説明

光変色性の繊維構造物

【課題】可逆性、応答性に優れた新規な光変色性の繊維を提供する。
【解決手段】蛍光顔料もしくは蛍光染料と、該蛍光顔料もしくは蛍光染料とは色相が異なる顔料もしくは染料とを用いて着色されており、紫外線が照射されることにより色が変化する繊維構造物であり、例えば屋内と紫外線を含む太陽光の下で異なる色を呈することができ、有機フォトクロミック化合物の作用による変色ではないので、変色の可逆性、応答性には全く問題が無く瞬時に変色し、耐久性にも優れており、安価かつ簡便に製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維構造物に関するものであり、詳細には、紫外線照射により色が変わる光変色性の繊維構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紫外線を含む太陽光等の照射により色彩が可逆的に変化する光変色性繊維は、従来より種々提案されている。特に、繊維を形成する合成樹脂に有機フォトクロミック化合物や、有機フォトクロミック化合物を内包するマイクロカプセルを配合する試みが多くなされている(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
しかしながら、上記の有機フォトクロミック化合物を直接配合する場合、合成樹脂の種類によってはブルーミングの問題がある。また、有機フォトクロミック化合物およびそれを内包するマイクロカプセルは高価であり、さらに、光応答性の問題もある。
【特許文献1】特開2001−207326(特許請求の範囲、従来の技術)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の状況に鑑み、本発明は、可逆性、応答性に優れた新規な光変色性の繊維を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、市販されている種々の有機フォトクロミック化合物およびそれを内包するマイクロカプセルを入手し、ナイロン等の合成樹脂に配合して溶融紡糸により繊維化したところ、溶融紡糸時の熱によるダメージのためか、期待通りの効果は得られなかった。このため、上記したように有機フォトクロミック化合物およびそれを内包するマイクロカプセルが高価なこともあって、それらを用いることは断念して、別の方法を鋭意検討した結果、2種類の色素を含む染料または顔料で繊維を着色するという簡便かつ安価な方法によって上記課題を解決できるという驚くべき事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
[1] 蛍光顔料もしくは蛍光染料と、該蛍光顔料もしくは蛍光染料とは色相が異なる顔料もしくは染料とを用いて着色されており、紫外線が照射されることにより色が変化する繊維構造物、
[2] 蛍光顔料もしくは蛍光染料が黄色系である前項[1]に記載の繊維構造物、
[3] 紫外線が照射されたときに黄色系の蛍光色を呈する前項[2]に記載の繊維構造物、
[4] 上記蛍光顔料もしくは蛍光染料とは色相が異なる顔料もしくは染料が赤色系である前項[2]または[3]に記載の繊維構造物、
[5] 染料もしくは顔料の全体に占める蛍光染料もしくは蛍光顔料の割合が10〜60質量%である前項[1]〜[4]のいずれかに記載の繊維構造物、
[6] 繊維が合成樹脂で成形されている前項[1]〜[5]のいずれかに記載の繊維構造物、
[7] 合成樹脂の融点が200℃以上である前項[6]に記載の繊維構造物、
[8] 合成樹脂がポリアミド系樹脂もしくはポリエステル系樹脂である前項[6]に記載の繊維構造物、および
[9] 釣糸である請求項前項[1]〜[8]のいずれか1に記載の繊維構造物
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の繊維構造物は、紫外線の照射により色が変わるので、例えば屋内と紫外線を含む太陽光の下で異なる色を呈することができる。また、有機フォトクロミック化合物の作用による変色ではないので、変色の可逆性、応答性には全く問題が無く瞬時に変色し、耐久性にも優れており、安価かつ簡便に製造できる。本発明の繊維構造物は、その用途を問わずあらゆる用途に使用可能であるが、中でも太陽光のもとで使用されるスポーツ、アウトドア用品、例えばスポーツウェア、セールクロス、テント、パラソル、パラシュート、パラグライダー用クロス等に好適であり、特に釣糸に好適である。釣糸に限らないが本発明の繊維構造物をそれらの用途に使用すれば、色の変化が楽しめるほか、視認性の向上に役立つ場合もあり、また、紫外線の強さのバロメーターともなり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の繊維構造物において、繊維構造物には繊維で構成されるあらゆる構造物が含まれる。繊維構造物としては、例えば、スフ、フィラメント、紡績糸、モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸、撚糸、製紐、織物、編物および不織布等が挙げられる。繊維の繊度や繊維長、糸条の総繊度、織編物の組織や糸密度、織編物や不織布の目付け等は特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜設定すればよい。
【0009】
本発明の繊維構造物は、蛍光顔料もしくは蛍光染料(以下「第1の顔料等」ということがある)と、第1の顔料等とは色相が異なる顔料もしくは染料(以下、「第2の顔料等」ということがある)とを用いて着色されている。本発明の繊維構造物は、第1の顔料等と第2の顔料等とからなる混合物(以下、「顔料等混合物」ということがある)、例えば(イ)蛍光顔料と該蛍光顔料とは色相が異なる顔料との混合物、または(ロ)第1の染料と第2の染料とは色調の異なる染料との混合物、を用いて着色されていることが好ましいが、顔料と染料とを併用して着色されていてもかまわない。特に好ましいのは、(イ)蛍光顔料と該蛍光顔料とは色相が異なる顔料との混合物を用いて着色されている繊維構造物であり、色落ちがしにくいので特に釣糸の場合に適している。
【0010】
本発明の繊維構造物は、紫外線が照射されることによって色が変化するものである。例えば、太陽光には紫外線が含まれているので、太陽光が当たることによって色が変化する。このため、室内において視認される色と、晴天時の屋外において視認される色が異なることになる。なお、色が変化するとは、普通人の目視による感覚で色が変化すると認められれば足りる。例えばマンセル色相環(JIS Z 8721準拠 標準色相)における10の色相において異なる色相に属する色に変化すれば十分であるが、それよりも変化の度合いが小さくてもよい。
【0011】
また、紫外線が照射されることによって色が変化するとは、紫外線が照射されない状態において視認される色と比べて、紫外線が照射された状態で視認される色が異なることを意味するが、紫外線が照射されない状態とは、積極的に紫外線ランプや太陽光を照射しない状態であれば、若干の紫外線が照射されていてもよく、例えば蛍光灯で照明された程度の通常の室内に置かれた状態であれば、紫外線を照射しない状態ということができる。また、それぞれの色が視認されるとは、それぞれの色が支配的に見えていればよく、光線の当たり具合によって、一部に他方の色が混じって見えていてもよい。
【0012】
本発明において、紫外線が照射されることにより色が変化するのは、紫外線が照射されることにより、第1の顔料等の蛍光色が強く現れるためであると考えられる。すなわち、第2の顔料等で隠蔽されていた第1の顔料等の蛍光色が、紫外線が照射されることにより顕在化するためである。したがって、第2の顔料等は、蛍光色のものでないことが好ましい。もちろん、第1の顔料等としては必ずしも1種類でなくとも、2種類以上の蛍光顔料もしくは蛍光染料が用いられていてもよく、第2の顔料等としては必ずしも1種類でなくとも、2種類以上の顔料もしくは染料が用いられていてもよい。
【0013】
第2の顔料等が第1の顔料等とは色相が異なるものであることは、上記のように紫外線が照射されたときに色が変化するために必要なことである。色相が異なるものでなければ、蛍光色でなかったものが蛍光色に変化して見えることはあっても、色が変化して見えることにはならないからである。
【0014】
なお、上記した色の変化が認められるのであれば、紫外線が照射されないときに視認される色は、第2の顔料等の色そのものでなくてよく、第2の顔料等の色と第1の顔料等との色が混ざり合った色であってよいことはいうまでもない。同様に、紫外線が照射されたときに視認される色が第1の顔料の色そのものでなくてよいことはいうまでもない。
【0015】
本発明において、紫外線の照射により色が変化することを確認する簡単な方法としては、市販の白色LEDを使用した照明具の光を、概ね5cm以内の至近距離から繊維構造物に照射して、目視により確認する方法が採用できる。
【0016】
第1の顔料等としては、黄色系であることが好ましく、具体的には蛍光イエローの顔料、蛍光グリーンの顔料、蛍光イエローの染料および蛍光グリーンの染料が挙げられる。第1の顔料等として上記黄色系のものを使用することにより、紫外線が照射されたときに黄色系の蛍光色を呈することができる。
【0017】
第1の顔料等が黄色系であるとき、第2の顔料等は赤色系もしくは青色系であることが色の変化を出しやすい点で好ましく、赤色系がより好ましい。第1の顔料等の色と、第2の顔料等の色との具体的な好ましい組み合わせとしては、例えば下記表1に示される組み合わせが挙げられる。
【0018】
【表1】

【0019】
上記の組み合わせの中でも、(1)第1の顔料等が蛍光イエローで第2の顔料等がレッド、および(2)第1の顔料等が蛍光イエローで第2の顔料等がオレンジ、という組み合わせがより好ましく、(1)第1の顔料等が蛍光イエローで第2の顔料等がレッドの組み合わせが特に好ましい。なお、第1の顔料等と第2の顔料との比率にもよるが、紫外線が照射されない状態において、上記(1)の組み合わせでは例えば概ねレッドないしブラウンに見え、上記(2)の組み合わせでは例えば概ねブラウンに見える。
【0020】
本発明において、繊維構造物の着色に用いられる染料もしくは顔料の全体に占める第1の顔料等の割合としては、10〜60質量%が好ましく、20〜55質量%がより好ましい。第2の顔料等との関係で表すと、第1の顔料等の質量Wと第2の顔料等の質量Wとの比率としては、W1/W=10/90〜60/40が好ましく、W1/W=20/80〜55/45がより好ましい。第1の顔料の比率が10質量%未満では、紫外線が照射されても第1の顔料の蛍光色が強く現れず、一方、60質量%を超えると紫外線が照射される前から第1の顔料の色が強く、いずれも本発明の目的とする色の変化が認められにくくなるので好ましくない。
【0021】
本発明の繊維構造物を上記の顔料もしくは染料で着色する方法としては、公知の方法に準じて行えばよい。
例えば、顔料で着色する方法としては、繊維を形成する合成樹脂に顔料を直接もしくはマスターバッチとしてから添加して混練した組成物を調製し、これを用いて紡糸することによりいわゆる原着繊維とすればよい。あるいは、顔料を含有させた樹脂組成物を繊維の外周にコーティングしてもよい。
例えば、染料で着色する方法としては、通常の染色方法により、糸もしくは布の状態の繊維構造物を染色することにより、繊維表面に染料を付着させ、あるいはある程度内部にまで吸尽させて定着させればよい。
なお、顔料と染料とを併用してもよく、顔料で着色した繊維をさらに染料で染色してもかまわない。
【0022】
顔料を用いて着色する場合の顔料の使用量としては、特に限定されるものではないが、蛍光顔料(以下、「第1の顔料」ということがある)と、第1の顔料とは色相が異なる顔料(以下、「第2の顔料」ということがある)との合計質量が繊維100質量部に対して0.001〜1.0質量部となるよう、望ましくは0.01〜0.1質量部となるよう使用することが好ましい。また、顔料の粒子径としては、通常繊維の着色に用いる程度の粒子径とすればよい。
【0023】
染料を用いて着色する場合の染料の使用量としては、特に限定されるものではないが、繊維100質量部に対して染料の固形分の合計が0.001〜1.0質量部となるよう使用することが好ましく、0.01〜0.1質量部となるよう使用することがより好ましい。
【0024】
本発明の繊維構造物において、顔料もしくは染料による着色は一様なものであってもよいが、必ずしも一様である必要はなく、種々の着色パターンを採用できる。例えば、糸条において、本発明により着色された部分と、そうでない部分が交互に存在してもよく、それによって紫外線を照射した場合にまだら模様ないし縞模様となって見えるようにすることができる。また、織編物においては、本発明により着色された糸条とそうでない糸条とを適宜配置して製編織することにより、紫外線を照射したときに色柄となって見えるようにしたり、特定の文字が浮かび上がって見えるようにしたりすることもできる。織編物や不織布においては、プリント染色によって染め分けることにより、同様に色柄や文字を浮かび上がらせることもできる。
【0025】
本発明の繊維構造物を構成する繊維としては、天然繊維、人造繊維のいずれでもよいが、合成樹脂で成形されている繊維すなわち合成繊維が好ましい。合成繊維の成形材料である合成樹脂としては、特に限定されるものではなく、公知の繊維形成性の合成樹脂の中から適宜選択すればよい。該合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリアセタール系樹脂およびポリビニルアルコール系樹脂等の合成樹脂が挙げられる。これらのうち、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂およびフッ素系樹脂が好ましく、ポリアミド系樹脂およびポリエステル系樹脂が特に好ましい。合成樹脂としては、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
より具体的には、ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン等が挙げられ、中でも、重量平均分子量が約400,000以上のものが好ましい。上記ポリエチレンまたはポリプロピレンは、ホモポリマーであってもよいし、コポリマーであってもよい。コポリマーとして具体的には、エチレンと共重合できる1以上のアルケン類を少量、好ましくは約5重量%程度以下の割合で含有し、100炭素原子当り1〜10個程度、好ましくは2〜6個程度のメチル基またはエチル基を有する共重合体が挙げられる。上記エチレンと共重合できるアルケン類としては、例えば、プロペン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテンまたは4−メチルペンテン等が挙げられる。また、コポリマーとしては、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等も挙げられる。
【0027】
ポリアミド系樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン6,10等の脂肪族ポリアミドもしくはその共重合体、または芳香族ジアミンとジカルボン酸により形成される半芳香族ポリアミドもしくはその共重合体等が挙げられる。
【0028】
ポリエステル系樹脂としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタリン2,6ジカルボン酸、フタル酸、α,β−(4−カルボキシフェニル)エタン、4,4’−ジカルボキシフェニルもしくは5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸もしくはセバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル類と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ポリエチレングリコールまたはテトラメチレングリコール等のジオール化合物とから重縮合されるポリエステルもしくはその共重合体等が挙げられる。また、全芳香族ポリエステルであるポリアリレートが挙げられる。
【0029】
フッ素系樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリモノクロロトリフルオロエチレンもしくはポリヘキサフルオロプロピレンまたはその共重合体等が挙げられる。
【0030】
ポリアクリロニトリル系樹脂としては、アクリロニトリルと他のポリマーとのコポリマーであるポリアクリロニトリル系樹脂が挙げられる。上記他のポリマーとしては、例えばメタクリレート、アクリレートまたは酢酸ビニル等が挙げられ、該他のポリマーの含有量は約5質量%程度以下であることが好ましい。
【0031】
ポリアセタール系樹脂としては、例えばポリオキシメチレン等アセタール結合を主鎖に有するホモポリマーもしくはコポリマーが挙げられる。
【0032】
ポリビニルアルコール系樹脂としては、ビニルアルコールと他のポリマー成分とのコポリマーであるポリビニルアルコール系樹脂が挙げられる。上記他のポリマー成分としては、例えば酢酸ビニル、エテンまたは他のアルケン類等が挙げられ、該他のポリマー成分の含有量は約5質量%程度以下であることが好ましい。
【0033】
上記の合成樹脂から繊維を成形する方法としては、公知の方法に準じて行えばよく、例えば溶融紡糸法、ゲル紡糸法等を合成樹脂の種類に応じて適宜選択すればよい。合成繊維の繊度や横断面形状も特に限定されず、横断面形状としては、丸断面、異形断面のいずれでもよく、中実断面でも中空断面でもよく、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型等の複合型断面としてもよい。複合型断面の場合、上記した本発明における顔料を含有する成分と含有しない成分とで構成されていてもよく、例えば芯鞘型断面の場合、鞘成分にのみ上記顔料を含有させることができる。また、合成繊維としては、未延伸であってもよく、延伸されていてもよい。
【0034】
合成繊維には、上記した本発明における顔料を含有させて成形することができ、例えば、該顔料を熱可塑性合成樹脂に添加して溶融混練した組成物を用いて合成繊維を成形することができる。本発明において、上記の顔料を含有させる態様は、顔料の熱による劣化の心配はほとんどないので、溶融紡糸に適している。したがって、上記の合成樹脂としては、融点が200℃以上のものでも問題なく使用することができる。この点、従来のフォトクロミック材料は耐熱性に乏しく、耐熱性があると言われるものであっても、本発明者らが実験したところでは紡糸温度が200℃以上の場合に本来の機能が発揮されるものは見られない。
【0035】
また、合成繊維には、本発明の目的を損なわない範囲で、各種添加剤が含有されていてもよい。例えば、耐磨耗剤、艶消し剤、滑剤、耐酸化剤、抗菌剤、改質剤、紫外線吸収剤もしくは導電性物質等が含有されていてもよい。また、比重を調整するために、金属や金属化合物、例えば酸化バリウムや硫酸バリウム等の高比重物質が添加剤として含まれていてもよい。
【0036】
本発明の繊維構造物のうち、糸条からなるものは、特に釣糸の用途に適している。釣糸を構成する繊維としては、合成繊維のマルチフィラメントもしくはモノフィラメントが好ましい。具体的には、ポリアミド系樹脂もしくはフッ素系樹脂からなるモノフィラメント、ポリオレフィン系樹脂、特に超高分子量ポリエチレンからなるマルチフィラメント、およびそれらの1種または2種以上からなる撚糸や製紐糸が好ましい。また、太さが均一な糸条はもとより、テーパー状に延伸された糸条も釣糸として好ましい。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明がそれらに限定されるものでないことはいうまでもない。
【0038】
[実施例1〜2、比較例1〜2]
ポリエステル樹脂チップ12.5kgに、下記表2に示す顔料およびその他の添加剤を合計で4.17g添加して乾式混合し、溶融紡糸装置を用いて、紡糸温度270〜290℃、 延伸倍率6.5〜7.0倍、紡糸速度60〜100m/分にて、275dtexのモノフィラメントを得た。
【0039】
[実施例3〜12]
ナイロン6/ナイロン66共重合樹脂チップ12.5kgに、下記表2に示す顔料およびその他の添加剤を合計で4.17g添加して乾式混合し、溶融紡糸装置を用いて、紡糸温度240〜270℃、 延伸倍率5.9倍、紡糸速度60〜100m/分にて、231dtexのモノフィラメントを得た。
【0040】
[実施例13]
フロロカーボン樹脂チップ12.5kgに、下記表2に示す顔料およびその他の添加剤を合計で4.17g添加して乾式混合し、溶融紡糸装置を用いて、紡糸温度260℃、 延伸倍率6.5倍、紡糸速度8m/分にて、1308dtexのモノフィラメントを得た。
【0041】
上記実施例および比較例において添加した顔料およびその他の添加剤の組成比を下記表2に示す。
なお、実施例および比較例で使用した蛍光顔料の色名は次の通りである。
蛍光イエロー:総名称 Green 5
COLOR INDEX No.59075
蛍光オレンジ:総名称 Orange 63
COLOR INDEX No.68550
【0042】
【表2】

【0043】
上記実施例および比較例で得られたモノフィラメントに、白色LEDランプの光を照射したときの色の変化を目視にて下記基準で評価した。
◎:色が鮮やかに変化した
○:色が変化したのがわかった
×:色が変化しなかった
結果を、照射前後のモノフィラメントの色とともに下記表3に示す。
【0044】
【表3】

【0045】
上記のように、本発明の実施例では紫外線の照射により実際に色が変化することが確認され、特に第一の顔料として蛍光イエローを使用した場合に色の変化を出しやすいことがわかった。これに対し、比較例1では蛍光顔料を含んでいないので何の変化もなく、比較例2では蛍光顔料1種類のみであるため、蛍光の発色は強くなったものの、色は変化しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光顔料もしくは蛍光染料と、該蛍光顔料もしくは蛍光染料とは色相が異なる顔料もしくは染料とを用いて着色されており、紫外線が照射されることにより色が変化する繊維構造物。
【請求項2】
蛍光顔料もしくは蛍光染料が黄色系である請求項1に記載の繊維構造物。
【請求項3】
紫外線が照射されたときに黄色系の蛍光色を呈する請求項2に記載の繊維構造物。
【請求項4】
上記蛍光顔料もしくは蛍光染料とは色相が異なる顔料もしくは染料が赤色系である請求項2または3に記載の繊維構造物。
【請求項5】
染料もしくは顔料の全体に占める蛍光染料もしくは蛍光顔料の割合が10〜60質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の繊維構造物。
【請求項6】
繊維が合成樹脂で成形されている請求項1〜5のいずれかに記載の繊維構造物。
【請求項7】
合成樹脂の融点が200℃以上である請求項6に記載の繊維構造物。
【請求項8】
合成樹脂がポリアミド系樹脂もしくはポリエステル系樹脂である請求項6に記載の繊維構造物。
【請求項9】
釣糸である請求項1〜8のいずれかに記載の繊維構造物。


【公開番号】特開2008−38288(P2008−38288A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214373(P2006−214373)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(506269149)株式会社ワイ・ジー・ケー (21)
【Fターム(参考)】