説明

光増感剤を用いて生物学的汚染物を不活化するための方法および装置

【課題】血液製剤などの製造において、光照射後、残存する試薬を取り除く必要のない方法を提供する。
【解決手段】採取された液体の中に存在する可能性がある微生物または白血球を不活化するために前記液体を処理する方法であって、その方法が、
(a)前記液体に不活化に有効な量の光増感剤である内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体を加え;
(b)紫外光、可視光またはそれらの混合光に工程(a)の該液体を露光し、それにより前記微生物または白血球の複製を完全にまたは部分的に防止することを含み;
(c)前記微生物または白血球の不活化後、内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体を除去する工程を含まない、前記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光増感剤を用いて生物学的汚染物を不活化するための方法および装置に関する。
(関連特許願に対する他所参照)
本特許願は、米国特許願第09/119,666号(1998年7月21日提出)の部分継続であり、本出願と相容れる程度まで該特許願を本明細書中に全体的に取り入れる。
【背景技術】
【0002】
HIV、肝炎ならびに他のウイルスおよび細菌といった感染性微生物による血液供給物の汚染は、全血の輸血あるいは種々な血液成分、例えば血小板、血漿、ファクターVIII、プラスミノーゲン、フィブロネクチン、抗トロンビンIII、寒冷沈降物、ヒト血漿タンパク質フラクション、アルブミン、免疫血清グロブリン、プロトロンビン複合体血漿成長ホルモン、および血液から分離された他の成分、の投与を受けねばならない対象にとって健康上の重大な危険をもたらしている。血液のスクリーニング手順は汚染物を見逃すことがあり、また血液細胞成分を損わずにあらゆる感染性ウイルスおよび他の微生物を効果的に不活性化する滅菌法はこれまで入手できたことがない。
血液成分の汚染物除去についての溶媒界面活性剤法は、HIVのようなウイルスを包囲しているリン脂質膜を溶かすことにより効果を示し、血液のタンパク質成は損なわないが、もし血球が存在すると、このような方法は細胞膜に損傷を与えるので使用できない。
【0003】
血液成分の滅菌に対して光増感剤、即ち限定された波長の光を吸収し、吸収したエネルギーをエネルギー受容体に移す化合物、の使用が提唱された。例えば、欧州特許願第196,515号(1986年10月8日発行)は、非内因性光増感剤、例えばポルフィリン、プソラレン、アクリジン、トルイジン、フラビン(アクリフラビン塩酸塩)、フェノチアジン誘導体、および染料類、例えばニュートラル赤、およびメチレン青を血液添加物として使用する方法を示唆している。プロトポルフィリンは体内に自然に存在し、代謝されて光増感剤を生成しうるが、このものはタンパク質の望まれる生物活性を低下させるという点でその有用性に限りがある。クロルプロマジンもこのような光増感剤の一つの好例であるが、このものは鎮静効果があるので、汚染物の除去後に、患者に投与された流体からこれを除去しなければならないという事情のためその有用性に限りがある。
【0004】
Goodrich,R.P.,等(1997),“The Design and Development of Selective,Photoactivated Drugs for Sterilization of Blood Products,”Drugs of the Future 22:159−171は、プソラレンを含めて幾つかの光増感剤に関する論評と、血液生成物の汚染物除去に適する光増感剤を選択する際に重要な若干の刊行物を提供している。DNAの光開裂にテキサフィリンを使用する方法が米国特許第5,607,924号(1997年3月4日発行)および第5,714,328号(1998年2月3日発行、Magda等)に記載されている。ウイルスの不活性化に対するサプフィリンの使用が米国特許第5,041,078号(1991年8月20日発行、Matthews等)に記載されている。血液および血液成分中の包まれた細胞外ウイルスのフェンチアジン−5−ニウム染料+光による不活性化が米国特許第5,545,516号(1996年8月13日発行、Wagner)に記載されている。身体組織、例えば体液からウイルスや原生動物といった感染性汚染物を根絶するための光増感剤として、ポルフィリン、ヘマトポルフィリン、およびメロシアニン染料を使用する方法が、米国特許第4,915,683号(1990年4月10日発行)および関連する米国特許第5,304,113号(1994年4月19日発行、Sieber等)に開示されている。このような光増感剤の作用機作は、例えば包まれたウイルスおよび若干のウイルス感染細胞上の脂質二重層における領域に優先的に結合するものとして説明される。
【0005】
膜に結合した作用因子分子の光励起は、脂質の過酸素化を起こす一重項酸素のような反応性酸素種の生成につながる。このような光増感剤の使用に関する一つの問題は、それらが汚染物除去をしようとする流体の望ましい成分、例えば赤血球の細胞膜を攻撃し、そしてまた一重項酸素も処理すべき流体の望まれるタンパク質成分を攻撃することである。米国特許第4,727,027号(1988年2月23日発行、Wiesehahm,G.P.等)は、血液および血液製剤の汚染物除去にプソラレンおよび誘導体を含めてフロクマリンを使用することを開示しているが、生物学的に活性なタンパク質の変性を抑制するために、溶解酸素その他の反応性化学種との接触を減らす工程をとらねばならないことを教示している。ハロゲン化クマリンを用いるウイルスおよび細菌血液汚染物の光不活性化が米国特許第5,516,629号(1996年5月14日発行、Park等)に記載されている。米国特許第5,587,490号(1996年12月24日発行、Goodrich Jr.,R.P.等および米国特許第5,418,130号(Platz等)は、ウイルスおよび細菌性血液汚染物の失活に対する置換プソラレンの使用を開示している。後者の特許はまた他の血液成分に対する遊離基損傷を制御する必要性を教示している。米国特許第5,654,443号(1997年8月5日発行、Wollowitz等)は血液の光汚染物除去に使われる新しいプソラレン組成物を開示している。米国特許第5,709,991号(1998年1月20日発行、Lin等)は血小板製剤の光汚染物除去に対するプソラレンの使用およびその後のプソラレン除去を教示している。米国特許第5,120,649号(1992年6月9日発行)および関連する米国特許第5,232,844号(1993年8月3日発行、Horowitz等)もまた脂質膜を攻撃する光増感剤と共に「失活剤」を使用する必要性を開示し、米国特許第5,360,734号(1994年11月1日発行、Chapman等)も他の血液成分に対する損傷のこの防止問題を強張している。
【0006】
核酸を攻撃する光増感剤はこの分野で公知である。米国特許第5,342,752号(1994年8月30日発行、Platz等)は、赤血球、血小板、および血漿タンパクフラクションからなる血液生成物における寄生体汚染を軽減するために、アクリジン染料を基本とする化合物の使用を開示している。これら材料は、かなり低毒性のものではあるが、例えば赤血球に対して若干の毒性を示す。この特許はフロースルー基準による血液の汚染物除去装置を開示していない。米国特許第5,798,238号(Goodrich,Jr.,等)はウイルスおよび細菌汚染物の不活性に対するキノロンおよびキノロン化合物の使用を開示している。
【0007】
米国特許第4,612,007号(1986年9月16日発行)および関連する米国特許第4,683,889号(1987年8月4日発行、Edelson)に教示されている通り、光活性剤によるDNAの固定が血液中のリンパ球集団を減らす方法の中で開発された。
【0008】
リボフラビン(7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジン)が核酸を攻撃することが報告されている。リボフラビン存在下での核酸の光改変はTsugita,A,等(1965),“Photosensitized inactivation of ribonucleic acids in the presence of riboflavin,”Biochimica et Biophysica Acta 103:360−363;およびSpeck,W.T.等(1976),“Further Observations on the Photooxidation of DNA in the Presence of Riboflavin,”Biochimica et Biophysica Acta 435:39−44に論議されている。DNAへのルミフラビン(7,8,10−トリメチルイソアロキサジン)の結合はKuratomi,K.,et al.(1977),“Studies on the Interactions between DNA and Flavins,”Biochimica et Biophysica Acta 476:207−217に論じられている。Hoffmann,M.E.,等(1979),“DNA Strand Breaks in Mammalian Cells Exposed to Light in the Presence of Riboflavin and Tryptophan,”Photochemistry and Photobiology 29:299−303は、可視蛍光あるいは近紫外光線に暴露後の哺乳動物細胞のDNAにおける破壊を誘発させるためにリボフラビンおよびトリプトファンの使用を述べている。該文献記事は、もしリボフラビンかトリプトファンのいずれかを媒質から省くとこれらの効果を生じなかったと述べている。プロフラビンおよび光に暴露したときのDNA鎖破壊がPiette,J.等(1979),“Production of Breaks in Single−and Double−Stranded Forms of Bacteriophage ΦX174 DNA by Proflavine and Light Treatment,”Photochemistry and Photobiology 30:369−378に報告され、そしてDNAのプロフラビン媒介光増感の間のグアニン残基の変化は、Piette,J.,等(1981),“Alteration of Guanine Residues during Proflavine Mediated Photosensitization of DNA,” Photochemistry and Photobiology 33:325−333に論じられている。
【0009】
J.Cadet,等(1983),“Mechanisms and Products of Photosensitized Degradation of Nucleic Acids and Related Model Compounds,”Israel J.Chem.23:420−429は、一重項酸素の生成によるローズベンガル、メチレン青、チオニンおよび他の染料の作用機作を、一重項酸素の生成を含まない機作(それによると、フラビンまたはプテロン誘導体による核酸攻撃が進行する)と比較して論じている。この開示においては、リボフラビンが核酸を分解する能力を有するものとして例示されている。Korycka−Dahl,M.,等(1980),“Photodegradation of DNA with Fluorescent Light in the Presence of Riboflavin,and Photoprotection by Flavin Triplet−State Quenchers,”Biochimica et Biophysica Acta 610:229−234は、またリボフラビンによるDNAの開裂に活性酸素種が直接関与しないことを開示している。Peak,J.G.,等(1984),“DNA Breakage Caused by 334−nm Ultraviolet Light is Enhanced by Naturally Occurring Nucleic Acid Components and Nucleotide Coenzymes,”Photochemistry and Photobiology 39:713−716はリボフラビンおよび他の光増感剤の作用機作を調査している。しかし、このような光増感剤を医用流体の汚染物除去に使用するという示唆はなされていない。
【0010】
血液の汚染物除去装置が米国特許第5,290,221号(1994年3月1日発行、Wolfe,Jr.等)および米国特許第5,536,238号(1996年7月16日発行、Bischof)に記載された。米国特許第5,290,221号は、比較的せまい弓形の間隙中、流体の照射を開示している。米国特許第5,536,238号は濾過媒質中に届く光ファイバーを利用する装置を開示している。両特許とも細胞壁に対して親和性をもつベンゾポルフィリン誘導体を光増感剤として推奨している。
【0011】
本明細書中に引用されたすべての刊行物は本発明と矛盾のない程度に参考として取り入れてある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
流体あるいは他の材料を、その中にまたはその上に存在するかも知れない微生物および白血球の少なくとも若干を不活性化するために処理する方法および装置を提供する。このような流体はタンパク質、例えば生物活性のあるタンパク質(治療用タンパク質)、血液および血液構成成分からなる群から選ばれる一種以上の成分を、かかる成分の生物活性を破壊することなく含有できる。本法は次の工程からなる:
(a)無毒性、有効量の内因性光増感剤あるいは内因性を基本とする誘導光増感剤を流体と混合し;
(b)光増感剤を活性化するのに十分な光放射線に流体を暴露することにより微生物の少なくとも若干を不活性化する。
【0013】
これら光増感剤が微生物を不活性化しうる一つの機構は、核酸の複製が起こらないように核酸を妨害することによる。
【0014】
本明細書中で用いた「微生物の不活性化」とは、微生物を殺すか、または他の仕方でその再生能力を妨げることにより、微生物を複製から完全にまたは部分的に防止することを意味する。
【0015】
微生物の例として、ウイルス(細胞外および細胞内の両方)、細菌、バクテリオファージ、真菌、血液伝達寄生体、および原虫が挙げられる。ウイルスの好例として、後天的免疫不全ウイルス(HIV)、肝炎A,BおよびCウイルス、シンドビスウイルス、サイトメガロウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ヘルペスシンプレクスウイルス、例えばタイプIおよびII、ヒトT−リンホトロピックレトロウイルス、HTLV−III、リンパアデノパシ−ウイルスLAV/IDAV、パルボウイルス、輸液−伝達(TT)ウイルス、Epstein−Barrウイルス、およびこの分野で公知の他のウイルスがある。バクテリオファージの例としてΦX174、Φ6、λ、R17、T、およびTが挙げられる。代表的な細菌には、P.aeruginosa,S.aureus,S.epidermis,L.monocytogenes,E.coli,K.pneumoniaおよびS.marcescensがある。
【0016】
ドナー白血球が存在するかもしれないとき、例えば赤血球、血小板または血漿の輸液を含む方法において、免疫または自己免疫応答を望む場合に白血球の不活性化が望ましいことがある。
【0017】
本発明方法によって処理できる材料は、光放射線に対して十分な透過性があり、ウイルスの不活性化を達成するのに十分な光を与えうる材料、あるいは光放射線に対しこのような透過性をもつ流体に懸濁あるいは溶解しうる材料はいずれも包含する。このような材料の例は全血であり、また血液か血液成分から導かれる生物学的に活性なタンパク質を含む水性組成物である。パックされた赤血球、血小板および血漿(新鮮血漿あるいは新鮮凍結血漿)はこのような血液成分の例である。更に、血液から誘導されるタンパク質を含有する治療用タンパク質組成物、例えば医学的障害の治療に役立つ生物学的に活性なタンパク質、例えばファクターVIII、Von Willebrandファクター、ファクターIX、ファクターX、ファクターXI、Hegemanファクター、プロトロンビン、抗トロンビンIII、フィブロネクチン、プラスミノーゲン、血漿タンパク質フラクション、免疫血清グロブリン、修飾免疫グロブリン、アルブミン、血漿成長ホルモン、ソマトメジン、プラスミノーゲンストレプトキナーゼ複合体、セルロプラスミン、トランスフェリン、ヘパトグロビン、アンチトリプシンおよびプレカリクレイン、を含有する流体は、本発明に係る汚染物除去法により処理できる。本発明処理から利益を得ることのできる他の流体は腹腔透析に使われる腹腔溶液であり、このものは時として連結中に汚染され腹腔感染に至ることがある。
【0018】
「生物学的に活性な(あるいは生物活性)」という用語は、生体あるいはその成分中である変化を行ないうることを意味する。本明細書中に引用された「生物活性タンパク質」に関する「生物学的に活性な」は不活性化を受ける微生物の部分であるタンパク質を指すものではない。同様に、光増感剤に関して「無毒性」とは、ヒトおよび他の哺乳動物に対して低毒性あるいは無毒性であることを意味し、不活性化を受ける微生物に対して無毒性という意味ではない。生物活性の「実質的な破壊」とは、ポルフィリンおよびポルフィリン誘導体、代謝物および前駆物質(ヒトおよび哺乳動物の生物活性タンパク質および細胞に対して損傷効果をもつことが知られているもの)によって起こるのと少なくとも同じ位大きい破壊を意味する。同様に、「実質的に無毒性」とは、血液滅菌に対して知られるポルフィリン、ポルフィリン誘導体、代謝物および前駆物質より毒性が低いという意味である。
【0019】
本明細書中で用いた「血液生成物」という用語は、上で定義した血液成分および血液から誘導されるタンパク質を含む治療用タンパク質組成物を包含する。血液から誘導されるもの以外の生物活性タンパク質を含む流体も本発明方法により処理できる。
【0020】
内因性光増感剤および内因性を基本とする光増感剤誘導体を使用する本発明汚染物除去法は、微生物以外の流体成分の生物活性を実質的に破壊しない。これら成分のできるだけ多くの生物活性が保持されるが、本法が最適化されている場合には、生物活性の若干の損失(例えば、タンパク質成分の変性)を流体の効果的な汚染物除去に対して釣り合わせなければならない。流体成分がそれらの企図した目的あるいは自然の目的に役立つ程十分な生物活性を保持する限り、それらの生物活性が「実質的に破壊された」とは見做されない。
【0021】
本発明に有用な光増感剤には、この分野で微生物の不活性化に役立つことが知られるどの光増感剤も包含される。「光増感剤」は、一種以上の限定された波長の放射線を吸収し、その後に、吸収したエネルギーを化学過程の遂行のために利用する化合物であると定義される。このような光増感剤の例として、ポルフィリン、プソラレン、染料、例えばニュートラル赤、メチレン青、アクリジン、トルイジン、フラビン(アクリフラビン塩酸塩)およびフェノチアジン誘導体、クマリン、キノロン、キノンおよびアントロキノンが挙げられる。本発明に係る光増感剤は、核酸に優先的に吸着し、従ってそれらの光力学的効果を微生物およびウイルスに集中させ、付随する細胞あるいはタンパク質に対して殆どあるいは全く影響を及ぼさない化合物を包含することができる。他の光増感剤、例えば一重項酸素依存機構を使用するもの、も本発明に有用である。内因性光増感剤が最も好ましい。「内因性」という用語は、ヒトあるいは哺乳動物体中に、生体による合成の結果として、あるいは必須食品(例えば、ビタミン)として消化されるためにあるいは生体内での代謝物および(または)副産物の生成のために、自然に見出されることを意味する。このような内因性光増感剤の例は、アロキサジン、例えば7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジン(リボフラビン)、7,8,10−トリメチルイソアロキサジン(ルミフラビン)、7,8−ジメチルアロキサジン(ルミクロム)、イソアロキサジン−アデニンジヌクレオチド(フラビンアデニンジヌクレオチド[FAD])、アロキサジンモノヌクレオチド(フラビンモノヌクレオチド[FMN]およびリボフラビン−5−ホスフェートとしても知られる)、ビタミンK類、ビタミンL、それらの代謝物および前駆物質、およびナフトキノン、ナフタレン類、ナフトール、ならびに平面分子コンホメーションを有するこれらの誘導体である。「アロキサジン」という用語にはイソアロキサジンが包含される。内因性を基本とする誘導光増感剤には、内因性光増感剤の合成的に誘導された類縁体および同族体が包含され、そしてこれらが誘導された光増感剤の低級(1−5)アルキルあるいはハロゲン置換基を有することもあれば欠くこともあり、そしてこれらは元の機能と実質的な無毒性を保有する。内因性光増感剤を使用するとき、とりわけこのような増感剤が本来毒性が無く、あるいは光放射後に有毒な光化学生成物を生じない場合には、汚染物除去後に除去工程あるいは精製工程を必要とせず、そして処理生成物は直接患者の身体へ戻すか、あるいはその治療効果を必要とする患者へ投与できる。特に好ましい内因性光増感剤は次の通りである:
【化1】


【化2】


【化3】


【化4】

【0022】
本発明方法は、光増感剤と汚染物除去をしようとする材料との混合を必要とする。混合は光増感剤あるいは光増感剤を含む溶液を汚染物除去すべき流体へ単に加えることにより行なうことができる。一つの具体例においては、光増感剤を添加した脱汚染すべき材料を光放射線源を通り過ぎるように流す。一般に材料の流れは充分な乱流をもたらし、汚染物除去をしようとする流体中に隈なく光増感剤を分布させる。もう一つの具体例では、流体と光増感剤を光透過性容器に入れ、バッチ様式で照射するが、なるべくはこの間容器をかきまぜ、光増感剤を完全に分布させかつすべての流体を放射線に当てるようにするのがよい。
【0023】
流体と混合すべき光増感剤の量は流体中の微生物を不活性化するのに十分な量とするが、ヒトあるいは他の哺乳動物に対して有毒となる量より、あるいは溶けない量より少なくする。本明細書中に示した通り、望まれる光増感剤の最適濃度は実験を行なわずとも当業者によって容易に決定しうる。なるべく光増感剤は、少なくとも約1μMから該流体中の光増感剤の溶解度までの濃度、なるべくは約10μMの濃度で用いるのがよい。7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンについては、約1μMから約160μMの濃度範囲がよく、なるべくは約10μMが好ましい。
【0024】
光増感剤を含む流体を適当な波長の光放射線に暴露して光増感剤を活性化する。このとき、前述したように光増感剤を活性化するのに十分な量の光放射線を用いるが、生物学的成分に対し非特異的な損傷を起こしたり、あるいは流体中に存在する他のタンパク質の生物学的活性を実質的に妨げたりする量より少なくすべきである。用いる波長は当業者にとって公知の通り、選ばれた光増感剤に依存するが、あるいは本発明の教示に従って、実験によらずに容易に決定できる。光源は約300nmから約700nm、更に好ましくは約340nmから約650nmの放射線の光を与える蛍光源あるいはルミネセンス光源がよい。本発明においては、紫外から可視範囲の波長が有用である。光源あるいは光源群は可視範囲の光、紫外範囲の光、あるいはなるべくは可視範囲の光と紫外範囲の光との混合した光、更に好ましくは約半分が可視スペクトルで半分は紫外スペクトルであるもの、を与えることができるが、可視と紫外の他の比も使用できるであろう。混合光の一つの利益は、可視スペクトルは血小板を損なわず、要求されるより有害な紫外線の量を減らすことである。
【0025】
活性化された光増感剤は存在する微生物の複製を妨げることによりそれらを不活性化できる。光増感剤の作用の特異性は微生物の核酸へ光増感剤が密接に接近することにより与えられ、そしてこれは光増感剤が核酸へ結合することから起こりうる。「核酸」はリボ核酸(RNA)とデオキシリボ核酸(DNA)を包含する。他の光増感剤は細胞膜へ結合することにより、あるいは他の機構により作用する。光増感剤は抗体への、なるべくは微生物に対して特異的なモノクローナル抗体への、共有結合的カップリングにより、不活性化すべき微生物へ向けられる。
【0026】
光増感剤を含む流体は照射のための光透過性容器中に流し込むことができる。用語「容器」は閉じた空間か開放空間を指し、このものは剛性の材料からつくられることも、あるいはたわみ性材料からつくられることもあり、例えばバッグでも、箱でも、槽でもよい。このものは最上部が閉じられていても、あるいは開放してあってもよく、そして両端に開口部をもつこともあり、例えば流体が中を流れ抜けられるように管またはチュービングでもよい。フロースルー方式を含む本発明の一具体例を例示するためにキュベットを使用した。流体のバッチ式処理を含むもう一つの具体例を例示するために、集収バッグ、例えばTrimaTM SpectraTMで使用されたもの、およびCobe Laboratories,Inc.の成分分離系(apheresis system)が使用された。
【0027】
「光透過性の」という用語は容器材料が光増感剤を活性化するために適した波長の光放射線に対して十分に透明であることを意味する。フロー−スルー方式において、容器は光源からのあらゆる距離で光増感剤分子と接触し、そして汚染物除去をすべき流体中の微生物の不活性化を果すよう光放射線が十分に容器中に侵入できる深さ(光放射線源からの放射線の方向で測った寸法)、および光放射線に対する流体の十分な暴露時間を確保するのに十分な長さ(流体の流れの方向での寸法)をもつ。このような容器をつくるための材料ならびに容器の深さおよび長さは、不当な実験を行なわずに本発明の教示に従い当業者によって容易に決定でき、そして容器中を通る流体の流速、放射線強度および流体成分、例えば血漿、血小板、赤血球、の吸収性は流体を光放射線に暴露するために必要な時間の量を決定するであろう。7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンに対して特に好ましい放射線の量は約1J/cmから120J/cmである。
【0028】
バッチ式処理を含むもう一つの具体例においては、処理すべき流体を光透過性容器に入れ、これをかきまぜ、そして微生物を実質的に不活性化するのに十分な時間光放射線に暴露する。光透過性容器は透明または半透明プラスチックからつくられた血液バッグがよく、そのかきまぜ装置はシェーカーテーブルが好ましい。光増感剤は粉末または液体形で容器へ加え、容器をかきまぜて光増感剤を流体と混合し、かつ全流体を光放射線に十分に暴露して微生物の不活性化を確実にする。
【0029】
光増感剤は処理される流体とは別に光透過性容器へ加えるかまたは流し込み、あるいは流体を容器に入れる前に流体へ加えることができる。一具体例においては、光増感剤を抗凝固物質へ加え、光増感剤と抗凝固物質との混合物を流体へ加える。
【0030】
またエンハンサーを流体へ加えてこの過程を一層効率よくかつ選択的にすることもできる。このようなエンハンサーには酸化防止剤あるいは他の薬剤、即ち求める流体成分に対する損傷を防止し、あるいは微生物の不活性化速度を改善するための薬剤が含まれ、その好例としてアデニン、ヒスチジン、システイン、チロシン、トリプトファン、アスコルベート、N−アセチル−L−システイン、プロピルガレート、グルタチオン、メルカプトプロピオニルグリシン、ジチオトレオトール、ニコチンアミド、BHT、BHA、リシン、セリン、メチオニン、グルコース、マンニトール、トロロックス、グリセロール、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0031】
本発明は、また生物学的に活性なタンパク質、血液または血液成分を含有し、更に内因性光増感剤、内因性を基本とする誘導光増感剤、あるいは請求項1の方法によりつくられる光化学反応生成物も含有する流体の処理からなる。この流体はまた不活性化された微生物を含むこともある。
【0032】
全血、血液製品および生物活性タンパク質を含む流体の汚染物除去に加えて、本法はヒトまたは動物の滋養物に計画された流体を含む他の流体、例えば水、果実、果汁、ミルク、発酵液、スープなどの処理に役立つ。本法はまた腹腔液または非経口溶液の処理にも有用である。
【0033】
本発明はまた表面上に存在するかも知れない微生物を不活性化するために表面を処理する方法をも包含するものであり、この方法はかかる表面へ不活性化に有効な無毒性量の内因性光増感剤あるいは内因性を基本とする光増感剤誘導体を適用し、該表面を光増感剤の活性化に十分な光放射線に暴露することからなる。この表面は食品表面、例えば果実、野菜あるいは動物屠体、切断または処理加工した食品の表面のいずれでもよい。粉砕した材料、例えばひき肉は、光増感剤を該材料と混合し、新しい表面を光放射線に当てるように照射しながら混合を続けることにより処理できる。
【0034】
この表面は、別法として、カウンター天板あるいは貯蔵棚といった食品調製面でもよく、あるいは入浴または洗浄容器、例えば台所流しシンク、浴槽または熱槽、あるいは水泳プールなどの面のこともある。更に、該表面は生きている動物あるいは植物の表面のこともあり、あるいは傷面のこともある。
【0035】
光増感剤は適当な担体、例えば水または溶液(他の処理添加物を含むもの)の中に入れて、噴霧、浸漬、ワイピング、あるいはこの分野で公知の他の手段により適用できる。処理に必要な光増感剤および光放射線エネルギーの量は不当な実験を行なうことなく、汚染レベルおよび被処理材料に依存して当業者により容易に決定できるであろう。
【0036】
本発明はまた前述した流体または他の材料を、その中に存在するかも知れない微生物を不活性化するために処理する方法を提供するものであり、該方法は前記流体または他の材料へ不活性化に有効な無毒性量のビタミンK5を添加することからなる。なるべくは流体または他の材料を照射して微生物の不活性化を促進するのがよいが、必ずしも必要ではない。ある場合には、本発明の例に更に詳しく論じているように、ビタミンK5を用いることにより常光の中で、あるいは暗所で不活性化が起こる。光放射工程のないビタミンK5による処理に対しては赤血球を含む流体が好適である。K5化合物はまた血液または腹腔透析チュービングセットといった表面を被覆し、無菌接続および無菌合体を確保することもできる。
【0037】
本発明に係る汚染物除去システムにおいては、流体のための光透過性容器へ光ガイド、例えば光チャンネルあるいは光ファイバーチューブによって光放射線源を連結する。該光ガイドは光源と流体容器との間の光散乱を防止し、更に重要なことは、容器内の流体の実質的な加熱を防止するものである。光源への直接暴露は10から15℃程温度を上昇させることがあり、光に当てる流体の量が少ないときは特にそうであり、これは血液成分の変性の原因となりうる。光ガイドの使用は加熱を約2℃未満に保つ。本法はまた流体中の求めるタンパク質が損傷を受ける温度より低い温度を保つために必要な場合、温度センサーおよび冷却装置の使用も包含する。なるべくは、温度を約0℃から約45℃に保つのがよく、約4℃から約37℃が一層好ましく、約22℃が最もよい。
【0038】
本発明は流体を、その中に存在するかも知れない微生物を不活性化するために処理するシステムを包含するものであり、本装置は次のものからなる:
【0039】
(a)前記流体および内因性光増感剤あるいは内因性を基本とする光増感剤誘導体を含有する容器。該容器には入力手段が装置され、そして容器は光増感剤を活性化するために十分な量の光放射線を流体に当てることができる光透過性表面を有する。
【0040】
(b)前記容器中の流体に十分な光放射線を与えるための少なくとも一つの光放射線源。光増感剤を活性化することにより存在する微生物を実質的に不活性化するようにその型と量が選ばれる。
【0041】
光放射線源は可視光線または紫外線またはその両方の光源でよい。なるべくは可視光線と紫外線の両方を備えることが好ましく、そして光放射線は約半分が紫外、約半分が可視であるのが一層好ましいが、他の比も使用できる。紫外および可視スペクトル両方の光放射線は、同時に供給しても、順次に供給してもよいが、なるべくは可視部分を最初に供給するのがよい。この光放射線源は簡単なランプでもよく、あるいは種々な波長で放射する多重灯からなることもある。光放射線源は約1から少なくとも約120J/cmを供給できねばならない。紫外および可視混合光線の使用は、光増感剤がある時間の露光後に可視光線を吸収する能力を失なうもの、例えば7,8−ジメチル−10−リビチル−イソアロキサジン、である場合に特に好ましい。
【0042】
汚染物を除去すべき流体へ光増感剤を加えるため、そして流体をこの分野で公知の光透過性容器に入れるためにはどの装置も使用できるが、このような手段は典型的な場合流れの導管、出入口、貯留器、弁などを含む。なるべくこの装置は、光増感剤の濃度を前述した有効レベルに調節できるように、脱汚染物しようとする流体中への光増感剤の流れを制御するためのポンプあるいは調節弁といった手段を含むのがよい。一つの具体例においては、光増感剤を血液成分除去装置への抗凝血物質供給物と混合する。糖部分を有する内因性光増感剤および誘導体については、この分野で公知の通り、糖部分の分離を防止するために溶液のpHを十分低く保つのがよい。なるべく光増感剤は前混合水溶液中、例えば水または貯蔵緩衝溶液中で、脱汚染物しようとする流体へ加えるのがよい。
【0043】
フロー−スルー方式に適する光透過性容器はポリカーボネート、ガラス、石英、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、または他の透明材料からつくられた透明キュベットである。このキュベットを反射壁をもつ放射線チャンバーに封入する。光放射線エンハンサー、例えば第二の放射線源あるいは反射面、をキュベットに隣接して置き、キュベット内の流体と接触する光放射線の量を増加させることができる。このシステムは流体の流速を望むレベルに調節するためのポンプを含み、前述したように実質的な汚染物除去を確実にすることが好ましい。キュベットは、その中の流体を十分な光放射線に暴露して実質的な汚染物除去を果すために十分な、キュベット中の流速と調和した長さをもつ。
【0044】
またなるべくはキュベットを、キュベット中の流体の加熱が起こらない十分な距離で光源から離して間隔をとり、光は光ガイドによって光源からキュベットに伝達されるのがよい。
【0045】
もう一つの具体例においては、流体を、例えば米国特許第5,653,887号に記載の血液成分除去装置で使用される血液バッグのような光透過性容器に入れ、光放射線にさらしながらかきまぜる。適当なバッグの例として、本明細書中に記載の集収バッグが挙げられる。Cobe Laboratories,Inc.のSpectraTMシステムまたはTrimaTM成分除去システムに使用される集収バッグが特に適している。例えば、米国特許第4,880,788号に記載のように、シェーカーテーブルがこの分野で知られている。バッグに流体を加えたため少なくとも一つの出入口をバッグに装置する。一具体例においては、光増感剤、なるべくは7,8−ジメチル−10−リビチル−イソアロキサジン、を粉末形で、流体を入れたバッグに加える。次にバッグをシェーカーテーブル上に置き、実質的にすべての流体が光放射線に暴露され終るまで、光放射線下でかきまぜる。別法として、バッグをその中に粉末化光増感剤を入れて前以て包装してもよい。汚染物除去をしようとする流体を次に適当な口から加えることができる。
【0046】
前記汚染物除去システムは独立型ユニットとして設計できるが、さもなければ患者から採取しあるいは患者へ投与される血液を分離あるいは処理するための公知の現存装置中に容易に組み入れることができる。例えば、このような血液取り扱い装置には、Cobe Laboratories,Inc.,レークウッド、COから入手できるCOBE SpectraTMまたはTRIMATM血液成分除去システム、あるいは米国特許第5,653,887号および米国特許願連続第08/924,519号(1997年9月5日提出)(PCT刊行物No.WO99/11305)に記載のCobe Laboratories,Inc.の装置、ならびに他の製造業者の血液成分除去システムが包含される。汚染物除去システムは、血液を患者あるいは提供者から採取する点のすぐ下流、血液生成物を患者に挿入する直前、あるいは血液成分の分離の前後のどの点においても挿入することができる。一つの特に適当な具体例においては、光増感剤を血液成分へ抗凝固物質と共に加え、血小板、血漿および赤血球それぞれの集収点から下流のところに別々の照射源およびキュベットを置く。三つ別々の血液汚染物除去システムの使用は、血液成分除去システムの血液分離容器の上流に、一つの血液汚染物除去システムを設置するより好ましい。それは別個の成分ラインにおける流速が小さいので照射が一層容易にできるからである。他の具体例においては、本発明汚染物除去システムを用いて以前に採取され貯蔵されていた血液生成物を処理することができる。
【0047】
処理される流体中に赤血球が存在するとき、当業者によって明らかなように、血球による光の吸収を補償するため、他の血液成分の場合に用いる必要性よりも、流体をうすめ、より高エネルギーの放射線により長い時間暴露し、より長時間かきまぜ、あるいはより浅い容器あるいは導管中で光放射線に当てることができる。
【0048】
本明細書に開示された内因性光増感剤および内因性を基本とする誘導光増感剤は先に存在する血液成分汚染物除去システム並びに本明細書に開示された汚染物除去システムで使用できる。例えば、本発明に係る内因性光増感剤および内因性を基本とする誘導光増感剤は、米国特許第5,290,221号、第5,536,238号、第5,290,221号および第5,536,238号に記載の汚染物除去システムで使用できる。
【0049】
前記内因性光増感剤および内因性を基本とする誘導光増感剤を含有する血小板添加物溶液も本発明により提供される。公知の血小板添加物溶液がこの目的に使用でき、それらには米国特許第5,908,742号、第5,482,828号、第5,569,579号、第5,236,716号、第5,089,146号および第5,459,030号に開示されたものが含まれる。このような血小板添加物溶液は生理食塩溶液、緩衝剤、なるべくはリン酸ナトリウム、および他の成分、例えば塩化マグネシウムおよびグルコン酸ナトリウムを含むことができる。このような溶液のpHは約7.0から7.4がよい。これら溶液は血小板濃縮物に対する担体として有用であって、細胞品質の維持および貯蔵中の代謝の維持を可能にし、血漿含量を減らし、貯蔵寿命を延長することができる。光増感剤はこのような溶液中に約1μMから溶液中の光増感剤の溶解度まで、なるべくは約10μMから約100μM、更に好ましくは約10μMの望むどの濃度においても存在できる。特に適当な具体例においては、血小板添加物溶液はまた前記エンハンサーも含有する。特に適当な血小板添加物溶液は酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、1.5mM塩化マグネシウム、1mMリン酸ナトリウム、14μM7,8−ジメチル−10−リビチル−イソアロキサジンそしてなるべくはまた6mMアスコルベートも含有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
内因性光増感剤および内因性を基本とする誘導光増感剤を使用する本発明汚染物除去法を、光増感剤として7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンを用いてここに例示するが、光放射により活性化されて微生物の不活性化を起こすどの光増感剤も使用できる。光増感剤は脱汚染物される流体の望む成分を破壊しないもの、そしてまたなるべくは、光放射の結果望む成分を有意に破壊したりあるいは有意な毒性を有する生成物へ分解しないものでなければならない。光増感剤を活性化する波長は、本明細書に記載のように文献源を用いるか、あるいは直接の測定を用いて決定される。汚染物除去をしようとする流体中の、あるいは汚染物除去をしようとする流体と担体流体との併合物中の溶解度もそのように決定される。活性化波長における光放射が脱汚染物すべき流体中に浸透する能力をここに教示された通り決定されねばならない。光増感剤とその基質との適当な反応温度が決定され、ならびにまたその温度範囲、光放射線強度、および継続時間、そして微生物不活性化を最適化し流体中の望むタンパク質および(または)細胞成分に対する損傷を最小にする光増感剤濃度も決定される。例1−7および図1−5は本発明に係るフロー−スルー脱汚染システムの開発に必要な情報の決定を説明するものである。
【0051】
いったんこのようなシステム必要条件がフロースルーシステムについて決定されたならば、正しい流速、光透過性、および流体中に存在する微生物の不活性化を起こす光強度を備えた装置を本明細書中に教示されている通りに設計できる。汚染物除去をしようとする流体を光増感剤と混合し、次に光増感剤を活性化して流体中の微生物と反応させるのに十分量の光放射線で照射して流体中の微生物を不活性化するようにする。流体中の微生物の達する光放射線の量は、適当な光放射線源、光放射線源と汚染物除去をしようとする流体との間の適当な距離(これは流体の容器へ直接光放射を行なう光ガイドの使用によって増すことがある)、流体容器に適した光透過性材料、容器中への光放射線の完全な浸透を許す適当な深さ、光放射エンハンサー、例えば一つ以上の追加の光放射線源(これは、なるべくは第一の容器からみて容器の反対側に設けるのがよい)、あるいは放射線源から容器中へ光を反射して戻すレフレクター、容器中の流体に対する適当な流速、および存在する微生物の不活性化に十分な時間を与える適当な容器の長さを選ぶことにより調節される。流体を最適温度に保つために温度モニターおよびコントローラーも必要となることがある。図6は血液成分を分離するための装置の一部として、本発明に係る汚染物除去システムを示し、図7は特に適当な汚染物除去システムの詳細を提供する。
【0052】
バッチ方式については、汚染物除去すべき流体を光増感剤と共にバッグに入れるが、このバッグは光透過性のものか、あるいは内容物に、光増感剤を活性化するのに十分な放射線を到達せしめるため少なくとも十分光透過性である。各バッグへ不活性化を与えるのに十分な、なるべくは少なくとも約10μMの光増感剤濃度を与えるのに十分な光増感剤を加え、バッグをなるべくは約1から約120J/cmで照射しつつ約6から約36分かきまぜて、実質的にすべての流体が放射線に暴露されるようにする。なるべくは可視光線と紫外線とを同時に併用するのがよい。光増感剤は粉末形で添加できる。
【0053】
本法は、核酸の複製を妨げることにより機能する内因性光増感剤を含めて、内因性光増感剤を使用するのがよい。7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロオキサジンは本発明への使用に特に適した光増感剤である。7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロオキサジンと核酸との間で起こると考えられる化学は、一重項酸素依存型の過程(即ち、タイプII機構)を経て進行するのではなく、直接増感剤−基質相互作用(タイプI機構)により進む。Cadet等(1983)J.Chem.,23:420−429は、7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロオキサジンの効果がグアノシン残基の非一重項酸素酸化によることを明確に実証している。更に、アデノシン塩基は7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロオキサジン+UV光の効果に対して敏感なようである。このことはアデノシン残基が一重項酸素依存型の過程に対して比較的感じにくいので重要である。7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロオキサジンはUV光に暴露したとき大量の一重項酸素を生成するのではなく、むしろその効果を基質(例えば、核酸)との直接相互作用を通じて、励起状態の増感剤化学種との電子移動反応によって及ぼすようである。細胞およびタンパク質に対する無差別損傷は主として一重項酸素源から起こるので、7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロオキサジンの作用に対するこの機構上の経路は、有意なタイプII化学を有するプソラレンのような化合物についての場合よりその作用に大きい選択性を許す。
【0054】
図6は本発明光放射装置を取り入れた血液装置を示す。提供者/患者4から全血を採取し、これを成分除去装置あるいは血液成分分離装置8に供給し、ここで血液を種々な成分型に分離し、これら血液成分型の少なくとも一つを装置8から取り出す。次にこれら血液成分をもう一つの装置により後の使用に供給するか、または治療上の処理を受けそして提供者/患者4に戻すことができる。
【0055】
血液成分分離装置8においては、血液を提供者/患者4から採取し、体外チュービング回路10および血液処理容器12(完全に閉鎖された無菌の系を構成する)を経て管理される。血液成分分離装置8はポンプ(図示していない)に連結される。血液は提供者/患者4から、体外チュービング回路10を通り、回転する血液処理容器12へと流れる。血液処理容器12内の血液は種々な血液成分型に分離され、これら成分の型(血小板、血漿、赤血球)は、血液処理容器12から絶えず取り出される。集収のため、あるいは治療処理のために保持されていなかった血液成分(例えば、赤血球、白血球、血漿)も血液処理容器12から取り出され、体外チュービング回路10を経て提供者/患者4へ戻される。
【0056】
血液成分分離装置の操作はその中に含まれる1個以上のコンピュータープロセッサーにより制御するのがよい。
【0057】
体外チュービング回路10は、カセット組立て14およびそれと相互連結された幾つかのチュービング組立て20,50,60,80,90,100からなる。血液取り出し/戻しチュービング組立て20は提供者/患者4とカセット組立て14との間に一つの針状界面を与え、血液入口/血液成分チュービングサブアッセンブリー60は、カセット組立て14と血液処理容器12との間に界面を与える。抗凝固物質チュービング組立て50、血小板集収チュービング組立て80、血漿集収チュービング組立て90、赤血球集収チュービング組立て70および通気バッグチュービングサブアッセンブリー100もカセットアッセンブリー14と相互に連結される。
【0058】
血液取り出し/戻しチュービング組立て20はそれと相互に連結したニードルサブアッセンブリー30およびカセット組立て14を経て抗凝固物質チュービング組立て50へ連結している抗凝固物質チュービング組立て26を含んでいる。
【0059】
カセット組立て14は互に熱溶接された前後の成形プラスチック板を含み、一体化された流体通路をもつ矩形のカセット部を構成する。このカセット組立て14は、種々な一体化通路と相互に連結している幾つかの外に向かって伸びたチュービングループを更に含んでいる。一体化通路はまた種々なチュービング組立てに相互連結されている。
【0060】
更に詳しく言えば、カセット組立て14は血液取り出し/戻しチュービング組立て20の抗凝固物質チュービング26と、また抗凝固物質チュービング組立て50と相互に連結する。抗凝固物質チュービング組立て50は、抗凝固物質および光増感剤源53および滅菌フィルター56に連結できるスパイクドリップチャンバー52を含む。使用中に、抗凝固物質チュービング組立て50は、光増感剤と混合した抗凝固物質を提供者/患者4から取り出された血液へ供給して体外チュービング回路10内での凝血を減らす、あるいは防止している。例えば、AABB Technical Manual 11版、1993の3章に開示されているように、ACD−A,CPD,CP2D,CPDA−1およびヘパリンを含めて多くの抗凝固物質が知られている。これらおよび細胞貯蔵溶液、AS−1,AS−3およびAS−5は、本明細書中に記載の内因性光増感剤および内因性を基本とする誘導光増感剤とすべて融和しうる。
【0061】
カセット組立て14もまた血液取り出し/戻しチュービング組立て20の血液取出しチュービングとの相互連結を含んでいる。血液は圧力センサー、そしてカセット組立て14における入口フィルターそして次に血液入口チュービング62へと通過する。血液入口チュービング62はまた血液処理容器12と相互連結されこれへ全血を処理のため供給する。
【0062】
分離された血液成分をカセット組立て14へ戻すため、血液入口/血液成分チュービング組立て60は、血液処理容器12上の対応する出口と相互連結された赤血球(RBC)/血漿出口チュービング、血小板出口チュービングおよび血漿出口チュービングを更に含む。赤血球(RBC)/血漿出口チュービングは、分離された赤血球(RBC)/血漿成分を、カセット組立て14から第一の汚染物除去システム72を経て赤血球集収チュービング組立て70へと導いている。血小板出口チュービングは、分離された血小板をカセット組立て14から第二の汚染物除去システム82を経て血小板集収チュービング組立て80へと導く。血漿出口チュービングは分離された血漿をカセット組立て14から第三の汚染物除去システム92を経て血漿集収チュービング組立て90へと導く。汚染物除去システム72,82および92における照射の後、光増感剤を活性化しかつ存在する微生物を不活性化するために、血液成分を赤血球集収バッグ74、血小板集収バッグ84、および血漿集収バッグ94中に集める。通気バッグ104を用いてシステム内のガスを排出できる。
【0063】
図7は本発明汚染物除去組立ての独立型の一形態を示している。血液生成物(これは最近採集された血液あるいは血液成分のこともあれば、保存血でもよい)180は血液生成物ライン186に連結され、後者はポンプ184を経て汚染物除去キュベット164へと通じている。光増感剤貯留部166は入力ポンプ170を具えた光増感剤入力ライン168に連結され、汚染物除去キュベット164から血液生成物ライン186の上流へと通じている。汚染物除去キュベット164は、汚染物除去を確実に行なうように選ばれた深さ(d)および長さ(l)をもつ光透過性キュベットである。温度モニター192と合わさった冷却システム190は汚染物除去キュベット164と連結され流体温度の制御に役立つ。汚染物除去キュベット164は光ガイド162を経て光放射線減160に連結される。光放射線エンハンサー163は、汚染物除去キュベット164に隣接して置かれ(接触しているか、間隔を置いて離れているかのいずれか)、キュベット内の血液生成物に到達する光放射線の量を増加させる。汚染物を除かれた血液生成物ライン188は、汚染物除去キュベット164から汚染物を除かれた血液生成物集収部182へと通じている。
【0064】
操作上は、血液生成物180は血液生成物ライン186に導かれ、ここで光増感剤貯留部166から来る光増感剤と合流する。光増感剤は血液生成物ライン186と合わさる光増感剤入力ライン68中の光増感剤入力ポンプ170により制御された速度で流れる。血液生成物ライン186における流速は、ポンプ184により汚染物除去キュベット164中での汚染物除去を確実にするように選ばれた速度に調節される。温度モニター192はキュベット164中の流体の温度を測定し、冷却システム190を制御する。後者はキュベット中の温度を最適操作に必要な範囲内に保つ。汚染物除去キュベット164中の血液生成物は、光ガイド162で導かれる光放射線源160からの光放射線によって照射される。この光放射線源は二種以上の現実の光からなりうる。矢印は透明な汚染物除去キュベット164内部の血液生成物中を伝搬する光ガイド162の端から来る光放射線を示す。汚染物除去キュベット164に隣接して光放射線エンハンサー163があり、そしてこのものはもう一つの光放射線源のこともあれば反射面のこともある。汚染物除去キュベット164に向かって指し示している光放射線エンハンサー163からの矢印は、キュベット164中の血液生成物材料上で輝く光放射線エンハンサー163からの光放射線を示す。汚染物除去された血液生成物は、汚染物除去された血液生成物ライン188を経て汚染物除去キュベット164から出て、汚染物除去された血液生成物の集収部182に集められる。
【0065】
光増感剤としてSigma Chemicale Companyから得られる7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロオキサジンを使用する一具体例においては、光ファイバーから構成された光ガイド(EFOS Corporation,Williamsville,N.Y.)が使われる。このシステムは焦点を合わせた光束を355−380nmの領域で6,200mW/cmの強度で供給できる。また400−500nmのスペクトル領域で、4,700mW/cmの出力を達成するために、このシステムと互換性のあるフィルターを使用することも可能である。両者の場合、320nmおよびそれ以下の領域中の光の出力は無視できる。種々な寸法(3,5および8mm)の光ガイドがこのシステムについて入手できる。光は光ガイドチップを21度の広がりで出る。正しく置かれた8mm光ガイドが特に適当な汚染物除去キュベットの面を十分に照らすために適当であり、このキュベットはIndustrial Plastics,Inc.,Forest Grove,ORから得られるCobe SpectaTM使い捨てセットで使われる標準品である。
【0066】
流速は可変であり、試料に供給しようとする光エネルギーの量により決定される。流速はCole−Parmer Instrument Company,Vernon Hills,ILから得られる蠕動ポンプを用いて制御される。入力流の流速と型は、この分野で公知の通り、コンピュータープロセッサーによって制御できる。
【0067】
図23は本発明の一具体例を示すもので、この場合には汚染物除去をしようとする流体を入口282を備えた血液バッグ284に入れ、この入口を通してフラスコ286から注ぎ口288を経て粉末状の光増感剤284を加える。シェーカーテーブル280を始動させてバッグ284をかきまぜ、光増感剤290を溶かすと同時に光放射線源260を働らかせバッグ284中の流体および光増感剤を照射する。別法として光増感剤を含むように前包装したバッグを用意し、その後バッグに流体を加えることもできる。
【0068】
本発明方法は「クエンチャー」あるいは酸素除去剤といったエンハンサーの使用を必要としないが、非特異的細胞あるいはタンパク質を損う化合物の範囲を減らすか、または病原体不活性化の速度を促進することにより本法を促進するためにこれらエンハンサーを使用することがある。無毒性の内因性光増感剤および内因性を基本とする誘導光増感剤を使用する更に好ましい方法は、光照射後に光増感剤を流体から除去する必要がない。試験結果は他の血液成分に対して殆ど、あるいは全く、損傷を示さない。例えば血小板は処理後5日間生物学的に活性なままである。
【0069】
実施例
例17,8−ジメチル−10−リビチル−イソアロキサジンの吸光度プロフィル
7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジン(純度98%)の試料はSigma Chemical Companyから得た。この試料の一部を、走査UV分光光度計を用いて分析にかけた。調べた範囲は200から900nmの領域をカバーした。分析のため、試料を蒸留水に溶かした。この分析から得た試料スペクトルを図1に示す。
【0070】
結果は、7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロオキサジンに対する吸光度極大および吸光係数について文献に報告されたそれと一致した。
【表1】

【0071】
照射に適した波長は373nmおよび445nmである。これら吸光度極大で観察された吸光係数は溶液中の増感剤の十分な活性化を確実にするに十分である。
【0072】
例27,8−ジメチル−10−リビチルイソアロオキサジンの溶解度Isolyte S.pH7.4媒質中の溶解度
Isolyte S媒質中の7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロオキサジンの最高溶解度を次のように決定した。
【0073】
7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロオキサジンを沈殿が生ずるまでIsolyte Sと混合した。混合物を室温で1時間かきまぜ、渦混合を行なって懸濁物質を完全に溶かした。更に渦混合を行なっても固体懸濁系が残るまで7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロオキサジンを追加した。次にこの懸濁系を遠心して未溶解物質を除去した。この調製物から上澄を取り、分光光度計を用いて分析した。この溶液の吸光度値を447nmと373nmで測定した。前に測定された吸光度値から飽和溶液の濃度を算定できた。
濃度(373)=110μM=42μg/ml
濃度(447)=109μM=40.9μg/ml
【0074】
ACD−A抗凝固剤中の溶解度
ACD−A抗凝固剤を用いて上記の同じ手順を繰り返した。これらの測定から得られた値は次の通りであった。
濃度(373)=166μM=63μg/ml
濃度(447)=160μM=60.3μg/ml
【0075】
これらの研究から得られた値は予想される化合物の溶解度の上限を示す。
【0076】
例3水性媒質中の7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロオキサジンの光分解
Sigma ACD−A中の7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロオキサジンの溶液を63μg/mlの濃度で調製した。この調製物をガラスピペット中に採り、UV光源(320nm以下の光を除去するフィルターを用い、365nm λmax)の光路に置いた。懸濁液を特定の時間間隔で照射し、この間隔で一定部分を取り出して分光法による分析に供した。溶解した7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロオキサジンの吸光度を、各時間間隔で373nmおよび447nmでモニターした。結果を図3と表1に示す。
【表2】

【0077】
373nmにおける溶液の吸収プロフィルは、全体の照射時間にわたり試薬の有意な分解が起らなかったことを示す。この波長における光の吸光度はn−π*電子遷移に相当する。時間にわたりこのピーク強度に減少が無いことは、これら条件下で長時間の照射にも拘らず分子の環構造が不変であることを示している。447nmにおける分子の吸光度はπ−π*電子状態遷移によるものである。照射時間の増加に伴うこの波長での分子の吸光度の減少は、分子の共鳴構造の微妙な変化を示すものである。この変化は、7,8−ジメチルイソアロオキサジン骨格の環構造からリボースが失なわれ、結果として7,8−ジメチルアロオキサジンを生成したことによるものであろう。これらの変化はUV光線で照射したときの分子の挙動に関する文献と一致する。
【0078】
分子の環構造の分解が見掛け上無いことは、同様な条件下でプソラレンを基本とする化合物に関する観察事項と全く対照的である。照射中、溶液中の分子の有意な蛍光が観察された。分子のこの挙動は輪構造の共鳴の特徴と一致し、非破壊的様式での励起状態分子におけるエネルギーの消散に対し一つの方法を与えるものである。
【0079】
例4流動システム概念評価:現存スペクトルキュベットの光透過性質
現存スペクトルキュベットはポリカーボネートから構成されている。このキュベットの光透過の性質は、UV分光光度計の光通路にそのキュベットを置くことにより373nmおよび447nmで測定された。得られた値は以下のとおりであった:
【表3】

【0080】
これらの結果はポリカーボネートプラスチックについての文献に報告された結果と一致している(図4参照)。その文献の値は300nmの領域においてポリカーボネート中の光の透過について急勾配肩部を示す。350nm以上の領域について、光透過性質はこの適用のために適当である。
【0081】
流速の関数として計算された光束要件:
流動システムが実施可能であるために、サンプルはビーム路にそれが存在する間に適当な光束が提供されなければならない。もし提案されたスペクトルキュベットがこの目的に役に立つとしたら、そのとき、以下のとおりにしてキュベットを通過する流速の関数として光束要件を予測することが可能である:キュベットの照射帯域中に存在する溶液の容量は約0.375mlである。キュベットのこの領域における細胞についての走行時間は以下の方程式から決定されることが出来る:
【数1】


100ml/分で、走行時間(T)は0.00375分=0.225秒であろう。
【0082】
サンプルを露光するエネルギーは以下の方程式に従う光束に依存する:
【数2】

【0083】
もし増感剤が適当に活性化するために1ジュール/cmが必要とされそして走行時間(T)が0.22秒(即ちキュベット中を通過する100ml/分の流速)であるならば、そのときはキュベット中のサンプルの走行の間に必要とされる光束は4,545mW/cmである。キュベットを通過する流速に対する光源からの必要とされる光束の関係を描いているグラフは図5に提供される。
【0084】
これらの結果は、流動システムを適当に作動させるために、ワット/cmの領域における出力を有するUV源が必要とされる。
図2は吸光度が血小板の濃度とともにどのように変化するかを示している。
【0085】
例5赤血球の吸光度
UV光が赤血球を浸透出来る程度およびサンプルの厚さの効果および光浸透の区域上のヘマトクリット(赤血球容積率)の効果を評価するために、吸収光が化学反応に作用する能力および程度を測定することにより、化学光量測定、光源から発する光強度の実際量を測定する方法を用いて幾つかの予備実験が行なわれた。これらの研究において、水について観察された強度に対しての光源強度を測定するためにフェリオキサレート(ferrioxalate)溶液が使用された。化学反応およびサンプル調製のために使用される方法の詳細はGordon,A.J.およびFord,R.Aによる“The Chemist’s Companion:A Handbook of Pratical Data,Techniques and References”(John Wiley & Sons発行)第362頁〜第368頁(1972)において教示されている。
【0086】
修酸鉄(III)のサンプルが0.15Mの濃度で試験材料(変化する赤血球ヘマトクリットでの水および血液生成物)において造られた。次にこれらのサンプルを標準スペクトルキュベットに入れそして放射線アセンブリ中に置いた。所望のエネルギー線量水準(1J/cm)に相当する所定の時間間隔でサンプルを露光した。次にサンプルを取り出しそしてGordon,A.J.およびFord,R.A.による上記文献において記載されたとおりにして、510nmでの1,10−フェナントロリン溶液における試験物品の吸光度を読みとることにより、Fe2+へのFe3+の変換の量を測定した。吸光度値が高ければ高いほど、サンプル中にそれだけ大きな光浸透があることを示す。1J/cmのUV放射線に露光後に水について観察された吸光度値は100%透過率水準として用いられた。赤血球サンプルについてのすべての値はこの標準に対して決定された。
【表4】


【表5】

【0087】
これらの値を用いて、Beerの法則(A=εbC)を用いることによるUV光の浸透の深さを計算することが可能である。
Lambertの法則から吸光度=Log(1/透過率)。もし濃度(C)をサンプルのヘマトクリットと等しくさせたならばそしてb=0.3cm(スペクトルキュベットの通路長さ)なので、ヘマトクリットかける通路長さの積に対して赤血球サンプルについての吸光度値をプロットすることによりサンプルについての擬似吸光係数(ε’)を決定することが可能である。サンプルについての吸光係数はこの線の勾配により表わされる。
【表6】

【0088】
上に記載されたとおりにして得られた値を用いて、これらのサンプルについての擬似吸光係数を0.08661であると決定することが可能である。
【0089】
吸光係数についての値はサンプルヘマトクリットの関数として赤血球サンプル中へのUV光の浸透距離の計算を可能にする。この概算のために、入射光線の90%が吸収されるサンプルの浸透深さは以下の方程式を用いて計算された:
A=εbC (但し、A=1(入射光線の90%吸収、ε=0.08661、C=サンプルヘマトクリット、b=通路の長さ)。
【0090】
光量測定法を用いて決定された値は、赤血球サンプルおよび血小板サンプルにおける光吸収のUV分光側光測定から得られた概算を用いてあらかじめ計算された値と比較された。
【0091】
図2は予想値を観察値と比較して、赤血球について吸光度および光源からの距離がどのように変化するかを示している。これらの結果は、80%の領域におけるヘマトクリットでのサンプルについて、0.14cmの深さまでサンプル中に光を得ることが、この発明の好ましい構成を用いて可能であることを示している。このことは現在のスペクトルキュベットの幅の半分より小さい流動路幅を表している。
【0092】
例6
血小板インビトロパラメータへのウイルス不活化処理の影響
血小板インビトロパラメータへのウイルス不活化処理の影響を評価した。血小板製剤はUV光と組み合わせて7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンで処理された。種々のインビトロパラメータが、処理条件により誘導される変化の程度を決定するために血小板機能のモニターとして用いられた。UV光露光のエネルギー水準、使用された7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンの量およびサンプル処理条件のようなファクターは血小板品質後処理上へのそれらの影響について調べられた。この研究からの結果は、血小板の機能と妥協することなしにHIV−1の不活化のための適当な処理の窓口を確立するために用いられる。
【0093】
7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンの3つの異なる濃度を用いてサンプルを造った。標準のSpectra LRSコレクションから得られた血小板がこれらの研究のために用いられた。
【0094】
血小板ペレットを濃縮するために、出発サンプルを遠心分離した。そのペレットを70:30(Isolyte S,pH7.4;McGaw,Inc.製、媒体:血漿)溶液中に再懸濁した。特定濃度での7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンが血漿:培体混合物中に存在した。次に血小板懸濁液は、3つの特定の流速の1つでUV放射線照射室中に通過された。流速は、放射線照射室を通過する細胞/媒体混合物のための露光のエネルギー水準に直接相関連していた。放射線照射室を通過して流れた後に、サンプルはあとでの分析のために、シトレート柔軟化サンプラーバッグ中に貯蔵された。
【0095】
放射線照射後、低張性ショック応答(HSR)、GMP−140表示、pH、pCO、pO、血小板回転および細胞計数を包含する、血小板機能のインビトロ測定は、細胞品質上への処理計画の影響を調べるために評価された。
【0096】
血小板品質は放射線照射条件(増感剤の濃度および流速/エネルギー水準)の関数として監視された。血小板品質はHSR反応、GMP−140活性化、等のようなパラメータを包含する。研究される流速は次のとおりに露光のエネルギーに関連づけられることが出来る:
【数3】

【0097】
処理された血小板の安定性および生存能力上へのUV露光のエネルギーおよび7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンの濃度の影響が評価された。3つのエネルギー水準および3つの濃度水準は次のとおりにして評価された:エネルギー水準:1、5および9J/cm2*;7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンの濃度:1、50、および100μM**
* 合計エネルギー露光の水準は表4の変換表に従って放射線照射室を通過する懸濁液の流速により決定された。
** 媒体が70:30(媒体:血漿)に希釈されるので、血漿と混合する前の媒体単独中の7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンの原料濃度は適当に調節された。これは1.43、71.4、および143μMの、Isolyte S中の出発濃度を必要とした。
【表7】

【0098】
処理されたサンプルについての値を対照グループと比較した。対照サンプルは以下を包含した:
血漿中非処理サンプル(ヒストリカル対照);
+流動−UV−7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジン。
【0099】
処理手順
正常な供与者の血小板アフェレーシス製品がAABB認定血液銀行機関から得られた。標準のSpectra LRS法を用いてサンプルを収集した。下記のすべての操作または処理手順は標準の実験室の安全な処理手順および方法を用いて行なわれた。ユニット番号および血液タイプが記録された。すべてのサンプルは収集の24時間以内に用いられた。すべてのサンプル移送および処理工程のために無菌での処理手順に従った。
【0100】
サンプルを500mlのPVC移送パックに移しそして5分間5000xgで遠心分離して血小板をパックした。次に標準の血漿プレスを用いて血小板ペレットから血漿を取り除いた。血漿は別の使用のために保持された。次に、細胞ペレットから取り出された血漿はMcGaw,Inc社のIsolyte S(pH7.4)の原料溶液と混合された。媒体のこの原料溶液は1.43、71.4、および143μMの最終濃度を提供するように所定量の7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンをIsolyte Sに加えることにより造られた。7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンの添加後、原料溶液を0.22μM無菌フィルターによりろ過した。次に原料溶液は、1、50および100μMそれぞれの最終の7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジン濃度を提供するように70:30(容量:容量)比で、自己由来の血漿と混合された。7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジン原料溶液を調製している間、光への露光を避けるように用心した。以下のとおりに従ってサンプルを調製した:1μMは2つのサンプル;100μMは2つのサンプル;そして50μMは1つのサンプル。
【0101】
次に、血小板ペレットを出発サンプルの始めの容量に、血漿:媒体混合物中に再懸濁した。細胞と光増感剤とのための容器、媒体のための容器を含む流動装置にサンプルは接続されており、前記容器はポンプを備えた、混合細胞/増感剤および媒体用の1つの配管に、バルブのついた配管を介して接続されている。混合された細胞/増感剤および媒体は、鏡面壁を有するホルダー中保持されたキュベット中に流入され、光源により照射された。この放射線照射室は温度プローブを備えていた。キュベットを通過した後、液体は製品バッグ中に収集される。
【0102】
チューブセットは始めにIsolyte S媒体を用いて下処理された。試験サンプルの流動開始の5分まえに、光源が起動された。この間隔の間に温度を監視しそして放射線照射室において30℃未満に維持した。
【0103】
放射線照射室を通過するサンプルの流速を表4の表により決定した。1、5および9J/cmの合計放射線照射エネルギー水準は以下の試験用マトリックスに従って用いられた。
【表8】

【0104】
すべてのサンプルは実験番号および処理条件に相当するサンプル文字記号(即ち、1A)により同定された。各サンプルセットは2反復の合計について実験された。複数のサンプルが処理される順位は無作為番号生成機に従って割り当てることにより決定された。
【0105】
1実験条件当り20mlのサンプル容量が各々のサンプルについて収集された。これらのサンプルはシトレート柔軟化サンプリングバッグ(53mlの合計容量)中に収集されそして分析のために貯蔵された。サンプルおよび放射線照射室の温度は各実験の開始時、中間点および終りに記録された。
【0106】
各製剤からの始めの分別量が分析のために処理後取り出された。分析のためのパラメータは細胞計数、pH、pCO、pO、血小板回転、HSRおよびGMP−140分析を含んでいた。サンプルの残りの部分を+22インキュベータ中の回転性血小板かき混ぜ機に入れそして処理後5日間貯蔵した。5日目に、第2の分別量を取り出しそして同じインビトロパラメータについて分析した。
【0107】
以下の機器が使用された:=コンLabophot顕微鏡;Serono−Baker System 9000血液学分析機;化学てんびん;血小板インキュベーター(+22℃)および回転機;実験室冷蔵庫(+4℃);Mistral 3000i遠心分離機;Corning血液ガス分析機;Becton−Dickinson FACSCALIBUR流動血球計算器;UV放射線照射室;UVラジオメータ(UVP,Inc.製UVXラジオメータ);EFOS Ultracure 100SS Plus(365nm最大出力および340nm帯域フィルター);および温度プローブ(熱電対)。
【0108】
試験可変事項の各々のセットについての結果は露光のエネルギーおよび7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンの濃度の規定された条件について比較された。非処理対照サンプルに対しての直接比較が行なわれそして一対のワン−テイル(one−tailed)スチューデントT検定分析から確率p>0.05により有意差が規定された。
【0109】
これらの研究からの結果は以下のとおりに要約される:
1.)10μMを超える増感剤濃度および1.5E+06/μl以上の血小板濃度で、2日目にサンプルpHにおける低下があった。そのpHは、貯蔵の2日目をこえて着実に下降し、貯蔵の3日目に許容出来ない水準(<6.5)に到達した。すべての他のインビトロパラメータはサンプルpHとともに観察されたパターンに従った。
2.)サンプルpHにおけるこの減少はサンプルをUV光に露光したかまたは露光しなかったかに無関係に起った。
3.)5.4E+05/μlの血小板濃度で、100μMまで研究された任意の増感剤濃度で延長された貯蔵後にサンプルpHにおける低下はなかった。
4.)10μMまでの増感剤濃度、1.5E+06/μl以上の血小板濃度および10J/cmまでのUVA水準で測定された血小板の性質は対照の非処理細胞に匹敵出来た。これらは、処理後貯蔵の5日またはそれ以上の後に対照水準に匹敵出来る状態のままであった。
【0110】
処理後の血小板の機能についてのこれらの研究は細胞の性質が非処理細胞に匹敵出来る水準に維持される明らかな窓口を提供した。それらの結果はまた、細胞について貯蔵または処理条件を変化させることにより、この窓口が拡大されることを示した。サンプルpHに対する、UV光を用いてのまたはUV光を用いることなしでの7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンの観察された影響は、サンプルの貯蔵または処理条件における変化により調節されることが出来るこの添加剤の代謝効果を示唆している。
【0111】
表7
流速およびサンプルヘマトクリットの関数としての赤血球上への剪断応力の測定
高いヘマトクリットでの赤血球サンプル中へのUV光浸透の低い水準は、光路の狭い開口を赤血球が通過することの効果を理解することの必要性を高めた。光路におけるサンプルの厚さの減少は、高いサンプルヘマトクリットでUV線量の発送を増大させるはずである。この方法を確認するために、寸法を変化させての開口を用いて幾つかの圧力低下測定が行なわれた。狭くされた開口からの上流および下流の両方にぜん動性(波動性:peristaltic)ポンプを有する配管中に圧力ゲージを置いた。変化させてのヘマトクリットの全血を制御された流速で開口に通過させた。両方の位置での圧力読み取りにおける差は開口を横切る圧力低下の直接の測定を可能にした。この値および開口の寸法を用いて、以下の方程式を用いて、赤血球が狭くされたセルを通過するときに赤血球により受ける剪断応力を調べることが可能であった:
【数4】


【表9】


【表10】


【表11】

【0112】
以前の実験において、1〜10分の間隔で1,000〜2,000ダイン/cmの剪断応力または約10ミリ秒の間隔で5,000〜7,000ダイン/cmの水準は、赤血球溶血反応を誘発させるのに十分であったことが調べられた。最も高いサンプルヘマトクリット(61%)および最も高い流速(16.9)の場合においてのみ、値は1,000ダイン/cmを超えた。これは最も狭い幅(0.008インチ)の開口についてのみ起った。
【0113】
提案された構成を用いての光浸透深さについての値は、ウイルス不活化法を駆動するのに十分なUVエネルギーの発送が高いヘマトクリットを有するサンプルについてさえ達成出来ることを示している。
【0114】
流動に付された赤血球サンプルについての剪断応力分析からの結果は、赤血球溶血反応の危険なしに、流路寸法を有意義に減少させることが出来そして高い流速を維持することが出来ることを示している。
【0115】
例8
血小板濃縮物を20:80の血小板濃縮物:Isolyte Sの比で血小板添加剤溶液Isolyte Sと混合した。血小板濃縮物と血小板添加剤溶液との混合物は本明細書において“媒体”中として言及される。添加剤溶液なしの血小板濃縮物を本明細書において“血漿”中として言及される。両方はListeria monocytogenesでスパイクされた。次に、ビタミンK5が300μg/mlの量で各々に加えられた。次に図7のキュベット装置中で、各各はUV光、可視光または室内光に露光され、結果が表6に示される。
【表12】

【0116】
例9
ビタミンK5を含有する上に記載されたとおりの媒体および血漿をバクテリアでスパイクしそして表7において示されるように室内光のみ(K5−光)を照射し、即ちそれに露光しそしてインキュベーションの3日後に増殖を評価した。放射線照射なしで幾つかの種の不活化が見られた。
【表13】

【0117】
例10
70:30のIsolyte S:血小板濃縮物の比で、例8において記載されたとおりの血小板濃縮物およびIsolyte Sを用いて造られそして300μg/mlのビタミンKを含有する媒体が幾つかの種のバクテリアでスパイクされそして30および60J/cmのエネルギー水準で放射線照射された。放射線照射のエネルギーの関数としての不活化が表8および図8に記載されている。
【表14】

【0118】
例11
例8において記載されたとおりの血小板濃縮物にそして例10において記載されたとおりの70:30媒体に、10μMの7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンを加えた。血小板濃縮物および媒体はS.aureusまたはS.epidermidisでスパイクされそして80J/cmおよび30J/cmで放射線照射されそして不活化が上記のとおりにして測定された。結果が図9に示される。
【0119】
例12
標準の血液バッグ中に含有されている例8において記載されたとおりの血漿濃縮物に、粉末形での25μMの7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンを加えた。そのバッグを表9において示されるとおりのバクテリアでスパイクし、かき混ぜそして120J/cm放射線に露光した。不活化の結果を表9に記載する。
【表15】

【0120】
例13
例8において記載されたとおりの血小板濃縮物に7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジン、アロキサジンモノヌクレオチドまたは7,8−ジメチルアロキサジンを加え、次にS.aureusまたはS.epidermidisでスパイクしそして80J/cmで放射線照射した。不活化結果を表10に示す。
【表16】

【0121】
例14
例8の血小板濃縮物に10μMの7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンを加えた。分別液は添加剤なしかあるいは“クエンチャー(quencher)”、即ち酸化防止剤としての、10mMのアスコルビン酸塩を含有するかまたは10mMのKIを含有した。それらの溶液をHSV−2、ΦX174、S.epidermidisまたはS.aureusでスパイクしそして80J/cmで照射した。結果を図10に示す。
【0122】
例15
例8の血小板濃縮物に、変化させての濃度の7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンを加えた。これらの溶液を単純ヘルペスウイルスタイプII(HSV−II),二本鎖DNAエンベロープウイルスでスパイクした。80J/cmで放射線照射を行なった。その実験を3回繰り返した。すべての3回の試行において、完全な不活化が達成された。結果を図11に示す。
【0123】
例16
40、80および120J/cmの照射のエネルギーで、HSV−IIの代りにS.epidermidisを用いて例15の実験計画に従った。不活化の結果を図12に示す。
【0124】
例17
ΦX174,一本鎖DNAバクテリオファージを用い、変化させての濃度の7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンおよび変化させてのエネルギーの照射で例15の実験計画に従った。不活化の結果を図13に示す。
【0125】
例18
例8の血小板濃縮物に10μMの7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンを加えた。これらはS.aureusまたはΦX174でスパイクされそして可視光と紫外光との50:50の混合光を用いての照射の変化させてのエネルギーで放射線照射された。不活化の結果を図14に示す。
【0126】
例19
微生物としてS.epidermidisおよびHSV−IIを用いて例18の実験計画に従った。紫外光と可視光との50:50混合光は、DYMAX光源により供給された。不活化の結果を図15に示す。
【0127】
例20
例8の血小板濃縮物に10μMの7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンを粉末形で加えた。アスコルビン酸塩を加えての試験およびアスコルビン酸塩を加えないでの試験が行なわれた。150mlの試験溶液をSpectraTM血液バッグに入れそして振り混ぜそして50:50の可視光:紫外光を用いての照射の変化させていくエネルギーに露出させた。40J/cmを受容した後に、バッグのスパイクポートに残っていた可能性がある微生物に起因する誤差を避けるために、各々のバッグの内容物を新しいバッグに移した。不活化の結果を図16に示す。下方の矢印は検出することが可能であった水準(2.5log力価)までの不活化を示す。
【0128】
例21
例8の血小板濃縮物そして30:70の血小板濃縮物:Isolyte SでのIsolyte S中の血小板濃縮物に、20μMの7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンを加えた。これらはワクシニアウイルス,二本鎖DNAエンベロープウイルスでスパイクされそして30分間DYMAX2000UV光源を用いて、60J/cmでの可視光あるいは混合された(50:50)可視光および紫外光に露光された。検出の限界は1.5logであった。不活化の結果を図17に示す。光増感剤なし、Isolyte S媒体単独中の光増感剤、Isolyte S媒体中血小板、7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンの代りに8−メトキシソラレンを用いてのIsolyte S媒体中血小板および(30:70の)Isolyte媒体中血小板濃縮物を用いて比較が行なわれた。
【0129】
例22
10μMの7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンを有するかまたはそれを有しない、30:70のIsolyte S中の血小板濃縮物のサンプルをワクシニアウイルスでスパイクしそして変化させての時間期間にわたって50:50の可視光:紫外光を用いての60J/cmで照射しそして不活化の結果を図18において示されるとおりに比較した。
【0130】
例23
例8において記載されたとおりの血小板濃縮物のサンプルに5μMまたは50μMの7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンを加えた。サンプルをHIVIでスパイクした。図7に示されるキュベット流動のセルを使用して、EFOS光システムを用いる変化させてのエネルギーで50:50の可視光:UV光でサンプルを照射した。不活化の結果を図19に示す。
【0131】
例24
HIV感染ACH−2細胞を例8において記載された血小板濃縮物のサンプルに加えた。5μMまたは50μMの7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンを該サンプルに加えた。例23の実験計画に従いそして不活化の結果を図20に示す。HIVの存在を試験細胞上へのその細胞変性効果により分析検定した。
【0132】
例25
例24の実験計画に従いそしてP24抗原生産の水準を定量することによりHIVの存在を分析検定した。不活化の結果を図21に示す。
【0133】
例26
例8に記載されたとおりの血小板濃縮物および30%血小板濃縮物と70%PAS IIITM媒体とを含有する媒体のサンプルに6mMのアスコルビン酸塩および14μMの7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンを加えた。サンプルをHIV−IIでスパイクした。不活化の結果を図22および表11に示す。
【表17】

【0134】
上記記載は例示の目的のためにだけでありそして本発明の範囲から離れることなしに多くの変更が行なわれることが出来ることは当業者により容易に理解されよう。例えば記載された光増感剤以外の他の光増感剤、好ましくは核酸に結合してそしてそれによりそれを複製させない光増感剤、そしてさらに好ましくは毒性でなくそして毒性分解生成物を有しない光増感剤が使用されることが出来る。さらに、光増感剤を用いる液体の汚染除去のための流動システムを構成するために本明細書に記載された構成に均等な構成が、本明細書の教示に従って、当業者により、不当な実験を行うことなしに、容易に想到することが出来るだろう。
【0135】
本発明のその他の好ましい態様は下記のようなものである。
1.たんぱく質、血液および血液成分からなる群から選ばれた1種またはそれ以上の成分を含有する液体を、その中に存在する可能性がある微生物を不活化するために処理するための方法であって、その方法が、
(a)前記液体に、内因性光増感剤または内因的に基づく誘導体光増感剤の不活化に有効な、実質的に非毒性の量を加え;
(b)該光増感剤を活性化するのに十分な光放射線に工程(a)の液体を露光し、それにより前記微生物が不活化される、
ことからなる、前記方法。
2.前記光増感剤が光活性化可能であって、しかもその光分解生成物が(もし存在する場合に)、ヒトまたは動物に対して低毒性または非毒性のものである、1の方法。
3.前記光増感剤が内因性アロキサジン類、ビタミンK類およびビタミンLからなる群から選ばれる内因性光増感剤である、1の方法。
4.前記光増感剤が、7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジン、7,8−ジメチルアロキサジン、7,8,10−トリメチルイソアロキサジン、アロキサジンモノヌクレオチド、イソアロキサジン−アデノシンジヌクレオチド、ビタミンK1、ビタミンK1オキシド、ビタミンK2、ビタミンK5、ビタミンK6、ビタミンK7、ビタミンK−S(II)およびビタミンLからなる群から選ばれる内因性光増感剤である、1の方法。
5.前記光増感剤が、7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンである、1の方法。
6.前記微生物が、バクテリア類、バクテリオファージ類、細胞内ウイルス類および細胞外ウイルス類からなる群から選ばれる、1の方法。
7.前記微生物がバクテリア類である、1の方法。
8.前記微生物が、HIVウイルス、肝炎ウイルス、シンドビスウイルス、サイトメガロウイルス、水疱性口内炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ヒトT−リンホトロピックレトロウイルス(lymphotropic retrovirus)、HTLV−III、リンパ節症ウイルスLAV/IDA V、パルボウイルス、トランスフュージョン−トランスミッティド(TT)ウイルス、エプスタイン−バ−ウイルス、バクテリオファージ類ΦX174、Φ6、λ、R17、T、T、P.aeruginosa,S.aureus,S.epidermidis,L.monocytogenes,E.cali,K.pneumoniae、およびS.marcescensからなる群から選ばれる、1の方法。
9.前記光放射線が可視スペクトルにおける光である、1の方法。
10.前記光放射線が紫外スペクトルにおける光である、1の方法。
11.前記光放射線が可視スペクトルおよび紫外スペクトルの両方における光からなる、1の方法。
12.前記光放射線の約半分が紫外スペクトルにおける光でありそして約半分が可視スペクトルにおける光である、1の方法。
13.液体中を光放射線が透過(そして微生物を不活化するのを確実するために選ばれた速度および深さで、前記光増感剤を含有する液体が、光放射の源を通り過ぎて流れることを前記露光工程がさらに含む、1の方法。
14.前記光放射線に透明な容器中に前記液体および光増感剤を含有しそして前記光放射線に前記液体を露光することをさらに含む、1の方法。
15.光放射中に前記容器をかき混ぜることを含む、14の方法。
16.前記光放射線に透明な容器中に前記液体を入れ、前記液体に粉末形での前記光増感剤を加え、前記容器をかき混ぜそして前記容器を前記光放射線に露光することを含む、1の方法。
17.前記液体が血液成分を含む、1の方法。
18.前記液体が全血を含む、1の方法。
19.前記液体が分離された血液製品を含む、1の方法。
20.前記液体が全血から分離された血小板を含む、1の方法。
21.前記液体が全血から分離された赤血球を含む、1の方法。
22.前記液体が全血から分離された血清を含む、1の方法。
23.前記液体が全血から分離された血漿を含む、1の方法。
24.前記液体が治療たんぱく質組成物を含む、1の方法。
25.前記液体が、第VIII因子、フォンウィルブランド因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、ハーゲマン因子、プロトロンビン、アンチトロンビンIII、フィブロネクチン、プラスミノーゲン、血漿たんぱく質分画、腹膜透析溶液、免疫血清グロブリン、修正免疫グロブリン、アルブミン、血漿成長ホルモン、ソマトメジン、プラスミノーゲンストレプトキナーゼ複合体、セルロプラスミン、トランスフェリン、ハプトグロビン、抗トリプシンおよびプレカリクレンからなる群から選ばれる生物学的に活性なたんぱく質を含有する、1の方法。
26.前記光増感剤が抗凝固薬に加えられそして前記抗凝固薬が前記液体に加えられる、1の方法。
27.前記液体を光放射線に露光するまえに、増進剤が前記液体に加えられる、1の方法。
28.前記増進剤が、アデニン、ヒスチジン、システィン、チロシン、トリプトファン、アスコルビン酸塩、N−アセチル−L−システィン、没食子酸プロピル、グルタチオン、メルカプトプロピオニルグリシン、ジチオトレイトール、ニコチンアミド、BHT、BHA、リシン、セリン、メチオニン、グルコース、マンニトール、トロロックス(trolox)、グリセロールおよびそれらの混合物からなる群から選ばれる、27の方法。
29.(a)下記液体に、内因性光増感剤または内因的に基づく誘導体光増感剤の、不活化に有効な、実質的に非毒性の量を加え;
(b)該光増感剤を活性化するのに十分な光放射線に、工程(a)の液体を露光し、それにより下記微生物が不活化される、
ことからなる、下記液体中に存在する可能性がある微生物を不活化するために液体を処理する方法。
30.前記液体が食物製品である、29の方法。
31.前記液体がヒトまたは動物の消費のために意図される飲料である、29の方法。
32.前記液体が腹腔溶液である、29の方法。
33.1の方法により造られた、生物学的に活性なたんぱく質、血液または血液成分、および光増感剤またはその光化学生成物を含む液体。
34.1の方法により造られた、光増感剤またはその光化学生成物を含む、血液製品。
35.1の方法により造られた、生物学的に活性なたんぱく質、血液または血液成分、光増感剤またはその光化学生成物、および増進剤を含む、液体。
36.液体の中に存在する可能性がある微生物を不活化するために該液体を処理するためのシステムであって、そのシステムが、
(a)前記液体および内因性光増感剤または内因的に基づいている誘導体光増感剤を含んでいる容器であって、入力手段を備えており、そして該光増感剤を活性化するのに十分な量の光放射線に、中の該液体の露光を可能にするのに十分な光透過が可能な表面を有する容器;
(b)該光増感剤を活性化して、それにより存在する微生物が不活化されるのに十分な光放射線を、該容器中の選ばれたタイプの且つ量の該液体に提供するための少なくとも1つの光放射線源;
を含む、前記システム。
37.前記光放射線源が可視スペクトルにおける光を提供する、36のシステム。
38.前記光放射線源が紫外スペクトルにおける光を提供する、36のシステム。
39.前記少なくとも1つの光放射線源が可視スペクトルおよび紫外スペクトルの両方における光を提供する、36のシステム。
40.光放射線増進装置を含む、36のシステム。
41.前記光放射線増進装置が反射性表面を含む、40のシステム。
42.前記光放射線源から前記光透過可能な容器に光放射線を導くために光ガイドを含む、36のシステム。
43.温度監視装置をまた含む、36のシステム。
44.前記液体を前記容器中に流入させそして前記容器から流出させるための手段をまた含む、36のシステム。
45.前記容器中で前記液体をかき混ぜるための手段をまた含む、36のシステム。
46.36のシステムを含む、全血を血液成分に分離するための装置。
47.微生物を含有する液体中の前記微生物の不活化のためのシステムであって、そのシステムが
(a)前記液体に内因性光増感剤または内因的に基づいている誘導体光増感剤の有効な量を加えるための手段;
(b)選ばれた流速で、該光増感剤を活性化するために十分な量の光放射線に、下記容器内の、工程(a)の液体を露光させるために選ばれた深さおよび長さを有し、光増感剤を加えるための前記手段と液体連通している前記液体のための光透過可能な容器;
(c)前記容器を通過する前記液体の前記選ばれた流速を生成するための手段;および
(d)該光増感剤を活性化するのに十分な光放射線を、前記容器内の選ばれたタイプおよび量の該液体に提供するための少なくとも1つの光放射線源を含む、前記システム。
48.液体中に存在する可能性がある微生物を不活化するために前記液体を処理するためのシステムであって、そのシステムが、
(a)粉末形での光増感剤;
(b)前記液体および光増感剤を含有するための光透過可能な容器;
(c)前記容器をかき混ぜるための手段;
(d)該光増感剤を活性化し、それにより微生物が不活化されるのに十分な光放射線を、前記容器内の選ばれたタイプおよび量の該液体に提供するための少なくとも1つの光放射線源;
を含む、前記システム。
49.前記光透過可能な容器が透明なプラスチックバッグである、48のシステム。
50.前記容器をかき混ぜるための前記手段がふりまぜ機テーブルを含む、48のシステム。
51.前記光透過可能な容器が、前記液体を加えるまえに前記光増感剤を含有する、48のシステム。
52.一表面上の微生物を不活化するための方法であって、その方法が
(a)内因性光増感剤または内因的に基づいている誘導体光増感剤の、不活に有効な量を前記表面に適用し;そして
(b)光増感剤を活性化させるために十分な光放射線に前記表面を露光する、
ことを含む、前記方法。
53.前記表面が食物表面である、52の方法。
54.前記表面が動物死体の表面である、52の方法。
55.前記表面が食物調製品表面である、52の方法。
56.前記表面が入浴用または洗浄用容器の表面である、52の方法。
57.前記表面が動物皮膚の表面である、52の方法。
58.前記表面が創傷表面である、52の方法。
59.前記内因性光増感剤が、内因性アロキサジン類、ビタミンK類およびビタミンLからなる群から選ばれる、52の方法。
60.前記光増感剤が、7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジン、7,8−ジメチルアロキサジン、7,8,10−トリメチルイソアロキサジン、アロキサジンモノヌクレオチド、イソアロキサジン−アデノシンジヌクレオチド、ビタミンK1、ビタミンK1オキシド、ビタミンK2、ビタミンK5、ビタミンK6、ビタミンK7、ビタミンK−S(II)およびビタミンLからなる群から選ばれる、52の方法。
61.前記光増感剤が7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンである、52の方法。
62.前記微生物が、バクテリア類、バクテリオファージ類およびウイルス類からなる群から選ばれる、52の方法。
63.たんぱく質、血液および血液成分からなる群から選ばれる成分を含有する液体を、そのような成分の生物学的活性を破壊することなしに、その液体中に存在する可能性がある微生物の不活化のために処理するための方法であって、その方法が、前記微生物を実質的に不活化するために、不活化に有効な、非毒性量のビタミンK5を前記液体に加えることを含む、前記方法。
64.周囲の室内光中で行なわれる、63の方法。
65.暗所で行なわれる、63の方法。
66.前記液体に増進剤を加えることをまた含む、63の方法。
67.前記増進剤が酸化防止剤である、63の方法。
68.表面上に存在する可能性があるかまたは表面と接触する可能性がある微生物を不活化するために前記表面を処理するための方法であって、その方法が、前記微生物を実質的に不活化するために、不活化に有効な、非毒性量のビタミンKを用いて前記表面をコーティングすることを含む、前記方法。
69.内因性アロキサジン類、ビタミンK類およびビタミンLからなる群から選ばれる内因性光増感剤を含む水性血小板添加剤溶液。
70.生理的食塩水;および緩衝剤を含む、69の血小板添加剤溶液。
71.塩化マグネシウムをまた含む、69の血小板添加剤溶液。
72.グルコン酸ナトリウムをさらに含む、69の血小板添加剤溶液。
73.前記光増感剤が約1μM〜その最大溶解度の濃度で存在する、69の血小板添加剤溶液。
74.前記光増感剤の濃度が約10μMである、73の血小板添加剤溶液。
75.約7.0〜約7.4のpHを有する、69の血小板添加剤溶液。
76.前記光増感剤が7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンである、69の血小板添加剤溶液。
77.塩化ナトリウム;酢酸ナトリウム;グルコン酸ナトリウム;塩化マグネシウム;りん酸ナトリウム;および7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンを含み、そして約7.0〜約7.4のpHを有する、69の血小板添加剤溶液。
78.アデニン、ヒスチジン、システィン、チロシン、トリプトファン、アスコルビン酸塩、N−アセチル−L−システィン、没食子酸プロピル、グルタチオン、メルカプトプロピオニルグリシン、ジチオトレイトール、ニコチンアミド、BHT、BHA、リシン、セリン、メチオニン、グルコース、マンニトール、トロロックス(trolox)、グリセロールおよびそれらの混合物からなる群から選ばれた増進剤をまた含む、69の血小板添加剤溶液。
79.液体の中に存在する可能性がある微生物を不活化するために前記液体を処理する方法であって、その方法が、
(a)前記液体に不活化に有効な量の光増感剤を加え;
(b)紫外光と可視光との混合光に工程(a)の該液体を露光し、それにより前記微生物が不活化される;
ことを含む、前記方法。
80.前記混合光が50:50の紫外光:可視光である、79の方法。
81.前記光増感剤が非毒性の内因性光増感剤または内因的に基づく誘導体光増感剤である、79の方法。
82.液体の中に存在する可能性がある白血球を不活化するために前記液体を処理するための方法であって、その方法が、
(a)前記液体に、内因性光増感剤または内因的に基づく誘導体光増感剤の不活化に有効な、実質的に非毒性の量を加え;
(b)該光増感剤を活性化するのに十分な光放射線に、工程(a)の該液体を露光し、それにより前記白血球が不活化される;
ことを含む、前記方法。
83.前記液体が血液または血液成分を含む、請求項82の方法。
【0136】
本発明のさらに好ましい態様は下記のようなものである。
1.採取された液体の中に存在する可能性がある微生物または白血球を不活化するために前記液体を処理する方法であって、その方法が、
(a)前記液体に不活化に有効な量の光増感剤である内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体を加え;
(b)紫外光、可視光またはそれらの混合光に工程(a)の該液体を露光し、それにより前記微生物または白血球の複製を完全にまたは部分的に防止することを含み;
(c)前記微生物または白血球の不活化後、内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体を除去する工程を含まない、前記方法。
2.前記液体に実質的に非毒性の量の増感剤を加える1に記載の方法。
3.前記液体が、たんぱく質、血液、血液成分、腹腔溶液、食物製品および飲料、該飲料はヒトまたは動物の消費のために意図された飲料から選ばれた1種またはそれ以上の成分を含有する、1または2に記載の方法。
4.前記液体が全血から分離された血清を含む、1または2に記載の方法。
5.前記光増感剤が、7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジン、7,8−ジメチルアロキサジン、7,8,10−トリメチルイソアロキサジン、アロキサジンモノヌクレオチド、及びイソアロキサジン−アデノシンジヌクレオチドから選ばれる内因性光増感剤である、1〜3のいずれか1項に記載の方法。
6.前記微生物が、HIVウイルス、肝炎ウイルス、シンドビスウイルス、サイトメガロウイルス、水疱性口内炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ヒトT−リンホトロピックレトロウイルス(lymphotropic retrovirus)、HTLV−III、リンパ節症ウイルスLAV/IDA V、パルボウイルス、トランスフュージョン−トランスミッティド(TT)ウイルス、エプスタイン−バ−ウイルス、バクテリオファージ類ΦX174、Φ6、λ、R17、T、T、P.aeruginosa,S.aureus,S.epidermidis,L.monocytogenes,E.coli,K.pneumoniae、およびS.marcescensから選ばれる、1〜3のいずれか1項に記載の方法。
7.液体中を光放射線が透過し、そして微生物または白血球を不活化するのを確実するために選ばれた速度および深さで、前記光増感剤を含有する液体が、光放射の源を通り過ぎて流れる、または、前記光放射線に透明な容器中に前記液体および光増感剤を含有しそして前記光放射線に前記液体を露光することをさらに含む1〜3のいずれか1項に記載の方法。
8.前記光増感剤が抗凝固薬に加えられそして前記抗凝固薬が前記液体に加えられる、1〜3のいずれか1項に記載の方法。
9.前記液体を光放射線に露光するまえに、増進剤が前記液体に加えられる、1〜3のいずれか1項に記載の方法。
10.液体の中に存在する可能性がある微生物または白血球を不活化するために該液体を処理するためのシステムであって、そのシステムが、
(a)前記液体および内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体を含んでいる容器であって、入力手段を備えており、そして該内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体を活性化するのに十分な量の光放射線に、中の該液体の露光を可能にするのに十分な光透過が可能な表面を有する容器;
(b)該内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体を活性化して、それにより存在する微生物または白血球の複製を完全にまたは部分的に防止するのに十分な光放射線を、該容器中の選ばれたタイプの且つ量の該液体に提供するための少なくとも1つの光放射線源を含み;
(c)前記微生物または白血球の不活化後、内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体を除去する手段を含まない、前記システム。
11.前記光放射線源が可視および/または紫外スペクトルにおける光を提供する、10のシステム。
12.10のシステムを含む、全血を血液成分に分離するための装置。
13.微生物または白血球を含有する液体中の前記微生物または白血球の不活化のためのシステムであって、そのシステムが
(a)前記液体に内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体の有効な量を加えるための手段;
(b)選ばれた流速で、該内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体を活性化するために十分な量の光放射線に、下記容器内の、工程(a)の液体を露光させるために選ばれた深さおよび長さを有し、該内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体を加えるための前記手段と液体連通している前記液体のための光透過可能な容器;
(c)前記容器を通過する前記液体の前記選ばれた流速を生成するための手段;および
(d)該内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体を活性化し、それによって前記微生物または白血球の複製を完全にまたは部分的に防止するのに十分な光放射線を、前記容器内の選ばれたタイプおよび量の該液体に提供するための少なくとも1つの光放射線源を含み;
(e)前記微生物または白血球の不活化後、内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体を除去する手段を含まない、前記システム。
14.液体中に存在する可能性がある微生物または白血球を不活化し、それによって前記微生物または白血球の複製を完全にまたは部分的に防止するために前記液体を処理するためのシステムであって、そのシステムが、
(a)粉末形での内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体;
(b)前記液体および内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体を含有するための光透過可能な容器;
(c)前記容器をかき混ぜるための手段;
(d)該内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体を活性化し、それにより微生物または白血球が不活化されるのに十分な光放射線を、前記容器内の選ばれたタイプおよび量の該液体に提供するための少なくとも1つの光放射線源を含み;
(e)前記微生物または白血球の不活化後、内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体を除去する手段を含まない、前記システム。
15.前記内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体が、7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジン、7,8−ジメチルアロキサジン、7,8,10−トリメチルイソアロキサジン、アロキサジンモノヌクレオチド、及びイソアロキサジン−アデノシンジヌクレオチドから選ばれる、10〜14のいずれか1項に記載のシステム。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】リボフラビンの吸収スペクトルを示す図である。
【図2】赤血球に対して観察され、そして予想される吸光度およびヘマトクリットの、また血小板に対して予想される吸光度およびヘマトクリットの相関を示す図である。
【図3】抗凝固物質酸性クエン酸塩ブドウ糖(ACD)溶液中のリボフラビンの経時光分解を示す。円を入れた実線は373nmにおいて残存する最初のリボフラビンのパーセントを示す。四角を入れた点線は447nmにおいて残存する最初のリボフラビンのパーセントを示す図である。
【図4】波長の関数として、種々なプラスチックキュベットの透過プロフィルを示す。実線は3.2mmアクリルキュベットを表わす。点線(----)は3.2mmUVアクリルキュベットを表わす。破線(−−)は3.2mmポリスチレン(PS)キュベットを表わし、交差した線は3.2mmポリカーボネート(PC)キュベットを示す。
【図5】流速の関数としてmW/cmで表わした必要な光フラックス、即ちキュベット中の試料へ1ジュール/cmを供給するのに必要なフラックスを示す。
【図6】本発明に係る光放射装置を取り入れた血液分離装置を示す図である。
【図7】本発明に汚染物除去装置を示す図である。
【図8】光増感剤としてビタミンK5を用いた血小板製剤中の細菌の不活性化を照射エネルギーの関数として示す図である。
【図9】血小板90%と血小板添加物溶液10%(90:10)および血小板30%と添加物溶液70%(30:70)を使用した血小板製剤および照射エネルギーの関数としての細菌の不活性化を示す図である。
【図10】ウイルス、バクテリオファージおよび細菌の不活性化に及ぼす血小板濃縮物への酸化防止剤の添加の効果を示す図である。
【図11】紫外線半分と可視光線半分を用る20J/cmの照射エネルギーにおいて、光増感剤の濃度の関数としてのHerpes SimplexタイプIIに対する不活性化曲線を示す図である。
【図12】種々な濃度の光増感剤および照射エネルギーにおいてS.epidermidisの不活性化を示す図である。
【図13】種々な濃度の光増感剤および照射エネルギーにおけるΦX174の不活性化を示す図である。
【図14】紫外および可視光線の50:50混合を用いる種々な照射エネルギーでのS.aureusおよびΦX174の不活性化を示す図である。
【図15】紫外および可視光線の50:50混合を用いる種々な照射エネルギーでのS.epidermidisおよびHSV−IIの不活性化を示す図である。
【図16】種々なエネルギーレベルで照射しかきまぜた血液バッグ中のHSV2ウイルスの不活性化を示す図である。
【図17】紫外線単独または紫外および可視光線50:50を用いた種々な流体中のワクシニアウイルスに対する不活性化の結果を比較した図である。
【図18】増感剤ありとなしとで、種々な照射時間におけるワクシニアの不活性化の結果を比較した図である。
【図19】光増感剤5および50μMと種々な照射エネルギーにおける細胞外HIV−1の不活性化を比較した図である。
【図20】光増感剤5および50μMと種々な照射エネルギーにおける細胞内HIV−1の不活性化を比較した図である。
【図21】P24抗原レベルを用いた光増感剤5および50μMと種々な照射エネルギーにおける細胞内HIV−1の不活性化を比較した図である。
【図22】血小板濃縮物を用いる、ならびにアスコルベートと共に血小板添加物溶液を含む媒質中で血小板濃縮物を用いる、種々な照射レベルでのHSV−IIの不活性化を示す。
【図23】処理される流体と光増感剤を入れた血液バッグおよび光源からの光放射線に暴露しつつ流体をかきまぜるシェーカーテーブルを使用する本発明の一具体例を示す。
【符号の説明】
【0138】
4 血液を提供者/患者
8 血液成分分離装置
10 体外チュービング回路
12 血液処理容器
14 カセット組立て
20 血液取り出し/戻しチュービング組立て(assembly)
50 抗凝固物質チュービング組立て
60 血液入口/血液成分チュービングサブアッセンブリー
70 赤血球集収チュービング組立て
80 血小板集収チュービング組立て
90 血漿集収チュービング組立て
100 通気バッグチュービングサブアッセンブリー
160 光放射線源
162 光ガイド
163 光放射線エンハンサー
164 汚染物除去キュベット
166 光増感剤貯留部
168 光増感剤入力ライン
170 入力ポンプ
180 血液生成物
182 血液生成物集収部
184 ポンプ
186 血液生成物ライン
190 冷却システム
192 温度モニター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
採取された液体の中に存在する可能性がある微生物または白血球を不活化するために前記液体を処理する方法であって、その方法が、
(a)前記液体に不活化に有効な量の光増感剤である内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体を加え;
(b)紫外光、可視光またはそれらの混合光に工程(a)の該液体を露光し、それにより前記微生物または白血球の複製を完全にまたは部分的に防止することを含み;
(c)前記微生物または白血球の不活化後、内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体を除去する工程を含まない、前記方法。
【請求項2】
前記液体に実質的に非毒性の量の増感剤を加える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体が、たんぱく質、血液、血液成分、腹腔溶液、食物製品および飲料、該飲料はヒトまたは動物の消費のために意図された飲料から選ばれた1種またはそれ以上の成分を含有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記液体が全血から分離された血清を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記光増感剤が、7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジン、7,8−ジメチルアロキサジン、7,8,10−トリメチルイソアロキサジン、アロキサジンモノヌクレオチド、及びイソアロキサジン−アデノシンジヌクレオチドから選ばれる内因性光増感剤である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記微生物が、HIVウイルス、肝炎ウイルス、シンドビスウイルス、サイトメガロウイルス、水疱性口内炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ヒトT−リンホトロピックレトロウイルス(lymphotropic retrovirus)、HTLV−III、リンパ節症ウイルスLAV/IDA V、パルボウイルス、トランスフュージョン−トランスミッティド(TT)ウイルス、エプスタイン−バ−ウイルス、バクテリオファージ類ΦX174、Φ6、λ、R17、T、T、P.aeruginosa,S.aureus,S.epidermidis,L.monocytogenes,E.coli,K.pneumoniae、およびS.marcescensから選ばれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
液体中を光放射線が透過し、そして微生物または白血球を不活化するのを確実するために選ばれた速度および深さで、前記光増感剤を含有する液体が、光放射の源を通り過ぎて流れる、または、前記光放射線に透明な容器中に前記液体および光増感剤を含有しそして前記光放射線に前記液体を露光することをさらに含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記光増感剤が抗凝固薬に加えられそして前記抗凝固薬が前記液体に加えられる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記液体を光放射線に露光するまえに、増進剤が前記液体に加えられる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
液体の中に存在する可能性がある微生物または白血球を不活化するために該液体を処理するためのシステムであって、そのシステムが、
(a)前記液体および内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体を含んでいる容器であって、入力手段を備えており、そして該内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体を活性化するのに十分な量の光放射線に、中の該液体の露光を可能にするのに十分な光透過が可能な表面を有する容器;
(b)該内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体を活性化して、それにより存在する微生物または白血球の複製を完全にまたは部分的に防止するのに十分な光放射線を、該容器中の選ばれたタイプの且つ量の該液体に提供するための少なくとも1つの光放射線源を含み;
(c)前記微生物または白血球の不活化後、内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体を除去する手段を含まない、前記システム。
【請求項11】
前記光放射線源が可視および/または紫外スペクトルにおける光を提供する、請求項10のシステム。
【請求項12】
請求項10のシステムを含む、全血を血液成分に分離するための装置。
【請求項13】
微生物または白血球を含有する液体中の前記微生物または白血球の不活化のためのシステムであって、そのシステムが
(a)前記液体に内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体の有効な量を加えるための手段;
(b)選ばれた流速で、該内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体を活性化するために十分な量の光放射線に、下記容器内の、工程(a)の液体を露光させるために選ばれた深さおよび長さを有し、該内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体を加えるための前記手段と液体連通している前記液体のための光透過可能な容器;
(c)前記容器を通過する前記液体の前記選ばれた流速を生成するための手段;および
(d)該内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体を活性化し、それによって前記微生物または白血球の複製を完全にまたは部分的に防止するのに十分な光放射線を、前記容器内の選ばれたタイプおよび量の該液体に提供するための少なくとも1つの光放射線源を含み;
(e)前記微生物または白血球の不活化後、内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体を除去する手段を含まない、前記システム。
【請求項14】
液体中に存在する可能性がある微生物または白血球を不活化し、それによって前記微生物または白血球の複製を完全にまたは部分的に防止するために前記液体を処理するためのシステムであって、そのシステムが、
(a)粉末形での内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体;
(b)前記液体および内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体を含有するための光透過可能な容器;
(c)前記容器をかき混ぜるための手段;
(d)該内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体を活性化し、それにより微生物または白血球が不活化されるのに十分な光放射線を、前記容器内の選ばれたタイプおよび量の該液体に提供するための少なくとも1つの光放射線源を含み;
(e)前記微生物または白血球の不活化後、内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体を除去する手段を含まない、前記システム。
【請求項15】
前記内因性アロキサジンまたは内因性を基本とするアロキサジン誘導体が、7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジン、7,8−ジメチルアロキサジン、7,8,10−トリメチルイソアロキサジン、アロキサジンモノヌクレオチド、及びイソアロキサジン−アデノシンジヌクレオチドから選ばれる、請求項10〜14のいずれか1項に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2006−273868(P2006−273868A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−182909(P2006−182909)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【分割の表示】特願2000−560923(P2000−560923)の分割
【原出願日】平成11年7月21日(1999.7.21)
【出願人】(593052361)ガンブロ、 インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】