を参照してより詳細に説明する。
【0020】
基材1は、平面視略円形をなしたもので、見る側の視覚に影響を与える得る上面側の反射面11と、疑似餌Gの所定箇所に種々の接着剤を介して接着する下面側の接着面12とを備えている。
【0021】
基材1は、アワビ等の貝殻をグラインダ等の工作機械により成形されるもので、本実施形態ではシート状をなすものである。貝殻にはアワビのほか、サザエ、高瀬貝、その他種々のものを利用することができる。貝殻は元来その内面又は外面に個性的な模様を有しており、貝殻の種類によって、又は、同種の貝殻であっても個々の貝殻によって、人工的、又は、人為的には容易に実現することのできない様々な模様を表出させ得るものである。また、その性質上、本実施形態のように、海水等に接する可能性のある環境においても、腐敗等の可能性が低く、耐性に優れたものとなっている。
【0022】
本実施形態では、基材1の一方の面である反射面11に任意の着色、例えば黒色の着色が施されており、天然の貝殻の模様を浮き上がらせるようしている。なお、当該着色の工程は、天然の貝殻の模様を視認し易いようにするための任意の工程であり、着色をしない状態でも当該シート状の貝殻は、天然の貝殻の模様を外面に表出させたものとなっている。
【0023】
基材1は、シート状に形成された後、眼球に対応させた形状、具体的にいえば平面視略円形に切断等される。また、略円形をなす基材1の中心部分には、疑似餌Gにおける眼球Rの黒目部分に相当する印刷Pを施してある。換言すれば、略円形をなす基材1の中心部分には印刷又はその他の方法により表示された黒色表示部を設けているものとしている。かかる印刷Pを施すことにより、眼球Rを黒目を有したものとして、より本物の魚と近似したものとすることができ、疑似餌G全体に本物の魚と同様の雰囲気を与えることができる。
【0024】
しかして、本発明に係る眼球Rは、中央部分21の厚みWaが周縁部分の厚みWbよりも大きい透明隆起層2を、基材1を覆うように設けたものとしている。
【0025】
透明隆起層2は、透明のエポキシ樹脂等を用いてなるもので、中央部分を高く隆起させた山形状、換言すれば平面視凸状に形成してなるものであり、中央部分21の厚みWaが周縁部分22の厚みWbよりも大きく設定されている。なお、本実施形態では、外部に接する面を略球面にしている。本実施形態のように外面を球面状にしているものであれば、基材1の反射面11に表された貝殻の模様を透明隆起層2を介して屈折作用により滑らかな曲線的な模様に変換させて、球面状の外面に表出させることができるものとなる。しかも、魚の眼球としての外観的なリアリティが向上するものとなる。
【0026】
ここで、透明隆起層2は、中央部分21の厚みWaが周縁部分22の厚みWbよりも大きいものであればよく、例えば種々の平凸レンズの形状のほか、ダイヤモンド形状のものや、円錐状、角錐状のものなど種々の形状のものが考えられる。もちろん、透明隆起層2は、左右を対象形状に設定する必要はなく、中央部の一部に凹みが形成されているものでもよい。すなわち、「中央部分」とは周縁部分を除いた範囲を指称するものである。
【0027】
前述のように、透明隆起層2を種々の形状にすることにより、基材1の反射面11に形成された貝殻Sの色彩及び模様を、透明隆起層2を介して適度に乱反射又は屈折させた上で見る側に表出させることができるため、色彩及び模様の多様性を備えた疑似餌Gの眼球Rを実現することができる。
【0028】
なお、「透明」とは、透きとおる態様のものをいうが、仮に透明隆起層の中に透明でないものが含まれている場合であっても、透明隆起層を介して基材1の反射面11の一部を見ることができれば「透明」に該当する。
【0029】
本実施形態における疑似餌Gの尾ヒレの基端には泳魚等の標的Xが設けられている。泳魚等の標的Xとは、アタックポイントとも称されるものであり、泳魚等が疑似餌Gを捕食するために攻撃目標とする部分に用いられる目印となる部材である。しかして、当該泳魚等の標的Xとして本発明である光反射体が用いられている。このようなものであれば、多様性のある模様を表出させた標的Xを疑似餌Gに適宜設けることができるので、疑似餌Gを狙う泳魚等の注意を好適に引き付け得るものとなる。なお、当該泳魚等の標的Xの形状は種々のものとすることができ、前述した疑似餌Gの眼球Rの形状と近似した形状のものにしてもよいし、その他種々の形状のものを採用することができる。
【0030】
このように、本実施形態に係る光反射体は、基材1を貝殻特有の天然の模様により表わすとともに当該天然の貝殻の模様を透明隆起層2を介して外部に表出させるようにしたものであるため、人工的には実現することができない変化に富んだ多様性のある模様を表現することができ、光の屈折作用を利用して意匠性に優れた光反射体を実現することができる。しかも、製品を大量生産する場合には、従来の人工的なものでは模様のバリエーションに限界が生じていたところ、本発明によれば天然の貝殻の模様に任意の着色等を施すことができるので、個々の商品すべてにおいて、他のものと異なる個性を有した色彩及び模様を表出した光反射体を作ることができるものとなる。
【0031】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0032】
本発明は、魚釣りで使用される疑似餌の眼球や、泳魚等の標的として用いられるもののほか、所定の対象物に取り付けて使用される装飾として用いることができる。このようなものであれば、所定の対象物に従来には無い複雑で多様性のある図柄を装飾として使用することができ、見る側の注意を惹きつけ得るものとなる。また、利用者においては、多様な色彩及び模様を表出したものの中から選択することができ、選択の幅が増えて好適なものとなる。なお、「所定の対象物」とは、例えば、パソコン、携帯電話、デジタルカメラ等の電子機器類や、財布、各種ケース、キーホルダ等の身の回り品のほか、人間の爪(ネイル)などがある。
【0033】
ここで、図4に示すものは、本発明である装飾の形状を模式的に種々例示したものである。図示例のように、本発明を適宜の形状に成型することにより、いわゆるアクセサリーとして利用者の嗜好に適応したものすることができるとともに、所期の目的を達成することができるものとなる。
【0034】
光反射体は、種々の疑似餌に適用することができるものであり、本実施形態に限定されるものではない。すなわち、いわゆるハードルアーのみならずワーム等のソフトルアーにも適用することができ、その他種々のものに適用することができる。
【0035】
基材の形状は、種々のものが考えられ、本実施形態のようなシート状のものに限定されるものではない。
【0036】
また、透明隆起層の材料はエポキシ樹脂に限定されるものではなく、透明のものであれば他の樹脂でももちろん良いし、ガラス等の種々のものを適用することが可能である。透明隆起層は、単一の層でもよいし多層構造のものとしてもよい。
【0037】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1…基材
2…透明隆起層
11…反射面
21…中央部分
22…周縁部分
R…光反射体
S…貝殻
Wa…(中央部分の)厚み
Wb…(周縁部分の)厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射面を貝殻により構成してなる基材と、この基材を覆うように設けられ中央部分の厚みが周縁部分の厚みよりも大きい透明隆起層とを具備してなることを特徴とする光反射体。
【請求項2】
釣りで使用される疑似餌の眼球として用いられる請求項1記載の光反射体。
【請求項3】
前記基材が略円形をなすとともに前記略円形をなす基材の中心部分に前記疑似餌における眼球の黒目部分に相当する印刷を施してなるものであり、当該基材を覆うように前記透明隆起層を設けている請求項2記載の光反射体。
【請求項4】
釣りで使用される疑似餌の所定箇所に設けられ、泳魚等の標的として用いられる請求項1記載の光反射体。
【請求項5】
所定の対象物に取り付けて使用される装飾として用いられる請求項1記載の光反射体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate