説明

光学フィルムおよびそれを含む液晶表示装置

【課題】
【解決手段】本発明は、(メタ)アクリレートを50モル%以上含むブロック体を含むブロック共重合体を含む光学フィルム、その製造方法および前記光学フィルムを含む液晶表示装置を提供する。本発明に係る光学フィルムは、優れた透明性および物理的性質を有すると同時に既存のアクリレートフィルムに比べて水分吸湿度が改善されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学フィルム、その製造方法およびそれを含む液晶表示装置に関する。具体的には、本発明は、透明性および物理的性質に優れ、水分吸湿度が低い光学フィルム、その製造方法およびそれを含む液晶表示装置に関する。
【0002】
本出願は2007年4月16日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2007−0036853号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0003】
最近、高品質の液晶表示装置においては、優れた光学特性、優れた耐久性、優れた粘着剤信頼性および優れた付加機能を有した偏光板が求められている。
【0004】
一般的に、ヨウ素系偏光板は、ヨウ素イオン鎖(polyiodide)が延伸配向されたポリビニルアルコール(PVA;polyvinyl alcohol)鎖によって配向されることによって偏光性を示す。しかし、ヨウ素系偏光板は、水溶性高分子であるPVAマトリックスに基づくため、製造工程中に架橋化処理をしても熱および水分にぜい弱であり、その結果、偏光性能の低下が発生しやすい。また、高温および高湿環境においては偏光素子の延伸方向に収縮が発生し得るし、偏光素子の延伸直角方向には常温においても機械的強度が非常に弱い。一方、ヨウ素系偏光素子の場合、ヨウ素イオン鎖そのものの耐熱性および耐湿熱性が弱いのが弱点である。したがって、偏光板の寸法安定性、耐湿性、耐熱性などを確保するために、偏光素子の両側に保護層を形成することが一般的である。
【0005】
従来の商業化された偏光板においては、保護層として、主にトリアセチルセルロース(triacetyl cellulose;以下、TAC)を用いるが、TACフィルムは高い光透過率と低い複屈折性を有しており、表面改質による親水化が容易であるために一般的に偏光フィルムの保護層として用いられる。
【0006】
しかし、偏光素子の保護層としてのTACは次のような短所を有している。第1に、TACフィルムは、水分透過度が高いため、高温、高湿下で偏光板の耐久性が落ちる。第2に、TACフィルムは、気体透過度が高いため、透過した酸素によってヨウ素などの二色性物質が変質しやすい。第3に、TACフィルムには可塑剤が添加されているために耐熱性が落ち、表面アルカリ鹸化過程中に溶け出てスクラッチなどの外観不良をもたらす。第4に、TACフィルムとアクリル酸を含有した粘着剤を用いる場合、アクリル酸によってTACフィルムが分解する。
【0007】
そこで、透明性および機械的物性に優れるだけでなく、水分吸湿度が低く、経済性に優れた光学フィルムの開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、前記従来技術の問題点を考慮し、それを改善できるフィルムを研究している最中、(メタ)アクリレートを所定含量以上含むブロック体を含むブロック共重合体を用いてフィルムを製造する場合、従来のアクリレート系フィルムに比べ、透明性および物理的性質に優れるだけでなく、水分吸湿度も改善され、光学フィルムとして有用に用いることができるという事実を明らかにした。
【0009】
そこで、本発明は、機械的物性に優れ、水分吸湿度が低い光学フィルム、その製造方法およびそれを含む液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(メタ)アクリレートを50モル%以上含むブロック体を含むブロック共重合体を含む光学フィルムを提供する。
【0011】
本発明において、前記ブロック共重合体は、(メタ)アクリレートを50モル%以上含むハードセグメント(hard segment)からなるビニル重合ブロック体とポリシロキサン、ポリエーテル、ポリエステルおよびポリウレタンからなる群から選択された少なくとも一つを含むソフトセグメント(soft segment)からなるブロック体とを含むブロック共重合体であることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、a)(メタ)アクリレートを50モル%以上含むブロック体を含むブロック共重合体を準備するステップ、およびb)前記ブロック共重合体を用いてフィルムを成形するステップを含む光学フィルムの製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、液晶セル、および該液晶セルの両面に備えられた第1偏光板および第2偏光板を含む液晶表示装置において、前記第1偏光板および第2偏光板のうちの少なくとも一つと液晶セルとの間に(メタ)アクリレートを50モル%以上含むブロック体を含むブロック共重合体を含む光学フィルムを1枚以上含むことを特徴とする液晶表示装置を提供する。
【0014】
また、本発明は、偏光子と該偏光子の片面または両面に保護フィルムとして備えられた(メタ)アクリレートを50モル%以上含むブロック体を含むブロック共重合体を含む光学フィルムとを含む偏光板を提供する。
【0015】
また、本発明は、液晶セル、および該液晶セルの両面に備えられた第1偏光板および第2偏光板を含む液晶表示装置において、前記第1偏光板および第2偏光板のうちの少なくとも一つが偏光子および該偏光子の片面または両面に保護フィルムとして備えられた(メタ)アクリレートを50モル%以上含むブロック体を含むブロック共重合体を含む光学フィルムを含む偏光板であることを特徴とする液晶表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、(メタ)アクリレートを50モル%以上含むブロック体を含むブロック共重合体を用いて光学フィルムを製造することにより、透明度および物理的性質に優れ、水分吸湿度が低い光学フィルムを提供することができる。前記光学フィルムは偏光板の保護フィルムなどとして有用に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る光学フィルムを偏光板の保護フィルムとして適用した液晶表示装置の構造を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0019】
本発明に係る光学フィルムは、(メタ)アクリレートを50モル%以上含むブロック体を含むブロック共重合体を含むことを特徴とする。本明細書において、用語「(メタ)アクリレート」はメタクリレートとアクリレートを全て含むものである。
【0020】
本発明においては、前記のようなブロック共重合体を用いて光学フィルムを製造することにより、従来のアクリレート系フィルムに比べ、透明性および物理的性質に優れ、水分吸湿度が低い光学フィルムを提供することができる。
【0021】
前記ブロック共重合体は、具体的には、(メタ)アクリレートを50モル%以上含むハードセグメントからなるビニル重合ブロック体とポリシロキサン、ポリエーテル、ポリエステルおよびポリウレタンからなる群から選択された少なくとも一つを含むソフトセグメントからなるブロック体とを含むブロック共重合体であることが好ましい。
【0022】
本発明において、前記ビニル重合ブロック体を構成するための(メタ)アクリル酸単量体としては、炭素数1〜12のアルキル基、アルキレン、芳香族の置換体を有することがよい。このような単量体の具体的な例としてはブチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらの単量体は単独または2種以上混合して用いることができる。
【0023】
前記ビニル重合ブロック体は、前記(メタ)アクリル酸単量体の他に、他の単量体をさらに含むことができる。例えば、シアン化ビニル単量体、マレイミド単量体、芳香族環を含むビニル単量体などをさらに含むことができる。
【0024】
前記シアン化ビニル単量体としてはアクリロニトリルなどが挙げられる。前記マレイミド単量体としてはN−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミドなどが挙げられる。芳香族環を含むビニル単量体としてはスチレン系単量体、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン(methylstyrene)、3−メチルスチレン(methylstyrene)、p−メチルスチレン(methylstyrene)、p−エチルスチレン(ethylstyrene)、p−プロピルスチレン(propylstyrene)、4−(p−メチルフェニル)スチレン、1−ビニルナフタレン、p−クロロスチレン(chlorostyrene)、m−クロロスチレン(chlorostyrene)およびp−ニトロスチレン(nitrostyrene)から選択された一つまたは二つ以上の化合物などが挙げられるが、これらだけに限定されるものではない。
【0025】
本発明において、前記(メタ)アクリレートを50モル%以上含むハードセグメントからなるビニル重合ブロック体はメチルメタクリレートから構成されることが最も好ましい。
【0026】
本発明において、前記ソフトセグメント(soft segment)からなるブロック体に含まれるポリシロキサンとしては下記化学式1で示される単位を含むものを用いることができる。
【0027】
【化1】

【0028】
前記化学式1において、
RおよびR’は、各々独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ハロシクロアルキル、ハロアリールおよびハロヘテロアリールからなる群から選択され、
nは1〜6の整数である。
【0029】
本発明において、前記ポリシロキサンはポリジメチルシロキサンであることが最も好ましい。
【0030】
本発明において、前記ソフトセグメント(soft segment)からなるブロック体に含まれるポリエーテルとしては下記化学式2で示される単位を含むものを用いることができる。
【0031】
【化2】

【0032】
前記化学式2において、
nは2〜4の整数であり、
xは5以上の整数である。
【0033】
本発明において、前記ソフトセグメント(soft segment)からなるブロック体に含まれるポリエステルとしては下記化学式3で示される単位を含むものを用いることができる。
【0034】
【化3】

【0035】
前記化学式3において、
XはC1〜C24のアルキルであり、
yは1以上の整数である。
【0036】
本発明において、前記ソフトセグメント(soft segment)からなるブロック体に含まれるポリウレタンとしては下記化学式4で示される単位を含むものを用いることができる。
【0037】
【化4】

【0038】
前記化学式4において、
EおよびXは各々独立にC1〜C24のアルキルであり、
MおよびM’は各々独立にOまたはNであり、
lは1以上の整数である。
【0039】
前記ポリシロキサン、ポリエーテル、ポリエステルおよびポリウレタンのうちの少なくとも一つを含むブロック体において、前記化学式1〜4で示される単位は直接連結によって連結されてもよく、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、−O−、−S−、−NR’’−、−COO−のような2価基によって連結されてもよく、ここで、R’’は水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ハロシクロアルキル、ハロアリールおよびハロヘテロアリールからなる群から選択されてもよい。
【0040】
本発明に係る光学フィルムの製造に用いられるブロック共重合体は、(A−B)n、B−(A−B)n、(A−B)n−Aおよびこれらの混合形態に製造することができる。ここで、Aは(メタ)アクリレートを50モル%以上含むブロック体であり、Bは前記Aと共にブロック共重合体を構成できる追加のブロック体である。例えば、Aは前記(メタ)アクリレートを50モル%以上含むハードセグメントからなるビニル重合ブロック体であり、Bは前記ポリシロキサン、ポリエーテル、ポリエステルおよびポリウレタンからなる群から選択された少なくとも一つを含むソフトセグメントからなるブロック体であり得る。nは1またはそれ以上の整数である。
【0041】
本発明において、前記(メタ)アクリレートを50モル%以上含むハードセグメントからなるビニル重合ブロック体と前記ソフトセグメントからなるブロック体の重量比が95:5〜5:95であることが好ましい。前記範囲から脱する場合、製造されたブロック共重合体は光学フィルムとしての用途に好適な物性を示せない可能性もある。
【0042】
前記ブロック共重合体の分子量は特に限定されるものではない。しかし、光学フィルムを製造するのに適切な分子量は、数平均分子量が5千−200万、より好ましくは1万−100万である。
【0043】
前記ブロック共重合体を製造する時に前記ブロック体Bの分子量は1,000−20万、より好ましくは1,500−2万の範囲である。前記ブロック体Bの分子量が小さすぎる場合には、ブロック共重合体の製造時に添加されるアゾ基の数が多いため、その結果、ブロック共重合体の生成効率が落ち、それより得られるブロック共重合体は適切な物性を期待することができない。その反面、前記ブロック体Bの分子量が大きすぎる場合には、ブロック共重合体を製造するのにより多い時間が必要となるだけでなく、得られるブロック共重合体において、ドメインBの大きさの増加によってブロック共重合体の透明性を阻害し得る。
【0044】
前記ブロック体Aの分子量は特に限定されるものではないが、光学フィルムを製造するのに好適な分子量は数平均分子量が5千−200万、より好ましくは1万−100万である。
【0045】
本発明に係るブロック共重合体は当技術分野に知られている方法を利用して製造することができる。例えば、前記ブロック共重合体は下記の方法により製造することができるが、これに限定されるものではない。
【0046】
第1に、末端がアルキルヒドロキシやアルキルアミンで処理されたソフトセグメントを含むブロック体とアゾ開始剤基を含む化合物間の反応により、アゾ基が含まれたソフトセグメントを含むブロック体を製造し、これをビニル重合開始剤として用いてラジカル重合を実施し、その結果、前述したブロック共重合体を得ることができる。
【0047】
第2に、末端がカルボン酸、アシルクロライド、またはヒドロキシアミンで置換された開始剤を用いてスチレンとラジカル重合を実施する。この過程において、ポリスチレンの分子量を調節するために、開始剤は1〜30モル%、より好ましくは1〜20モル%程度を投入して重合を実施する。この過程により得られたポリスチレンを、末端がヒドロキシ、アミン、イソシアネート、またはカルボン酸で処理されたソフトセグメントを含むブロック体との反応を実施し、本発明で説明するブロック共重合体を製造することができる。
【0048】
より具体的な例として、本発明に係るブロック共重合体は、ソフトセグメントであるポリシロキサンを含む下記化学式5で示されるマクロ窒素化合物(日本特開2000−53716号に記載されている)を用いて製造することができる。一方、前記文献の内容の全ては本明細書に参考として含まれる。
【0049】
【化5】

【0050】
前記化学式5において、
1〜R4は各々独立にアルキル基またはシアノ基であり、
5およびR6は各々独立にアルキル基またはアリール基であり、
XおよびYは各々独立にアルキレン基であり、
m、n、pおよびqは各々独立に正の整数を示す。
【0051】
前記化学式5において、アルキル基としては直鎖状も分枝状もよく、その例としては炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基などが挙げられる。
【0052】
前記化学式5において、アリール基としてはフェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、2,6−キシリル基、3,5−キシリル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0053】
前記化学式5において、XまたはYで示されるアルキレン基としては、直鎖状、分枝状もしくは環状もよく、その例としては炭素数1〜10のアルキレン基が挙げられ、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、2−メチルプロピレン基、ペンチレン、2,2−ジメチルプロピレン基、2−エチルプロピレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、2−エチルヘキシレン基、ノニレン基、テシレン基、シクロプロピレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基などが挙げられ、この中、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましい。
【0054】
前記化学式5において、通常、mは5以上、好ましくは5〜2,000、より好ましくは5〜300の整数である。通常、nは2以上、好ましくは2〜100、より好ましくは2〜50の整数である。通常、pまたはqは1以上、好ましくは1〜200、より好ましくは1〜100の整数である。
【0055】
前記化学式5において、pとqの比率は10:1〜1:10、好ましくは3:1〜1:3である。前記化学式1の化合物の数平均分子量は、通常、5,000〜300,000、好ましくは8,000〜150,000である。
【0056】
前記化学式5で示される化合物を用いて前述した(メタ)アクリル酸単量体を重合することにより、本発明に係るブロック共重合体を製造することができる。
【0057】
前記化学式5で示される化合物を用いた重合反応としては、例えば、溶液重合、バルク(bulk)重合、懸濁重合、乳化重合、分散重合などの全ての重合方法を実施することができる。重合反応を実施する時、必要により、連鎖移動剤を添加して分子量を調節することができ、例えば、ラウリルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ブチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、チオグリコール、酸ブチルなどを用いることができる。
【0058】
溶液重合に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、n−ヘキサン、石油エーテル、トルエン、ベンゼン、キシレンなどの炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。このような溶媒は各々単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
前記重合反応は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどが挙げられる。
【0060】
前記重合反応時、前記化学式5で示されるマクロ窒素化合物の使用量は、重合しようとする(メタ)アクリル酸単量体の種類によっても異なるが、一般的に広い範囲から選択することができ、重合しようとする(メタ)アクリル酸単量体に対し、通常、0.01〜100重量%、好ましくは0.05〜50重量%にすることができる。
【0061】
前記重合しようとする(メタ)アクリル酸単量体の重合反応時の濃度としては、(メタ)アクリル酸単量体の種類によって異なるが、通常、5〜100重量%(無溶媒)、好ましくは10〜60重量%にすることができる。
【0062】
反応温度は他の重合条件とのバランスのために多少の変動はあるものの、通常、30〜130℃、好ましくは40〜120℃、より好ましくは60〜90℃にすることができる。また、反応時間は、反応温度や単量体の種類または濃度などの反応条件によって異なるが、通常、2〜24時間にすることができる。
【0063】
前記化学式5で示される化合物を重合開始剤として用いることにより、本発明に係るブロック共重合体を容易に、そして効率的に製造することができる。
【0064】
本発明に係る光学フィルムを製造するためのブロック共重合体は、必要により、充填剤(filler)、強化剤、安定剤、着色剤および酸化防止剤をさらに含むことができる。
【0065】
また、本発明に係る光学フィルムは、生産性向上のために、材料として前述したブロック共重合体の他にアクリル樹脂を含むことができる。この時、ブロック共重合体とアクリル樹脂の混合比率は特に限定されるものではなく、得られた光学フィルムの機械的物性が低下しない範囲で混合することができる。好ましくは、ブロック共重合体とアクリル樹脂間の重量比が95:5〜5:95の範囲で混合可能であり、より好ましくは重量比が80:20〜20:80の範囲である。アクリル樹脂の重量比が95%を越える場合には、光学フィルムとしての用途に適した物性を持てない可能性がある。前記アクリル樹脂の具体的な種類は特に限定されず、市販のものを用いることができ、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などを用いることができる。
【0066】
また、本発明は、a)(メタ)アクリレートを50モル%以上含むブロック体を含むブロック共重合体を準備するステップ、およびb)前記ブロック共重合体を用いてフィルムを成形するステップを含む光学フィルムの製造方法を提供する。
【0067】
前記ブロック共重合体は、具体的には、(メタ)アクリレートを50モル%以上含むハードセグメントからなるビニル重合ブロック体とポリシロキサン、ポリエーテル、ポリエステルおよびポリウレタンからなる群から選択された少なくとも一つを含むソフトセグメントからなるブロック体とを含むブロック共重合体であることが好ましい。
【0068】
前記ブロック共重合体から光学フィルムを製造する場合、前記ブロック共重合体を、1次成形加工として一般的なフィルムの製造方法である押出成形法、インフレーション成形法またはソルベントキャスティング法などによって製造することができる。前記光学フィルムはそれ自体で、すなわち無延伸状態で産業的な用途として用いることが好ましいが、次のステップにおいて、2次成形加工である延伸加工操作により位相差を付与して位相差フィルムとして用いることができる。
【0069】
1次成形加工として押出成形法によってフィルムを製造する場合、T−ダイと呼ばれるダイの小さい間隙を通過させて任意の厚さのフィルムを製造することができる。この時、ガス発泡による外観不良を防止するために、ブロック共重合体を80〜130℃範囲の温度で予め加熱および乾燥させることが好ましい。押出成形の条件は、分子鎖の配向を抑制するために、ブロック共重合体が溶融流動するガラス転移温度より十分に高い温度において、せん断率1,000/秒未満で成形加工することが好ましい。ダイ通過後、溶融状態であるフィルムの冷却固化のために、低温金属ローラやスチールベルトを使ってもよい。
【0070】
1次成形加工としてソルベントキャスティング法によってフィルムを製造する場合、ブロック共重合体を可溶できる溶剤を選択し、必要によっては複数の溶剤を用いることができる。前記ソルベントキャスティング法に用いることのできる溶剤の具体的な例としては塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に、揮発速度を制御するために、ブロック共重合体に対する良溶剤(good solvent)と貧溶剤(poor solvent)を組み合わせてもよい。乾燥時には、加熱条件の設定によってフィルム内に気泡または内部孔隙が形成されないようにし、残留溶剤の濃度が0.1wt%以下であることが好ましい。
【0071】
前記方法により1次成形加工によって製造された光学フィルムは厚さが30〜500μmであることが好ましい。
【0072】
上記のように製造された光学フィルムをさらに延伸する場合、前記ブロック共重合体のガラス転移温度をTgとする時、Tg−20℃〜Tg+30℃の温度で実施することができる。前記ガラス転移温度は、ブロック共重合体の貯蔵弾性率が低下し始まり、それに伴い損失弾性率が貯蔵弾性率より大きくなる温度から、高分子鎖の配向が緩和して消失する温度までの領域を示す。ガラス転移温度は示差走査熱量計(DSC)によって測定することができる。
【0073】
本発明に係る光学フィルムの製造方法において、フィルムの成形前に前記ブロック共重合体にアクリル樹脂を混合することができる。前述したように、アクリル樹脂とブロック共重合体の混合比率は特に限定されないが、混合によって得られた光学フィルムの機械的物性が低下しない範囲で混合することができる。
【0074】
また、本発明は、液晶セル、および該液晶セルの両面に備えられた第1偏光板および第2偏光板を含む液晶表示装置において、前記第1偏光板および第2偏光板のうちの少なくとも一つと液晶セルとの間に(メタ)アクリレートを50モル%以上含むブロック体を含むブロック共重合体からなる光学フィルムを1枚以上含むことを特徴とする液晶表示装置を提供する。
【0075】
前記ブロック共重合体は、具体的には、(メタ)アクリレートを50モル%以上含むハードセグメントからなるビニル重合ブロック体とポリシロキサン、ポリエーテル、ポリエステルおよびポリウレタンからなる群から選択された少なくとも一つを含むソフトセグメントからなるブロック体とを含むブロック共重合体であることが好ましい。
【0076】
また、本発明は、偏光子および該偏光子の片面または両面に保護フィルムとして備えられた(メタ)アクリレートを50モル%以上含むブロック体を含むブロック共重合体からなる光学フィルムを含む偏光板を提供する。
【0077】
前記ブロック共重合体は、具体的には、(メタ)アクリレートを50モル%以上含むハードセグメントからなるビニル重合ブロック体とポリシロキサン、ポリエーテル、ポリエステルおよびポリウレタンからなる群から選択された少なくとも一つを含むソフトセグメントからなるブロック体とを含むブロック共重合体であることが好ましい。
【0078】
前記偏光子の片面だけに保護フィルムとして本発明に係る光学フィルムが備えられ場合、残りの他面には当技術分野に知られた保護フィルムが備えられてもよい。
【0079】
前記偏光子としてはヨウ素または二色性染料を含むポリビニルアルコール(PVA)からなるフィルムを用いることができる。前記偏光子はPVAフィルムにヨウ素または二色性染料を染着させて製造することができるが、その製造方法は特に限定されない。本明細書において、偏光子は保護フィルムを含まない状態を意味し、偏光板は偏光子と保護フィルムを含む状態を意味する。
【0080】
本発明に係る偏光板において、保護フィルムと偏光子は当技術分野に知られている方法によって貼り合わせることができる。
【0081】
例えば、保護フィルムと偏光子の貼り合わせは接着剤を用いた接着方式によってなされてもよい。すなわち、先ず、保護フィルムまたは偏光子であるPVAフィルムの表面上にロールコータ、グラビアコータ、バーコータ、ナイフコータ、またはキャピラリコータなどを使用して接着剤をコーティングする。接着剤が完全に乾燥する前に保護フィルムと偏光子を貼り合わせロールで加熱圧着するか常温圧着して貼り合わせる。ホットメルト型接着剤を用いる場合には加熱圧着ロールを使わなければならない。
【0082】
前記保護フィルムと偏光子を貼り合わせる時に使用可能な接着剤としては一液型または二液型のPVA接着剤、ポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、スチレンブタジエンゴム系(SBR系)接着剤、またはホットメルト型接着剤などが挙げられるが、これらの例だけに限定されるものではない。ポリウレタン系接着剤を使用する場合には、光によって黄変しない脂肪族イソシアネート系化合物を用いて製造したポリウレタン系接着剤を使用することが好ましい。一液型または二液型のドライラミネート用接着剤またはイソシアネートとヒドロキシ基との反応性が比較的に低い接着剤を使用する場合には、アセテート系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤または芳香族系溶剤などにより薄められた溶液型接着剤を使用することもできる。この時、接着剤の粘度は5,000cps以下の低粘度型のものが好ましい。前記接着剤は、貯蔵安定性に優れつつ、400〜800nmにおける光透過度が90%以上であるものが好ましい。
【0083】
十分な粘着力を発揮できるのであれば粘着剤も使用することができる。粘着剤は、貼り合わせ後、熱または紫外線によって十分に硬化が起こって機械的強度が接着剤レベルに向上されるのが好ましく、界面接着力も大きくて粘着剤が貼り付けられた両側フィルムのうちのいずれか一方を破壊しなくては剥離されない程度の粘着力を有することが好ましい。
【0084】
使用可能な粘着剤の具体的な例としては、光学透明性に優れた天然ゴム、合成ゴムまたはエラストマ、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルキルエーテル、ポリアクリレートまたは変性ポリオレフィン系粘着剤などと、ここにイソシアネートなどの硬化剤を添加した硬化型粘着剤が挙げられる。
【0085】
また、本発明は、液晶セル、および該液晶セルの両面に備えられた第1偏光板および第2偏光板を含む液晶表示装置において、前記第1偏光板および第2偏光板のうちの少なくとも一つが偏光子および該偏光子の片面または両面に保護フィルムとして備えられた(メタ)アクリレートを50モル%以上含むブロック体を含むブロック共重合体からなる光学フィルムを含む偏光板であることを特徴とする液晶表示装置を提供する。
【0086】
前記ブロック共重合体は、具体的には、(メタ)アクリレートを50モル%以上含むハードセグメントからなるビニル重合ブロック体とポリシロキサン、ポリエーテル、ポリエステルおよびポリウレタンからなる群から選択された少なくとも一つを含むソフトセグメントからなるブロック体とを含むブロック共重合体であることが好ましい。
【0087】
前記のような液晶表示装置を例示した図1を通して見てみれば次の通りである。図1において、偏光板11および偏光板12のうちの少なくとも一つの偏光膜の片面または両面に本発明に係る光学フィルムが保護フィルムとして配置されることができる。本発明に係る光学フィルムは内部保護フィルムとして配置されてもよく、外部保護フィルムとして配置されてもよい。図1には位相差フィルムが備えられている場合が図示されているが、位相差フィルムの存在が必須的なものではない。また、図1にはバックライトが偏光板12側に配置されている場合が図示されているが、バックライトが偏光板11側に配置されてもよい。
【0088】
本発明に係る光学フィルムが偏光板11および/または偏光板12の偏光膜の片面だけに配置される場合、他の片面の保護フィルムとしてはトリアセテートセルロース(TAC)フィルム、開環メタセシス重合(ring opening metathesis polymerization;ROMP)によって製造されたポリノルボルネン系フィルム、開環重合された環状オレフィン系重合体を再び水素添加して得たHROMP(ring opening metathesis polymerization followed by hydrogenation)重合体、ポリエステルフィルム、または付加重合(addition polymerization)によって製造されたポリノルボルネン系フィルムなどを用いることができる。その他にも透明な高分子材料から製造されたフィルムが保護フィルムなどとして用いることができるが、これらの例だけに限定されるものではない。
【0089】
前述した本発明に係る偏光板を含む液晶表示装置は、偏光板と液晶セルとの間に本発明に係る光学フィルムをさらに含むことができる。
【0090】
以下、実施例を通して本発明をより詳細に説明するが、以下の実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲をそれに限定されるものではない。
【実施例】
【0091】
<マクロ開始剤(macroinitiator)の製造>
1.ポリジメチルシロキサンマクロ開始剤の製造
1,13−ビスフェノールポリジメチルシロキサン(1,13−bisphenol−polydimethylsiloxane:Mn=3500)32gをクロロホルム50gに溶かし、次にトリエチルアミン2.1gを入れて室温で5分間攪拌した。その次、5℃の冷却水を装置し、アゾビス−4−シアノペンタノイルクロライド(azobis−4−cyanopentanoyl chloride)3gをクロロホルム50gに溶かした溶液を30分にかけて滴加しながら反応させた。24時間反応させた後、蒸留水を用いて副産物と未反応物を洗い落とした。その後、減圧条件で乾燥してマクロアゾ開始剤I 30gを得た(Mn=32,000、PDI=2.0)。
【0092】
2.ポリカプロラクタムマクロ開始剤の製造
ポリカプロラクタムジオール45g(polycaprolactane:Mn=4,000)をクロロホルム70gに溶かし、次にトリエチルアミン3gを入れて室温で5分間攪拌した。その次、5℃の冷却水を装置し、アゾビス−4−シアノペンタノイルクロライド3.54g(11.2mmol)をクロロホルム50gに溶かした溶液を30分にかけて滴加して反応させた。24時間反応させた後、蒸留水を用いて副産物と未反応物を洗い落とした。その後、減圧条件で乾燥してマクロアゾ開始剤II 40.5gを得た(Mn=25,000、PDI=2.0)。
【0093】
3.ポリエチレンオキシドマクロ開始剤の製造
ポリエチレンオキシドジオール(polyethyleneoxidediol:Mn=3,200)45gをクロロホルム70gに溶かし、次にトリエチルアミン3.2gを入れて室温で5分間攪拌した。その次、5℃の冷却水を装置し、アゾビス−4−シアノペンタノイルクロライド4.4g(14mmol)をクロロホルム40gに溶かした溶液を30分にかけて滴加して反応させた。24時間反応させた後、蒸留水を用いて副産物と未反応物を洗い落とした。その後、減圧条件で乾燥してマクロアゾ開始剤III 41gを得た(Mn=23,000、PDI=1.8)。
【0094】
4.ポリテトラヒドロフランマクロ開始剤の製造
ポリテトラヒドロフランジオール60g(poltetrahydrofurandiol:Mn=5,000)をクロロホルム170gに溶かし、次にトリエチルアミン2.4gを入れて室温で5分間攪拌した。その次、5℃の冷却水を装置し、アゾビス−4−シアノペンタノイルクロライド3.8g(12mmol)をクロロホルム50gに溶かした溶液を30分にかけて滴加して反応させた。24時間反応させた後、蒸留水を用いて副産物と未反応物を洗い落とした。その後、減圧条件で乾燥してマクロアゾ開始剤IV 39.5gを得た(Mn=16,000、PDI=2.2)。
【0095】
<ブロック共重合体の製造>
[実施例1]
ポリジメチルシロキサン(PDMS)−b−ポリメチルメタクリレート(PMMA)ブロック共重合体の製造。
【0096】
攪拌器が取り付けられて90℃に準備された100mLフラスコ反応器に前記で製造したポリジメチルシロキサンマクロアゾ開始剤I 10gをメチルメタクリレート70gに投入して重合を開始した。18時間が経過した後、THF 100mLで薄めて反応を停止させ、常温で攪拌し続けて完全に溶解させた後、過量のメタノールに徐々に滴加し乾燥して白色沈殿物59gを得た。DSCを利用して測定したガラス転移温度は130℃であり、GPCを利用して測定したポリスチレン換算重量平均分子量は200,000であった。
【0097】
[実施例2−3]
実施例1において、ポリジメチルシロキサンマクロアゾ開始剤Iの量を異にしたことを除いては同じ方法により重合を実施した。その結果は下記表1の通りである。
【0098】
【表1】

【0099】
[実施例4]
ポリカプロラクタム(PCL)−b−ポリメチルメタクリレート(PMMA)ブロック共重合体の製造。
【0100】
攪拌器が取り付けられて90℃に準備された100mLフラスコ反応器に前記で製造したポリカプロラクタムマクロアゾ開始剤II 10gをメチルメタクリレート70gに投入して重合を開始した。18時間が経過した後、THF 100mLで薄めて反応を停止させ、常温で攪拌し続けて完全に溶解させた後、過量のメタノールに徐々に滴加し乾燥して白色沈殿物50gを得た。DSCを利用して測定したガラス転移温度は94℃であり、GPCを利用して測定したポリスチレン換算重量平均分子量は140,000であった。
【0101】
[実施例5]
ポリエチレンオキシド−b−ポリメチルメタクリレート(PMMA)ブロック共重合体の製造。
【0102】
攪拌器が取り付けられて90℃に準備された100mLフラスコ反応器に前記で製造したポリエチレンオキシドマクロアゾ開始剤III 7gをメチルメタクリレート70gに投入して重合を開始した。18時間が経過した後、THF 100mLで薄めて反応を停止させ、常温で攪拌し続けて完全に溶解させた後、過量のメタノールに徐々に滴加し乾燥して白色沈殿物50gを得た。DSCを利用して測定したガラス転移温度は105℃であり、GPCを利用して測定したポリスチレン換算重量平均分子量は180,000であった。
【0103】
[実施例6]
ポリテトラヒドロフラン−b−ポリメチルメタクリレート(PMMA)ブロック共重合体の製造。
【0104】
攪拌器が取り付けられて90℃に準備された100mLフラスコ反応器に前記で製造したポリテトラヒドロフランマクロアゾ開始剤IV 10gをメチルメタクリレート70gに投入して重合を開始した。18時間が経過した後、THF 100mLで薄めて反応を停止させ、常温で攪拌し続けて完全に溶解させた後、過量のメタノールに徐々に滴加し乾燥して白色沈殿物50gを得た。DSCを利用して測定したガラス転移温度は103℃であり、GPCを利用して測定したポリスチレン換算重量平均分子量は120,000であった。
【0105】
<フィルムの製造>
ジクロロエタン42.5gに前記実施例1〜6で製造されたブロック共重合体7.5gを投入し、30℃で24時間攪拌して均一な溶液を製造した。5μmフィルタで濾過して不溶物とホコリを除去し、15wt%のキャスティング溶液を製造した。LCD基板用ガラス板にキャスティング溶液を注ぎ、ドクターブレードで0.3m/minの速度でキャスティングし、室温で60分間乾燥した。その後、60℃で60分間、115℃で90分間乾燥して溶媒を除去した後、高分子フィルムを剥離した。製造したフィルムの物性は下記表1に示す。フィルムの全透過率とヘイズは反射度−透過度メーター(reflectance−transmittance meter、HR−100、Murakami color research Lab.)で測定した。それぞれの場合、フィルムの全透過率は90%以上であり、ヘイズは下記表2の結果の通りである。また、それぞれの場合から得られたブロック共重合体フィルムは、実施例2の場合を除いては、曲げた時に全て折れず、既存のポリメチルメタクリレート樹脂に比べてtoughness程度が遥かに改善されたことが分かる。水分透過度の測定は水蒸気透過度テスター(water vapor permeability tester、Lssy、L80−5000)を使い、測定条件は、温度は38℃、サンプルの下部分の湿度は100%、サンプルの上部分の湿度は10%である条件で測定した。参考に、TACの水分透過度は260である。
【0106】
【表2】

【0107】
それぞれの位相差フィルムの面方向位相差値および厚さ方向位相差値は下記のように測定した。
【0108】
厚さ方向位相差値は、王子計測機器株式会社のKobra21−ADH(商品名)を使用し、590nmで面方向において屈折率が最も大きい方向をx軸、x軸に面方向に直角である方向をy軸、xy平面の垂直方向をz軸に設定し、590nmで各方向の屈折率であるnx、ny、nzを測定し、フィルム層の厚さを測定して、各軸方向の屈折率であるnx、ny、nzを測定した後、下記の数学式1および数学式2によりフィルムの厚さ方向位相差値および面方向位相差値を計算した。
【0109】
[数学式1]
th=(nz−ny)×d
前記数学式1において、
yはフィルム面においてnxの直角方向の屈折率、
zはフィルム面の垂直方向の屈折率、
dはフィルムの厚さ、
thは厚さ方向位相差値を示す。
【0110】
[数学式2]
in=(nx−ny)×d
前記数学式2において、
xはフィルム面において最も屈折率が大きい方向の屈折率、
yはフィルム面においてnxの直角方向の屈折率、
dはフィルムの厚さ、
inは面方向位相差値を示す。
【0111】
また、延伸率の定義は下記数学式3の通りである。
【0112】
[数学式3]
延伸率(%)=[(延伸後試片長さ−延伸前試片長さ)/延伸前試片長さ]×100
【0113】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレートを50モル%以上含むブロック体を含むブロック共重合体を含む光学フィルム。
【請求項2】
前記ブロック共重合体は、(メタ)アクリレートを50モル%以上含むハードセグメントからなるビニル重合ブロック体とポリシロキサン、ポリエーテル、ポリエステルおよびポリウレタンからなる群から選択された少なくとも一つを含むソフトセグメントからなるブロック体とを含むブロック共重合体である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記ビニル重合ブロック体を構成する(メタ)アクリル酸単量体は、炭素数1〜12のアルキル基、アルキレンまたは芳香族の置換体を有する、請求項2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記ビニル重合ブロック体は、シアン化ビニル単量体、マレイミド単量体および芳香族環を含むビニル単量体からなる群から選択された単量体をさらに含む、請求項2に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記ポリシロキサンは下記化学式1で示される単位を含む、請求項2に記載の光学フィルム:
【化6】

前記化学式1において、
RおよびR’は、各々独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ハロシクロアルキル、ハロアリールおよびハロヘテロアリールからなる群から選択され、
nは1〜6の整数である。
【請求項6】
前記ポリエーテルは下記化学式2で示される単位を含む、請求項2に記載の光学フィルム:
【化7】

前記化学式2において、
nは2〜4の整数であり、
xは5以上の整数である。
【請求項7】
前記ポリエステルは下記化学式3で示される単位を含む、請求項2に記載の光学フィルム:
【化8】

前記化学式3において、
XはC1〜C24のアルキルであり、
yは1以上の整数である。
【請求項8】
前記ポリウレタンは下記化学式4で示される単位を含む、請求項2に記載の光学フィルム:
【化9】

前記化学式4において、
EおよびXは各々独立にC1〜C24のアルキルであり、
MおよびM’は各々独立にOまたはNであり、
lは1以上の整数である。
【請求項9】
前記ブロック共重合体は(A−B)n、B−(A−B)n、(A−B)n−Aまたはこれらの混合形態であり、ここで、Aは(メタ)アクリレートを50モル%以上含むハードセグメントからなるビニル重合ブロック体であり、Bはポリシロキサン、ポリエーテル、ポリエステルおよびポリウレタンからなる群から選択された少なくとも一つを含むソフトセグメントからなるブロック体であり、nは1以上の整数である、請求項2に記載の光学フィルム。
【請求項10】
前記ハードセグメントからなるビニル重合ブロック体と前記ソフトセグメントからなるブロック体の重量比が95:5〜5:95である、請求項2に記載の光学フィルム。
【請求項11】
アクリル樹脂をさらに含む、請求項1〜10のうちのいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項12】
前記ブロック共重合体と前記アクリル樹脂の重量比が95:5〜5:95である、請求項11に記載の光学フィルム。
【請求項13】
a)(メタ)アクリレートを50モル%以上含むブロック体を含むブロック共重合体を準備するステップ、およびb)前記ブロック共重合体を用いてフィルムを成形するステップを含む請求項1〜10のうちのいずれか一項の光学フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記b)ステップにおいて、フィルムの成形前に前記ブロック共重合体にアクリル樹脂を混合する、請求項13に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項15】
前記ブロック共重合体と前記アクリル樹脂の重量比が95:5〜5:95である、請求項14に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項16】
偏光子と該偏光子の片面または両面に保護フィルムとして備えられた(メタ)アクリレートを50モル%以上含むブロック体を含むブロック共重合体を含む請求項1〜10のうちのいずれか一項の光学フィルムとを含む偏光板。
【請求項17】
前記光学フィルムはアクリル樹脂をさらに含む、請求項16に記載の偏光板。
【請求項18】
前記ブロック共重合体と前記アクリル樹脂の重量比が95:5〜5:95である、請求項17に記載の偏光板。
【請求項19】
液晶セル、および該液晶セルの両面に備えられた第1偏光板および第2偏光板を含む液晶表示装置において、前記第1偏光板および第2偏光板のうちの少なくとも一つが、偏光子と、該偏光子の片面または両面に保護フィルムとして備えられた(メタ)アクリレートを50モル%以上含むブロック体を含むブロック共重合体を含む請求項1〜10のうちのいずれか一項の光学フィルムとを含む偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項20】
前記光学フィルムはアクリル樹脂をさらに含む、請求項19に記載の液晶表示装置。
【請求項21】
前記ブロック共重合体と前記アクリル樹脂の重量比が95:5〜5:95である、請求項20に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【公表番号】特表2010−525390(P2010−525390A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503969(P2010−503969)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【国際出願番号】PCT/KR2008/002137
【国際公開番号】WO2008/127068
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】