説明

光学フィルム

【課題】十分な拡散効果により干渉縞の発生がなく、ウエットアウトやカットオフが生じにくく、また拡散シートや拡散マット処理等の工数やコストを必要とせずに表示品位を保つことのできる光学フィルムを提供する。
【解決手段】表側に平面の基材面を有するフィルム基材(20)上に設けられ、所定の稜線方向に伸びる稜線(11L)を有した構造体を備える。構造体は、稜線(11L)が正負均等に所定範囲の傾斜勾配にて高さが変化することでピーク部(11p)、並びに沈み部(11d)を有しながら伸びると共に、稜線(11L)の両側の表面にそれぞれ、全体の平均勾配角度がプラスマイナス10°以上の拡散面(12f)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
液晶表示ユニット等の光学表示機器において液晶パネルの上下に積層して使用される光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示ユニット等の光学表示機器においては、液晶パネルの上下に光学フィルムを複数枚積層して使用される。従来の光学フィルムとして、長さに沿って高さを変化する構造体を備え、その変動は、構造体の公称高さの40倍未満の公称周期を備える光学フィルムが開示される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2002−504698
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の光学フィルムはレンチキュラー高さに変動を設けているものの、変動が不十分で拡散効果のないものであった。このため、積層する光学フィルム間あるいは液晶パネルとの間で干渉縞の発生やウエットアウトの問題、あるいは視野角内における輝度の急激な変化により発生するカットオフの問題があった。また表示パネルの光透過性基本単位のサイズとレンズピッチの周期性の関係により発生するモアレ等の表示品位低下の問題があった。
【0005】
また従来の液晶表示ユニット等の光学表示機器においては、光学フィルムの上部構造表面の保護シートとして拡散シートを用いたり、構造面の反対側の面に拡散マット処理を施したりする必要があった。しかしこれらは別部材の形成やマット処理加工のための工数やコストを要するものであった。
【0006】
そこで本発明は、十分な拡散効果により干渉縞の発生がなく、ウエットアウトやカットオフが生じにくく、また拡散シートや拡散マット処理等の工数やコストを必要とせずに表示品位を保つことのできる光学フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく本発明では下記(1)〜(6)の手段を講じている。
【0008】
(1)本発明の光学フィルムは、
表側に平面の基材面を有するフィルム基材(20)と、
前記基材面上に設けられ、所定の稜線方向に伸びる稜線(11L)を一つ以上有した構造体(10)と、を備えた光透過性のフィルム体からなり、
前記構造体(10)は、稜線(11L)が、正負均等に±3°以上±40°以内の傾斜勾配にて高さが変化することでピーク部(11p)、並びに沈み部(11d)を有しながら伸びると共に、稜線(11L)の両側の表面にそれぞれ、全体の平均勾配角θが±10°以上の拡散面(12f)を有することを特徴とする。
【0009】
上記のように、変動の各周期における高さの変化の変動幅がランダムであると、周期的な模様の表出が軽減される。さらにこの連続曲面は、稜線方向に沿う垂直断面視にて周期及び振幅幅が変動するサインカーブからなることが好ましい。
【0010】
(2)前記光学フィルムにおいて、構造体の拡散面(12f)は、平均勾配角θが±5°以上であることが好ましい。
【0011】
(3)前記いずれかの光学フィルムにおいて、構造体(10)の拡散面(12f)はそれぞれ、稜線方向に沿って、高さの連続変化又は稜線方向の連続変化をもって非周期的に変動する連続曲面からなることが好ましい。この場合、拡散面の稜線が凸状湾曲縁にて形成されることで、前記拡散面の拡散効果は向上することとなる。さらにこの山形形状の弯曲は所定径の真円弧からなることが好ましい。また更に、前記稜線(11L)と平行な拡散縁ライン(12L)が、正負均等に±3°以上±40°以内の傾斜勾配にて高さが変化することでピーク部(21p)、並びに沈み部(21d)を有しながら伸びることが好ましい。
【0012】
(4)前記いずれかの光学フィルムにおいて、構造体(10)は、頂部(11)の両側の拡散面(12f)の先側に、稜線(11L)と並走する谷部ライン(13L)を有し、
二つ以上の構造体(10)が、それぞれの谷部ライン(13L)を隣接境界として幅方向に隣接してフィルム基材(20)上に形成され、
この谷部ライン(13L)は高さの連続変化又は稜線方向の連続変化をもって非周期的に変動する連続曲線からなることが好ましい。
【0013】
(5)前記(4)の光学フィルムにおいて、谷部ライン(13L)は、正負均等に±3°以上±40°以内の傾斜勾配にて高さが変化することでピーク部(31p)、並びに沈み部(31d)を有しながら伸びることが好ましい。
【0014】
(6)前記(1)〜(5)のいずれかの光学フィルムにおいて、稜線方向と交わる断面視にて、各頂部11が凸状の曲線縁すなわちアール状の曲線で構成されることが好ましい。このような場合、構造物の稜線方向を横断する方向の断面視にて、各構造体(10)は山形形状をなすものであり、この山形形状の頂部が先尖することなくアール状に形成される。さらにいえば頂部は、例えば図8のように、頂部11の伸長方向と直交する鉛直方向断面(横断面)視にて、真円弧又は楕円円弧からなるアール状の凸状曲線縁を備えることが好ましい。このようなものであれば拡散面12fの光拡散効果がより向上する。
【0015】
また、上記いずれかの光学フィルムにおいて、拡散面が周期的な模様となるのを軽減するため、拡散面の周期と変動幅の両方又は少なくともいずれかはランダムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は光学フィルムの構造体表面に広範囲の拡散に十分な変動の勾配を持つ不規則な高さの変動を付与することにより光学フィルム構造面よりの出射光および構造面への入射光並びにその反射光を視野角内に於いて広範囲に拡散させ干渉縞、ウエットアウト並びにカットオフやモアレ発生等、表示品位低下の問題の低減に加え構造体表面の拡散効果により微小異物やスクラッチ傷等、構造体の微小欠陥の隠ぺい性を向上させるものである。また、これまで構造体表面の保護シートとして拡散シートを用いるか、或いは構造面の反対側の面に拡散マット処理をしてきたが、これを必要としない低コスト化にも寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1の光学フィルムの斜視図(a)、平面図(b)、及び平面図のA−A線幅方向一部断面図(c)。
【図2】実施例1の光学フィルムの伸長方向に沿う変動線(稜線11L及び拡散伸長線12L)の説明図。
【図3】図2の変動線における勾配角θの説明図。
【図4】図2の変動線における勾配角θの採り方を規定する説明図。
【図5】実施例の光学フィルム1を含むフラットパネルディスプレイの積層構造の分解説明図。
【図6】図5に説明するフラットパネルディスプレイの積層構造の一部断面説明図。
【図7】発散角γを持った光源による構造体10への入射及び出射光の拡散角α´の説明図。
【図8】実施例2の光学フィルムの幅方向一部断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の光学フィルムは基本的に、図1に示すように、フィルム基材20上に複数の所定の平面稜線方向に伸びる断面山形形状の構造体10を備えた光透過性のフィルム体からなる。フィルム基材2においては複数の構造体10が一面に、対向面3が他面に備えられた構成となる。
【0019】
(構造体10)
各構造体10は稜線方向に沿って伸びる最大高さ部である頂部11と、その両側にそれぞれ連なる構造面12fと、その先の底部13とを有する。この構造体10は、稜線方向と交わる方向を幅方向としたとき、幅方向に沿う断面形状、すなわち横断面形状が凸状のものとなっている。この凸状の横断面形状において、前記構造体10の頂部11の両側の表面にそれぞれ拡散面12fが形成され、その各先部に谷部13が形成される。
【0020】
それぞれの構造体10の幅すなわち両側の谷部13間の距離は、稜線方向に沿って等しく設定され、隣り合う構造体同士が谷部13で連接される。稜線11Lは平面視にて所定方向に直線的に伸長して配置され、隣り合う構造体10同士の稜線1Lが等間隔に並走する。本願発明の特徴として稜線11Lは伸長方向に沿う断面視にてランダムに高さが変化し、ピーク部11pと沈み部11dを有する。すなわち頂部11の高さの変化である勾配11θが、前記頂部11の稜線11Lに設けられる。さらに好ましくは、前記勾配が、頂部11の稜線11L及び次述する拡散面12fの双方に設けられる。
【0021】
(頂部11)
各頂部11は、稜線方向に対し正負均等で±3°以上±40°以内の傾斜勾配にて高さが変化しながら伸びる。構造体10の頂部11が稜線方向に伸びる(すなわち連続的に連なる)ことで頂部ラインである稜線11Lが形成される。稜線は平面視で直線となっており、この平面視の稜線11Lの直線状の延伸方向が稜線方向となっている。なお稜線方向は直線に限らず、左右いずれかまたは両側交互に変動する湾曲曲線でもよい。頂部11が連なってなる稜線11Lは、高さの連続変化又は稜線方向の連続変化をもって非周期的に変動する連続曲線からなることが好ましい。さらにこの連続曲線は、稜線方向に沿う垂直断面視にて周期及び振幅幅が変動するサインカーブからなることが好ましい。
【0022】
(拡散面12f)
拡散面12fは、頂部の両側の表面に設けられ、それぞれの上側辺にある頂部11と共に、高さの連続変化又は稜線方向の連続変化をもって非周期的に変動する変動面からなる。前記稜線方向に沿う垂直断面視において、頂部の両側がそれぞれ凸状湾曲した山形形状からなる。全体の平均勾配角θが±10°以上、好ましくは±5°以上となっている。構造体10の伸長方向に沿う断面で見たとき、拡散面12f上の幅方向任意位置における拡散伸長線12Lは、前記稜線11Lと平行してランダムに高さが変化し、ピーク部12pと沈み部12dを有し(図6)、また拡散面12fの伸長方向に沿う高さの変化である勾配12θが、前記頂部11の稜線11Lと平行して同一曲線によって設けられる。このとき拡散伸長線12Lのピーク部12pと沈み部12dは、稜線11Lのピーク部11P、沈み部11dと同じ伸長位置に配される。拡散効果の点から、拡散稜線12Lは真円弧の凸状湾曲縁にて形成されることが好ましい。
【0023】
(他の変動形態)
また拡散面12fの他の形態として、変動の各周期における高さの変化の変動幅はランダムであり、或いは/及び拡散面の変動の各周期はランダムであって、拡散伸長線12Lが、頂部11の稜線11Lと異なる変動曲線からなるものとすることができる。このとき拡散伸長線12Lのピーク部12pと沈み部12dは、稜線11Lのピーク部11p、沈み部11dと必ずしも同じ伸長位置とはならない。
【0024】
このような形態例として例えば、構造体10の頂部11からの幅方向距離に応じて、拡散伸長線12Lのピーク部12pと沈み部12dの伸長方向位置が稜線11Lのピーク部11p、沈み部11dの伸長方向位置が徐々に大きくずれるものとすることができる。このずれ方は伸長方向の各位置において一定ではなく、ある伸長位置では他の伸長方向位置よりも大きくずれて、拡散伸長線12Lのピーク部12pと沈み部12dの隣接間隔が稜線11Lのピーク部11p、沈み部11dの間隔よりも広がる個所、並びに、逆に拡散伸長線12Lのピーク部12pと沈み部12dの隣接間隔が稜線11Lのピーク部11p、沈み部11dの間隔よりも狭まる個所、という2種類の個所を交互に或いはランダムな組み合わせとして有していてもよい。
【0025】
(谷部13)
構造体10は、頂部11の両側の拡散面12fの先側に谷部13を有しており、各構造体10の谷部同士が幅方向に隣接してフィルム基材20上に形成される。この谷部13が稜線11Lと平行に伸びることで、谷部ライン13Lが形成される。実施例の谷部ライン13Lは平面視にて直線状である(図1b)が、一方向または両方向に交互に湾曲する曲線状のものでもよい。谷部ライン13Lは稜線11Lと同様、高さの連続変化又は稜線方向の連続変化をもって非周期的に変動する連続曲線からなる。
【0026】
(構造体10の幅方向隣接)
そして二つ以上の構造体10が、それぞれ共通する谷部ラインで13L連接され、谷部13を隣接境界として、フィルム基材20上へ、稜線方向と交わる方向すなわち幅方向に隣接して並ぶ。これによって幅方向へ連続した凹凸形状の横断面形状が形成される。凹凸形状の高さ方向最高部が頂部11となり、最低部が谷部13となる。横断面の幅方向に沿って、頂部11と谷部13とが交互に連続的に表れる。横断面視にてこの頂部11と谷部13の間に表れる境界線が、拡散面12fの横断面縁である。
【0027】
(フラットパネルディスプレイにおける構成)
フラットパネルディスプレイにおいて、上記光学フィルム1は、図5に示すように2枚が重ねられ、それぞれの光学フィルム1の稜線11L同士が、例えば平面視縦方向と平面視横方向の組み合わせのように、平面視似て直交するように配置される。2枚の光学フィルム1の下方へは順に下拡散シート7が配され、さらに下方に導光板8が配される。導光板8の側部にはCCFTまたはLEDの光源9が配置され、導光板8側へ発光した光が上方へ照射される。
【0028】
一方、2枚の光学フィルム1の上方へは順に裏偏光板4、液晶セルユニット5、及び表偏光板6が配され、前記下拡散シート7と共に、互いに間隙を有して或いは有さずに重ねられ、導光板8上に積層構成される。図6に示すように、液晶セルユニット5は、下方から上方へ順に、裏偏光板2と密着形成される下部の下基板ガラス51と、フィルター部52m及び各画素のセル部(第一セル部52r、第二セル部52g、第三セル部52b)が平面内に形成された液晶セル52と、液晶セル52の上面に密着形成された上基板ガラス53とから構成され、上基板ガラス53の上面に表偏光板6が密着形成される。また図6に示すように、光学フィルム1の稜線11Lとその上方の裏偏光板4との間には空隙41Gが設けられ、下基板ガラス51上面と液晶セル52下面との間には液晶セルギャップ50Gが設けられる。
【実施例1】
【0029】
実施例としては構造体10の頂部11の稜線11Lおよびこれから両側へ下方傾斜して連なる構造面12fの、伸長方向に沿った正面視断面形状として、2等辺プリズムレンズに変動の中心高さhcに対し±h/2の変動振幅をもつ期間Pの図2の正弦波状変動線の数式1を加えた。
【0030】
【数1】

【0031】
変動面の勾配は下記数式2のようになり、これは図3に示すように、レンズの長さ方向に0から±π・h/Pの連続した勾配面をもつ。
【0032】
【数2】

【0033】
即ち振幅の中心高さhcにおける水平線を基準とした勾配角θ(図4に示される水平方向からの傾斜角)は、次の数式3のようになる。
【0034】
【数3】

【0035】
頂部11の稜線11L、及び拡散面12fの拡散伸長線12Lがこの勾配角θの変化を有する線縁で構成されるものであれば、レンズの長さ方向に0から±θの連続した勾配角θをもつ変動面となる。そして勾配角θは変動幅(振幅)と変動期間によって決まる。勾配角θが大きいほど広範囲に拡散する。
【0036】
また、変動面よりの出射光の拡散角αは、構造体の空気に対する屈折率をnとすると下記数式4のようになる。
【0037】
【数4】

【0038】
ただし、勾配角θは変動面の全反射角を超えないθ<sin−1(1/n)を満たす。例えばn=1.57の場合、θ<40℃である。
変動面である拡散面12fから照射面である液晶セル52下面までの実効距離をLeとしたとき、拡散面12fからの出射光の、液晶セル52下面での拡散範囲Dcは以下数式5で表される。
【0039】
【数5】

【0040】
標準的なディスプレイの画角範囲で視力 1 の人間が識別できる間隔を D=0.12mmとすると、拡散範囲が人間の目の識別間隔以上であれば十分に拡散された照射光とすることができ、以下数式6により数式7が成り立つ。
【0041】
【数6】

【0042】
【数7】

【0043】
実際には図7に示すように、構造体10に入射する光源側の光は完全な平行光でなく発散角γを持っている。また発散角γに対する輝度変化および変動面による拡散角に対する輝度変化はガウス分布にて近似でき、その輝度半値幅角度をそれぞれ2γ、2αとすると、発散角を持つ光源の変動面による拡散角α´は以下数式8のようになる。
【0044】
【数8】

【0045】
数式5より以下数式9が導かれる。
【0046】
【数9】

【0047】
変動面である拡散面12f及び稜線11Lの勾配角が数式7で得られる拡散角度を満たすものであれば、十分な拡散効果が得られる。
【0048】
フラットパネルディスプレイにおいて、上記光学フィルム1は、図5に示すような構成で積層される。このとき図6に示すように、拡散面12fから照射面である液晶セル52下面までの実効距離Leはガラス基板53の厚さを0.5mm、偏光板6の厚さを0.3mmとし、液晶セルギャップ50Gおよび変動面である稜線11Lと裏偏光板4の間の空隙41Gを無視する。また基板ガラス51,53および裏偏光板4の屈折率を約1.5とすると、構造体10の変動面である拡散面52fから液晶セル52の下面までの実効距離Le(図6)は以下数式10のとおり、0.53mmとなる。構造体10の変動面である拡散面12f及び稜線11Lの拡散角度α>6.4°で勾配角θ>11°となる。
【0049】
【数10】





【0050】
以上のことを検証するためピエゾ振動子による高速工具装置によって切削バイトの先端を高速に正弦波振動させてロール状金型を切削し、PET面上に樹脂成型し、以下の変動面をもつ2等辺プリズムレンズを制作した。
【実施例2】
【0051】
実施例2の頂部11は、例えば図8のように、頂部11の伸長方向と直交する鉛直方向断面(横断面)視にて、所定の弦長の真円弧からなるアール状の凸状曲線縁を備えており、拡散面12fの光拡散効果がより向上したものとなっている。この断面円弧状に構成された頂部11の幅方向中央が稜線11Lとなる。特記しない他の構成は実施例1と同様である。
【0052】
(実施例2の光学フィルムの検証)
本発明の効果を検証するためピエゾ振動子による高速工具装置によって切削バイトの先端を高速に正弦波振動させてロール状金型を切削し、PET面上に樹脂成型し、以下の変動面である拡散面12f及び稜線11Lをもつ2等辺プリズムレンズを制作した。
【0053】
レンズのy軸方向のピッチは25μm、2等辺プリズムの頂角は88°、頂部11のR=1.5μm、弦長2.2μm(図8)、x軸方向の各変動期間は63μmから190μmで不規則に変化し、平均期間115μm、z軸方向の変動の中心高さhc=10.8μm、変動振幅は7μm(±3.5μm)の正弦波形状に変動する拡散面12fを持っている。
【0054】
ランダム変動期間における拡散面12fの拡散角度αは±3.7°から±11.7°、平均拡散角度α=±6.2°、ランダム変動面の勾配角θは±6.6°から±19.2°、平均勾配角θ=±10.8°であった。
【0055】
上記実施例2の光学フィルムの製作例を図5,6に示す構成のバックライトユニットに組み込んで拡散性を確認した。具体的には干渉縞、密着性、カットオフ等の解消やモアレ現象の低減とともに欠陥や異物隠ぺい性について、下記比較例1,2と比較したところ、表1に示すような予想以上の満足すべき結果が得られた。なお評価観察は、表示コントラスト比10:1以上の上下左右±45°の全視野角内において明瞭に視認できるものは×、改善されているものの視認されるものは△、視認できないレベルにまで改善されているものを○で評価した。
比較例1:頂角90°の変動する稜線11Lを有し、頂部11がアール状に形成されていない2等辺プリズムレンズ
比較例2:頂角90°の変動面を有さない2等辺プリズムレンズ
【0056】
【表1】

【0057】
本発明の光学フィルムは上述の実施例に限定されること無く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の要素変更、組み合わせ、構成置換が可能である。例えば稜線11Lとして規定する勾配角θを拡散伸張線12Lとしてのみ規定してもよく、また谷部ライン13Lとしてのみ規定しても良い。またこれら稜線11L、拡散伸張線12L、谷部ライン13Lがこの順に変動周期及び振幅が徐々に大きくなるように設定するなど、様々な組み合わせの設定が可能である。
【符号の説明】
【0058】
20 フィルム基材
11L 稜線
10 構造体
11p、21p、31p ピーク部
11d、21d、31d 沈み部
12f 拡散面
12L 拡散縁ライン(拡散伸張線)
13L 谷部ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側に基材面を有するフィルム基材(20)と、
前記基材面上に設けられ、所定の稜線方向に伸びる稜線(11L)を一つ以上有した構造体(10)と、を備えた光透過性のフィルム体からなり、
前記構造体(10)は、稜線(11L)が、正負均等に±3°以上±40°以内の傾斜勾配にて高さが変化することでピーク部(11p)、並びに沈み部(11d)を有しながら伸びると共に、稜線(11L)の両側の表面にそれぞれ、全体の平均勾配角度が±10°以上の拡散面(12f)を有することを特徴とする光学フィルム。
【請求項2】
構造体の拡散面(12f)は、平均勾配角度が±5°以上である請求項1記載の光学フィルム。
【請求項3】
構造体(10)の拡散面(12f)はそれぞれ、稜線方向に沿って、高さの連続変化又は稜線方向の連続変化をもって非周期的に変動する連続曲面からなり、
前記稜線(11L)と平行な拡散縁ライン(12L)が、正負均等に±3°以上±40°以内の傾斜勾配にて高さが変化することでピーク部(12p)、並びに沈み部(12d)を有しながら伸びる請請求項1又は2記載の光学フィルム。
【請求項4】
構造体(10)は、頂部(11)の両側の拡散面(12f)の先側に、稜線(11L)と並走する谷部ライン(13L)を有し、
二つ以上の構造体(10)が、それぞれの谷部ライン(13L)を隣接境界として幅方向に隣接してフィルム基材(20)上に形成され、
この谷部ライン(13L)は高さの連続変化又は稜線方向の連続変化をもって非周期的に変動する連続曲線からなる請求項1乃至3のいずれか記載の光学フィルム。
【請求項5】
谷部ライン(13L)は、正負均等に±3°以上±40°以内の傾斜勾配にて高さが変化することでピーク部(13p)、並びに沈み部(13d)を有しながら伸びる請求項4記載の光学フィルム。
【請求項6】
稜線方向と交わる横断面視にて、各頂部(10)が凸状の曲線縁で構成される請求項1乃至5のいずれかに記載の光学フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−64986(P2011−64986A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216291(P2009−216291)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(591018660)サンテックオプト株式会社 (11)
【Fターム(参考)】