説明

光学イメージング

注目対象物101を検査する光学イメージング装置100であって、その光学イメージング装置100は、注目対象物101上に1次光学放射線ビームを放出するよう構成される光学放射線源102と、上記1次光学放射線ビームを吸収する際、注目対象物101により放出される2次光学放射線ビームを検出するよう構成される光学放射線検出器106と、注目対象物101の拡張部に沿って変化する非一様な磁場を生成するよう構成される磁場生成要素107と、非一様な磁場の解析と検出された2次光学放射線ビームの解析とに基づき、注目対象物101に関する情報を決定するよう構成される決定ユニット108とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学イメージングの分野に関する。特に、本発明は、光学イメージング装置及び方法、プローブ、プローブの使用、コンピュータ可読媒体、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、光学イメージングの分野に関する。特に、本発明は、光学イメージング装置及び方法、プローブ、プローブの使用、コンピュータ可読媒体、及びプログラムに関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
懸濁媒質(例えば組織)における蛍光イメージングは、励起光と放出された蛍光との強い散乱が原因で空間分解能が比較的低いという事実に苦しむ場合がある。
【0004】
本発明の目的は、適切な分解能での光学イメージングを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、独立項に基づく特徴を備える光学イメージング装置、プローブ、プローブの使用、光学イメージング方法、コンピュータ可読媒体、及びプログラムが提供される。
【0006】
本発明の例示的な実施形態によれば、注目対象物の検査のための光学イメージング装置が提供される。その光学イメージング装置は、上記注目対象物上に1次光学放射線ビームを放出する光学放射線源(又は複数の光学放射線源)と、上記1次光学放射線ビームを吸収するとき上記注目対象物により放出される2次光学放射線ビームを検出する光学放射線検出器(又は複数の光学放射線検出器)と、上記注目対象物の拡張部に沿って変化する非一様な磁場を生成する磁場生成要素と、上記非一様な磁場の解析と上記検出された2次光学放射線ビームの解析とに基づき、上記注目対象物に関する情報を決定する決定ユニットとを有する。
【0007】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、調査対象の注目対象物に取り付け可能なプローブが与えられる。そのプローブは、1次光学放射線を吸収するドナーと、上記ドナーによる上記1次光学放射線の吸収のとき、2次光学放射線を放出するアクセプタとを有し、上記2次光学放射線の少なくとも1つの特性が上記プローブの位置での磁場強度に依存するという態様で、上記ドナー及び上記アクセプタが構成される。
【0008】
更に、本発明の例示的な実施形態によれば、上述した特徴を持つプローブが、注目対象物の拡張部に沿って変化する非一様な磁場を印加する光学イメージング方法を用いて上記注目対象物を検査するのに使用される。
【0009】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、注目対象物を検査する光学イメージング方法が与えられる。その方法は、上記注目対象物の拡張部に沿って変化する非一様な磁場を生成するステップと、上記注目対象物上に1次光学放射線ビームを放出するステップと、上記1次光学放射線ビームを吸収するとき、上記注目対象物により放出される2次光学放射線ビームを検出するステップと、上記非一様な磁場の解析と上記検出された2次光学放射線ビームの解析とに基づき、上記注目対象物に関する情報を決定するステップとを有する。
【0010】
本発明の更に別の例示的な実施形態によれば、コンピュータ可読媒体が与えられる。その中には注目対象物を検査するコンピュータプログラムが格納されており、そのコンピュータプログラムは、プロセッサにより実行されるとき、上述のステップを制御又は実行するよう構成される。
【0011】
本発明のまた別の例示的な実施形態によれば、注目対象物を検査するプログラムが与えられ、そのプログラムは、プロセッサにより実行されるとき、上述のステップを制御又は実行するよう構成される。
【0012】
本発明による注目対象物のイメージングは、コンピュータプログラム、即ちソフトウェアにより、1つ又は複数の特殊な電子最適化回路、即ちハードウェアを用いることにより、又はそのハイブリッド形式により、即ちソフトウェア要素とハードウェア要素とを用いることにより、実現されることができる。
【0013】
本発明による特徴的な機能は、組織のような懸濁媒質内でもイメージングを可能にする光学イメージングシステムが与えられるという利点を特に持つ。なぜなら、新規な種類のプローブ、新規な種類の光学イメージング方法、特に変調磁場を用いて高分解能を可能にする光学蛍光イメージング方法が与えられるからである。本発明の1つの側面によれば、光学的な光で照射されたプローブの蛍光が、外部的に印加された磁場により変調される。
【0014】
本発明の例示的な実施形態によるプローブ分子は、以下の特性を備えるドナー及びアクセプタエンティティを含むことができる。もしドナーが光学的に励起されると、電子がアクセプタに移され、その結果、一重項状態の電荷移動錯体を生じさせる。この錯体は、外部磁場の強度及び/又は方向に基づくレートで三重項状態にクロスオーバすることができる。三重項及び一重項の両方の状態は、個別の崩壊経路(decay channel)を持つことができる。崩壊経路により、励起エネルギーが、その環境に移動される。例えば、一重項状態は、蛍光放射線を支配的に放出することができ、三重項状態は、リン光放射線を支配的に放出することができる。
【0015】
スペクトル及び/又は生存期間により「リン光」とは「蛍光」とは区別されることができる。リン光及び蛍光は共に放射エネルギー又は他のタイプのエネルギーを吸収した後、特定の物質により生成される電磁放射線であると考えられることができる。
【0016】
一重項状態が主に蛍光を放出し、三重項状態が主にリン光を放出すると仮定すると、蛍光及びリン光の貢献を記録することにより、一重項及び三重項状態の分布(population)が測定されることができる。システム間交差率は、磁場に依存する場合があるので、蛍光/リン光信号もまた磁場に依存する場合がある。この効果は、本発明によれば、ある種の空間分解能を提供する非一様な磁場を用いてプローブの分布を放出するのに使用される。
【0017】
しかしながら、磁気共鳴イメージング(MRI)と比べると、本発明に基づき用いられる必要磁場強度は非常に低い。システム間交差率で磁場の影響を飽和させるには、地磁場のオーダーにある磁場で十分とすることができる。結果的に、高い空間分解能を実現するのに必要とされる傾斜が容易に生成される。
【0018】
地磁場を遮蔽するシールド手段が可能であるが、錯乱効果に対する手段として絶対に必要なものというわけではない。時間変化する散乱磁場を抑圧するシールド手段を提供することの方がより重要である場合がある。より一般的に言えば、外部散乱磁場の補償が有利な場合がある。
【0019】
本発明の例示的な実施形態によれば、地磁場又は他の散乱磁場、特に時間変化する磁場の影響を削減又は除去するために、光学イメージング装置の周りに配置されることができる磁場シールド要素又は補償要素が与えられる。これは、そのシステムの感度及び精度を明らかに改善することができる。
【0020】
オプションで、本発明により調査されることができる注目する生体構造に対してそのプローブをターゲットとする追加的な分子(例えば抗体)がプローブに結合されることができる。
【0021】
上述された特性を持つ分子、即ちその分布及び遷移特性が印加磁場に依存する一重項状態及び三重項状態を持ち、かつアクセプタ及びドナーを持つような分子はそのようなものとして知られている(例えば、Grampp, G.その他(2002)による「Electron self-exchange kinetics in the system pyrene/dicyanobenzene isomers determined by MARY spectroscopy」、RIKEN Review、No.44、82〜84頁、Ritz, T.その他(2000)による「A Model for Photoreceptor-Based Magnetoreception in Birds」、Biophysical Journal、Vol.78、707〜718頁)。例えば、ピレン−ジシアノベンゼン(pyrene-dicyanobenzen)励起錯体、又はルテニウム(II)−トリビピリジン(trisbipyridine)が、斯かる分子システムに対する例である。ある鳥における磁気受容(magnetoreception)が上述の効果に非常に基づかれると考えられる。
【0022】
(陽電子放出断層撮影PETに匹敵するか、それより良いという意味で)高感度の分子イメージングが実現されることができる。しかしながら、放射性プローブは本発明では重要ではない。光学蛍光イメージング/トラッキングに対する高い空間分解能が得られることができる。
【0023】
本発明が適用される例示的な分野は、分子イメージング、組織の光学イメージング、及び懸濁媒質における光学トラッキングである。
【0024】
例えばX線光子といった光学波長での光子は生体組織には有害ではないので、本発明によるシステムは医療用途に適している。なぜなら、本発明による光学イメージングモダリティは、人体組織を決して破壊しないからである。こうして、磁場変調光学プローブ及びイメージング方法が提供されることができる。
【0025】
従って、本発明の側面によれば、光学励起による物質検出が可能とされる。即ち、注目対象物における光学放射線の強い散乱が原因で空間的な情報の検出が困難であるという共通の問題が、注目対象物に対して非一様な磁場を印加して注目対象物の位置を選択することによって克服されることができる。例えば、注目対象物のある特定の位置で、磁場強度が実質的にゼロとなり、他のすべての位置では磁場がゼロではないという態様で、注目対象物に傾斜磁場が印加されることができる。すると、磁場感応蛍光/リン光マーカーにより、減少する磁場を伴う箇所の蛍光/リン光特性が、磁場がゼロでない注目対象物の他のすべての部分の蛍光/リン光特性とは異なることになる。言い換えると、磁場解放ポイントが調査されることできる。(例えば、注目対象物を動かすことにより、又は磁場分布を動かすことにより)この磁場解放ポイントの位置がスキャンされ又はサンプリングされることができる。その結果、磁場解放ポイントは、注目対象物の拡張方向に沿って変化することができる。
【0026】
注目対象物又はその注目対象物に取り付けられるプローブを、連続的な形で、即ち連続的な電磁ビームを適用することにより励起させることが可能である。また、パルス化された態様でサンプルを励起させ、蛍光/リン光信号の時間依存性を測定することができる。リン光放射線は通常の蛍光の時定数(例えばピコ秒からナノ秒)と比べて明らかに長い時定数(例えばマイクロ秒から秒)を持つので、時間領域における解析により蛍光及びリン光の貢献が識別されることができる。連続励起ビームの場合、蛍光/リン光放射線のエネルギー又は周波数解析が可能である。なぜなら、これら2つの異なる放射線貢献での波長は明らかに異なることができるからである。磁場の変調によりもたらされる蛍光又はリン光の減少又は増加を単に測定することも可能である。
【0027】
本発明の1つの側面によれば、励起光の吸収は、励起された一重項状態を生じさせる(populate)。その場合、検出されることが可能な光子の放出の下、励起された一重項状態から基底状態への遷移によりシステムは基底状態に緩和することができる。斯かる光子は蛍光放射線であろう。しかしながら、外部磁場がない場合、励起された一重項状態から、その励起された一重項状態よりエネルギー的には下に位置する励起された三重項状態への遷移は禁止される。その結果、励起された一重項状態から基底状態への直接的な遷移が支配的となる。
【0028】
磁場が存在する場合、励起された一重項状態から励起された三重項状態への遷移率は、磁場の強度及び/又は方向に相関して増加されることができる。その結果、三重項状態が、その励起された一重項状態からの遷移により生じることができる。それから、光子の放出の下、そのシステムは励起された三重項状態から基底状態へと緩和することができる。その場合、この遷移のエネルギー及び/又は時定数が、励起された一重項状態から基底状態への遷移のエネルギー及び/又は時定数とは異なるようにすることができる。これは、両方の崩壊経路を識別することを可能にする。
【0029】
こうして、磁場がスイッチオンされるとき、励起された一重項から基底状態への遷移に関する光子強度が弱められることができ、励起された三重項状態から基底状態への遷移から生じる貢献が一層強くなることができる。これは、注目対象物の位置での磁場分布が知られている又は測定されるという条件の下、その注目対象物における特定の位置へ放射線を割り当てることを可能にする。
【0030】
本発明の1つの例示的な適用分野は、腫瘍検出である。人体における特定の器官に腫瘍が存在すると想定されるとき、磁場感応特性を備えるドナー及びアクセプタが付けられるサンプル含有腫瘍抗体が、この器官における環境に提供されることができる。腫瘍がこの器官内に存在する場合には、ある種のリンカ分子として機能する抗体が腫瘍と結合し、こうしてドナー及びアクセプタ分子が腫瘍の近傍に集積する。ドナー・アクセプタペアにより吸収されることができる光学放射線でこの腫瘍を照射することにより、この腫瘍の領域における磁場を変調することにより、及び蛍光及び/又はリン光放射線の特性を測定することにより、その腫瘍に付けられるプローブを検出することで、その腫瘍は間接的に検出されることができる。
【0031】
注目対象物の位置に磁場分布を生成するための磁場生成デバイスを配置する幾つかの可能性(opportunity)がある。1つの可能性は、マクスウェルコイルとして複数のコンダクタを配置することである。即ち、磁場分布により囲まれるコンダクタ間の中間に磁場解放ポイントが生成されるような態様で配置することである。
【0032】
また、磁場分布を提供するため特殊な形状の永久磁石が使用されることができる。するとこの永久磁石は、その永久磁石により生成される磁場分布が注目対象物の位置に存在するよう、注目対象物に沿ってガイドされることができる。
【0033】
注目対象物をコイル又は永久磁石で囲う必要なしに、注目対象物に置かれることができる複数のコンダクタ、特にコイルの配置を与えることも可能である。これは、例えば医療用途の枠組みにおいて、システムの動作を簡単にすることを可能にすることができる。
【0034】
本発明の1つの側面によれば、注目対象物又は検査時に対象物に挿入される造影剤の光学特性は、磁場に依存すべきである。光学特性の例は、量子収率、吸収及び/又は放出スペクトル、生存期間(これもスペクトル的に分解される)である。
【0035】
検査対象の対象物として、磁場依存光学特性を持つ任意のシステムが使用されることができる。適切なシステムの例は、電荷移動錯体、一重項‐三重項遷移システム、化学発光システム等である。更に、そのシステムは必ずしも2つの分離したエンティティ(ドナー及びアクセプタ)を有していない。全体の処理が1つの分子内で発生することも可能であり、その結果、異なる分子状態が、ドナー及びアクセプタの機能を果たす。
【0036】
本発明の1つの側面によれば、時間分解された測定が実行される。斯かる時間分解測定において、1つ又は複数のパルス化されたレーザが使用されることができる。しかしながら、変調方法を用いて、蛍光及びリン光の存続期間を推定することも可能である。斯かる変調方法の意味において、励起光学放射線は、高周波数で振幅変調されている。その放出の変調及び位相が測定されることができる(いわゆる「周波数領域生存期間測定」)。
【0037】
本発明の例示的な実施形態によれば、拡散光トモグラフィ(DOT)技術に基づかれることができる、測定スペクトルの解析方法が与えられる。この意味において、Gibson、AP、Heden、JC、Arridge、SR(2005)による「Recent advances in diffuse optical imaging」、Phys. Med. Biol. 50(2005)、R1-R43が明示的に参照される。この参照文献において、拡散光イメージングの技術が復習される。そこには、大きな厚みの組織を横切る散乱可視光又は近赤外線光の測定を用いて画像を生成することが含まれることができる。近赤外線光学イメージングの意味において、更に、Hawrysz、DJ、Sevick-Muraca、EM(2000)による「Developments Toward Diagnostic Breast Cancer Imaging Using Near-Infrared Optical Measurement and Fluorescent Contrast Agent」、Neoplasia、Vol.2、No.5、September - October 2000、388-417頁が明示的に参照される。
【0038】
本発明の例示的な実施形態による拡散光トモグラフィ(DOT)システムの意味において、波長が400 nmから1200 nmの間、より詳細には600 nmから1000 nmの間の波長範囲にある光を用いて、強く散乱する媒質が調査されることができる。しかしながら、これらの範囲は、より長い波長及びより短い波長にまで広げられることができる。例えば、トモグラフィック測定が実行されることができる。即ち、光が調査対象の対象物の異なる位置に(例えば、光学ファイバを用いて又は直接的な照射により)挿入され、その対象物により再放出される光が検出されることができる。これは、純粋な強度測定の枠組みを用いて実行されることができるが、(直接的に又は周波数領域において)時間分解又はスペクトル分解測定の枠組みでも実行されることができる。対象物の照射のため1つ又は複数の波長が使用されることができる。調査される組織固有の光学特性に加えて、吸収造影剤又は蛍光造影剤がオプションで対象物に導入されることができる。測定されたデータから、対象物又はその一部についての1つ又は複数の画像がその後再構成される。
【0039】
本発明の例示的な実施形態によれば、拡散光トモグラフィ技術が、特に以下の2つの側面に関してかなり改善されることができる。
【0040】
最初に、解析の分解能が改善されることができる。システム的に印加した磁場がないと、その分解能(対象物の寸法に依存する)は比較的低い場合があり、およそ 10 mmである(例えば、対象物の直径が10 cmの場合)。システム的に印加した磁場があると、実現可能な分解能はかなり改善されることができ、それは磁場の傾斜の大きさに依存することができ、造影剤又は対象物の特性に依存することができる。1 mm及びそれ未満の分解能が可能である。
【0041】
第2に、いわゆる「逆問題(inverse problem)」の処理が改善されることができる。測定データから画像を再構成するとき、いわゆる「逆問題」が解決されなければならない。即ち、拡散等式の解から係数関数を推定することである。この問題は、数値的には解くのが難しい場合がある。これは、一般に画像再構成における重要な原理的な問題である。この理由は、光の拡散的な広がりである。所与の照射及び検出位置に対する感度ボリュームは非常に大きい。即ち、測定に影響を与える対象物の部分は非常に大きい。抽象的に定式化すると、これは非常に滑らかな前進差分演算子である。磁場を印加するとき、感度ボリュームの大きさが、磁場の特性により決定され、調整され及び制限されることができる。特に3つの空間方向すべてにおいて制限される小さなボリュームが選択的に調査されることができ、その結果、上述の問題が解決又は削減されることができる。言い換えると、磁場構成が逆問題の解決可能性を改善するのに使用されることができる。
【0042】
結果として、改善された信号対ノイズ比が達成されることができる。
【0043】
組織における光の伝播は、多くの場合、いわゆる拡散近似を用いて適切に表現されることができる。小さな対象物、又は例えば透明な液体(頭液、脳液)が存在するといった特殊な場合に対しては、当業者が従来技術より知る他の方法が存在する。

【0044】
式(1)において、Φは、局所光子密度を表し、μa及びDはそれぞれ、組織の吸収係数及び拡散係数を表す。q0は、ソース分布を表す。式(1)は、連続的な場合における照射光の伝播のみを表す(時間分解測定に関しては、式(1)は追加的な項を考慮することにより拡張されることができる)。蛍光及び/又はリン光が更に存在するとき、対応する放射線の伝播を表す追加項が追加されるべきである。

【0045】
式(2)の右辺におけるソース項として、対応する生成処理が記載されることができる(上記例の線形蛍光励起において、εはモル吸光係数であり、cは濃度であり、γは蛍光色素の量子収率である)。
【0046】
N個の検出器とM個のソース構成(波長及び空間分布)を実現するため、それぞれi=1,...N、j=1,...Mに対して測定Φi,jが得られる。更にΨi,jが得られる。DOT解析のため、係数関数μa、D、cを測定値から推定するための解が発見されなければならない。
【0047】
しかしながら、別の方法も可能である。
【0048】
係数を直接再構成する代わりに、係数のためのモデルが使用され、そのモデルパラメタが再構成されることができる。複数の波長を用いて測定された後、及び吸収が知られた物質に起因するとき、これは合理的である。

【0049】
この場合、濃度csが再構成されることができる。
【0050】
追加的に磁場を用いるため、磁場構成Φ=Φi,j,kを表す追加的な自由度(インデックス)が存在する。
【0051】
Aがパラメタpに依存するフォワードモデルであり、光強度Φの予測であると仮定される。
A(p) = Φ (4)
【0052】
逆問題は一般に以下のように表されることができる。つまり、測定値yと計算された値との間の偏差が最小になるよう、パラメタpを決定することである。多くの場合、安定性のため、追加的な条件がpのために定式化される(正則化)。即ち、再構成するとき、以下の式

が最小となるような態様で、pが決定される。
【0053】
Rに対しては、

を用いることが可能である。
【0054】
以下において、本発明のシステムによる追加の例示的な実施形態が説明されることになる。
【0055】
次に、光学イメージング装置の例示的な実施形態が説明されることになる。しかしながら、これらの実施形態は、プローブ、プローブの使用、光学イメージング方法、コンピュータ可読媒体及びプログラムにも適用できる。
【0056】
上記光学イメージング装置の磁場生成デバイスは、電流が印加可能な少なくとも1つのコンダクタとして実現されることができる。コンダクタ又は複数のコンダクタの配置は、正確に制御可能又は測定可能な磁場分布を生成することを可能にする。例えば、実質的に特定の位置でのみ磁場を持ち、この位置から離れると減少する電磁場を持つような磁場分布が生成されることができる。一重項及び磁場があるときにだけ生じる三重項を持つプローブシステムを仮定すると、磁場がゼロとは異なるこの特定のポイントが、対応するリン光放射線によりきめ細かく分解されることができる。
【0057】
追加的又は代替的に、上記磁場生成要素は、1つ又は複数の永久磁石として実現されることができる。1つ又は複数の永久磁石の形状又は幾何学分布により、例えば注目対象物を動かすことにより、磁場生成要素を動かすことにより、又は(例えばコンダクタにおける電流分布を変化させるといった)磁場の空間分布が変化される態様で磁場生成要素を動作させることにより、磁場分布を正確に規定すること、及び注目対象物をサンプリングすることも可能である。
【0058】
上記光学放射線検出器は、空間分解検出器であるとすることができる。磁場変調を検出器(例えばCCDアレイ)の空間分解能と組み合わせることにより、本発明による検出の感度及び精度が改善されることができる。
【0059】
追加的又は代替的に、上記光学放射線検出器が、周波数分解検出器又はエネルギー分解検出器であるとすることができる。この手段を用いることにより、異なる放射線要素間、例えば、一重項‐基底状態遷移に関する高周波遷移と、三重項‐基底状態貢献に関する低周波貢献との間を区別することが可能である。
【0060】
追加的又は代替的に、上記光学放射線検出器が、時間分解検出器であるとすることができる。特に1次光学放射線ビームのパルス化された放出と組み合わせて、異なる遷移チャネルの異なる半減期に基づく貢献間を区別することが可能である。
【0061】
特に、上記光学放射線検出器が、上記2次光学放射線ビームの蛍光成分とリン光成分との間を識別することができるとすることができる。斯かる異なる要素の分離は、異なる周波数、異なる半減期、異なる空間貢献等に基づかれることができる。
【0062】
更に、上記決定ユニットが、上記2次光学放射線ビームにおける蛍光成分及び/又はリン光成分の解析に基づき、上記注目対象物に関する情報を決定するよう構成されることができる。例えば、決定ユニットは、蛍光成分のみを検出することができる。なぜなら、リン光成分が除去されることができるからである。蛍光成分が弱くなってくると、これは、リン光成分が存在することのヒントとなる。また、決定ユニットは、蛍光成分とリン光成分との両方を分析することができ、蛍光成分とリン光成分との間の比の解析に基づき、放射線が生じた位置を決定することができる。
【0063】
上記光学イメージング装置の上記決定ユニットが、上記2次光学放射線ビームにおける蛍光成分とリン光成分との間の比の解析に基づき、上記注目対象物に関する情報を決定するよう更に構成されることができる。
【0064】
上記決定ユニットが、上記非一様な磁場の解析と上記検出された2次光学放射線ビームの解析とに基づき、上記注目対象物に関する構造情報を決定するよう構成されることができる。言い換えると、その情報は、注目対象物の空間分布に関する情報とすることができる。従って、2D又は3D構造情報が入手可能となる。
【0065】
上記決定ユニットが、上記磁場強度が所定の値を持つ位置で、上記注目対象物の選択可能な部分に関する情報を決定するよう更に構成されることができる。上記磁場強度の所定の値はゼロとすることができる。即ち、注目対象物は変化する磁場によりスキャンされることができ、ある時点において磁場がないことを知覚する注目対象物の部分が、磁場を知覚する注目対象物における他の部分の放出特性とは異なる放出特性(例えば、三重項遷移が禁止され、リン光が存在しないなど)を持つ。これは、注目対象物の特定の部分を空間的に分解することを可能にすることができる。
【0066】
上記磁場生成要素は、上記注目対象物の拡張部に沿って上記磁場を変調するよう構成されることができる。
【0067】
以下、プローブの例示的な実施形態が説明されることになる。しかしながら、これらの実施形態は、光学イメージング装置、プローブの使用、光学イメージング方法、コンピュータ可読媒体又はプログラムにも適用されることができる。
【0068】
プローブは、ドナー及びアクセプタに結合されるリンカ分子を有し、注目対象物に取り付け可能であるよう構成されることができる。斯かるリンカ分子は、例えば、対応する分子、例えば腫瘍と選択的に結合する例えば抗体とすることができる。すると、リンカ分子は、その環境に存在するいずれかの腫瘍細胞に付くことができる。この手段を用い、励起光学放射線の吸収に応じてドナーアクセプタペアにより放出される蛍光及びリン光放射線を測定することにより、腫瘍細胞の存在が高精度で検出されることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
本発明の上述した側面及び追加的な側面が以下に記載される実施形態の例示から明らかとなり、その実施形態の例示を参照して説明される。
【0070】
本発明は、実施形態の例示を参照してより詳細に説明されることになるが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0071】
図面における説明は概略的なものである。異なる図面において、同様又は類似する要素には同じ参照符号が振られている。
【0072】
図1を参照すると、本発明の例示的な実施形態による光学イメージング装置100が詳細に記載されることになる。
【0073】
組織101を検査するための光学イメージング装置100は、その組織101上に1次光学放射線ビームを放出するよう構成される光学放射線源102を有する。光学放射線源102は、例えば、レーザ又はフォトダイオードとすることができる。サンプル101の上、下又はサンプル101の側のいずれかに配置される励起源102を用いた撮像野(imaging field)の直接照射により励起光がサンプル101に届けられることができる。
【0074】
更に、光供給光学機器103がオプションで光学放射線源102とサンプル101との間に供給されることができる。斯かる光供給光学機器103は、フィルタ、レンズ、ミラー、アパーチャ等を有することができる。
【0075】
光学放射線源102により放出される光は、サンプル101で衝突し、そこに位置する物質を励起させることができる。この光の吸収に応じて、2次光学放射線ビームが、蛍光及び/又はリン光としてサンプル101により放出される。
【0076】
2次光学放射線ビームは、(レンズ、ミラー及びフィルタといった光学要素を有することができる)光収集光学機器104を通過する。
【0077】
その後、放出された光は、エミッションフィルタ105によりフィルタリングされることができる。いずれかの背景放射線が、1つ又は連続する光学フィルタ105により収集経路から除去(reject)されることができる。
【0078】
エミッションフィルタ105を通過した光は、その後、検出及び増幅ユニット106において検出及び増幅されることができる。再放出された光の検出及び定量化のため、増倍管(PMT)又は電荷結合素子(CCD)が使用されることができる。放出された光が検出及び増幅ユニット106により検出及び増幅された後、(PMT又はCCD)検出器106からのアナログ信号がデジタル信号に変換される。
【0079】
更に、光学イメージング装置100は、組織101の拡張部に沿って非一様な磁場を生成する磁場生成ユニット107を有する。組織101は、存在する磁場に応じて放出特性を変化させる磁場感応色素(dye)を有することができる。
【0080】
検出された信号は、マイクロプロセッサ(CPU)等とすることができる決定ユニット108に与えられることができる。そこでは、決定ユニット108が、非一様な磁場の解析と、検出された2次光学放射線ビームの解析とに基づき、組織101に関する構造的な情報を決定するよう構成される。
【0081】
このため、決定ユニット108は、磁場生成ユニット107、検出及び増幅ユニット106、及び光学放射線源102に結合され、これらの要素を制御及び調整することができる。
【0082】
決定の結果は、決定ユニット108からグラフィカルユーザインタフェース(GUI)109に与えられることができる。GUIを介して、ユーザは光学イメージングの結果を監視することができる。
【0083】
図1から分かるように、磁場及びそれに伴うサンプル101の放出特性の変調を可能とするため、所望の磁場分布が組織101の位置で生成されることができるよう、磁場生成ユニット107は、電流が印加可能な複数のコンダクタを有する。
【0084】
光学放射線検出器106は、異なる周波数により識別されることができる、特に2つの異なるタイプの放射線、即ち蛍光及びリン光を区別することができる周波数分解検出器である。しかしながら、光学放射線検出器106は、異なる減衰時間を持つリン光及び蛍光の間を区別することができる時間分解検出器とすることもできる。
【0085】
図1から分かるように、地磁場及び他の混乱要因の(disturbing)磁場を遮蔽するため、光学イメージング装置100の実験的な部分を囲む磁気シールド要素110が与えられる。
【0086】
以下の図2に説明されることになるが、組織101の位置で磁場を変調することにより、リン光及び蛍光に関連する減衰経路が、特徴的に操作されることができる。その結果、組織101の特定の位置での磁場強度及び方向の知識が、この空間的な部分を特に調査することを可能にする。
【0087】
図2は、光学吸収により励起電子一重項状態及び励起電磁場三重項状態を作ることに関する処理と、外部磁場の存在の下、蛍光及びリン光の連続的な放出を生み出すことに関する処理とを表すエネルギーレベルダイアグラム200を示す。
【0088】
図3を参照してより詳細に説明されることになる組織101に付けられるプローブは、電気的な基底状態201を持つ。そのシステムは、波長λ0の電磁放射線の吸収により、励起一重項状態202にされることができる。波長λ0は、光学放射線源102により放出される1次光学ビームの波長である。オプションで、そのシステムは、励起一重項状態202からより安定的な励起一重項状態203へと緩和することができる。
【0089】
外部磁場がない場合には、量子メカニズムにより励起一重項状態203から励起三重項状態204への遷移が禁止される。その結果、この遷移経路は、三重項状態204を(はっきりとは)生じさせない。結果的に、そのシステムは、蛍光を用いて波長λ1を持つ光子を放出しながら、励起一重項状態203から基底状態201へと緩和する。即ち、2次光学放射線ビームを形成する波長λ1を持つ光子の放出が、励起に関してほとんど遅延なく発生する。遅延時間は、例えば、ナノ秒及びピコ秒の間のオーダーとすることができる。結果的に、組織101の位置に磁場が存在しないとき、波長λ1を持ち、実質的に遅延のない光子の放出を伴う上述の放出経路が支配的となる。
【0090】
引き続き図2を参照して、磁場B > 0でスイッチオンされるとき、例えば、特定の磁場生成要素107を動作させることにより、励起一重項203と励起三重項204との間の遷移が可能となる。言い換えると、励起一重項203と励起三重項204との間の遷移レートは、特定のプローブの環境に存在する磁場の強度に依存する。組織101の部分における位置で磁場が0より大きくなっていくとき、励起一重項203から励起三重項204への遷移が生じ、結果として、波長λ2を持つリン光放射線の遅延遷移が、2次光学放射線ビームの一部として検出及び増幅ユニット106により測定されることができる。同時に、2次光学放射線ビームにおける波長λ1の強度が減少する。従って、組織101の特定の部分における位置で磁場を変調することにより、要素λ1及びλ2の比と、対応する遅延時間とが検出ユニット106により測定されることができ、組織101の特定の部分を空間的に分解することができる。
【0091】
以下図3を参照すると、本発明の例示的な実施形態によるプローブ302に付けられた組織101がより詳細に示される。
【0092】
組織101に付けられたプローブ302は、波長λ0を持つ1次光学放射線ビームを吸収するよう構成されたドナー303を有する。更に、ドナー303による波長λを持つ1次光学放射線の吸収の際、波長λ1及び/又はλ2を持つ2次光学放射線を放出するよう構成されるアクセプタ304が与えられる。ドナー303及びアクセプタ304は、2次光学放射線の少なくとも1つの特性がプローブ302の位置、つまり組織101の位置での磁場強度に依存するという態様で構成される。
【0093】
更に、リンカ分子305がドナー303及びアクセプタ304に結合され、組織101に取り付け可能であるよう構成される。
【0094】
例えば、組織101は、腫瘍細胞を有する。リンカ305は、腫瘍細胞に対する抗体として特に構成されることができ、その結果、腫瘍細胞が存在する場合、リンカ分子305が腫瘍細胞に付けられる。ドナー303及びアクセプタ304は、波長λ0を吸収することができ、かつこれに応じて、組織101の環境に存在する磁場106の値に基づき、2次波長λ1又はλ2を放出することができるシステムを形成する。
【0095】
以下図4を参照すると、本発明の例示的な実施形態による光学イメージング方法のフローチャート400が説明されることになる。
【0096】
ステップ410において、その方法は開始する。
【0097】
ステップ420において、非一様な磁場が生成され、注目対象物の拡張部に沿って印加される。
【0098】
ステップ430において、1次光学放射線ビームが注目対象物に放出される。
【0099】
続くステップ440において、1次光学放射線ビームを吸収する際、注目対象物により放出される2次光学放射線ビームが検出される。
【0100】
ステップ450において、非一様な磁場の解析と検出された2次光学ビームの解析とに基づき、注目対象物に関する構造的な情報が決定される。
【0101】
ステップ460において、その方法は終了する。
【0102】
ステップ430及び440のいずれかは、所定の回数繰り返されることができることに留意されたい。即ち、光を用いて連続的に異なる部分を照射し、放出を検出することができる。異なる磁場構成を用いてステップ420を繰り返すことも可能である。
【0103】
こうして、その方法は、対象物の異なる照射イベントに対して、及び/又は異なる磁場状態に対して、その放出が検出されることができるという態様で実行されることができる。最初に磁場をスキャンし、それから照射のスキャンを行う、又はその逆も可能である。これらのスキャンを同時に行うこともできる。即ち、2つの結合された又はインターリーブされたループ、又は共通スキャンが存在するようにすることができる。
【0104】
本発明の例示的な実施形態によれば、以下の測定手順が実行されることができる。
【0105】
調査対象物が測定装置に接続されることができる。それから、磁場の空間分布及び/又は時間依存が調整されることができる。更に、光学測定シーケンスが実行されることができる。それからオプションで、十分な測定データが得られるまで、磁場形状の調整が繰り返されることができる。その後、注目対象物の画像を再構成するため、又は注目対象物に関する他のいずれかの構造的情報を取得するため、そのデータの数学的な解析が実行されることができる。続いて、その画像又は構造的な情報が、例えばディスプレイに表示されることができる。
【0106】
上述された手順は、繰り返されることができる。異なる手順のステップ間において、例えば、対象物内又は対象物上に追加的な吸収色素を導入することにより、測定対象物が修正されることができる。処理差分画像が表示されることができる。即ち、追加的な色素の濃度だけが斯かる表示のために考慮されることができる。
【0107】
光学測定シーケンスの実行は、複数のサブステップを含むことができる。第1のサブステップにおいて、照射の位置、照射の方向、照射の強度、及び/又は照射周波数(スペクトル分布)、並びにこれら及び他のパラメタの時間依存性が選択されることができる。第2のステップにおいて、例えばできるだけ多くの箇所で同時に調査対象物の光が測定され、スペクトル分解されることができる。第3のステップにおいて、十分なデータが利用可能になるまで、第1のステップ及び/又は第2のステップが繰り返されることができる。
【0108】
その手順は、反転測定も含む。つまり、磁場形状を修正しながら1つの位置で光を照射する手順である。
【0109】
以下図5を参照すると、本発明の例示的な実施形態による光学イメージング装置の磁場源の構成が説明されることになる。
【0110】
図5に示される構成は、くぼみ501を持つスキャナを含む。このくぼみ501に、女性の胸500が調査対象物として入れられる。
【0111】
第1のコイル502、第2のコイル503、及び第3のコイル504が、くぼみ501又は受け入れ部の近傍に与えられる。更に、第1の永久磁石505、第2の永久磁石506及び第3の永久磁石507が、その永久磁石505〜507のアレイが共通に動かされることができるよう、共通の筐体508に配置される。
【0112】
図5は、女性の胸500を画像化するのに使用されることができる磁場源アレイを示す。スキャナのくぼみ501に、女性の胸500が配置される。コイルシステム502〜504は、図5の水平及び垂直方向に実質的に一様な磁場を生成するのに適している。図5の紙平面(paper plane)に垂直な磁場を生成するコイルシステムは、図示されていないが、例えば、コイルペアを放射状の(radical)フィールドへ単に回転することにより得られることができる。更に、永久磁石の(3つの矢印で示される)移動可能なアレイ505〜507が与えられる。そのアレイは、女性の胸500内の特定の位置で磁場解放ポイントを生成することができる。
【0113】
以下図6を参照すると、図5の磁場源505〜507により生成される磁場分布の概略図が説明されることになる。
【0114】
図6は、磁場分布600と上述の磁場解放ポイント601とを示す。永久磁石505〜507のアレイの磁場分布600は、磁石505〜507が、小さな又は減少する磁場強度の領域、いわゆる磁場解放ポイント601が形成されるという態様で配置されることを示す。磁場解放ポイント601は、磁石システム505〜507の機械的な動きにより動かされることができるが、図6には示されないコイル502〜504の磁場分布を修正することによりシフトされることもできる。
【0115】
以下図7を参照すると、ダイアグラム700の横座標701に沿ってプロットされる印加磁場Bに依存する、光学イメージング装置により検出可能な光学放射線の異なる貢献の強度を示すダイアグラム700が説明されることになる。そこでは、この強度Iが、ダイアグラム700の縦座標702に沿ってプロットされる。
【0116】
第1の曲線703は、光学放射線の第1の貢献を示し、第2の曲線704は、上述の光学イメージング装置の検出器システムにより検出可能かつ識別可能な光学放射線の第2の貢献を示す。
【0117】
こうして、ダイアグラム700は、磁場701に依存する2つの可能な蛍光強度曲線703、704を例示的に示す。システムの蛍光色素は、例えば、蛍光強度の修正により、磁場の増加に応答する。蛍光強度が既に100 mTを下回って明らかに変化することが有利であり、それは、適切な分解能をもたらす。明らかな修正は、特に5%以上分の修正を意味する。この特性を用いて、磁場解放ポイント601と共に、特定の領域が増加又は減少する蛍光収率を持つことができる。磁場解放ポイント601を備える注目領域全体をスキャン又はサンプリングすることにより、この領域の適切な分解能の再構成を可能にすることができるデータが取得されることができる。
【0118】
以下図8を参照すると、光学放射線源801と光学放射線検出器802との構成が説明されることになる。
【0119】
図8は、光学測定のための例示的な装置を示す。供給ファイバ803が、源システム801をスキャナ501に接続し、検出ファイバ803が、スキャナ501を検出器システム802に接続する。ファイバ803は、くぼみ501を一様に覆う。1次光を1つの供給ファイバ803に与え、同時に2次光をすべての検出ファイバ803を用いて受信することが可能である。
【0120】
受信信号における強度変調を検出するための短距離を介する磁場解放ポイント601の高速変調により、測定手順は、更に改善されることができる。
【0121】
磁場解放ポイント601の周りの傾斜磁場強度を、その対象物がより深く貫通されるにつれ連続的に減少させることも有利である。より深い層からは、取得される光子の数がだんだん少なくなる。強度が変調される領域の寸法を増加させることが有利である。
【0122】
磁場解放ポイントの代わりに、磁場解放ライン又は磁場解放平面を用いることも有利な場合がある。この手段を使うと、サンプリングされる変調領域が増加されることができる。画像を再構成するために、磁場解放ライン又は平面は、シフトされることができるだけでなく、向きを変える又は回転されることができる。すると、ジオメトリは、X線コンピュータ断層撮影装置の場合と同じようにすることができる。
【0123】
単語「comprising(有する)」は、他の要素又はステップを排除するものではなく、単語「a」又は「an」は複数性を排除するものではないことに留意されたい。異なる実施形態に関連して説明された要素は結合されることができる。
【0124】
請求項における参照符号は本願発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことにも留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の例示的な実施形態による光学イメージング装置の概略表示を示す図である。
【図2】光学吸収により励起された電子一重項状態及び励起電子三重項状態を作ることに関する処理と、外部磁場の存在の下、蛍光及びリン光の連続的な放出に関する処理とを表すエネルギーレベルダイアグラムを示す図である。
【図3】注目対象物と、その注目対象物に付けられる本発明の例示的な実施形態によるプローブとを示す図である。
【図4】本発明の例示的な実施形態による光学イメージング方法のフローチャートを示す図である。
【図5】本発明の例示的な実施形態による光学イメージング装置の磁場源の構成を示す図である。
【図6】図5の磁場源により生成される磁場分布の概略的な表示を示す図である。
【図7】本発明の例示的な実施形態による光学イメージング装置により検出される光学放射線の異なる貢献の強度を、印加される磁場に基づき表すダイアグラムを示す図である。
【図8】本発明の例示的な実施形態による光学イメージング装置の光学放射線源と光学放射線検出器との構成を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注目対象物の検査のための光学イメージング装置であって、
前記注目対象物上に1次光学放射線ビームを放出する光学放射線源と、
前記1次光学放射線ビームを吸収するとき前記注目対象物により放出される2次光学放射線ビームを検出する光学放射線検出器と、
前記注目対象物の拡張部に沿って変化する非一様な磁場を生成する磁場生成要素と、
前記非一様な磁場の解析と前記検出された2次光学放射線ビームの解析とに基づき、前記注目対象物に関する情報を決定する決定ユニットとを有する光学イメージング装置。
【請求項2】
前記磁場生成要素が、電流が印加可能な少なくとも1つのコンダクタとして実現される、請求項1に記載の光学イメージング装置。
【請求項3】
前記磁場生成要素が、少なくとも1つの永久磁石として実現される、請求項1に記載の光学イメージング装置。
【請求項4】
前記光学放射線検出器が、空間的に分解する検出器である、請求項1に記載の光学イメージング装置。
【請求項5】
前記光学放射線検出器が、周波数分解検出器又はエネルギー分解検出器である、請求項1に記載の光学イメージング装置。
【請求項6】
前記光学放射線検出器が、時間分解検出器である、請求項1に記載の光学イメージング装置。
【請求項7】
前記光学放射線検出器が、前記2次光学放射線ビームの蛍光成分とリン光成分との間を識別することができる、請求項1に記載の光学イメージング装置。
【請求項8】
前記決定ユニットが、前記2次光学放射線ビームにおける蛍光成分及び/又はリン光成分の解析に基づき、前記注目対象物に関する情報を決定するよう構成される、請求項1に記載の光学イメージング装置。
【請求項9】
前記決定ユニットが、前記2次光学放射線ビームにおける蛍光成分とリン光成分との間の比の解析に基づき、前記注目対象物に関する情報を決定する、請求項8に記載の光学イメージング装置。
【請求項10】
前記決定ユニットが、前記非一様な磁場の解析と前記検出された2次光学放射線ビームの解析とに基づき、前記注目対象物に関する構造情報を決定するよう構成される、請求項1に記載の光学イメージング装置。
【請求項11】
前記決定ユニットが、前記磁場強度が所定の値を持つ部分で、前記注目対象物の選択可能な部分に関する情報を決定する、請求項1に記載の光学イメージング装置。
【請求項12】
前記磁場強度の所定の値がゼロである、請求項1に記載の光学イメージング装置。
【請求項13】
前記磁場生成要素が、前記注目対象物の拡張部に沿って前記磁場を変調する、請求項1に記載の光学イメージング装置。
【請求項14】
前記磁場生成要素が、前記2次光学放射線ビームの検出の間、制御可能な態様で前記磁場を変化させる、請求項1に記載の光学イメージング装置。
【請求項15】
調査対象の注目対象物に取り付け可能なプローブであって、
1次光学放射線を吸収するドナーと、
前記ドナーによる前記1次光学放射線の吸収のとき、2次光学放射線を放出するアクセプタとを有し、
前記ドナー及び前記アクセプタが、前記2次光学放射線の少なくとも1つの特性が前記プローブの位置での磁場強度に依存するという態様で構成される、プローブ。
【請求項16】
前記ドナー及び前記アクセプタに結合され、前記注目対象物に取り付け可能なリンカ分子を有する、請求項15に記載のプローブ。
【請求項17】
注目対象物の拡張部に沿って変化する非一様な磁場を印加する光学イメージング方法により、前記注目対象物を検査するための、請求項15に記載のプローブの使用。
【請求項18】
注目対象物を検査する光学イメージング方法において、
前記注目対象物の拡張部に沿って変化する非一様な磁場を生成するステップと、
前記注目対象物上に1次光学放射線ビームを放出するステップと、
前記1次光学放射線ビームを吸収するとき、前記注目対象物により放出される2次光学放射線ビームを検出するステップと、
前記非一様な磁場の解析と前記検出された2次光学放射線ビームの解析とに基づき、前記注目対象物に関する情報を決定するステップとを有する、光学イメージング方法。
【請求項19】
注目対象物を検査するコンピュータプログラムが格納されたコンピュータ可読媒体であって、前記プログラムがプロセッサにより実行されるとき、
前記注目対象物の拡張部に沿って変化する非一様な磁場を生成するステップと、
前記注目対象物上に1次光学放射線ビームを放出するステップと、
前記1次光学放射線ビームを吸収するとき、前記注目対象物により放出される2次光学放射線ビームを検出するステップと、
前記非一様な磁場の解析と前記検出された2次光学放射線ビームの解析とに基づき、前記注目対象物に関する情報を決定するステップとを制御又は実行するよう構成される、コンピュータ可読媒体。
【請求項20】
注目対象物を検査するプログラムであって、プロセッサにより実行されるとき、
前記注目対象物の拡張部に沿って変化する非一様な磁場を生成するステップと、
前記注目対象物上に1次光学放射線ビームを放出するステップと、
前記1次光学放射線ビームを吸収するとき、前記注目対象物により放出される2次光学放射線ビームを検出するステップと、
前記非一様な磁場の解析と前記検出された2次光学放射線ビームの解析とに基づき、前記注目対象物に関する情報を決定するステップとを制御又は実行するよう構成される、プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−502402(P2009−502402A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524641(P2008−524641)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【国際出願番号】PCT/IB2006/052543
【国際公開番号】WO2007/015190
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】