説明

光回路およびその設計方法

【課題】波面整合法を用いた設計によって発生する微細な構造を抑制した光回路を提供する。
【解決手段】入射光のフィールドまたは出射光のフィールドを所定の距離だけ伝搬させながら屈折率を計算することであって、順伝搬フィールドまたは逆伝搬フィールドのうち伝搬方向に対して横方向に大きな波数をもった成分を取り除いて屈折率を計算し、光回路の屈折率分布を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光回路およびその設計方法に関し、より詳細には、光回路の機能を実現する設計領域の屈折率分布を、波面整合法を用いて計算する光回路の設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信などの技術分野においては、光の干渉など波動としての性質を利用した光導波路構造の光部品が開発されている。このような光部品においては、光導波路中を伝搬する光を、屈折率の空間的分布を利用して、空間的に光を閉じ込める「光閉じ込め構造」により光回路を構成している。しかし、光導波回路内で干渉現象などを生じさせるためには、光導波回路内を伝播する光の光路長を長くしなければならず、光部品が大きくなってしまうという問題があった。この問題を解決する光回路として、ホログラフィック波動伝達媒体が知られている(例えば、特許文献1参照)。ホログラフィック波動伝達媒体は、光回路の機能を実現する設計領域の屈折率分布が緩やか、すなわち屈折率の高低差が小さくても、充分に高効率な光信号制御を可能とし、光部品の小型化を実現することができる。
【0003】
また、ホログラフィック波動伝達媒体の屈折率分布を設計する方法として、波面整合法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。図1は、従来の波面整合法を用いた光回路の設計方法を説明するための図である。図1(a)は、所望の機能を実現する光回路の設計領域1を、光導波回路の上面から見た模式図である。光の伝搬方向をz軸とし、z=zinを入射面2−1、z=zoutを出射面2−2という。光の伝搬方向に垂直なx軸方向の断面において、伝搬する光のフィールドの形状を
【0004】
【数1】

【0005】
としたとき、
【0006】
【数2】

【0007】
を決定するのが、波面整合法である。このときjは、複数の所望の光の入出力の組を想定し、それらを区別するための添え字であり、1からNとする。
【0008】
また、xを変数とする関数fであることと、f(x)という値とを区別するために、
【0009】
【数3】

【0010】
xを変数とする関数fであることを表す。ただし、誤解の生じにくいところでは慣習に従いf(x)という形で、関数fを表す場合もある。また、光の伝搬を決定する方程式は、非特許文献1の記載から、
【0011】
【数4】

【0012】
とする。ここで、iは虚数単位、ψは伝搬するフィールド、koは真空中の波数、nrefは参照屈折率であり、
【0013】
【数5】

【0014】
図2に、従来の波面整合法の計算におけるアルゴリズムを示す。最初に、ステップS1において、屈折率分布の初期値を与える。
【0015】
【数6】

【0016】
の関数であるが、記述が煩雑になるため、{n}と表す。また、添え字qは図2におけるフロー中の繰り返し回数を表しており、{nq}でq回変更を加えた屈折率分布を表す。
【0017】
ステップS2において、出射面2−2(z=zout)における所望の出射光3−2のフィールド4−2
【0018】
【数7】

【0019】
を初期値として、光回路の設計領域1を逆方向に伝搬させながら(図1(c)参照)、
【0020】
【数8】

【0021】
を求める。
【0022】
ステップS3において、繰り返し回数を更新して、z←zinとする。「←」は代入を表す。ステップS4では、屈折率を更新する。ここで、z方向に微小距離dzだけ隔たった
【0023】
【数9】

【0024】
とから、z+dz/2の位置での屈折率の値を決定する。dz/2は、屈折率分布を与える数値計算上のグリッドの位置として、距離dzだけ隔たった2つの位置zとz+dzの中間に設定する。ステップS4において、
【0025】
【数10】

【0026】
の領域全体では全ての値が決定されていないが、zまでは決まっている。z←zinでは境界の値
【0027】
【数11】

【0028】
であり、次の計算では、前に計算した屈折率の値をもとに、dzだけ伝搬させた値をもって、さらにその先の屈折率分布の値を決定すればよい。ステップS4は、
【0029】
【数12】

【0030】
で与えられる。式1では、dzだけ伝搬させた場所の屈折率を連続値として算出する場合と、光回路の作製を容易にするために、高屈折率部(n)と低屈折率部(n)の2値で算出する場合とを示している。
【0031】
ステップS5は、計算した屈折率の値をもとに、順方向の伝搬を、
【0032】
【数13】

【0033】
とあらわすことができる。
【0034】
ステップS6では、zをz+dzだけ増加させ、出射面z=zoutに達していなければ、ステップS4にもどり、ステップS4〜S6を繰り返す。
【0035】
このようにして、屈折率を変更しながら、フィールドを伝搬させることが可能となる。出射面z=zoutまで順方向の伝搬(順伝搬)が完了すると、
【0036】
【数14】

【0037】
をとれば、結合率ηが得られる。このとき、期待する結合率ηminよりも大きければ計算を終了する(ステップS7)。期待する結合率ηminよりも小さければ、ψとφ、順伝搬と逆伝搬の役割を入れ替えて、計算を繰り返す(ステップS8〜S11)。
【0038】
ステップS9は、
【0039】
【数15】

【0040】
で与えられ、ステップS10は、計算した屈折率の値をもとに、逆方向の伝搬を、
【0041】
【数16】

【0042】
とあらわすことができる。逆方向の伝搬(逆伝搬)が完了すると、結合効率
【0043】
【数17】

【0044】
を求め、期待する結合率ηminよりも大きければ計算を終了する(ステップS12)。期待する結合率ηminよりも小さければ、再びψとφ、順伝搬と逆伝搬の役割を入れ替えて、計算を繰り返す(ステップS3〜S6)。
【0045】
以上の計算を繰り返すことにより、dzの幅が十分小さければ、結合率は広義の単調増加を示し、事実上、所望の特性を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0046】
【特許文献1】特許第4213020号公報
【非特許文献】
【0047】
【非特許文献1】T.Hashimoto, et. al,“Optical circuit design based on a wavefront matching method,” OPTICS LETTERS, Vol.30, No.19, pp.2620-2622, 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0048】
しかしながら、従来の波面整合法を用いて光回路を設計すると、光回路の構造が、しばしば、細かい構造となる。
【0049】
図3に、光分岐回路を設計するときの設計領域を示す。光回路の設計領域1は、z軸方向の長さ300μm、x軸方向の幅50μm、入射面2−1における入射光3−1のフィールド径6μmである。出射面2−2には2つのポートが設定され、ポートの間隔は9μm、出射光3−2,3−3のフィールド径6μmである。光回路の設計領域1は、0.1μm×0.1μmのピクセルが、メッシュ上に画定されており、それぞれのピクセルが高屈折率部(n)または低屈折率部(n)のいずれかに設定されている。光回路は、石英系平面光導波回路であり、高屈折率部と低屈折率部の比屈折率差は1.5%である。
【0050】
図4Aに、従来の波面整合法により光分岐回路を設計したときの屈折率分布を示す。白色の部分が高屈折率部(n)であり、黒色の部分が低屈折率部(n)を示す。図4Bは、図4Aに示した光分岐回路におけるフィールド強度を示す図である。グレースケールで表され、黒色から白色に向かってフィールド強度が強くなる。図4Aに示した光分岐回路の設計領域のうち、図4Bに示した光のフィールドが集中する部分(強度が強い部分)に対応する部分においては、高屈折率部と低屈折率部とが、1または数ピクセルの間隔でランダムに配置された構造となっている(拡大図を示した部分)。このような複雑な形状で微細な構造のため、計算上の誤差、わずかな作製誤差等が存在すると、散乱等により、伝搬損失の増大など光回路の特性劣化が発生するという問題があった。
【0051】
そのため、従来の波面整合法においては、初期条件を、ほぼ期待される光回路形状に設定するなど、複雑な形状、微細な構造が発生しないように、制限条件を設けて計算する等の工夫がなされている。しかしながら、光回路の形状を特定するため光回路の特性が制限されたり、設計のための計算が煩雑になるなどの問題があった。また、実際に光回路を作製する際に、ピクセル単位の微細な構造を精度よく、再現性よく作製することが困難であるという問題もあった。
【0052】
本発明の目的は、波面整合法を用いた設計によって発生する微細な構造を抑制した光回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0053】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、光回路の入射面における入射光のフィールドから所望の出射面における出射光のフィールドを得る屈折率分布を決定する波面整合法を用いた光回路の設計方法において、前記入射光のフィールドを順方向に前記出射面まで伝搬させた順伝搬フィールドと前記出射光のフィールドとの結合効率が所定の値より大きいか、または前記出射光のフィールドを逆方向に前記入射面まで伝搬させた逆伝搬フィールドと前記入射光のフィールドとの結合効率が所定の値より大きくなるように、前記入射光のフィールドまたは前記出射光のフィールドを所定の距離だけ伝搬させながら屈折率を計算することであって、前記順伝搬フィールドまたは前記逆伝搬フィールドのうち伝搬方向に対して横方向に大きな波数をもった成分を取り除いて屈折率を計算して、屈折率分布を決定することを特徴とする。
【0054】
前記順伝搬フィールドまたは前記逆伝搬フィールドを前記所定の距離だけ伝搬させる計算において、伝搬方向に対して横方向に大きな波数をもった成分を取り除いて計算することができる。
【0055】
また、前記順伝搬フィールドまたは前記逆伝搬フィールドを前記所定の距離だけ伝搬させ、屈折率を計算する際に、伝搬方向に対して横方向に大きな波数をもった成分を取り除いて屈折率を計算することもできる。
【発明の効果】
【0056】
以上述べたように、本発明によれば、波面整合法を用いた設計によって発生する微細な構造を抑制し、低損失で、製造が容易な光回路を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】従来の波面整合法を用いた光回路の設計方法を説明するための図である。
【図2】従来の波面整合法の計算におけるアルゴリズムを示すフロー図である。
【図3】光分岐回路を設計するときの設計領域を示す図である。
【図4】(A)は従来の波面整合法により光分岐回路を設計したときの屈折率分布を示す図であり、(B)はAに示した光分岐回路におけるフィールド強度を示す図である。
【図5】(A)は実施例1の波面整合法により光分岐回路を設計したときの屈折率分布を示す図であり、(B)はAに示した光分岐回路におけるフィールド強度を示す図である。
【図6】(A)は実施例2の波面整合法により光分岐回路を設計したときの屈折率分布を示す図であり、(B)はAに示した光分岐回路におけるフィールド強度を示す図である。
【図7】(A)は実施例3の波面整合法により光分岐回路を設計したときの屈折率分布を示す図であり、(B)はAに示した光分岐回路におけるフィールド強度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
波面整合法は、光回路を伝搬する光を数値計算により求め、これをもとに光回路の屈折率分布を決定する手法である。平面光導波回路のような微細加工により実現される光回路においては、その屈折率分布を平面内に自由な形状に配置できる。従って、波面整合法を用いることにより、従来にはない複雑な形状、微細な構造を用いて特性のよい光回路を実現することができる。一方、光回路としては、複雑な形状であることにより大きな散乱等を発生し、特性を劣化させることにもなる。
【0059】
我々は、従来の波面整合法において、微細な構造が発生する原因の一つは、計算途中におけるフィールドの位相に特異点が多数発生するためであることを見出した。特異点が多数発生するのは、光の伝搬方向(z軸)に対して、横方向(x軸)に大きな波数をもった成分が発生するためであると考えられる。横方向の大きな波数をもつ成分は、空間的には激しく振動している。このため、波面整合法により屈折率を決定する際に、屈折率分布も空間的に激しく変化することになる。
【0060】
そこで、本発明の実施形態では、光回路を伝搬した光のうち、横方向に大きな波数をもった成分を取り除いたフィールドを用いて、波面整合法により屈折率分布を決定する。具体的には、光回路を伝搬させるフィールドの中から、横方向に大きな波数をもった成分を取り除く。これは、図2に示したアルゴリズム中の(式2)、(式4)における、フィールドの更新ルールを変更することによりなされる。すなわち、(式2)、(式4)の右辺のうち、zにおけるフィールドを計算した中から横方向に大きな波数をもった成分を取り除いて、次のz+dzまたはz−dzフィールドを決定する。
【0061】
また、屈折率の更新を計算する際に用いるフィールドについて、横方向に大きな波数をもった成分を取り除いてもよい。すなわち、図2に示したアルゴリズム中の(式1)、(式3)において、Fの中のパラメータ
【0062】
【数18】

【0063】
について、あらかじめ横方向に大きな波数をもった成分を取り除いて計算する。さらに、フィールドをフーリエ変換し、横方向に大きな波数をもった成分を取り除いた後に逆変換を行い、光回路を伝搬させ、屈折率の更新を計算してもよい。
【0064】
さらにまた、数値計算上の伝搬方向を複素化して、横方向に大きな波数をもった成分を取り除き、波面整合法を適用してもよい。このようにして、伝搬の演算子
【0065】
【数19】

【0066】
の大きな固有値となるフィールド成分を減衰させながら伝搬させることができる。この伝搬の演算子の固有値は、固有値が大きい場合は概ね横方向の波数の2乗に比例する。伝搬の演算子の固有値を用いて、固有値の小さな特定の成分を強調し、固有値が大きな成分を減衰させるようにすれば、横方向に大きな波数をもった成分を取り除いたフィールドを実現すことができる。
【実施例1】
【0067】
実施例1では、図3に示した光分岐回路の設計に適用する場合を説明する。図2に示したアルゴリズム中の(式1)、(式3)において、Fの中のパラメータについて、あらかじめ横方向に大きな波数をもった成分を取り除いて計算する。具体的には、フーリエ空間における高次成分を取り除くことによる。すなわち、(式1)、(式3)のFを
【0068】
【数20】

【0069】
と置き換えればよい。上式の意味は、フィールドをフーリエ変換して、窓関数w(k)を掛け、高周波成分を取り除いてから(すなわち、横方向に大きな波数をもった成分を取り除く)、フーリエ逆変換により戻す、ということである。ここで、窓関数は、0≦w(k)≦1となる実数値関数であり、波数の大きなところで値が小さくなるように設定する。例えば、
【0070】
【数21】

【0071】
とすれば、kout以上で成分ごとの強度を1/e2にすることができる。ここで、窓関数w(k)は、上記のガウス窓の他に、ハミング窓など目的に応じて選ぶことができる。
【0072】
図5Aに、実施例1の波面整合法により光分岐回路を設計したときの屈折率分布を示す。白色の部分が高屈折率部(n)であり、黒色の部分が低屈折率部(n)を示す。図5Bは、図5Aに示した光分岐回路におけるフィールド強度を示す図である。グレースケールで表され、黒色から白色に向かってフィールド強度が強くなる。図5Aに示した光分岐回路の設計領域のうち、図4Bに示した光のフィールドが集中する部分に対応する部分において、図4Aに示したような複雑な形状、微細な構造が消えていることが分かる。
【0073】
図4Aに示した光分岐回路も、図5Aに示した光分岐回路も、数値計算上、結合効率ηは、0.1dB下と良好な特性が得られている。しかしながら、実際に光回路を作製すると、図4Aに示した光分岐回路では伝搬損失が8dBであったにもかかわらず、図5Aに示した光分岐回路では0.4dBである。従来の方法では、複雑な形状、微細な構造を伴う屈折率分布であるため、横方向の波数が大きな成分が多く発生し、数値計算上の誤差、実際の作製誤差に対して敏感になり大きな損失が生じている。一方、実施例1の方法によれば、構造が単純で、散乱が発生にしにくく、結果として損失が低減されていることがわかる。
【0074】
光回路の作製にあたっては、高屈折率部分と低屈折率部分とが、1または数ピクセルの間隔でランダムに配置されると、比較的アスペクト比の大きな加工が必要となる。実施例1の方法によれば、このような微細な構造が発生しにくいので、製造が容易になる。
【0075】
実施例1においては、石英系のガラス材料からなる平面光導波回路を用いているが、Si、SiGe、InGaAsP系の半導体材料、PMMA(Polymethyl Methacrylate)などの有機材料を用いてもよい。この場合は、各材料に応じて、屈折率等のパラメータを変更して計算すればよい。
【実施例2】
【0076】
実施例2では、実施例1と同じく、図3に示した光分岐回路の設計に適用する場合を説明する。図2に示したアルゴリズム中の(式2)、(式4)を、それぞれ、
【0077】
【数22】

【0078】
とする。これを発展方程式にすると
【0079】
【数23】

【0080】
となる。
【0081】
【数24】

【0082】
という固有関数成分に着目すると、
【0083】
【数25】

【0084】
となり、sinθ<0のとき、Eに比例した減衰項を与える。よって、これを用いれば、固有値が大きな成分ほど、より早く減衰させながら、伝搬させることができる。また、この変化に伴って、屈折率の変更を与える計算式を
【0085】
【数26】

【0086】
と変更する。
【0087】
図6Aに、実施例2の波面整合法により光分岐回路を設計したときの屈折率分布を示す。式5〜式8において、θ=−1/30として計算した屈折率分布である。図6Bは、図6Aに示した光分岐回路におけるフィールド強度を示す図である。図6Aに示した光分岐回路の設計領域のうち、図6Bに示した光のフィールドが集中する部分に対応する部分において、図4Aに示したような複雑な形状、微細な構造が消えていることが分かる。
【0088】
図4Aに示した光分岐回路も、図6Aに示した光分岐回路も、数値計算上は結合効率ηは、0.1dB下と良好な特性が得られている。しかしながら、実際に光回路を作製すると、図4Aに示した光分岐回路では伝搬損失が8dBであったにもかかわらず、図6Aに示した光分岐回路では0.4dBである。実施例2の方法によれば、構造が単純で、散乱が発生にしにくく、結果として損失が低減されていることがわかる。
【実施例3】
【0089】
実施例3では、実施例1と同じく、図3に示した光分岐回路の設計に適用する場合を説明する。図2に示したアルゴリズム中の(式2)、(式4)を、それぞれ、
【0090】
【数27】

【0091】
として計算する。ここでγは適当な正定数で、実施例3では5とした。場所zにおける伝搬の演算子
【0092】
【数28】

【0093】
に対して、固有値E(z)をもつフィールド成分が最も多くなるように(式9)、(式10)では
【0094】
【数29】

【0095】
が掛かっている。E(z)も計算上適当に与えればよいが、この場合、入射光と出射光のフィールドはそれぞれ1入力、2出力の光導波路の固有基底モードに対応させているので、固有値をそれぞれEin,Eoutとすると、単調に変化させて
【0096】
【数30】

【0097】
とする。図2に示したアルゴリズム中の(式1)、(式3)の変更はない。
【0098】
図7Aに、実施例3の波面整合法により光分岐回路を設計したときの屈折率分布を示す。図7Bは、図7Aに示した光分岐回路におけるフィールド強度を示す図である。図7Aに示した光分岐回路の設計領域のうち、図7Bに示した光のフィールドが集中する部分に対応する部分において、図4Aに示したような複雑な形状、微細な構造が消えていることが分かる。図4Aに示した光分岐回路も、図6Aに示した光分岐回路も、数値計算上は結合効率ηは、0.1dB下と良好な特性が得られている。しかしながら、実際に光回路を作製すると、図4Aに示した光分岐回路では伝搬損失が8dBであったにもかかわらず、図6Aに示した光分岐回路では0.5dBである。実施例3の方法によれば、構造が単純で、散乱が発生にしにくく、結果として損失が低減されていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光回路の入射面における入射光のフィールドから出射面における所望の出射光のフィールドを得る屈折率分布を決定する波面整合法を用いた光回路の設計方法において、
前記入射光のフィールドを順方向に前記出射面まで伝搬させた順伝搬フィールドと前記所望の出射光のフィールドとの結合効率が所定の値より大きいか、または前記所望の出射光のフィールドを逆方向に前記入射面まで伝搬させた逆伝搬フィールドと前記入射光のフィールドとの結合効率が所定の値より大きくなるように、前記入射光のフィールドまたは前記所望の出射光のフィールドを所定の距離だけ伝搬させながら屈折率を計算することであって、
前記順伝搬フィールドまたは前記逆伝搬フィールドのうち伝搬方向に対して横方向に大きな波数をもった成分を取り除いて屈折率を計算して、屈折率分布を決定することを特徴とする光回路の設計方法。
【請求項2】
前記順伝搬フィールドまたは前記逆伝搬フィールドを前記所定の距離だけ伝搬させる計算において、伝搬方向に対して横方向に大きな波数をもった成分を取り除いて計算することを特徴とする請求項1に記載の光回路の設計方法。
【請求項3】
前記順伝搬フィールドまたは前記逆伝搬フィールドを前記所定の距離だけ伝搬させ、屈折率を計算する際に、伝搬方向に対して横方向に大きな波数をもった成分を取り除いて屈折率を計算することを特徴とする請求項1に記載の光回路の設計方法。
【請求項4】
前記順伝搬フィールドまたは前記逆伝搬フィールドをフーリエ変換し、高周波成分を取り除いてから、フーリエ逆変換して、前記横方向に大きな波数を取り除くことを特徴とする請求項3に記載の光回路の設計方法。
【請求項5】
前記計算された順伝搬フィールドまたは逆伝搬フィールドを、伝搬方向に対して複素成分に分解して、前記横方向に大きな波数をもった成分を取り除くことを特徴とする請求項2に記載の光回路の設計方法。
【請求項6】
前記計算された順伝搬フィールドまたは逆伝搬フィールドの伝搬の演算子の固有値のうち、特定の固有値の値を大きくして前記横方向に大きな波数をもった成分を取り除くことを特徴とする請求項2に記載の光回路の設計方法。
【請求項7】
基板上に形成されたクラッド層と、該クラッド層に埋設されたコア層とからなる光の導波領域が設けられている光回路であって、
前記光回路の入射面における入射光のフィールドから所望の出射面における出射光のフィールドを得る屈折率分布を有し、
該屈折率分布は、前記入射光のフィールドを順方向に前記出射面まで伝搬させた順伝搬フィールドと前記出射光のフィールドとの結合効率が所定の値より大きいか、または前記出射光のフィールドを逆方向に前記入射面まで伝搬させた逆伝搬フィールドと前記入射光のフィールドとの結合効率が所定の値より大きくなるように、前記入射光のフィールドまたは前記出射光のフィールドを所定の距離だけ伝搬させながら屈折率を計算することであって、前記順伝搬フィールドまたは前記逆伝搬フィールドのうち伝搬方向に対して横方向に大きな波数をもった成分を取り除いて屈折率を計算して、決定されていることを特徴とする光回路。
【請求項8】
前記基板は、石英系ガラスからなることを特徴とする請求項7に記載の光回路。
【請求項9】
前記基板は、半導体からなることを特徴とする請求項7に記載の光回路。
【請求項10】
前記基板は、有機材料からなることを特徴とする請求項7に記載の光回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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