説明

光学フィルム、位相差フィルムおよびこれを含む液晶表示装置

【課題】本発明は、光学フィルム、位相差フィルムおよびその製造方法と、前記光学フィルムまたは位相差フィルムを含む偏光板および液晶表示装置に関するものである。
【解決手段】本発明は、ガラス転移温度が異なる2種以上の(メタ)アクリル系樹脂を含むグラフト共重合体を含む光学フィルム、位相差フィルムおよびその製造方法と、前記光学フィルムまたは位相差フィルムを含む偏光板および液晶表示装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム、位相差フィルムおよびその製造方法と、前記光学フィルムまたは位相差フィルムを含む偏光板および液晶表示装置に関するものである。具体的に、本発明は、機械的物性および光学的物性が改善された、(メタ)アクリル系樹脂を含む光学フィルム、位相差フィルムおよびその製造方法と、前記光学フィルムまたは位相差フィルムを含む偏光板および液晶表示装置に関するものである。本出願は2007年6月14日に韓国特許庁に提出した韓国特願第10-2007-0058248号および2007年10月30日に韓国特許庁に提出した韓国特願第10-2007-0109747号の出願日の利益を主張し、その内容の全てを本明細書に含む。
【背景技術】
【0002】
アクリル系樹脂は安価で且つ透明度が高く、フィルムの樹脂として好適である。しかしながら、アクリル系樹脂を含むアクリレートフィルムは機械的物性が劣るため、フィルムへの作製に不適であるという問題点を有している。これを改善するために、アクリル系樹脂にソフトセグメントを添加し重合した材料を用いてアクリレートフィルムを製造する技術が試みられているが、現在も機械的物性を満足させることができるフィルムの開発が要求されている。
【0003】
また、スチレン系樹脂で製造したフィルムは、これを延伸および配向させる際にその配向方向と直交する方向に屈折率が大きくなる光学異方性を有する材料であって、これを延伸して正の値の厚み方向の位相差値(Rth)を有するフィルムの製造に適した材料として知られている。しかも、スチレン系樹脂は経済性の面で有利であり、透明性に優れたという利点がある。ところが、高価の特殊な単量体を併用して製造する場合を除いては耐熱性が不充分であり、機械的物性が劣るという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、従来技術の問題を解決するために研究を重ねた結果、特定の種類の(メタ)アクリル系共重合体をフィルムとして作製する際、その機械的物性に優れ、且つ光学特性にも優れ、光学フィルムの材料として適用する場合に優れた効果を示し、スチレン樹脂をさらに用いて光学フィルムまたは位相差フィルムとして適用する場合には、経済的ながらも優れた特性を有することができるということを見出した。
【0005】
これにより、本発明は、機械的物性に優れる(メタ)アクリル系樹脂を含む光学フィルム、位相差フィルムおよびその製造方法と、前記光学フィルムまたは位相差フィルムを含む偏光板および液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、ガラス転移温度が異なる2種以上の(メタ)アクリル系樹脂を含むグラフト共重合体を含む光学フィルムを提供する。前記光学フィルムはスチレンまたはこれの誘導体を有する樹脂をさらに含むことができる。
【0007】
また、本発明は、a)第1(メタ)アクリル系単量体を含む第1(メタ)アクリル系樹脂を製造する段階と、b)前記第1(メタ)アクリル系樹脂の主鎖にラジカルとの反応が可能な官能基を導入する段階と、c)前記b)段階で得た変性された第1(メタ)アクリル系樹脂に第2(メタ)アクリル系単量体をラジカル重合させ、第1(メタ)アクリル系樹脂に前記第1(メタ)アクリル系樹脂とガラス転移温度の異なる第2(メタ)アクリル系樹脂がグラフト重合されたグラフト共重合体を製造する段階と、d)前記c)段階で得たグラフト共重合体を用いてフィルムを形成する段階とを含む光学フィルムの製造方法を提供する。
【0008】
前記d)段階で、フィルムの形成前にグラフト共重合体とスチレンまたはこれの誘導体を有する樹脂を混合した後、前記混合された樹脂を用いてフィルムを形成することができる。
【0009】
また、本発明は、ガラス転移温度が異なる2種以上の(メタ)アクリル系樹脂を含むグラフト共重合体およびスチレンまたはこれの誘導体を有する樹脂を含み、厚み方向の位相差(Rth)>0であり、面内位相差(Rin)≠0である位相差フィルムを提供する。
【0010】
また、本発明は、a)ガラス転移温度が異なる2種以上の(メタ)アクリル系樹脂を含むグラフト共重合体およびスチレンまたはこれの誘導体を有する樹脂を混合する段階と、b)前記a)段階で得た混合樹脂を用いてフィルムを形成する段階と、c)前記フィルムを一軸または二軸延伸する段階とを含む位相差フィルムの製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、液晶セルおよびこの液晶セルの両面に備えられた第1偏光板および第2偏光板を含む液晶表示装置において、前記第1偏光板および第2偏光板のうち少なくとも1つと液晶セルとの間に、ガラス転移温度が異なる2種以上の(メタ)アクリル系樹脂を含むグラフト共重合体を含む光学フィルムを1枚以上含むことを特徴とする液晶表示装置を提供する。前記光学フィルムはスチレンまたはこれの誘導体を有する樹脂をさらに含むことができる。
【0012】
また、本発明は前記位相差フィルムを含む液晶表示装置を提供する。
【0013】
また、本発明は、偏光子およびこの偏光子の片面または両面に保護フィルムとして備えられた、ガラス転移温度が異なる2種以上の(メタ)アクリル系樹脂を含むグラフト共重合体を含む光学フィルムを含む偏光板を提供する。前記光学フィルムはスチレンまたはこれの誘導体を有する樹脂をさらに含むことができる。
【0014】
また、本発明は、液晶セルおよびこの液晶セルの両面に備えられた第1偏光板および第2偏光板を含む液晶表示装置において、前記第1偏光板および第2偏光板のうち少なくとも1つが、偏光子およびこの偏光子の片面または両面に保護フィルムとして備えられたガラス転移温度の異なる2種以上の(メタ)アクリル系樹脂を含むグラフト共重合体を含む光学フィルムを含む偏光板であることを特徴とする液晶表示装置を提供する。前記光学フィルムはスチレンまたはこれの誘導体を有する樹脂をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る光学フィルムおよび位相差フィルムは、ガラス転移温度が異なる2種以上の(メタ)アクリル系樹脂を含むグラフト共重合体を含むものであって、光学特性および機械的特性に優れるため、様々な用途、特に偏光板の保護フィルムなどに有用に使用することができるうえ、機械的物性、耐熱性および光学的物性に優れるため、性能に優れた液晶表示装置を安価で且つ簡易に製造するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る光学フィルムを偏光板の保護フィルムとして適用した液晶表示装置の構造を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0018】
本発明に係る光学フィルムは、ガラス転移温度が異なる2種以上の(メタ)アクリル系樹脂を含むグラフト共重合体を含むことを特徴とする。上記のようなグラフト共重合体を含む本発明に係る光学フィルムは、従来のアクリル系フィルムよりも機械的物性に優れ、且つ光学的物性にも優れ、様々な用途に有用に使用することができる。さらに、このグラフト共重合体をスチレンまたはこれの誘導体を有する樹脂に添加することにより、フィルムの機械的物性が改善されるという効果を有するようになる。
【0019】
本明細書において(メタ)アクリル系樹脂はアクリル系樹脂とメタクリル系樹脂の両方を含むものとする。
【0020】
本発明において、前記ガラス転移温度が異なる2種以上の(メタ)アクリル系樹脂は互いに相溶性のないことが好ましい。前記(メタ)アクリル系樹脂のうち少なくとも1種はガラス転移温度が0℃未満であり、前記(メタ)アクリル系樹脂のうち少なくとも1種はガラス転移温度が0℃以上であることが好ましい。前記グラフト共重合体において主鎖を形成する高分子鎖は、ガラス転移温度が0℃未満の(メタ)アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0021】
前記(メタ)アクリル系樹脂は、特に限定されないが、(メタ)アクリル系単量体を重合して製造でき、必要に応じて追加のコモノマーをさらに添加することもできる。
【0022】
前記(メタ)アクリル系単量体としては、炭素数1〜12のアルキル基、好ましくは炭素数2〜8のアルキル基、アルキレン基、芳香族の置換基を有するものが良い。前記炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、ブチルアクリレート(butyl acrylate)、ブチルメタクリレート(butyl methacrylate)、2-エチルヘキシルアクリレート(2-ethyl hexyl acrylate)、2-エチルヘキシルメタクリレート(2-ethyl hexyl methacrylate)、メチルアクリレート(methyl acrylate)、メチルメタクリレート(methyl methacrylate)、エチルアクリレート(ethyl acrylate)、エチルメタクリレート(ethyl methacrylate)、n-プロピルアクリレート(n-propyl acrylate)、n-プロピルメタクリレート(n-propyl methacrylate)、イソプロピルアクリレート(iso-propyl acrylate)、イソプロピルメタクリレート(iso-propyl methacrylate)、t-ブチルアクリレート(t-butyl acrylate)、t-ブチルメタクリレート(t-butyl methacrylate)、ペンチルアクリレート(pentyl acrylate)、ペンチルメタクリレート(pentyl methacrylate)、n-オクチルアクリレート(n-octyl acrylate)、n-オクチルメタクリレート(n-octyl methacrylate)、イソノニルアクリレート(iso-nonyl acrylate、イソノニルメタクリレート(iso-nonyl methacrylate)、n-テトラデシルアクリレート、n-テトラデシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレートなどからなる群より選択される単量体が挙げられ、これらは1種単独で若しくは2種以上を混合して用いることができる。しかし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
前記(メタ)アクリル系樹脂の製造に官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体が添加でき、この具体的な例としては2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートのようなヒドロキシを含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体;2-グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシを含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸二量体、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、クロトン酸、β-カルボキシエチルアクリレートのようなカルボン酸を含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体などが挙げられ、これらは1種単独で若しくは2種以上を混合して用いることができる。しかし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
前記(メタ)アクリル系樹脂は上述した単量体以外に他の単量体をさらに含むことができる。例えば、シアン化ビニル単量体、マレイミド単量体、芳香族環を含むビニル単量体などをさらに含むことができる。
【0025】
前記シアン化ビニル単量体としてはアクリロニトリルなどがある。前記マレイミド単量体としてはN-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-メチルマレイミド、N-ブチルマレイミドなどがある。芳香族環を含むビニル単量体としてはスチレン系単量体、具体的にスチレン、α-メチルスチレン(methylstyrene)、3-メチルスチレン(methylstyrene)、p-メチルスチレン(methylstyrene)、p-エチルスチレン(ethylstyrene)、p-プロピルスチレン(propylstyrene)、4-(p-メチルフェニル)スチレン、1-ビニルナフタレン、p-クロロスチレン(chlorostyrene)、m-クロロスチレン(chlorostyrene)およびp-ニトロスチレン(nitrostyrene)からなる群より選択された1または2以上の化合物などが挙げられ、これらに限定されない。
【0026】
前記単量体中ガラス転移温度が0℃以上の(メタ)アクリル系樹脂を製造できる単量体としては、各単量体のホモポリマーのガラス転移温度が0℃の単量体であればいずれも使用可能である。本発明では代表的にメチルメタクリレート(MMA)が主に用いられ、その含有量は(メタ)アクリル系樹脂内にメチルメタクリレートを50モル%以上含むことが好ましい。
【0027】
前記ガラス転移温度が0℃以上の(メタ)アクリル系樹脂を製造するために、前記単量体の他にもホモポリマーのガラス転移温度が0℃未満の単量体をコモノマーとして用いることができるが、この場合、共重合体のガラス転移温度が0℃以上になるようにその量を調節して用いる。
【0028】
また、前記単量体中ガラス転移温度が0℃未満の(メタ)アクリル系樹脂を製造できる単量体としては、代表的にはブチルアクリレート(BA)が挙げられ、他にもブチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどがあり、これらの単量体は単独で若しくはは2種以上を混合して用いることができる。
【0029】
特に、前記ガラス転移温度が0℃未満の(メタ)アクリル系樹脂がグラフト共重合体の主鎖を形成する場合に、共重合体の主鎖にガラス転移温度が異なる樹脂、例えば、ガラス転移温度が0℃以上の(メタ)アクリル系樹脂がグラフト重合されるように、前記ガラス転移温度が0℃未満の(メタ)アクリル系樹脂にラジカルとの反応が可能な官能基を導入する方法が適用できる。この際、前記ガラス転移温度が0℃未満の(メタ)アクリル系樹脂にラジカルとの反応が可能な官能基を導入するために、上述した(メタ)アクリル系単量体の他に官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体を添加することが好ましい。前記官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートのようなヒドロキシを含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体;2-グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシを含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸二量体、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、クロトン酸、β-カルボキシエチルアクリレートのようなカルボン酸を含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体などが挙げられ、これらは1種単独で若しくは2種以上を混合して用いることができる。しかし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
ガラス転移温度が0℃未満の(メタ)アクリル系樹脂を製造するために、前記単量体の他にもホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上の単量体をコモノマーとして用いることができるが、この場合、共重合体のガラス転移温度が0℃未満になるようにその量を調節して用いる。
【0031】
本発明において、前記ガラス転移温度が異なる2種以上の(メタ)アクリル系樹脂を含むグラフト共重合体は、ガラス転移温度の低い(メタ)アクリル系樹脂が主鎖を形成し、ガラス転移温度の高い(メタ)アクリル系樹脂が側鎖を形成するものであるか、若しくはその逆のものである。本発明で、前記グラフト共重合体はガラス転移温度の低い(メタ)アクリル系樹脂が主鎖を形成し、ガラス転移温度の高い(メタ)アクリル系樹脂が側鎖を形成する構造であることが好ましい。例えば、前記グラフト共重合体は、ガラス転移温度が0℃未満の1種以上の(メタ)アクリル系樹脂が主鎖を形成し、ガラス転移温度が0℃以上の1種以上の(メタ)アクリル系樹脂が側鎖を形成する構造を持つことができる。
【0032】
前記グラフト共重合体は、重量平均分子量が5万〜200万、より好ましくは5万〜50万であるものが良く、数平均分子量が1万〜100万、より好ましくは1万〜30万の範囲であるものが好ましい。
【0033】
本発明において、前記ガラス転移温度が0℃未満の(メタ)アクリル系樹脂と前記ガラス転移温度が0℃以上の(メタ)アクリル系樹脂の重量比は95:5〜5:95、より好ましくは90:10〜10:90の範囲であることが好ましい。
【0034】
本発明において、前記スチレンまたはこれの誘導体を有する樹脂としては、樹脂内にスチレンまたはこれの誘導体を30重量%以上含むものであれば特に限定されない。具体的に本発明において使用できる例としてはポリスチレン、SAN(スチレンアクリロニトリル共重合体)等が挙げられる。
【0035】
本発明において、前記グラフト重合体と前記スチレンまたはこれの誘導体を有する樹脂は、重量比が95:5〜5:95の範囲で混合可能であり、特に、所望の物性を有するためには混合後に得られた混合樹脂内にスチレンまたはこれの誘導体を20重量%以上含むことが好ましい。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、a)第1(メタ)アクリル系単量体を含む第1(メタ)アクリル系樹脂を製造する段階と、b)前記第1(メタ)アクリル系樹脂の主鎖にラジカルとの反応が可能な官能基を導入する段階と、c)前記b)段階で得た変性された第1(メタ)アクリル系樹脂に第2(メタ)アクリル系単量体をラジカル重合させ、第1(メタ)アクリル系樹脂に前記第1(メタ)アクリル系樹脂とガラス転移温度の異なる第2(メタ)アクリル系樹脂がグラフト重合されたグラフト共重合体を製造する段階と、d)前記c)段階で得たグラフト共重合体を用いてフィルムを形成する段階とを含む光学フィルムの製造方法を提供する。
【0037】
前記d)段階で、フィルムの形成前にグラフト共重合体とスチレンまたはこれの誘導体を有する樹脂を混合した後、前記混合樹脂を用いてフィルムを形成することができる。
【0038】
前記a)段階は前記第1(メタ)アクリル系樹脂を製造する段階であって、その後行われるb)段階で第1(メタ)アクリル系樹脂の主鎖に、ラジカルとの反応が可能な官能基を導入するために、前記第1(メタ)アクリル系単量体に様々な官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体を追加することが好ましい。前記官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体の好ましい例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートのようなヒドロキシを含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体;2-グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシを含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸二量体、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、クロトン酸、β-カルボキシエチルアクリレートのようなカルボン酸を含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体などが挙げられるが、これらに限定されない。第1(メタ)アクリル系樹脂の製造時に添加される官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体の量は0.1〜50mol%、より好ましくは0.1〜10mol%であることが良い。
【0039】
次いで、前記b)段階は、前記a)段階で製造された第1(メタ)アクリル系樹脂の主鎖にラジカルとの反応が可能な官能基を導入する段階である。前記ラジカルとの反応が可能な官能基としては-SH基がある。
【0040】
具体的に、前記b)段階の一実施形態では、第1(メタ)アクリル系樹脂に-SH基を導入する方法として、樹脂内のヒドロキシ基またはカルボキシル基と、メルカプトを有する酸(Mercaptoacetic acid)、メルカプトアルコール、またはメルカプトエステルを、触媒の存在または不在下でエステル化させる段階を含む方法を用いることができる。この段階において前記第1(メタ)アクリル系樹脂に対し導入可能な-SH基の量は、反応条件に応じて様々な量が導入できる。例えば、エステル化の程度を全ヒドロキシ基またはカルボキシル基の官能基に対し0.1〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%に調節して-SH基の濃度を様々に導入できる。
【0041】
前記b)段階で用いられる触媒としては、代表的に酸触媒がある。これに使用可能な酸触媒としては硫酸または塩酸の無機塩、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などの有機酸、ボロン酸などのルイス酸などが挙げられる。前記b)段階で用いられる酸触媒は特にその量が制限されない。
【0042】
メルカプト基が導入された第1(メタ)アクリル系樹脂は、後でラジカル重合過程において連鎖移動剤(chain transfer agent)として作用でき、グラフト重合の活性サイトを提供する役割をする(論文[Journal of Polymer Science 1959、p411-423]参照)。
【0043】
前記c)段階では、前記b)段階で得た変性された第1(メタ)アクリル系樹脂に第2(メタ)アクリル系単量体を添加しラジカル重合して、前記第1(メタ)アクリル系樹脂に前記第1(メタ)アクリル系樹脂とガラス転移温度の異なる第2(メタ)アクリル系樹脂がグラフト重合されたグラフト共重合体を製造することができる。
【0044】
前記c)段階で、前記b)段階で得た変性された第1(メタ)アクリル系樹脂の添加量は一般的に第2(メタ)アクリル系単量体100重量部に対し1〜50重量部で、様々にその添加量を調節することができる。前記第2(メタ)アクリル系単量体は、第1(メタ)アクリル系樹脂とガラス転移温度が異なる第2(メタ)アクリル系樹脂に含まれる(メタ)アクリル系単量体を意味し、その例は前述した通りである。本発明に係る光学フィルムの製造方法において、前記第1(メタ)アクリル系樹脂は、ガラス転移温度が0℃未満の(メタ)アクリル系樹脂であり、前記第2(メタ)アクリル系樹脂は、0℃以上の(メタ)アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0045】
前記c)段階でも、第2(メタ)アクリル系単量体の他に官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体を追加することができる。官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体の好ましい例としては前記a)段階で使用可能なものと同一である。
【0046】
前記c)段階でのラジカル重合としては当該技術分野において知られている方法を用いることができ、本発明の範囲は重合方法によって限定されない。例えば、塊状(bulk)重合、溶液(solution)重合、懸濁(suspension)重合、乳化(emulsion)重合が可能であるが、これらの例に限定されない。
【0047】
重合開始剤としては、例えば、熱により活性化する開始剤または光により活性化する開始剤を用いることができる。具体的にアゾビス(イソブチロニトリル)のようなアゾ化合物、ベンゾイルパーオキシド(benzoyl peroxide)のようなパーオキシド化合物などの熱により活性化する開始剤やベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテルおよび2,2'-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンなどのような光により活性化する開始剤が挙げられるが、これらに限定されない。重合開始剤の量は特に制限されないが、結果的に得られるグラフト共重合体の適切な分子量を得るために、一般的に第2(メタ)アクリル系単量体に対し重量比で0.01〜5、より好ましくは0.1〜1の範囲を使用することが良い。
【0048】
また、分子量を適切に調節するために連鎖移動剤を添加することができる。適切な連鎖移動剤としては、ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタンなどのメルカプタン系またはアルファメチルスチレンダイマータイモなどがある。
【0049】
前記重合反応温度は、他の重合条件との均衡のために多少の変動はあるが、通常30〜130℃、 好ましくは40〜120℃、 より好ましくは40〜90℃が良い。また、反応時間は、反応温度や単量体の種類または濃度などの反応条件に応じて異なるが、通常2〜24時間にする。前記ラジカル重合時には必要に応じて充填剤(filler)、強化剤、安定剤、着色剤および酸化防止剤をさらに添加することができる。
【0050】
前記重合に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類、n-ヘキサン、石油エーテル、トルエン、ベンゼン、キシレンなどの炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、アセトニトリル、N,N-ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。このような溶媒は、それぞれ単独で若しくは2種以上を併用しても良い。前記重合反応は不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては例えば窒素ガス、アルゴンガスなどが挙げられる。
【0051】
前記方法で第1(メタ)アクリル系樹脂の主鎖にラジカルとの反応が可能な官能基を導入するための前駆体、重合開始剤、第2(メタ)アクリル系単量体の量を調節することにより、グラフト共重合体の分子量、グラフトの程度および熱的安定性などを調節することができる。
【0052】
前記d)段階では、前記グラフト共重合体を、1次成形加工としての一般的なフィルムの製造方法の押出成形法、インフレーション成形法または溶液流延法などの方法を用いて光学フィルムに製造できる。前記光学フィルムは、それ自体、すなわち無延伸状態で産業的な用途に用いられることが好ましいが、次の段階で2次成形加工である延伸加工操作で位相差を付与して位相差フィルムとして用いることもできる。
【0053】
前記d)段階で共重合体をスチレンまたはこれの誘導体と混合する場合、混合条件は特に限定されなく、一般的に適用される押出過程が適用される。
【0054】
また、本発明に係る光学フィルムの製造時には生産性の向上のために上述したグラフト共重合体以外に商用化されたアクリル樹脂を混合することができる。この際、グラフト共重合体とアクリル系樹脂との混合割合は特に限定されなく、得られた光学フィルムの機械的物性が低下しない範囲内で混合できる。好ましくはグラフト共重合体とアクリル系樹脂間の重量比が95:5〜5:95の範囲で混合可能であり、より好ましくは0:20〜20:80の範囲が良い。アクリル系樹脂の重量比が95%を超えると光学フィルムとしての用途に適した物性を有さない可能性がある。前記アクリル系樹脂の具体的な種類としては特に限定されなく市販のものを用いることができ、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)等がある。
【0055】
1次成形加工として押出成形法によってフィルムを製造する場合、T-ダイと呼ばれるダイの薄い間隙を通過させることにより任意の厚みのフィルムを製造することができる。この際、ガス発泡による外観不良を防止するために予めグラフト共重合体を80〜130℃の範囲の温度で加熱および乾燥させることが好ましい。押出成形は、分子鎖の配向を抑制するためにグラフト共重合体が溶融流動するガラス転移温度より十分高い温度で行われることが好ましい。ダイの通過後、溶融状態のフィルムの冷却固化のため低温度金属ローラやスチールベルトを使用できる。
【0056】
1次成形加工として溶液流延法によってフィルムを製造する場合、それぞれの樹脂が可溶できる溶剤を選び、必要に応じて複数の溶剤を用いることができる。前記溶液流延法に用いられる溶剤の具体的な例としては、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフランなどが挙げられるが、これらに限定されない。特に揮発速度の制御のために、グラフト共重合体に対する良溶剤(good solvent)と貧溶剤(poor solvent)を組み合わせることができる。溶液流延法において乾燥時には、加熱条件の設定によってフィルム内に気泡または内部空隙が形成されないようにし、残留溶剤の濃度が0.1wt%以下であることが好ましい。
【0057】
前記方法によって1次成形加工で製造された光学フィルムは厚みが30〜500μmであることが好ましい。
【0058】
上述のように製造された光学フィルムをさらに延伸する場合、前記グラフト共重合体のガラス転移温度をTgとし、Tg−20℃〜Tg+30℃の温度で行うことができる。前記ガラス転移温度は、グラフト共重合体の貯蔵弾性率が低下し始め、これに伴い損失弾性率が貯蔵弾性率よりも大きくなる温度から高分子鎖の配向が緩和されて消失する温度までの領域を意味するものである。ガラス転移温度は示差走査熱量計(DSC)にて測定することができる。
【0059】
なお、本発明は、ガラス転移温度が異なる2種以上の(メタ)アクリル系樹脂を含むグラフト共重合体およびスチレンまたはこれの誘導体を有する樹脂を含み、厚み方向の位相差(Rth)>0であり、面内位相差(Rin)≠0である位相差フィルムを提供する。
【0060】
前記の位相差フィルムの厚みは30〜200μmであることが好ましい。前記位相差フィルムの面方向位相差の値が0〜+400nm、厚み方向位相差の値が0〜+400nmであることが好ましい。
【0061】
本明細書において厚み方向位相差(Rth)および面内位相差(Rin)は下記のように定義する。
【0062】
th=d[nz-(nx+ny)/2]
in=d(nx−ny)

前記式において、x軸方向の屈折率をnx、y軸方向の屈折率をny、厚み(d)方向屈折率をnz、フィルムの厚みをdとする。
【0063】
本発明に係る位相差フィルムは、前記光学フィルムの製造方法でのようにフィルムを成形した後、(c)前記フィルムを一軸または二軸延伸する段階をさらに行うことにより製造できる。本発明では、前述のような成分を含むフィルムを一軸延伸するか、若しくは二軸の延伸率を異にして二軸延伸することにより、厚み方向の位相差(Rth)>0であり、面内位相差(Rin)≠0である位相差フィルムを提供することができる。上記のような位相差フィルムは、液晶表示装置、特にIPS方式の液晶表示装置が要求する光学特性を提供することができる。
【0064】
前記延伸は、前記混合樹脂のガラス転移温度をTgとし、Tg−20℃〜Tg+30℃の温度で行うことができる。前記ガラス転移温度は混合樹脂の貯蔵弾性率が低下し始め、これに伴い損失弾性率が貯蔵弾性率よりも大きくなる温度から高分子鎖の配向が緩和されて消失する温度までの領域を意味するものである。ガラス転移温度は示差走査熱量計(DSC)にて測定することができる。
延伸速度は得ようとする位相差とフィルムの厚みにより適宜調節することが可能である。一般に下記式によって計算される延伸速度を50%/min〜500%/minにすることにより延伸が可能である。
【0065】
[式]
延伸速度(%/min)=[(延伸後の幅方向寸法/延伸前の幅方向寸法)−1]×100(%)/延伸に必要な時間(min)。
【0066】
本発明に係る位相差フィルムの製造方法において、延伸比は得ようとする位相差とフィルムの厚みにより適宜調節することが可能であるが、通常10%〜100%の範囲内で延伸が可能である。
【0067】
また、本発明は、液晶セルおよびこの液晶セルの両面に備えられた第1偏光板および第2偏光板を含む液晶表示装置において、前記第1偏光板および第2偏光板のうち少なくとも1つと液晶セルとの間に、ガラス転移温度が異なる2種以上の(メタ)アクリル系樹脂を含むグラフト共重合体を含む光学フィルムを1枚以上含むことを特徴とする液晶表示装置を提供する。前記光学フィルムはスチレンまたはこれの誘導体を有する樹脂をさらに含むことができる。
【0068】
また、本発明は前記位相差フィルムを含む液晶表示装置を提供する。
【0069】
また、本発明は、偏光子およびこの偏光子の片面または両面に、保護フィルムとして備えられたガラス転移温度が異なる2種以上の(メタ)アクリル系樹脂を含むグラフト共重合体を含む光学フィルムを含む偏光板を提供する。前記光学フィルムはスチレンまたはこれの誘導体を有する樹脂をさらに含むことができる。
【0070】
前記偏光子の片面だけに保護フィルムとして本発明に係る光学フィルムが備えられる場合、その他面には当該技術分野において知られている保護フィルムを備えることができる。他面の保護フィルムとしてはトリアセテートセルロース(TAC)フィルム、開環メタセシス重合(ring opening metathesis polymerization;ROMP)で製造されたポリノルボルネン系フィルム、開環重合された環状オレフィン系重合体に再度水素を添加して得られたHROMP(ring opening metathesis polymerization followed by hydrogenation)重合体、ポリエステルフィルム、または付加重合(addition polymerization)で製造されたポリノルボルネン系フィルムなどが挙げられる。これ以外にも透明な高分子材料で製造されたフィルムなどを保護フィルムとして用いることができるが、これらに限定されない。
【0071】
前記偏光子としてはヨードまたは二色性染料を含むポリビニルアルコール(PVA)からなるフィルムを用いることができる。前記偏光子はPVAフィルムにヨードまたは二色性染料を染着させることで製造できるが、この製造方法は特に限定されない。本明細書において、偏光子は保護フィルムを含まない状態を意味し、偏光板は偏光子と保護フィルムを含む状態を意味する。
【0072】
本発明に係る偏光板において、保護フィルムと偏光子は当該技術分野において知られている方法にて貼り合せることができる。
【0073】
例えば、保護フィルムと偏光子の貼り合せは接着剤を用いた接着方式によって行われる。すなわち、先に保護フィルムまたは偏光子のPVAフィルムの表面上にロールコーター、グラビアコーター、バーコーター、ナイフコーター、またはキャピラリコーターなどを用いて接着剤をコーティングする。接着剤が完全に乾燥される前に保護フィルムと偏光子を貼り合せローラで加熱圧着したり常温圧着して貼り合せる。ホットメルト型接着剤を用いる場合には加熱圧着ローラを用いる。
【0074】
前記保護フィルムと偏光子の貼り合せ時に使用可能な接着剤としては、一液形または二液形のPVA接着剤、ポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、スチレンブタジエンゴム系(SBR系)接着剤、またはホットメルト型接着剤などがあるが、これらに限定されない。ポリウレタン系接着剤を用いる場合、光によって黄変しない脂肪族イソシアネート系化合物を用いて製造されたポリウレタン系接着剤を用いることが好ましい。一液形または二液形のドライラミネート用接着剤またはイソシアネートとヒドロキシ基との反応性が比較的低い接着剤を用いる場合にはアセテート系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、または芳香族系溶剤などにより希釈された溶液形接着剤を用いることもできる。この際、接着剤の粘度は5000cps以下の低粘度型であるものが好ましい。前記接着剤は保存安定性に優れ、且つ400〜800nmでの光透過度が90%以上であるものが好ましい。
【0075】
十分な粘着力が発揮できれば粘着剤も用いることができる。粘着剤は、貼り合せた後、熱または紫外線によって十分に硬化が起きることにより、機械的強度が接着剤のレベルに向上することが好ましく、界面接着力も大きく、粘着剤が付着した両方のフィルムのいずれか一方の破壊がなくては剥離されない程度の粘着力を有することが好ましい。
【0076】
使用可能な粘着剤の具体的な例としては、光学透明性に優れた天然ゴム、合成ゴムまたはエラストマー、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルキルエーテル、ポリアクリレートまたは変性ポリオレフィン系粘着剤などと、ここにイソシアネートなどの硬化剤を添加した硬化型粘着剤が挙げられる。
【0077】
また、本発明は、液晶セルおよびこの液晶セルの両面に備えられた第1偏光板および第2偏光板を含む液晶表示装置において、前記第1偏光板および第2偏光板のうち少なくとも1つが、偏光子およびこの偏光子の片面または両面に保護フィルムとして備えられたガラス転移温度の異なる2種以上の(メタ)アクリル系樹脂を含むグラフト共重合体を含む光学フィルムを含む偏光板であることを特徴とする液晶表示装置を提供する。前記光学フィルムはスチレンまたはこれの誘導体を有する樹脂をさらに含むことができる。
【0078】
前記光学フィルムまたは位相差フィルムは液晶表示装置に1枚または2枚以上を備えることができる。本発明に係る液晶表示装置はIPSモードであることが好ましい。
【0079】
上記のような液晶表示装置を示す図1を参考して説明する。図1において、偏光板11および偏光板12のうち少なくとも1つの偏光膜の片面または両面に、本発明に係る光学フィルムが保護フィルムとして配置される。本発明に係る光学フィルムは内部保護フィルムとして配置されても、外部保護フィルムとして配置されても良い。図1には位相差フィルムが備えられたことで示されているが、位相差フィルムの存在が必須なのではない。また、図1にはバックライトが偏光板12側に配置されることで示されているが、バックライトは偏光板11側に配置されても良い。
【0080】
上述した本発明に係る偏光板を含む液晶表示装置は偏光板と液晶セルとの間に本発明に係る光学フィルムをさらに含むことができる。
【0081】
以下では実施例によって本発明をより詳しく説明するが、以下の実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0082】
(実施の形態)
(実施例1:グラフト共重合体の製造)
1.第1アクリル系樹脂[A]の製造
ブチルアクリレート93g、2-ヒドロキシエチルアクリレート7g、トルエン43gおよび開始剤のAIBN0.2g、1-オクチルメルカプタン0.1gを70℃、250ml反応器に4時間かけて滴下し、さらに95℃で3時間重合して高分子を製造した。溶液中の未反応単量体は気体クロマトグラフィーにて測定して転換率が98%であることを確認した(分子量:Mw=215k、Mn=70k)。
【0083】
2.第1アクリル系樹脂の主鎖にラジカルとの反応が可能な官能基の導入
第1アクリル系樹脂[A]溶液200gにトルエン200gをさらに入れ、ここにp-トルエンスルホン酸(p-toluene sulfonic acid)1g、チオグリコール酸(thioglycolic acid)6gを入れて還流しながら4時間反応させた。反応が完了した後メタノールに滴下して沈殿させた。続いて、沈殿物にトルエンを追加した後加熱して高分子内のメタノールを共沸により除去した。この過程によりSHを含む第1アクリル系樹脂[A']高分子溶液を得ることができた。
【0084】
3.グラフト重合
前記変性された第1アクリル系樹脂[A']溶液32g(TSC40%)、MMA79.17g、MA4.17g、AIBN0.26gを250ml重合器に入れて窒素雰囲気で70℃を維持しながら12時間反応を行った。反応が完了した後、前記の重合液をメタノールに沈殿させてグラフト共重合体(共重合体1)を得た。
【0085】
共重合体2および3は、下記表1に示す通り重合を行って第1(メタ)アクリル系樹脂に第2(メタ)アクリル系樹脂がグラフトされた重合体を得ることができた。
【0086】
【表1】

【0087】
(実施例2〜4:グラフト共重合体の製造)
1.第1アクリル系樹脂[B]、[C]、[D]の製造
ブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、トルエン、開始剤のAIBN、1-オクチルメルカプタンの量を下記表2に示す通り使用したことを除いては実施例1と同様にした。
【0088】
【表2】

【0089】
2.第1アクリル系樹脂の主鎖にラジカルとの反応が可能な官能基の導入
表3に示すことを除いては実施例1と同様にして様々な含有量の官能基と分子量を有する変性された第1アクリル系樹脂[B']、[C']および[D']を製造した。
【0090】
【表3】

【0091】
3.グラフト重合
(1) 共重合体4および5
前記変性された第1アクリル系樹脂[B']溶液20g(TSC50%)、MMA95g、MA5g、AIBN0.26g、トルエン140gを250ml重合器に入れて窒素雰囲気で70℃を維持しながら12時間反応を行なった。反応が完了した後、前記の重合液をメタノールに沈殿させてグラフト共重合体(共重合体4、5)を得た。
【0092】
【表4】

【0093】
(2) 共重合体6〜8
前記変性された第1アクリル系樹脂[C']溶液20g(TSC50%)、MMA72g、AN(acrylonitrile)9g、CHMI(N-cyclohexylmaleimide)9g、AIBN0.24g,トルエン90gを250ml重合器に入れて窒素雰囲気で反応温度を70℃から80℃まで4時間かけて昇温し、また80℃から100℃まで4時間かけて昇温し、1時間維持しながら反応を行った。反応が完了した後、前記の重合液をメタノールに沈殿させてグラフト共重合体を得た。これを90℃のオーブンで乾燥させて最終の高分子を得た(共重合体6〜8)。
【0094】
【表5】

【0095】
(3) 共重合体9〜12
前記変性された第1アクリル系樹脂[D']溶液20g(TSC50%)、MMA85.5g、MA4.5g、AIBN0.2g、トルエン90gを250ml重合器に入れて窒素雰囲気で反応温度を60℃から80℃まで8時間かけて昇温しながら反応を行った。反応が完了した後、前記の重合液をメタノールに沈殿させてグラフト共重合体を得た。これを90℃のオーブンで乾燥させて最終の高分子を得た(共重合体9〜12)。
【0096】
【表6】

【0097】
<フィルムの製造>
ジクロロエタン42.5gに前記製造例で製造されたグラフト共重合体7.5gを投入し、30℃で24時間撹拌して均一な溶液を製造した。5μmフィルタで濾過して不溶物とホコリなどの異物を除去し、15wt%のキャスティング溶液を製造した。LCD基板用ガラス板にキャスティング溶液を注ぎ、ドクターブレードで0.3m/minの速度でキャスティングして室温で60分間乾燥させた。その後、60℃で60分間、115℃で90分間乾燥させて溶媒を除去した後高分子フィルムを剥離した。製造したフィルムの物性を下記表7に示す。フィルムの全透過率とヘイズは反射率計および透過率計(reflectance-transmittance meter、HR-100、Murakami color research Lab.)にて測定した。各ケースのフィルムの全透過率は90%以上であり、ヘイズは下記表7の結果の通りである。そしてそれぞれの場合で得たグラフト共重合体フィルムは、曲げたり折っても破断せず、既存のポリメチルメタクリレート樹脂に比べて靭性(roughness)の程度がより一層改善されたことが分かった。
【0098】
【表7】

【0099】
なお、前記実施例で作製したグラフト共重合体のフィルムを延伸した結果を下記表8に示す。結果から、面方向位相差と厚み方向位相差が低く、光学フィルムとして用いるのに適したことが分かる。
【0100】
【表8】

【0101】
(実施例5:スチレン系樹脂(SAN樹脂)とグラフト共重合体と‘の混合)
1.グラフト共重合体の製造
1) 第1アクリル系樹脂[E]の製造
ブチルアクリレート97.5g、2-ヒドロキシブチルアクリレート2.5g、トルエン43g、開始剤のAIBN0.2g、および1-オクチルメルカプタン0.12gを80℃、250ml反応器に4時間かけて滴下し、さらに95℃で3時間重合して高分子を製造した。溶液中の未反応単量体を気体クロマトグラフィーにて測定して転換率が98%であることを確認した(分子量:Mw=95k、Mn=39k)。
【0102】
2) 第1アクリル系樹脂の主鎖にラジカルとの反応が可能な官能基の導入
前記1)で製造した第1アクリル系樹脂[E]溶液140gにトルエン260gをさらに入れ、ここにp-トルエンスルホン酸(p-toluene sulfonic acid)1g、チオグリコール酸(thioglycolic acid)3.5gを入れて還流しながら4時間反応させた。反応が完了した後メタノールに滴下して沈殿させた。続いて、沈殿物にトルエンを追加した後加熱して高分子内のメタノールを共沸により除去した。この過程によりSHを含む第1アクリル系樹脂[E']高分子溶液を得ることができた。
【0103】
3) グラフト重合
前記2)段階で得た変性された第1アクリル系樹脂[E']溶液32g(TSC40%)、MMA79.17g、MA4.17g、AIBN0.26gを250ml重合器に入れて窒素雰囲気で70℃を維持しながら12時間反応を行った。反応が完了した後、前記の重合液をメタノールに沈殿させてグラフト共重合体13を得た。
【0104】
2.SAN樹脂とグラフト共重合体との混合
前記グラフト共重合体5 100gとSAN(韓国LG化学製品(商品名:SAN80HF))300gを均一に混合し単軸押出機を用いて押し出して二つの樹脂が混合されたペレットを製造した。
【0105】
(実施例6:スチレン系樹脂(SAN樹脂)とグラフト共重合体との混合
1.グラフト共重合体の製造
1) 第1アクリル系樹脂[F]の製造
ブチルアクリレート70g、2-ヒドロキシブチルアクリレート3g、スチレン27g、トルエン30g、開始剤のAIBN0.3g、および1-オクチルメルカプタン0.1gを70℃、250ml反応器に4時間かけて滴下し、さらに95℃で3時間重合して高分子を製造した。溶液中の未反応単量体を気体クロマトグラフィーにて測定して転換率が98%であることを確認した(分子量:Mw=170k、Mn=62k)。
【0106】
2) 第1アクリル系樹脂の主鎖にラジカルとの反応が可能な官能基の導入
前記第1アクリル系樹脂[F]溶液200gにトルエン200gをさらに入れ、ここにp-トルエンスルホン酸(p-toluene sulfonic acid)1g、チオグリコール酸(thioglycolic acid)6gを入れて還流しながら4時間反応させた。反応が完了した後メタノールに滴下して沈殿させた。続いて、沈殿物にトルエンを追加した後加熱して高分子内のメタノールを共沸により除去した。この過程によりSHを含む第1アクリル系樹脂[F']高分子溶液を得ることができた。
【0107】
3) グラフト重合
前記変性された第1アクリル系樹脂[F']溶液32g(TSC40%)、MMA79.17g、MA4.17g、AIBN0.26gを250ml重合器に入れて窒素雰囲気で70℃を維持しながら12時間反応を行った。反応が完了した後、前記の重合液をヘキサンに沈殿させてグラフト共重合体14を得た。
【0108】
2.SAN樹脂とグラフト共重合体との混合
前記製造したグラフト共重合体14 100gとSAN(韓国LG化学製品(商品名:SAN80HF))300gを均一に混合し単軸押出機を用いて押し出して二つの樹脂が混合されたペレットを製造した。
【0109】
(実施例7:スチレン系樹脂(SAN樹脂)とグラフト共重合体との混合
1.SAN樹脂とグラフト共重合体との混合
実施例6で製造したグラフト共重合体14 210gとSAN90gを均一に混合し単軸押出機を用いて押し出して二つの樹脂が混合されたペレットを製造した。
【0110】
(実施例8:スチレン系樹脂(SAN樹脂)とグラフト共重合体との混合
1.SAN樹脂とグラフト共重合体との混合
前記実施例5で製造したグラフト共重合体13 210gとSAN(韓国LG化学製品(商品名:SAN80HF))90gを均一に混合し単軸押出機を用いて押し出して二つの樹脂が混合されたペレットを製造した。
【0111】
(実施例9:スチレン系樹脂(SAN樹脂)とグラフト共重合体との混合
1.グラフト共重合体の製造
1) 第1アクリル系樹脂[G]の製造
ブチルアクリレート77g、2-ヒドロキシブチルアクリレート3g、スチレン20g、トルエン30g、開始剤のAIBN0.3g、および1-オクチルメルカプタン0.08gを70℃、250ml反応器に4時間かけて滴下し、さらに95℃で3時間重合して高分子を製造した。溶液中の未反応単量体を気体クロマトグラフィーにて測定して転換率が98%であることを確認した(分子量:Mw=190k、Mn=90k)。
【0112】
2) 第1アクリル系樹脂の主鎖にラジカルとの反応が可能な官能基の導入
前記第1アクリル系樹脂[G]溶液200gにトルエン400gをさらに入れ、ここにp-トルエンスルホン酸(p-toluene sulfonic acid)1g、チオグリコール酸(thioglycolic acid)6gを入れて還流しながら4時間反応させた。反応が完了した後メタノールに滴下して沈殿させた。続いて、沈殿物にトルエンを追加した後加熱して高分子内のメタノールを共沸により除去した。この過程によりSHを含む第1アクリル系樹脂[G']高分子溶液を得ることができた。
【0113】
3) グラフト重合
前記変性された第1アクリル系樹脂[G']溶液40g(TSC33%)、MMA79.17g、MA4.17g、AIBN0.26gを250ml重合器に入れて窒素雰囲気で70℃を維持しながら12時間反応を行った。反応が完了した後、前記の重合液をヘキサンに沈殿させてグラフト共重合体15を得た。
【0114】
2.SAN樹脂とグラフト共重合体との混合
前記で製造したグラフト共重合体15 100gとSAN(韓国LG化学製品(商品名:SAN80HF))300gを均一に混合し単軸押出機を用いて押し出して二つの樹脂が混合されたペレットを製造した。
【0115】
(実施例10:スチレン系樹脂(SAN樹脂)とグラフト共重合体との混合
1.SAN樹脂とグラフト共重合体との混合
前記実施例9で製造したグラフト共重合体15 200gとSAN(韓国LG化学製品(商品名:SAN80HF))100gを均一に混合し単軸押出機を用いて押し出して二つの樹脂が混合されたペレットを製造した。
【0116】
(実施例11:スチレン系樹脂(SAN樹脂)とグラフト共重合体との混合
1.グラフト共重合体の製造
1) 第1アクリル系樹脂[H]の製造
ブチルアクリレート77g、2-ヒドロキシブチルアクリレート3g、スチレン20g、トルエン30g、開始剤のAIBN0.3g、および1-オクチルメルカプタン0.08gを70℃、250ml反応器に4時間かけて滴下し、さらに95℃で3時間重合して高分子を製造した。溶液中の未反応単量体を気体クロマトグラフィーにて測定して転換率が98%であることを確認した(分子量:Mw=190k、Mn=90k)。
【0117】
2) 第1アクリル系樹脂の主鎖にラジカルとの反応が可能な官能基の導入
前記第1アクリル系樹脂[H]溶液200gにトルエン400gをさらに入れ、ここにp-トルエンスルホン酸(p-toluene sulfonic acid)1g、チオグリコール酸(thioglycolic acid)6gを入れて還流しながら4時間反応させた。反応が完了した後メタノールに滴下して沈殿させた。続いて、沈殿物にトルエンを追加した後加熱して高分子内のメタノールを共沸により除去した。この過程によりSHを含む第1アクリル系樹脂[H']高分子溶液を得ることができた。
【0118】
3) グラフト重合
前記変性された第1アクリル系樹脂[H']溶液40g(TSC33%)、MMA75.17g、MA4.17g、CHMI4g、AIBN0.26gを250ml重合器に入れて窒素雰囲気で70℃を維持しながら12時間反応を行った。反応が完了した後、前記の重合液をヘキサンに沈殿させてグラフト共重合体16を得た。
【0119】
2.SAN樹脂とグラフト共重合体との混合
前記で製造したグラフト共重合体16 100gとSAN(韓国LG化学製品(商品名:SAN80HF))300gを均一に混合し単軸押出機を用いて押し出して二つの樹脂が混合されたペレットを製造した。
【0120】
(実施例12:スチレン系樹脂(SAN樹脂)とグラフト共重合体との混合
1.SAN樹脂とグラフト共重合体との混合
前記実施例11で製造したグラフト共重合体16 200gとSAN(韓国LG化学製品(商品名:SAN80HF))100gを均一に混合し単軸押出機を用いて押し出して二つの樹脂が混合されたペレットを製造した。
【0121】
<フィルムの製造および延伸>
前記混合したペレット10gをHot pressを用いて240℃、150barの条件で厚み100μm〜132μmのフィルムを製造した。このフィルムを下記の条件で延伸して位相差フィルムを製造した。延伸条件および製造されたフィルムの位相差値を下記表9に示す。
【0122】
【表9】

【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明に係る光学フィルムおよび位相差フィルムは、ガラス転移温度が異なる2種以上の(メタ)アクリル系樹脂を含むグラフト共重合体を含むものであって、光学特性および機械的特性に優れるため、様々な用途、特に偏光板の保護フィルムなどとして有用に用いることができるうえ、機械的物性、耐熱性および光学的物性に優れるために、性能に優れた液晶表示装置を安価で且つ簡易に製造するのに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度が異なる2種以上の(メタ)アクリル系樹脂を含むグラフト共重合体を含むことを特徴とする光学フィルム。
【請求項2】
前記光学フィルムはスチレンまたはこれの誘導体を有する樹脂をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系樹脂は、炭素数1〜12のアルキル基、アルキレン基、および芳香族基の中から選択される少なくとも1つの置換基を有するか、あるいは有さない(メタ)アクリル系単量体を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系単量体は、ブチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、およびベンジル(メタ)アクリレートからなる群より選択される1つ以上を含むことを特徴とする請求項3に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系樹脂は、ヒドロキシを含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体;エポキシを含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体;およびカルボン酸を含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体からなる群より選択される1つ以上の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含むことを特徴とする請求項3に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル系樹脂は、シアン化ビニル単量体、マレイミド単量体および芳香族環を含むビニル単量体からなる群より選択される1つ以上の単量体をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記ガラス転移温度が異なる2種以上の(メタ)アクリル系樹脂のうち少なくとも1種はガラス転移温度が0℃未満であり、前記(メタ)アクリル系樹脂のうち少なくとも1種はガラス転移温度が0℃以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記ガラス転移温度が0℃以上の(メタ)アクリル系樹脂は、メチルメタクリレート(MMA)を50mol%以上含むことを特徴とする請求項7に記載の光学フィルム。
【請求項9】
前記ガラス転移温度が0℃未満の(メタ)アクリル系樹脂は、ブチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートおよびベンジル(メタ)アクリレートからなる群より選択される(メタ)アクリル系単量体を含むことを特徴とする請求項7に記載の光学フィルム。
【請求項10】
前記ガラス転移温度が0℃未満の(メタ)アクリル系樹脂は、ヒドロキシを含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体;エポキシを含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体;およびカルボン酸を含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体からなる群より選択される1つ以上の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の光学フィルム。
【請求項11】
前記官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、前記ガラス転移温度が0℃未満の(メタ)アクリル系樹脂中に0.1〜50モル%で含まれていることを特徴とする請求項10に記載の光学フィルム。
【請求項12】
前記グラフト共重合体は、ガラス転移温度が0℃未満の1種以上の(メタ)アクリル系樹脂が主鎖を形成し、ガラス転移温度が0℃以上の1種以上の(メタ)アクリル系樹脂が側鎖を形成する構造であることを特徴とする請求項7に記載の光学フィルム。
【請求項13】
前記グラフト共重合体中前記ガラス転移温度が0℃未満の(メタ)アクリル系樹脂と前記ガラス転移温度が0℃以上の(メタ)アクリル系樹脂は、重量比が95:5〜5:95で含まれていることを特徴とする請求項7に記載の光学フィルム。
【請求項14】
前記グラフト共重合体は、重量平均分子量が5万〜200万であり、数平均分子量が1万〜100万であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルム。
【請求項15】
前記スチレンまたはこれの誘導体を有する樹脂は、スチレンまたはこれの誘導体を30重量%以上含むことを特徴とする請求項2に記載の光学フィルム。
【請求項16】
前記グラフト共重合体と前記スチレンまたはこれの誘導体を有する樹脂の重量比は5:95〜95:5であることを特徴とする請求項2に記載の光学フィルム。
【請求項17】
前記光学フィルムはスチレンまたはこれの誘導体を20重量%〜95重量%含むことを特徴とする請求項2に記載の光学フィルム。
【請求項18】
a)第1(メタ)アクリル系単量体を含む第1(メタ)アクリル系樹脂を製造する段階と、b)前記第1(メタ)アクリル系樹脂の主鎖にラジカルとの反応が可能な官能基を導入する段階と、c)前記b)段階で得た変性された第1(メタ)アクリル系樹脂に第2(メタ)アクリル系単量体をラジカル重合させ、第1(メタ)アクリル系樹脂に前記第1(メタ)アクリル系樹脂とガラス転移温度の異なる第2(メタ)アクリル系樹脂がグラフト重合されたグラフト共重合体を製造する段階と、d)前記c)段階で得たグラフト共重合体を用いてフィルムを形成する段階とを含むことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項19】
前記d)段階は、c)段階で得たグラフト共重合体とスチレンまたはこれの誘導体を有する樹脂を混合する段階、および前記混合樹脂を用いてフィルムを形成する段階であることを特徴とする請求項18に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項20】
前記b)段階は前記第1(メタ)アクリル系樹脂の主鎖に−SH基を導入することを特徴とする請求項18または19に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項21】
前記c)段階で前記第2(メタ)アクリル系単量体に対し重量比で0.01〜5の重合開始剤を用いることを特徴とする請求項18または19に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項22】
前記d)段階は押出成形法、インフレーション成形法または溶液流延法を用いることを特徴とする請求項18または19に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項23】
ガラス転移温度が異なる2種以上の(メタ)アクリル系樹脂を含むグラフト共重合体およびスチレンまたはこれの誘導体を有する樹脂を含み、厚み方向の位相差(Rth)>0であり、面内位相差(Rin)≠0であることを特徴とする位相差フィルム。
【請求項24】
前記(メタ)アクリル系樹脂は、炭素数1〜12のアルキル基、アルキレン基、および芳香族基の中から選択される少なくとも1つの置換基を有するか、あるいは有さない(メタ)アクリル系単量体を含むことを特徴とする請求項23に記載の位相差フィルム。
【請求項25】
前記(メタ)アクリル系樹脂は、ヒドロキシを含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体;エポキシを含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体;およびカルボン酸を含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体からなる群より選択される1つ以上の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含むことを特徴とする請求項24に記載の位相差フィルム。
【請求項26】
前記(メタ)アクリル系樹脂は、シアン化ビニル単量体、マレイミド単量体および芳香族環を含むビニル単量体からなる群より選択される1つ以上の単量体をさらに含むことを特徴とする請求項24に記載の位相差フィルム。
【請求項27】
前記ガラス転移温度が異なる2種以上の(メタ)アクリル系樹脂のうち少なくとも1種はガラス転移温度が0℃未満であり、前記(メタ)アクリル系樹脂のうち少なくとも1種はガラス転移温度が0℃以上であり、前記ガラス転移温度が0℃未満の(メタ)アクリル系樹脂と前記ガラス転移温度が0℃以上の(メタ)アクリル系樹脂は、重量比が95:5〜5:95で含まれていることを特徴とする請求項23に記載の位相差フィルム。
【請求項28】
前記ガラス転移温度が0℃以上の(メタ)アクリル系樹脂は、メチルメタクリレート(MMA)を50mol%以上含むことを特徴とする請求項27に記載の位相差フィルム。
【請求項29】
前記ガラス転移温度が0℃未満の(メタ)アクリル系樹脂は、ブチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートおよびベンジル(メタ)アクリレートからなる群より選択される(メタ)アクリル系単量体を含むことを特徴とする請求項27に記載の位相差フィルム。
【請求項30】
前記ガラス転移温度が0℃未満の(メタ)アクリル系樹脂は、ヒドロキシを含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体;エポキシを含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体;およびカルボン酸を含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体からなる群より選択される1つ以上の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体を(メタ)アクリル系樹脂中に0.1〜50モル%でさらに含むことを特徴とする請求項27に記載の位相差フィルム。
【請求項31】
前記グラフト共重合体は、ガラス転移温度が0℃未満の1種以上の(メタ)アクリル系樹脂が主鎖を形成し、ガラス転移温度が0℃以上の1種以上の(メタ)アクリル系樹脂が側鎖を形成する構造であることを特徴とする請求項27に記載の位相差フィルム。
【請求項32】
前記グラフト共重合体は、重量平均分子量が5万〜200万であり、数平均分子量が1万〜100万であることを特徴とする請求項23に記載の位相差フィルム。
【請求項33】
前記スチレンまたはこれの誘導体を有する樹脂は、スチレンまたはこれの誘導体を30重量%以上含むことを特徴とする請求項23に記載の位相差フィルム。
【請求項34】
前記グラフト共重合体と前記スチレンまたはこれの誘導体を有する樹脂の重量比は5:95〜95:5であることを特徴とする請求項23に記載の位相差フィルム。
【請求項35】
前記位相差フィルムはスチレンまたはこれの誘導体を20重量%〜95重量%含むことを特徴とする請求項23に記載の位相差フィルム。
【請求項36】
a)ガラス転移温度が異なる2種以上の(メタ)アクリル系樹脂を含むグラフト共重合体およびスチレンまたはこれの誘導体を有する樹脂を混合する段階と、b)前記a)段階で得た混合樹脂を用いてフィルムを形成する段階と、c)前記フィルムを一軸または二軸延伸する段階とを含むことを特徴とする請求項23〜35のいずれか1項に記載の位相差フィルムの製造方法。
【請求項37】
液晶セルおよびこの液晶セルの両面に備えられた第1偏光板および第2偏光板を含む液晶表示装置において、前記第1偏光板および第2偏光板のうち少なくとも1つと液晶セルとの間に請求項1又は2に記載の光学フィルムを1枚以上含むことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項38】
請求項23〜35のいずれか1項に記載の位相差フィルムを含む液晶表示装置。
【請求項39】
偏光子およびこの偏光子の片面または両面に保護フィルムとして備えられた、ガラス転移温度が異なる2種以上の(メタ)アクリル系樹脂を含むグラフト共重合体を含む光学フィルムを含むことを特徴とする偏光板。
【請求項40】
前記光学フィルムがスチレンまたはこれの誘導体を有する樹脂をさらに含むことを特徴とする請求項39に記載の偏光板。
【請求項41】
液晶セルおよびこの液晶セルの両面に備えられた第1偏光板および第2偏光板を含む液晶表示装置において、前記第1偏光板および第2偏光板のうち少なくとも1つは偏光子およびこの偏光子の片面または両面に保護フィルムとして備えられた請求項39または40に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【公表番号】特表2010−530987(P2010−530987A)
【公表日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512081(P2010−512081)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際出願番号】PCT/KR2008/003305
【国際公開番号】WO2008/153335
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】