説明

光学シート

【課題】 近年の液晶表示装置において、表示し得る色が視野角によって変化するという問題を解消しうる色補償シートの提供を目的とする。
【解決手段】 本発明は、表面に連続した微細なレンズ群を有してなる光学シートであって、該光学シートは、透明熱可塑性樹脂中に平均粒子径が0.4μm以下の微粒子を含有してなり、該光学シートの厚みをTmm、透明熱可塑性樹脂100質量部に対する微粒子の含有量をA質量部、透明熱可塑性樹脂と微粒子の屈折率をΔnとした場合に、T×A×Δnが0.0001〜0.02の範囲であることを特徴とする光学シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置の輝度を上昇させるとともに、液晶表示装置の視野角による色調の変化を抑える効果のある光学シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン用モニター、携帯端末、テレビなどに用いられる表示装置として、液晶表示装置が、薄型、軽量、且つ消費電力が小さいことから広く使用されてきている。液晶表示装置は、面発光するバックライトとその上に2枚の基板に液晶セルが挟まれた構造を持つ液晶パネルが設けられている。この液晶セルは、液晶分子の配向状態の違いで、ON、OFF表示を行い、その液晶セルを構成する液晶分子の種類に応じて、IPS(In−Plane Switching)、VA(Vertically Aligned)、STN(Super Twisted Nematic)等の表示モードが提案されている。しかしながら、この液晶表示装置の課題の一つとして、観察方向によって色調が変化するという現象がある。これは、液晶セルの透過率には角度依存性と波長依存性があることが起因している。
【0003】
たとえば、液晶分子のねじれ角が、90°のTNモードの液晶表示装置においては、視野角が大きくなるにつれて、短波長側の透過率が長波長側の透過率に比べて相対的に低くなる傾向があり、その結果、正面方向からの見た場合は全体的に青みを帯びた色調となり、視野角が大きくなるほど黄色味が強くなるという問題があった。
また、電圧を印加する、しないに応じて液晶分子が略水平、略垂直方向に配向するVAモードの液晶表示装置においては、視野角が大きくなるにつれて赤味が強くなるという問題があった。
【0004】
このような視角角による色調に関わる問題を解消するために、液晶層に色補償用の二色性色素を添加する方法(特許文献1)や、形状異方性の粒子を添加したフィルムを用いる方法(特許文献2)等が提案されている。
【0005】
しかしながら、これらの方法は高価な色素や異方性粒子を添加することから、不経済であるだけでなく、製造時にその添加剤の分散性や配向性を制御することは容易ではなく、実用化するには困難が伴っていた。また、これらの方法では、液晶表示装置の輝度が低下してしまうという問題も生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3974217号公報
【特許文献2】特開2004−341308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、液晶表示装置の輝度を上昇させるとともに、液晶パネルの視野角の変化による色調変化を抑制することのできる光学シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するに当たり、本発明によれば、第一の態様として、表面に連続した微細なレンズ群を有してなる光学シートであって、該光学シートは、透明熱可塑性樹脂中に平均粒子径が0.4μm以下の微粒子を含有してなり、該光学シートの厚みをTmm、透明熱可塑性樹脂100質量部に対する微粒子の含有量をA質量部、透明熱可塑性樹脂と微粒子の屈折率の差をΔnとした場合に、T×A×Δnが0.0001〜0.02の範囲であることを特徴とする光学シートが提供される。
【0009】
また、第二の態様として、連続した微細なレンズ群が光学シートの片面に有することを特徴とする第一の態様の光学シートが提供される。
【0010】
また、第三の態様として、微細なレンズ群を有している表面を出光面として測定した全光線透過率が40%以下であることを特徴とする第二の態様の光学シートが提供される。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明の光学シートによれば、液晶表示装置の輝度を損なうことなく、液晶パネルの視野角の変化による色調変化を低減し、あらゆる視野角においても良好な視認性を得ることができる
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の光学シートが用いられる液晶表示装置の1例の説明図である。
【符号の説明】
【0013】
1:白色LED
2:反射シート
3:導光板
4:マイクロレンズシート/PTD837(SHINWHA INTERTECH社製)
5:プリズムシート(プリズムレンズの長さ方向が画面の水平方向と垂直となるように設置)/BEFIII(住友3M社製)
6:本発明の光学シート
7:液晶セル(VAモード)
8:偏光板
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0015】
本発明は液晶表示装置の輝度を上昇させるとともに、液晶パネルの視野角の変化による色調変化を抑制することのできる光学シートに関する。
【0016】
本発明では「シート」と「フィルム」とは同義で用い、共に厚みが1.5mm程度以下の樹脂成形体を指す(以下、統一して「シート」と記す)。
【0017】
<光学シートの透明熱可塑性樹脂>
本発明に係る光学シートを構成する透明熱可塑性樹脂は、透明なものであり且つ光学シートの主な構成要素として適度な強度を有するものであれば特に制限されない。例えば、ポリカーボネート樹脂;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリ(p−メチルスチレン)などのスチレン系樹脂;MS樹脂(メチルメタクリレートとスチレンの共重合体);ノルボルネン系樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;これらのうち2種以上の混合樹脂などを用いることができる。好適にはポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂またはノルボルネン系樹脂を用いる。中でもポリカーボネート樹脂は、透明性や耐熱性、加工性に優れており、且つそれらのバランスがよいので光学シート用の樹脂として特に好ましい。
【0018】
ポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを界面重縮合法または溶融法で反応させて得られるものである。二価フェノールの代表的な例としては2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[通称ビスフェノールA]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等が挙げられ、なかでもビスフェノールAが好ましい。これらの二価フェノールは単独または2種以上を混合して使用できる。
【0019】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0020】
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重縮合法または溶融法によって反応させてポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防止剤等を使用してもよい。またポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよく、また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。本発明に用いるポリカーボネート樹脂としては、界面重縮合法(一般名称;ホスゲン法)によって得られたポリカーボネート樹脂を使用することが好ましい。尚、押出機やニーダー等によって樹脂を溶融処理していないポリカーボネート樹脂を用い、直接シート押出を行うことが、熱履歴によるシートの着色を低減できる点でより好ましい。
【0021】
ポリカーボネート樹脂の分子量は粘度平均分子量で表して通常15,000〜40,000、好ましくは18,000〜35,000である。本発明でいう粘度平均分子量は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]
[η]=1.23×10−40.83
(但しc=0.7、[η]は極限粘度)。
【0022】
本発明の光学シートに好適に用いることのできるポリカーボネート樹脂には、成形時における分子量の低下や色相の悪化を防止するために、さらにリン含有熱安定剤を使用することができる。かかる熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられる。
【0023】
具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクダデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオキソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、テトラキス(2,4−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニルホスホナイト、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられ、なかでもトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニルホスホナイトが好ましい。
【0024】
これらの熱安定剤は、1種もしくは2種以上を混合して用いてもよい。かかる熱安定剤の使用量は、該共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物100重量部に対して0.001〜0.15重量部が好ましい。
【0025】
さらに本発明のポリカーボネート樹脂には、押出成型や射出成型時の離型性を改良する目的等で脂肪酸エステル化合物を配合することができる。
【0026】
かかる脂肪酸エステルとしては、炭素数1〜20の一価または多価アルコールと炭素数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルであるのが好ましい。かかる一価または多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルや全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、ビフェニルビフェネート、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート等が挙げられ、なかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレートが好ましく用いられる。かかる脂肪酸エステルの使用量は、該共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物100重量部に対して0.001〜0.5重量部が好ましい。
【0027】
本発明のポリカーボネート樹脂には、上記成分以外に目的及び効果を損なわない範囲で他の成分、例えば、トリアゾール系、アセトフェノン系、サリチル酸エステル系等の紫外線吸収剤、オレフィン系硫酸エステルまたはその金属塩や、高級アルコールのリン酸エステル類、カチオン系アクリル酸エステル誘導体、脂肪酸多価アルコールエステル、アルキルアミンもポリオキシエチレン付加物などの帯電防止剤、ブルーイング剤、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAの低分子量ポリカーボネート、デカブロモジフェニレンエーテル等の難燃剤、三酸化アンチモン等の難燃助剤等の添加剤を必要に応じてその発現量配合してもよい。
【0028】
<光学シート上のレンズ群>
本発明の光学シートは、表面に連続した微細なレンズ群を有することを特徴とするが、この連続した微細なレンズ群の単位レンズ形状としては、該光学シート表面に対する傾斜角が40°〜50°である斜面を有することが好ましく、この傾斜角が40°〜50°である斜面の該光学シート表面への投影面積の合計は、該光学シート表面全体に対して、30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。この傾斜角40°〜50°の斜面の割合を上記範囲に制御することで本発明の光学シートを直下光源型のバックライトに用いた場合の輝度均整度や輝度上昇効果が十分になる傾向がある。
【0029】
本発明の光学シートにおける、連続した微細なレンズ群の単位レンズ形状としては、切断球凹凸形状、切断楕円体凹凸形状、円錐凹凸形状、切断円錐凹凸形状、三角錐凹凸形状、切断三角錐凹凸形状、四角錐凹凸形状、切断四角錐凹凸形状などの独立レンズ形状や、レンチキュラー形状、プリズム形状などの直線畝状レンズ形状などがあげられる。中でも輝度均整度の面から、四角錘凹凸形状、及びプリズム形状が好ましく、さらに輝度上昇効果の面からプリズム形状がより好ましい。また、例えば、四角錘凹凸形状の頂点、またはプリズム形状の稜線はレンズ形状の成型の関係で、丸みを帯びていても良い。
【0030】
本発明の光学シートは、エッジ光源型のバックライトに用いられる場合は導光板、直下光源型のバックライトに用いられる場合は拡散板と組み合わせて用いられるが、これに加えて、輝度向上効果や輝度均整度向上効果のある他の光学シートを併用することや、本発明の光学シートを複数使用することも好ましい態様である。
【0031】
<微粒子>
本発明の光学シートに用いられる微粒子の平均粒子径(コールターカウンターで測定)は、0.4μm以下であり、好ましくは0.35μm以下であり、さらに好ましくは0.32μm以下である。微粒子の平均粒子径を上記範囲に制御することで可視光領域の長波長側の光に対する拡散性を十分に確保でき、その結果、液晶ディスプレイに実装した場合に十分な効果が得られる傾向にある。
【0032】
本発明の光学シートに用いられる微粒子の材質としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、これらの共重合体などの合成樹脂;ガラス;スメクタイト、カオリナイトなどの粘土化合物;シリカ、アルミナなどの無機酸化物;などが挙げられる。これらの材質のうち、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、シリカが特に好適であり、中でもシリカが最も好適である。
【0033】
上記微粒子は、本発明の光学シート全体に均一に添加してもよいが、入光面および/または出光面側に微粒子層を設けても良い。
【0034】
上記微粒子としてラジカル重合により得られる有機微粒子を用いる場合には、微粒子の原料モノマーとして、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート類;スチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−t−ブチルスチレンなどのスチレン類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミドなどのマレイミド類;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;(メタ)アクリロニトリルなどのアクリロニトリル類;N−ビニルピロリドン;の1種、或いはこれらのうち2種以上を混合して用いることができる。
【0035】
また、微粒子としてラジカル重合により得られる架橋有機微粒子を用いる場合には、上記組成に加え、架橋微粒子の原料モノマーとして、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ビスヒドロキシエチルビスフェノールAジ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート;ジビニロキシエトキシ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンなどのラジカル重合性架橋剤;ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルなどの多官能エポキシ化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの多官能イソシアネート化合物;N−メチロールメラミン、N−メチロールベンゾグアナミンなどの多官能メチロール化合物;の1種、或いはこれらのうち2種以上を混合して用いることができる。
【0036】
<光学シート厚み>
本発明の光学シートの厚みは、0.05〜1.5mm程度であれば特に制限はないが、特にフラットパネルディスプレイの光学シートとして用いる場合、パネル自体の軽量化や薄肉化が望まれており、シート厚は0.8mm以下とすることが好ましく、より好ましくは0.7mm以下であり、さらに好ましくは0.6mm以下である。一方、光学シートとして必要な剛性を確保するために、シート厚の下限としては、0.1mm以上が好ましく、0.15mm以上がより好ましく、0.2mm以上がさらに好ましい。
【0037】
本発明の光学シートは、該光学シートの厚みをTmm、透明熱可塑性樹脂100質量部に対する微粒子の含有量をA質量部、透明熱可塑性樹脂と微粒子の屈折率の差をΔnとした場合に、T×A×Δnが0.0001〜0.02の範囲であることを特徴とする。T×A×Δnは、0.0005〜0.015がより好ましく、0.001〜0.01がさらに好ましい。T×A×Δnが上記範囲を超えると、該光学シートの透明性が失われ、バックライトに使用した場合の輝度が低下する恐れがあり、上記下限に満たない場合は、十分な色補償効果が得られない恐れがある。
【0038】
本発明の光学シートは、微細なレンズ群を有している表面を出光面として測定した全光線透過率(JIS K7361に準拠して測定)が40%以下であることが好ましく、35%以下がより好ましく、30%がさらに好ましい。全光線透過率を上記範囲に制御することで該光学シートをバックライトに使用した場合の輝度上昇効果が十分となる傾向がある。
【0039】
本発明の光学シートは、微細なレンズ群による光の屈折の影響をなくして測定した拡散度(ゴニオメーターで該光学シートに垂直方向から光を入射した場合に、0°出射光に対する30°出射光の割合)が0.3%以下であることが好ましく、0.25%以下がより好ましく、0.2%以下がさらに好ましい。
【0040】
ここで、微細なレンズ群による光の屈折の影響をなくす手段としては、この微細なレンズ群を有する光学シート表面を、該光学シートに用いた透明熱可塑性樹脂と同じ屈折率の接触液で埋めて、ガラスプレートで挟み込んで測定する、または熱プレスで該光学シート表面の微細なレンズ群を鏡面として測定する手段等がある。
【0041】
この微細なレンズ群による光の屈折の影響をなくして測定した拡散度は、本光学シートに入射する光全体の拡散性を示す指標であり、この値が上記範囲より大きくなると、光全体の拡散性が高くなってしまい、本発明の光学シートでは拡散させたくない長波長側の光をも拡散させてしまうため、本発明の目的である視野角による色調の変化を抑制する効果が低減し、さらに正面輝度も低下する傾向がある。
【0042】
本発明の有機微粒子または熱可塑性樹脂の少なくとも一方へは、さらに酸化防止剤を配合してもよい。酸化防止剤は加熱成形時における酸化や劣化による有機微粒子の着色を抑制することができるので、本発明の光学シートを適用した光源ユニットの輝度をより確実に発揮せしめることができる。
【0043】
酸化防止剤としては従来公知のものを用いることができる。例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]やオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−1−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのヒンダードフェノール系酸化防止剤;トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトやトリス[2−[[2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェフィン−6−イル]オキシ]エチル]アミンなどのリン系酸化防止剤;芳香環を有するものとして、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]など、芳香環を有さないものとして、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)などの硫黄系酸化防止剤;3−ヒドロキシ−5,7−ジ−t−ブチル−フラン−2−オンとo−キシレンの反応生成物などのラクトン系酸化防止剤;還元型牛脂を原料としたアルキルアミンの酸化生成物などのヒドロキシルアミン系酸化防止剤;3,4−ジヒドロ−2,5,7,8−テトラメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデシル)−2H−ベンゾピラン−6−オールなどのビタミンE系酸化防止剤などを使用できる。酸化防止剤の使用量は適宜調整すればよいが、通常、有機微粒子全体に対して0.005質量%以上、0.3質量%以下程度添加すればよい。
【0044】
<光学シートの光学要素以外の機能付与>
本発明の光学シートは、紫外線吸収剤・帯電防止剤・滑剤・近赤外線吸収剤を本発明の主旨を損なわない範囲で用いることができるが、特に、光源側に設定される面において、紫外線吸収剤を含む層、帯電防止剤を含む層、或いは紫外線吸収剤含有層と帯電防止剤含有層の両方が形成されていていることが好ましい。
【0045】
紫外線吸収剤と帯電防止剤としては従来公知のものを使用することができる。例えば紫外線吸収剤としては、サリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;トリアジン系紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;環状イミノエステル型紫外線吸収剤;分子内にヒンダードフェノール構造とヒンダードアミン構造を有するハイブリッド系紫外線吸収剤;トリフェニルシアノアクリレート系紫外線吸収剤;シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤;マロン酸エステル系紫外線吸収剤;などの低分子紫外線吸収剤や、これら低分子紫外線吸収剤が高分子に懸垂するような形で結合している高分子紫外線吸収剤(例えば、日本触媒社製のハルスハイブリッド(登録商標)など)を用いることができる。中でもトリフェニルシアノアクリレート系紫外線吸収剤;シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤;マロン酸エステル系紫外線吸収剤が可視光線領域における光の吸収が少ない為好適である。ポリカーボネート樹脂に用いる場合はシュウ酸アニリド系紫外線吸収剤;マロン酸エステル系紫外線吸収剤が更に好適である。
【0046】
帯電防止剤としては、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸や、それらのLi、Na、Ca、Mg、Zn塩などのオレフィン系硫酸エステルまたはその金属塩;高級アルコールのリン酸エステル類などのアニオン界面活性剤;第3級アミン、第4級アンモニウム塩、カチオン系アクリル酸エステル誘導体、カチオン系ビニルエーテル誘導体などのカチオン界面活性剤;アルキルアミン系ベタインの両性塩、カルボン酸アラニンまたはスルホン酸アラニンの両性塩、アルキルイミダゾリンの両性塩などの両性界面活性剤;脂肪酸多価アルコールエステル、アルキル(アミン)のポリオキシエチレン付加物などの非イオン界面活性剤;ポリエーテルエステルアミドやポリエステルアミドなどのポリアミドエラストマーなどを用いることができる。また、ポリビニルベンジル型カチオン樹脂やポリアクリル酸型カチオン樹脂などの導電性樹脂も帯電防止剤として用いることができる。
【0047】
紫外線吸収剤および帯電防止剤の使用量は各機能に応じて適宜調整することができるが、通常、各層を構成する樹脂100質量部に対して1〜50質量部程度である。
【0048】
これら異なる機能を有する層は、シートを構成する熱可塑性樹脂と同一の樹脂中に紫外線吸収剤や帯電防止剤を均一分散させたシートを、熱圧着や接着剤で光学シート上などに接着すればよい。或いは、紫外線吸収剤などを含むペーストを光学シート上に塗布した上で乾燥または冷却してもよい。また、シートを構成する熱可塑性樹脂と、紫外線吸収剤や帯電防止剤を配合した熱可塑性樹脂を共押出成形してもよい。
【0049】
これら異なる機能を有する層の厚さは各機能などに合わせて適宜調整すればよいが、通常、1〜50μm程度にすることができる。
【0050】
本発明の光学シートの大きさや形状は特に制限されず、例えば、液晶ディスプレイ用の光源ユニットの大きさに合わせて使用すればよい。
【実施例】
【0051】
次に本発明の実施例を説明するが、本発明は本例に限定されることはない。
【0052】
<実施例1>
ポリカーボネート樹脂(「ユーピロンE2000FN」:三菱エンジニアリングプラスチック社製、屈折率:1.585)100部と、リン系熱安定剤(「イルガフォス168」:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.1部と、平均粒子径0.3μmのシリカ系微粒子(「シーホスター KE−P30」:日本触媒社製、屈折率:1.43)0.1部を265℃で溶融させて、金型レンズロールを用いた押出成型により、片側の表面がフラットで、もう一方の表面に、ピッチ160μm、高さ80μmの直角二等辺三角形の断面形状をもつ直線畝上のプリズムレンズが連続して配置されている、厚さ0.5mmのシートを得た。
【0053】
<実施例2>
平均粒子径0.3μmのシリカ系微粒子(「シーホスター KE−P30」:日本触媒社製、屈折率:1.43)を0.05部使用した以外は実施例1と同様にして、片面にプリズムレンズ群を有する光学シートを得た。
【0054】
<実施例3>
平均粒子径0.3μmのシリカ系微粒子(「シーホスター KE−P30」:日本触媒社製、屈折率:1.43)を0.03部使用した以外は実施例1と同様にして片面にプリズムレンズ群を有する光学シートを得た。
【0055】
<実施例4>
平均粒子径0.3μmのシリカ系微粒子(「シーホスター KE−P30」:日本触媒社製、屈折率:1.43)を0.15部使用し、厚さ0.3mmとした以外は実施例1と同様にして片面にプリズムレンズ群を有するシートを得た。
【0056】
<実施例5>
平均粒子径0.3μmのシリカ系微粒子(「シーホスター KE−P30」:日本触媒社製、屈折率:1.43)を0.1部使用し、厚さ0.3mmとした以外は実施例1と同様にして片面にプリズムレンズ群を有するシートを得た。
【0057】
<実施例6>
平均粒子径0.1μmのシリカ系微粒子(「シーホスター KE−P10」:日本触媒社製、屈折率:1.43)を0.1部使用し、厚さ0.3mmとした以外は実施例1と同様にして片面にプリズムレンズ群を有するシートを得た。
【0058】
<比較例1>
平均粒子径1.0μmのシリカ微粒子((「シーホスター KE−P100」:日本触媒社製、屈折率:1.43))を0.1部用いた以外は、実施例1と同様にして厚さ0.5mmの片面にプリズムレンズ群を有するシートを得た。
【0059】
<比較例2>
平均粒子径0.3μmのシリカ系微粒子(「シーホスター KE−P30」:日本触媒社製、屈折率:1.43)を0.4部使用した以外は実施例1と同様にして、片面にプリズムレンズ群を有する光学シートを得た。
【0060】
<比較例3>
シリカ微粒子を使用しない以外は、実施例1と同様にして厚さ0.5mmの片面にプリズムレンズ群を有するシートを得た。
【0061】
<比較例4>
金型レンズロールを用いず、鏡面のロールを用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ0.5mmのフラットなシートを得た。
【0062】
得られた各シートの色補償性、正面輝度、拡散度、透過率の評価を行い、表1の結果を得た。
【0063】
<色補償性の評価方法>
図1に示す構成で、液晶表示装置を白表示させ、正面から意の色調、斜め45°からの色調を目視で確認した。なお、実施例および比較例で作成したプリズムレンズシートは、プリズムレンズの長さ方向が画面の水平方向と平行となるように設置した。
色補償性の評価結果は、以下の基準で4段階評価した。
【0064】
正面からの色調
評価点
4:白色
3:ほぼ白色
2:わずかに着色あり
1:着色あり。
【0065】
左右斜め45°からの色調
評価点
4:白色
3:ほぼ白色
2:わずかに赤味あり
1:赤味あり。
【0066】
<正面輝度の評価方法>
図1に示す構成で、液晶表示装置を白表示させ、画面中心部分の正面からの輝度を2次元色彩輝度計(コニカミノルタ CA−2000)を用いて測定した。なお、実施例および比較例で作成したプリズムレンズシートは、プリズムレンズの長さ方向が画面の水平方向と平行となるように設置した。
【0067】
<全光線透過率の評価方法>
濁度計(日本電色社製 NDH4000)を用いてJIS K7361に準拠して測定した。なお、実施例および比較例で作成したプリズムレンズシートは、プリズムレンズ面を出光面とし、かつプリズムレンズの長さ方向が垂直方向となるように設置して測定した。
【0068】
<拡散度の測定方法>
ゴニオメーター(村上色彩技術研究所 GP−5)を用いて、光の入射角0°(サンプルに垂直)となるように光学シートサンプルをセットし、その拡散出射光を−90〜90°の範囲で測定する。
【0069】
なお、実施例および比較例で作成したプリズムレンズシートは、プリズムレンズ面を、透明熱可塑性樹脂として用いたポリカーボネートと同じ屈折率1.59の接触液で満たし、ガラスプレートで挟み込んで、プリズムレンズの影響を排除して測定した。また、フラットなシートを測定する場合は、接触液、ガラスプレートは用いずに測定した。
以下の式から拡散度を求める。
拡散度=(30°の出射角光強度)/(0°の出射角光強度)×100。
【0070】
表1に示すように、本発明の実施形態である実施例1〜6では、視野角によって色調が変わることなく本発明の光学シートによる色補償効果が発揮されるとともに、正面輝度も十分高い結果となっている。一方、平均粒子径が、1.0μmと大きい微粒子を添加した比較例1では、左右視野角における色補償効果が不十分で正面輝度も低く、平均粒子径が0.3μmの微粒子を必要以上に多く添加した比較例2では、正面輝度の低下がさらに大きい。また、微粒子を添加しない比較例3では、色補償効果は認められず、シート表面に微細なレンズ形状を有しない比較例4では、正面輝度の低下が最も大きくなっていることがわかる。
【0071】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の色補償シートにより、液晶表示装置の輝度を損なうことなく、表示し得る色が視野角によって変化するという問題を解消することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に連続した微細なレンズ群を有してなる光学シートであって、
該光学シートは、透明熱可塑性樹脂中に平均粒子径が0.4μm以下の微粒子を含有してなり、該光学シートの厚みをTmm、透明熱可塑性樹脂100質量部に対する微粒子の含有量をA質量部、透明熱可塑性樹脂と微粒子の屈折率の差をΔnとした場合に、T×A×Δnが0.0001〜0.02の範囲であることを特徴とする光学シート。
【請求項2】
前記連続した微細なレンズ群が光学シートの片面に有することを特徴とする請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
該光学シートにおいて、前記微細なレンズ群を有している表面を出光面として測定した全光線透過率が40%以下であることを特徴とする請求項2に記載の光学シート。

【図1】
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【公開番号】特開2013−68784(P2013−68784A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207045(P2011−207045)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】