説明

光学レンズ用エネルギー線硬化型樹脂組成物及び光学レンズ

【課題】
離型性、型再現性、基板との密着性に優れ、硬化収縮率が低く、ガラス転移温度(Tg)、透過率の高い光学レンズに適した樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
ビスフェノールA骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)、ビスフェノールA骨格を有するジ(メタ)アクリレート(B)及び光重合開始剤(C)を含有し、(メタ)アクリレート成分の総量100質量%に対して成分(A)+成分(B)が80質量%以上である光学レンズ用エネルギー線硬化型樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。更に詳しくは、レンチキュラーレンズ、プリズムレンズ、マイクロレンズ等の基材上に成型する光学レンズに適した樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置のバックライトに使用されるプリズムレンズシートや、プロジェクションテレビ等に使用されるフレネルレンズ、レンチキュラーレンズ等の基材上に成型される光学レンズはプレス法、キャスト法(注型形成法)等の方法により成形されていた。前者のプレス法は、加熱、加圧、冷却サイクルで製造するため生産性が悪かった。又、後者のキャスト法は、金型にモノマーを流し込んで重合するため製作時間が長くかかるとともに、金型が多数個必要なため製造コストが上がるという問題があった。このような問題を解決するために、エネルギー線硬化性樹脂組成物を使用することについて種々の提案がなされている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
これらエネルギー線硬化型樹脂組成物を使用することによって透過型スクリーンなどに用いる光学レンズを製造する方法はある程度成功している。しかしながら、これら従来の樹脂組成物の硬化物は基板との密着性、型からの離型性が悪いという課題があった。密着性が悪いと、使用可能な基板の種類が限られ、意図する光学物性を得づらくなる。離型性が悪いと、離型時に型に樹脂が残り、型が使用できなくなる。また、密着性の良い硬化物を与える樹脂組成物は型への密着も良くなるため離型性が悪くなり易く、一方、離型性の良い樹脂組成物は密着性が悪くなりやすいという課題もある。そのため、基板との密着性と型からの離型性の両性能を満足できる樹脂組成物を提供することが望まれており特許文献2、及び特許文献3では密着性と離型性を併せ持つ樹脂組成物が提案されている。
【0004】
これら光学レンズ類は、近年の画像の高精細化等に伴い高い透過率を有する樹脂組成物が必要とされている。特許文献4では表面硬度が高く、硬化時の変形や耐侯性低下の問題が無い光学レンズ用樹脂組成物、光学レンズシート及びその製造方法が開示されているが、透過率について言及されていない。また、レンズ形状もより複雑で微細になりつつあることから硬化時における変形、即ち、硬化収縮率の低い樹脂組成物を提供することが望まれている。特許文献5・特許文献6・特許文献7にはビスフェノールAのウレタン(メタ)アクリレートを含む樹脂組成物が記載されているが、透過率・硬化収縮率については言及されていない。
【0005】
また、光学レンズの製造においては型再現性に優れていることも求められる。高温環境下で使用しても物性の変化が少ないように、なるべくガラス転移点温度(Tg)の高い硬化物を与えるものが求められてもいる。しかしながら、高い透過率、Tg、優れた型再現性、離型性、並びに密着性、さらに小さい硬化収縮率を兼ね備えることは難しく、すべてを満足できるものは得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−167301号公報
【特許文献2】特開昭63−199302号公報
【特許文献3】特許第3209554号
【特許文献4】特開平7−233227号公報
【特許文献5】特開平7−33841号公報
【特許文献6】特開平10−324726号公報
【特許文献7】特開平11−292942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、レンチキュラーレンズ、プリズムレンズ、マイクロレンズ等の基材上に成型する光学レンズに適した樹脂組成物や、透過率、離型性に優れた硬化物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究の結果、特定の組成を有するエネルギー線硬化性樹脂組成物及びその硬化物が前記課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は
(1)ビスフェノールA骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)、ポリアルキレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(B)及び光重合開始剤(C)を含有し、(メタ)アクリレート成分の総量100質量%に対して成分(A)+成分(B)が80質量%以上である光学レンズ用エネルギー線硬化型樹脂組成物。
(2)さらに、環状構造を有する単官能(メタ)アクリレート化合物(D)を含む前記(1)に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物。
(3)ポリアルキレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(B)がビスフェノールAテトラプロポキシジアクリレートである前記(1)又は(2)に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物。
(4)E型粘度計で測定した25℃での粘度が4000〜8000mPa・sである前記(1)〜(3)に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物。
(5)硬化物のガラス転移温度(Tg)が80℃以上であることを特徴とする前記(1)〜(4)に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物。
(6)硬化物の膜厚100±5μmでの波長400nm〜780nmの各波長における透過率が90%以上である前記(1)〜(5)に記載の光学レンズ用エネルギー線硬化型樹脂組成物。
(7)硬化物の硬化収縮率が5%以下であることを特徴とする前記(1)〜(6)に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物。
(8)前記(1)〜(7)に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物にエネルギー線を照射して得られる硬化物。
(9)前記(8)に記載の硬化物を有する基材上に成型された光学レンズ。
【発明の効果】
【0010】
本発明の樹脂組成物は、安定性が良く、その硬化物は透過率が高く、金型からの離型性、型再現性、基材との密着性に優れ、硬化収縮率が低い。そのため特にレンチキュラーレンズ、プリズムレンズ、マイクロレンズ等の基材上に成型する光学レンズに適している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の樹脂組成物に使用するビスフェノールA骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)としては、ビスフェノールA骨格を有するものであれば特段限定は無いが、例えば、ジオール化合物と有機ポリイソシアネートを反応させ、次いで水酸基含有(メタ)アクリレートを付加した反応物等が挙げられる。
【0012】
本発明において利用することのできるジオール化合物としては、例えば、ビスフェノールAポリ(n≒2〜20)エトキシジオール、又はビスフェノールAポリ(n≒2〜20)プロポキシジオール等を挙げることができる。
【0013】
本発明において利用することのできる有機ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の鎖状飽和炭化水素イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添トルエンジイソシアネート等の環状飽和炭化水素イソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ジイソシアネート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート等を挙げることができ、環状飽和炭化水素イソシアネートが好ましく、中でもトリレンジイソシアネートもしくはイソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0014】
本発明において利用することのできる水酸基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン付加物、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0015】
本発明に使用するビスフェノールA骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)は、前記ジオール化合物と有機ポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートを用いて常法で合成することにより得ることができる。即ち、例えば、ジオール化合物と有機ポリイソシアネートとを付加することにより反応物(I)を得て、次いで反応物(I)に水酸基含有(メタ)アクリレートを付加することにより目的のウレタン(メタ)アクリレートが得られる。
【0016】
反応物(I)の合成に際しては、前記ジオールの水酸基1当量に対して、有機ポリイソシアネートのイソシアネート基1.95〜2.05当量を反応させることが好ましい。反応温度は、60〜100℃が好ましい。イソシアネート基が反応前の11.9質量%以下となったときを反応終点とする。
【0017】
なお反応に際しては粘度を下げるために、反応に関与しない化合物を希釈剤として添加することも出来る。具体的には、ビスフェノールA骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)以外の(メタ)アクリレートで、水酸基を持たない構造のものを希釈剤として用いることができる。
【0018】
反応物(I)と水酸基含有(メタ)アクリレートの反応においては、反応物(I)のイソシアネート基1当量あたり、水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基0.95〜1.1当量を反応させることが好ましい。反応温度は、60〜100℃が好ましい。イソシアネート基が反応前の0.1質量%以下となったときを反応終点とする。なお、これら反応を促進するために、例えば、トリエチルアミン、ベンジルメチルアミン等の第3級アミン類、ジブチルスズジラウリレート、ジオクチルスズジラウリレート等のジラウリレート化合物を触媒として用いることができる。触媒の添加量は反応混合物全体に対して0.001〜5質量%であることが好ましく、0.01〜1質量%であることが特に好ましい。また、反応中の重合を防止するために、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−メトキシフェノール、p−ベンゾキノン等の重合禁止剤を用いることができる。重合禁止剤の添加量は反応混合物全体に対して0.001〜5質量%であることが好ましく、0.01〜1質量%であることが特に好ましい。なお、本発明の樹脂組成物においては、ビスフェノールA骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)は単独で用いても良いし、複数種を混合して用いても良い。
【0019】
本発明において用いられるポリアルキレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(B)としては、特段限定はないが、下記一般式(1)で表されるポリアルキレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0020】
【化1】

【0021】
(式中、R1、R2はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基、m+nは2〜10の正数を表す)
【0022】
具体的には例えばビスフェノールAジエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラプロポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAデカエトキシジ(メタ)クリレート等をあげることができるが、中でもビスフェノールAテトラエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラプロポキシジ(メタ)アクリレートが好ましく、ビスフェノールAテトラプロポキシジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。なお、本発明の樹脂組成物においては、ポリアルキレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(B)は単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0023】
本発明の樹脂組成物に含有される光重合開始剤(C)としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]等のアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフエノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド、4,4'−ビスメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキシド等のホスフィンオキサイド類等を挙げることができる。好ましくは、アセトフェノン類であり、さらに好ましくは2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを挙げることができる。なお、本発明の樹脂組成物においては、光重合開始剤(C)は単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0024】
本発明において環状構造を有する単官能(メタ)アクリレート化合物(D)とは、ビスフェノールA骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)、ポリアルキレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(B)以外の単官能(メタ)アクリレート化合物を指し、脂環構造を有するものと芳香環構造を有するものとヘテロ環構造を有するものとが挙げられる。脂環構造を有する単官能(メタ)アクリレートとしては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアクリレート等を挙げることができる。芳香環構造を有する単官能(メタ)アクリレートとしては、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレン(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エトキシ変性クレゾール(メタ)アクリレート、プロポキシ変性クレゾール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、p−クミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、エトキシ変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、プロポキシ変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。また、ヘテロ環構造を有する単官能(メタ)アクリレートとしては、モルホリン(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。本発明の樹脂組成物においては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、モルホリンアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、本発明の樹脂組成物においては、環状構造を有する単官能(メタ)アクリレート化合物(D)は単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0025】
また本発明の樹脂組成物には、得られる本発明の樹脂組成物の粘度、屈折率、密着性などを考慮して、成分(A)、成分(B)、成分(D)以外の(メタ)アクリレート(E)を単独あるいは二種類以上を混合して使用してもよい。該(メタ)アクリレートとしては、単官能(メタ)アクリレート、2官能(メタ)アクリレート、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等を使用することができる。
【0026】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビロール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0027】
2官能(メタ)アクリレートとしては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、ヒドロピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0028】
分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートとしては、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0029】
ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、ジオール化合物と二塩基酸又はその無水物との反応物であるポリエステルジオールと、(メタ)アクリル酸の反応物等が挙げられる。
【0030】
エポキシ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物の末端グリシジルエーテル、フルオレンエポキシ樹脂等のエポキシ樹脂類と(メタ)アクリル酸との反応物等を挙げることができる。
【0031】
本発明の樹脂組成物の各成分の使用割合は、所望の屈折率やガラス転移温度(Tg)や粘度や密着性等を考慮して決められるが、成分(A)+成分(B)+成分(D)+成分(E)を100質量部とした場合に、成分(A)の含有量は10〜50質量部であり、好ましくは20〜40質量部である。成分(B)の含有量は30〜90質量部であり、好ましくは40〜80質量部である。この際、成分(A)+成分(B)の和が成分(A)+成分(B)+成分(D)+成分(E)の総量100質量部に対して80質量部以上であるようにすることが好ましい。80質量部以上であることによって、透過率及並びにガラス転移温度(Tg)が高く、離型性、型再現性並びに基板との密着性に優れ、硬化収縮率が小さい本発明の硬化物が与えられる。成分(D)の含有量は0〜20質量部であり、使用する場合、好ましくは5〜20質量部である。成分(E)の含有量は0〜20質量部であり、使用する場合、好ましくは5〜20質量部である。成分(C)は成分(A)+成分(B)+成分(D)+成分(E)の総量100質量部に対して、0.1〜10質量部であり、好ましくは1〜5質量部である。
【0032】
本発明の樹脂組成物には、前記成分以外に取り扱い時の利便性等を改善するために、離型剤、消泡剤、レベリング剤、光安定剤、酸化防止剤、重合禁止剤、帯電防止剤等を状況に応じて併用して含有することができる。更に、必要に応じて、アクリルポリマー、ポリエステルエラストマー、ウレタンポリマー及びニトリルゴム等のポリマー類も添加することができる。溶剤を加えることもできるが、溶剤を添加しないものが好ましい。
【0033】
本発明の樹脂組成物は、各成分を常法に従い混合溶解することにより調製することができる。例えば、撹拌装置、温度計のついた丸底フラスコに各成分を仕込み、40〜80℃にて0.5〜6時間撹拌することにより得ることができる。
【0034】
本発明の樹脂組成物の粘度は、基材上に成型する光学レンズを製造する際の形状の転写性や加工性の作業性に適した粘度として、E型粘度計(TV−200:東機産業(株)製)を用いて測定した粘度が25℃で4000mPa・sから8000mPa・sの範囲である組成物が好ましい。
【0035】
本発明の樹脂組成物はエネルギー線によって容易に硬化させることができる。ここでエネルギー線の具体例としては、紫外線、可視光線、赤外線、X線、ガンマー線、レーザー光線等の電磁波、アルファー線、ベータ線、電子線等の粒子線等が挙げられる。本発明においては、これらのうち、紫外線、レーザー光線、可視光線、または電子線が好ましい。
【0036】
常法に従い、本発明の樹脂組成物に前記エネルギー線を照射することにより、本発明の硬化物を得ることができる。
【0037】
本発明の樹脂組成物の硬化物の屈折率は通常1.50〜1.65であり、好ましくは1.52〜1.58である。屈折率はアッベ屈折率計(型番:DR−M2、(株)アタゴ製)等で測定することができる。
【0038】
本発明の樹脂組成物の硬化物の透過率は膜厚100±5μm、硬化後1時間以内に測定した波長400nm〜780nmの各波長において通常90%以上である。透過率は分光光度計(型番:U−3310、日立ハイテクノロジー(株)製)等で測定することができる。
【0039】
本発明の樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)は通常80℃以上である。Tgは粘弾性測定システム(型番:DMS−6000、セイコー電子工業(株)製)等で測定することができる。
【0040】
本発明の樹脂組成物の硬化収縮率は通常5%以下であり、硬化時の変形が少ない。硬化収縮率はJIS K7112 B法に準拠し、以下の式で求められる。
硬化収縮率(%)=(DS−DL)/DS×100
DS:硬化物の比重
DL:樹脂組成物の比重
【0041】
本発明において基材とは、光学レンズの基材として用いられるものであれば特段限定はないが、透明基材が好ましい。形状もフィルム状、板状等いずれのものでもよい。具体的には例えばポリメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、又はこれらポリマーのブレンド品等からなるフィルム、ガラス基板などが挙げられる。ガラス基板は易接着処理が為されたものが好ましい。
【0042】
本発明の基材上に成型する光学レンズは、例えば、レンチキュラーレンズ、プリズムレンズ等の形状を有するスタンパー上に塗布して該樹脂組成物の層を設け、その層の上に透明基材であるバックシート(例えば、ポリメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、又はこれらポリマーのブレンド品等からなるフィルム)または易接着処理等の処理が為されたガラス基板を接着させ、次いで該透明基材側から高圧水銀灯等によりエネルギー線を照射して該樹脂組成物を硬化させた後、該スタンパーから硬化物を剥離して得ることができる。
【0043】
本発明の樹脂組成物の硬化物は、透過率が高く、Tgが高く、離型性、型再現性、基板との密着性に優れ、硬化収縮率が小さいため、基材上に成型する光学レンズとして有用である。基材上に成型する光学レンズとしては、レンチキュラーレンズ、プリズムレンズ、マイクロレンズ等が挙げられる。
【実施例】
【0044】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、数値の単位「部」は特に記載したものの他は質量部を示す。
【0045】
ビスフェノールA骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)の合成
合成例1
乾燥容器中に、ビスフェノールAポリプロポキシ(n≒2)ジオール(数平均分子量359.68、水酸基価312)を151.88部、トリレンジイソシアネート147.12部、希釈モノマーとしてビスフェノールAテトラプロポキシジアクリレート599.98部を仕込み、70℃で攪拌し、約2時間反応を行った。イソシアネート基が11.9質量%になったところで2−ヒドロキシエチルアクリレート100.99部とp−メトキシフェノール0.04部とジブチルスズジラウリレート0.06部を仕込み80℃で約17時間反応を行い、イソシアネート基が0.1質量%以下になったところで反応を終了した。屈折率は1.541であった。
【0046】
以下の実施例に示すような組成にて本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物及び硬化物を得た。又、樹脂組成物及び硬化膜についての評価方法及び評価基準は以下の通り行った。
【0047】
(1)粘度:E型粘度計(TV−200:東機産業(株)製)を用い、25℃にて測定した。
(2)離型性:硬化した樹脂を金型より離型させるときの難易度を表す。
○・・・・金型からの離型が良好である
△・・・・離型がやや困難あるいは離型時に剥離音がある
×・・・・離型が困難あるいは型残りがある
(3)型再現性:基材上にエネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布・成型し、高圧水銀灯(80W/cm、オゾンレス)で1000mJ/cm2の照射を行い硬化させた。硬化したエネルギー線硬化型樹脂層の表面形状と金型の表面形状を観察した。
○・・・・再現性良好である
×・・・・再現性が不良である
【0048】
(4)密着性:型再現性評価で用いたサンプルにて、JIS K5600−5−6に準じて密着性評価を行った。
評価結果は0〜2を○とし、3〜5を×とした。
【0049】
(5)屈折率(25℃):硬化したエネルギー線硬化性樹脂層の屈折率(25℃)をアッベ屈折率計(DR−M2:(株)アタゴ製)で測定した。
【0050】
(6)透過率:硬化したエネルギー線硬化性樹脂層を分光光度計(U−3310:日立ハイテクノロジー(株)製)で測定した。膜厚100±5μm、硬化後1時間以内に測定した波長400nm〜780nmの各波長における透過率。
○・・・・透過率が90%以上
×・・・・透過率が90%未満
【0051】
(7)硬化収縮率:基材上にエネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布し、高圧水銀灯(80W/cm、オゾンレス)で1000mJ/cm2の照射を行い硬化させ膜比重測定用の硬化物を作成した。
これを、JIS K7112 B法に準拠し、硬化物の比重(DS)を測定した。また、23±2℃で樹脂組成物の比重(DL)を測定し、次式により硬化収縮率を算出した。測定結果は4回の測定結果の平均値で示す。
硬化収縮率(%)=(DS−DL)/DS×100
【0052】
(8)ガラス転移温度(Tg):硬化したエネルギー線硬化性樹脂層のTg点を粘弾性測定システム(DMS−6000:セイコー電子工業(株)製)、引張モード、周波数1Hzにて測定した。
【0053】
実施例1
成分(A)として合成例1で得られた化合物60部、成分(B)としてBP−4PA(共栄社化学(株)製:ビスフェノールAテトラプロポキシジアクリレート)20部、成分(C)としてダロキュア1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン)3部、成分(D)としてFA−513AS(日立化成工業(株)製:ジシクロペンタニルアクリレート)20部を60℃に加温、混合し、本発明の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物の粘度は7020mPa・sであった。また、この樹脂組成物を高圧水銀灯(80w/cm、オゾンレス)にて1000mJ/cm2の照射を行って硬化した、膜厚200μmのエネルギー線硬化型樹脂層の屈折率(25℃)は1.544であり、ガラス転移温度(Tg)は91℃だった。
この樹脂組成物をプリズムレンズ金型の上に膜厚が約50μmになるように塗布し、その上に基材として易接着PETフィルム(東洋紡コスモシャインA4300、100μm厚)を接着させ、更にその上から高圧水銀ランプで1000mJ/cm2の照射量のエネルギー線を照射させ、硬化させた後剥離して、本発明の硬化物(プリズムレンズシート)を得た。
評価結果
離型性:○、型再現性:○、密着性:○、透過率:○、硬化収縮率:4.9%
【0054】
実施例2
成分(A)として合成例1で得られた化合物60部、成分(B)としてBP−4PA 20部、成分(C)としてダロキュア1173 3部、成分(D)としてIBXA(大阪有機化学工業(株)製:イソボルニルアクリレート)20部を60℃に加温、混合し、本発明の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物の粘度は6600mPa・sであった。また、実施例1と同様にして得た樹脂層の屈折率(25℃)は1.540であり、ガラス転移温度(Tg)は93℃だった。
得られた樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして本発明の硬化物(プリズムレンズシート)を得た。
評価結果
離型性:○、型再現性:○、密着性:○、透過率:○、硬化収縮率:4.8%
【0055】
実施例3
成分(A)として合成例1で得られた化合物35部、成分(B)としてBP−4PA 60部、成分(C)としてダロキュア1173 3部、成分(D)としてRM−1001(日本化薬(株)製:モルホリンアクリレート)5部を60℃に加温、混合し、本発明の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物の粘度は6900mPa・sであった。また、実施例1と同様にして得た樹脂層の屈折率(25℃)は1.544であり、ガラス転移温度(Tg)は86℃だった。
得られた樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして本発明の硬化物(プリズムレンズシート)を得た。
評価結果
離型性:○、型再現性:○、密着性:○、透過率:○、硬化収縮率:4.9%
【0056】
実施例4
成分(A)として合成例1で得られた化合物40部、成分(B)としてBP−4PA 55部、成分(C)としてダロキュア1173 3部、成分(D)としてテトラヒドロフルフリルアクリレート5部を60℃に加温、混合し、本発明の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物の粘度は6100mPa・sであった。また、実施例1と同様にして得た樹脂層の屈折率(25℃)は1.540であり、ガラス転移温度(Tg)は80℃だった。
得られた樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして本発明の硬化物(プリズムレンズシート)を得た。
評価結果
離型性:○、型再現性:○、密着性:○、透過率:○、硬化収縮率:4.9%
【0057】
比較例1
特許文献3(特許第3209554号)の実施例に従い、該文献合成例3の化合物(o−フェニルフェノールジエトキシアクリレート)を合成し、KAYARAD R−114(日本化薬(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル(株)製、エピコート828)のエポキシアクリレート)30部、上記のo−フェニルフェノールジエトキシアクリレートを20部、KAYARAD R−551(日本化薬(株)製、ビスフェノールAテトラエトキシジアクリレート)を30部、トリブロモフェニルアクリレートを20部、イルガキュアー184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン)3部を60℃に加温、混合し、比較用の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物の粘度は3200mPa・sであった。また、実施例1と同様にして得た樹脂層の屈折率(25℃)は1.577であり、ガラス転移温度(Tg)は64℃だった。
得られた樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして硬化物(プリズムレンズシート)を得た。
評価結果
離型性:○、型再現性:○、密着性:○、透過率:×、硬化収縮率:5.9%
【0058】
比較例2
特許文献4(特開平7−233227公報)の実施例に従いビスフェノールAエポキシアクリレート70部、イソボルニルアクリレート30部、イルガキュアー184 3部を60℃に加温、混合し、比較用の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物の粘度は12600mPa・sであった。また、実施例1と同様にして得た樹脂層の屈折率(25℃)は1.549であり、ガラス転移温度(Tg)は129℃だった。
得られた樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして硬化物(プリズムレンズシート)を得た。
評価結果
離型性:○、型再現性:○、密着性:○、透過率:×、硬化収縮率:5.1%
【0059】
比較例3
特許文献4(特開平7−233227公報)の実施例に従いビスフェノールAエポキシアクリレート80部、テトラヒドロフルフリルアクリレート20部、ベンジルジメチルケタール3部を60℃に加温、混合し、比較用の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物の粘度は13000mPa・sであった。また、実施例1と同様にして得た樹脂層の屈折率(25℃)は1.555であり、ガラス転移温度(Tg)は114℃だった。
得られた樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして硬化物(プリズムレンズシート)を得た。
評価結果
離型性:○、型再現性:○、密着性:○、透過率:×、硬化収縮率:5.9%
【0060】
比較例4
成分(A)として合成例1で得られた化合物35部、成分(B)としてBP−4PA 35部、成分(C)としてダロキュア1173 3部、成分(D)としてIBXA 30部を60℃に加温、混合し、本発明の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物の粘度は870mPa・sであった。また、実施例1と同様にして得た樹脂層の屈折率(25℃)は1.530であり、ガラス転移温度(Tg)は88℃だった。
得られた樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして硬化物(プリズムレンズシート)を得た。
評価結果
離型性:○、型再現性:○、密着性:○、透過率:○、硬化収縮率:5.4%
【0061】
比較例5
成分(A)として合成例1で得られた化合物35部、成分(B)としてBP−4PA 40部、成分(C)としてダロキュア1173 3部、成分(D)としてFA−513AS 25部を60℃に加温、混合し、本発明の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物の粘度は1500mPa・sであった。また、実施例1と同様にして得た樹脂層の屈折率(25℃)は1.539であり、ガラス転移温度(Tg)は83℃だった。
得られた樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして硬化物(プリズムレンズシート)を得た。
評価結果
離型性:○、型再現性:○、密着性:○、透過率:○、硬化収縮率:5.3%
【0062】
比較例6
成分(A)として合成例1で得られた化合物50部、成分(B)としてBPE−4A 20部、成分(C)としてイルガキュアー184 3部、成分(D)としてRM−1001 30部を60℃に加温、混合し、本発明の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物の粘度は2000mPa・sであった。また、実施例1と同様にして得た樹脂層の屈折率(25℃)は1.549であり、ガラス転移温度(Tg)は112℃だった。
得られた樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして硬化物(プリズムレンズシート)を得た。
評価結果
離型性:○、型再現性:○、密着性:○、透過率:○、硬化収縮率:5.9%
【0063】
比較例7
成分(A)として合成例1で得られた化合物60部、成分(C)としてダロキュア1173 3部、成分(D)としてテトラヒドロフルフリルアクリレート40部を60℃に加温、混合し、本発明の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物の粘度は260mPa・sであった。また、実施例1と同様にして得た樹脂層の屈折率(25℃)は1.524であり、ガラス転移温度(Tg)は52℃だった。
得られた樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして硬化物(プリズムレンズシート)を得た。
評価結果
離型性:○、型再現性:○、密着性:○、透過率:○、硬化収縮率:7.6%
【0064】
実施例1〜4及び比較例1〜7の評価結果から明らかなように、特定の組成を有する本発明の樹脂組成物は離型性、型再現性に優れている上、基板フィルムとの密着性が良好であり、透過率、ガラス転移温度(Tg)も高く、硬化収縮率が低い。そのため例えばレンチキュラーレンズ、プリズムレンズ、マイクロレンズ等の基材上に成型する光学レンズに適しており、特に厚膜での成型や部分的に膜厚差が大きい形状での成型を必要とする用途に適している。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物及びその硬化物は、主に、レンチキュラーレンズ、プリズムレンズ、マイクロレンズ等の基材上に成型される光学レンズに特に適するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスフェノールA骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)、ポリアルキレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(B)及び光重合開始剤(C)を含有し、(メタ)アクリレート成分の総量100質量%に対して成分(A)+成分(B)が80質量%以上である光学レンズ用エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
さらに環状構造を有する単官能(メタ)アクリレート化合物(D)を含む請求項1に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
ポリアルキレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(B)がビスフェノールAテトラプロポキシジアクリレートである請求項1又は2に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
E型粘度計で測定した25℃での粘度が4000〜8000mPa・sである請求項1〜3に記載の光学レンズ用エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
硬化物のガラス転移温度(Tg)が80℃以上であることを特徴とする請求項1〜4に記載の光学レンズ用エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
硬化物の膜厚100±5μmでの波長400nm〜780nmの各波長における透過率が90%以上である請求項1〜5に記載の光学レンズ用エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
硬化物の硬化収縮率が5%以下であることを特徴とする請求項1〜6に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物にエネルギー線を照射して得られる硬化物。
【請求項9】
請求項8に記載の硬化物を有する基材上に成型された光学レンズ。

【公開番号】特開2011−33875(P2011−33875A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180721(P2009−180721)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】