説明

光学フィルムの製造方法、及び偏光板

【課題】高温、低温の繰り返し強制劣化試験で、ヘーズ上昇の少ない光学フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の光学フィルムの製造方法は、セルロースアシレートとマット剤を含有する光学フィルムの製造方法であって、カルシウム含有量が50ppm以下であるセルロースアシレートと下記一般式(1)で表されるポリエステル系添加剤を含有するウェブを、180℃以上230℃以下で5%〜50%の延伸倍率で延伸することにより、当該延伸後の光学フィルムの23℃・55%RH環境下、波長590nmで測定される、面内リタデーションReが0〜10nmの範囲内に、かつ厚さ方向のリタデーションRthが−5〜20nmの範囲内に調整することを特徴とする。
一般式(1) B−(G−A)n−G−B

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムの製造方法、及び偏光板に関し、更に詳しくは、ヘーズの経時変化の少ない光学フィルムの製造方法、及びコントラストの高い偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、自動車搭載用の液晶ディスプレイ、大型液晶テレビのディスプレイ、携帯電話、ノートパソコン等の普及から液晶表示装置(以下、LCDとも言う)の需要が旺盛である。このようなLCDには、偏光フィルムや位相差フィルムなどの種々な光学フィルムが使用されている。
【0003】
LCDの需要が増加し、これに合わせ使用される偏光板についても薄膜化、軽量化、高生産化が要望されている。更に、LCDの大画面化に伴い、部材としての光学フィルムも薄膜化、高生産化に伴う広幅化が求められており、機械的強度物性を中心とする膜特性を向上する検討も進められている。
【0004】
しかしながら薄膜化を行うと光学フィルムの透湿性が増す為に、該光学フィルムを偏光板保護フィルム等に使用すると高温多湿条件下では偏光子の劣化が生じ易くなる。そのため、光学フィルム中に可塑剤を添加することで透湿性を抑えようとする技術が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0005】
この様な光学フィルムを製造する場合、光学特性や平面性、更に得られる光学フィルムの膜厚や幅を調整するために、一般に製膜後にテンターにより延伸することで調整する場合が多い。
【0006】
光学フィルムを広幅化、薄膜化しようとして高倍率で延伸すると、特に1.6mを越えるような広幅な光学フィルムを生産する場合、上記透湿性を改善する技術では不十分であり、高温多湿条件下では偏光子劣化や可塑剤の揮発、ブリードも生じ易く該光学フィルムのヘーズ変化が大きいことが分かった。
【0007】
カルシウム(Ca)の含有量がそれぞれ20ppm以下である厚さ10〜50μmのセルロースエステルフィルムが開示されているが(例えば、特許文献4参照)、該発明は、フィルムの貯蔵及び輸送などの物流状態における保管時の劣化(傷発生、異物発生)の抑制、フィルムを貯蔵あるいは輸送した後、フィルムを偏光板へ加工した際の傷発生の抑制等を目的としており、高温多湿条件下でのヘーズ変化には全く注目していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−69225号公報
【特許文献2】特開2008−88292号公報
【特許文献3】特開2008−115221号公報
【特許文献4】特開2004−189288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、高倍率に延伸しても、高温、低温の繰り返し強制劣化試験で、ヘーズ上昇の少ない光学フィルムの製造方法、及び該光学フィルムの製造方法によって製造された光学フィルムを用いてコントラストの高い偏光板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0011】
1.セルロースアシレートとマット剤を含有する光学フィルムの製造方法であって、カルシウム含有量が50ppm以下であるセルロースアシレートと下記一般式(1)で表されるポリエステル系添加剤を含有するウェブを、180℃以上230℃以下で5%〜50%の延伸倍率で延伸することにより、当該延伸後の光学フィルムの23℃・55%RH環境下、波長590nmで測定される、面内リタデーションReが0〜10nmの範囲内に、かつ厚さ方向のリタデーションRthが−5〜20nmの範囲内に調整することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【0012】
一般式(1) B−(G−A)n−G−B
式中、Bはモノカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のジカルボン酸残基または炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、またnは0以上の整数を表し、B−G−Bの構成も含む。
【0013】
2.前記ポリエステル系添加剤の数平均分子量が300以上700以下であることを特徴とする前記1記載の光学フィルムの製造方法。
【0014】
3.前記ポリエステル系添加剤のジカルボン酸が、少なくとも一つの脂肪族ジカルボン酸と少なくとも一つの芳香族ジカルボン酸の混合物であることを特徴とする前記1または2記載の光学フィルムの製造方法。
【0015】
4.前記一般式(1)のBで表される末端封止基が芳香族基であることを特徴とする前記1〜3記載のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【0016】
5.前記1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法によって製造された光学フィルムを用いたことを特徴とする偏光板。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高倍率に延伸しても、高温、低温の繰り返し強制劣化試験で、ヘーズ上昇の少ない光学フィルムの製造方法、及び該光学フィルムの製造方法によって製造された光学フィルムを用いてコントラストの高い偏光板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の光学フィルムの製造方法は、高温、低温の繰り返し強制劣化試験でのヘーズ上昇を抑制した光学フィルムを製造する方法を提供するものである。本発明者は、検討を重ねた結果、光学フィルムのヘーズ上昇はセルロースアシレートフィルム内でカルシウムとマット剤が熱ショックにより凝集を起こし、ヘーズが上昇するものであることを突き止めた。その結果、ヘーズ上昇を抑制するためには、凝集のもとになるセルロースアシレート中のカルシウム量を低い値に抑え、かつ凝集しにくい環境として本発明に係るポリエステル系添加剤の存在下において延伸し、面内及び厚さ方向のリタデーションの値を低く抑えることが重要であることを見出し、本発明をなした。
【0019】
また、高温である180〜230℃、5%〜50%の延伸倍率で延伸することにより、該ポリエステル系添加剤がマット剤やカルシウムの周りをコーティングし、より凝集が起きにくくなることを見出した。
【0020】
更に、リタデーションの値を低く抑えることによって樹脂が等方性に並ぶために、樹脂間をマット剤やカルシウムが移動しにくくなる。これらの組み合わせにより、ヘーズ上昇を抑制することができる。本発明の光学フィルムの製造方法によって製造された光学フィルムは、ヘーズに優れた光学フィルムであることから、本発明によってパネルコントラストの高い偏光板を提供することができる。
【0021】
以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
《ポリエステル系添加剤》
本発明に係る光学フィルムは、本発明の効果を得る上で、下記一般式(1)で表されるポリエステル系添加剤を含有することがヘーズを低く保ちながら、面内及び厚さ方向のリタデーションを本発明の範囲内に調整する上で必要である。
【0023】
一般式(1) B−(G−A)n−G−B
式中、Bはモノカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のジカルボン酸残基または炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、またnは0以上の整数を表し、B−G−Bの構成も含む。
【0024】
一般式(1)中、Bで示されるモノカルボン酸残基とGで示されるアルキレングリコール残基またはオキシアルキレングリコール残基またはアリールグリコール残基、Aで示されるジカルボン酸残基またはアリールジカルボン酸残基とから構成されるものであり、通常のポリエステル系添加剤と同様の反応により得られる。
【0025】
本発明で使用されるポリエステル系添加剤のモノカルボン酸成分としては、例えば、酢酸、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ1種または2種以上の混合物として使用することができる。
【0026】
本発明に用いることのできるポリエステル系添加剤の炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。特に炭素数2〜12のアルキレングリコールがセルロースアシレートとの相溶性に優れているため、特に好ましい。
【0027】
また、上記芳香族末端エステルの炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用できる。
【0028】
芳香族末端エステルの炭素数4〜12のジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ1種または2種以上の混合物として使用される。炭素数6〜12のアリールジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸等がある。
【0029】
該ジカルボン酸は、少なくとも一つの脂肪族ジカルボン酸と少なくとも一つの芳香族ジカルボン酸の混合物であることが特に好ましい。脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸を含有する場合は、脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸の割合が55:45〜99:1であることが好ましく、60:40〜90:10であることがより好ましい。
【0030】
本発明に係るポリエステル系添加剤の数平均分子量は、300〜700の範囲が好ましく、300〜500の範囲がより好ましい。この範囲の数平均分子量であると、本発明にかかる温度、延伸倍率で延伸を行った場合、ポリエステル系添加剤がマット剤やカルシウムの周りをコーティングしてより凝集が起きにくくなり、強制劣化によるヘーズ上昇の少ない光学フィルムを得ることができる。数平均分子量は、下記ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定する。
【0031】
該ポリエステル系添加剤の数平均分子量を調整するには縮合または重縮合の反応時間の調整で行うことができる。
【0032】
本発明に係るポリエステル系添加剤の酸価は、0.5mgKOH/g以下、水酸基価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.3mgKOH/g以下、水酸基価は15mgKOH/g以下のものが好ましい。
【0033】
本発明に係るポリエステル系添加剤の合成は、常法により上記ジカルボン酸とジオール及び/又は末端封止用のモノカルボン酸とのポリエステル化反応又はエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。これらのポリエステル系添加剤については、村井孝一編者「添加剤 その理論と応用」(株式会社幸書房、昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載がある。また、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号各公報などに記載されている素材を利用することもできる。
【0034】
以下、本発明に用いることのできる芳香族末端エステル系可塑剤の合成例を示す。
【0035】
〈サンプルNo.1−1(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器にフタル酸、アジピン酸を5:5の混合比率で410部、安息香酸610部、1,2プロパンジオールとエチレングリコールを5:5の混合比率で737部、及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.40部を一括して仕込み窒素気流中で攪拌下、還流凝縮器を付して過剰の1価アルコールを還流させながら、酸価が2以下になるまで130〜250℃で加熱を続け生成する水を連続的に除去した。次いで200〜230℃で1.33×10Pa〜最終的に4×10Pa以下の減圧下、留出分を除去し、この後濾過して次の性状を有する芳香族末端エステル系可塑剤を得た。
【0036】
数平均分子量(Mn):350
〈サンプルNo.2(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器に、テレフタル酸、コハク酸を5:5の混合比率で410部、安息香酸610部、1,2プロパンジオールとエチレングリコールを5:5の混合比率で341部、及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.35部を用いる以外はサンプルNo.1と全く同様にして次の性状を有する芳香族末端エステルを得た。
【0037】
数平均分子量(Mn):310
〈サンプルNo.3(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器に、イソフタル酸、スクシン酸を5:5の混合比率で410部、p−トロイル酸610部、1,3プロパンジオールとエチレングリコールを5:5の混合比率で418部、及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.35部を用いる以外はサンプルNo.1と全く同様にして次の性状を有する芳香族末端エステルを得た。
【0038】
数平均分子量(Mn):400
〈サンプルNo.4(エステルサンプル)〉
反応容器に、テレフタル酸、マレイン酸を5:5の混合比率で410部、p−トロイル酸610部、エチレングリコール418部、及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.35部を用いる以外はサンプルNo.1と全く同様にして次の性状を有するエステルを得た。
【0039】
数平均分子量(Mn):350
〈サンプルNo.1−2〜1−8、5〜9〉
サンプルNo.1−1と同様に表1の原材料を用いて合成を行った。また、1−2〜1−8は反応時間を調整して1−1と同様に合成を行った。
【0040】
ここで、1,2−プロパンジオール、エチレングリコール=5,5との標記は1,2−プロパンジオールとエチレングリコールを5対5の比率で混合したことをいう。他の類似の表記も同様である。
【0041】
[ポリエステル系添加剤の数平均分子量(Mn)の測定方法]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定装置(東ソー株式会社製「HLC−8330」)を用いて、下記の測定条件で、エステル化合物の標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)を測定した。
カラム:「TSK gel SuperHZM−M」×2本及び
「TSK gel SuperHZ−2000」×2本
ガードカラム:「TSK SuperH−H」
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.35ml/分
【0042】
【表1】

【0043】
上記化合物は、光学フィルム中に1〜35質量%、特に5〜30質量%含むことが好ましい。この範囲内であれば、本発明の優れた効果を呈すると共に、原反保管中におけるブリードアウトなどもなく好ましい。
【0044】
また、必要に応じて他の可塑剤を含有することができる。可塑剤は特に限定されないが、好ましくは、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤及び多価アルコールエステル系可塑剤、アクリル系可塑剤等から選択される。そのうち、可塑剤を2種以上用いる場合は、少なくとも1種は多価アルコールエステル系可塑剤であることが好ましい。多価アルコールエステル系化合物としては、特開2010−32655号明細書段落(0218)〜(0170)を挙げることができる。
【0045】
《セルロースアシレート》
本発明に係る光学フィルムに用いるセルロースアシレートは、炭素数2〜22程度のカルボン酸エステルであることが好ましく、特にセルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味している。水酸基に結合するアシル基は、直鎖であっても分岐してもよく、また環を形成してもよい。更に別の置換基が置換してもよい。同じ置換度である場合、前記炭素数が多いと複屈折性が低下するため、炭素数としては炭素数2〜6のアシル基の中で選択することが好ましい。
【0046】
前記セルロースアシレートは、混合酸由来のアシル基を用いることもでき、特に好ましくは炭素数が2と3、或いは炭素数が2と4のアシル基を用いることができる。本発明では、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、またはセルロースアセテートプロピオネートブチレートのようなアセチル基の他にプロピオネート基またはブチレート基が結合したセルロースの混合脂肪酸エステルを用いることができる。尚、ブチレートを形成するブチリル基としては、直鎖状でも分岐していてもよい。本発明において特にセルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレートが好ましく用いられる。
【0047】
また、リタデーション値は、セルロースアシレートの前記アシル基の種類とセルロース樹脂骨格のピラノース環へのアシル基の置換度等によって、適宜制御することができる。
【0048】
本発明に好ましいセルロースアシレートとしては、下記式(1)及び(2)を同時に満足するものが好ましい。
【0049】
式(1) 2.0≦X+Y≦3.0
式(2) 0≦Y≦1.5
式中、Xはアセチル基の置換度、Yはプロピオニル基またはブチリル基の置換度である。上記2式を満足するものは、本発明の目的に叶う優れた物理特性、光学特性を示すフィルムを得ることができる。
【0050】
この中で特にトリアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられる。セルロースアセテートプロピオネートでは、1.0≦X≦2.5であり、0.1≦Y≦1.5、2.0≦X+Y≦3.0であることが好ましい。アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96に準じて測定することができる。
【0051】
前記アシル基の置換度が低過ぎると、セルロース樹脂の骨格を構成するピラノース環の水酸基に対して未反応部分が多くなり、該水酸基が多く残存することにより、リタデーションの湿度変化や偏光板保護フィルムとして偏光子を保護する能力が低下してしまうことがあり、好ましくない。
【0052】
本発明に係わるセルロースアシレートの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnの値は、1.4〜3.0であることが好ましい。尚、本発明においては、セルロースアシレートフィルムが、材料として、Mw/Mnの値が1.4〜3.0であるセルロースアシレートを含有すればよいが、フィルムに含まれるセルロースアシレート(好ましくはセルローストリアセテート又はセルロースアセテートプロピオネート)全体のMw/Mnの値は1.4〜3.0の範囲であることがより好ましい。より好ましくは1.7〜2.2である。
【0053】
アセチルセルロースの場合、酢化率を上げようとすれば、酢化反応の時間を延長する必要がある。但し、反応時間を余り長くとると分解が同時に進行し、ポリマー鎖の切断やアセチル基の分解などが起こり、好ましくない結果をもたらす。従って、酢化度を上げ、分解をある程度抑えるためには反応時間はある範囲に設定することが必要である。反応時間で規定することは反応条件が様々であり、反応装置や設備その他の条件で大きく変わるので適切でない。ポリマーの分解は進むにつれ、分子量分布が広くなってゆくので、セルロースアシレートの場合にも、分解の度合いは通常用いられる重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値で規定できる。即ちセルローストリアセテートの酢化の過程で、余り長過ぎて分解が進み過ぎることがなく、且つ酢化には十分な時間酢化反応を行わせしめるための反応度合いの一つの指標として用いられる重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値を用いることができる。
【0054】
本発明に係わる光学フィルムに用いられるセルロースアシレートの分子量は、数平均分子量(Mn)で80000〜200000のものを用いることが好ましい。100000〜200000のものが更に好ましく、150000〜200000が特に好ましい。
【0055】
セルロースアシレートの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用いて公知の方法で測定することが出来る。これを用いて数平均分子量、重量平均分子量を算出し、その比(Mw/Mn)を計算することが出来る。
【0056】
高速液体クロマトグラフィーにより下記条件で測定する。
【0057】
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
【0058】
本発明に係る光学フィルムは、カルシウム含有量が50ppm以下のセルロースアシレートを用いることが特徴であり、経時でのヘーズ上昇を効果的に抑制できる。
【0059】
セルロースアシレート中のカルシウム含有量を上記範囲にするには、セルロースアシレートの原料、製造法に因るところが大きい。
【0060】
本発明に係るセルロースアシレート中のカルシウム含有量は50ppm以下であるが、好ましくは10〜50ppmの範囲であることが生産上、コスト上好ましい。
【0061】
本発明に用いられるセルロースアシレートの原料のセルロースとしては、木材パルプ(針葉樹パルプ、広葉樹パルプ)や綿花リンターなどが使用できる。セルロースの種類や複数の原料セルロースの使用により、セルロースアシレートのMwを制御できる。例えば、広葉樹前加水分解クラフトパルプを用いてエステル化すると、セルロースアシレートのMwが大きくなり、針葉樹サルファイトパルプを用いると、Mwが小さくなり易い。そのため、セルロースは単独で又は二種以上組み合わせてもよく、例えば、針葉樹パルプと、綿花リンター又は広葉樹パルプとを併用してもよい。セルロースとしては、通常、パルプ(特に針葉樹パルプ)を用いる場合が多い。なお、セルロースのα−セルロース含有量(質量%)は、通常、94〜99(例えば、95〜99)、好ましくは96〜98.5(例えば、97.3〜98)程度であってもよい。
【0062】
(パルプのカルシウム含量)
本発明では、原料パルプとして、カルシウム含量の少ないパルプを用いるのが好ましい。カルシウム含量の少ないパルプを用いることにより、セルロースアシレート中に含まれるカルシウム量を少なくすることができる。例えば好適なパルプのカルシウム含量は20ppm以下(例えば、0.01〜18ppm)であり、好ましくは15ppm以下(例えば、0.01〜15ppm)、さらに好ましくは10ppm以下(例えば、0.05〜10ppm)、特に5ppm以下(例えば、0.1〜5ppm)である。なお、溶解パルプ中のカルシウム含量は、光学的な品質の観点からは、少なければ少ないほど好ましい。
【0063】
本発明者らの検討では、例えば、クラフト法パルプの場合は、蒸解工程で使用する水酸化ナトリウムを回収再生品からバージン品に切り替えることにより、カルシウム含量として3ppm程度の溶解パルプを得ることができた。原料パルプ中のカルシウム量を減少させる方法として(1)元来カルシウム成分が少ないセルロース源(粗リンター及び木材チップ)の種類を限定する方法、(2)パルプの蒸解工程でカルシウムが混入しないようにする方法、(3)前記(1)及び(2)の方法を組み合わせる方法が挙げられる。これらの方法によって、パルプ中のカルシウム含量を減少できる。
【0064】
方法(2)において、パルプの蒸解工程は、溶解パルプの製造における工程である。溶解パルプの製造方法は様々な方法が提案されているが、工業的には、サルファイト法とクラフト法の二種類が使用される。これらの溶解パルプの製造方法については、例えば、「木材化学」(E.スヨストローム著、近藤民雄訳、講談社発行、1986年刊行、104〜147頁)などに詳細に記載された方法などが利用できる。蒸解工程は、いずれの方法であっても行われるが、その主な目的はパルプ原料(木材チップなど)に含まれるリグニンの除去である。サルファイト法では、蒸解液は、亜硫酸及び重亜硫酸塩を含む水溶液が用いられる。重亜硫酸塩の塩基としては、例えば、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム又はアンモニウムが用いられるが、工業的には、主にはカルシウムが用いられる。従って、サルファイト法では、アルカリ土類金属、特にカルシウムの混入が多いため、重亜硫酸塩としてカルシウム塩を使用しないことにより、カルシウムの含有量を低減できる。
【0065】
クラフト法では、蒸解液は、水酸化ナトリウム及び硫化ナトリウムの混合溶液が用いられ、硫化ナトリウムがリグニンと反応してチオリグニンを生成してリグニンを可溶化する。蒸解されたパルプの洗浄液には、チオリグニン、過剰の硫化ナトリウム及び水酸化ナトリウムが含まれている。さらに、リグニンなどの不純物を含むこの洗浄液は、還元性雰囲気下で燃焼され、硫黄分は硫化ナトリウムとなる。一方、他のナトリウム成分は炭酸ナトリウムとなる。硫化ナトリウム及び炭酸ナトリウムは、炉に残る残渣物(sediment)として回収され、水に溶解される。次に、酸化カルシウムか、或いは酸化カルシウムを水に溶解した水酸化カルシウムを残渣溶液に添加する。
【0066】
この操作により、炭酸ナトリウムが苛性化され、水酸化ナトリウム及び炭酸カルシウムになり、残渣溶液は、硫化ナトリウム、水酸化ナトリウム及び炭酸カルシウムを含む溶液となる。この段階で、炭酸カルシウムは、溶解度の限界を超える部分については沈殿し、ろ過工程で溶液と分離される。すなわち、炭酸カルシウムが沈降、ろ過されることにより、蒸解に用いられる水酸化ナトリウムは回収され、炭酸カルシウムと水酸化ナトリウムとが分離される。しかし、この沈殿物のろ過工程では、工業的には完全に両者を分離できないため、従来は、蒸解液へ炭酸カルシウムが微量混入することは許容されていた。このため、脱リグニンの過程で添加する水酸化ナトリウム溶液には、微量の炭酸カルシウムが混入していたのが通常のクラフト法での製造工程である。
【0067】
従って、クラフト法においてカルシウムを減少する方法としては、(1)使用する水酸化ナトリウム及び硫化ナトリウムについて、回収(再生)品を使用しない方法、(2)使用する水酸化ナトリウム及び硫化ナトリウムについて、回収(再生)品の使用割合を減少する方法、(3)炭酸カルシウムと、硫化ナトリウム及び水酸化ナトリウムを含む溶液との濾別において、メンブレンフィルタなどを使用してろ過により完全に固液を分離する方法、(4)炭酸カルシウムと硫化ナトリウム及び水酸化ナトリウムを含む溶液とのろ別において、ろ過工程を多段階に設置して工業的にろ過する方法などが利用できるが、これらの方法に限定されない。
【0068】
なお、これらの方法を用いた場合には、カルシウムを低減したパルプを得るためにパルプの原料として使用する木材チップの種類に制限をする必要がない。このため、パルプの原料に左右されず、従来の知見で目的のフィルムに最適な物性のセルロースアシレートを得るためのパルプに適用することができるため好適である。
【0069】
[パルプ中のカルシウム含量の測定方法]
パルプ中のカルシウム含量の測定は原子吸光法で行う。具体的な測定の前処理手順としては以下の方法を用いる。
【0070】
(1)洗浄した50ml容量の磁性坩堝を2N硝酸水溶液中に1晩浸漬する。
【0071】
(2)2N硝酸に漬けておいた磁性坩堝を純水で洗浄した後、超純水ですすぎ、乾燥器中で乾燥させる。
【0072】
(3)試料2gを磁性坩堝に精秤する。
【0073】
(4)電熱器上で磁性坩堝中の試料を炭化させる。
【0074】
(5)磁性坩堝を電気炉に入れ、500℃で約1時間、600℃で約1.5時間、灰化する。
【0075】
(6)完全に白く灰化したら、電気炉を止め、そのまま炉中で放冷する。
【0076】
(7)0.5N塩酸水溶液を磁性坩堝に10ml入れ、サンドバス上で加熱溶解する。
【0077】
(8)溶液を放冷後、50mlのメスフラスコに洗浄済みのロートを用いて移し、磁性坩堝を超純水で洗いこみメスアップする(塩酸濃度:0.1Nとなる)。
【0078】
(9)標準液として、1000ppm濃度のカルシウム標準液を0.1N塩酸水溶液で希釈し、0.1ppm、0.75ppm、1.5ppmの濃度で調製する。
【0079】
(10)フレーム原子吸光にて測定する。
【0080】
検量線は次の方法で作成した。検量線用の標準液は市販の原子吸光用標準液を0.1Nの塩酸水溶液にて、0.1、0.75、1.5ppm濃度に、希釈調製し使用した。使用した原子吸光装置は、島津製作所(株)製、商品名「AA−680」である。
【0081】
また、セルロースアシレートは、他の金属イオンを含有するが、これらは製造工程で使われる水に関係している。不溶性の核となり得るような成分は少ない方が好ましく、カルシウム以外の鉄、マグネシウム等の金属イオンは、有機の酸性基を含んでいる可能性のあるポリマー分解物等と塩形成することにより不溶物を形成する場合があり、少ないことが好ましい。鉄(Fe)成分については、1ppm以下であることが好ましい。
【0082】
マグネシウム(Mg)成分については、やはり多過ぎると不溶分を生ずるため、0〜70ppmであることが好ましく、特に0〜20ppmであることが好ましい。鉄(Fe)分の含量、マグネシウム(Mg)分含量等の金属成分は、絶乾したセルロースアシレートをマイクロダイジェスト湿式分解装置(硫硝酸分解)、アルカリ溶融で前処理を行った後、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)を用いて分析することができる。
【0083】
本発明に係るセルロースアシレートは、セルロース原料のアシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いて反応が行われる。アシル化剤が酸クロライド(CHCOCl、CCOCl、CCOCl)の場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行われる。具体的には特開平10−45804号に記載の方法を参考にして合成することができる。
【0084】
本発明で用いられるセルロースアシレートのグルコース単位の6位のアシル基の平均置換度が0.5〜0.9であることが好ましい。
【0085】
セルロースアシレートを構成するグルコース単位の6位には、2位及び3位と異なり、反応性の高い一級ヒドロキシル基が存在し、この一級ヒドロキシル基は、硫酸を触媒とするセルロースアシレートの製造過程で硫酸エステルを優先的に形成する。そのため、セルロースのエステル化反応において、触媒硫酸量を増加させることにより、通常のセルロースアシレートに比べて、グルコース単位の6位よりも2位及び3位の平均置換度を高めることができる。更に、必要に応じて、セルロースをトリチル化すると、グルコース単位の6位のヒドロキシル基を選択的に保護できるため、トリチル化により6位のヒドロキシル基を保護し、エステル化した後、トリチル基(保護基)を脱離することにより、グルコース単位の6位よりも2位及び3位の平均置換度を高めることができる。具体的には、特開2005−281645号記載の方法で製造されたセルロースアシレートも好ましく用いることができる。
【0086】
セルロースアシレートの製造法の一例を以下に示すと、セルロース原料として綿化リンター100質量部を解砕し、40質量部の酢酸を添加し、36℃で20分間前処理活性化をした。その後、硫酸8質量部、無水酢酸260質量部、酢酸350質量部を添加し、36℃で120分間エステル化を行った。24%酢酸マグネシウム水溶液11質量部で中和した後、63℃で35分間ケン化熟成し、アセチルセルロースを得た。これを10倍の酢酸水溶液(酢酸:水=1:1(質量比))を用いて、室温で160分間攪拌した後、濾過、乾燥させてアセチル置換度2.75の精製アセチルセルロースを得た。このアセチルセルロースはMnが92000、Mwが156000、Mw/Mnは1.7であった。同様にセルロースアシレートのエステル化条件(温度、時間、攪拌)、加水分解条件を調整することによって置換度、Mw/Mn比の異なるセルロースアシレートを合成することができる。
【0087】
尚、合成されたセルロースアシレートは、精製して低分子量成分を除去したり、未酢化または低酢化度の成分を濾過で取り除くことも好ましく行われる。
【0088】
また、混酸セルロースアシレートの場合には、特開平10−45804号公報に記載の方法で得ることができる。
【0089】
(アクリル系共重合体)
本発明に係る光学フィルムには、アクリル系共重合体(以降、アクリルポリマーともいう)を含有することも好ましい。
【0090】
アクリルポリマーはリタデーションの安定性に効果を発揮する為に、重量平均分子量が500以上30000以下であるアクリルポリマーを含有することが好ましく、中でも分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーと分子内に芳香環を有さず親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーとを共重合して得られた重量平均分子量5000以上30000以下のポリマー、より好ましくは、分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーと分子内に芳香環を有さず親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーとを共重合して得られた重量平均分子量5000以上30000以下のポリマーと、芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーを重合して得られた重量平均分子量500以上3000以下のポリマーとを含有することが好ましい。
【0091】
(紫外線吸収剤)
本発明に係る光学フィルムは、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。
【0092】
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
【0093】
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、である。
【0094】
また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特に特開平6−148430号記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
【0095】
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒或いはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースアシレート中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
【0096】
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、光学フィルムの乾燥膜厚が30〜200μmの場合は、光学フィルムに対して0.5〜10質量%が好ましく、0.6〜4質量%が更に好ましい。
【0097】
(マット剤)
本発明に係る光学フィルムは、マット剤(微粒子)を含有する。該マット剤を含有することにより滑り性、保管安定性が向上する。
【0098】
微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等を挙げることができる。微粒子は珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
【0099】
微粒子の一次粒子の平均粒径は5〜400nmが好ましく、更に好ましいのは10〜300nmである。これらは主に粒径0.05〜0.3μmの2次凝集体として含有されていてもよく、平均粒径100〜400nmの粒子であれば凝集せずに一次粒子として含まれていることも好ましい。光学フィルム中のこれらの微粒子の含有量は0.01〜1質量%であることが好ましく、特に0.05〜0.5質量%が好ましい。共流延法による多層構成の光学フィルムの場合は、表面にこの添加量の微粒子を含有することが好ましい。
【0100】
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0101】
酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0102】
ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0103】
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vが光学フィルムのヘーズを低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましく用いられる。本発明に係る光学フィルムにおいては、少なくとも一方の面の動摩擦係数が0.2〜1.0であることが好ましい。
【0104】
(染料)
本発明に係る光学フィルムには、色味調整のため染料を添加することもできる。例えば、フィルムの黄色味を抑えるために青色染料を添加してもよい。好ましい染料としてはアンスラキノン系染料が挙げられる。
【0105】
アンスラキノン系染料は、アンスラキノンの1位から8位迄の任意の位置に任意の置換基を有することができる。好ましい置換基としてはアニリノ基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、または水素原子が挙げられる。特に特開2001−154017号記載の青色染料、特にアントラキノン系染料を含有することが好ましい。
【0106】
各種添加剤は製膜前のセルロースアシレート含有溶液であるドープにバッチ添加してもよいし、添加剤溶解液を別途用意してインライン添加してもよい。特に微粒子は濾過材への負荷を減らすために、一部または全量をインライン添加することが好ましい。
【0107】
添加剤溶解液をインライン添加する場合は、ドープとの混合性をよくするため、少量のセルロースアシレートに溶解するのが好ましい。好ましいセルロースアシレートの量は、溶剤100質量部に対して1〜10質量部で、より好ましくは、3〜5質量部である。
【0108】
本発明においてインライン添加、混合を行うためには、例えば、スタチックミキサー(東レエンジニアリング製)、SWJ(東レ静止型管内混合器 Hi−Mixer)等のインラインミキサー等が好ましく用いられる。
【0109】
(光学フィルムの製造方法)
次に、本発明の光学フィルムの製造方法について説明する。
【0110】
本発明の光学フィルムの製造方法は、セルロースアシレートとマット剤を含有する光学フィルムの製造方法であって、カルシウム含有量が50ppm以下であるセルロースアシレートと前記一般式(1)で表されるポリエステル系添加剤を含有するウェブを、180℃以上230℃以下で5%〜50%の延伸倍率で延伸することにより、当該延伸後の光学フィルムの23℃・55%RH環境下、波長590nmで測定される、面内リタデーションReが0〜10nmの範囲内に、かつ厚さ方向のリタデーションRthが−5〜20nmの範囲内に調整することを特徴とする。
【0111】
ここでウェブとは、下記ドープを流延ダイより、ステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる支持体上に流延して膜形成したものをいう。
【0112】
本発明に係る光学フィルムは溶液流延法で製造されたフィルムであっても、溶融流延法で製造されたフィルムであっても、どちらも好ましく用いることができる。
【0113】
本発明に係る光学フィルムの溶液流延法による製造は、セルロースアシレート及び前記添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻取る工程により行われる。
【0114】
ドープを調製する工程について述べる。ドープ中のセルロースアシレートの濃度は、濃い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースアシレートの濃度が濃過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
【0115】
ドープで用いられる溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよいが、セルロースアシレートの良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤が多い方がセルロースアシレートの溶解性の点で好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%である。良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースアシレートを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶剤と定義している。そのため、セルロースアシレートの平均酢化度(アセチル基置換度)によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いる時には、セルロースアシレートの酢酸エステル(アセチル基置換度2.4)、セルロースアセテートプロピオネートでは良溶剤になり、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.8)では貧溶剤となる。
【0116】
良溶剤は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライドまたは酢酸メチルが挙げられる。
【0117】
また、貧溶剤は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。また、ドープ中には水が0.01〜2質量%含有していることが好ましい。また、セルロースアシレートの溶解に用いられる溶媒は、フィルム製膜工程で乾燥によりフィルムから除去された溶媒を回収し、これを再利用して用いられる。回収溶剤中に、セルロースアシレートに添加されている添加剤、例えば可塑剤、紫外線吸収剤、ポリマー、モノマー成分などが微量含有されていることもあるが、これらが含まれていても好ましく再利用することができるし、必要であれば精製して再利用することもできる。
【0118】
上記記載のドープを調製する時の、セルロースアシレートの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。また、セルロースアシレートを貧溶剤と混合して湿潤或いは膨潤させた後、更に良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
【0119】
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
【0120】
溶剤を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースアシレートの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃が更に好ましい。また、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。
【0121】
もしくは冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶媒にセルロースアシレートを溶解させることができる。
【0122】
次に、このセルロースアシレート溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生し易いという問題がある。このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材が更に好ましい。
【0123】
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過により、原料のセルロースアシレートに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
【0124】
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間に光学フィルムを置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm以下であることが好ましい。より好ましくは100個/cm以下であり、更に好ましくは50個/m以下であり、更に好ましくは0〜10個/cm以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
【0125】
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶剤の常圧での沸点以上で、且つ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。
【0126】
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
【0127】
ここで、ドープの流延について説明する。
【0128】
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルトもしくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mとすることができる。本発明に係る光学フィルムの幅は好ましくは、1.6〜4mである為、必然的にキャスト幅も広幅となる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤の沸点未満の温度で、温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい支持体温度は0〜40℃であり、5〜30℃が更に好ましい。或いは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
【0129】
光学フィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。
【0130】
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
【0131】
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
尚、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
【0132】
また、光学フィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
【0133】
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールをウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
【0134】
本発明に係る光学フィルムを作製するためには、金属支持体より剥離した直後のウェブの残留溶剤量の多いところで長手方向(MD方向)に延伸を行うことが好ましい。
【0135】
剥離直後にMD方向に延伸するために、剥離張力を210N/m以上で剥離することが好ましく、特に好ましくは220〜300N/mである。
【0136】
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で熱風で行うことが好ましい。
【0137】
ウェブの乾燥工程における乾燥温度は90℃〜200℃が好ましく、より好ましくは110℃〜160℃である。乾燥温度は段階的に高くしていくことが好ましい。
【0138】
好ましい乾燥時間は、乾燥温度にもよるが、5分〜60分が好ましく、10分〜30分がより好ましい。
【0139】
光学フィルムの膜厚は、特に限定はされないが10〜200μmが用いられる。特に膜厚は20〜100μmであることが特に好ましい。更に好ましくは20〜60μmである。
【0140】
本発明に係る光学フィルムは、幅1〜4mのものが用いられる。生産性の観点から幅1.6〜4mのものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.8〜3.6mである。4mを超えると搬送が困難となる。
【0141】
(延伸操作)
本発明に係る光学フィルムは本発明の構成をとり、以下の延伸操作を行うことが好ましい。
【0142】
延伸操作は、フィルムのMD方向(流延方向または長手方向)、及びTD方向(幅手方向)に対して、逐次または同時に延伸することができる。互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、MD方向は0〜20%、TD方向は5〜50%延伸する。
【0143】
特に本発明では、TD方向に5〜50%延伸し、該延伸する際の温度を180℃以上230℃以下にして、延伸後の面内リタデーションReを0〜10nm、厚さ方向のリタデーションRthを−5〜20nmの範囲に調整するとヘーズ安定性が顕著に向上するものである。
【0144】
特に前記ポリエステル系添加剤の存在下で従来よりも高温である180℃以上230℃以下の比較的高い温度で延伸処理すると、ポリエステル系添加剤がマット剤やカルシウムの周りをコーティングし、より凝集が起きにくくなる。この時、ポリエステル系添加剤の分子量が小さい方がより表面コーティング能力が高く、ジカルボン酸基が脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸の混合である方がさらにコーティング能力が高い。
【0145】
更に、延伸開始時の残留溶媒を5質量%未満に保持することは、面内リタデーションRe、Rthを好ましい範囲に調整し易い上に、本発明のヘーズに対する効果をより向上させることができ好ましい。該残留溶媒の測定は前記した通りであり、ここでいう延伸開始時とは、例えばテンターであればクリップでウェブの端を把持し実際に延伸が開始される直前のウェブ中の残留溶媒をいう。延伸開始時の残留溶媒を5質量%未満に保持するには、ウェブを金属支持体から剥離し、搬送する過程において前記乾燥工程を設け溶媒を蒸発させることが好ましい。従来のように5質量%以上の残留溶媒を保持したまま延伸を行うと、面内リタデーションRe、Rthを好ましい範囲に調整することが難しく、ヘーズも上昇し易い。好ましい残留溶媒は4質量%以下であり、更に好ましくは2質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以下にすることである。この操作は生産性を考慮するとオンラインで行うことが好ましい。
【0146】
ウェブを延伸する方法には特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用してMD方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げてMD方向に延伸する方法、同様に横方向に広げてTD方向に延伸する方法、或いはMD/TD方向同時に広げてMD/TD両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれ等の方法は、組み合わせて用いてもよい。また、所謂テンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸を行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
【0147】
製膜工程のこれらの幅保持或いは幅手方向の延伸はテンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
【0148】
テンター内などの製膜工程でのフィルム搬送張力は温度にもよるが、120N/m〜200N/mが好ましく、140N/m〜200N/mが更に好ましい。140N/m〜160N/mが最も好ましい。
【0149】
本発明に係る光学フィルムの23℃55%RH環境で測定する弾性率は、フィルム長手方向(MD)、フィルム幅手方向(TD)共に3.4GPA以上、7.0GPA以下であり、TD弾性率/MD弾性率=1.05〜2.0となるように調整される。延伸操作の安定性、破断等を回避するために、弾性率は好ましくは、3.4GPA以上、4.5GPA以下の範囲にフィルムを構成する材料種及び構成する材料の比率によって調整される。
【0150】
光学フィルムは延伸後、熱固定されることが好ましいが、熱固定はその最終TD方向延伸温度より高温で、Tg−20℃以下の温度範囲内で通常0.5〜300秒間熱固定することが好ましい。この際、2つ以上に分割された領域で温度差が1〜100℃となる範囲で順次昇温しながら熱固定することが好ましい。
【0151】
熱固定されたフィルムは通常Tg以下まで冷却され、フィルム両端のクリップ把持部分をカットし巻き取られる。この際、最終熱固定温度以下、Tg以上の温度範囲内で、TD方向及び/またはMD方向に0.1〜10%弛緩処理することが好ましい。また冷却は、最終熱固定温度からTgまでを、毎秒100℃以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。冷却、弛緩処理する手段は特に限定はなく、従来公知の手段で行えるが、特に複数の温度領域で順次冷却しながらこれらの処理を行うことがフィルムの寸法安定性向上の点で好ましい。尚、冷却速度は、最終熱固定温度をT1、フィルムが最終熱固定温度からTgに達するまでの時間をtとした時、(T1−Tg)/tで求めた値である。
【0152】
これら熱固定条件、冷却、弛緩処理条件のより最適な条件は、フィルムを構成するセルロースアシレートや可塑剤等の添加剤種により異なるので、得られた延伸フィルムの物性を測定し、好ましい特性を有するように適宜調整することにより決定すればよい。
【0153】
本発明に係る光学フィルムの遅相軸または進相軸がフィルム面内に存在し、製膜方向とのなす角をθ1とするとθ1は−1°以上+1°以下であることが好ましく、−0.5°以上+0.5°以下であることがより好ましい。このθ1は配向角として定義でき、θ1の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADHもしくはKOBRA−WR(王子計測機器)を用いて行うことができる。θ1が各々上記関係を満たすことは、表示画像において高い輝度を得ること、光漏れを抑制または防止することに寄与でき、カラー液晶表示装置においては忠実な色再現を得ることに寄与できる。
【0154】
〈物性、光学特性〉
本発明に係る光学フィルムの透湿度は、40℃、90%RHで10〜1200g/m・24hが好ましく、更に20〜1000g/m・24hが好ましく、20〜850g/m・24hが特に好ましい。透湿度はJIS Z 0208に記載の方法に従い測定することができる。
【0155】
本発明に係る光学フィルムの破断伸度は10〜80%であることが好ましく20〜50%であることが更に好ましい。
【0156】
本発明に係る光学フィルムの可視光透過率は90%以上であることが好ましく、93%以上であることが更に好ましい。
【0157】
本発明に係る光学フィルムのヘーズは1%未満であることが好ましく0〜0.1%であることが特に好ましい。
【0158】
本発明の光学フィルムは、下記式で表されるリタデーション値Reが0〜10nm、Rthが−5〜20nmである。
【0159】
式(i) Re=(nx−ny)×d
式(ii) Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
(式中、Reはフィルム面内リタデーション値、Rthはフィルム厚み方向リタデーション値、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの厚さ(nm)を表す。)
上記屈折率は、例えばKOBRA−21ADHもしくはKOBRA−WR(王子計測機器(株))を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmで求める。
【0160】
更に、リタデーション値Reは0〜5nmの範囲であり、且つRthが0〜15nmの範囲にあることが、本発明の効果を高める上でより好ましい。
【0161】
上記リタデーション値Re、Rthを得るには、光学フィルムが本発明の構成をとり、更に好ましい延伸操作条件により屈折率制御を行うことが好ましい。
【0162】
(機能性層)
本発明に係る光学フィルムの製造に際し、延伸の前及び/または後で帯電防止層、ハードコート層、バックコート層、易滑性層、接着層、バリアー層、防眩層、反射防止層、光学補償層等の機能性層を塗設してもよい。
【0163】
《偏光板、液晶表示装置》
本発明の偏光板、それを用いた液晶表示装置について説明する。
【0164】
(偏光板)
本発明の偏光板は、本発明に係る光学フィルムにより、偏光子の少なくとも一方の面を挟持してなる偏光板である。
【0165】
偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明に係る光学フィルムの偏光子側をアルカリ鹸化処理し、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面には該光学フィルムを用いても、また別の光学フィルムを用いてもよい。市販のセルロースアシレートフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC4FR−1、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UE、KC4UE、KC4HR−1、KC4KR−1、KC4UA、KC6UA以上コニカミノルタオプト(株)製)も好ましく用いられる。
【0166】
本発明に係る光学フィルムを光学フィルムAとしたとき、偏光子を介して反対側に用いられる光学フィルムは波長590nmで測定した面内リタデーションReが20〜100nm、Rth=70〜300nmの位相差機能を有する光学フィルムであることが好ましい。
【0167】
該位相差機能を有する光学フィルムについては特に限定されるものではなく、これらは例えば、特開2005−196149号、特開2005−275104号記載の方法で作製することができる。また、ディスコチック液晶などの液晶化合物を配向させて形成した光学異方層を有している光学補償フィルムを兼ねる光学フィルムを用いることも好ましい。例えば、特開2005−275083号記載の方法で光学異方性層を形成することができる。上記光学フィルムは、本発明に係る光学フィルムと組み合わせて使用することによって、安定した視野角拡大効果を有する液晶表示装置を得ることができる。
【0168】
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。偏光子の膜厚は5〜30μmが好ましく、特に10〜20μmであることが好ましい。
【0169】
また、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、けん化度99.0〜99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールも好ましく用いられる。中でも熱水切断温度が66〜73℃であるエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましく用いられる。又、フィルムのTD方向に5cm離れた二点間の熱水切断温度の差が1℃以下であることが、色斑を低減させるうえで更に好ましく、更にフィルムのTD方向に1cm離れた二点間の熱水切断温度の差が0.5℃以下であることが、色斑を低減させるうえで更に好ましい。
【0170】
このエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを用いた偏光子は、偏光性能及び耐久性能に優れているうえに、色斑が少なく、大型液晶表示装置に特に好ましく用いられる。
【0171】
以上のようにして得られた偏光子は、通常、その両面または片面に保護フィルムが貼合されて偏光板として使用される。貼合する際に用いられる接着剤としては、PVA系の接着剤やウレタン系の接着剤などを挙げることができるが、中でもPVA系の接着剤が好ましく用いられる。
【0172】
(液晶表示装置)
本発明の偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた液晶表示装置を作製することができる。本発明に係る光学フィルムはSTN、TN、OCB、HAN、VA(MVA、PVA)、IPSなどの各種駆動方式の液晶表示装置に用いることができる。特に好ましくはVA(MVA、PVA)型、及びIPS型液晶表示装置である。
【0173】
特に本発明に係る光学フィルムを用いた偏光板は大画面の液晶表示装置に使用した場合に優れた正面コントラスト性を付与することができる。
【0174】
画面が17型以上、特に画面が30型以上の大画面の液晶表示装置では、本発明の効果以外にも、色ムラや波打ちムラ等の歪みがないため、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。
【実施例】
【0175】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0176】
実施例1
<セルロースアシレートの作製>
原料パルプ(αセルロース93%以上、含水率8.5%、パルプ中のカルシウム含有量25ppm:日本製紙(株)製)に酢酸50質量部を加え、1時間活性化処理を行った。
【0177】
上記含酢酸パルプを反応器に入れ、更に反応器に無水酢酸500質量部、硫酸12質量部を投入し室温から徐々に40℃まで温度を上昇させ、40℃に保温しながら1時間保温し、エステル化反応を進行させた。
【0178】
次いで1次中和工程で30%酢酸水溶液250部を加え中和した後、反応停止のため、硫酸を中和するために、30質量%の酢酸マグネシウム水溶液を15質量部を加え中和した後、熟成工程にて残った無水カルボン酸類を加水分解するために、80質量%の酢酸水溶液を150質量部入れ、60℃に保持し、1時間撹拌させた。
【0179】
その後反応停止のために、硫酸を中和するため、30質量%の酢酸マグネシウム水溶液を15質量部加えた。
【0180】
熟成反応停止後のドープに親水性基を持つ平均粒径30μmの親水性シリカ粒子を投入し、5分間撹拌した後、濾過工程においてガラスフィルターで酢酸ドープを濾過した。
【0181】
次に沈殿工程で析出したセルロースアシレートを濾別し、50℃の温水で5回洗浄し、残っている酢酸水溶液を溶出させた後、70℃で3時間乾燥させ、アセチル基置換度2.89、総アシル基置換度2.89のトリアセチルセルロースを得た。重量平均分子量(Mw)は下記測定法を用いて測定した結果19万であった。
【0182】
(重量平均分子量(Mw)の測定)
重量平均分子量Mwは、市販のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。
【0183】
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用する)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500の13サンプルによる校正曲線を使用する。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
【0184】
(カルシウム量)
上記作製したセルロースアシレート試料3.0gをルツボに採り、電熱器上で炭化した後、電気炉に入れて800±10℃で約2時間灰化する。蓋をして放冷後、0.07%塩酸溶液25mlを添加し、ホットプレート上で加温溶解する。放冷後、200mlナルゲルフラスコに溶液を移す。蒸留水でルツボを洗浄し、その液もナルゲルフラスコに移し、蒸留水を標線まで注ぐ。
【0185】
これを検液として、原子吸光光度計を用いて吸光度を測定し、試料中のCa量を求めた。その結果、カルシウム量は25ppmであった。
【0186】
同様にして、カルシウム含有量の異なる原料パルプ、添加剤の種類、量、エステル化反応条件、水質を調整して、表2、表3記載のカルシウム含有量の異なるトリアセチルセルロースを作製した。
【0187】
<一般式(1)で表されるポリエステル系添加剤の調製>
表1記載のポリエステル系添加剤を使用した。また、No.1については反応時間を調整して、数平均分子量の異なるNo.1−1〜1−8のポリエステル系添加剤を調製した。数平均分子量は前述のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。
【0188】
<光学フィルムT1の作製>
(二酸化珪素分散液)
アエロジルR812(日本アエロジル(株)製) 10質量部
エタノール 90質量部
以上をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。二酸化珪素分散液に88質量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合し、二酸化珪素分散希釈液を作製した。微粒子分散希釈液濾過器(アドバンテック東洋(株):ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1N)で濾過した。
【0189】
(セルロースアシレートのドープの作製)
TAC:トリアセチルセルロース(アセチル基置換度2.89、Mw=190000、Ca含有量25ppm) 100質量部
チヌビン928(BASFジャパン(株)製) 3質量部
一般式(1)で表されるポリエステル系添加剤、添加剤No.1−1
10質量部
メチレンクロライド 700質量部
エタノール 40質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、濾過した。これに二酸化珪素分散希釈液を4質量部、撹拌しながら加えて、更に30分間撹拌した。
【0190】
(製膜・延伸・乾燥)
次いで、ベルト流延装置を用い、温度35℃、2m幅でステンレスバンド支持体に均一にセルロースアシレートのドープを流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100質量%になるまで溶剤を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。剥離した光学フィルムのウェブを50℃で乾燥しながら搬送させ、スリットし、その後、テンターでTD方向(フィルムの搬送方向と直交する方向)に190℃の温度条件下、10%の延伸倍率で延伸し、160℃の乾燥温度で乾燥させた。このときテンターで延伸を始めたときの残留溶剤量は4.5%であった。その後、120℃の乾燥装置内を多数のロールで搬送させながら15分間乾燥させた後、スリットし、フィルム両端に幅15mm、高さ10μmのナーリング加工を施し、巻芯に巻き取り、光学フィルムT1を得た。フィルムの残留溶剤量は0.1%未満であり、膜厚は60μm、幅2m、巻長さは6000mであった。
【0191】
尚、ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出されるMD方向の延伸倍率は1.05倍であった。
【0192】
<光学フィルムT2〜T36の作製>
原料パルプを変更してCa含有量を調整したセルロースアシレート、ポリエステル系添加剤、延伸条件(倍率、温度)、膜厚、を変えた以外は光学フィルムT1と同様にして、表2、表3に記載の光学フィルムT2〜T36を作製した。尚、膜厚、製品幅は設定の値になるように流延時の幅、膜厚を適宜調整して行った。
【0193】
(ポリエステル系添加剤以外の添加剤)
BzSc:糖エステル化合物、ベンジルサッカロース
EPEG:エチルフタリルエチルグリコレート
TPP:トリフェニルホスフェート
BDP:ビフェニルジフェニルホスフェート
表2、表3中「TPP,BDP=5,5」との記載は、可塑剤としてTPPとBDPを各5質量部づつドープに添加したことを表す。
【0194】
表2、表3において、投入後ヘーズとは、−35℃30分、90℃30分の環境放置を1サイクルとし、100サイクル実施後のヘーズ値であり、Δヘーズは100サイクル前後のヘーズ値の差である。
【0195】
<偏光板の作製>
偏光板は一般的な方法で作製した。上記作製した光学フィルムT1〜T36の偏光子側をアルカリ鹸化処理し、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせた。
【0196】
表2、表3において、パネルコントラストとは、上記作製した偏光板をSONY製40型ディスプレイBRAVIA X1の予め貼合されていたパネル前側の偏光板を剥がして、上記作製した偏光板をそれぞれ液晶セルのガラス面の前面に貼合した。
【0197】
23℃55%RHの環境で、液晶表示装置のバックライトを1時間連続点灯した後、パネルの正面コントラスト測定を行った。測定にはコニカミノルタセンシング(株)分光輝度色度計CS−2000を用いて、液晶表示装置で白表示と黒表示の表示画面の法線方向からの輝度を測定し、その比を正面コントラストとした。
【0198】
正面コントラスト=(表示装置の法線方向から測定した白表示の輝度)/(表示装置の法線方向から測定した黒表示の輝度)
液晶表示装置の任意の5点の正面コントラストを測定して平均をとった。
【0199】
【表2】

【0200】
【表3】

【0201】
表2、表3から明らかなように、本発明に係る光学フィルムは、強制劣化によるヘーズの劣化の少ない優れた光学フィルムであることが分かる。また、ヘーズが改善されていることから、偏光板に用いた時にパネルコントラストに優れていることが分かる。
【0202】
またポリエステル系添加剤の数平均分子量は、300〜700の範囲が好ましく、300〜500の範囲がより好ましいことが分かる。
【0203】
実施例2
実施例1と同様にして、作製した光学フィルムを偏光子保護フィルムとして用いて、表4の組み合わせで偏光板H1〜H8の作製を行った。KC8UX、KC4UY、KC4UA、KC6UAは、いずれもコニカミノルタタック(コニカミノルタオプト(株)製)である。
【0204】
上記方法により得られた偏光板を500mm四方に裁断し、ライトボックス上でクロスニコルとし、偏光度ムラを目視評価し、ムラが無かったものを○、ムラの認められたものを×とし表4に示した。
【0205】
【表4】

【0206】
表4から本発明に係る光学フィルムを用いた偏光板はいずれもムラがないことが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースアシレートとマット剤を含有する光学フィルムの製造方法であって、カルシウム含有量が50ppm以下であるセルロースアシレートと下記一般式(1)で表されるポリエステル系添加剤を含有するウェブを、180℃以上230℃以下で5%〜50%の延伸倍率で延伸することにより、当該延伸後の光学フィルムの23℃・55%RH環境下、波長590nmで測定される、面内リタデーションReが0〜10nmの範囲内に、かつ厚さ方向のリタデーションRthが−5〜20nmの範囲内に調整することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
一般式(1) B−(G−A)n−G−B
式中、Bはモノカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のジカルボン酸残基または炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、またnは0以上の整数を表し、B−G−Bの構成も含む。
【請求項2】
前記ポリエステル系添加剤の数平均分子量が300以上700以下であることを特徴とする請求項1記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記ポリエステル系添加剤のジカルボン酸が、少なくとも一つの脂肪族ジカルボン酸と少なくとも一つの芳香族ジカルボン酸の混合物であることを特徴とする請求項1または2記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記一般式(1)のBで表される末端封止基が芳香族基であることを特徴とする請求項1〜3記載のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法によって製造された光学フィルムを用いたことを特徴とする偏光板。

【公開番号】特開2012−48214(P2012−48214A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152566(P2011−152566)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】