説明

光学フィルタ

【課題】
光学特性(例えば、光に対する吸収特性、半値幅が狭い)および耐久性に優れた光学フィルタを提供する。
【解決手段】
ネオジムの1,3−ジケトン錯体を少なくとも1種含有してなる光学フィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学フィルタに関する。さらに詳しくは、ネオジムの1,3−ジケトン錯体を少なくとも1種含有してなる光学フィルタに関する。さらには、該化合物を含有してなるプラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)などのディスプレイ用フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会の高度情報化に伴った光エレクトロニクス関連用途をはじめ、さまざまな分野において、各種の機能材料の開発が盛んに行われている。例えば、有機材料としては、シアニン系色素、ポリメチン系色素、スクアリリウム系色素、テトラアザポルフィリン系色素、金属ジチオール錯体系色素、フタロシアニン系色素、ジイモニウム系色素または無機酸化物粒子などが使用されており、中でも特定の置換基を有するテトラアザポルフィリン化合物は波長570〜605nmの範囲に吸収極大を持つことから、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機電界発光素子などの各種ディスプレイ用フィルタに多用されている(特許文献1〜4)。
【0003】
一般に、特定波長を選択的に吸収する化合物を、例えば、プラズマディスプレイ用、液晶ディスプレイ用のディスプレイ用フィルタに適用する場合には、該化合物を高分子フィルムの中に含有させたり、高分子フィルムの片面または両面に塗布したりする方法が適用される。また、複数の高分子フィルムを張り合わせる際に使用する粘着層の中に、特定波長を選択的に吸収する化合物を含有させる方法が適用される。このようなディスプレイ用フィルタの作製時には、特定波長を選択的に吸収する化合物自体に、例えば、有機溶媒に対する溶解度などの特性が必要となる。また、ディスプレイ用フィルタを実際のディスプレイに装着して使用する場合には、耐久性(例えば、耐光性、耐湿熱性)が必要となる。そのような要求から、特定波長を選択的に吸収する化合物にも、化合物自体の耐久性が要望されている。
【0004】
このような点から、特許文献1〜4に記載されている特定構造の化合物は、ディスプレイ用フィルタ用途に求められている特性、例えば、有機溶媒に対する溶解性、耐久性(耐光性)に関しては、一定の特性を有しているものの、現在では、さらなる耐久性(例えば、耐湿熱性)及びさらなる光学特性(半値幅が狭い)の向上が求められている。
一方、希土類元素のネオジムを、各種機能材料へ応用する手段も提案されている。例えば、眼鏡レンズにおいて、レンズ材料に酸化ネオジムのような無機ネオジム化合物を配合させる方法が提案されている(特許文献5)。また、ネオジム化合物として、トリスアセチルアセトンネオジムと重合性モノマーによる重合体からなる、良好な透明性と優れた防眩効果を有するコンタクトレンズが提案されている(特許文献6)。さらに、3価のネオジムイオンを構成成分とするネオジム化合物を含有する、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、建築物等に使用される合わせガラス用の中間膜が提案されている(特許文献7)。
このように、ネオジム化合物は570〜590nm付近に鋭い吸収があるため、人間の眼が最も眩しく感じる波長の光を選択的に低減させることができるので、眩しさと関連した不快感やコントラストの不鮮明感、更には視覚疲労などを軽減する目的で、眼鏡レンズや自動車ガラスに利用されている。しかしながら、現在までに、ネオジムの1,3−ジケトン錯体を、光学フィルタへ応用することに関しては報告されていない。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−251144号公報
【特許文献2】特開2002−40233号公報
【特許文献3】特開2000−275432号公報
【特許文献4】特開2008−268331号公報
【特許文献5】特開2000−75128号公報
【特許文献6】特開平4−370106号公報
【特許文献7】特開2007−55839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、光学フィルタを提供することである。さらに詳しくは、ネオジムの1,3−ジケトン錯体を含有してなる優れた光学特性(例えば、光に対する吸収特性、半値幅が狭い)、および耐久性(例えば、耐湿熱性)に優れた光学フィルタを提供することである。

【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、光学フィルタに関し、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、
(i)ネオジムの1,3−ジケトン錯体を少なくとも1種含有してなる光学フィルタに関し、
(ii)ネオジムの1,3−ジケトン錯体が、下記の一般式(1)の化合物である上記の(i)の光学フィルタに関する。

〔式中、R1およびR2はそれぞれ独立に、直鎖または分岐のアルキル基あるいは置換または未置換のアリール基を表す〕
(iii)一般式(1)中のR1が、メチル基であり、R2が炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルキル基である上記の(ii)の光学フィルタ、
(iv)一般式(1)中のR1が、フェニル基であり、R2が炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルキル基である上記の(ii)の光学フィルタ、及び
(v)上記の(i)〜(iv)のいずれかの光学フィルタを用いてなるディスプレイに関するものである。

【発明の効果】
【0008】
本発明により、ネオジムの1,3−ジケトン錯体を含有してなる優れた光学特性と耐久性を有する光学フィルタを提供することが可能となった。

【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の光学フィルタの模式的断面図である。
【図2】本発明の光学フィルタの模式的断面図である。
【図3】本発明の光学フィルタの模式的断面図である。
【図4】本発明の光学フィルタの模式的断面図である。
【図5】本発明の光学フィルタの模式的断面図である。
【図6】本発明の光学フィルタの模式的断面図である。
【図7】本発明の光学フィルタの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に関し詳細に説明する。
<本発明のネオジムの1,3−ジケトン錯体>
本発明は、希土類元素のネオジムに、1,3−ジケトンの3分子を配位したネオジムの1,3−ジケトン錯体(以下、本発明に係る化合物Aと略記する)を少なくとも1種含有してなる光学フィルタに関するものである。また、本発明はこの光学フィルタを用いてなるディスプレイに関するものである。
本発明に係る化合物Aは、希土類元素のネオジム1原子に、例えばアセチルアセトン、プロピオニルアセトン及びブチリルアセトンなどの1,3−ジケトン3分子を配位した化合物であり、優れた光学特性(例えば、光に対する吸収特性、半値幅が狭い)、および優れた耐久性を有するものである。また、係る特性を有するネオジムの1,3−ジケトン錯体を含有してなる光学フィルタは、優れた光学特性、優れた耐久性を有するものである。
尚、本発明に係る化合物Aとしては、好ましくは、一般式(1)の化合物から選ばれる少なくとも1種で表される化合物である。
【0011】

〔式中、R1およびR2はそれぞれ独立に、直鎖または分岐のアルキル基あるいは置換または未置換のアリール基を表す〕
尚、本明細書において、アリール基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基などの炭素環式芳香族基、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基などの複素環式芳香族基を表し、好ましくは、炭素環式芳香族基を表す。

【0012】
<一般式(1)の化合物>
一般式(1)で表される化合物において、好ましくは、R1およびR2はそれぞれ独立に、炭素数1〜12の直鎖または分岐のアルキル基あるいは炭素数4〜30の置換または未置換のアリール基を表す。
一般式(1)における、R1およびR2の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、2,4−ジメチルペンチル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、2−プロピルペンチル基、2,5−ジメチルヘキシル基、2,5,5−トリメチルヘキシル基、n−ノニル基、2,2−ジメチルヘプチル基、2,6−ジメチル−4−ヘプチル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、4−エチルオクチル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、1,3,5,7−テトラメチルオクチル基などの直鎖または分岐のアルキル基
【0013】
例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−n−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、4−イソブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−n−ペンチルフェニル基、4−イソペンチルフェニル基、4−tert−ペンチルフェニル基、4−n−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−n−ヘプチルフェニル基、4−n−オクチルフェニル基、4−n−ノニルフェニル基、4−n−デシルフェニル基、4−n−ウンデシルフェニル基、4−n−ドデシルフェニル基、4−n−テトラデシルフェニル基、4−n−ヘキサデシルフェニル基、4−n−オクタデシルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、2,3,5,6−テトラメチルフェニル基、5−インダニル基、1,2,3,4−テトラヒドロ−5−ナフチル基、1,2,3,4−テトラヒドロ−6−ナフチル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−エトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、4−n−プロポキシフェニル基、4−イソプロポキシフェニル基、4−n−ブトキシフェニル基、4−イソブトキシフェニル基、4−n−ペンチルオキシフェニル基、4−n−ヘキシルオキシフェニル基、4−シクロヘキシルオキシフェニル基、4−n−ヘプチルオキシフェニル基、4−n−オクチルオキシフェニル基、4−n−ノニルオキシフェニル基、4−n−デシルオキシフェニル基、4−n−ウンデシルオキシフェニル基、4−n−ドデシルオキシフェニル基、4−n−テトラデシルオキシフェニル基、4−n−ヘキサデシルオキシフェニル基、4−n−オクタデシルオキシフェニル基、2,3−ジメトキシフェニル基、2,4−ジメトキシフェニル基、2,5−ジメトキシフェニル基、3,4−ジメトキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、3,5−ジエトキシフェニル基、2−メトキシ−4−メチルフェニル基、2−メトキシ−5−メチルフェニル基、3−メトキシ−4−メチルフェニル基、2−メチル−4−メトキシフェニル基、3−メチル−4−メトキシフェニル基、3−メチル−5−メトキシフェニル基、4−フェニルフェニル基、3−フェニルフェニル基、2−フェニルフェニル基、4−(4’−メチルフェニル)フェニル基、4−(4’−メトキシフェニル)フェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−エトキシ−1−ナフチル基、6−n−ブチル−2−ナフチル基、6−メトキシ−2−ナフチル基、7−エトキシ−2−ナフチル基、2−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、4−ピロリジノフェニル基、4−ピペリジノフェニル基、4−モルフォリノフェニル基、4−ピロリジノ−1−ナフチル基などの置換または未置換のアリール基を挙げることができる。
【0014】
一般式(1)で表される化合物において、より好ましくは、R1およびR2は、各々独立に炭素数1〜8の直鎖または分岐のアルキル基あるいは炭素数4〜24の置換または未置換のアリール基を表す。さらに好ましくは、R1およびR2は、各々独立に炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルキル基あるいは炭素数6〜16の置換または未置換のアリール基を表す。特に好ましくは、R1又はR2の一方がメチル基であり、他方の置換基が炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルキル基、或いは、R1又はR2の一方がフェニル基であり、他方の置換基が炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルキル基を表す。
【0015】
本発明に係る一般式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、表1に示される化合物を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0016】

【0017】
<一般式(1)の化合物の製造法>
本発明に係る一般式(1)で表される化合物は、種々の有機化学的手法で製造することが可能である。
すなわち、一般式(1)で表される化合物は、例えば、一般式(2)で表される1,3−ジケトン化合物と、ネオジム化合物(例えば、酸化ネオジム、酢酸ネオジム、硝酸ネオジム)とを、所望によりアンモニア水の存在下で反応させることにより製造することができる〔例えば、Chemical Physics Letter 248(1996)8-12、特開平7-90247号公報に記載の方法に従って製造することができる〕。
【0018】

〔式中、R1 〜R2は一般式(1)の場合と同じ意味を表す〕
【0019】
尚、一般式(2)で表される化合物は、それ自体公知の方法を参考にして製造することができる。一例として挙げると、アルドールを経る方法〔例えば、Tetrahedron.,35 425 (1979)に従って製造することができる〕、あるいはエナミンを経る方法〔例えば、J.Am.
Chem. Soc.,76 2029(1954)に従って製造することができる〕によって製造することができる。
【0020】
一般式(2)で表される化合物の使用量は特に制限されるものではなく、ネオジム化合物に対して、一般に、3.0〜9.0モル程度使用することが好ましく、3.0〜7.0モル程度使用することがより好ましい。
係る溶媒としては、本反応を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノールなどのアルコール類および水を挙げることができる。
これらの溶媒は反応の起こりやすさにしたがって適宜選択され、1種単独で又は2種以上混合して用いることができる。
溶媒を用いる場合、一般に、溶媒の量が多くなると反応の効率が低下し、反対に少なくなると、均一に加熱・撹拌するのが困難になったり、副反応が起り易くなる。したがって、溶媒の量を重量比で化合物全体の100倍まで、好ましくは5〜50倍にするのが望ましい。
【0021】
アンモニア水の使用量は一般式(2)で表される化合物に対して、0.01〜10.0倍モルの範囲で適宜選択すれば良い。
反応温度は、0〜200℃の範囲で適宜選択すれば良いが、好ましくは室温〜溶媒還流温度の範囲である。
反応時間は、反応スケール、反応温度により一定しないが、1〜48時間の範囲で適宜選択すれば良い。
反応終了後、水中に反応溶液を排出して析出物を濾別して水で洗浄する。必要に応じて析出物を、再結晶等の方法で精製することができる。
さらに、一般式(1)で表される化合物とは、水和物、もしくは溶媒和物をも包含するものである。
【0022】
本発明に係る化合物Aは、570〜590nmの間の波長領域に吸収極大波長を有し、詳細には、溶液中の濃度0.01g
/ L、光路長10mmで測定した吸収スペクトルにおいて、吸収ピークの半値幅が8nm以上20nm未満である。なお、本明細書において半値幅とは半値全幅のことであり、吸収スペクトルにおいて吸収極大波長における吸光係数値(εg)の1/2の値にて引いた横軸に並行な直線と当該ピークとにより形成される2つの交点の間の距離(nm)で表される。
【0023】
なお、本発明に係る化合物Aは、各種の光学フィルタ用途(例えば、ディスプレイ用途、屋内外用途、眼鏡レンズ用途)に使用することができる。
光学フィルタを使用するディスプレイとして、例えば、プラズマディスプレイ(PDP)のような発光スペクトルの異なるプラズマを発光させ、その発光具合を調整することで色彩を表現する方法が知られているが、PDPでは、通常、RED系の発光スペクトルは本来の赤に相当する波長630nm付近のピーク以外に、波長590nm付近にもピークを有する。この590nm付近のピークはオレンジ色に近く、色再現性を悪化させる原因となっている。又、GREENやBLUEの発光スペクトルにおいても、波長の高い赤系統のノイズを含むため、同様に色再現性を悪化させる原因となっている。これらは、プラズマ発光特有のスペクトルであり、この発光スペクトルを、PDP自体の設計変更により制御することは不可能である。
本発明に係る化合物Aは、570〜590nmの間の波長領域に吸収極大波長を有し、吸収ピークの半値幅が8nm以上20nm未満であるため、本発明に係る化合物Aを用いてなる光学フィルタを、PDPに装着することで、590nm付近のピークを選択的に吸収することが可能となり、赤・青・緑の各色再現性に有効であると言える。
また、本発明に係る化合物Aは、更に510〜530nmの間の波長領域に吸収を有することで、中間色の光学フィルタとすることが可能になり、このことにより、さらに、赤・青・緑の色純度、色再現性が向上する。
【0024】
さらに、屋内外用途では、一般家屋、ビルなどの各種建築物、車両、飛行機、船などの輸送機の光の入射口(例えば、窓)、水族館、博物館、美術館などのショーケース用及び展示用のガラス又は透明高分子シートに設けて使用される光学フィルタとして使用することができる。
また、眼鏡レンズ用途では、近視用眼鏡、老眼鏡、保護眼鏡、サングラス、ゴーグル、偏光サングラス、偏光ゴーグル、3D映像用メガネ、3D映像用ゴーグルなどに設けて使用される光学フィルタとして使用することもできる。
本発明に係る化合物Aを各種の光学フィルタに使用する場合、例えば、基材中(例えば、ガラス、プラスチック)にすくなくとも本発明に係る化合物Aを1種含有させる。なお、基材に含有するとは、基材の内部に含有されることは勿論、基材の表面に塗布した状態、基材と基材の間に挟まれた状態等を意味する。
【0025】
次に、本発明に係る化合物Aを少なくとも1種含有してなる光学フィルタについてさらに具体的に説明する。

<ディスプレイ用フィルタ>
本発明のディスプレイ用フィルタは、例えば、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機電界発光ディスプレイ、FED(Field Emission Display)、CRT(Cathode
Ray Tube)などの各種ディスプレイ用に適用可能なフィルタであり、各種ディスプレイに装着して使用される。尚、液晶ディスプレイにおいては、例えば、透過型、反射型などの各種態様に適用可能である。
本発明のディスプレイ用フィルタは、本発明に係る化合物Aを少なくとも1種含有することによって、ディスプレイ画面の可視光スペクトルを補正する特性を有する調光フィルムとして機能する。
また、本発明のディスプレイ用フィルタは、さらに、面抵抗0.01〜30Ω/□の透明導電層を備えることによって、ディスプレイ画面からの電磁波を遮断する特性を有する電磁波シールド体として機能する。また、本発明のディスプレイ用フィルタは、さらに、波長800〜1100nm程度に吸収極大を有する近赤外線吸収化合物を含有することによって、ディスプレイ画面からの近赤外線を遮断する特性を有する近赤外線カットフィルタとして機能する。
【0026】
本発明のディスプレイ用フィルタを、例えば、プラズマディスプレイ用フィルタに適用する場合、その構成は、特に限定するものではないが、一般には、機能性透明層(A)、基体(B)および透明粘着層(C)から成るフィルタである。
プラズマディスプレイ用フィルタは、機能性透明層、基体および透明粘着層を構成する少なくとも1つの層、あるいは部材に、本発明に係る化合物Aを少なくとも1種含有してなるものである。
プラズマディスプレイ用フィルタは、プラズマディスプレイ画面に設けられ、一般には、外気側に設けられた機能性透明層(A)と、ディスプレイ側に設けられ、画面に接着するための透明粘着層(C)と、機能性透明層(A)と透明粘着層(C)との間に基体(B)を備えている(図1)。
また、プラズマディスプレイから発生する電磁波を遮蔽する目的で、プラズマディスプレイ用フィルタには、さらに、透明導電層(D)が設けられていることは好ましい。この場合、透明導電層(D)は、機能性透明層(A)と基体(B)との間に設けられる(図2)。
また、透明導電層(D)は、基体(B)と透明粘着層(C)との間に設けられていてもよい(図3)。
勿論、プラズマディスプレイ用フィルタを構成する場合、所望の要求特性を考慮し、その他種々の構成とすることができる。
例えば、プラズマディスプレイ用フィルタには、所望に応じて、ハードコート層、さらなる透明粘着層を設けることができる。また、複数の機能性透明層を設けてなるプラズマディスプレイ用フィルタとすることもできる。これらの層にも本発明に係る化合物Aが含有されていてもよい。
【0027】
本発明のディスプレイ用フィルタを、例えば、液晶ディスプレイ用フィルタに適用する場合、その構成は、一般には、
(1)基体(B)から成るフィルタ(図4)
(2)透明粘着層(C)から成るフィルタ(図5)
(3)基体(B)と透明粘着層(C)から成るフィルタ(図6)
(4)基体(B)と機能性透明層(A)から成るフィルタ(図7)などがある。
液晶ディスプレイ用フィルタは、機能性透明層、基体および透明粘着層を構成する少なくとも1つの層、あるいは部材に、本発明に係る化合物Aを少なくとも1種含有してなるものである。
【0028】
尚、液晶ディスプレイ用フィルタは、ディスプレイ内の光源から視認部最表面に至る任意の経路中に設けられる。例えば、透過型の液晶ディスプレイの場合は、液晶ディスプレイ用フィルタは、液晶ディスプレイ画面上は勿論であるが、例えば、導光板、バックライト、偏光板、カラーフィルタなどに、例えば、透明粘着層を介して設けられる。
【0029】
以下、機能性透明層(A)に関して説明する。
本発明のディスプレイ用フィルタには、ディスプレイに対する設置方法や要求される機能に応じて、反射防止機能、防眩機能、反射防止防眩機能、ハードコート機能(耐摩擦機能)、帯電防止機能、防汚機能、ガスバリア機能、紫外線カット機能のいずれか一つ以上の機能を有し、且つ、可視光線を透過する機能性透明層が設けられる。
機能性透明層は、上記の各機能を一つ以上有する機能膜そのもの、あるいは機能膜を塗布法、印刷法、あるいは従来公知の各種成膜法により形成された支持体、さらには各機能を有する支持体を使用することができる。支持体は、透明な支持体が好ましく、一般には、透明ガラス、透明高分子フィルムである。尚、透明高分子フィルムとしては、例えば、後述する基体(B)で例示する透明高分子フィルムを挙げることができる。支持体の厚さに関しては特に制限するものではない。また、例えば、透明高分子フィルムから成る支持体に本発明に係る化合物Aを含有させることもできる。機能性透明層が機能膜そのものの場合にも、その膜中に本発明に係る化合物Aを含有させることができる。
【0030】
機能性透明層は、外光反射を抑制するための反射防止(AR:アンチリフレクション)機能、防眩(AG:アンチグレア)機能、あるいはその両機能を備えた反射防止防眩(ARAG)機能のいずれかの機能を有していることは好ましい。
反射防止機能を有する機能性透明層は、反射防止膜を形成する支持体の光学特性を考慮し、光学設計により、反射防止膜の構成部材および各構成部材の膜厚を決定することができる。反射防止機能を有する機能性透明層としては、例えば、可視光域において屈折率が1.5以下のフッ素系透明高分子樹脂、フッ化マグネシウム、シリコン系樹脂、酸化珪素などの薄膜を、例えば、1/4波長の光学膜厚で単層形成したもの、あるいは屈折率の異なる金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物などから成る無機化合物薄膜、あるいはシリコン系樹脂やアクリル樹脂、フッ素系樹脂などから成る有機化合物薄膜を支持体から見て、高屈折率層、低屈折率層の順に2層以上積層したものがある。尚、無機化合物薄膜の成膜法は、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、湿式塗工法などの公知の方法を適用することができる。有機化合物薄膜の成膜法は、例えば、バーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ロールコート法、コンマコート法などの公知の方法を適用することができる。反射防止機能を有する機能性透明層の表面の可視光線反射率は、一般に、2%以下、好ましくは、1.3%以下、より好ましくは、0.8%以下であるように調製する。
【0031】
防眩機能を有する機能性透明層は、一般に、0.1μm〜10μm程度の微少な凹凸の表面状態を有する可視光域に対して透明な層のことである。防眩機能を有する機能性透明層は、例えば、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂などの熱硬化型樹脂、または光硬化型樹脂に、シリカ、有機ケイ素化合物などの無機化合物粒子、あるいはメラミン、アクリルなどの有機化合物粒子を分散させてインク化したものを、例えば、バーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ロールコート法、コンマコート法などの方法によって支持体上に塗布、硬化させて形成することができる。係る無機化合物粒子、および有機化合物粒子の平均粒径は、一般に、1〜40μmである。また、防眩機能を有する機能性透明層は、例えば、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂などの熱硬化型樹脂、あるいは光硬化型樹脂を支持体上に塗布した後、所望のヘイズまたは表面状態を有する型を押しつけて、表面を凹凸に硬化させることにより形成することができる。防眩機能の指標となるヘイズ値は、一般に、0.5〜20%である。
【0032】
反射防止防眩機能を有する機能性透明層は、防眩機能を有する膜、あるいは防眩機能を有する支持体上に、反射防止膜を形成することにより調製することができる。反射防止防眩機能を有する機能性透明層の表面の可視光線反射率は、一般に、1.5%以下、好ましくは、1.0%以下になるように調製する。
本発明のディスプレイ用フィルタに耐擦傷性能を付加する目的で、機能性透明層がハードコート機能(耐摩擦機能)を有していることは好適である。ハードコート機能を有する機能性透明層は、ハードコート機能を有する膜、あるいは支持体上にハードコート膜を形成することにより調製することができる。ハードコート膜としては、例えば、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂などの熱硬化型樹脂、あるいは光硬化型樹脂などが挙げられる。ハードコート膜の厚さは、一般に、1〜100μm程度である。ハードコート膜は、反射防止機能を有する透明機能層の高屈折率層、あるいは低屈折率層に用いることもできる。また、ハードコート膜上に反射防止膜が形成されて、機能性透明層が反射防止機能とハードコート機能の両機能を備えていてもよい。同様に、機能性透明層が防眩機能とハードコート機能の両機能を備えていてもよい。
防眩機能とハードコート機能の両機能を備える機能性透明層は、例えば、粒子の分散などにより凹凸を有するハードコート膜の上に、反射防止膜を形成することにより調製することができる。ハードコート機能を有する機能性透明層の表面硬度は、JISK5600に従った鉛筆硬度が、少なくともH以上、好ましくは、2H以上である。
【0033】
一般に、ディスプレイ用フィルタは、静電気が帯電しやすく、ホコリの付着防止、人体への悪影響防止などを考慮し、帯電防止機能が必要とされる場合がある。この場合、帯電防止機能を付与するために、機能性透明層が一定の導電性を有していてもよい。尚、導電性は、一般に、面抵抗で1011Ω/□程度以下であればよい。係る導電性材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)などの公知の透明導電膜、ITO超微粒子、酸化スズ超微粒子などの導電性超微粒子を分散させた導電性膜が挙げられる。また、反射防止機能、防眩機能、反射防止防眩機能、ハードコート機能のいずれか一つ以上の機能を有した機能性透明層を構成する層が導電性を有していることは好ましい。機能性透明膜が、例えば、環境中の物質、あるいは水分に対して、ガスバリア機能を有することは好ましいことである。尚、必要とされるガスバリア機能は、一般に、透湿度で10g/m・day以下である。ガスバリア機能を有する膜としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化イットリウム、酸化マグネシウムなど、またはこれらの混合物、またはこれらに他の元素を添加した金属酸化物薄膜、あるいはポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂などの各種樹脂から成る膜を挙げることができる。ガスバリア機能を有する膜の厚さは、金属酸化物薄膜の場合、一般に、10〜200nmであり、樹脂の場合、一般に、1〜100μmである。尚、ガスバリア機能を有する膜は、単層構造でもよく、あるいは多層構造であってもよい。また、水分に対してガスバリア機能を有する膜としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデンと塩化ビニル、塩化ビニリデンとアクリロニトリルの共重合物、フッ素系樹脂などの各種樹脂から成る膜を挙げることができる。
【0034】
また、反射防止機能、防眩機能、反射防止防眩機能、帯電防止機能、ハードコート機能のいずれか一つ以上の機能を有した機能性透明層を構成する層が、さらにガスバリア機能を兼ねる層とすることができる。さらに、指紋などの汚れ防止、あるいは汚れ除去が容易になるように、機能性透明層の表面に防汚機能を付与することができる。防汚機能を有する化合物としては、水および/または油脂に対して非濡性を有する化合物であり、例えば、フッ素化合物、ケイ素化合物などが挙げられる。
また、機能性透明層に、例えば、紫外線を吸収する無機薄膜単層、あるいは無機薄膜多層から成る反射防止膜、または紫外線吸収化合物を含有する透明膜を形成することにより、機能性透明層に、さらに、紫外線カット機能を付与することができる。機能性透明層が、機能膜そのものの場合、例えば、透明導電層の主面に塗布法、印刷法などの各種成膜法により形成されていてもよい。機能性透明層が、機能膜を形成した透明な基体、各機能を有する透明な基体の場合は、粘着材を介して、例えば、透明導電層の主面に形成されていてもよい。
【0035】
以下、基体(B)に関して説明する。
基体は、フィルタの支持体として機能し、一般に、可視光域において、透明ガラス、透明高分子フィルムが用いられる。透明高分子フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン6などのポリアミド、ポリイミド、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのビニル化合物、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ビニル化合物の付加重合体、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニリデン化合物、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重体などのビニル化合物、またはフッ素系化合物の共重合体、ポリエチレンオキシドなどのポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。基体は、一般に、厚さが10〜250μmであり、好ましくは50〜250μmである。
基体は、製造効率の点から、好ましくは、可撓性の透明高分子フィルムであり、さらに、ディスプレイ表面に、直接貼合された透明高分子フィルムを基体とするフィルタは、ディスプレイの基板ガラスが破損した場合、ガラスの飛散防止ができるという利点がある。本発明においては、基体の表面は、スパッタリング処理、コロナ処理、火炎処理、紫外線照射、電子線照射などのエッチング処理、あるいは下塗り処理が施されていてもよい。基体の少なくとも一方の主面にハードコート層が形成されていてもよい。ハードコート層となるハードコート膜としては、例えば、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂などの熱硬化型樹脂、あるいは光硬化型樹脂などが挙げられる。ハードコート層の厚さは、1〜100μm程度である。また、ハードコート層に、本発明に係る化合物Aが1種以上含有されていてもよい。
本発明のディスプレイ用フィルタ、特にプラズマディスプレイ用フィルタが、ディスプレイ画面からの電磁波を遮蔽する特性を有する電磁波シールド体として機能することは好ましく、プラズマディスプレイ用フィルタには、機能性透明層、基体、透明粘着層の他に、さらに透明導電層(D)を備えていることが好ましい。
【0036】
以下、透明導電層(D)に関して説明する。
ディスプレイ用フィルタが、電磁波シールド体の形態の場合、基体の一方の主面上に透明導電層が形成される。本発明における透明導電層とは、単層または多層薄膜から成る透明導電層である。尚、電磁波シールド体においては、透明導電層と外部との電気的接続が必要あり、例えば、機能性透明層、透明粘着層などは、透明導電層の周縁部を残して、導通部を確保することが必要となる。単層の透明導電層としては、金属メッシュ、導電性格子状パターン膜などの導電性メッシュ、さらには金属薄膜や酸化物半導体薄膜などの透明導電性薄膜がある。多層薄膜から成る透明導電層としては、金属薄膜と高屈折率透明薄膜を積層した多層薄膜がある。金属薄膜と高屈折率透明薄膜を積層した多層薄膜は、銀などの金属の持つ導電性、およびその自由電子による近赤外線反射特性、および特定波長領域における金属による反射を高屈折率透明薄膜により防止できることから、導電性、近赤外線カット機能、可視光線透過率に関して好ましい特性を有している。電磁波シールド機能、近赤外線カット機能を有するディスプレイ用フィルタを得るためには、電磁波吸収のための高い導電性と電磁波反射のための反射界面を多く有する金属薄膜と、高屈折率透明薄膜を積層した多層薄膜から成る透明導電層は好ましい。高い可視光線透過率と低い可視光線反射率に加え、プラズマディスプレイに必要な電磁波シールド機能を有するには、透明導電層が、面抵抗が、一般に、0.01〜30Ω/□、より好ましくは、0.1〜15Ω/□、さらに好ましくは、0.1〜5Ω/□であることが望ましい。また、透明導電層自体に、近赤外線カット機能を持たせることもでき、近赤外線波長領域、例えば、800〜1100nmにおける光線透過率極小を、20%以下にすることができる。
【0037】
本発明において好ましい透明導電層は、基体の一方の主面上に、高屈折率透明薄膜層(Dt)、金属薄膜層(Dm)の順に、(Dt)/(Dm)を繰り返し単位として、2〜4回繰り返し積層され、さらにその上に少なくとも高屈折率透明薄膜層を積層して形成され、該透明導電層の面抵抗が、0.1〜5Ω/□である。金属薄膜層の材料として、好ましくは、銀、金、白金、パラジウム、銅、インジウム、スズ、さらには銀と金、白金、パラジウム、銅、インジウムまたはスズとの合金である。銀を含む合金中の銀の含有率は、特に限定されるものではないが、一般に、50質量%以上、100質量%未満である。尚、複数層から成る金属薄膜の場合は、少なくとも1つの層は銀を合金にしないで用いることや、基体から見て、最初の層および/または最外層にある金属薄膜層のみを銀の合金とすることができる。金属薄膜層は、導電性などの点から薄膜は不連続な島状構造ではなく、連続状態であることが必要であり、またその厚さは、4〜30nmが好ましい。複数層から成る金属薄膜の場合は、各層が全て同じ厚さである必要はなく、さらに、各層全てが銀、あるいは同じ組成の銀の合金でなくてもよい。金属薄膜層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、メッキ法などの公知の方法を挙げることができる。
高屈折率透明薄膜層を形成する透明薄膜としては、可視光領域において透明性を有し、金属薄膜層の可視光領域における光線反射を防止する機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、一般に、可視光線に対する屈折率が、1.6以上、好ましくは、1.8以上の材料が用いられる。このような透明薄膜を形成する材料としては、例えば、インジウム、チタン、ジルコニウム、ビスマス、スズ、亜鉛、アンチモン、タンタル、セリウム、ランタン、トリウム、マグネシウム、ガリウムなどの酸化物、または、これら酸化物の混合物や、硫化亜鉛などを挙げることができ、より好ましくは、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化インジウムと酸化スズの混合物(ITO)である。高屈折率透明薄膜層の厚さは、特に限定されるものではないが、一般に、5〜200nmである。高屈折率透明薄膜層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法、真空蒸着法、湿式塗工法などの公知の方法を挙げることができる。透明導電層の耐環境性などの向上を目的に、透明導電層の表面に、導電性、光学特性などの諸特性を著しく損なわない程度に、有機物あるいは無機物から成る保護層を設けることができる。また、金属薄膜層の耐環境性、金属薄膜層と高屈折率透明薄膜層との密着性などを向上させるため、金属薄膜層と高屈折率透明薄膜層の間に、導電性、光学特性などの諸特性を損なわない程度に、無機物層を設けることができる。尚、無機物層を形成する材料としては、例えば、銅、ニッケル、クロム、金、白金、亜鉛、ジルコニウム、チタン、タングステン、スズ、パラジウムなど、あるいはこれらの材料の2種類以上からなる合金が挙げられる。無機物層の厚さは、好ましくは、0.2〜2nm程度である。透明導電層の形成方法としては、透明導電性薄膜を用いる方法の他に、導電性メッシュを用いる方法がある。導電性メッシュの一例として、単層の金属メッシュについて説明する。単層の金属メッシュとしては、例えば、基体上に銅メッシュ層を形成したものがあり、一般には、基体上に銅箔を貼合わせた後、メッシュ状に加工して形成される。銅箔としては、圧延銅、電解銅が用いられ、好ましくは、孔径0.5〜5μmの多孔性の銅箔である。銅箔のポロシティーとしては、0.01〜20%が好ましく、より好ましくは、0.02〜5%である。尚、ポロシティーとは、体積をRとし、孔容積をPとした場合に、P/Rで定義される値である。銅箔は、各種表面処理(例えば、クロメート処理、粗面化処理、酸洗、ジンク・クロメート処理)を施されていてもよい。銅箔の厚さは、一般に、3〜30μmである。金属メッシュの光透過部分の開口率は、一般に、60〜95%である。開口部の形状は、特に限定されるものではないが、正三角形、正四角形、正六角形、円形、長方形、菱形などに形がそろっており、面内に並んでいることが好ましい。光透過部分の開口部の大きさは、一般に、1辺あるいは直径が、5〜200μmであることが好ましい。また、開口部を形成しない部分の金属の幅は、5〜50μmが好ましい。光透過部分を有する金属層の実質的な面抵抗は、好ましくは、0.01〜0.5Ω/□である。尚、透明導電層と表示装置のアース部(グランド導体)とを電気的に接続させるため、導電性粘着層を設ける。
【0038】
導電性粘着層に用いる導電性接着剤、導電性粘着材としては、例えば、アクリル系接着剤、シリコン系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリビニルブチラール接着剤(PVB)、エチレン−酢酸ビニル系接着剤(EVA)、ポリビニルエーテル、飽和ポリエステル、メラミン樹脂などのベース材料に、導電性粒子として、例えば、カーボン、Cu、Ni、Ag、Feなどの金属粒子を分散させたものがある。尚、導電性接着剤、導電性粘着材の体積固有抵抗は、一般に、1×10−4〜1×10Ω・cmである。導電性接着剤、導電性粘着材としては、シート状、液体状のものがある。導電性粘着材としては、シート状の感圧型粘着材が好適に使用できる。シート状粘着材を貼付けた後、または接着剤の塗布後にラミネートして貼合わせる。液体状の導電性接着剤は、塗布、貼合わせ後に、室温または高温下で処理することにより、あるいは紫外線照射することにより硬化させることができる。液体状の導電性接着剤の塗布方法としては、例えば、スクリーン印刷法、バーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ロールコート法、コンマコート法などが挙げられる。尚、導電性粘着層の厚さは、体積固有抵抗と必要な導電性を考慮して設定され、一般には、0.5〜50μm、好ましくは、1〜30μmである。また、両面に導電性を有する両面接着タイプの導電性テープも使用できる。
【0039】
以下、透明粘着層(C)に関して説明する。
本発明において、透明粘着層は、任意の透明粘着材(接着剤、粘着剤)から成る層である。透明粘着層は、例えば、アクリル系接着剤、シリコン系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリビニルブチラール接着剤(PVB)、エチレン−酢酸ビニル系接着剤(EVA)など、ポリビニルエーテル、飽和ポリエステル、メラミン樹脂などから形成される。尚、粘着材としては、シート状、または液体状のものが使用できる。粘着材として、例えば、シート状の感圧型粘着材を使用する場合は、シート状粘着材を貼付け後、または接着剤を塗布後、ラミネートして貼り合わせる。粘着材として、例えば、液体状の接着剤を使用する場合は、塗布、貼合わせ後に、室温または高温下で処理することにより、あるいは紫外線照射することにより硬化させて貼り合わせる。その塗布方法としては、例えば、スクリーン印刷法、バーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ロールコート法、コンマコート法などを挙げることができる。
透明粘着層の厚みは、特に限定されるものではないが、一般に、0.5〜50μmである。透明粘着層が形成される面、および貼合わされる面は、予め易接着コートまたはコロナ放電処理などの易接着処理されていることは好ましい。さらに、透明粘着層を介して貼合わせた後、貼合わせ時に部材間に混入した空気を、脱泡、または粘着材に固溶させて、さらには部材間の密着力を向上させる目的で、加圧、加温条件下で処理を施すことは好ましい。透明粘着層の少なくとも1つの層に、本発明に係る化合物A色素を含有させることができる。
本発明のディスプレイ用フィルタには、本発明に係る化合物Aを少なくとも1種含有してなるものである。
尚、本明細書において、含有とは、各種部材または膜などから成る各層、あるいは透明粘着材の内部に含有されることは勿論、部材または各層の表面に、塗布された状態を包含するものである。
【0040】
本発明に係る化合物Aを、ディスプレイ用フィルタに含有させる方法としては、例えば、以下の(1)〜(4)の方法がある。
(1)透明粘着材に添加して、透明粘着層に含有させる方法、
(2)高分子樹脂に混練して含有させる方法、
(3)高分子樹脂または樹脂モノマーを含む有機溶媒に、本発明に係る化合物Aを、分散または溶解させ、各種部材、各層上に、例えば、キャスティングする方法、
(4)バインダー樹脂を含む有機溶媒に、本発明に係る化合物Aを加え、塗料として各種部材、各層上にコーティングする方法、がある。
上記(1)の方法においては、本発明に係る化合物Aの含有量は、特に限定するものではないが、一般に、透明粘着材に対して、10ppm〜30質量%、好ましくは、10ppm〜20質量%である。また、(2)および(3)の方法においては、本発明に係る化合物Aの含有量は、特に限定するものではないが、一般に、高分子樹脂または樹脂モノマーに対して、10ppm〜30質量%、好ましくは、10ppm〜20質量%である。また、(4)の方法においては、本発明に係る化合物Aの含有量は、特に限定するものではないが、一般に、バインダー樹脂に対して、10ppm〜30質量%、好ましくは、10ppm〜20質量%である。また、バインダー樹脂濃度は、塗料全体に対して、一般に、1〜50質量%である。
【0041】
本発明のディスプレイ用フィルタには、本発明に係る化合物A以外に、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、光吸収化合物を1種以上併用することができる。係る光吸収化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、可視光域に所望の吸収を有する化合物を挙げることができ、例えば、アントラキノン化合物、フタロシアニン化合物、メチン化合物、アゾメチン化合物、オキサジン化合物、アゾ化合物、スチリル化合物、クマリン化合物、ポルフィリン化合物、ジベンゾフラノン化合物、ジケトピロロピロール化合物、ローダミン化合物、キサンテン化合物、ピロメテン化合物などを挙げることができる。また、本発明のディスプレイ用フィルタが、近赤外線カットフィルタの形態の場合には、さらに近赤外線吸収化合物が1種類以上含有されていてもよい。
尚、近赤外線吸収化合物としては、好ましくは、800〜1100nm程度に吸収極大を有する化合物である。係る近赤外線吸収化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、フタロシアニン化合物(例えば、金属フタロシアニン錯体)、ナフタロシアニン化合物(例えば、金属ナフタロシアニン錯体)、アントラキノン化合物、ジチオール化合物(例えば、ニッケルジチオール錯体)、ジインモニウム塩化合物などを挙げることができる。これら光吸収化合物、近赤外線吸収化合物の濃度は、該化合物の吸収波長、吸光係数、さらには、所望のディスプレイ用フィルタの光学特性(例えば、色純度、透過特性)を考慮し任意に設定することができる。
本発明のディスプレイ用フィルタは、例えば、プラズマディスプレイの輝度、視認性を著しく損なうことなく、優れた透過特性などを有し、プラズマディスプレイの光学特性(例えば、色純度およびコントラスト)を向上させることができる。また、本発明のディスプレイ用フィルタは、例えば、液晶ディスプレイの光学特性(例えば、色純度)を向上させることができる。

【実施例】
【0042】
以下、製造例、および実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、以下の製造例、実施例及び比較例において吸収スペクトルの測定は、濃度0.01g/Lのトルエン溶液を、測定機器として株式会社日立製作所製U−3500型自記分光光時計を使用し、光路長10mmで測定した。

【0043】
(実施例1)化合物番号1の化合物の製造
アセチルアセトン39.0gをメタノール240mLに加え、室温で10分撹拌した。この混合物に、硝酸ネオジム57.0gを加え、室温で2時間撹拌した。更に、4%アンモニア水溶液170mLを1時間で滴下し、室温で1時間反応させた。反応物を静置した後、析出物を濾取した。濾取した析出物を水で洗浄し乾燥して、50.1gの青色結晶を得た。この化合物は、トルエン中、585nmに吸収極大波長を示し、半値幅は10であった。

【0044】
(実施例2) 化合物番号3の化合物の製造
実施例1において、アセチルアエトンを使用する代わりに、1−フェニル−1,3−ブタンジオン63.2gを使用した以外は、実施例1に記載の操作に従い、化合物番号3の化合物52.4gを青色の固体として得た。この化合物は、トルエン中、588nmに吸収極大波長を示し、半値幅は11であった。

【0045】
(実施例3) 化合物番号6の化合物の製造
実施例1において、アセチルアエトンを使用する代わりに、5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオン55.4gを使用した以外は、実施例1に記載の操作に従い、化合物番号6の化合物52.4gを青色の固体として得た。この化合物は、トルエン中、587nmに吸収極大波長を示し、半値幅は11であった。

【0046】
(実施例4) 化合物番号7の化合物の製造
実施例1において、アセチルアエトンを使用する代わりに、6−メチル−2,4−ヘプタンジオン55.4gを使用した以外は、実施例1に記載の操作に従い、化合物番号7の化合物56.1gを青色の固体として得た。この化合物は、トルエン中、590nmに吸収極大波長を示し、半値幅は12であった。

【0047】
(実施例5) 化合物番号11の化合物の製造
実施例1において、アセチルアエトンを使用する代わりに、2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン60.8gを使用した以外は、実施例1に記載の操作に従い、化合物番号11の化合物57.3gを青色の固体として得た。この化合物は、トルエン中、588nmに吸収極大波長を示し、半値幅は13であった。

【0048】
(実施例6) ディスプレイ用フィルタの作製
トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚さ:80μm)を基体とし、その一方の面に、機能性透明層として、次の機能性透明膜をロール・ツー・ロールで連続的に形成した。すなわち、多官能メタクリレート樹脂に光重合開始剤を加え、さらにITO微粒子(平均粒径:10nm)を分散させた塗工液をグラビアコーターにて塗工し、紫外線硬化させて、導電性ハードコート膜(膜厚:3μm)を形成した。その上に含フッ素有機化合物溶液をマイクログラビアコーターにて塗工し、90℃で乾燥、熱硬化させて、屈折率1.4の反射防止膜(膜厚:100nm)を形成し、ハードコート機能(鉛筆硬度:2H)、反射防止機能(表面の可視光線反射率:0.9%)、帯電防止機能(面抵抗:7×10Ω/□)、防汚機能を有する機能性透明膜を形成した。
一方、酢酸エチル/トルエン(50:50質量%)溶媒に、実施例1で製造した、化合物番号1の化合物を溶解させて希釈液とした。
アクリル系粘着剤(80質量%)と、この化合物番号1の化合物を含む希釈液(20質量%)を混合し、機能性透明膜/TACフィルムのTAC面上に、コンマコーターにより乾燥膜厚25μmに塗工し、乾燥させて、透明粘着層を形成した。透明粘着層面に離型フィルムをラミネートしてロール状に巻き取り、離型フィルムを有するディスプレイ用フィルタを作製した。
尚、化合物番号1の化合物は、乾燥した粘着材の中で1650(質量)ppm含有するように、希釈液を調製した。さらに、該ディスプレイ用フィルタをシート状に裁断し、離型フィルムを剥離して、プラズマディスプレイパネル前面(表示部920mm×520mm)に、枚葉式ラミネーターを用いて貼合わせた。この際、表示部全体に透明粘着層部を貼合わせるようにシート裁断、貼り位置合わせを行なった。貼合わせた後、60℃、2×10Paの条件下でオートクレーブ処理し、ディスプレイ用フィルタを装着した表示装置を得た。
【0049】
なお、上記で作製したディスプレイ用フィルタを、以下の項目に付いて測定、評価した。評価結果を表2及び表3に示した。
(I)プラズマディスプレイの明所コントラスト比(最高輝度/最低輝度比)
ディスプレイ用フィルタの装着前と装着後のプラズマディスプレイで評価した。測定方法は、周囲明るさ100lxの明時において、プラズマディスプレイの白色表示時の最高輝度(cd/m)と黒色表示時の最低輝度(cd/m)を、ミノルタ(株)製の輝度計(LS−110)を用いて測定し、コントラスト比(最高輝度/最低輝度比)を求めた。尚、ディスプレイ用フィルタ装着前のコントラスト比は、20であった。
(II)ディスプレイ用フィルタの耐熱性試験
ディスプレイ用フィルタを、80℃、85%RHで、100時間保存して評価した。測定方法は、耐熱性試験前と耐熱性試験後のディスプレイ用フィルタの小片をそれぞれ、(株)日立製作所製の分光光度計(U−300)を用いて測定し、595nmにおける透過率を、610nmにおける透過率に対する比率(%)(595nmの透過率/610nmの透過率×100)で求め、評価したた。
(III)プラズマディスプレイの発光色の色純度
ディスプレイ用フィルタを形成する前後で評価した。三原色である赤色(R)表示、緑色(G)表示、青色(B)表示において、ミノルタ(株)製CRTカラーアナライザ(CA100)を用いて、RGB色度(x、y)を測定した。三原色の色度がNTSC方式で定められた色度に近いほど好ましい。

【0050】
(実施例7〜10) ディスプレイ用フィルタの作製
実施例6において、粘着層の形成に際し、化合物番号1の化合物を使用する代わりに、実施例2で製造した、化合物番号3の化合物(実施例7)、実施例3で製造した、化合物番号6の化合物(実施例8)、実施例4で製造した、化合物番号7の化合物(実施例9)、更に、実施例5で製造した、化合物番号11の化合物(実施例10)を使用した以外は、実施例6に記載の方法により、ディスプレイ用フィルタを作製し、さらに、該ディスプレイ用フィルタを装着した表示装置を得た。
作製したディスプレイ用フィルタに関して、実施例6と同様に測定、評価した結果を表2及び表3に示した。

【0051】
(比較例1) ディスプレイ用フィルタの作製
実施例6において、粘着層の形成に際し、化合物番号1の化合物を使用しない以外は、実施例6に記載の方法により、ディスプレイ用フィルタを作製し、さらに、該ディスプレイ用フィルタを装着した表示装置を得た。
作製したディスプレイ用フィルタに関して、実施例6と同様に測定、評価した結果を表2及び表3に示した。

【0052】
(比較例2) ディスプレイ用フィルタの作製
実施例6において、粘着層の形成に際し、化合物番号1の化合物を使用する代わりに、比較化合物として、下記式(B)で表される特開2008−268331号公報に記載の化合物を使用した以外は、実施例6に記載の方法により、ディスプレイ用フィルタを作製し、さらに、該ディスプレイ用フィルタを装着した表示装置を得た。作製したディスプレイ用フィルタに関して、実施例6と同様に測定、評価した結果を表2及び表3に示した。

【0053】

【0054】

【0055】
表2から、本発明のディスプレイ用フィルタを装着したプラズマディスプレイのコントラストは、大きく改善されていることが判る。また、本発明のディスプレイ用フィルタの耐湿熱性は、優れていることが判る。
表3から、本発明のディスプレイ用フィルタを装着したプラズマディスプレイのコントラスト及び色純度、特に赤色の色純度が、大きく改善されていることが判る。

【0056】
(実施例11)ディスプレイ用フィルタの作製
ポリエチレンテレフタレート(PET)ペレットに、実施例1で合成した、化合物番号1の化合物を0.018質量%、さらに白色発光の色度を補正用に赤色色素PS−Red−G〔三井化学(株)製〕を0.004質量%混合した後、260〜280℃で溶融し、押し出し機によりPETフィルム(厚さ:250μm)を作製した。その後、このPETフィルムを2軸延伸して、基体中に化合物番号1の化合物、および赤色色素PS−Red−Gを含有するフィルム状の基体(厚さ:125μm)を作製した。
さらにロール状に巻き取った上記フィルム状の基体の一方の面上に、機能性透明層として次の機能性透明膜をロール・ツー・ロールで連続的に形成した。すなわち、多官能メタクリレート樹脂に光重合開始剤を加え、さらに有機シリカ微粒子(平均粒径:15μm)を分散させた塗工液を、塗工し、紫外線硬化させて、防眩機能(ヘーズ値:5%)、およびハードコート機能(鉛筆硬度:2H)を有する機能性透明膜(厚さ:3μm)を形成した。その後、アクリル系粘着剤を用いて、機能性透明膜とは反対側のフィルム状の基体面上に、透明粘着層を形成した。
透明粘着層面に離型フィルムをラミネートしてロール状に巻き取り、離型フィルムを有するディスプレイ用フィルタを作製した。さらに、該ディスプレイ用フィルタをシート状に裁断し、離型フィルムを剥離して、プラズマディスプレイパネル前面(表示部920mm×520mm)に枚葉式ラミネーターを用いて貼合わせた。この際、表示部全体に透明粘着層部を貼合わせるようにシート裁断、貼り位置合わせを行なった。貼合わせ後、60℃、2×10Paの条件下でオートクレーブ処理し、ディスプレイ用フィルタを装着した表示装置を得た。このディスプレイ用フィルタは、波長610nmの透過率に対する595nmの透過率は31%であった。また、このディスプレイ用フィルタを装着したプラズマディスプレイは、周囲照度100lxの条件下における明所コントラスト比が、ディスプレイ用フィルタを装着する前が20であったのに対し、38に向上した。

【0057】
(実施例12) ディスプレイ用フィルタの作製
2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)(厚さ:188μm)を基体とし、その一方の面に、PETフィルムから順に、ITO薄膜(膜厚:40nm)、銀薄膜(膜厚:11nm)、ITO薄膜(膜厚:95nm)、銀薄膜(膜厚:14nm)、ITO薄膜(膜厚:90nm)、銀薄膜(膜厚:12nm)、ITO薄膜(膜厚:40nm)の計7層の透明導電層を形成し、面抵抗2.2Ω/□の透明導電層を有する透明積層体を作製した。酢酸エチル/トルエン(50:50質量%)溶媒に、実施例2で合成した、化合物番号3の化合物、および赤色色素PS−Red−G〔三井化学(株)製〕を溶解させて希釈液とした。
アクリル系粘着剤(80質量%)と、この希釈液(20質量%)を混合し、コンマコーターにより透明積層体の基体側の面に、乾燥膜厚25μmに塗工し、乾燥させて、粘着面に離型フィルムをラミネートして、離型フィルムと透明積層体の基体に挟み込まれた透明粘着層を形成した。尚、粘着材の屈折率は1.51、消光係数は0であった。尚、化合物番号3の化合物および赤色色素PS−Red−Gは、乾燥した粘着材の中で、それぞれ1150(質量)ppm、1050(質量)ppm含有するように調製した。
【0058】
一方、トリアセチルセルロースフィルム(厚さ:80μm)の一方の主面に、多官能メタクリレート樹脂に光重合開始剤を加え、さらにITO微粒子(平均粒径:10nm)を分散させたコート液をグラビアコーターにて塗工し、紫外線硬化させて、導電性ハードコート膜(膜厚:3μm)を形成した。その上に含フッ素有機化合物溶液をマイクログラビアコーターにて塗工し、90℃で乾燥、熱硬化させて、屈折率1.4の反射防止膜(膜厚:100nm)を形成し、ハードコート機能(鉛筆硬度:2H)、ガスバリア機能(透湿度:1.8g/m2・day)、反射防止機能(表面の可視光線反射率:1.0%)、帯電防止機能(面抵抗:7×109 Ω/□)、防汚機能を有する機能性透明層として、反射防止フィルムを作製した。反射防止フィルムの他方の主面に、アクリル系粘着剤と希釈液〔酢酸エチル/トルエン(50:50質量%)〕を塗工・乾燥させ、厚さ25μmの透明粘着層を形成し、さらに離型フィルムをラミネートした。ロール状の透明積層体/粘着材/離型フィルムを、970mm×570mmの大きさに裁断し、ガラス製支持板に透明導電層面を上にして固定した。さらに、ラミネーターを用いて、透明導電層の周縁部20mmが剥き出しになるように導通部を残して、内側だけに反射防止フィルムをラミネートした。さらに、透明導電層の剥き出しの導通部を覆うように周縁部の幅22mmの範囲に、銀ペーストをスクリーン印刷し、乾燥させて、厚さ15μmの電極を形成した。ガラス製支持板から外して、透明粘着層面に離型フィルムを有する電磁波シールド機能を有するディスプレイ用フィルタを作製した。さらに、ディスプレイ用フィルタの離型フィルムを剥離して、プラズマディスプレイパネル前面(表示部920mm×520mm)に枚葉式ラミネーターを用いて貼合わせた後、60℃、2×105 Paの条件下でオートクレーブ処理した。ディスプレイ用フィルタの電極部とプラズマディスプレイパネルのアース部を、導電性銅箔粘着テープを用いて接続し、ディスプレイ用フィルタを装着した表示装置を得た。
【0059】
このディスプレイ用フィルタを装着したプラズマディスプレイは、波長610nmの透過率に対する595nmの透過率は38%であった。また、ディスプレイ用フィルタを装着したプラズマディスプレイは、周囲照度100lxの条件下における明所コントラスト比が、ディスプレイ用フィルタを形成される前が20であったのに対して、44に向上した。また、赤外線リモートコントローラーを使用する電子機器として、家庭用VTRを、プラズマディスプレイに0.5mに近付けても、VTRは誤動作しなかった。尚、ディスプレイ用フィルタを装着しない場合は、VTRをプラズマディスプレイから5m遠ざけても、VTRは誤動作した。

【0060】
(実施例13) ディスプレイ用フィルタの作製
酢酸エチル/トルエン(50:50質量%)溶媒に、実施例5で合成した、化合物番号11の化合物を溶解させて希釈液とした。アクリル系粘着剤(80質量%)と、この化合物番号11の化合物を含む希釈液(20質量%)を混合し、ポリエチレンテレフタレートフィルム(75μm)の面上に、ダイコーターにより乾燥膜厚20μmに塗工、乾燥させて、ディスプレイ用フィルタを製造した。尚、化合物番号11の化合物は、乾燥した粘着材の中で1200(質量)ppm含有するように、希釈液を調製した。このディスプレイ用フィルタは、波長610nmの透過率に対する595nmの透過率は19%であった。赤色の色度(x、y)が(0.612、0.335)である透過型液晶ディスプレイ画面(カラーフィルタ付き)に、このディスプレイ用フィルタを装着すると、赤色の色度が(0.617、0.331)となった。すなわち、本発明のディスプレイ用フィルタを装着すると、赤色の色度が、NTSC方式で定められた赤色の色度(0.670、0.330)に近づいた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明により光学特性(例えば、光に対する吸収特性、半値幅が狭い)、および耐久性(例えば、耐湿熱性)に優れた光学フィルタを提供することが可能になった。さらに詳しくは、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)などのディスプレイ用フィルタに使用される光学フィルタを提供することが可能になった。
【符号の説明】
【0062】
11:機能性透明層(A)
12:基体(B)
13:透明粘着層(C)

21:機能性透明層(A)
22:基体(B)
23:透明粘着層(C)
24:透明導電層(D)

31:機能性透明層(A)
32:基体(B)
33:透明粘着層(C)
34:透明導電層(D)

42:基体(B)

53:透明粘着層(C)

62:基体(B)
63:透明粘着層(C)

71:機能性透明層(A)
72:基体(B)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネオジムの1,3−ジケトン錯体を少なくとも1種含有してなる光学フィルタ。

【請求項2】
ネオジムの1,3−ジケトン錯体が、下記の一般式(1)の化合物である、請求項1の光学フィルタ。

〔式中、R1およびR2はそれぞれ独立に、直鎖または分岐のアルキル基あるいは置換または未置換のアリール基を表す〕

【請求項3】
一般式(1)中のR1が、メチル基であり、R2が炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルキル基である請求項2の光学フィルタ。

【請求項4】
一般式(1)中のR1が、フェニル基であり、R2が炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルキル基である請求項2の光学フィルタ。

【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの光学フィルタを用いてなるディスプレイ


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−42537(P2012−42537A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181402(P2010−181402)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【出願人】(000179904)山本化成株式会社 (70)
【Fターム(参考)】