説明

光学フィルム

【課題】液晶表示装置などの画像表示装置に有用なセルロース誘導体を用いた光学フィルム、これを用いた位相差フィルム、偏光板及びこれらフィルムを用いることにより視野角特性などに優れる液晶表示装置を提供する。
【解決手段】セルロースの水酸基を2種以上の置換基で置換したセルロース樹脂を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置などの画像表示装置に有用なセルロース誘導体を用いた光学フィルムに関する。また、前記光学フィルムを用いた位相差フィルム、偏光板及びこれらフィルムを用いることにより視野角特性などに優れる液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースアセテート(Cellulose acetate)フィルムは、光学的等方性を要求するものに主に使用される。しかし、液晶表示装置などの光学補償シート(sheet)、位相差フィルム(film)には、高い光学的異方性が要求され、これを実現するために、フィルムの延長処理またはレターデーション調節剤を添加する方法を用いている。
【0003】
しかし、セルロースアセテートは延長しにくい素材であって、延長のみでは位相差フィルムが要求する高いレターデーションを果たすことができず、そのため、レターデーション調節剤の添加が必要である。
【0004】
しかし、レターデーション調節剤を添加する場合 、ブリーディング(bleeding)のような問題点が発生する恐れがあり、これを改善するための方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、添加剤を添加せず、樹脂自体によりレターデーションを調節できる光学フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記一般式1のような繰り返し単位を有するセルロースの水酸基のうち一部水素を2種以上の置換基で置換したセルロースエステル樹脂をベース樹脂として使用する光学フィルムに関する。
[一般式1]


【0007】
具体的に、本発明は、セルロースの水酸基のうち一部水素をアシル基、特に、アセチル基で置換し、前記アシル基が置換されていない残りの水酸基のうち一部水素をアシル基を除いた1種または2種以上の他の置換基で置換することにより、最終的に置換基が2種以上のセルロースエステル樹脂を使用した光学フィルムに関する。
【0008】
より具体的に本発明は、セルロースの水酸基(−OH)のうち一部水素を下記化学式1のアシル基及び下記化学式2から選択される1種または2種以上の置換基で置換したセルロースエステル樹脂をベース樹脂として使用した光学フィルムであって、前記アシル基の置換度は2〜2.9であり、前記アシル基を除いた置換基の総置換度が0.01〜1.0である光学フィルムに関する。
【0009】
[化学式1]
−CO−R
【0010】
[化学式2]
−X−R
【0011】
(前記Xは、化学結合であるか、−O−、−CO−、−CS−、−S−、−SO−、−SO−、−PR11−、−POR12−、−NR13−から選択される何れか一つまたは相違する連結基の組み合わせであり、前記R11、R12及びR13は、H、(C1−C10)アルキレン、(C6−C30)アリーレン、(C3−C20)シクロアルキレン、(C2−C10)アルケニレンから選択され、但し、前記Xが−CO−からなる単一連結基は除外され;
前記Rは、(C1−C10)アルキル、(C6−C30)アリールから選択され;
前記Rは、(C1−C10)アルキル、(C6−C30)アリール、(C3−C20)シクロアルキル、(C2−C10)アルケニル、(C6〜C30)アル(C1〜C20)アルキルから選択され;
前記R及びRのアルキル、アリール、シクロアルキル、アルケニル、アラルキルは、(C1−C10)アルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、(C6−C30)アリール、(C2−C10)アルケニル、(C3−C20)シクロアルキル、N、O、Sから選択される一つ以上の元素を含む5員〜7員のヘテロシクロアルキルまたはN、O、Sから選択される一つ以上の元素を含む(C4−C30)ヘテロアリールから選択される一つ以上によってさらに置換されてもよい。)
【0012】
以下、本発明についてより具体的に説明する。
【0013】
本発明の光学フィルムは、2種以上の置換体を含むセルロースエステル樹脂を主成分として含み、このうちアシル基、好ましくは、アセチル基を必ず含む。本発明で前記「主成分として含む」とは、本発明の2種以上の置換体を含むセルロースエステル樹脂のみからなるか、またはその他の樹脂が含まれてもよいが、セルロースエステル樹脂が最も高い割合で用いられることを意味する 。
【0014】
即ち、下記一般式2中、Rが下記化学式1のアシル基及び下記化学式2から選択される1種または2種以上の置換基で置換されてもよく、この際、アシル基の置換度は2〜2.9であり、前記アシル基を除いた下記化学式2から選択される1種または2種以上の置換基の総置換度は0.01〜1.0である。
[一般式2]


【0015】
[化学式1]
−CO−R
【0016】
[化学式2]
−X−R
【0017】
(前記Xは、化学結合であるか、−O−、−CO−、−CS−、−S−、−SO−、−SO−、−PR11−、−POR12−、−NR13−から選択される何れか一つまたは相違する連結基の組み合わせであり、前記R11、R12及びR13は、H、(C1−C10)アルキレン、(C6−C30)アリーレン、(C3−C20)シクロアルキレン、(C2−C10)アルケニレンから選択され、但し、前記Xが−CO−からなる単一連結基は除外され;
前記Rは、(C1−C10)アルキル、(C6−C30)アリールから選択され;
前記Rは、(C1−C10)アルキル、(C6−C30)アリール、(C3−C20)シクロアルキル、(C2−C10)アルケニル、(C6〜C30)アル(C1〜C20)アルキルから選択され;
前記R及びRのアルキル、アリール、シクロアルキル、アルケニル、アラルキルは、(C1−C10)アルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、(C6−C30)アリール、(C2−C10)アルケニル、(C3−C20)シクロアルキル、N、O、Sから選択される一つ以上の元素を含む5員〜7員のヘテロシクロアルキルまたはN、O、Sから選択される一つ以上の元素を含む(C4−C30)ヘテロアリールから選択される一つ以上によってさらに置換されてもよい。)
【0018】
本発明に記載の「アルキル」及びその他の「アルキル」部分を含む置換体は、直鎖または分岐鎖状を全て含む。
【0019】
本発明に記載の「アリール」は、一つの水素を除去することにより芳香族炭化水素から誘導された有機ラジカルであって、各環に好適には4〜7個、好ましくは5または6個の環原子を含む単一または縮合環系を含む。具体例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、トリルなどを含むが、これに限定されない。
【0020】
より具体的に前記化学式1は、−CO−CH、−CO−CHCH、−CO−CHCHCH、−CO−CHCHCHCHから選択されるものを用いてもよい。
【0021】
また、より具体的に、前記化学式2中、Xは、化学結合であるか、−O−、−CS−、−S−、−SO−、−SO−から選択され、Rは、(C1−C10)アルキル、(C6−C30)アリールから選択され、前記アルキル、アリールは、(C1−C10)アルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、(C6−C30)アリール、(C2−C10)アルケニル、(C3−C20)シクロアルキル、N、O、Sから選択される一つ以上の元素を含む5員〜7員のヘテロシクロアルキルまたはN、O、Sから選択される一つ以上の元素を含む(C4−C30)ヘテロアリールから選択される一つ以上によってさらに置換されてもよい。
【0022】
さらに好ましくは、前記化学式1は、−CO−CHであり、化学式2中、Xは、化学結合であるか、−SO-−から選択され、Rは、(C1−C10)アルキル、(C6−C30)アリールから選択され、前記アルキル、アリールは、(C1−C10)アルキルがさらに置換されてもよい。
【0023】
本発明で前記セルロースエステル樹脂の総置換度は2.5〜3.0であることが好ましく、このうちアシル基の置換度は2〜2.9であることが好ましく、特に、全てのアシル基がアセチル基であるセルロースアセテートを用いる場合、アセチル置換度は2.4〜2.9であることがさらに好ましい。前記アシル基は特に制限されず、2〜4の炭素原子を有するアシル基が好ましい。アセチル基またはプロピオニル基を用いることが好ましく、アセチル基が特に好ましい。本発明で用いられる置換度はASTMのD−817−91に準じて測定する。
【0024】
また、前記アシル基を除いた化学式2から選択される1種または2種以上の置換基の総置換度は0.01〜1.0であることが好ましい。置換度が低かったり高かったりする場合、光学的異方性が容易に調節されない。
【0025】
本発明は、2種以上の置換体、具体的に、アシル基とアシル基を除いた他の置換体からなる2種以上の置換体を有するように調節することにより、追加のレターデーション添加剤を使用せずに、樹脂自体でレターデーション調節が可能である。
【0026】
本発明でセルロースアシレートの分子量範囲は特に制限されないが、重量平均分子量が150,000以上、さらに好ましくは、重量平均分子量が150,000〜400,000であることが好ましい。重量平均分子量が低いと、フィルムの機械的強度が低下し、高すぎると溶解度が減少する。また、セルロースアシレートの分子量分布度Mw/Mn(Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量)が1.2〜2.0であることが好ましく、1.4〜1.8であることがさらに好ましい。前記重量平均分子量は、メチレンクロライドが溶媒として使用され、GPCによって測定された値を意味する。
【0027】
本発明のセルロースエステル樹脂を用いた光学フィルムは、ドープ溶液を用いるソルベントキャスティング(solvent casting)法によって製造することが好ましい。ソルベントキャスティング法は、セルロースエステル樹脂を溶媒中に溶解した溶液(ドープ)を支持体上にキャスティングし、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。
【0028】
セルロースアシレートは、含水率が2重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下になるように乾燥させた後、ドープ溶液に製造することが好ましい。
【0029】
以下、本発明の光学フィルムに使用される添加剤について説明する。
【0030】
ソルベントキャスティング法に用いるセルロースエステル溶液(ドープ)には、各製造工程で用途に応じた各種添加剤、例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、微粒子、剥離剤、赤外線吸収剤などの添加剤を添加することができる。このような添加剤の具体的な種類は、該当分野で一般的に用いられるものであれば制限なく使用することができ、その含量は、フィルムの物性を低下させない範囲で用いることが好ましい。添加剤を添加する時期は添加剤の種類に応じて決定する。ドープ調剤の最後に添加剤を添加する工程を実施してもよい。
【0031】
前記可塑剤は、フィルムの機械的物性を調節するために用いられるものであって、可塑剤を用いる場合、フィルムの乾燥工程時間を短縮することができる。可塑剤としては一般的に使用されるものであれば制限なく用いることができ、例えば、リン酸エステル及びフタル酸エステルまたはクエン酸エステルから選択されるカルボン酸エステルなどがある。リン酸エステルの例としては、トリフェニルホスフェート(TPP)、ビフェニルジフェニルホスフェート及びトリクレジルホスフェート(TCP)などが挙げられる。フタル酸エステルの例としては、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)及びジエチルヘキシルフタレート(DEHP)などが挙げられる。クエン酸エステルの例としては、O−アセチルトリエチルシトレート(OACTE)及びO−アセチルトリブチルシトレート(OACTB)などが挙げられる。他のカルボン酸エステルの例としては、ブチルオレート、メチルアセチルリジンオレート、ジブチルセバケート及び各種のトリメリット酸エステルが挙げられる。好ましくは、フタル酸エステル(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)可塑剤を使用することが好ましい。可塑剤の含量は、セルロースアセテート100重量部に対して2〜20重量部、さらに好ましくは5〜15重量部を用いる。
【0032】
前記紫外線防止剤は、ヒドロキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物などを用いることができる。紫外線防止剤の量は、セルロースアセテート100重量部に対して0.1〜3重量部、さらに好ましくは0.5〜2重量部を用いる。
【0033】
劣化防止剤としては、例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル抑制剤、金属不活性化剤、脱酸素剤、光安定化剤(ヒンダードアミンなど)などが使用可能である。特に好ましい劣化抑制剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)及びトリベンジルアミン(TBA)が挙げられる。劣化抑制剤の量は、セルロースアセテート100重量部に対して0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜1重量部を用いる。
【0034】
前記微粒子は、フィルムのカール抑制、返送性、ロール形における接着防止または耐傷性を良好に維持するために添加されるものであり、無機化合物、有機化合物から選択される何れか一つを用いてもよい。例えば、無機化合物としては、ケイ素を含む化合物、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ/アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、ケイ酸カルシウム水和物、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムなどが好ましく、さらに好ましくは、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムなどが使用可能である。前記微粒子は、平均1次粒径が80nm以下であり、好ましくは5〜80nmであり、さらに好ましくは5〜60nm、特に好ましくは8〜50nmである。平均1次粒径が80nmを超過すると、フィルムの表面平滑性が損傷される。
【0035】
本発明でドープの固形粉濃度は15〜25重量%、さらに好ましくは16〜23重量%であることが好ましい。ドープの固形粉濃度が15重量%未満である場合には流動性が高すぎてフィルムの形成が難しく、25重量%を超過する場合には完全に溶解されにくい。
【0036】
本発明におけるセルロースエステル樹脂の含量は、固形粉全体の含量のうち70重量%以上、好ましくは70〜90重量%、さらに好ましくは80〜85重量%を用いる。
【0037】
また、本発明は、前記セルロースエステル樹脂100重量部に対して、セルローストリアセテート樹脂を5〜50重量部さらに含むことができる。
【0038】
ソルベンドキャスティング方法でフィルムを製造する場合、セルロースエステル樹脂組成物(ドープ)を製造するための溶媒は有機溶媒が好ましい。有機溶媒としてはハロゲン化炭化水素を用いることが好ましく、ハロゲン化炭化水素としては塩素化炭化水素、メチレンクロライド及びクロロホルムがあり、このうちメチレンクロライドを用いることが最も好ましい。
【0039】
また、必要に応じて、ハロゲン化炭化水素以外の有機溶媒を混合して用いることもできる。ハロゲン化炭化水素以外の有機溶媒としては、エステル、ケトン、エーテル、アルコール及び炭化水素を含む。エステルとしては、メチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテートなどが使用可能であり、ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンなどが使用可能であり、エーテルとしては、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトールなどが使用可能であり、アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなどを用いることができる。
【0040】
さらに好ましくは、メチレンクロライドを主溶媒として使用し、アルコールを副溶媒として使用することができる。具体的には、メチレンクロライドとアルコールを80:20〜95:5の重量比で混合して用いることができる。
【0041】
本発明の光学フィルムは、通常のソルベントキャスティング方法に従って製造することができる。より具体的に説明すると、製造されたドープは貯蔵タンクに一旦貯蔵して、ドープに含有されている泡を脱泡する。脱泡されたドープはドープ排出口から回転数に応じて高精度に定量送液できる加圧型定量ギアポンプを介して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイのアンビル(スリット)からエンドレスに走行している金属支持体上に均一にキャスティングし、金属支持体がほぼ一周した剥離点で完全に乾燥していないドープ膜(ウェブともいう)を金属支持体から剥離する。製造されたウェブの両端をクリップで挟んで幅を維持しながらテンターに返送して乾燥させ、その後、乾燥装置のローラに返送して乾燥し、巻取機を用いて所定長さに巻き取る。
【0042】
溶液を塗布する際の空間温度は、−50℃〜50℃が好ましく、−30℃〜40℃がさらに好ましく、−20℃〜30℃が最も好ましい。低い空間温度で塗布されたセルロースエステル溶液は支持体上で瞬間的に冷却されゲル強度が向上するため、有機溶媒が多く残存するフィルムが得られる。従って、セルロースエステルから有機溶媒を蒸発させず、支持体からフィルムを短時間で剥離することができる。空間を冷却する気体は、通常の空気、窒素、アルゴンまたはヘリウムを使用することができる。相対湿度は、0〜70%が好ましく、0〜50%がさらに好ましい。
【0043】
セルロースエステル溶液を塗布する支持体(キャスティング部)の温度は、−50〜130℃が好ましく、−30℃〜25℃がさらに好ましく、−20℃〜15℃が最も好ましい。キャスティング部を冷却するために、冷却した気体をキャスティング部に導入することができる。また、冷却装置をキャスティング部に配置して空間を冷却することもできる。冷却では、キャスティング部に水が付着しないように注意することが重要である。気体で冷却する場合は、気体を乾燥させておくことが好ましい。
【0044】
また、必要に応じて、セルロースエステルフィルムに表面処理を施すことができる。表面処理は、一般的に、セルロースエステルフィルムの接着性を改善するために行う。表面処理の方法としては、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、けん化処理などがある。
【0045】
また、セルロースエステルフィルムは、遅延度を調節するように延伸されることができる。延伸度は−10〜100%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは−10〜50%の範囲であり、最も好ましくは−5〜30%の範囲である。
【0046】
セルロースエステルフィルムの厚さは、好ましくは20〜140μmの範囲、さらに好ましくは40〜80μmの範囲であることが好ましい。
【0047】
フィルムの引裂度はJIS K 7128によるエルメンドルフ(Elmendorf)引裂度マシーンを用いることにより測定されることができる。引裂度が小さすぎる場合、このフィルムは損傷されやすい。従って、引裂度は0.1N以上であることが好ましく、0.15N以上であることがさらに好ましい。
【0048】
本発明による光学フィルムは偏光板、光学補償シート及び液晶表示装置に使用されることができ、1枚または2枚以上に積層して使用することができる。
【0049】
本発明による偏光板は、偏光子の保護フィルムのように前記のような本発明の光学フィルムを有する。即ち、本発明の光学フィルムは、偏光板の保護フィルムとして用いられることができる。通常、偏光板は偏光子及びその両側に提供された2枚の透明保護フィルムを含む。本発明の光学フィルムは、保護フィルムのうち少なくとも一つとして利用されることができる。他の保護フィルムとして、一般的に用られるセルロースアシレートフィルムが利用されることもできる。偏光子は、ヨード−含有偏光子、二色性染料を用いる染料−含有偏光子、及びポリエン系偏光子を含む。ヨード−含有偏光子及び染料−含有偏光子は一般的にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造される。偏光板用保護フィルムとして本発明の光学フィルムを用いる場合、偏光板を製造する方法は特に限定されず、この偏光板は一般的に用いられる方法で製造されることもできる。この方法は、その結果物であるセルロースアシレートフィルムまたは一般的に用いられるセルロースアシレートフィルムをアルカリを用いて処理する段階と、完全にけん化したポリビニルアルコールの水溶液を用いて、ヨード溶液内にポリビニルアルコールフィルムを浸漬及び延伸することにより製造される偏光子の一側面または両側面にそのフィルムを接合する段階と、を含む。
【0050】
偏光子に本発明の光学フィルムを接合する場合、光学フィルムは偏光子の吸収軸及び本発明の光学フィルムの長さ方向に沿って接合され、連続して製造できるようにすることが好ましい。
【0051】
また、本発明による光学フィルムは、光学−補償シート用支持体として用いられることができる。即ち、光学−補償シートは、本発明の光学フィルム上に光学−補償層を形成することにより製造されることができる。また、必要に応じて、光学−補償層に配向層が提供されることが好ましい。
【0052】
配向層には、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の傾斜角気相蒸着、及びマイクログルーブを有する層の形成のような手段が提供されることができる。また、電界及び磁界を印加し、または光を照射することにより発生する配向機能を有した配向層が公知されている。しかし、ポリマーのラビング処理によって形成された配向層が特に好ましい。ラビング処理は、一定方向にペーパーまたは繊維を用いてポリマー層の表面を数回ラビングすることにより行われることが好ましい。偏光子の吸収軸及びラビング方向は互いに実質的に平行することが好ましい。配向層に用いられるポリマーの種類は、ポリイミド、ポリビニルアルコールなどが用いられることが好ましい。配向層の厚さは、好ましくは0.01〜5μmであり、さらに好ましくは0.05〜2μmである。
【0053】
光学異方性層は液晶化合物を含むことが好ましい。本発明に用いられる液晶化合物は、ディスコティック液晶化合物またはロッド型液晶化合物であることが特に好ましい。
【0054】
本発明による液晶表示装置は、前記のように、本発明の偏光板を用いるものである。
【0055】
本発明の偏光板は、例えば、粘着剤を用いて液晶表示装置の液晶セルに接合される。本発明の光学フィルムは、偏光板の液晶セル側に保護フィルムとして提供されることが好ましい。
【0056】
光学フィルムは、液晶セルの両側または一側に接合されることもできる。また、相違する光学特性を有する光学フィルムの組み合わせを用いることもできる。
【発明の効果】
【0057】
本発明による光学フィルムは、置換基の種類及び置換度を調節することに応じてセルロース樹脂の光学異方性を調節することにより、レターデーション調節剤を添加せずにレターデーションの調節が可能な光学フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明の具体的な説明のために一例を挙げて説明するが、本発明は下記実施例により限定されない。
【0059】
以下、フィルムの物性は次の測定方法に従って測定した。
【0060】
1)光学異方性
Reは、複屈折測定機(商品名:Axoscan、Axometrics,Inc.製造)で波長590nmの光をフィルムの法線方向に入射させて測定した。Rthは、前記Re面内の遅軸(Slow Axis)を傾斜軸にして590nmの光をフィルムの法線方向に対して0°〜50°まで10°間隔で測定して得られた屈折率楕円体の三つの屈折率成分を用いて以下の数式から求めた値である。
【0061】
Rth=[(n+n)/2−n]×d
:平面の二つの屈折率のうち屈折率が大きい方向の屈折率
:平面の二つの屈折率のうち屈折率が小さい方向の屈折率
:厚さ方向の屈折率
【0062】
2)置換度
置換度はASTMのD−817−91に準じて測定した。
【0063】
[実施例1〜4及び比較例1〜3]
ドープの製造
下記表1の組成物を攪拌器に入れて30℃の温度で溶解した。得られたドープを30℃に加温した後、ギアポンプに送液し、絶対濾過精度0.01mmの濾過紙で濾過し、また絶対濾過精度5μmのカートリッジ濾過装置で濾過した。
【0064】
この際、下記表1の各実施例及び比較例のセルロースエステル樹脂の置換体を異なるように製造したものを使用し、置換体の具体的な種類及び置換度は表2に示した。ここで、下記比較例1、比較例2及び実施例1〜4は、セルロースエステル樹脂の重量平均分子量が270,000であるものを使用し、比較例3及び実施例5〜6はセルロースエステル樹脂の重量平均分子量が230,000であるものを使用した。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】


【0067】
前記表2の置換基1及び置換基2は、下記一般式2のRに置換された置換体を意味する。
[一般式2]


【0068】
セルロースエステルフィルムの製造
濾過工程を経て得られたドープをキャスティングダイを介して鏡面ステンレス支持体上にキャスティングし剥離した。剥離の際の残留溶媒量は20wt%になるように調節した。テンターに連結した後、フィルムの幅方向に2%(%は全体100%に対する長さ%を意味する)を延伸し、テンターからフィルムが出た後、フィルムの左右側末端を150mmずつ除去した。末端が除去されたフィルムを乾燥器により乾燥させ、乾燥器から出たフィルムの両端を3cmカットし、また端部から10mm部分に高さ100μmのローレット切り加工を施し、ロール状に巻取した。得られた試料は前記方法により光学異方性を測定し、これを下記表3に示した。
【0069】
【表3】

【0070】
前記表に示されたように、アセテート以外の置換基を導入することにより、レターデーション(Retardation)が増加することが分かり、また、置換度の調節によってもレターデーション(Retardation)の調節が可能であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースの水酸基のうち一部の水素を下記化学式1のアシル基及び下記化学式2から選択される1種または2種以上の置換基で置換したセルロースエステル樹脂をベース樹脂として使用した光学フィルムであって、
前記アシル基の置換度が2〜2.9であり、前記アシル基を除いた置換基の総置換度が0.01〜1.0である光学フィルム。
[化学式1]
−CO−R
[化学式2]
−X−R
(前記Xは、化学結合であるか、−O−、−CO−、−CS−、−S−、−SO−、−SO−、−PR11−、−POR12−、−NR13−から選択される何れか一つまたは相違する連結基の組み合わせであり、前記R11、R12及びR13は、H、(C1−C10)アルキレン、(C6−C30)アリーレン、(C3−C20)シクロアルキレン、(C2−C10)アルケニレンから選択され、但し、前記Xが−CO−からなる単一連結基は除外され;
前記Rは、(C1−C10)アルキル、(C6−C30)アリールから選択され;
前記Rは、(C1−C10)アルキル、(C6−C30)アリール、(C3−C20)シクロアルキル、(C2−C10)アルケニル、(C6〜C30)アル(C1〜C20)アルキルから選択され;
前記R及びRのアルキル、アリール、シクロアルキル、アルケニル、アラルキルは、(C1−C10)アルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、(C6−C30)アリール、(C2−C10)アルケニル、(C3−C20)シクロアルキル、N、O、Sから選択される一または二つ以上の元素を含む5員〜7員のヘテロシクロアルキルまたはN、O、Sから選択される一または二つ以上の元素を含む(C4−C30)ヘテロアリールから選択される一または二つ以上がさらに置換されてもよい。)
【請求項2】
化学式1は、−CO−CH、−CO−CHCH、−CO−CHCHCH、−CO−CHCHCHCHから選択され、
化学式2中、Xは、化学結合であるか、−O−、−CS−、−S−、−SO−、−SO−から選択され、Rは、(C1−C10)アルキル、(C6−C30)アリールから選択され、前記アルキル、アリールは、(C1−C10)アルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、(C6−C30)アリール、(C2−C10)アルケニル、(C3−C20)シクロアルキル、N、O、Sから選択される一または二つ以上の元素を含む5員〜7員のヘテロシクロアルキルまたはN、O、Sから選択される一または二つ以上の元素を含む(C4−C30)ヘテロアリールから選択される一または二つ以上がさらに置換される請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
化学式1は、−CO−CHであり、
化学式2中、Xは、化学結合であるか、−SO-−から選択され、Rは、(C1−C10)アルキル、(C6−C30)アリールから選択され、前記アルキル、アリールは、(C1−C10)アルキルがさらに置換される請求項2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
セルロースエステル樹脂は、重量平均分子量が150,000〜400,000である請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項5】
光学フィルムは、セルロースエステル樹脂100重量部に対して、セルローストリアセテート樹脂を5〜50重量部さらに含む請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の光学フィルムを含む光学補償シート。
【請求項7】
請求項1〜5の何れか一項に記載の光学フィルムを含む位相差フィルム。
【請求項8】
請求項1〜5の何れか一項に記載の光学フィルムを含む偏光板。
【請求項9】
請求項1〜5の何れか一項に記載の光学フィルムを含む液晶表示装置。

【公開番号】特開2012−136699(P2012−136699A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−283087(P2011−283087)
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【出願人】(511055337)エスケー イノベーション シーオー.,エルティーディー. (4)
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO., LTD.
【Fターム(参考)】