説明

光学データ記憶媒体のための逆可飽和吸収増感剤及び使用方法

【課題】感度を向上できる光学データ記憶のためのホログラフィック記憶媒体を提供する。
【解決手段】ポリマーマトリックス内には、励起された増感剤からエネルギー移動を受けた際に組成物の屈折率を変化させる修飾ができる反応体が配置されている。非線形増感剤もポリマーマトリックス内に配置されており、この増感剤は、約405nmの強度閾値を超える光に曝露されると励起されるように構成され、かつ反応体にエネルギーを移動するように構成された金属置換サブフタロシアニン(M−sub−PC)逆可飽和吸収剤を含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に光学データ記憶媒体に関し、より具体的にはホログラフィック記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
光学記憶媒体は、一般に、データを保存するための有効な基盤を提供し、他の形態のデータ記憶と比べて媒体のコスト、保存されるデータの期待寿命、データを書き込むのに要する時間及びデータにアクセスするのに要する時間の点で数多くの利点を提供する。ホログラフィック記憶は、データをホログラムとして光学媒体に書き込んだり読み出したりする特殊なタイプの光学記憶である。これらのホログラムは、ホログラフィック媒体の容積内の感光性層において複数の光線の相互作用により形成される像である。すなわち、例えば、参照光線と信号光線の組合せを使用することにより、存在するある種の化学種がそれらの光線により化学的に修飾されるとき、ホログラフィック媒体内に三次元干渉パターンが形成され得、ホログラフィック媒体の特定の部分の屈折率を調整し得る。
【0003】
かかるホログラフィック媒体において、逆可飽和吸収剤(RSA)をエネルギー移動閾値色素として使用し得る。一般に、エネルギー移動閾値色素は通常、記録光(例えば、参照光及び信号光)を吸収し、化学反応を起こさせ得る。すなわち、記録光が特定の強度閾値を超えると、RSA色素は記録光の複数の光子を吸収した後その励起状態のエネルギーを反応体種(例えば、インデックス変化物質)に移動し得る。呼応して、反応体種は化学反応(例えば、二量化反応、異性化反応又は分子間若しくは分子内縮合反応)を起こし得、その結果ホログラフィック媒体の屈折率に局在化された変化が生じ得、記録光の強度及び位相を本質的に取り込む。その後、より低い強度の光を用いてホログラムを調べると、この取り込まれた情報が非破壊的に再生され得て、関連するコードされたデータが解読され得る。しかしながら、このRSA色素は、ホログラフィック媒体へのデータの効率的な記録を可能にするように充分な感度を有するべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/053055号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、光学記憶媒体組成物はポリマーマトリックスを含んでいる。ポリマーマトリックス内には、励起された増感剤からエネルギー移動を受けた際組成物の屈折率を変化させる修飾を起こすことができる反応体が配置されている。非線形増感剤もポリマーマトリックス内に配置されており、この増感剤は、ある強度閾値を超える強度を有する光に曝露されると励起されるように適合され、かつエネルギーを反応体に移すように適合された金属置換サブフタロシアニン(M−sub−PC)逆可飽和吸収剤を含んでいる。
【0006】
別の実施形態では、増感剤は次の一般式を有する。
【0007】
【化1】

式中、
各X1は独立にプロトン、ハライド、炭素数1〜10のヒドロカルビル基又は炭素数1〜10のアルコキシ基を含み、R1は金属と結合するように適合された任意の官能基又は一群の官能基を含む。
【0008】
別の実施形態では、光学媒体上にデータを保存する方法は、ある強度閾値を超える強度を有する記録光を光学媒体の一部分に照射することを含んでおり、この光学媒体はポリマーマトリックス内に配置された金属置換サブフタロシアニン(M−sub−PC)逆可飽和吸収剤(RSA)及び反応体を含んでいる。この方法はまた、記録光によってM−sub−PC RSAを励起された三重項状態に励起することにより、励起されたM−sub−PC RSAが反応体の修飾を増感することを含む。この方法はまた、反応体を修飾して、光学媒体の一部分の屈折率が変化し、光学媒体上にホログラムを形成するようにすることを含み、ここでホログラムは記録光の強度及び位相に関する情報を保存する。
【0009】
本発明の上記及びその他の特徴、態様及び利点は添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むことでより良く理解されるであろう。全図面を通じて類似の符号は類似の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本開示の態様に従った、増感剤の励起及び反応体へのエネルギー移動を図解するエネルギーレベル図である。
【図2】図2は、本開示の態様に従った、閾値増感剤の非線形吸収を図解するグラフである。
【図3】図3は、本開示の態様に従った、記録光が照射されている光学記憶媒体の断面図である。
【図4】図4は、本開示の態様に従った、クラウンエーテル系M−sub−PC RSA色素の例を示す。
【図5】図5は、本開示の態様に従った、ジケトン系M−sub−PC RSA色素の例を示す。
【図6】図6は、本開示の態様に従った、ピリジン系M−sub−PC RSA色素の例を示す。
【図7】図7は、本開示の態様に従った、金属で置換された15−クラウン−5エーテル系RSA色素を製造する合成経路の概略図である。
【図8】図8は、本開示の態様に従った、金属で置換された18−クラウン−6エーテル系RSA色素を製造する合成経路の概略図である。
【図9】図9は、本開示の態様に従った、いろいろな強度の記録光に曝露される3つの異なる光学媒体の屈折率の変化を示すグラフである。
【図10】図10は、本開示の態様に従った、いろいろな強度の記録光に曝露される3つの異なる光学媒体の量子効率を示すグラフである。
【図11】図11は、量子効率測定を実施するための量子効率測定装置の一実施形態を図解する概略図である。
【図12】図12は、吸光度対流束量のプロットを示すグラフの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一般に、本明細書で使用する場合、「流束量」は、単位面積のビーム断面を横切る光ビームエネルギーの量の尺度であり(例えば、J/cm2の単位)、一方、光放射流束密度ともいわれる「強度」は、単位時間当たりに単位面積のビーム断面を横切るエネルギーの尺度である(例えば、W/cm2の単位)ことに留意されたい。さらにまた、用語「量子効率」は、本明細書で使用する場合、吸収された光子が、光学媒体の屈折率を調整する化学的変換を生じる確率である。加えて、特定のホログラフィック媒体の「感度」とは、一般に、(例えば、比較的低い強度の記録光を使用する場合)ホログラフィック媒体の量子効率をいう。
【0012】
開示されている実施形態は、ホログラフィックデータ保存に適切な光学媒体並びにかかるデータ保存用の基盤を使用する方法について記載する。概して、ホログラフィック媒体は共にポリマーマトリックス内に配置された非線形増感剤種及び反応体種を含み得る。この非線形増感剤種は逆可飽和吸収剤(RSA)色素であり得、特に、金属置換サブフタロシアニン(M−sub−PC)RSA色素であり得る。以下に詳細に記載するように、これらのM−sub−PC色素は、比較的低強度の記録光を使用する場合、前述のエネルギー移動閾値挙動及び比較的高い量子効率の両方を提供する。これらのM−sub−PC RSA色素を利用する光学媒体は、記録プロセス中、前述した他の物質より高い感度と効率を提供する。
【0013】
概して、RSA色素は記録光(すなわち、化学線)に対して非線形応答を示す。図1は、光学媒体内に存在する様々なエネルギーレベルの相互作用を図解するエネルギー図10を示す。より具体的には、図1は、増感剤12(例えば、M−sub−PC RSA色素)、反応体種14及び得られる生成物16の幾つかのエネルギーレベル間の幾つかの可能な相互作用を示す。一般に、その基底状態S018にある増感剤12は記録光の光子を実質的に吸収しない。しかし、記録光の強度が特定の閾値より高くなると、増感剤12は励起されて(例えば、第1の光子吸収20により)励起された一重項状態(例えば、S122)に達し得る。最初の吸収20の後ある時点で、増感剤12は項間交差(ISC)24を起こして励起された三重項状態(例えば、T126)に達し得る。この三重項状態26は一般に一重項の基底状態S018より大きい吸収断面積を有し得、従って、記録光の実質的により強い吸収剤である(すなわち、化学線に対して非線形応答を示す)。よって、増感剤12は記録光の別の光子を吸収して28、励起された三重項状態RSA3*(例えば、T230)に達し得る。従って、記録光の2つの光子を吸収した後、増感剤12は励起された三重項状態(例えば、T230)のエネルギーをホログラフィック媒体内に存在する反応体種14の三重項エネルギーレベル(例えば、T134)に移し得る32。このエネルギー移動を受け取った反応体14は、続いて、化学的に反応して(例えば、存在する別の反応体単位と共に二量化して)、生成物16を生成し得ると共に、前述したホログラムを生成するホログラフィック媒体の屈折率の変化を生じ得る。反応体種14の三重項状態T134を増感した後、増感剤12は基底状態S018に戻り、このプロセスが続行し得る。
【0014】
図1には1つのエネルギー経路が示されているが、系内で多くの他のエネルギー経路(例えば、他の吸収、崩壊、変換)が可能であることが了解されよう。例えば、幾つかの実施形態では、増感剤12(例えば、M−sub−PC)が両方の光子を吸収して励起された三重項状態(例えば、T230)に到達した後、増感剤12はまたそのエネルギーを近くの反応体14に非放射的に(例えば、熱エネルギーとして)渡し得る。かかる実施形態では、反応体14は励起された増感剤12から熱エネルギーを受ける結果として位相変化(例えば、非晶質−結晶質又はその逆)を起こし得、その結果ホログラフィック媒体の屈折率が変化し得る。
【0015】
従って、充分な記録光(例えば、強度閾値を超える)を受け取る光学媒体の領域のみが屈折率の局在化された変化を受け得る。この効果をより良く図解するために、図2に、RSA色素を利用する光学媒体のいろいろな流束量の光に対する閾値応答を示す。より具体的には、図2は、ある範囲の光流束量に対する閾値物質(例えば、RSA色素及び反応体種を含む光学媒体)の屈折率の変化(例えば、Δn)のプロット40を示す。図示したプロット40は2つの曲線を含んでおり、1つの曲線42は読み出し操作を表し、もう1つの曲線44はホログラフィック媒体を用いた書き込み操作を表す。曲線42では、入射光の強度はRSA物質の閾値(例えば、Ith)より低く、従って、物質に入射する光の流束量に関係なく、光学媒体の屈折率に実質的な変化はない。対照的に、曲線44は、RSA物質の閾値(例えば、Ith)を超える強度(並びに充分な流束量)を有する光がRSA物質に照射されると、閾値物質の屈折率の実質的な変調46が観察され得ることを示している。従って、かかるRSA色素を利用する光学媒体は記録光に対してこの非線形応答を示し得る。すなわち、光学媒体は、化学光が一定の強度閾値より低いとき、屈折率の実質的な変化を示さない可能性があるが、化学光が一定の強度閾値(例えば、曲線44に示されている)を超えると、屈折率のかなりの変化を示す。さらにまた、この屈折率の変化により書き込まれたホログラムは、ホログラフィック媒体が読み出しプロセス(例えば、曲線42で示される)中に実質的に変化し得ないようにこの強度閾値(例えば、Ith)より低い光を用いて調べ得る。
【0016】
データがどのようにホログラフィック媒体に書き込まれ得るかをさらに図解するために、図3に、記録光に曝露されているホログラフィック媒体50の断面を示す。より具体的には、図3は、ポリマーマトリックス内に共に配置されたRSA色素と反応体種を含むホログラフィック媒体50を示す。さらに、図3は、ホログラフィック媒体50の、記録光(例えば、参照光及び信号光を含む化学線)が通過する容積52を示している。ホログラフィック媒体50はRSA色素を利用しているので、ホログラフィック媒体50の容積52全体が屈折率の変調に影響を及ぼすのに充分な記録光(例えば、RSA色素の強度閾値を超える)を受け取るわけではない。むしろ、焦点54(例えば、参照光と信号光の交点)のみがRSA色素の強度閾値を超える記録光を受け取り、従って屈折率の変化を受け、その結果ホログラフィック媒体内にホログラムが書き込まれる。従って、RSA色素を使用すると、書き込まれるホログラムの近くに位置する媒体部分の望ましくない化学的変化が排除される。
【0017】
光学媒体は、一般に、共にポリマーマトリックス内に配置されたRSA色素(例えば、M−sub−PC RSA色素)と反応体種を含み得る。一般に、ホログラフィック媒体のポリマーマトリックスは、通常光学媒体の製造に使われているいかなるポリマーでもよい。例えば、ポリマーとして、ポリアルキル(メタクリレート)(PMMA)、ポリビニルアルコール、ポリ(アルキルアクリレート)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリ(塩化ビニリデン)及びポリ(酢酸ビニル)を挙げることができる。加えて、幾つかの実施形態では、以下に詳細に述べるように、反応体種を使用して、(例えば、ポリビニルアルコールへのエステル結合を介して)ポリマー骨格を官能化し得る。幾つかの実施形態では、反応体種単位は(例えばイオン性相互作用、水素結合等を介して)ポリマー骨格に非共有的に結合し得る。また、RSA色素は組成物の総重量を基準にして約0.002重量%〜約5重量%の量で使用し得る。幾つかの実施形態では、RSA色素は約0.01M〜0.1Mの濃度又は約0.4Mの濃度を有し得る。また、ホログラフィック媒体に対する支持体も、ポリメチル(メタクリレート)PMMA、ポリカーボネート、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレン)、ポリスチレン又は酢酸セルロースを始めとする幾つかの一般に使用されるポリマー物質によって提供され得る。加えて、ホログラフィック媒体はまた当技術分野で一般に知られているメディエーター、光安定剤、可塑剤も含み得る。
【0018】
一般に、反応体種は、ホログラフィック物質の屈折率に変化を生じさせることになる反応(例えば、二量化又は異性化)又は相変化(例えば、非晶質−結晶質又はその逆)を起こすことができる三重項状態を有するあらゆる化学種であり得る。例えば、幾つかの実施形態では、反応体種は、「ホログラフィックデータを保存する方法」と題する米国特許出願第11/901725号(援用によりその全体があらゆる目的で本明細書の一部をなす)に開示されている相変化ポリマー組成物であり得る。幾つかの実施形態では、反応体は、励起されたRSA増感剤(すなわち、RSA3*)により励起三重項状態に増感された際に屈折率を変化させる分子の再配列(例えば、[2+2]二量化)を起こすことができるあらゆる化学種であり得る。よって、適切な反応体としては、限定されることはないが、ハロゲン化スチルベン、アルキル化スチルベン、シアノスチルベン、アルコキシスチルベン又はこれらの任意の組合せを含む様々なタイプのスチルベン類がある。さらに、「光学データ記憶媒体及びこれを使用する方法」と題する米国特許出願第12/550521号(援用によりその全体があらゆる目的で本明細書の一部をなす)は、ホログラフィック媒体の反応体種として役立ち得るシンナメート類似体の例を開示している。例えば、幾つかの実施形態では、1以上のシンナメート単位をポリマー骨格(例えば、ポリビニルアルコール)に結合してポリマー構造(例えば、ポリビニルシンナメート)を生成し得る。従って、ポリビニルシンナメートの近くのシンナメート単位が励起されたRSA3*化学種(例えば、励起されたM−sub−PC単位)と出会うと、以下の式に示すように間接光二量化反応が起こり得る。
【0019】
【化2】

さらにまた、幾つかの実施形態では、反応体種は、本出願と同時に出願された「光学データ記憶媒体のための反応体及び使用方法」と題する同時係属中の米国特許出願第 号(援用によりその全体があらゆる目的で本明細書の一部をなす)に開示されているジフェニルシクロプロペン(DPCP)誘導体(例えば、2,3−ジフェニルシクロプロプ−2−エンカルボキシレート)であり得る。幾つかの実施形態では、ポリマー骨格(例えば、ポリビニルアルコール)はDPCP単位により誘導体化されてポリビニル−DPCP構造を形成し得る。従って、ポリビニル−DPCP構造の近くのDPCP単位が励起されたRSA3*化学種(例えば、励起されたM−sub−PC単位)と出会うと、以下の式に示すように間接光二量化反応が起こり得る。
【0020】
【化3】

シンナメート類似体、DPCP類似体、並びにその他の不飽和反応体種の場合、励起されたRSA色素によりエネルギーが三重項エネルギーレベル(例えば、T134)に移されると、2つの反応体単位の不飽和結合間で[2+2]環化(例えば、二量化)が起こり得る。従って、RSA色素が記録光の2つの光子(例えば、吸収20及び28)を吸収して励起三重項状態(例えば、T230)に達すると、RSA色素は励起三重項状態30のエネルギーを反応体単位(例えば、シンナメート−誘導体又はDPCP−誘導体単位)に移し得るので2つの反応体単位が間接の光二量化を起こし得る。反応体単位間の実質的な数の光二量化事象が起こると、ホログラフィック媒体の屈折率に局在化された変化が観察され得る。
【0021】
光学媒体の製造において、比較的高い量子効率を有するRSA色素を使用するのが一般に望ましい。すなわち、低い記録光強度でより多くの数の反応体分子を反応させることができるRSA色素を利用するのが一般に望ましい。この高い量子効率により、RSA色素は、より低い強度の光(例えば、より少ない総光子数)を使用してホログラフィック媒体の屈折率の変調を起こし得る化学反応を効率的に起こすことができる。従って、より少ないエネルギーが記録プロセス中に消費され得、より多い数の反応体分子が書き込み操作中に変換され得及び/又は記録時間が低減され得る。
【0022】
特に、「組成物、光学データ記憶媒体及び該光学データ記憶媒体を使用する方法」と題する米国特許出願第12/551455号(援用によりその全体があらゆる目的で本明細書の一部をなす)には、特定の非線形増感剤、すなわちサブフタロシアニン(sub−PC)の、光学記憶媒体用のRSA色素としての使用が開示されている。このsub−PC構造は約405nm(±10nm)の記録光を使用する良好なRSA挙動を提供する。sub−PCの一例を次に示す。
【0023】
【化4】

本実施形態は、少なくとも1つの金属原子を有する1以上の官能基を含ませる、sub−PC構造の修飾に関する。従って、特定のsub−PC構造が上記に含まれているが、この本明細書に開示された修飾はあらゆるsub−PC構造に対して考えられることに留意されたい。すなわち、約500nm未満(例えば、約405nm)の波長の放射線に実質的に応答するあらゆるサブフタロシアニンRSAが、光学データ記憶媒体に使用するために本明細書に開示された方法に従って変更され得る。
【0024】
本開示は、金属原子をsub−PCコア構造に結合することができる官能性の添加に一般に関連するsub−PC構造に対する修飾に関する。すなわち、本実施形態は、金属を含有する官能基又は部分をsub−PC構造中に組み込んだ金属−サブフタロシアニン(M−sub−PC)誘導体を含む。例えば、M−sub−PCの一般構造を次に示す。
【0025】
【化5】

式中、R1は一般に1以上の金属原子と結合するか又はキレートを形成することができるあらゆる官能基であり得、各X1は独立にプロトン、ハライド(例えば、臭素、フッ素、塩素、ヨウ素等)、ヒドロカルビル基(例えば、メチル、エチル、t−ブチル等)又はアルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ等)基であり得る。適切なサブフタロシアニン(sub−PC)コア構造の例として、限定されることはないが、2,9,16−トリブロモサブフタロシアナトホウ素(III)、2,9,16−トリヨードサブフタロシアナトホウ素(III)、トリニトロサブフタロシアナトホウ素(III)、2,9,16−トリ−tert−ブチルサブフタロシアナトホウ素(III)、2,9,17−トリ−tert−ブチルサブフタロシアナトホウ素(III)及び2,9,16−トリヨードサブフタロシアニナトホウ素(III)がある。これらのいずれか、並びに約405nmの波長でRSA挙動を提供する他のいずれかのサブフタロシアニンコア構造を利用し得る。なお、上記構造において、R1はホウ素原子に結合されるとして図示されているが、一方、他の実施形態では、金属結合性官能基R1はsub−PC構造のいずれかの他の原子(例えば、構造内にあるいずれかの炭素又は窒素原子)と結合し得ることに留意されたい。さらにまた、幾つかのM−sub−PC実施形態では、複数の金属結合性基(例えば、R1、R2等)を使用してsub−PC構造を誘導体化し得ることに留意されたい。例えば、幾つかの実施形態では、M−sub−PC構造は、(ホウ素原子に結合した金属結合性基R1を有することに加えて又は代わりに)構造中の異なる原子に結合した他の金属結合性基を有し得る(すなわち、X1もR1又はR2を含み得る)。
【0026】
一般的にいって、R1はsub−PCコア構造の金属中心に結合する官能基又は一群の官能基である。従って、R1は次の一般式で表すことができる。
【0027】
(X2)(X3)(X4)(X5)(M)
ここで、X2、X3、X4、X5及びは各々、以下に詳細に述べるように1以上の原子を含む構造R1の一部分を表す。以下に詳細に述べるように、X2はR1がsub−PCコア構造に結合する点であり、X3はR1のリンカー部分であり、X4はR1の金属結合部分であり、Mは幾つかの結合リガンド又は対イオンX5と共に結合した金属中心である。R1の種々の部分(例えば、X2、X3、X4、X5及び)の間には単一の結合があり得又は幾つかの実施形態では、これらの部分が2以上の結合を介して(例えば、複数の結合点を介して又は同一の結合点に対する複数の結合を介して)結合し得ることと理解されたい。さらに、本明細書で使用する場合結合とは、2つの原子間の化学結合又は引力、例えば、共有結合(例えば、通常の共有結合及び配位共有結合)並びに非共有結合(例えば、イオン性相互作用、水素結合、クーロン引力又は同様な相互作用)をいうことが理解されよう。さらにまた、結合点(X2)、リンカー(X3)、金属結合部分、(X4)、金属(M)及びリガンド/対イオン(X5)の様々な組合せが以下の例示構造に含まれているが、X2、X3、X4、X5及びの多くの他の組合せも可能であり、使用し得ることが理解されよう。
【0028】
従って、R1はsub−PCコア構造に結合するための結合点X2を含んでいる。幾つかの実施形態では、X2は酸素原子(例えば、フェノキシ又はアルコキシ単位の一部分として)であり得る。他の実施形態では、X2は炭素、窒素、イオウ、リン又はsub−PCコア構造のホウ素原子との結合を形成することができる同様な原子であり得る。さらに、他の実施形態では、X2はR1をM−sub−PC分子の残部に結合させる複数の原子(例えば、官能基)を含み得る。例えば、幾つかの実施形態では、X2はM−sub−PC構造のsub−PC部分に対するエステル又はアミド結合の一部分からなり得る。
【0029】
加えて、幾つかの実施形態では、R1はまた、結合点(X2)を金属結合部分(X4)に結合させ得るリンカーX3も含み得る。一般に、X3は、X2をX4に結合させることができるあらゆる原子(例えば、炭素、窒素、酸素及び/又はプロトン)又は一連の原子であり得る。X3の構造は特定の性質を提供するように選択し得ることが理解されよう。すなわち、幾つかの実施形態では、X3は金属結合部分(X4)に対する非共役で可撓性の結合を提供するように選択されたアルキル鎖(例えば、1〜10個の炭素の長さ)であり得る。他の実施形態では、X3は、金属結合部分(X4)に対する共役及び/又はより低い可撓性の結合を提供するように選択された共役構造(例えば、アレーン環、多芳香族構造、共役鎖又は同様な構造)であり得る。他の実施形態では、RはリンカーX3を含んでいなくてもよく、従って、結合点(X2)は構造の金属結合部分(X4)に直接結合し得る。さらに他の実施形態では、飽和及び不飽和の部分を両方とも有するリンカー(X3)を特定の組合せで用いて、sub−PCコア構造に対する金属中心の位置、金属中心とコア構造の間の分子の電子的性質及びリンカー単位の所望の可撓性の点で所望の特性を提供し得る。
【0030】
M−sub−PC構造内の金属結合部分(X4)に組み込まれる金属原子(M)は任意の金属(例えば、インジウム、鉛、亜鉛、ルビジウム、スズ、セシウム又は類似の金属)又は半金属(例えば、タリウム、アンチモン又は類似の半金属)でよい。また、金属結合部分(X4)に対する結合に加えて、Mは、任意の数のリガンド及び/又は対イオンX5を含み得る(例えば、金属中心を配位的に飽和させるため)。例えば、幾つかの実施形態では、X5は、アセチルアセトン(ACAC)リガンド、硝酸塩リガンド、ヒドロカルビルリガンド(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル)、ピリジン系リガンド、ハライド対イオン(例えば、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素等)又はその他当技術分野で一般に知られている任意のリガンド又は対イオンを含み得る。例えば、幾つかの実施形態では、金属(M)はヨウ素対イオン(X5)と共に使用されるナトリウム、カリウム又はルビジウム原子であり得る。別の例として、幾つかの実施形態では、金属(M)はヨウ素又は硝酸塩対イオン(X5)を伴うタリウム、鉛、ルビジウム又はセシウム原子であり得る。さらに別の例として、幾つかの実施形態では、(M)は2つのACACリガンド又は3つのブチルリガンド(X5)を伴うインジウム、鉛又は亜鉛原子であり得る。さらにまた、幾つかの実施形態では、複数の金属原子(及びおそらく幾つかの酸素原子s)を含む金属クラスターも技術で使用することが考えられる。
【0031】
さらにまた、R1は、このR1が金属原子(M)と少なくとも部分的に結合するか又はキレート化するのを可能にする金属結合部分(X4)を含んでいる。すなわち、X4は、金属原子の結合又はキレート形成のために使用されることが一般に当技術分野で知られている任意の官能基若しくは部分又は任意の一群の官能基若しくは部分を組み込み得る。従って、一般的にいって、X4は、金属がR1の残部に固定され得るように金属原子(M)の軌道と相互作用することができる1以上の軌道を有する幾つかの原子(例えば、炭素、窒素、酸素、ホウ素、リン又はイオウ)を含み得る。例えば、以下に詳細に述べるように、X4の幾つかの実施形態には、限定されることはないが、クラウンエーテル誘導体、ジケトン誘導体、ピリジン誘導体、ポルフィリン誘導体、カリクサレン誘導体、シクロデキストリン誘導体又は同様な金属結合構造があり得る。
【0032】
幾つかの実施形態では、R1は下記一般構造に従うクラウンエーテル誘導体であり得る。
【0033】
【化6】

式中、nは1〜10の任意の整数であり得る。さらに例を挙げると、R1には、図4に示した例示のクラウンエーテル誘導体構造として描かれたR1基が包含され得る。図4には、2つのクラウンエーテル誘導体、すなわち、15−クラウン−5誘導体(RSA1)と18−クラウン−6誘導体(RSA2)が示されている。これら2つのクラウンエーテル誘導体が上に包含されているが、任意の数のいろいろなサイズ及びタイプのヘテロ大環状分子を使用し得ることが了解されよう。例えば、M−sub−PC RSA色素のクラウンエーテル誘導体部分(すなわち、R1の金属結合部分X4)は12−クラウン−4エーテル誘導体、21−クラウン−7エーテル誘導体、24−クラウン−8エーテル誘導体又はその他任意のクラウンエーテル誘導体であり得る。クラウンエーテル誘導体の合成を例証する実施例を以下に提供する。
【0034】
幾つかの実施形態では、R1はまた、下記一般構造により示されるジケトン(例えば、アセチルアセトン(ACAC))誘導体であってもよい。
【0035】
【化7】

式中、各X6は独立にプロトン、炭素数1〜10のヒドロカルビル基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミン)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ等)、ハライド(例えば、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素等)又は類似の化学種であり得る。さらに例を挙げると、R1は、限定されることはないが図5に示す例のジケトンM−sub−PC構造に関して描かれたR1基を包含し得る。特に、図5にはジケトン系のM−sub−PCであるRSA3とRSA4が図示されているが、これらは類似のACAC系M−sub−PCであり、M−sub−PC RSA4は3つの炭素のアルキルリンカー部分(X3)がM−sub−PC RSA3とは異なっている。図5にはまたM−sub−PC RSA5及びRSA6も図示されており、これらはいずれもX3がフェニレン単位であるメトキシ−ACAC誘導体である。しかしながら、M−sub−PC RSA5は、ACAC金属結合部分(X4)が中心の炭素(すなわち、2つのカルボニル基の間)を介してリンカーに結合している例であり、一方M−sub−PC RSA6はACAC部分が一方のカルボニル炭素を介してリンカーに結合している例である。これらのジケトンはジケトンとして又はエノール互変異性体として存在し得及び/又は図示され得ることが了解されるであろう。
【0036】
幾つかの実施形態では、R1は下記一般構造で示されるピリジン誘導体であっもよい。
【0037】
【化8】

式中、各X7は独立にプロトン、カルボン酸基、アルキルエステル(例えば、メチルエステル)基、アミノ基、アルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミン)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ等)、ハライド(例えば、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素等)、炭素数1〜10のヒドロカルビル基、別のヘテロアレーン(例えば、ピリジン環)若しくは他のアレーン構造の一部分又は類似の化学種であり得る。さらに例を挙げると、R1には、限定されることはないが、図6に示した例のM−sub−PC構造に対して描いたR1基があり得る。特に、図6には、フェナントレン系M−sub−PC(RSA7)、ターピリジン系M−sub−PC(RSA8)及びビス−ピリジン系M−sub−PC(RSA9)が示されている。図示した実施形態では、ビス−ピリジン系M−sub−PC RSA9はリンカー(X3)を欠いているが、フェナントレン系M−sub−PC RSA7は2つの炭素のアルキルリンカーを有しており、ターピリジン系M−sub−PC RSA8は最も長い3つの炭素のアルキルリンカーを有している。また、これら3つの構造(例えば、RSA7、RSA8及びRSA9)はピリジン誘導体系のRSA色素具体的な例を例示したものであるが、他のピリジン誘導体系RSA色素を利用してもよいものと了解されたい。
【実施例】
【0038】
実施例1.金属化サブフタロシアニン(M−sub−PC)の合成
Benzo−15C5、Benzo−18C6、ポリリン酸、無水酢酸、金属塩及びサブフタロシアニン−クロリド(全てAldrichから購入した)は受け取ったまま使用した。1H NMRスペクトルはBruker 400MHz分光光度計で得た。UV−Vis吸収スペクトルはCary UV分光光度計で得た。
【0039】
図7及び8に示した合成経路は、405nmで吸収最小(すなわち、RSA挙動)を示すM−sub−PCクラウンエーテル誘導体(例えば、RSA1及びRSA2)を合成する例として挙げたものである。15C5及び18C6クラウンエーテルM−sub−PC誘導体を調製した。一般的にいって、この合成計画は、Benzo−15C5(又は図8ではBenzo−18C6)から出発し、それぞれアシル化、酸化、加水分解、縮合及び金属組み込みの一連の工程を経て、M−sub−PC構造を得る。
【0040】
金属化15−クラウン−5エーテルサブフタロシアニン(M/15C5−sub−PC)誘導体の合成
アシル化反応では、三つ首フラスコに、ポリリン酸/酢酸(3g/7g)、Benzo−15C5(4.5g、16.77mmol)、無水酢酸(7.5g、3.5equs、58.7mmol)を仕込んだ。反応混合物を閉じ、窒素雰囲気下に保ち、45℃に加熱し、一晩攪拌し続けた。暗褐色の反応混合物を水(100mL)で二回洗浄した。有機生成物を塩化メチレン(100mL)中に入れ、MgSO4で乾燥した。生成物をEtOAC:ヘキサン=40:60比の溶離液でSiO2のクロマトグラフにかけた。生成物のAc−Benzo−15C5を青白い固体(4.5g)として単離した。1H NMR(CDCl3)δ:7.59(d、1H)、7.56(s、1H)、6.9(d、1H)、4.22(m、4H)、3.9〜4.0(m、4H)、3.8(s、8H)、2.59(s、3H)。
【0041】
酸化工程では、一つ首丸底フラスコにAc−Benzo−15C5(4.5g、14.5mmol)、20mLのCH2Cl2及びメタクロロ過安息香酸(mCPBA)1.3equs(3.25g、18.87mmol)を仕込んだ。反応混合物を閉じ、窒素雰囲気下に保ち、一晩攪拌し続けた。黄色い沈降反応混合物を飽和NaHCO3で洗浄し、その後水(100mL)で二回洗浄した。有機生成物を塩化メチレン(100mL)中に入れ、MgSO4で乾燥した。生成物OAc−Benzo−15C5を黄色い固体(4.51g)として単離し、さらに精製することなく使用した。1H NMR(CDCl3)δ:6.9(d、1H)、7.63(s、1H)、6.62(d、1H)、4.16(m、4H)、3.9(m、4H)、3.8(s、8H)、2.3(s、3H)。
【0042】
加水分解工程では、一つ首丸底フラスコにOAc−Benzo−15C5(3.0g、13.8mmol)を仕込み、還流条件下水性NaOH(10%溶液)で加水分解し、反応混合物を3時間窒素雰囲気下で攪拌した。反応混合物を飽和NaHCO3で、次に水で二回(50mL)洗浄した。有機生成物を塩化メチレン(50mL)中に入れ、MgSO4で乾燥した。生成物OH−Benzo−15C5(0.6g)を得、さらに精製することなく使用した。1H NMR(CDCl3)δ:6.75(d、1H)、6.44(s、1H)、6.35(d、1H)、4.1(m、4H)、3.9(m、4H)、3.78(s、8H)。
【0043】
縮合工程では、一つ首丸底フラスコにサブフタロシアニンクロリド(0.7g)及びOH−Benzo−15C5(0.55g、1.95mmol)及び10mLのトルエンを仕込んだ。フラスコに水冷凝縮器を付け、反応混合物を熱い油浴に入れて3日間窒素雰囲気下で還流した。反応混合物を冷却し、20mLのクロロホルムで希釈し、10%NaOH溶液で洗浄し、その後水で洗浄した。その後、反応混合物を吸引ろ過して未反応のサブフタロシアニンクロリドを除去した後、溶液をMgSO4で乾燥した。ろ過溶液を回転蒸発器で除去し、乾燥し、ピンクの生成物15C5−sub−PC(0.25g)を単離した。1H NMR(CDCl3)δ:8.94(m、6H)、7.98(m、6H)、6.3(d、1H)、5.0(s、1H)、4.9(d、1H)、4.2(m、4H)、3.9(m、4H)、3.6(bs、8H)。質量分析:Electron Spray ToF−MS Pos Ion/90:10アセトニトリル/2mMギ酸アンモニウムpH=8。15C5−sub−PC[M+H]+=679;MALDI(DCTBマトリックス及び/又はHBNマトリックス):15C5−sub−PC[M]+=678。
【0044】
以下の反応手順を用いて金属をクラウンエーテル中に組み込んだ。15C5−sub−PC(100mg)を、50mLの丸底フラスコ内の2mLのEtOHに溶解させ、1当量の金属塩(すなわち、NaI、KI、RbI又はPbNO3)を加え、一晩室温で攪拌した。その後溶液をWhatmannコースろ紙に通してろ過して未反応の塩を除去し、ろ過溶媒を回転蒸発器で除去した。生成物M/15C5−sub−PC(すなわち、Na/15C5−sub−PC、K/15C5−sub−PC、Rb/15C5−sub−PC又はPb/15C5−sub−PC)をほぼ定量的な収率で単離した。K/15C5−sub−PC(CDCl3)の1H NMR δ:8.94(m、6H)、7.98(m、6H)、5.9(ブロードs、1H)、4.95(ブロードs、1H)、4.9(ブロードd、1H)、4.0〜3.4(ブロードピーク、16H)。質量分析:Electron Spray ToF−MS Pos Ion/90:10アセトニトリル/2mMギ酸アンモニウムpH=8。K/15C5−sub−PC[M]+=717、RbI/15C5−SubPc[M]+=763。MALDI(DCTBマトリックス又はHBNマトリックス):K/15C5−sub−PC[M]+=717;Rb/15C5−sub−PC[M]+=763。
【0045】
金属化18−クラウン−6エーテルサブフタロシアニン(M/18C6−sub−PC)誘導体の合成
アシル化工程では、三つ首フラスコにポリリン酸/酢酸(2g/10.49g)、Benzo−18C6(5g、16mmol)、無水酢酸(8.16g、5equs、80mmol)を仕込んだ。反応混合物を閉じ、窒素雰囲気下に保ち、45℃に加熱し、一晩攪拌し続けた。暗褐色の反応混合物を水(100mL)で二回洗浄した。有機生成物を塩化メチレン(100mL)中に入れ、MgSO4で乾燥した。生成物をEtOAC:ヘキサン=40:60比の溶離液によるSiO2クロマトグラフにかけた。生成物のAc−Benzo−18C6を青白い固体(5.2g)として単離した。1H NMR(CDCl3)δ:7.59(d、1H)、7.56(s、1H)、6.9(d、1H)、4.22(m、4H)、3.9〜4.0(m、4H)、3.6〜3.8(m、12H)、2.6(s、3H)。
【0046】
酸化工程では、一つ首丸底フラスコにAc−Benzo−18C6(4.7g、13.27mmol)、20mLのCH2Cl2及びメタクロロ過安息香酸(mCPBA)1.5equs(2.5g、19.9mmol)を仕込んだ。反応混合物を閉じ、窒素雰囲気下に保ち、一晩攪拌し続けた。黄色い沈殿の反応混合物を飽和NaHCO3で、次いで水(100mL)で二回洗浄した。有機生成物を塩化メチレン(100mL)中に入れ、MgSO4で乾燥した。生成物のOAc−Benzo−18C6を黄色い固体(4.71g)として単離し、さらに精製することなく使用した。1H NMR(CDCl3)δ:6.9(d、1H)、6.63(s、1H)、6.62(d、1H)、4.20(m、4H)、3.9(m、4H)、3.8〜3.6(m、12H)、2.3(s、3H)。
【0047】
加水分解工程では、一つ首丸底フラスコにOAc−Benzo−18C6(1.2g、3.24mmol)を仕込み、還流条件下aq.NaOH(10%溶液)で加水分解し、反応物を3時間窒素雰囲気下で攪拌した。反応混合物を飽和NaHCO3で、次いで水(50mL)で二回洗浄した。有機生成物を塩化メチレン(50mL)中に入れ、MgSO4で乾燥した。生成物のOH−Benzo−18C6(0.6g)を得、さらに精製することなく使用した。
【0048】
縮合反応では、サブフタロシアニンクロリド及びOH−Benzo−18C6(3.0g)を化学量論的当量で一つ首丸底フラスコに入れ、10mLのトルエンに溶解させた。フラスコに水冷凝縮器を取り付け、反応混合物を熱い油浴に入れ、還流条件で3日間窒素雰囲気下においた。反応混合物を冷却し、20mLのクロロホルムで希釈し、10%NaOHで洗浄した後、水で洗浄した。その後、反応混合物を吸引ろ過して未反応のサブフタロシアニンクロリドを除去し、次いでMgSO4を用いて溶液を乾燥してピンクの化合物18C6−sub−PCを得た。ろ過溶液を回転蒸発器で除去し、乾燥した。18C6−sub−PCの1H NMR(CDCl3)δ:8.9(m、6H)、7.98(m、6H)、6.69(d、1H)、6.67(s、1H)、6.4(d、1H)、4.0〜3.6(m、20H)。
【0049】
以下の反応手順を用いて金属をクラウンエーテル中に組み込んだ。18C6−sub−PC(30mg、3×10-3mmol)を50mLの丸底フラスコに入れた2mLのEtOHに溶解させ、1当量の金属塩(すなわち、NaI、KI、RbI又はPbNO3)を加え、反応物を一晩室温で攪拌した。その後溶液をWhatmannコースろ紙に通してろ過して未反応の塩を除去し、ろ液溶媒を回転蒸発器で除去してピンクの生成物M/18C6−sub−PCを得た。Pb/18C6−sub−PCの1H NMR(CDCl3)δ:8.9(m、6H)、7.98(m、6H)、6.79(d、1H)、6.78(s、1H)、6.5(d、1H)、4.2〜3.8(m、20H)。質量分析:Electron Spray ToF−MS Pos Ion/90:10のアセトニトリル/2mMギ酸アンモニウム(pH=8)。MALDI(DCTBマトリックス及びHBNマトリックス):PbNO3/18C6−sub−PC[M]+=1020。
【0050】
さらに、表1に、クロロホルム中のUV/Vis吸収分析に基づく幾つかのRSA色素の幾つかの吸収特性を示す。より具体的には、幾つかの15C5−sub−PC RSA色素及びPb/18C6−sub−PC RSA色素に対するλmax、εmax及びε405nmの値が含まれている。
【0051】
【表1】

マイクロホログラム記録
以下に詳細に述べるように、その金属結合官能性(X4)を有するR1を含むことで、sub−PC構造単独と比べて改良された感度が得られる。すなわち、本明細書に開示されたM−sub−PCの実施形態によると、既に開示されていたsub−PC構造より低い強度の記録光を用いてより高い量子効率が得られる。いかなる特定のメカニズムにも限定されることは望まないが、一般的にいって、金属原子の存在が項間交差(ISC)(例えば、ISC24)の速度を高めると考えられ、これが次に系の観察される高まった量子効率を提供し得る。RSA色素の感度を測定する1つの手法は、そのRSA色素を利用する光学媒体の屈折率の変化を、その光学媒体にデータを記録するのに使用する化学光の強度の関数として決定することである。屈折率の測定は、偏光解析器を用いてバルク材料を(例えば、スピンコートした試料を使用して)測定することで実施し得る。すなわち、これらの用途に使用される反応性材料を試験して、いろいろな強度(一定の流束量)の化学線に対する曝露前後の試料の屈折率nを測定することにより、その材料の屈折率の正味の変化Δnを決定し得る。
【0052】
例えば、図9は、いろいろな強度(一定の流束量)の化学線(例えば、約405nm)に曝露されるいろいろな光学媒体の屈折率の変化を図解するグラフ80である。より具体的には、図9は、上で説明したように、各々M−sub−PCの一般構造を有する異なるRSA色素を利用する3つの異なる光学媒体に対する曲線を示す。図に示されているように、曲線84は、Rがフェノキシ基である一般のM−sub−PC構造に対応する。すなわち、曲線84は、RSA色素として非金属化−sub−PCを含む照射された光学媒体のΔnを反映する。対照的に、曲線86及び88は、金属化−sub−PC増感剤を利用する照射された光学媒体のΔnを反映する。特に、曲線86は、R1がX2、X3、X4、X5及びを含み、ここでX2は酸素原子であり、X3はアレーンリンカーであり、X4は15−クラウン−5エーテル系金属結合部分であり、Mはルビジウム原子であり、X5はヨウ素対イオンであるM−sub−PC RSA色素(すなわち、Rb/15C5−sub−PC)を使用する照射された光学媒体のΔnを示す。さらにまた、曲線88は、R1がX2、X3、X4、X5及びを含み、ここでX2は酸素原子であり、X3はアレーンリンカーであり、X4は18−クラウン−6エーテル系金属結合部分であり、Mは鉛原子であり、X5は硝酸塩対イオンであるM−sub−PC RSA色素(すなわち、Pb/18C6−sub−PC)を使用する照射された光学媒体のΔnを示す。
【0053】
一般的にいって、各々の光学媒体の感度は、比較的低い強度の化学光を用いて照射したときの各々の光学媒体の屈折率がどのくらい変化するかを考慮することによって評価され得る。そこで、図9の3つの曲線(例えば、84、86及び88)を比較して3つの対応するRSA色素構造の相対的感度を評価し得る。sub−PC構造単独(すなわち、金属で置換されてない)を表す曲線84の場合、約425MW/cm2の記録光を使用したとき約4.0×10-6のΔnが観察される。対照的に、Rb/15C5−sub−PC RSA色素に対応する曲線86は、約同じ強度の記録光を使用したとき約2.2×10-5のΔnを示す。さらにまた、Pb/18C6−sub−PC RSA色素に対応する曲線88は、ほぼ同じ強度の記録光を使用したとき約3.7×10-5のΔnを示す。従って、M−sub−PC RSA色素を利用するホログラフィック媒体では、非金属置換のsub−PC RSA色素構造を利用する媒体と比べて感度の実質的な改良が観察される。すなわち、M−sub−PC RSA色素を利用するホログラフィック媒体のΔnでは、媒体が低い強度の記録光に曝露されるとき、約5倍〜9倍の増大が観察される。
【0054】
さらにまた、図9に示した光学媒体の各々の量子効率も決定し得る。より具体的には、これらの量子効率(以下で図10に関して詳細に述べる)は、図11に示すような量子効率測定装置を用いて決定し得る。すなわち、図11は、量子効率測定を実施するための量子効率測定装置100の一実施形態の概略図を示す。図示した装置100で、ポンプビーム102(例えば、約405nmの波長を有する光を発することができるレーザー光源103から)及びUVプローブビーム104(例えば、約280nm〜360nmの波長を生ずることができるUVランプ105から)が、反対に伝搬する方向で試料106に入射する。ビーム102及び104は、幾つかのそれぞれの対物レンズ及び/又はレンズ108(例えば、顕微鏡UV対物レンズ及びUV石英レンズ、UV反射防止コーティング付き)により試料106の表面に焦点を結び得る。さらに、焦点を結んだポンプビーム102のスポット110(試料106の表面において約20umの直径を有し得る)及び焦点を結んだUVプローブビーム104のスポット112は、試料106の表面でオーバーラップするように構成され得る。また、UVプローブビーム104は試料106を横切った後、UVプローブビーム104はダイクロミックミラー114を通過し、続いて幾つかの対物レンズ及び/又はレンズ108(例えば、UV対物レンズ)によりUV/Vis分光計118の約20umのピンホール入口116上に焦点を結ぶ。この収集光学は1に近い倍率を有するように構成され得、従って、スポット110はほぼ同じ大きさ(例えば、約20um)の検出器ピンホールを用いて像を形成し得、結果として共焦点検出構成となる。そこで、焦点を結んだUVプローブビーム104のスポット112の直径は焦点を結んだポンプビーム102のスポット110より大きくてもよい。しかしながら、図示した装置100の共焦点構成はプローブ領域を約20umに制限し得る。
【0055】
図示した装置100により、インデックス変化物質(例えば、試料106)の吸光度の変化を、UVプローブビーム104を用いてポンプビーム102の流束量の関数として測定することができる。吸光度がゼロである場合の流束量の数と考えられ得るF0は、装置100によって得られたデータを用いて、図12に示した吸光度対流束量のプロット140を用いて概算し得る。図示したプロット140で、直線142の傾きはほぼ1/F0に等しい。この派生したF0を用いて、エネルギー移動過程の量子効率Q(I)は次式を用いて計算し得る。
【0056】
【数1】

式中、σRSA(I)はRSA励起吸収断面積である。例えば、量子効率は試料106の閾値挙動を確かめるためにいろいろな強度で測定することができよう。
【0057】
図9に示した光学媒体の各々の量子効率は図11に関して上に説明した装置100を用いて決定し得る。従って、図10は、図9に関連して上に記載した3つの光学媒体の量子効率に対応する3つの曲線(例えば、92、94、96)を図示するグラフ90である。ここで、非金属置換のsub−PC構造に対応する曲線92では、約425MW/cm2の強度で約0.0025の量子効率が観察された。対照的に、Rb/15C5−sub−PC RSA色素に対応する曲線94では、約0.007の量子効率がほぼ同じ強度で観察される。さらにまた、Pb/18C6−M−sub−PC RSA色素に対応する曲線96では、ほぼ同じ強度で約0.011の量子効率が観察される。従って、M−sub−PC RSA色素を有する光学媒体で低い記録光強度で記録したとき量子効率の改善は約3倍〜4倍以上の範囲であり得る。
【0058】
本発明の技術的効果として、既に得られているものより高い感度と量子効率を有するホログラフィック媒体の製造がある。上に記載した通り、開示されたM−sub−PC RSA色素は、比較的低強度の記録光を使用するとき比較的に高い量子効率を提供する。これらの改良された感度により、他の波長(例えば、532nm)と比べてより多くの層のデータを書き込めることができる約405nmの低強度の光を用いて、ナノ秒時間スケールでマイクロホログラムに書き込むことが可能である。これにより、ホログラム系の高密度データ保存系及びデバイスの開発が可能になる。
【0059】
本明細書では本発明の幾つかの特徴のみを例示し説明して来たが、多くの改変及び変更が当業者には明らかであろう。従って、後記特許請求の範囲はかかる全ての改変及び変更を本発明の真の思想の範囲内に入るものとして包含するものと理解されたい。
【符号の説明】
【0060】
10 エネルギー図
12 増感剤
14 反応体
16 生成物
18 基底状態(S0
20 第1の光子吸収
22 励起された一重項状態(S1
26 三重項状態(T1
28 第2の光子吸収
30 三重項状態(T2
32 エネルギー移動
34 反応体三重項状態(T1
40 プロット
42 曲線
44 曲線
46 変調
50 ホログラフィック媒体
52 容積
54 焦点
80 グラフ
84 曲線
86 曲線
88 曲線
90 グラフ
92 曲線
94 曲線
96 曲線
100 量子効率測定装置
102 ポンプビーム
103 レーザー光源
104 UVプローブビーム
105 UVランプ
106 試料
108 レンズ
110 スポット
112 スポット
114 ダイクロミックミラー
116 ピンホール
118 UV/Vis分光計
140 吸光度対流束量のプロット
142 直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学記憶媒体組成物であって、
ポリマーマトリックスと、
ポリマーマトリックス内に配置された反応体であって、励起された増感剤からのエネルギー移動を受けた際組成物の屈折率を変化させる修飾を起こすことができる反応体と、
ポリマーマトリックス内に配置されており、強度閾値を上回る強度を有する光に曝露されると励起されるように構成され、かつ反応体へエネルギーを移動するように構成された金属置換サブフタロシアニン(M−sub−PC)逆可飽和吸収剤を含む非線形増感剤と
を含む光学記憶媒体。
【請求項2】
前記修飾が化学反応又は組成物の一部分の物理状態変化を含む、請求項1記載の光学記憶媒体。
【請求項3】
前記エネルギー移動が放射エネルギー移動、非放射エネルギー移動又はその任意の組合せを含む、請求項1記載の光学記憶媒体。
【請求項4】
前記反応体が、スチルベン誘導体、シンナメート誘導体、ジフェニルシクロプロペン(DPCP)誘導体又は相変化ポリマーの1種以上を含む、請求項1記載の光学記憶媒体。
【請求項5】
前記ポリマーマトリックスがポリマー鎖を含み、反応体が、ポリマー鎖に結合した1以上のスチルベン誘導体、シンナメート誘導体又はジフェニルシクロプロペン(DPCP)誘導体を含む、請求項4記載の光学記憶媒体。
【請求項6】
M−sub−PCがサブフタロシアニン部分、金属結合部分及び金属部分を含む、請求項1記載の光学記憶媒体。
【請求項7】
M−sub−PCのサブフタロシアニン部分が、サブフタロシアナトホウ素(III)、2,9,16−トリブロモサブフタロシアナトホウ素(III)、2,9,16−トリヨードサブフタロシアナトホウ素(III)、トリニトロサブフタロシアナトホウ素(III)、2,9,16−トリ−tert−ブチルサブフタロシアナトホウ素(III)、2,9,17−トリ−tert−ブチルサブフタロシアナトホウ素(III)又は2,9,16−トリヨードサブフタロシアニナトホウ素(III)を含む、請求項6記載の光学記憶媒体。
【請求項8】
前記金属結合部分が、クラウンエーテル誘導体、ジケトン誘導体、ピリジン誘導体、ポルフィリン誘導体、カリクサレン誘導体又はシクロデキストリン誘導体の1種以上を含む、請求項6記載の光学記憶媒体。
【請求項9】
前記金属部分がインジウム、鉛、亜鉛、ルビジウム、スズ、セシウム、タリウム、アンチモン、ナトリウム、カリウム又はルビジウムの1種以上を含む、請求項6記載の光学記憶媒体。
【請求項10】
M−sub−PCが、ジケトンリガンド、硝酸塩リガンド、アルキルリガンド、ピリジン系リガンド、ハライド対イオンの1以上を含むリガンド部分を含む、請求項1記載の光学記憶媒体。
【請求項11】
当該光学記憶媒体が、光学記憶媒体上に1以上のマイクロホログラムとしてデータを保存することができる、請求項1記載の光学記憶媒体。
【請求項12】
当該光学記憶媒体が、光の強度及び位相に関する情報を保存することができる、請求項1記載の光学記憶媒体。
【請求項13】
当該光学記憶媒体が約0.01M〜0.1Mの非線形増感剤濃度を有する、請求項1記載の光学記憶媒体。
【請求項14】
当該光学記憶媒体が約0.04Mの非線形増感剤濃度を有する、請求項1記載の光学記憶媒体。
【請求項15】
前記ポリマーマトリックスが1種以上のポリ(アルキルメタクリレート)、ポリ(アルキルアクリレート)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリ(塩化ビニリデン)又はポリ(酢酸ビニル)を含む、請求項1記載の光学記憶媒体。
【請求項16】
M−sub−PC逆可飽和吸収剤が、約405nmの波長を有する光に応答するように構成されている、請求項1記載の光学記憶媒体。
【請求項17】
次式の増感剤。
【化1】

式中、各X1は独立にプロトン、ハライド、炭素数1〜10のヒドロカルビル基又は炭素数1〜10のアルコキシ基を含み、R1は金属と結合するように構成された任意の官能基又は一群の官能基を含む。
【請求項18】
1がクラウンエーテル誘導体、ジケトン誘導体、ピリジン誘導体、ポルフィリン誘導体、カリクサレン誘導体又はシクロデキストリン誘導体である、請求項17記載の増感剤。
【請求項19】
1が次の一般式を有する、請求項17記載の増感剤。
【化2】

式中、nは1〜10であり、Mはインジウム、鉛、亜鉛、ルビジウム、スズ、セシウム、タリウム、アンチモン、ナトリウム、カリウム又はルビジウムを含み、X5は1以上のリガンド又は対イオンを含む。
【請求項20】
1が次式を有する、請求項19記載の増感剤。
【化3】

【請求項21】
1が次の一般式を有する、請求項17記載の増感剤。
【化4】

式中、各X6は独立にプロトン、炭素数1〜10のヒドロカルビル基、ヒドロキシル基、アミノ基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、フェノキシ基又はハライドを含み、X3は炭素数1〜10のアルキル鎖又はアレーン構造を含み、Mはインジウム、鉛、亜鉛、ルビジウム、スズ、セシウム、タリウム、アンチモン、ナトリウム、カリウム又はルビジウムを含み、X5は1以上のリガンド又は対イオンを含む。
【請求項22】
1が次式を有する、請求項21記載の増感剤。
【化5】

【請求項23】
1が次の一般式を有する、請求項17記載の増感剤。
【化6】

式中、各X7は独立にプロトン、ヒドロキシル基、アミノ基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、フェノキシ基、カルボン酸基、ハライド、炭素数1〜20のアレーン若しくはヘテロアレーン基又は炭素数1〜30の大きなアレーン若しくはヘテロアレーン構造の複数の結合点を含み、X3は炭素数1〜10のアルキル鎖又はアレーン構造を含み、Mはインジウム、鉛、亜鉛、ルビジウム、スズ、セシウム、タリウム、アンチモン、ナトリウム、カリウム又はルビジウムを含み、X5は1以上のリガンド又は対イオンを含む。
【請求項24】
1が次の一般式を有する、請求項23記載の増感剤。
【化7】

式中、X5はアセチルアセトン(ACAC)、炭素数1〜8のヒドロカルビル、ハライド又はその任意の組合せを含む。
【請求項25】
増感剤が約405nmの波長を有する光の逆可飽和吸収を示す、請求項17記載の増感剤。
【請求項26】
光学媒体上にデータを保存する方法であって、
金属置換サブフタロシアニン(M−sub−PC)逆可飽和吸収剤(RSA)及びポリマーマトリックス内に配置された反応体を含む光学媒体の一部分に、ある強度閾値を上回る強度を有する記録光を照射し、
前記記録光によりM−sub−PC RSAを励起された三重項状態に励起し、その結果その励起されたM−sub−PC RSAが反応体の修飾を増感し、
反応体を修飾させて、光学媒体の一部分の屈折率を変化させ、光学媒体上にホログラムを形成する、ここでホログラムは記録光の強度及び位相に関する情報を保存する
ことを含む方法。
【請求項27】
ホログラムに保存された情報を非破壊的に再生することができるように、記録光より低い強度の光を用いて光学媒体の一部分を調べることを含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
光学媒体の一部分を照射することが、約405nmの記録光を光学媒体の一部分に照射することを含む、請求項26記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−109345(P2013−109345A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−248898(P2012−248898)
【出願日】平成24年11月13日(2012.11.13)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】