説明

光学シート用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物

【課題】 寸法安定性に優れ、かつ光透過性に優れる硬化物を与える、光学シート用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 ホモポリマーのガラス転移温度が80〜250℃であるエチレン性不飽和モノマー(a1)を構成単位とし、少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する共重合体(A)、重合開始剤(B)および(メタ)アクリロイル基を3〜6個有する多官能(メタ)アクリレート(C)からなることを特徴とする光学シート用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学シート用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、寸法安定性および光透過性に優れた硬化物を与える、光学シート用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の輝度向上用プリズムシート、光拡散シート、プロジェクションテレビ用フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ等の光学シートは、生産性向上を目的に、活性エネルギー線硬化型樹脂(ウレタンアクリレート等)組成物と樹脂[例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと略記)、ポリカーボネート、ポリスチレン]シートを用い、これを金型で賦形して紫外線で硬化させることにより、連続的に生産されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−107219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、該方法は光線発生源であるランプが発光と同時に発熱するため、ランプ近傍の光学シートは約80℃の温度下に曝されることから部分的に撓んで変形し、その結果、画面に輝度ムラが発生してしまうという問題や、高湿度下では光学シートの吸湿により寸法安定性が悪化し撓みによる変形が促進されるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、ホモポリマーのガラス転移温度が80〜250℃であるエチレン性不飽和モノマー(a1)を構成単位とし、少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する共重合体(A)、重合開始剤(B)および(メタ)アクリロイル基を3〜6個有する多官能(メタ)アクリレート(C)からなることを特徴とする光学シート用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物;該組成物を硬化させてなる硬化物;該硬化物を基材の少なくとも片面の少なくとも一部に有する光学シート;並びに、該組成物を基材の少なくとも片面の少なくとも一部に塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化させることを特徴とする光学シートの製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、下記の効果を奏する。
(1)該組成物を硬化させてなる硬化物は、寸法安定性に優れる。
(2)該組成物を硬化させてなる硬化物は光透過性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の光学シート用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、ホモポリマーのガラス転移温度(以下Tgと略記)が80〜250(好ましくは85〜200、さらに好ましくは90〜180)℃であるエチレン性不飽和モノマー(a1)を構成単位とし、少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する共重合体(A)、重合開始剤(B)および(メタ)アクリロイル基を3〜6個有する多官能(メタ)アクリレート(C)からなる。
(a1)のホモポリマーのTgが80℃未満では後述する硬化物の寸法安定性が悪くなり、250℃を超えると硬化物の可撓性が悪くなる。
(C)の(メタ)アクリロイル基が3個未満では硬化物の硬度が低下し、6個を超えると硬化物の収縮による反りが悪化する。
【0008】
(a1)には、炭素数(以下Cと略記)2〜40、例えば芳香環含有ビニル化合物(a11)、環状オレフィン(a12)、ハロゲン含有脂肪族ビニル化合物(a13)、シアノ基含有脂肪族ビニル化合物(a14)、(メタ)アクリロイル基含有化合物(a15)およびこれらの混合物が含まれる。
【0009】
芳香環含有ビニル化合物(a11)には、単環[C8〜40、例えばスチレン、アルキル(C1〜36)スチレン(o−、m−およびp−メチルスチレン、α−およびβ−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等)、o−、m−およびp−クロルスチレン、p−t−ブトキシスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン、ジメチルアミノエチルスチレン]および多環[C12〜40、例えばビニルナフタレン、4−メチルチオ−1−ビニルナフタレン、1−(3−ナフト−1−イルチオ)プロピルチオ−4−ビニルナフタレン、N−ビニルカルバゾール]化合物が含まれる。
これらのうち後述する硬化物の光透過性および寸法安定性の観点から好ましいのは、スチレン、α−およびβ−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、o−、m−およびp−クロルスチレンである。
【0010】
環状オレフィン(a12)には、C5〜30で、環構造中および/または環外にエチレン性不飽和結合を有する非芳香族環状炭化水素が含まれ、それぞれ下記一般式(1)〜(4)で表される環状オレフィン[(a121)、(a122)、(a123)および(a124)]が挙げられる。
【0011】
【化1】

[式中、複数のR1は同一でも異なっていてもよい、HまたはC1〜4のアルキル基;複数のR2は同一でも異なっていてもよい、H、C1〜12の炭化水素基、カルボキシル基、−COOR4基(但し、R4はC1〜4のアルキル基)、ハロゲン原子、シアノ基、ベンゾイル基;R3はHまたは、R2と結合して環を形成してなるアルキリデンもしくはアルケニリデン基;hは0〜2の整数を表し、繰り返し単位の6員環内には二重結合を有していてもよい。]
【0012】
【化2】

【化3】

【化4】

[(2)〜(4)式中、R1およびhは上記に同じ。一般式(2)、(3)における繰り返し単位の6員環内には二重結合を有していてもよい。]
【0013】
上記R1のうちのアルキル基としては、メチル、エチル、n−およびi−プロピルおよびn−、i−、sec−およびt−ブチル基が挙げられる。
1のうち寸法安定性の観点から好ましいのはH、メチル基およびエチル基である。
上記R2のうちの炭化水素基としては、脂肪族基[アルキル基(C1〜4、例えばメチル、エチル、n−およびi−プロピルおよびn−、i−、sec−およびt−ブチル基)、アルケニル基(C2〜5、例えばエテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル)、アルキリデン基(R2とR3が結合して環を形成した場合で、C2〜5、例えばエチリデン、プロピリデンおよびブチリデン基)、アルケニリデン基(R2とR3が結合して環を形成した場合で、C2〜5、例えばビニリデン、プロペニリデンおよびブテニリデン基)等]、脂環基(C4〜6、例えばシクロブチル、シクロヘキシルおよびシクロヘキセニル基)および芳香族基(C6〜12、例えばフェニルおよびナフチル基)が挙げられる。
2のうち耐熱性の観点から好ましいのは、H、メチル基、エチル基、エチリデン基およびビニリデン基である。hは、硬化物の機械強度(引張強度、引張伸び等)の観点から好ましくは0または1である。
【0014】
(a121)の具体例としては、2−ノルボルネン、1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネンおよび2−エチリデン−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン等が挙げられる。
これらのうち、硬化物の光透過性および寸法安定性の観点から好ましいのは、2−エチリデン−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレンおよびさらに好ましいのは2−ノルボルネン、1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレンおよび5−エチリデン−2−ノルボルネンである。
【0015】
(a122)としては、テトラヒドロインデン、ヘキサヒドロインデン、1−メチルインデン等が挙げられ、これらのうち硬化物の光透過性および寸法安定性の観点から好ましいのはテトラヒドロインデンおよびヘキサヒドロインデンである。
【0016】
(a123)としては、ジシクロ−、トリシクロ−およびテトラシクロペンタジエン等が挙げられ、これらのうち硬化物の光透過性および寸法安定性の観点から好ましいのはジシクロ−およびトリシクロペンタジエンである。
【0017】
(a124)としては、ノルボルナジエンおよび2,5−ノルボルナジエン等が挙げられ、これらのうち硬化物の光透過性および寸法安定性の観点から好ましいのはノルボルナジエンである。
【0018】
ハロゲン含有脂肪族ビニル化合物(a13)には、C2〜10、例えば1,2−ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、テトラデカフルオロペンチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレンが含まれ、硬化物の光透過性および寸法安定性の観点から好ましいのはテトラデカフルオロペンチルエチレンである。
【0019】
シアノ基含有脂肪族ビニル化合物(a14)には、C3〜10、例えばアクリロニトリル、1−アセトキシ−1−シアノエチレンが含まれ、硬化物の光透過性および寸法安定性の観点から好ましいのは1−アセトキシ−1−シアノエチレンである。
【0020】
(メタ)アクリロイル基含有化合物(a15)には、(メタ)アクリロイル基の個数(官能数)が1〜2で、C8〜40の、芳香環含有(メタ)アクリレート(a151)、脂環含有(メタ)アクリレート(a152)、シアノ基含有(メタ)アクリレート(a153)、ハロゲン含有(メタ)アクリレート(a154)および(メタ)アクリルアミド化合物(a155)が含まれる。
これらのうち、硬化物の光透過性および寸法安定性の観点から好ましいのは(a152)、(a154)である。
【0021】
芳香環含有(メタ)アクリレート(a151)には、2官能[ビスフェノールAのアルキレンオキシド(以下AOと略記)付加物の(メタ)アクリレート等]、1官能[ナフチル(メタ)アクリル酸、アントラニル(メタ)アクリル酸等]等が含まれ、硬化物の光透過性および寸法安定性の観点から好ましいのは2官能ではビスフェノールAのAO付加物の(メタ)アクリレート、1官能ではアントラニル(メタ)アクリル酸である。
【0022】
脂環含有(メタ)アクリレート(a152)には、2官能[ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート等]、1官能[イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5−ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等]等が含まれ、硬化物の光透過性および寸法安定性の観点から好ましいのは2官能ではジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、1官能ではイソボルニル(メタ)アクリレートである。
【0023】
シアノ基含有(メタ)アクリレート(a153)には、1官能[シアノメチル−、2−シアノエチル−、2−シアノブチル−、2−シアノヘキシル−および2−シアノヘプチル(メタ)アクリレート等]等が含まれ、硬化物の光透過性および寸法安定性の観点から好ましいのはシアノメチル(メタ)アクリレートである。
【0024】
ハロゲン含有(メタ)アクリレート(a154)には、1官能[モノフルオロメチル−、ジフルオロメチル−、トリフルオロメチル−、ペンタフルオロエチル−およびトリクロロメチル(メタ)アクリレート等]等が含まれ、硬化物の光透過性および寸法安定性の観点から好ましいのはトリフルオロメチル(メタ)アクリレートである。
【0025】
(メタ)アクリルアミド化合物(a155)には、1官能[(メタ)アクリルアミド、N−sec−またはN−tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルおよび−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリルモルホリド、N−(メタ)アクリルピペリジド等]等が含まれ、硬化物の光透過性および寸法安定性の観点から好ましいのは、N−(メタ)アクリルモルホリド、さらに好ましいのはN−アクリルモルホリドである。
【0026】
本発明における共重合体(A)を構成するモノマーには、さらに、水酸基含有(メタ)アクリレート(a2)および(a2)と反応性の官能基を有する、(a1)以外のエチレン性不飽和モノマー(a3)からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーを加えてもよい。また、(A)中の(メタ)アクリロイル基は、(a1)〜(a3)のいずれに由来するものであってもよい。
【0027】
(a2)には、C4〜30、例えば2−ヒドロキシエチル−、ヒドロキシプロピル−およびヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート[例えば、(ポリ)カプロラクトン(n=1〜5)と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの反応物]が含まれ、硬化物表面の高硬度の観点から好ましいのはヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである。
【0028】
(a3)には、カルボキシル基含有(メタ)アクリロイル基含有化合物(a31)、エポキシ基含有(メタ)アクリレート(a32)、イソシアネート基含有(メタ)アクリレート(a33)、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリロイル基を含有しない(無水)不飽和カルボン酸(a34)が含まれる。
【0029】
(a31)には、C5〜20、例えば2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−コハク酸、−ヘキサヒドロフタル酸および−フタル酸が含まれ、硬化物の表面硬度の観点から好ましいのは2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸である。
【0030】
(a32)には、C6〜20、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチル−、α−n−プロピル−およびα−n−ブチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、o−、m−およびp−ビニルベンジルグリシジルエーテルが含まれ、後述する硬化物の寸法安定性、表面硬度の観点から好ましいのは、メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、o−、m−およびp−ビニルベンジルグリシジルエーテルである。
【0031】
(a33)には、C6〜20、例えば2官能[ビス(メタ)アクリロイルイソシアネート等]、1官能[2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等]が含まれ、反応性の観点から好ましいのは、ビス(メタ)アクリロイルイソシアネートである。
【0032】
(a34)には、C4〜C20、例えば(無水)フマル酸、(無水)イタコン酸および(無水)マレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が含まれ、硬化物の表面硬度の観点から好ましいのは(無水)マレイン酸である。
【0033】
(A)の重量に基づく構成単位(a1)の割合は、通常30〜90%、寸法安定性および硬化物の硬度の観点から好ましくは35〜85%、さらに好ましくは40〜83%、とくに好ましくは50〜80%
;(a2)の割合は、通常30%以下、硬化物の硬度と硬化物の反り抑制の観点から好ましくは26%以下、さらに好ましくは5〜15%;(a3)の割合は、通常40%以下、硬化物の硬度と硬化物の反り抑制の観点から好ましくは10〜30%である。
(a1)、(a2)、(a3)の組み合わせのうち、寸法安定性の観点から好ましいのは(a1)/(a2)/(a3)の組み合わせであり、その重量比は、硬化物の硬度の観点から好ましくは40〜70/10〜30/20〜30である。
【0034】
(A)と後述の(B)および(C)の合計重量に基づく(A)の割合は、寸法安定性および硬化物の硬度の観点から好ましくは50〜97%、さらに好ましくは55〜90%である。
【0035】
重合開始剤(B)には、光重合開始剤(B1)、熱重合開始剤(B2)およびこれらの混合物が含まれる。
(B1)としては、ヒドロキシベンゾイル化合物(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等)、ベンゾイルホルメート化合物(メチルベンゾイルホルメート等)、チオキサントン化合物(イソプロピルチオキサントン等)、ベンゾフェノン化合物(ベンゾフェノン等)、リン酸エステル化合物(1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等)、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
これらのうち硬化物の着色防止の観点から好ましいのは2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよび1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドである。
【0036】
(B2)としては、過酸化物(t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等)およびアゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビスイソバレロニトリル等)等が挙げられる。これらのうち組成物の安定性および反応性の観点から好ましいのは過酸化物、さらに好ましいのはt−ブチルパーオキシベンゾエートおよびメチルエチルケトンパーオキシドである。
【0037】
(B)の使用量は、(A)、(B)および後述の(C)の合計重量に基づいて、反応性および硬化物の硬度の観点から好ましくは0.1〜20%、さらに好ましくは0.3〜10%である。
【0038】
(メタ)アクリロイル基を3〜6個有する多官能(メタ)アクリレート(C)としては、C14以上かつ数平均分子量[以下Mnと略記。測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]1,000以下、例えばペンタエリスリトール(以下PEと略記)トリ−およびテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(以下TMPと略記)トリアクリレート、ジペンタエリスリトール(以下DPEと略記)ヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリン(以下GRと略記)AO付加物のトリ(メタ)アクリレート、PEのAO付加物のトリ−およびテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうち硬化物の表面硬度の観点から好ましいのは、PEトリ(メタ)アクリレートおよびDPEヘキサ(メタ)アクリレートである。
【0039】
(C)の使用量は、(A)、(B)および(C)の合計重量に基づいて、硬化物の硬度と硬化物の反り抑制の観点から好ましくは2.9〜49.9%、さらに好ましくは5〜40%、とくに好ましくは10〜30%である。
【0040】
本発明の組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要によりさらに塗料、インキに使用される種々のその他の添加剤(D)を含有させてもよい。(D)には、無機微粒子(D1)、有機微粒子(D2)、有機顔料(D3)、分散剤(D4)、消泡剤(D5)、レベリング剤(D6)、シランカップリング剤(D7)、チクソトロピー性付与剤(増粘剤)(D8)、スリップ剤(D9)、酸化防止剤(D10)紫外線吸収剤(D11)および帯電防止剤(D12)が含まれる。
(D)の合計の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常60%以下、添加効果および工業上の観点から好ましくは0.5〜50%である。
【0041】
無機微粒子(D1)としては、アルミナ[酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミナホワイト(アルミナ水和物)、シリカアルミナ(アルミナとシリカの融着物、アルミナの表面にシリカをコーティングしたもの等)]、ジルコニア、炭化タングステン、炭化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、ダイヤモンド、カーボンブラック(チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等)、シリカ(微粉ケイ酸、含水ケイ酸、ケイ藻、コロイダルシリカ等)、ケイ酸塩(微粉ケイ酸マグネシウム、タルク、ソープストーン、ステアライト、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸ソーダ等)、炭酸塩[沈降性(活性、乾式、重質または軽質)炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等]、クレー(カオリン質クレー、セリサイト質クレー、バイロフィライト質クレー、モンモリロナイト質クレー、ベントナイト、酸性白土等)、硫酸塩[硫酸アルミニウム(硫酸バンド、サチンホワイト等)、硫酸バリウム(バライト粉、沈降性硫酸バリウム、リトポン等)、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム(石コウ)(無水石コウ、半水石コウ等)等]、鉛白、雲母粉、亜鉛華、酸化チタン、活性フッ化カルシウム、セメント、石灰、亜硫酸カルシウム、二硫化モリブデン、アスベスト、ガラスファイバー、ロックファイバーおよびマイクロバルーン等が挙げられる。
【0042】
これらのうち硬化物(膜)の耐擦傷性および組成物、硬化物の着色抑制の観点から好ましいのはアルミナ、シリカ、ケイ酸塩、炭酸塩、硫酸塩および酸化チタン、さらに好ましいのはシリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウムおよび酸化チタンである。
(D1)は、2種以上併用してもよく、また2種以上が複合化(例えばシリカに酸化チタンが融着)されたものでもよい。(D1)の形状は、特に限定されず、例えば不定形状、球状、中空状、多孔質状、花弁状、凝集状および粒状のいずれでもよい。
(D1)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常50%以下、硬化物の耐熱性および可撓性の観点から好ましくは5〜30%、さらに好ましくは10〜25%である。
【0043】
有機微粒子(D2)としては、アクリル、スチレン、シリコーン、ポリウレタン、アクリルウレタン、ベンゾグアナミン、ポリエチレンの各樹脂のビーズが挙げられる。これらのうち耐熱性の観点から、シリコーン樹脂のビーズが好ましい。
また、(D2)の数平均粒径(μm)は、硬化物の光透過性および塗工性の観点から、好ましくは1〜30、さらに好ましくは3〜20である。
(D2)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常50%以下、硬化物の耐熱性および塗工性の観点から好ましくは5〜40%、さらに好ましくは10〜35%である。
【0044】
有機顔料(D3)としては、下記の(1)〜(4)が挙げられる。
(1)アゾ顔料
不溶性モノアゾ顔料(トルイジンレッド、パーマネントカーミンFB、ファストイエローG等)、不溶性ジスアゾ顔料(ジスアゾイエローAAA、ジスアゾオレンジPMP等)、アゾレーキ(溶性アゾ顔料)(レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B等)、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等;
(2)多環式顔料
フタロシアニンブルー、インダントロンブルー、キナクリドンレッド、ジオキサジンバイオレット等;
(3)染つけレーキ
塩基性染料(ビクトリアピュアブルーBOレーキ等)、酸性染料(アルカリブルートーナー等)等;
(4)その他
アジン顔料(アニリンブラック等)、昼光蛍光顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料等。
(D3)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常5%以下、硬化物の着色性および可撓性の観点から好ましくは0.5〜4%、さらに好ましくは1〜3%である。
【0045】
(D4)としては、有機分散剤[高分子分散剤(Mn2,000〜500,000)および低分子分散剤(分子量100以上かつMn2,000未満)]および無機分散剤が挙げられる。
【0046】
高分子分散剤としては、ナフタレンスルホン酸塩[アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)塩、4級アンモニウム塩等、以下の塩も同じ。]のホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩、ポリ(2〜4)カルボン酸(マレイン酸/グリセリン/モノアリルエーテル共重合体等)塩、カルボキシメチルセルロース(Mn1,000〜10,000)およびポリビニルアルコール(Mn1,000〜100,000)等が挙げられる。
【0047】
低分子分散剤としては、下記の(1)〜(8)が挙げられる。
(1)ポリオキシアルキレン型
脂肪族アルコール(C4〜30)、[アルキル(C1〜30)]フェノール、脂肪族(C4〜30)アミンおよび脂肪族(C4〜30)アミドのAO[C2〜4、例えばエチレンオキシド(以下EOと略記)、プロピレンオキシド(以下POと略記)]1〜30モル付加物等;
脂肪族アルコールとしては、n−、i−、sec−およびt−ブタノール、オクタノール、ドデカノール等;(アルキル)フェノールとしては、フェノール、メチルフェノールおよびノニルフェノール等;脂肪族アミンとしては、ラウリルアミンおよびメチルステアリルアミン等;および脂肪族アミドとしては、ステアリン酸アミド等が挙げられる。
(2)多価アルコール型
C4〜30の脂肪酸(ラウリン酸、ステアリン酸等)と多価(2価〜6価またはそれ以上)アルコール[例えばグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール(以下それぞれGR、PE、SOと略記)およびソルビタン]のモノエステル化合物等;
(3)カルボン酸塩型
C4〜30の脂肪酸(前記に同じ)のアルカリ金属(前記に同じ)塩等;
(4)硫酸エステル型
C4〜30の脂肪族アルコール(前記に同じ)および脂肪族アルコールのAO(C2〜4)1〜30モル付加物の硫酸エステルアルカリ金属(前記に同じ)塩等;
【0048】
(5)スルホン酸塩型
[アルキル(C1〜30)]フェノール(前記に同じ)のスルホン酸アルカリ金属(前記に同じ)塩等;
(6)リン酸エステル型
C4〜30の脂肪族アルコール(前記に同じ)および脂肪族アルコールのAO(C2〜4)1〜30モル付加物のモノまたはジリン酸エステルの塩[アルカリ金属(前記に同じ)塩、4級アンモニウム塩等]等;
(7)1〜3級アミン塩型
C4〜30の脂肪族アミン[1級アミン(ラウリルアミン等)、2級アミン(ジブチルアミン等)および3級アミン(ジメチルステアリルアミン等)]塩酸塩、トリエタノールアミンとC4〜30の脂肪酸(前記に同じ)のモノエステルの無機酸(塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸等)塩等;
(8)4級アンモニウム塩型
C4〜30の4級アンモニウム(ブチルトリメチルアンモニウム、ジエチルラウリルメチルアンモニウム、ジメチルジステアリルアンモニウム等)の無機酸(上記に同じ)塩等。
【0049】
無機分散剤としては、ポリリン酸のアルカリ金属(前記に同じ)塩およびリン酸系分散剤(リン酸、モノアルキルリン酸エステル、ジアルキルリン酸エステル等)等が挙げられる。
(D4)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常5%以下、上記(D1)〜(D3)等の分散性および硬化物の可撓性の観点から好ましくは0.05〜3%である。
【0050】
消泡剤(D5)としては、低級アルコール(C1〜6)(メタノール、ブタノール等)、高級アルコール(C8〜18)(オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール等)、高級脂肪酸(C10〜20)(オレイン酸、ステアリン酸等)、高級脂肪酸エステル(C11〜30)(グリセリンモノラウレート等)、リン酸エステル(トリブチルホスフェート等)、金属石けん(ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム等)、ポリエーテル[ポリエチレングリコール(以下PEGと略記)(Mn200〜10,000)、ポリプロピレングリコール(以下PPGと略記)(Mn200〜10,000)等]、シリコーン(ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル等)および鉱物油系(シリカ粉末を鉱物油に分散させたもの)等が挙げられる。
(D5)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常3%以下、硬化物の製造時の消泡性および硬化物の光透過性の観点から好ましくは0.01〜2%である。
【0051】
レベリング剤(D6)としては、PEG型非イオン界面活性剤(ノニルフェノールEO1〜40モル付加物、ステアリン酸EO1〜40モル付加物等)、多価アルコール型非イオン界面活性剤(ソルビタンパルミチン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸トリエステル等)、フッ素含有界面活性剤(パーフルオロアルキルEO1〜50モル付加物、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベタイン等)、変性シリコーンオイル[上記(D5)以外のもの、例えばポリエーテル変性シリコーンオイルおよび(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル]等が挙げられる。
(D6)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常3%以下、組成物塗工時のレベリング性および硬化物の光透過性の観点から好ましくは0.1〜2%である。
【0052】
シランカップリング剤(D7)としては、アミノ基含有シランカップリング剤(γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−フェニルアミノフロピルトリメトキシシラン等)、ウレイド基含有シランカップリング剤(ウレイドプロピルトリエトキシシラン等)、ビニル基含有シランカップリング剤[ビニルエトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等]、(メタ)アクリレート基含有シランカップリング剤[γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等]、エポキシ基含有シランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等)、イソシアネート基含有シランカップリング剤(γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等)、ポリマー型シランカップリング剤(ポリエトキシジメチルシロキサン、ポリエトキシジメチルシロキサン等)、カチオン型シランカップリング剤[N−(N−ベンジル−β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等]等が挙げられる。
(D7)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常5%以下、硬化物の基材への密着性および光透過性の観点から好ましくは0.5〜3%である。
【0053】
チクソトロピー性付与剤(増粘剤)(D8)としては、無機チクソトロピー性付与剤[ベントナイト、有機処理ベントナイト(表面ワックスコーティング処理ベントナイト等)および極微細表面処理炭酸カルシウム(コロイダル炭酸カルシウム等)等]および有機チクソトロピー性付与剤(水添ヒマシ油ワックス、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸アルミニウム、重合アマニ油等)が挙げられる。
(D8)の使用量は本発明の組成物の全重量に基づいて、通常10%以下、上記(D1)〜(D3)等の分散性および硬化物の可撓性の観点から好ましくは0.5〜5%である。
【0054】
スリップ剤(D9)としては、高級脂肪酸エステル(C11〜30、例えばステアリン酸ブチル)、高級脂肪酸(C10〜20、例えばオレイン酸、ステアリン酸)アミド(エチレンビスステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等)、金属石けん(ステアリン酸カルシウム、オレイン酸アルミニウム等)、ワックス[パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス等)等]およびシリコーン(例えばジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイルおよびフルオロシリコーンオイル)等が挙げられる。
(D9)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常5%以下、微粒子等の組成物成分の耐ブロッキング性および硬化物の光透過性の観点から好ましくは0.01〜2%である。
【0055】
酸化防止剤(D10)としては、ヒンダードフェノール化合物〔トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル〕およびアミン化合物(n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミノメチルメタクリレート等)が挙げられる。
(D10)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常3%以下、酸化防止効果および低着色性の観点から好ましくは0.005〜2%である。
【0056】
紫外線吸収剤(D11)としては、ベンゾトリアゾール化合物[2−(5−メチル−2
−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等]、トリアジン化合物〔2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール〕、ベンゾフェノン(2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン等)、シュウ酸アニリド化合物(2−エトキシ−2’−エチルオキサリック酸ビスアニリド等)が挙げられる。
(D11)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常3%以下、耐侯性および光透過性の観点から好ましくは0.005〜2%である。
【0057】
帯電防止剤(D12)としては、カチオン性帯電防止剤(D121)、アニオン性帯電防止剤(D122)および非イオン性帯電防止剤(D123)が挙げられる。
【0058】
(D121)としては、アミジニウム塩、グアニジニウム塩および4級アンモニウム塩等が挙げられる。該塩を構成するアニオンとしては、メチル−およびエチル炭酸アニオンが挙げられる。
(D121)のうち低着色性の観点から好ましいのはアミジニウムアルキル(C1〜3)炭酸塩とグアニジウムアルキル(C1〜3)炭酸塩、さらに好ましいのはイミダゾリニウムメチル炭酸塩とイミダゾリニウム骨格を有するグアニジウムメチル炭酸塩である。
【0059】
(D122)としては、スルホン酸(ポリエチレンスルホン酸、ラウリルスルホン酸等)塩、硫酸エステル(ラウリルアルコール硫酸エステル、ラウリルアルコールEO3モル付加物硫酸エステル等)塩、リン酸エステル(オクチルアルコールリン酸エステル、ラウリルアルコールEO3モル付加物リン酸エステル等)塩等が挙げられる。該塩を構成するカチオンとしてはアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)イオンが挙げられる。
(D122)のうち帯電防止性の観点から好ましいのはスルホン酸塩である。
【0060】
(D123)としては、高級アルコール(C8〜24、例えばオレイルアルコール、ラウリルアルコールおよびステアリルアルコール)のEO付加物、PEG脂肪酸エステル、多価アルコール(C2〜20、例えばGR、PE、SOおよびソルビタン等)脂肪酸エステル等が挙げられ、帯電防止性の観点から好ましいのは、多価アルコール脂肪酸エステルである。
【0061】
(D12)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常30%以下、硬化物の帯電防止性および光透過性の観点から好ましくは10〜25%である。
【0062】
上記(D1)〜(D12)の間で添加剤が同一で重複する場合は、それぞれの添加剤が該当する添加効果を奏する量を他の添加剤としての効果に関わりなく使用するのではなく、他の添加剤としての効果も同時に得られることをも考慮し、使用目的に応じて使用量を調整するものとする。
【0063】
本発明の組成物は、塗工の際に、塗工に適した粘度に調整するために、必要に応じて溶剤で希釈した組成物とすることができる。
溶剤の使用量は、該組成物の全重量に基づいて通常2,000%以下、ハンドリング性(作業性)および硬化物の表面硬度の観点から好ましくは10〜500%である。また、該希釈組成物の粘度は、使用時の温度(通常5〜60℃)で、通常5〜500,000mPa・s、安定塗工の観点から好ましくは10〜10,000mPa・sである。
【0064】
該溶剤としては、本発明の組成物中の樹脂分を溶解するものであれば特に限定されない。具体的には、芳香族炭化水素(C7〜10、例えばトルエン、キシレンおよびエチルベンゼン)、エステルまたはエーテルエステル(C4〜10、例えば酢酸エチル、酢酸ブチルおよびメトキシブチルアセテート)、エーテル[C4〜10、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコール(以下EGと略記)のモノエチル−およびモノブチルエーテル、プロピレングリコール(以下PGと略記)のモノメチルエーテルおよびジエチレングリコール(以下DEGと略記)のモノエチルエーテル]、ケトン(C3〜10、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトンおよびシクロヘキサノン)、アルコール(C1〜10、例えばメタノール、エタノール、n−およびi−プロパノール、n−、i−、sec−およびt−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコールおよびベンジルアルコール)、アミド(C3〜6、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)、スルホキシド(C2〜4、例えばジメチルスルホキシド)、水、およびこれらの2種以上の混合溶剤が挙げられる。
これらの溶剤のうち、乾燥工程時間の観点から好ましいのは、ケトンおよびアルコール、さらに好ましいのは酢酸エチル、メチルエチルケトン、i−プロパノールおよびこれらの混合物である。
【0065】
本発明の組成物は、必要により溶剤で希釈して、基材の少なくとも片面の少なくとも一部に塗布し、必要により乾燥させた後、活性エネルギー線(紫外線、電子線、X線等)を照射して硬化させることにより基材の表面および/または裏面の少なくとも一部に硬化物を有する光学シートを得ることができる。
該塗工に際しては、通常用いられる装置、例えば塗工機[バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター(サイズプレスロールコーター、ゲートロールコーター等)、エアナイフコーター、スピンコーター、ブレードコーター等]が使用できる。塗工膜厚は、硬化乾燥後の膜厚として、通常0.5〜300μm、乾燥性、硬化性の観点から好ましい上限は250μm、耐摩耗性、耐溶剤性、耐汚染性の観点から好ましい下限は1μmである。
【0066】
本発明の組成物を溶剤で希釈して使用する場合は、塗工後に乾燥するのが好ましい。乾燥方法としては、例えば熱風乾燥(ドライヤー等)が挙げられる。乾燥温度は、通常10〜200℃、塗膜の平滑性および外観の観点から好ましい上限は150℃、乾燥速度の観点から好ましい下限は30℃である。
【0067】
本発明の組成物を紫外線照射で硬化させるに際しては、公知の紫外線照射装置[例えば商品名「アイグランデージ」、アイグラフィック(株)製]を使用することができる。紫外線の照射量は、通常10〜10,000mJ/cm2、硬化物の可撓性の観点から好ましい上限は5,000mJ/cm2、組成物の硬化性の観点から好ましい下限は100mJ/cm2である。
【0068】
本発明の組成物を電子線照射で硬化させるに際しては、公知の電子線照射装置[例えば商品名「エレクトロンビーム」、岩崎電気(株)製]を使用することができる。電子線の照射量は、通常0.5〜20Mrad、組成物の硬化性の観点から好ましい下限は1Mrad、硬化物の可撓性、並びに硬化物(コーティング膜)または基材の損傷を避けるとの観点から、好ましい上限は、15Mradである。
【0069】
本発明の組成物は、通常、活性エネルギー線(紫外線、電子線、X線等)により硬化させるが、熱重合開始剤(B2)を含有する場合は熱で硬化させることができる。熱で硬化させる場合は、通常50〜200℃、硬化性および低着色性の観点から好ましくは80〜180℃のオーブンで1分〜20時間加熱処理される。
【0070】
本発明の光学シートには、液晶表示装置の輝度向上用プリズムシート、光拡散シート、プロジェクションテレビ用フレネルレンズおよびレンチキュラーレンズが含まれる。
これらの光学シートを作成するために使用する基材としては、特に限定されないが、各種シート、フィルム、板材が挙げられる。
シートとしてはPETシート、ポリカーボネートシート、ポリスチレンシート;フィルムとしてはPETフィルム、トリアセチルセルロースフィルム等;板材としては、ポリメタアクリル酸メチル(以下PMMAと略記)板、メタアクリル酸メチル/スチレン共重合体(以下MSと略記)板、ガラス板等が挙げられる。
【0071】
光学シートを作成するに際しては、プリズムシート、光拡散シートでは上記の各種シート、フィルム、板材に上記方法で塗工、乾燥して硬化させ、また、プロジェクションテレビ用フレネルレンズおよびレンチキュラーレンズでは、金型に樹脂を塗布し、その上から上記各種シート、フィルム、板材を貼り合わせたのち、上記方法で硬化させる。
【0072】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。以下において「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を表す。
【0073】
製造例1
冷却管、撹拌装置、温度計を取り付けた反応容器にスチレン−無水マレイン酸共重合樹脂[商品名「SMA2000」、サートマー(株)製、スチレン/無水マレイン酸共重合比(モル比)2/1。スチレンのホモポリマーのTgは109℃。]43.1部とメチルエチルケトン(以下MEKと略記)156.8部を仕込み、90℃で加熱撹拌し均一に溶解させた。この溶液に2−ヒドロキシエチルアクリレート[商品名「ライトエステルHOA」、共栄社化学(株)製、以下同じ。]14.9部、ハイドロキノン0.1部を加え、30時間加熱撹拌し還流させた。放冷して固形分27%の共重合体(A−1)の溶液を得た。該溶液の酸価は37mgKOH/gであった。
【0074】
製造例2
製造例1と同様の反応容器にメチルエチルケトン48.7部を入れ80℃に加熱した後、グリシジルメタアクリレート[商品名「ライトエステルG」、共栄社化学(株)製]7.4部、イソボルニルアクリレート[商品名「ライトアクリレートIB−XA」、共栄社化学(株)製。ホモポリマーのTgは95℃。]12.1部、および2、2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)[商品名「V−65」、和光純薬工業(株)製。以下同じ。]1.5部をMEK24.3部に溶解させた溶液を、6時間かけてそれぞれを同時滴下し、その後3時間加熱撹拌し還流させた。65℃まで放冷したのち、2−ヒドロキシエチルアクリレート6.0部を加え、80℃で10時間加熱撹拌し還流させた。放冷して固形分27%の共重合体(A−2)の溶液を得た。
【0075】
製造例3
製造例1と同様の反応容器にメチルエチルケトン48.7部を入れ80℃に加熱した後、グリシジルメタアクリレート[商品名「ライトエステルG」、共栄社化学(株)製]3.1部、イソボルニルメタアクリレート[商品名「ライトエステルIB−X」、共栄社化学(株)製。ホモポリマーのTgは180℃]19.3部、および2、2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.5部をMEK24.3部に溶解させた溶液を、6時間かけてそれぞれを同時滴下し、その後3時間加熱撹拌し還流させた。65℃まで放冷したのち、2−ヒドロキシエチルアクリレート3.1部を加え、80℃で10時間加熱撹拌し還流させた。放冷して固形分27%の共重合体(A−3)の溶液を得た。
【0076】
製造例4
製造例1と同様の反応容器にメチルエチルケトン48.7部を入れ80℃に加熱した後、グリシジルメタアクリレート[商品名「ライトエステルG」、共栄社化学(株)製]4.0部、トリフルオロメチルメタアクリレート[商品名「ライトエステルM−3F」、共栄社化学(株)製。ホモポリマーのTgは90℃]17.5部、および2、2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.5部をMEK24.3部に溶解させた溶液を、6時間かけてそれぞれを同時滴下し、その後3時間加熱撹拌し還流させた。65℃まで放冷したのち、2−ヒドロキシエチルアクリレート4.0部を加え、80℃で10時間加熱撹拌し還流させた。放冷して固形分27%の共重合体(A−4)の溶液を得た。
【0077】
製造例5
製造例1と同様の反応容器にビスフェノールAのEO10モル付加物[商品名「ニューポールBPE100」、三洋化成工業(株)製]77.8部と無水マレイン酸5.7部およびジブチルチンオキサイド0.03部を仕込み、10mmHg、200℃の条件で脱水してエステル化反応させた。得られたポリエステルにキシリレンジイソシアネート[商品名「タケネート500」、三井武田ケミカル(株)製]13.4部を入れ85℃で2時間反応させた後、2−ヒドロキシエチルアクリレートを3.1部加え、85℃で3時間反応させて共重合体(A−5)100部を得た。(A−5)をMEKで希釈して固形分27%のウレタンアクリレート(A−5)の溶液を得た。
【0078】
実施例1〜6、比較例1〜4
表1に示す割合で配合し、光学シート用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(実施例1〜6、比較例1〜4)を得た。
【0079】
【表1】

(A−6)の溶液:ポリテトラメチレングリコール(以下PTMGと略記)ウレタンアク
リレート[商品名「NKオリゴUA−160T」、新中村化学工業(株)製
]のMEK溶液(固形分27%)
(B−1):光重合開始剤[1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、
商品名「イルガキュアー184」、チバ・スペシャリティ・ケミ
カルズ(株)製]
(C−1):多官能アクリレート[ジペンタエリスリトールヘキサアクリレー
ト、商品名「ネオマー DA−600」、三洋化成工業(株)製]
(C−2):多官能アクリレート[ペンタエリスリトールトリアクリレート、
商品名「ライトアクリレートPE−3A」、共栄社化学(株)製]
【0080】
上記各組成物を用い下記要領で硬化物(膜)を作成し、以下の方法に従って評価した。結果を表1に示す。
(サンプルの作成)[吸水率、線膨張係数評価用]
該組成物を、ガラス板上のシリコンスペーサーで四角に区切ったスペースに入れ、これを硬化後の厚みが500μmになるようにバーコーターで拡げて塗布し、乾燥させた後、紫外線照射装置[商品名「アイグランデージ」、アイグラフィック(株)製。以下同じ。]で紫外線を1,000mJ/cm2照射して硬化後、ガラス板を取り外して硬化物(膜)を得た。
【0081】
(評価方法)
(1)線膨張係数(寸法安定性)
ASTM D696に準じて30〜80℃の温度範囲における線膨張係数を測定した。
(2)光線透過率
厚さ100μmのPETフィルム[商品名「東洋紡エステルフィルム」、東洋紡(株)製]に硬化後の膜厚が30μmになるように塗工し、乾燥させた後、紫外線照射装置で紫外線を1,000mJ/cm2照射し、硬化させた硬化物(膜)について、ASTM D1003に準じて光線透過率(%)を測定した。
(3)吸水率
ASTM D570に準じて吸水率を測定した。吸水率(%)は以下の式から求めた。

吸水率=(水浸漬後の重量−水浸漬前の重量)×100/(水浸漬前の重量)
【0082】
表1の結果から本発明の組成物(実施例1〜6)を硬化させてなる硬化物(膜)は、比較の組成物(比較例1〜4)を硬化させてなる硬化物(膜)に比べて寸法安定性および光透過性に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の光学シート用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させてなる硬化物は、寸法安定性および光透過性に優れることから、寸法安定性かつ光透過性が要求される用途[光学シート(液晶表示装置の輝度向上用プリズムシート、光拡散シート、プロジェクションテレビ用フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ等)等]に幅広く好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホモポリマーのガラス転移温度が80〜250℃であるエチレン性不飽和モノマー(a1)を構成単位とし、少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する共重合体(A)、重合開始剤(B)および(メタ)アクリロイル基を3〜6個有する多官能(メタ)アクリレート(C)からなることを特徴とする光学シート用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、水酸基含有(メタ)アクリレート(a2)および(a2)と反応性の官能基を有する、(a1)以外のエチレン性不飽和モノマー(a3)からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーを構成単位に加えてなる請求項1記載の組成物。
【請求項3】
(A)中の(a1)の割合が30〜90重量%である請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載の組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項5】
請求項4記載の硬化物を基材の少なくとも片面の少なくとも一部に有する光学シート。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか記載の組成物を基材の少なくとも片面の少なくとも一部に塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化させることを特徴とする光学シートの製造方法。

【公開番号】特開2008−81737(P2008−81737A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223170(P2007−223170)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】