説明

光学シート、及び該光学シートを用いた面状光源装置

【課題】複数のLED光源を配置した直下型面状光源装置において、LED光源と光学シートの設置間隔の縮小化、あるいはLED光源間隔の拡大化に対しても、輝度ムラが解消される光学シート、及び液晶表示装置用面状光源装置を提供する。
【解決手段】本発明の光学シートは、一方のシート表面に複数の転倒四角錐が、該転倒四角錐の2組の対向する底辺が各々平行に2方向に延在するようマトリックス状に形成されており、他方のシート表面にプリズムが連続して並列形成されている樹脂製光学シートであって、前記転倒四角錐の2組の対向する底辺の延在方向が60°〜89°(狭角)で交差し、かつ前記プリズムの断面形状が、三角形及び/又は三角形の一部と曲線の一部が接合した形状であり、前記転倒四角錐の底辺の各延在方向とプリズムの延在方向が、いずれも30°〜60°(狭角)で交差していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネル等の照明に用いる面状光源装置用光学シート、及び該光学シート用いた面状光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型テレビや薄型モニター等の大型ディスプレイには、画像表示のための液晶表示装置が広く採用されている。これらの液晶表示装置には、自発光性がない液晶表示パネルを照射するためにバックライトユニットが用いられている。バックライトユニットとしては、例えば導光板と、該導光板の端面に配置したLED(発光ダイオード)光源を備え、光源からの光を導光して主面全体から液晶表示パネルへ向け照射するエッジタイプや、導光板を用いず、液晶パネルの直下にLED光源を配置し、光拡散板や光学シートの主面全体から液晶パネルに向け照射する直下タイプがある。
【0003】
近年、液晶テレビの大画面化にともない、軽量化や薄型化に対する要望がより高くなってきているが、導光板を用いたエッジタイプでは、導光板自体の重量増によりテレビ自体の軽量化が困難になるとともに、表示画面の輝度上昇が困難になってきている。一方、導光板を用いない直下タイプでは、導光板がない分軽量化が可能であるが、LED光源の指向性が強いため、LED直上部分が非常に明るくなり著しい輝度ムラが生じ、出光面全体で輝度ムラの少ない照射光を得るためには、LED光源の配置間隔を狭くするか、光拡散板とLED光源の距離を充分離す必要があり、薄型化やコスト削減が困難な状況にある。
【0004】
特許文献1には、光束制御部材をLED素子上に取り付け、LED直上部分への指向性を緩和し、直下型バックライトの光源として用いた際の明暗を抑制する方法が開示されている。特許文献2には、LED光源をマトリックス上に配置した直下型バックライトユニットにおける輝度ムラ解消を目的として、表面に略逆多角錐又は略逆多角錐台形状の凹部を有し、凹部形状を有する面を入光面とする全光線透過率が65%〜100%であり、凹部形状を有する面の反対面を入光面とした全光線透過率が30%〜80%である光拡散板を用いることが開示されている。特許文献3には、光源からの光線利用率を上げつつ、輝度分布を均一化させることを目的として、複数の長状V形状突起を有する第一透明層、マトリックス方式に配列された複数の転倒した四角錐や四角錐台のようなマイクロ凹部が形成された第二透明層、第一透明層と第二透明層に挟まれた光拡散層が一体化されたバックライト用光学シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−117207号公報
【特許文献2】特開2010−117707号公報
【特許文献3】特開2008−139878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、バックライトコスト削減のためのLED光源数のさらなる削減や、あるいは液晶テレビのさらなる薄型化、具体的には、図2に示すような反射シート上に設置された複数個のLED光源間の最も接近した間隔(L)と、LEDの頭頂部と光学シートの点光源側に面までの距離ではなく、反射シートと光学シートの点光源側の面までの最も接近した距離(D)の比であるL/Dが、2.5以上においても、輝度ムラを解消できるという課題に対しては、応えられていないのが現状である。
【0007】
すなわち、直下型バックライトの点光源として光束制御部材をLED素子上に配置することによりLEDの直上以外の範囲に広く配光することが可能となるが、LED光源側に配置される光拡散板とLED光源との間隔を縮小、あるいはLED光源の配置間隔を拡げていくと光束制御部材の形状に起因する明暗パターンが生じてしまい、従来の光拡散板や光学シートの構成では、さらなる液晶表示装置の薄型化やLED光源数の削減が困難となっている。
【0008】
一方、バックライトユニットのさらなる薄型化、あるいはLED光源の配置間隔拡大によるLED使用数の削減化において求められる、上記のL/D≧2.5となるという厳しい条件下において、反射シート上に配置されたLED光源に、略逆多角錐又は略逆多角錐台形状の凹部を有し、凹部形状を有する面を入光面とする全光線透過率が65%〜100%、凹部形状を有する面の反対面を入光面とした全光線透過率が30%〜80%である光拡散板を用い、この拡散板上に熱可塑性フィルム表面に光拡散剤となる微粒子を塗布した従来タイプの“拡散シート”、従来から光拡散板に重ね合わせてきたプリズムシート、マイクロレンズシート、反射偏光シート等を適宜重ね合わせるといった光学シート構成だけで、輝度ムラの大幅低減や解消することには、限界が生じるようになってきている。
【0009】
さらに、光源の輝度をできる限り低減させずに面状光源としての輝度均整度を発現させるため、入光面と出光面の両面に微細な転倒四角錐やプリズム等の微細な凹凸形状を形成した光拡散板が提案されているが、単に転倒四角錐やプリズムを配置しただけでは、指向性の高いLED光源を用い、バックライトユニットのさらなる薄型化、あるいはLED光源の配置間隔拡大によるLED使用数の削減化において求められる、上記のL/D≧2.5となるという厳しい条件下で、均整度の高い面状光源を発現するのは困難な状況である。
【0010】
本発明は前述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、LED光源を配置した直下型バックライトにおいて、さらなる薄型化、あるいはさらなるLED光源数削減を実現させることが可能な面状光源装置用光学シート及び該光学シートを備えた面状光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用した。すなわち、第1の発明は、一方のシート表面に複数の転倒四角錐が、該転倒四角錐の2組の対向する底辺が各々平行に2方向に延在するようマトリックス状に形成されており、他方のシート表面にプリズムが連続して並列形成されている樹脂製光学シートであって、前記転倒四角錐の2組の対向する底辺の延在方向が60°〜89°(狭角)で交差し、かつ前記プリズムの断面形状が、三角形及び/又は三角形の一部と曲線の一部が接合した形状であり、前記転倒四角錐の底辺の各延在方向とプリズムの延在方向が、いずれも30°〜60°(狭角)で交差していることを特徴とする。
【0012】
第2の発明は、第1の発明の光学シートにおいて、一方の面に形成されている転倒四角錐における底面の長い方の対角線と、他方の面に形成されているプリズムの延在方向が0°〜15°(狭角)で交差していることを特徴とする。
【0013】
第3の発明は、第1又は2の発明の光学シートにおいて、転倒四角錐の底辺が10μm〜1000μmであり、かつプリズムの延在方向に垂直な断面形状における底辺が10μm〜1000μmであることを特徴とする。
【0014】
第4の発明は、第1〜3の発明の光学シートにおいて、転倒四角錐の側面の光学シート水平面に対する傾斜角が30°〜60°であり、かつ、プリズムの延在方向に垂直な凸部断面形状における三角形の両辺の内角、又は三角形の一部と曲線の一部が接合した凸部断面形状における三角形部分の両辺の延長線交差角(内角)が60°〜120°であることを特徴とする。
【0015】
第5の発明は、第1〜4の発明の光学シートにおいて、両面に形成されている転倒四角錐及びプリズム部分も含めた光学シート全厚さの50%以上の厚さを占める層厚に、透明樹脂に光拡散剤が配合された樹脂組成物が用いられていることを特徴とする。
【0016】
第6の発明は、面状光源装置に関するものであり、反射シート、反射シート上に設置された複数個のLED光源と、請求項1〜5に記載の光学シートを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の光学シートを、反射シート上に配置された複数個のLEDを光源とする面状光源装置に用いることにより、LED光源配置間隔が従来の間隔よりも拡大、あるいはLED光源と光学シートの間隔が縮小しても、輝度ムラ低減化や解消が可能になる。また、本発明の光学シートを用いた面状光源装置は、LED光源配置間隔が従来の間隔よりも拡大、あるいはLED光源と光学シートの間隔が縮小しても、輝度ムラ低減化や解消が可能になるため、LED光源を配置した直下型面状光源装置として、さらなる薄型化を促進できるとともに、低コスト化や使用電力削減のためのさらなるLED光源数削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の光学シート実施形態の1例である一方の面が転倒四角錐賦型面であり、もう一方の面がプリズム賦型面であることを示す概念図(平面図と断面図)である。
【図2】本発明の光学シートを、汎用の光学シートとともに複数のLED光源上に配置した実施形態の1例を示す簡略的断面図である。
【図3】本発明の光学シートを、汎用の光学シートとともに複数のLED光源上に配置した実施形態の別の1例を示す簡略的断面図である。
【図4】本発明の光学シートの製法の1例である押出成型方法の簡略図である。
【図5】輝度ムラ評価に用いたバックライトのLED光源配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る光学シート及び該光学シートを用いた面状光源装置について詳細に説明する。本発明の光学シートは、図1に示すように、一方のシート表面に複数の転倒四角錐が、該転倒四角錐の2組の対向する底辺が各々平行に2方向に延在するようマトリックス状に形成されており、他方のシート表面にプリズムが連続して並列形成されている樹脂製光学シートであって、転倒四角錐の2組の対向する底辺の延在方向が70°〜89°(狭角)で交差し、かつ該プリズムの断面形状が、三角形及び/又は三角形の一部と曲線の一部が接合した形状であり、前記転倒四角錐の底辺の各延在方向とプリズムの延在方向が、いずれも30°〜60°(狭角)で交差していることを特徴とする光学シートである。
【0020】
図2は本発明の光学シートを用いた面状光源装置の1例となる断面模式図を示す。反射シート9上に、複数のLED光源10が最も接近した間隔(L)で配置されており、その上方に本発明の光学シート11が、複数の転倒四角錐がマトリックス状に賦型された面1がLED光源側に向くよう、光学シート11の入光面との反射シート表面の距離(D)で設置されている。LED光源10からの光を本発明の光学シート11により、一部は光源側に反射させ、一部はLED光源10側とは反対方向へ拡散、偏向を繰り返させることにより、面状光源装置としての輝度ムラの低減あるいは解消をはかるための重要な働きを果たすのである。本例では面状光源装置の正面方向での輝度向上のためや、さらなる輝度ムラ低減向上のため、本発明の光学シートにプリズムシート12やマイクロレンズシート13を重ね合わせている。
【0021】
図3は本発明の光学シートを用いた面状光源装置の別の1例となる断面模式図をしめす。図2と異なり、反射シート9上に、複数のLED光源10が最も接近した間隔(L)で配置されており、その上方に本発明の光学シート11が、プリズムが連続して並列形成された面5がLED光源10側に向くよう、光学シート11の入光面との反射シート表面の距離(D)で設置されている。LED光源10からの光を本発明の光学シート11により、一部は光源側に反射させ、一部はLED光源10側とは反対方向へ拡散、偏向を繰り返させることにより、面状光源装置としての輝度ムラの低減あるいは解消をはかるための重要な働きを果たすのである。本例では面状光源装置の正面方向での輝度向上のためや、さらなる輝度ムラ低減向上のため、本発明の光学シートにプリズムシート12やマイクロレンズシート13を重ね合わせている。
【0022】
本発明の光学シートは一方の表面に複数の転倒四角錐が、該転倒四角錐の2組の対向する底辺が各々平行に2方向に延在するようマトリックス状に形成されており、しかもこの2つの延在方向が60°〜89°(狭角)で交差することを必須としている。このことにより、2つの延在方向が90°で交差する場合に比べ、レンズとして重要な役割を果たす転倒四角錐の4つの側面による反射や屈折範囲が拡大できるようになり、LED光源からの指向性が高い光を効率よく拡散できることとなる。一方、延在方向の交差角が、60°未満になると面光源の縦横方向での輝度差が生じ易くなる。反射シート上に配置されるLED光源の配置パターンにもよるが、LED光源の配置パターンに対応した、転倒四角錐の4つの側面による入射光や出射光の光路調整の点から、面光源としての輝度均整化には、70°〜88°(狭角)になることがより好ましく、さらに好ましくは80°〜87°(狭角)である。
【0023】
転倒四角錐の底辺は、10μm〜1000μmであることが好ましい。10μm未満ではシート表面に転倒四角錐形状を効率よく形成することが困難となり、1000μmを超えると面状光源としての輝度均整化が困難となる。形成の容易さと輝度均整化の観点から、30μm〜500μmがより好ましい。また、転倒四角錐側面の光学シート水平面に対する傾斜角は、30°〜60°が好ましく、この範囲を外れると転倒四角錐の4つの側面による入射光や出射光の光路調整による面光源としての輝度ムラ解消が困難となる。
【0024】
本発明の光学シートのもう一方の表面には、該シート水平面に垂直かつ延在方向に垂直な断面形状が、三角形及び/又は三角形の一部と曲線の一部が接合した形状であるプリズムが連続して並列形成されている。プリズムの延在方向に垂直な凸部断面形状における底辺は10μm〜1000μmであり、転倒四角錐と同様、形成の容易さと輝度均整化の観点から、より好ましくは30μm〜500μmであり、また、三角形の両辺の内角、又は三角形の一部と曲線の一部が接合した凸部断面形状における三角形部分の両辺の延長線交差角(内角)が60°〜120°、より好ましくは75°〜105°である。プリズムの延在方向に垂直な凸部断面形状における底辺、内角が上記の範囲を外れると、入射光や出射光の光路調整による面光源としての輝度ムラ解消が困難となる。
【0025】
本発明の光学シートには、一方の表面に転倒四角錐がその底面の2組の対向する底辺が、それぞれ平行に60°〜89°(狭角)で交差する2方向に延在するようマトリックス状に配列されており、もう一方の表面に該シート表面に垂直かつ延在方向に垂直な断面形状が、三角形及び/又は三角形の一部と曲線の一部が接合した形状であるプリズムが連続して並列形成されているが、前記転倒四角錐の底辺の各延在方向と、プリズムの延在方向が、いずれも30°〜60°(狭角)で交差していることが必須である。この交差角(狭角)が30°未満であっても、60°を超えても、上記のL/D≧2.5となるという厳しい条件下を有する面状光源においては輝度ムラ解消が困難となる。すなわち転倒四角錐の各側面と、対向する面に形成されたプリズムの斜面が立体的にねじれた位置に存在することにより、光源からの光を反射・拡散する効果が上昇し、LED光源配置間隔が従来の間隔よりも拡大、あるいはLED光源と光学シートの間隔が縮小しても、面状光源としての輝度ムラ低減化や解消が可能になる。最も好ましくは、一方の面に形成されている複数の転倒四角錐の底面の長い方の対角線と、もう一方の面に形成されているプリズムの延在方向が0°〜15°(狭角)で交差している場合である。
【0026】
本発明の光学シートを構成する透明樹脂は、無色透明であり、かつ光学シートの主な構成要素として適度な強度を有するものであれば特に制限されない。例えば、ポリカーボネート樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリ(p−メチルスチレン)等のスチレン系樹脂;MS樹脂(メチルメタクリレートとスチレンの共重合体);ノルボルネン系樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂や、これらのうち2種以上の混合樹脂等を用いることができる。好適にはポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂又はノルボルネン系樹脂を用いる。中でもポリカーボネート樹脂は、透明性や耐熱性、加工性に優れており、且つそれらのバランスがよいので光学シート用の樹脂として特に好ましい。
【0027】
本発明の光学シートの光拡散性を調整するために、上記透明性樹脂に光拡散剤を分散させてもよく、特に、本発明の光学シートを最もLED光源側に配置する光拡散板として用いる場合には、光拡散性を高める上で、透明樹脂に光拡散剤を分散させた光拡散層を形成することが好ましい。光拡散剤としては、有機系微粒子、無機系微粒子、有機−無機ハイブリッド系微粒子のいずれの微粒子でも使用でき、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、アミノ系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、これらの共重合体等の有機系微粒子;ガラス、スメクタイト、カオリナイト、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の無機系微粒子;アクリル−シリカ等の有機−無機ハイブリッド系微粒子等が挙げられる。これらの材質のうち、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、シリカが特に好適である。
【0028】
光拡散剤の平均粒子径は0.3μm〜15μmが好ましく、これ以上小さくても、大きくても光拡散効果が大きく低下して好ましくなく、より好ましくは0.5μm〜10μmである。光拡散剤の最適配合量は、反射シート上のLED光源の配光特性や配置間隔、光学シートの入光面と反射シートの距離、光学シートを構成する透明樹脂と光拡散剤の屈折率差、光拡散剤の粒子径によって異なるが、透明樹脂100質量部に対して0.01〜20質量部分散されていることが好ましい。0.01質量部未満では拡散剤による光拡散効果が弱く、20質量部を超えると、輝度の低下が大きくなり好ましくない。
【0029】
光拡散層は光学シートの厚さ全体に及んでもよく、また透明層と層構造を形成しても良い。ただし、光拡散板としての機能を発揮させるためには、用いる拡散剤の種類と粒子径にもよるが、光学シート厚さの50%以上の厚さを占めるように形成することが好ましい。
光拡散層は、光学シートの厚さ方向の中間に設置してもよく、また、光学シートのいずれかの表面から該シート厚さの50%以上の厚さを占める層厚になるよう形成してもよい。
【0030】
本発明の光学シートの製法としては、上記の透明樹脂に熱安定剤等を均一に配合した樹脂混合物を、あるいは上記の透明樹脂と光拡散剤、さらに熱安定剤等を均一に配合した樹脂混合物を、所望の転倒四角錐形状パターンの反転形状パターンが実質全面に彫刻加工された金型と、所望のプリズム形状パターンの反転形状パターンが彫刻加工された金型を用いて、押出成形、射出成形、プレス成形等により得ることができる。なかでも押出成形による方法が、光拡散層や、帯電防止性能や特定波長の光吸収層等の表面機能層を形成できる等多層化が容易なことや、生産効率が高い等の点で特に好ましい。
【0031】
本発明の光学シートの形状寸法は、用いる面状光源装置の形状寸法に合わせて裁断、あるいは最終寸法に応じた金型を用い成形すればよく、厚さも、用いる面光源装置の寸法、用途によって、あるいは光学シートの設置位置によって異なるが、光拡散板として用いる場合には、LED光源からの熱的影響による変形抑制や、他の光学シートの支持体としての役割を果たす必要性から、0.5mm〜4mmが好ましい。また、光拡散板上に重ね合わせる光学シートとして用いる場合には、面状光源装置の薄肉化の観点から0.2〜1.5mmが好ましい。
【0032】
本発明の面状光源装置は、反射シート上に設置された複数個のLED光源と、本発明の光学シートを必須とするが、LED光源からの光を本発明の光学シートにより面状に変換した拡散光を、さらに反射や屈折し、輝度均整度を高めるための光学シートや、面状光源の正面方向への集光をはかるための光学シートを備えることができる。
【0033】
上記のさらなる輝度均整度の調整や、面状光源の正面方向への集光をはかるための光学シートとしては、既存のマイクロレンズシート、プリズムシート、レンチキュラーシート、拡散シート、反射偏光シート等が挙げられる。さらには、本発明の光学シートを複数枚重ね合わせて使用することもできる。この場合には、LED光源側に、光拡散層を有した光学シートを用い、光拡散層を有しない本発明の光学シートをLED光源の反対側に重ね合わせることが好ましい。この光学シート構成を形成することで、面状光源としての輝度均整度や面状光源の正面方向への集光性をさらに上げられることができる。
【0034】
本発明の面状光源装置においては、複数の転倒四角錐が形成された面をLED光源側に向くよう配置してもよいし、シート水平面に垂直かつプリズムの延在方向に垂直な断面形状が、三角形及び/又は三角形の一部と曲線の一部が接合した形状であるプリズムが連続して並列形成された面がLED光源側に向くように設置してもよく、反射シート上のLED光源の配置パターンや光学シートの入光面と反射シートの距離、LED光源の配光特性により最適な向きを選択することができる。
【0035】
本発明の面状光源装置に用いるLED光源は、出射強度のピークがLED光源設置面の法線方向であるランバーシャンタイプや、法線から傾いた方向である側面放射タイプの白色LEDが好ましく用いられるが、面状光源装置の輝度ムラ低減や解消のし易さから、LEDチップ上にレンズ、あるいは光束制御部材を設置した側面放射型が特に好ましく用いられる。
【0036】
なかでも、配光パターンがLED光源設置面の法線から30°以上の深い角度に出射強度のピークを有する略回転対称の出射分布を有するレンズ、あるいは光束制御部材を設置したLEDであることが好ましい。さらに、配光パターンがLED光源設置面の法線から45°以上の深い角度に出射強度のピークを有する略回転対称の出射分布を有するレンズ付あるいは光束制御部材付LEDを光源に用いることは、LED光源配置間隔の拡大化した面状光源装置、あるいはLED光源が配置されている反射シートと光学シートの間隔が縮小した薄型面状光源装置においても、輝度ムラ解消や低減を一層はかり易くなり、より好ましい。
【0037】
LED光源の配置方法としては、特に制約はなく、直線状配列セットの並列配置、格子状や千鳥状配置等が用いられる。
【0038】
本発明の面状光源装置に用いる反射シートは、白色シートであり、反射機能を有する金属板、フィルム、金属箔、アルミ等を蒸着したフィルムでできており、LED光源からの出射光、LED光源上方に設置された光学シートからの反射光等を、再度光学シートの出光方向に戻すとともに光学シートへの入射角度の平準化役割を担っており、本発明の光学シートとともに輝度ムラ解消や低減に重要な働きをしている。
【0039】
LED光源を用いた直下型面状光源装置において、実質的に輝度ムラ解消可能なレベルを、図2や図3に示すように反射シート上に設置された複数個のLED光源間の最も接近した間隔Lと、反射シートの光反射面と、光学シート構成の最もLED光源側に接近した光学シートのLED光源からの入光面との距離Dの比であるL/Dで示すと、本発明の光学シート構成を用いることにより、従来の光学シート構成では難易度が高かった、L/D≧2.5の面状光源装置の実現をも可能にすることができた。
【実施例】
【0040】
次に、本発明に係る面状光源装置を、実施例、比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されない。
【0041】
<実施例1>
ポリカーボネート(「ユーピロン(登録商標)E−2000」:三菱エンジニアリングプラスチック社製)100質量部に、光拡散剤としてシリコーン系微粒子(「トスパール(登録商標)120」:モメンティブパフォーマンス社製)0.15重量部、熱安定剤としてリン系酸化防止剤(「イルガフォス(登録商標)168」:BASF社製)0.1質量部を配合し、下記に示す3本のロールと一組の巻取りロールを備えた押出成型機(図4)を用いて、第3ロールと巻取りロールの周速比を、100/105に設定することにより、本発明の光学シート(1)を作製した。
第1ロール: 鏡面ロール、
第2ロール: ロール回転方向と実質平行に連続したV字溝を有するプリズム形状賦型用ロール、
第3ロール: 底辺の2組の相対する辺の延在方向がロールの回転方向と±44°で交差するように全面に四角錐が形成された転倒四角錐形状賦型ロール。
得られた光学シート(1)は、一方の面に、底面の2組の対向する交差角(狭角)が、86°であり、一辺が150μmの菱形の底面を有する転倒四角錐がマトリックス状に賦型されており、もう一方の面に、高さ25μm、ピッチ50μm、頂角90°である二等辺三角形の断面形状を有するプリズムが並列に賦型された、厚さ1.5mmの光学シートであった。なお、プリズムの延在方向と転倒四角錐の底面をなす菱形の長軸方向は略平行(交差角(狭角)0〜15°)であった。
【0042】
<実施例2>
ポリカーボネート(「ユーピロンE−2000」:三菱エンジニアリングプラスチック社製)100質量部に、熱安定剤としてリン系酸化防止剤(「イルガフォス168」:BASF社製)0.1質量部を配合し、実施例1と同一のロール構成と押出機を用い、第3ロールと巻取りロールの周速比を、100/104に設定することにより、光学シート(2)を得た。
得られた光学シート(2)は、一方の面に、2組の対向する底辺の延在方向の交差角(狭角)が、84°であり、一辺が150μmの菱形の底面を有する転倒四角錐がマトリックス状に賦型されており、もう一方の面に、高さ25μm、ピッチ49μm、頂角89°である二等辺三角形の断面形状を有するプリズムが並列に賦型された、厚さ0.8mmの光学シートであった。なお、プリズムの延在方向と転倒四角錐の底面をなす菱形の長軸方向は略平行(交差角(狭角)0〜15°)であった。
【0043】
<実施例3>
ポリカーボネート(「ユーピロンE−2000」:三菱エンジニアリングプラスチック社製)100質量部に、光拡散剤としてシリコーン系微粒子(「トスパール120」:モメンティブパフォーマンス社製)0.15重量部、熱安定剤としてリン系酸化防止剤(「イルガフォス168」:BASF社製)0.1質量部を配合した樹脂組成物(A)と、ポリカーボネート(「ユーピロンE2000FN」:三菱エンジニアリングプラスチック社製)100質量部に、熱安定剤としてリン系酸化防止剤(「イルガフォス168」:BASF社製)0.1質量部を配合した樹脂組成物(B)を、樹脂組成物(A)の層厚/樹脂組成物(B)の層厚の割合が90/10で、プリズム賦型面から光拡散層が形成されるように、実施例1と同一のロール構成と押出機を用いて、第3ロールと巻取りロールの周速比を、100/106に設定し、共押出により光学シート(3)を得た。
得られた光学シート(3)は、一方の面に、2組の対向する底辺の延在方向の交差角(狭角)が、85°であり、一辺が150μmの菱形である転倒四角錐がマトリックス状に賦型されており、もう一方の面に、高さ25μm、ピッチ50μm、頂角90°である二等辺三角形の断面形状を有するプリズムが並列に賦型され、プリズム賦型面から光拡散層が1.35mmを有する厚さ1.5mmの光学シートであった。なお、プリズムの延在方向と転倒四角錐の底面をなす菱形の長軸方向は略平行(交差角(狭角)0〜15°)であった。
【0044】
<比較例1>
ポリカーボネート(「ユーピロンH−3000」:三菱エンジニアリングプラスチック社製)100質量部に、光拡散剤としてシリコーン系微粒子(「トスパール120」:モメンティブパフォーマンス社製)0.15重量部、熱安定剤としてリン系酸化防止剤(「イルガフォス168」:BASF社製)0.1質量部を配合し、転倒四角錐賦型金型とプリズム賦型金型を、転倒四角錐の2組の底辺の延在方向と、プリズムの延在方向が狭角45°で交差するように設置し、射出成型により光学シート(4)を得た。
得られた光学シート(4)は、一方の面に、対向する2組の底辺の延在方向の交差角(狭角)が90°であり、一辺が150μmの正方形の底面を有する転倒四角錐がマトリックス状に賦型されており、もう一方の面に、高さ25μm、ピッチ50μm、頂角90°である二等辺三角形の断面形状を有するプリズムが並列に賦型された光学シートであった。なお、プリズムの延在方向と転倒四角錐の2組の底辺の延在方向は、いずれも45°(狭角)で交差している光学シートであった。
【0045】
<比較例2>
ポリカーボネート(「ユーピロンH−3000」:三菱エンジニアリングプラスチック社製)100質量部に、光拡散剤としてシリコーン系微粒子(「トスパール120」:モメンティブパフォーマンス社製)0.15重量部、熱安定剤としてリン系酸化防止剤(「イルガフォス168」:BASF社製)0.1質量部を配合し、転倒四角錐賦型金型とプリズム賦型金型を、転倒四角錐の2組の底辺の延在方向と、プリズムの延在方向が平行になるに設置し、射出成型により光学シート(5)を得た。
得られた光学シート(5)は、一方の面に、対向する2組の底辺の延在方向の交差角(狭角)が90°であり、一辺が150μmの正方形の底面を有する転倒四角錐がマトリックス状に賦型されており、もう一方の面に、高さ25μm、ピッチ50μm、頂角90°である二等辺三角形断面形状を有するプリズムが並列に賦型された光学シートであった。なお、プリズムの延在方向と転倒四角錐の2組の底辺の延在方向は、0°と90°(狭角)で交差している光学シートであった。
【0046】
<実施例4〜実施例9、及び比較例3〜比較例6>
設置面の法線から70°に出射強度のピークを有するレンズ付白色LEDを、図5に示すように、210mm×210mmの白色の反射シート上に9個、70mm間隔で格子状に配置し、反射シートと光拡散板の入光面との距離が18.5mmになるように、光拡散板を設置し、さらに光拡散板の出光面に表1に示すように各光学シートを重ね合せた。
【0047】
輝度ムラについては、各シート構成における最上の光学シートの出光面に生じる明暗を目視にて評価し、これらの結果を表1に示した。
【0048】
なお、プリズムシートには、住友スリーエム社製のBEFIII、反射偏光フィルムには、住友スリーエム社製のDBEFを、マイクロレンズシートには、シンファインターテック社製のPTD838を用いた。
【0049】
<輝度ムラ評価>
輝度ムラ評価は、LED上に配置した光学シートの法線方向、及び法線方向に対し±45°方向から目視により判定し、下記の5段階に区分した
1: 明確な境界線を有する明暗のパターンが確認できる。
2: 明暗領域の明確な境界線は認められないが、明暗パターンが明確に認められる。
3: 薄っすらとではあるが明暗パターンが認められる。
4: ほぼ明暗パターンは解消されているが、全体的な輝度均一レベルには至らず。
5: 明暗領域の存在が確認できず、全体的に輝度均一レベルが得られている。
【0050】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の光学シート、及び面状光源装置は、LED光源直下型液晶表示装置の薄型化、低コスト化に好適である。
【符号の説明】
【0052】
1:転倒四角錐賦型面
2:転倒四角錐の尾根部
3:転倒四角錐の沢部
4:転倒四角錐の谷底部
5:プリズム賦型面
6:プリズムの尾根部
7:プリズムの沢部
8:プリズムの谷底部
9:反射シート
10:LED光源
11:本発明の光学シート
12:プリズムシート
13:マイクロレンズシート
14:押出機
15:第1ロール
16:第2ロール
17:第3ロール
18:巻取りロール
D:反射シート表面からLED光源側へ最接近した光学シートの入光面までの距離
L:LED配置間隔の最短距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方のシート表面に複数の転倒四角錐が、該転倒四角錐の2組の対向する底辺が各々平行に2方向に延在するようマトリックス状に形成されており、
他方のシート表面にプリズムが連続して並列形成されている樹脂製光学シートであって、
前記転倒四角錐の2組の対向する底辺の延在方向が60°〜89°(狭角)で交差し、かつ前記プリズムの断面形状が、三角形及び/又は三角形の一部と曲線の一部が接合した形状であり、前記転倒四角錐の底辺の各延在方向と前記プリズムの延在方向が、いずれも30°〜60°(狭角)で交差していることを特徴とする光学シート。
【請求項2】
前記転倒四角錐における底面の長い方の対角線と、前記プリズムの延在方向が0°〜15°(狭角)で交差している請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
前記転倒四角錐の底辺が10μm〜1000μmであり、かつ、
前記プリズムの延在方向に垂直な断面形状における底辺が10μm〜1000μmである請求項1又は2に記載の光学シート。
【請求項4】
前記転倒四角錐の側面の光学シート水平面に対する傾斜角が30°〜60°であり、かつ、
前記プリズムの延在方向に垂直な凸部断面形状における三角形の両辺の内角、又は三角形の一部と曲線の一部が接合した凸部断面形状における三角形部分の両辺の延長線交差角(内角)が60°〜120°である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項5】
両面に形成されている転倒四角錐及びプリズム部分も含めた光学シート厚さ全体の50%以上の厚さを占める層厚に、透明樹脂に光拡散剤が配合された樹脂組成物が用いられている請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項6】
反射シート、及び反射シート上に配置された複数個のLED(発光ダイオード)光源と、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学シートを有することを特徴とする面状光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−234047(P2012−234047A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102504(P2011−102504)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】