説明

光変調器

【課題】小型化を図ることによって懸念される電極間の短絡を抑制すると共に、高周波の伝送特性を確保できる光変調器を実現する。
【解決手段】一対の光導波路の上に電極を備えるマッハツェンダ型の光変調器であって、該電極は該光導波路の伝播する光を変調するための変調信号が印加される信号電極と、接地電位を与える接地電極と、該変調信号の動作点を制御するための電圧が印加されるバイアス電極から構成され、該接地電極は該信号電極の両側に設置され、該両側の一方の第一の接地電極は該一対の光導波路の何れか一方の上に設置され、該バイアス電極が、該第一の接地電極の近傍で該信号電極と異なる側に設置され、該バイアス電極は該基板の表面に直接設置され、該バイアス電極の上にバッファ層が形成され、該第一の接地電極は該バイアス電極を挟んで梯子状の電極を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信システムに用いられ、電気光学効果により光位相を制御することによって、データ信号を電気信号から光信号に変調する光変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信システムは高速化、大容量化、小型化を目的として様々な分野で進歩を遂げている。光送信用デバイスにおいても、広帯域特性、チャープ特性等の観点から、レーザダイオードの直接変調に代わって、ニオブ酸リチウム(LiNbO:以降、LNと記載する場合がある。)基板などの電気光学結晶を用いた光導波路型外部変調器が開発されている。
【0003】
このような変調器は、LNなどの結晶基板上の一部にチタン(Ti)などによる金属膜を形成し熱拡散させることによって、あるいは、その金属膜を形成して安息香酸中でプロトン交換することによって、LNなどの電気光学結晶基板にマッハツェンダ型の光導波路が形成されている。光導波路が形成された基板の上に二酸化ケイ素(SiO)などによるバッファ層を設ける。さらに、LN基板の結晶軸方向のZ軸に平行となるようにカットした(Zカット)基板の場合、一対のマッハツェンダ型光導波路の直線部分の一方の上に、変調信号を生成するRF(Radio Frequency)信号発生源が接続された信号電極が形成され、他の一方の上には接地電位を与える接地電極が形成される。一般的に、コプレーナ電極の場合、信号電極を軸に対称な電極構造を有しており、接地電極は信号電極を挟んだ側にも形成される。信号電極と接地電極の間に電圧を与えると、光導波路に電界がかかり光導波路の屈折率が変化する。これによって、一対の光導波路を伝播する光の位相差が変わり、位相差がゼロの時は光出力が論理的レベル1、位相差がπの時は光出力が論理レベル0となる。
【0004】
このような変調を実現するうえで、この信号電極に印加されるRF信号の動作点(直流バイアス成分)を制御するために、バイアスTを用いて高速のRF信号に直流電圧を重畳させる手段があるがコストアップ等が生じる。また、10GHz以上の高速信号で駆動する光変調器を実現する場合、帯域に制限がかかるバイアスTの使用は困難になる。よって、この信号電極に印加されるRF信号の動作点(直流バイアス成分)を制御するためのバイアス電圧を印加するバイアス電極を設け、このバイアス電極を、信号電極が設けられるマッハツェンダ型光導波路の直線部分と異なる直線部分の上に設ける光変調器がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、上記構造の場合、バイアス電極を信号電極の横に、光導波路の光の進行方向に設置するので、光変調器のチップ長が長くなってしまう。この解決策として、バイアス電極を信号電極に並行して信号電極の近傍に設置する光変調器が示されている。(例えば、特許文献2参照。)しかし、本光変調器の構造では、バイアス電極と接地電極の短絡する可能性が考えられる。
【特許文献1】特開2003−233042号公報
【特許文献2】特開平10−54961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上記載したように、高速信号を駆動する光変調器では信号電極とバイアス電極を備える構造が有効である。
【0007】
本発明では、小型化を図ることによって懸念されるバイアス電極と接地電極の短絡を抑制すると共に、高周波の伝送特性を確保できる光変調器の提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、一対の光導波路の上に電極を備えるマッハツェンダ型の光変調器であって、該電極は該光導波路の伝播する光を変調するための変調信号が印加される信号電極と、接地電位を与える接地電極と、該変調信号の動作点を制御するための電圧が印加されるバイアス電極から構成され、該接地電極は該信号電極の両側に設置され、該両側の一方の第一の接地電極は該一対の光導波路の何れか一方の上に設置され、該バイアス電極が、該第一の接地電極の近傍で該信号電極と異なる側に設置され、該接地電極の厚さは該信号電極の厚さよりも厚いことを特徴とする光変調器である。
【0009】
この第1の態様によれば、接地電極をバイアス電極の上方に形成することがないのでバイアス電極と接地電極の短絡する可能性を抑制することができ、また接地電極の厚さを厚くすることにより高周波の伝送特性を確保できる光変調器を提供することが可能となる。
【0010】
本発明の第2の態様は、一対の光導波路の上に電極を備えるマッハツェンダ型の光変調器であって、該電極は該光導波路の伝播する光を変調するための変調信号が印加される信号電極と、接地電位を与える接地電極と、該変調信号の動作点を制御するための電圧が印加されるバイアス電極から構成され、該接地電極は該信号電極の両側に設置され、該両側の一方の第一の接地電極は該一対の光導波路の何れか一方の上に設置され、該バイアス電極が、該第一の接地電極の近傍で該信号電極と異なる側に設置され、該バイアス電極は該基板の表面に設置され、該第一の接地電極は該バイアス電極を挟んで梯子状の電極を、該基板の表面に形成されるバッファ層の上に形成することを特徴とする光変調器である。
【0011】
この第2の態様によれば、バイアス電極の上にバッファ層を形成しその上に梯子上の接地電極を設けるのでバイアス電極と接地電極の短絡する可能性を抑制することができ、また接地電極を梯子上にすることにより接地電極のバッファ層に接する面積が広くなるので高周波の伝送特性を確保できる光変調器を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光変調器は、光導波路の上に設けられる接地電極とその接地電極の近傍に設けられるバイアス電極の短絡する可能性を抑制することができ、またその接地電極の厚さもしくはバッファ層に接する面積を広くすることができるので高周波の伝送特性を確保できる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以降、図面を併用して本発明の詳細を説明する。なお、図面において同一のものまたは類似するものについては同一の符号を記載する。
(実施例1)
図1は本発明の光変調器を説明する図(1)である。例えば、LNをその結晶軸方向のZ軸に平行となるようにカットした(Zカット)基板11の上に、Tiなどによって金属膜を形成し熱拡散することによって光導波路12を形成している。このZカットした基板11は、電気光学効果により効率的にその表面に垂直な方向に屈折率を変化できる結晶軸を有している。光導波路12は、光が入射される光導波路121、光を分岐するY分岐光導波路122、分岐された光を伝播する平行な直線光導波路123,124、直線導波路123,124からの光を合波するY分岐光導波路125、そして光が出射される光導波路126によりマッハツェンダ型の光導波路12を構成している。
【0014】
光導波路12が形成された基板11の上の全面に、一般的に0.2〜1μmの厚さのバッファ層16を形成する。
【0015】
直線光導波路123のバッファ層16を介した上には信号電極14を形成し、直線光導波路124のバッファ層16を介した上には接地電極132を形成し、信号電極14を挟んで対称になるように接地電極131を形成する。そして、接地電極132の近傍で信号電極14が形成される領域とは異なる側にバイアス電極15を形成する。
【0016】
信号電極14には変調信号を生成するRF信号源17を接続する。バイアス電極15には電源18を接続し、RF信号源17が生成する変調信号の動作点(直流バイアス電圧)を制御することによって、直線導波路123,124を伝播する光の位相を制御する。
【0017】
接地電極131,132には接地電位を与える。
【0018】
図2は図1の切断面を説明する図(その1)である。図1のA−B間における切断面を表している。
【0019】
例えば、電気光学効果を有する材料であるLNを結晶軸方向であるZ軸に平行になるようにカットした基板11に、マッハツェンダ型光導波路の一対の光導波路123,124が形成されている。光導波路123,124が形成された基板11の上にバッファ層16を設けている。
【0020】
光導波路123の上には信号電極14を設け、光導波路124の上には接地電極132を設け、信号電極14を挟んで対称となるように接地電極131を設けている。そして、バイアス電極15を接地電極132の近傍に、信号電極14が設けられている領域とは異なる側に設けている。
【0021】
光導波路123と光導波路124の間にかかる電界は、接地電極131,132によって与えられる接地電位を基準とした信号電極14によって与えられる変調信号の電位によって決定される。そして、光導波路124にかかる電界には、バイアス電極15によって直流電位が与えられる。よって、変調信号の動作点(直流バイアス電圧)はバイアス電極15に印加されるバイアス電圧によって制御できる。
【0022】
よって、本実施例によれば、一対の光導波路の進行方向に直交する方向において、信号電極とバイアス電極を形成することができるため、光変調器の小型化を実現することができ、信号電極とバイアス電極の短絡を抑制し、小型化を図ることが可能となる。
(実施例2)
図3は図1の切断面を説明する図(その2)である。図1のA−B間における切断面を表している。
【0023】
この図3に示す光変調器は、前述の実施例1の光変調器に比べて、接地電極131,132の厚さが信号電極14の厚さに比べて厚い場合を示している。
【0024】
本実施例によれば、上述の実施例1に比べて接地電極の厚さが厚くなり接地電極の断面積が広くなったため、光変調器の接地抵抗が小さくなり、光変調器の接地電位における高周波雑音を、接地電極を介して外部に導電し易くなり、高周波の伝送特性を確保することが可能となる。
(実施例3)
図4は本発明の光変調器を説明する図(2)である。
【0025】
図5は図4の切断面を説明する図である。図4のA−B間における切断面を(a)に、A´−B´間における切断面を(b)に表している。
【0026】
図4、図5に示す光変調器は、前述の実施例1の図1に比べて接地電極231,232、およびバイアス電極25が異なっている。
【0027】
例えば、接地電極232の厚さは信号電極24の厚さに比べて厚くなっており、接地電極232に厚さ方向の力が加わった場合、接地電極232が倒壊してバイアス電極25と短絡することが考えられる。この接地電極232とバイアス電極25の短絡を抑制するために、接地電極232のバイアス電極25側に突起物を設ける。また、バッファ層に接する面積を広くするために、この突起物を複数設ける。
【0028】
この接地電極232の突起物に挟まれた領域に、バイアス電極25の一部を形成する。
【0029】
また、接地電極232が突起物によりバッファ層に接する面積が広くなったので、接地電極231を信号電極24に対して対称性を持たせるために接地電極231のバッファ層に接する面積を広くする。
【0030】
図5の(1)に示す図4の切断箇所は接地電極232に突起物が無くその突起物に挟まれた部分であり、バイアス電極25が接地電極232側にせり出ている。
【0031】
図5の(2)に示す図4の切断箇所は接地電極232に突起物が形成されている部分である。
(実施例4)
図6は本発明の光変調器を説明する図(3)である。
【0032】
図7は図6の切断面を説明する図である。図6のA−B間における切断面を(a)に、A´−B´間における切断面を(b)に表している。
【0033】
図6、図7に示す光変調器は、前述の実施例3の図4に比べて接地電極332、バイアス電極35が異なっている。
【0034】
接地電極332の突起物を隣り合う突起物と金属線333によって接続している。
【0035】
図7の(a)に示す図6の切断箇所は接地電極332に突起物が無くその突起物に挟まれた部分であり、バイアス電極35が接地電極332側にせり出ている。金属線333はバイアス電極35の上において突起物を接続している。
【0036】
図7の(b)に示す図6の切断箇所は接地電極332に突起物が形成されている部分である。
【0037】
上述の実施例3,4によれば、接地電極232,332に突起物を形成することによって接地電極232,332とバイアス電極25,35との短絡を抑制することができる。また、接地電極232,332の厚さ、バッファ層16と接する面積が広くなり、接地電極231,331のバッファ層16と接する面積も広くなるので、光変調器の接地電位における高周波雑音を、接地電極を介して外部に導電し易くなり、高周波の伝送特性を確保することが可能となる。
(実施例5)
図8は本発明の光変調器を説明する図(4)である。例えば、LNをその結晶軸方向のZ軸に平行となるようにカットした基板11の上に、Tiなどによって金属膜を形成し熱拡散することによって光導波路12を形成している。このZカットした基板11は、電気光学効果により効率的にその表面に垂直な方向に屈折率を変化できる結晶軸を有している。光導波路12は、光が入射される光導波路121、光を分岐するY分岐光導波路122、分岐された光を伝播する平行な直線光導波路123,124、直線導波路123,124からの光を合波するY分岐光導波路125、そして光が出射される光導波路126によりマッハツェンダ型の光導波路12を構成している。
【0038】
光導波路12が形成された基板11の上の全面に、一般的に0.2〜1μmの厚さのバッファ層16を形成する。
【0039】
直線光導波路123のバッファ層16を介した上には信号電極44を形成し、直線光導波路124のバッファ層16を介した上には接地電極432を形成し、信号電極14を挟んで対称になるように接地電極431を形成する。そして、直線導波路124の近傍で信号電極44が形成される領域とは異なる側にバイアス電極45を基板11の上に形成し、バイアス電極45の上にバッファ層16を形成する。バッファ層16を介した上に形成される接地電極432は、バイアス電極45を挟む様に梯子状の構造にし、梯子状の横木部分の下にバイアス電極45が在るように設ける。
【0040】
信号電極44には変調信号を生成するRF信号源17を接続する。バイアス電極45には電源18を接続し、RF信号源17が生成する変調信号の動作点(直流バイアス電圧)を制御することによって、直線導波路123,124を伝播する光の位相を制御する。
【0041】
接地電極431,432には接地電位を与える。
【0042】
図9は図8の切断面を説明する図(その1)である。図8のA−B間における切断面を(a)に、A´−B´間における切断面を(b)に表している。
【0043】
例えば、電気光学効果を有する材料であるLNを結晶軸方向であるZ軸に平行になるようにカットした基板11に、マッハツェンダ型光導波路の一対の光導波路123,124が形成されている。光導波路123,124が形成された基板11の上にバッファ層16を設けている。
【0044】
光導波路123のバッファ層16を介した上には信号電極44を設け、光導波路124のバッファ層16を介した上には接地電極432を設け、信号電極44を挟んで対称となるように接地電極431を設けている。そして、光導波路124の近傍に、信号電極14が設けられている領域とは異なる側にバイアス電極45を設けている。バイアス電極45は基板11の上に形成し、その上にバッファ層16を形成している。
【0045】
図9の(a)に示す図8の切断箇所は梯子状の接地電極432の横木部分が無い領域であり、バイアス電極45を挟んで両側に接地電極432を形成している。
【0046】
図9の(b)に示す図8の切断箇所は梯子状の接地電極432の横木部分が有る領域であり、バイアス電極45の上にも接地電極432を形成している。
【0047】
よって、本実施例によれば、一対の光導波路の進行方向に直交する方向において、信号電極とバイアス電極を形成することができるため、光変調器の小型化を実現することができ、信号電極とバイアス電極の短絡を抑制し、小型化を図ることが可能となる。また、接地電極を梯子状にすることで接地電極の断面積を広くすることができ、光変調器の接地電位における高周波雑音を、接地電極を介して外部に導電し易くなり、高周波の伝送特性を確保することが可能となる。
【0048】
ここで、梯子状の接地電極432の横木部分の幅を小さくすれば、接地電極432とバイアス電極45の短絡の抑制に効果的である。
(実施例6)
図10は図8の切断面を説明する図(その2)である。図8のA−B間における切断面を(a)に、A´−B´間における切断面を(b)に表している。
【0049】
この図10に示す光変調器は、前述の実施例5の変調器に比べて、バイアス電極45の上のバッファ層16の厚さが他の領域のバッファ層16の厚さと同じになるようにバッファ層16を形成している。
【0050】
本実施例によれば、上述の実施例5に比べて、バイアス電極45と梯子状の接地電極432の横木部分との短絡の抑制を高めることができる。また、バイアス電極45の上に絶縁材料を被せることによって、バイアス電極45と梯子状の接地電極432の横木部分との短絡の抑制を更に高めることができる。
(実施例7)
図11は本発明の光変調器を説明する図(5)である。
【0051】
図12は図11の切断面を説明する図である。図11のA−B間における切断面を(a)に、A´−B´間における切断面を(b)に表している。
【0052】
例えば、LNをその結晶軸方向のZ軸に平行となるようにカットした基板51の上に、Tiなどによって金属膜を形成し熱拡散することによって光導波路12を形成している。このZカットした基板51は、電気光学効果により効率的にその表面に垂直な方向に屈折率を変化できる結晶軸を有している。光導波路12は、光が入射される光導波路121、光を分岐するY分岐光導波路122、分岐された光を伝播する平行な直線光導波路123,124、直線導波路123,124からの光を合波するY分岐光導波路125、そして光が出射される光導波路126によりマッハツェンダ型の光導波路12を構成している。
【0053】
基板51には溝511,512,513,514を形成し、各溝は光の損失を減らすように溝の両端をテーパ状に成型している。これらの溝はパターニングし、エッチングすることによって形成できる。
【0054】
光導波路12、溝511,512,513,514が形成された基板51の上に、一般的に0.2〜1μmの厚さのバッファ層56を形成する。溝511,512,513,514の側面上の荒れによる光の散乱損失を低減するために、これらの溝の側面にもバッファ層56を形成しており、前記の一般的な厚さよりも厚めにし、0.4〜1.5μmにすることが望ましい。
【0055】
直線光導波路123のバッファ層56を介した上には信号電極54を形成し、直線光導波路124のバッファ層56を介した上には接地電極532を形成し、信号電極54を挟んで対称になるように接地電極531を形成する。そして、バイアス電極55を、直線導波路124の近傍で信号電極54が形成される領域とは異なる側の溝511の下で、基板11の上に形成し、バイアス電極55の上にバッファ層56を形成する。バッファ層56を介した上に形成される接地電極532は、バイアス電極55を挟む様に梯子状の構造にする。また、接地電極531も対称性を維持するために梯子状の構造にする。
【0056】
このように、コプレーナ型の光変調器の場合、電極、溝において信号電極54に対して対象に配置し、信号電極54の下の光導波路123にかかる電界への印加効率を向上させている。
【0057】
なお、溝511をバイアス電極55が設置される領域に、溝512を一対の光導波路123,124の間に、溝513を光導波路123の近傍に、そして溝514を梯子状の接地電極531の横木部分の領域にそれぞれ形成する。
【0058】
信号電極54には変調信号を生成するRF信号源17を接続する。バイアス電極55には電源18を接続し、RF信号源17が生成する変調信号の動作点(直流バイアス電圧)を制御することによって、直線導波路123,124を伝播する光の位相を制御する。
【0059】
接地電極531,532には接地電位を与える。
【0060】
なお、バイアス電極55はバッファ層56の下に形成しているので、バッファ層56の一部にスルーホール561を形成し、バイアス電極55はこのスルーホールを通ってバッファ層56の表面に出て電源18と接続される。
【0061】
図11、図12に示す光変調器は、前述の実施例5の図8、図9に示す変調器に比べて、接地電極531も接地電極532と同様に梯子状の構造を有しており、基板51に溝511,512,513,514を設けている。バイアス電極55を溝511に形成している。
【0062】
本実施例によれば、上述の実施例5に比べて、溝511を設け、そこにバイアス電極55を形成することによって、バイアス電極55と梯子状の接地電極532の横木部分との短絡の抑制を高めることができる。また、接地電極531も梯子状にすることによって、バッファ層56と接する面積が広くなるので、高周波の伝送特性を確保し易くなる。
【0063】
また、溝511,512,513,514を設けることによって光導波路123,124にかかる電界への印加効率が向上している。また、信号電極54に対する接地電極531,532の対称性が向上し、同様に信号電極54に対称に形成された溝511,512,513,514によって、信号電極54の下の光導波路123にかかる電界への印加効率がさらに向上している。
(実施例8)
図13は本発明の光変調器を説明する図(6)である。例えば、LNをその結晶軸方向のZ軸に平行となるようにカットした基板61の一部に分極反転させた領域(分極反転領域62)を有する基板61の上に、Tiなどによって金属膜を形成し熱拡散することによって光導波路12を形成している。このZカットした基板61は、電気光学効果により効率的にその表面に垂直な方向に屈折率を変化できる結晶軸を有している。光導波路12は、光が入射される光導波路121、光を分岐するY分岐光導波路122、分岐された光を伝播する平行な直線光導波路123,124、直線導波路123,124からの光を合波するY分岐光導波路125、そして光が出射される光導波路126によりマッハツェンダ型の光導波路12を構成している。
【0064】
直線光導波路123,124を形成している領域には、分極反転領域62と分極反転領域62でない領域の両方になるように、分極反転領域62を設ける。
【0065】
直線光導波路123,124のバッファ層66を介した上には、信号電極64が直線光導波路123,124の両方の上に位置するように形成する。
【0066】
接地電極631,632も同様に、直線光導波路123,124のバッファ層66を介した上に、直線光導波路123,124の両方の上に位置するように形成する。接地電極631,632はバッファ層66と接する面積を広くして、接地面積の断面積を広くできるように梯子状の構造にする。
【0067】
信号電極64には変調信号を生成するRF信号源17を接続する。
【0068】
上記により、信号電極64に印加される変調信号による電界が直線導波路123,124にかかり、分極反転領域62と分極反転領域62でない領域における屈折率の変化が反対向きになる。
【0069】
バイアス電極651,652は直線光導波路123,124の両方において、RF信号源17が生成する変調信号の動作点(直流バイアス電圧)を制御し直線導波路123,124を伝播する光の位相を制御できるように、直線光導波路123,124の両方の近傍に設ける。また、バイアス電極651,652は、基板61、反転分極領域62に形成する溝611,612に形成する。溝611,612に設けたバイアス電極651,652はバッファ層66の下に形成しているので、バッファ層66に設けたスルーホール661,662を通ってバッファ層66の上面に出てバイアス電極65に接続し、電源18と接続される。
【0070】
よって、本実施例によれば、反転分極領域を含んだ基板はZカット基板であるため、信号電極、接地電極、バイアス電極によって印加される一対の光導波路への電界を効果的にかけることができる。また、一対の光導波路を伝播する光の位相変化が、符号が互いに逆になり絶対値が等しくなるのでゼロチャープの変調が可能となる光変調器においても、一対の光導波路の進行方向に直交する方向において、信号電極とバイアス電極を形成することができるため、光変調器の小型化を実現することができ、接地電極を梯子状の構造にすることで、接地電極の断面積が広くなったため、光変調器の接地電位における高周波雑音を、接地電極を介して外部に導電し易くなり、高周波の伝送特性を確保することが可能となる。
【0071】
図14は光変調器の高周波特性を説明する図である。横軸に高周波信号周波数を、縦軸に入力側から出力側に向かう光信号の減衰量S21を示している。グラフ(b)は接地電極が弱い場合であり、グラフ(a)は上記に述べた接地電極を採用した場合であり、広帯域特性の確保が可能となる。
【0072】
上述の実施例5以降において、梯子状の構造を有した接地電極において、例えば図8の接地電極432、図11の接地電極532において、直線光導波路上の接地電極の幅(例えば、図9のw1)と他の接地電極の幅(例えば、図9のw2)では、w2がw1より広いほうが広帯域で接地の効果が大きい。また、この梯子状の横木部分の間隔(例えば、図8のS)が広いほうが、そしてこの横木部分の幅(例えば、図8のP)が狭いほうがバイアス電極と接地電極の短絡を抑制できる。しかしながら、40Gビット/秒等の超高速な光変調器において高周波特性を確保するためには、この接地電極の梯子状の横木部分の間隔は10mm以下とし、この横木部分の幅は5μm以上とすることが望ましい。
【0073】
以上の実施例1〜8を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0074】
(付記1) 一対の光導波路の上に電極を備えるマッハツェンダ型の光変調器であって、
該電極は該光導波路の伝播する光を変調するための変調信号が印加される信号電極と、接地電位を与える接地電極と、該変調信号の動作点を制御するための電圧が印加されるバイアス電極から構成され、
該接地電極は該信号電極の両側に設置され、該両側の一方の第一の接地電極は該一対の光導波路の何れか一方の上に設置され、
該バイアス電極が、該第一の接地電極の近傍で該信号電極と異なる側に設置され、
該接地電極の厚さは該信号電極の厚さよりも厚いことを特徴とする光変調器。
【0075】
(付記2) 一対の光導波路の上に電極を備えるマッハツェンダ型の光変調器であって、
該電極は該光導波路の伝播する光を変調するための変調信号が印加される信号電極と、接地電位を与える接地電極と、該変調信号の動作点を制御するための電圧が印加されるバイアス電極から構成され、
該接地電極は該信号電極の両側に設置され、該両側の一方の第一の接地電極は該一対の光導波路の何れか一方の上に設置され、
該バイアス電極が、該第一の接地電極の近傍で該信号電極と異なる側に設置され、
該バイアス電極は該基板の表面に設置され、
該第一の接地電極は該バイアス電極を挟んで梯子状の電極を、該基板の表面に形成されるバッファ層の上に形成することを特徴とする光変調器。
【0076】
(付記3) 付記1の光変調器であって、
前記の接地電極の前記のバッファ層と接する面において、該接地電極は前記のバイアス電極側に突起物を有し、該突起物で挟まれた領域に該バイアス電極の一部が形成されることを特徴とする光変調器。
【0077】
(付記4) 付記3の光変調器であって、
2以上の前記の突起物は、隣り合う該突起物ごとに金属線によって接続されていることを特徴とする光変調器。
【0078】
(付記5) 付記2の光変調器であって、
前記の一対の光導波路が形成される基板には、前記のバイアス電極を設置する領域に第一の溝を形成し、該一対の光導波路によって挟まれる領域に第二の溝を形成し、前記の信号電極の近傍で、該第二の溝が形成される領域とは異なる側の領域に第三の溝を形成し、
該バイアス電極は該第一の溝に設置され、
前記の第一の接地電極は該バイアス電極を挟んで梯子状の電極を形成することを特徴とする光変調器。
【0079】
(付記6) 付記2の光変調器であって、
前記の梯子状の接地電極において、前記の光導波路の上にない接地電極の幅は、該光導波路の上にある該接地電極の幅よりも広いことを特徴とする光変調器。
【0080】
(付記7) 付記2の光変調器であって、
前記の梯子状の接地電極において、梯子状の横木部分の電極間隔は10mm以下であることを特徴とする光変調器。
【0081】
(付記8) 付記2の光変調器であって、
前記の梯子状の接地電極において、梯子状の横木部分の幅は5μm以上であることを特徴とする光変調器。
【0082】
(付記9) 付記1もしくは付記2の光変調器であって、
前記の基板はZカット基板であることを特徴とする光変調器。
【0083】
(付記10) 付記1もしくは付記2の光変調器であって、
前記の基板はニオブ酸リチウム(LiNbO)であることを特徴とする光変調器。
【0084】
(付記11) 電気光学効果を有する基板に一対の光導波路の上に電極を備えるマッハツェンダ型の光変調器であって、
該基板の一部が分極反転した基板であり、
該電極は該光導波路の伝播する光を変調するための変調信号が印加される信号電極と、接地電位を与える接地電極と、該変調信号の動作点を制御するための電圧が印加されるバイアス電極から構成され、
該接地電極は該バイアス電極を挟んで梯子状の電極を形成することを特徴とする光変調器。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の光変調器を説明する図(1)
【図2】図1の切断面を説明する図(その1)
【図3】図1の切断面を説明する図(その2)
【図4】本発明の光変調器を説明する図(2)
【図5】図4の切断面を説明する図
【図6】本発明の光変調器を説明する図(3)
【図7】図6の切断面を説明する図
【図8】本発明の光変調器を説明する図(4)
【図9】図8の切断面を説明する図(その1)
【図10】図8の切断面を説明する図(その2)
【図11】本発明の光変調器を説明する図(5)
【図12】図11の切断面を説明する図
【図13】本発明の光変調器を説明する図(6)
【図14】光変調器の高周波特性を説明する図
【符号の説明】
【0086】
11 基板
12,121,122,123,124,125,126 光導波路
131,132 接地電極
14 信号電極
15 バイアス電極
16 バッファ層
17 RF信号源
18 電源
231,232 接地電極
24 信号電極
25 バイアス電極
331,332 接地電極
333 金属線
34 信号電極
35 バイアス電極
431,432 接地電極
44 信号電極
45 バイアス電極
51 基板
511,512,513,514 溝
531,532 接地電極
54 信号電極
55 バイアス電極
56 バッファ層
561 スルーホール
61 基板
611,612 溝
631,632 接地電極
64 信号電極
65,651,652 バイアス電極
66 バッファ層
661,662 スルーホール


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の光導波路の上に電極を備えるマッハツェンダ型の光変調器であって、
該電極は該光導波路の伝播する光を変調するための変調信号が印加される信号電極と、接地電位を与える接地電極と、該変調信号の動作点を制御するための電圧が印加されるバイアス電極から構成され、
該接地電極は該信号電極の両側に設置され、該両側の一方の第一の接地電極は該一対の光導波路の何れか一方の上に設置され、
該バイアス電極が、該第一の接地電極の近傍で該信号電極と異なる側に設置され、
該接地電極の厚さは該信号電極の厚さよりも厚いことを特徴とする光変調器。
【請求項2】
一対の光導波路の上に電極を備えるマッハツェンダ型の光変調器であって、
該電極は該光導波路の伝播する光を変調するための変調信号が印加される信号電極と、接地電位を与える接地電極と、該変調信号の動作点を制御するための電圧が印加されるバイアス電極から構成され、
該接地電極は該信号電極の両側に設置され、該両側の一方の第一の接地電極は該一対の光導波路の何れか一方の上に設置され、
該バイアス電極が、該第一の接地電極の近傍で該信号電極と異なる側に設置され、
該バイアス電極は該基板の表面に設置され、
該第一の接地電極は該バイアス電極を挟んで梯子状の電極を、該基板の表面に形成されるバッファ層の上に形成することを特徴とする光変調器。
【請求項3】
請求項1の光変調器であって、
前記の接地電極の前記のバッファ層と接する面において、該接地電極は前記のバイアス電極側に突起物を有し、該突起物で挟まれた領域に該バイアス電極の一部が形成されることを特徴とする光変調器。
【請求項4】
請求項3の光変調器であって、
2以上の前記の突起物は、隣り合う該突起物ごとに金属線によって接続されていることを特徴とする光変調器。
【請求項5】
請求項2の光変調器であって、
前記の一対の光導波路が形成される基板には、前記のバイアス電極を設置する領域に第一の溝を形成し、該一対の光導波路によって挟まれる領域に第二の溝を形成し、前記の信号電極の近傍で、該第二の溝が形成される領域とは異なる側の領域に第三の溝を形成し、
該バイアス電極は該第一の溝に設置され、
前記の第一の接地電極は該バイアス電極を挟んで梯子状の電極を形成することを特徴とする光変調器。
【請求項6】
請求項2の光変調器であって、
前記の梯子状の接地電極において、前記の光導波路の上にない接地電極の幅は、該光導波路の上にある該接地電極の幅よりも広いことを特徴とする光変調器。
【請求項7】
請求項2の光変調器であって、
前記の梯子状の接地電極において、梯子状の横木部分の電極間隔は10mm以下であることを特徴とする光変調器。
【請求項8】
請求項2の光変調器あって、
前記の梯子状の接地電極において、梯子状の横木部分の幅は5μm以上であることを特徴とする光変調器。
【請求項9】
請求項1もしくは請求項2の光変調器であって、
前記の基板はZカット基板であることを特徴とする光変調器。
【請求項10】
請求項1もしくは請求項2の光変調器であって、
前記の基板はニオブ酸リチウム(LiNbO)であることを特徴とする光変調器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−46573(P2008−46573A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224778(P2006−224778)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】