説明

光学デバイス用梱包ケース

【課題】 より安価で保守メンテナンスと再利用が容易な光学デバイス用梱包ケースを提供する。
【解決手段】 光学デバイス3を搭載し、被覆してなる光学デバイス用梱包ケース4であって、前記ケースは、周壁とこの周壁の一部に連結されてなる主面42とを具備しており、前記ケースの周壁は、段差部412を介して、大きな開口部413と小さな開口部411が高さ方向に形成されており、前記ケースの主面には、光学デバイスを収容する凹部421が形成されてなるとともに、当該ケースを少なくとも2つ用意して、上側ケースの大きな開口部に、下側ケースの小さな開口部を挿入して、下側ケースあるいは上側ケースの段差部に係止させることで、お互いを段重ね一体化してなり、かつお互いを着脱自在に構成されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光学ローパスフィルタ、波長板、複屈折板等の光学デバイスを収容する梱包ケースに関するものである。
【0002】
【従来の技術】光学ローパスフィルタ等の光学デバイスは、ビデオカメラや電子スチルカメラ等に用いられている。これら光学デバイスは、特にその光学的情報を含む光線の入射面(主面)には、ゴミ、ホコリ等が付着しないように配慮することが求められており、製造並びに梱包はクリーンルーム内で行われる。
【0003】従来の光学デバイスの梱包ケースについて、図6、図7とともに説明する。図6は従来の梱包ケースを示す平面図であり、図7は図6の閉蓋時のA−A断面図である。
【0004】下ケース1はポリエチレンテレフタレートからなり、光学デバイス3が各々収容できる収容凹部11が複数形成されている。これら収容凹部11に光学デバイス3を収容する。光学デバイス3は例えば光学ローパスフィルタなどであり、複屈折板、波長板等の複数の光学板を貼り合わせた構成で、かつ光線入射面31、32には誘電体多層膜が形成されている。これら光学デバイスを上ケース2で被覆し、ホコリ等の侵入を防いでいる。
【0005】そして、光学ローパスフィルタ3としては、個々にそのエッジ部が面取り加工されているものと、コストダウンの要求、および光線入射面(主面)の有効エリア拡大の要求から、面取り加工が施されていないものがある。前者は比較的大型で高精度用(空間周波数のカット特性に優れたもの)の光学デバイスに多く使用され、後者は比較的小型で汎用光学デバイスに多く使用されているのが現状である。
【0006】なお、光学デバイスのうち面取り加工されないものは、光学デバイスのエッジ部は鋭利な状態であり、上述のケースに収容した場合、輸送時等において光学デバイスが遊動することによりケース内を切削し、ゴミ等が発生する原因となっていた。このゴミの光学デバイス主面への付着は所望の光学特性に対するノイズとなり、画像悪化の原因となるため、ユーザー側でゴミの除去する必要があった。
【0007】そこで、上記面取り加工されない光学デバイス用の梱包ケースでは、上記ゴミの問題点を考慮したケースが提案されている(特開平9−30593号を参照)。特開平9−30593号では、梱包ケースの光学デバイス搭載面に両面接着シートを貼り付け、光学デバイスの底面を固定して、前記光学デバイスの遊動を防止できるように構成されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の光学デバイス用梱包用ケースでは、梱包ケースを構成するパーツは下ケースと上ケースの2点からなるので、各構成パーツの形状も特殊なものとなってコスト高となったり、梱包ケースの洗浄、保守メンテナンス、再利用が行いにくいといった問題点がある。また、面取り加工されていない光学デバイスについては、ゴミを発生しない梱包ケースの構成が必要不可欠となっている点があげられる。
【0009】本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、より安価で保守メンテナンスと再利用が容易な光学デバイス用梱包ケースを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明に示す光学デバイス用梱包ケースは、請求項1に示すように、光学デバイスを搭載し、被覆してなる光学デバイス用梱包ケースであって、前記ケースは、周壁とこの周壁の一部に連結されてなる主面とを具備しており、前記ケースの周壁は、段差部を介して、大きな開口部と小さな開口部が高さ方向に形成されており、前記ケースの主面には、光学デバイスを収容する凹部が形成されてなるとともに、当該ケースを少なくとも2つ用意して、下側ケースあるいは上側ケースの大きな開口部に、上側ケースあるいは下側ケースの小さな開口部を挿入して、下側ケースあるいは上側ケースの段差部に係止させることで、お互いを段重ね一体化してなり、かつお互いを着脱自在に構成されてなることを特徴とする。
【0011】また、請求項2に示すように、前記ケースの主面には、光学デバイスを収容する第1の凹部と、この第1の凹部の底面に光学デバイスが挿入されない第2の凹部を形成し、前記下ケースと上ケースをお互いを段重ねして一体化することで、前記光学デバイスは、前記下側ケースの第1の凹部の上底面と上側ケースの第2の凹部の下底面により挟持されてなることを特徴とする。
【0012】また、請求項3に示すように、前記ケースを3つ以上用意して段重ね一体化してなるとともに、最上部以外のケースの主面に、前記光学デバイスが収容されてなることを特徴とする。
【0013】
【発明の効果】上記構成により、梱包ケースの構成部品につき、少なくとも1種類のケースを2つ用意するだけで、光学デバイスを搭載収納する下ケースとしての役割と、光学デバイスを被覆する上ケースとしての役割を兼ね備えることができる。従って、構成部品の数を無駄に増やすことなく、製造金型など製造設備を削減でき、コストを低減させる。また、ケースの分解・組立が容易に行えるため、ケースの交換ができ、保守メンテナンスと再利用が極めて容易に行える。
【0014】また、特許請求項2により、搬送時などに光学デバイスが上下に遊動することがなくなり、当該光学デバイスの破損、ケースの破損、ケースのゴミの発生を防止できる。特に、面取り加工されない光学デバイスに有効な構成となる。
【0015】また、特許請求項3により、大数個の光学デバイスをよりコンパクトに収容できる積重構成の複合ケース体が得られ、製品梱包ユニットとしての取り扱いが飛躍的に向上する。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明による第1の実施形態について、光学ローパスフィルタ用梱包ケースを例にとり、図面とともに説明する。図1は本発明の第1の実施形態を示す斜視図であり、図2は図1のケースを2つ用意して組み立てた状態の断面図であり、図3は図1のケースを3つ用意して組み立てた状態の断面図である。なお、従来例と同様の部分については同番号を付している。
【0017】梱包ケース4は、例えば、その材料がポリエチレンテレフタレート(PET)からなり、周壁41とこの周壁の上端部に連結されてなる主面42とを具備した伏せ型に加工されている。
【0018】前記ケースの周壁41は、上側から下側に向かって、小さな開口部411、段差部412、大きな開口部413が形成されている。
【0019】前記ケースの主面42には、光学デバイス3が収容される第1の凹部421が複数ヶ所に形成されている。この第1の凹部421の底面には、光学デバイスが挿入されない第2の凹部422が形成されている。第2の凹部は、上側ケースとして用いた場合に光学デバイスの頂部を押さえつけ、光学デバイスが遊動するのを抑制する。
【0020】そして、図2に示すように、前記ケース4を2つ用意し、それぞれ上側ケースと下側ケースとして使用する。下側ケースの第1の凹部421には、光学デバイス3を収容するとともに、当該下側ケースの主面42と小さな開口部411を、上側ケース4の大きな開口部413に挿入して、上側ケースの段差部412に下側ケース4の小さな開口部411を係止させることで、お互いを段重ね一体化する。以上により光学デバイス3は、下側ケースと上側ケースで密封され、しかも下側ケースの第1の凹部421の上底面と上側ケースの第2の凹部422の下底面により挟持される。
【0021】また、図3では、前記ケース4を3つ用意し、それぞれ上側ケースと中ケースと下側ケースとして使用した複合ケース構成を開示している。各ケースの詳細な点は上述したとおりであるので省略するが、上述の構成に比べて、光学デバイス3を下側ケース4と中ケース4に収納した積重構造となり、より多数個の光学デバイスを収容できるものである。
【0022】なお、ケース周壁の小さな開口部411の外周寸法と大きな開口部413の内周寸法、ならびに段差部412の幅寸法については、各ケースを重ね合わせた際にお互いに嵌着され、容易に着脱できるように、適宜設計する必要がある。上述した第1の実施形態では、ケース周壁の小さな開口部411の外周寸法、外周形状と、ケース周壁の大きな開口部413の内周寸法、内周形状とをほぼ同一としていることで、より安定した状態でお互いに嵌着され、段重ね一体化できる好ましい構成となった。
【0023】次に、本発明による第2の実施形態について、図面とともに説明する。図4は本発明の第2の実施形態を示す断面図である。なお、上記の第1の実施形態と同様の部分については同番号を付すとともに説明の一部を割愛した。
【0024】梱包ケース5は、例えば、その材料がポリエチレンテレフタレート(PET)からなり、周壁51とこの周壁の中央付近に連結されてなる主面52とを具備した断面略H型に加工されている。
【0025】前記ケースの周壁51は、上側から下側に向かって、小さな開口部511、段差部512、大きな開口部513が形成されている。
【0026】前記ケースの主面52には、光学デバイス3が収容される第1の凹部521が複数ヶ所に形成されている。この第1の凹部521の底面には、光学デバイスが挿入されない第2の凹部522が形成されている。第2の凹部は、上側ケースとして用いた場合に光学デバイスの頂部を押さえつけ、光学デバイスが遊動するのを抑制する。
【0027】そして、前記ケース5を2つ用意し、それぞれ上側ケースと下側ケースとして使用する。下側ケースの第1の凹部521には、光学デバイス3を収容するとともに、当該下側ケースの主面52と小さな開口部511を、上側ケース5の大きな開口部513に挿入して、上側ケースの段差部512に下側ケース5の小さな開口部511を係止させることで、お互いを段重ね一体化する。
【0028】以上により光学デバイス3は、下側ケースと上側ケースで密封され、しかも下側ケースの第1の凹部521の上底面と上側ケースの第2の凹部522の下底面により挟持される。
【0029】また、図4(b)では、前記ケース5を3つ用意し、それぞれ上側ケースと中ケースと下側ケースとして使用した複合ケース構成を開示している。各ケースの詳細な点は上述したとおりであるので省略するが、上述の構成に比べて、光学デバイス3を下側ケース5と中ケース5に収納した積重構造となり、より多数個の光学デバイスを収容できるものである。
【0030】なお、ケース周壁の小さな開口部511の外周寸法と大きな開口部513の内周寸法、ならびに段差部512の幅寸法については、各ケースを重ね合わせた際にお互いに嵌着され、容易に着脱できるように、適宜設計する必要がある。上述した第2の実施形態では、ケース周壁の小さな開口部511の外周寸法、外周形状と、ケース周壁の大きな開口部513の内周寸法、内周形状とをほぼ同一としていることで、より安定した状態でお互いに嵌着され、段重ね一体化できる好ましい構成となった。
【0031】また、上述した第2の実施形態では、周壁51の上側を小さな開口部とし、下側を大きな開口部としたが、下側を小さな開口部とし、上側を大きな開口部としてもよい。
【0032】次に、本発明による第3の実施形態について、図面とともに説明する。図5は本発明の第3の実施形態を示す断面図である。なお、上記の第1、第2の実施形態と同様の部分については同番号を付すとともに説明の一部を割愛した。
【0033】梱包ケース6は、例えば、その材料がポリエチレンテレフタレート(PET)からなり、周壁61とこの周壁の下端部に連結されてなる主面62とを具備した断面略U型に加工されている。
【0034】前記ケースの周壁61は、上側から下側に向かって、大きな開口部611、段差部612、小さな開口部613が形成されている。
【0035】前記ケースの主面62には、光学デバイス3が収容される第1の凹部621が複数ヶ所に形成されている。
【0036】そして、前記ケース6を2つ用意し、それぞれ上側ケースと下側ケースとして使用する。下側ケースの凹部621には、光学デバイス3を収容するとともに、当該下側ケースの大きな開口部611に、上側ケース6の主面62と小さな開口部613を挿入して、下側ケースの段差部612に上側ケース6の小さな開口部613を係止させることで、お互いを段重ね一体化する。
【0037】なお、図中、Sはスペーサーであり、エアークッションやスポンジなどから構成され、収容される光学デバイス3の隙間の調整して遊動を抑制している。
【0038】以上により光学デバイス3は、下側ケースと上側ケースで密封される。
【0039】また、図5(b)では、前記ケース6を3つ用意し、それぞれ上側ケースと中ケースと下側ケースとして使用した複合ケース構成を開示している。各ケースの詳細な点は上述したとおりであるので省略するが、上述の構成に比べて、光学デバイス3を下側ケース5と中ケース5に収納した積重構造となり、より多数個の光学デバイスを収容できるものである。
【0040】なお、ケース周壁の小さな開口部613の外周寸法と大きな開口部611の内周寸法、ならびに段差部612の幅寸法については、各ケースを重ね合わせた際にお互いに嵌着され、容易に着脱できるように、適宜設計する必要がある。上述した第3の実施形態では、ケース周壁の小さな開口部613の外周寸法、外周形状と、ケース周壁の大きな開口部611の内周寸法、内周形状とをほぼ同一としていることで、より安定した状態でお互いに嵌着され、段重ね一体化できる好ましい構成となった。
【0041】なお、上述した各実施形態のケースは、シート成形した構成としてもよいし、ポリエチレン等を射出成形した構成としてもよい。また、光学デバイスの遊動を防止するために、ケース周壁の高さ寸法と、主面の第1の凹部、第2の凹部の高さ寸法は、光学デバイスの高さ寸法に応じて適宜設計する必要があるが、第2の凹部に変えてスペーサー等を介在させたり、第1の凹部上面に両面接着シート等を貼り付けてもよい。さらに、本発明の実施形態では、2段重ねのケース構成や3段重ねのケース構成を例にしているが、4段以上に重ねてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態を示す斜視図。
【図2】図1のケースを2つ用意して組み立てた状態の断面図。
【図3】図1のケースを3つ用意して組み立てた状態の断面図。
【図4】第2の実施形態を示す断面図。
【図5】第3の実施形態を示す断面図。
【図6】従来の梱包ケースを示す平面図。
【図7】図6において閉蓋時のA−A断面図。
【符号の説明】
1 下ケース
2 上ケース
3 光学デバイス
4、5、6 ケース
S スペーサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】 光学デバイスを搭載し、被覆してなる光学デバイス用梱包ケースであって、前記ケースは、周壁とこの周壁の一部に連結されてなる主面とを具備しており、前記ケースの周壁は、段差部を介して、大きな開口部と小さな開口部が高さ方向に形成されており、前記ケースの主面には、光学デバイスを収容する凹部が形成されてなるとともに、当該ケースを少なくとも2つ用意して、下側ケースあるいは上側ケースの大きな開口部に、上側ケースあるいは下側ケースの小さな開口部を挿入して、下側ケースあるいは上側ケースの段差部に係止させることで、お互いを段重ね一体化してなり、かつお互いを着脱自在に構成されてなることを特徴とする光学デバイス用梱包ケース。
【請求項2】 前記ケースの主面には、光学デバイスを収容する第1の凹部と、この第1の凹部の底面に光学デバイスが挿入されない第2の凹部を形成し、前記下ケースと上ケースをお互いを段重ねして一体化することで、前記光学デバイスは、前記下側ケースの第1の凹部の上底面と上側ケースの第2の凹部の下底面により挟持されてなることを特徴とする特許請求項1記載の光学デバイス用梱包ケース。
【請求項3】 前記ケースを3つ以上用意して段重ね一体化してなるとともに、最上部以外のケースの主面に、前記光学デバイスが収容されてなることを特徴とする特許請求項2、3記載の光学デバイス用梱包ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2003−200991(P2003−200991A)
【公開日】平成15年7月15日(2003.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−2901(P2002−2901)
【出願日】平成14年1月10日(2002.1.10)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】