説明

光学レンズ用樹脂組成物

【課題】 高屈折率、高アッベ数で光の波長による屈折率の変化が小さく、金型からの離
型性に優れ、耐傷性、復元性に優れた硬化物を与える光学レンズ用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 S原子および2個以上の不飽和基を有し、S含量が分子量に対して20〜60%であり、かつ単独重合物のガラス転移温度が25℃以下である不飽和基含有化合物
(I)、および(I)以外の(メタ)アクリレート(II)を必須成分として含有する光学レンズ用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学レンズ用樹脂組成物に関する。詳しくはプリズムシート、コリメーターレンズ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、後反射レンズまたはホログラム等の表面に微細構造を有する光学レンズ用紫外線硬化型樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイに使用されるプリズムシートや、プロジェクションTVに使用されるフレネルレンズ、レンチキュラーレンズといった光学レンズは、熱可塑性樹脂の射出成形、あるいは熱プレス成形により製造されるのが一般的であった(例えば、特許文献1、2)。これらの製造方法では、製造時の加熱および冷却に長時間を必要とするため生産性が低く、また、光学レンズの熱収縮により、微細構造の再現性が悪く、反るという問題点があった。これらの問題点を解決するため、金型と透明樹脂基板の間に紫外線硬化型樹脂を流し込み、紫外線を照射し、樹脂を硬化させる方法が実施されてきている(例えば、特許文献3、4)。また、最近、液晶ディスプレイやプロジェクションTV等の薄型化のニーズの増大に対応して高屈折率の樹脂が提案されている(例えば、特許文献5〜8)。
【特許文献1】米国特許2482598
【特許文献2】米国特許3565978
【特許文献3】特開昭61−114233号公報
【特許文献4】特開昭63−163330号公報
【特許文献5】特開平 5− 65318号公報
【特許文献6】特開平 5−255463号公報
【特許文献7】特開平 9− 40730号公報
【特許文献8】特開平10−349645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の紫外線硬化型樹脂は、アッベ数が低く光の波長により屈折率が変化したり、硬化物が硬くもろいため、金型からの離型が難しかったり、硬化したレンズが傷つき易いという問題がある。
本発明の目的は、高屈折率、高アッベ数で光の波長による屈折率の変化が小さく、金型からの離型性に優れ、耐傷性、復元性(光学レンズでは後述の方法で評価される復元性が求められる)に優れた硬化物を与える光学レンズ用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、S原子および2個以上の不飽和基を有し、S含量が分子量に対して20〜60%であり、かつ単独重合物のガラス転移温度が25℃以下である不飽和基含有化合物(I)および(I)以外の(メタ)アクリレート(II)を必須成分として含有する光学レンズ用樹脂組成物;およびその硬化物である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の樹脂組成物の硬化物は、高屈折率、高アッベ数で光の波長により屈折率が変化しにくく、金型からの離型性、耐傷性、復元性に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の樹脂組成物における不飽和基含有化合物(I)の不飽和基には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、プロペニル基、ビニルベンジル基およびシンナミル基が含まれる。これらは1種でも2種以上が含まれていてもよい。これらのうち硬化性の観点から好ましいのはビニル基、プロペニル基、ビニルベンジル基、および特に好ましいのは(メタ)アクリロイル基である。
不飽和基の数は2個以上であり、硬化性、硬化物の靭性の観点から、好ましくは2〜4個であり、より好ましくは2個である。不飽和基数が2未満であると硬化性および硬化物の靭性が悪くなり、また硬化物の耐傷性も発現しない。
【0007】
(I)中のS含量は、(I)の分子量の20〜60%であり、好ましくは25〜55%であり、より好ましくは30〜55%である。S含量が20%未満であると屈折率が低くなり、60%を超えると硬化物が硬くなり、十分な靭性が得られない。
【0008】
(I)の単独重合物のガラス転移温度(以下、Tgと略記)は25℃以下であり、好ましくは0〜−60℃であり、より好ましくは−10〜−40℃である。Tgが25℃を超えると硬化物が硬くなり、十分な靭性が得られない。
【0009】
ここでTgは、例えば下記の方法で測定することができる。以下において部は重量部を表す。
(1)(I)100部に光(カチオン)重合開始剤[不飽和基が(メタ)アクリロイル基、ビニルベンジル基の場合は光重合開始剤(例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)を使用;不飽和基がビニル基、プロペニル基、シンナミル基の場合は光カチオン重合開始剤(例えば、トリフェニルスルホニウムホスフェート)を使用]3部を加え均一混合したものを、離型紙(表面を離型処理したガラスでもよい)上に厚さ0.1〜1mmになるように塗工する。必要に応じメチルエチルケトン等の溶剤を使用してもよい。溶剤を使用した場合、塗工後、減圧乾燥機等で溶剤を完全に除去する。
(2)1,000mJ/cm2でUV照射し、硬化させる。
(3)硬化物を幅5mm 長さ50mmの短冊状の試料に調製する。
(4)粘弾性スペクトル[例えば、ユービーエム社製の粘弾性スペクトル測定装置(Lheogel E−4000)を用いる]を測定し、tanδのピーク温度をTgとする。Tgが2つ以上ある場合は、最も低い温度をTgとする。
【0010】
(I)の数平均分子量(以下、Mnと略記)は、硬化物の靭性、組成物の硬化性、取り扱い性の観点から、好ましくは400以上、より好ましくは500〜10,000、特に好ましくは1,000〜8,000である。Mnが400以上であると硬化物が強靭となる。ここでMnは、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(以下GPCと略記)で測定できる(以下同じ)。
【0011】
不飽和基含有化合物(I)としては、具体的には例えば下記の(I−1)〜(I−4
)が挙げられる。
(I−1)S含有脂肪族ポリチオールまたはS含有脂肪族ポリオール(Mn400〜10,000またはそれ以上)の(メタ)アクリレート
(i)S含有脂肪族ジチオールまたはS含有脂肪族ジオールのジ(メタ)アクリレート
ポリチオエーテル〔アルキレンスルフィド[炭素数(以下Cと略記)2〜4]の重合物(Mn400〜10,000)等〕、ポリチオカーボネートジチオール〔ポリアルキル(C2〜6)チオカーボネートジチオール(Mn400〜10,000)、等〕、ポリジチオカーボネートジチオール〔ポリアルキル(C2〜6)ジチオカーボネートジチオール(Mn400〜10,000)等〕、ポリトリチオカーボネートジチオール〔ポリアルキル(C2〜6)トリチオカーボネートジチオール(Mn400〜10,000)等〕、およびそれらのアルキレンオキシド(以下AOと略記、C2〜6)付加物(付加モル数1〜20)等の、ジ(メタ)アクリレート等;
【0012】
(ii)S含有脂肪族トリチオールまたはS含有脂肪族トリオールのジもしくはトリ(メタ)アクリレート
トリオール(C3〜10、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン)のアルキレン(C2〜4)スルフィド付加物(Mn400〜10,000)の、ジもしくはトリ(メタ)アクリレート、並びに、トリオール(C3〜10、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン)のアルキレン(C2〜4)スルフィド付加物のAO(C2〜3)付加物(Mn400〜10,000)の、ジもしくはトリ(メタ)アクリレート等;
(iii)4官能以上のS含有脂肪族ポリチオールまたはS含有脂肪族ポリオールの(メタ)アクリレート
4官能以上のポリオール(C5〜C30、例えばペンタエリスリトール)のアルキレン(C2〜4)スルフィド付加物(Mn400〜10,000)等のジ、トリもしくはテトラ(メタ)アクリレート、並びに、4官能以上のポリオール(C5〜C30、例えばペンタエリスリトール)のアルキレン(C2〜4)スルフィド付加物のAO(C2〜3)付加物(Mn400〜10,000)の、ジ、トリもしくはテトラ(メタ)アクリレート等;
【0013】
(I−2)ポリエステル(メタ)アクリレート
ジチオールもしくはS含有ジオール(c1)と二塩基酸(c2)を反応させて得られるポリエステルジ(チ)オール(c3)(Mn400〜10,000)と、(メタ)アクリル酸との反応物
(c1)としては、低分子ジチオール[分子量94〜Mn400、例えばエチレンジチオール、プロピレンジチオール、ビス(メルカプトエチル)スルフィド]およびそのAO付加物(付加モル数1〜10)、ビスフェノールSのAO付加物(付加モル数2〜20)、水添ビスフェノールSのAO付加物(付加モル数2〜20)等が挙げられる。
(c2)としては、脂肪族二塩基酸(C2〜10、例えばシュウ酸、こはく酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸等)、脂環式二塩基酸(C5〜10、例えばシクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸)、芳香族二塩基酸(C8〜15、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸)等が挙げられる。
【0014】
該(c3)の製造条件は、特に限定されず一般的なエステル化反応の条件でよい。(c1)と(c2)の当量比は特に限定されないが、分子量制御の観点から好ましくは2:1〜1.05:1である。例えば、(c1)と(c2)を上記当量比で混合し、エステル化触媒(例えばパラトルエンスルホン酸、ジブチルチンジラウレート)を使用して、好ましくは50〜250℃、減圧下(5〜100mmHg)で8〜20時間脱水反応させて目的物を製造することができる。また、必要により溶剤(例えばトルエンまたはベンゼン)を使用することもできる。
(c3)と(メタ)アクリル酸との反応条件も、特に限定されず、一般的なエステル化反応の条件でよい。(c3)と(メタ)アクリル酸の当量比は、特に限定されないが、通常1:10〜10:1、硬化物の靭性、硬化性の観点から好ましくは1:3〜3:1、さらに好ましくは1:1.1〜2:1である。
例えば、(c3)と(メタ)アクリル酸および溶剤(例えばトルエンまたはベンゼン)を混合し、エステル化触媒[(I)の着色抑制、熱安定性の観点から好ましくは酸触媒(
例えばパラトルエンスルホン酸、硫酸)]を使用して、好ましくは50〜150℃で8〜20時間脱水反応させて目的物を製造することができる。
【0015】
(I−3)ウレタン(メタ)アクリレート
水酸基含有(メタ)アクリレート(A)、ポリイソシアネート(B)、S含有脂肪族ポリオールおよび/またはS含有脂肪族ポリチオール(C)の反応物が挙げられる。
(A)としては、下記(A1)〜(A6)が挙げられる。
(A1)(メタ)アクリル酸のAO(C2〜4)付加物(分子量116〜Mn5,000)
(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、−2−ヒドロキシプロピル、−2−ヒドロキシブチルおよびこれらのAO付加物等;
(A2)上記(A1)のε−カプロラクトン付加物(分子量230〜Mn5,000)
(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルのε−カプロラクトン2モル付加物等;
(A3)ジオールの(メタ)アクリル酸エステル(Mn355〜5,000)
Mn300〜5,000のジオール(ポリカーボネートジオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエステルジオール)のモノ(メタ)アクリル酸エステル等;
【0016】
(A4)エポキシドと(メタ)アクリル酸の反応生成物(分子量222〜4,000)
3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ビフェノキシ−2−ヒドロキシプロプル(メタ)アクリレート等;
(A5)(メタ)アクリル酸と3官能以上のポリオール(分子量92〜Mn5,000)の反応生成物(分子量146〜Mn5,000)
グリセリンモノ−およびジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ−およびジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ−、ジ−およびトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンモノ−、ジ−およびトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ−、ジ−、トリ−、テトラ−およびペンタ(メタ)アクリレート、およびそれらのAO付加物(付加モル数1〜100)等;
(A6)(メタ)アクリル酸とブタジエンポリオール(Mn300〜5,000)、イソプレンポリオール(Mn300〜5,000)、水添ブタジエンポリオール(Mn300〜5,000)および水添イソプレンポリオール(Mn300〜5,000)等の反応生成物(分子量355〜Mn5,000)
【0017】
これらのうちポリイソシアネート(B)との反応性の観点から好ましいものは(A4)であり、およびさらに好ましいものは(A1)、(A5)であり、後述する硬化物の屈折率の観点から特に好ましいものは(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルである。
また、(A)のうち、水酸基含有アクリレートおよび水酸基含有メタアクリレートはいずれも本発明における目的、効果を充分発揮するが、硬化性の観点からより好ましいのは
水酸基含有アクリレートである。
【0018】
ポリイソシアネート(B)としては、例えば下記の(B1)〜(B5)、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。ここでポリとは2以上、好ましくは2〜4である。簡略化のためジイソシアネートに限り「DI」と記載する。
(B1)C(NCO基中の炭素を除く、以下同じ)6〜20の芳香族ポリイソシアネート 例えば、1,3−および/または1,4−フェニレンDI、2,4−および/または2,6−トリレンDI(TDI)、4,4’−および/または2,4’−ジフェニルメタンDI(MDI)、m−およびp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンDI、およびm−およびp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート;および3官能以上のポリイソシアネート(トリイソシアネート等)、例えば粗製TDI、粗製MDI(ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート)および4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等;
【0019】
(B2)C2〜18の脂肪族ポリイソシアネート
例えば、エチレンDI、テトラメチレンDI、ヘキサメチレンDI(HDI)、ヘプタメチレンDI、オクタメチレンDI、ノナメチレンDI、デカメチレンDI、ドデカメチレンDI、2,2,4−および/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンDI、リジンDI、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、2,6−ジイソシアナトエチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネートおよびトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI);および3官能以上のポリイソシアネート(トリイソシアネート等)、例えば1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネートおよびリジンエステルトリイソシアネート(リジンとアルカノールアミンとの反応生成物のホスゲン化物、例えば2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート、2−および/または3−イソシアナトプロピル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等);
【0020】
(B3)C4〜45の脂環式ポリイソシアネート
例えば、イソホロンDI(以下IPDIと略記)、2,4−および/または2,6−メチルシクロヘキサンDI(水添TDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−DI(水添MDI)、シクロヘキシレンDI、メチルシクロヘキシレンDI、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキシレン−1,2−ジカルボキシレートおよび2,5−および/または2,6−ノルボルナンDI、ダイマー酸DI(DDI);および3官能以上のPI(トリイソシアネート等)、例えばビシクロヘプタントリイソシアネート;
(B4)C8〜15の芳香脂肪族ポリイソシアネート
m−および/またはp−キシリレンDI(以下、XDIと略記)、ジエチルベンゼンDIおよびα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンDI(TMXDI);
(B5)上記(B1)〜(B3)のヌレート化物
【0021】
これらのうち硬化物の屈折率の観点から好ましいものは(B1)、(B3)、(B4)であり、耐光性の観点から特に好ましいものは(B3)、(B4)である。
【0022】
S含有脂肪族ポリオールおよび/またはS含有脂肪族ポリチオール(C)としては、例えば、前記の(I−1)に挙げられたものと同じものが挙げられる。これらのうち好ましいものは硬化物の靭性の観点からS含有脂肪族ジチオールおよびS含有脂肪族ジオール[(I−1)の(i)]であり、より好ましいものはアルキレンスルフィドの重合物、ポリアルキルジチオカーボネートジチオールおよび/またはそのAO付加物である。また、結晶性の観点からC3のアルキル基を含むものが特に好ましい。
(C)のMnは、硬化物の靭性、後述する離型性の観点から好ましくは500〜5,000、より好ましくは800〜4,000、とくに好ましくは1,000〜3,000である。
【0023】
本発明における(I−3)の製造においては、(C)の他に、その他のポリオールおよび/または(ポリ)チオール(D)を併用することができる。ここにおいてその他のポリオールには、S非含有ポリオール[下記の(D1)、(D2)、(D3)]、S含有非脂肪族ポリオール[下記の(D4)、(D5)]およびS含有脂肪族ポリオール(Mn400未満)[下記の(D6)]が含まれ、その他の(ポリ)チオールには、S含有非脂肪族ポリチオール[下記の(D7)、(D8)]、S含有脂肪族ポリチオール(Mn400未満)[下記の(D9)]およびSH基とOH基をそれぞれ少なくとも1個有するもの[下記の(D10)]が含まれる。(D1)〜(D10)を以下に例示する。
【0024】
(D1)C2〜20またはそれ以上の2価アルコール
例えば、C2〜12の脂肪族2価アルコール〔(ジ)アルキレングリコール[エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−、2,3−、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールおよび3−メチルペンタンジオール(以下それぞれEG、DEG、PG、DPG、BD、HD、NPGおよびMPDと略記)、ドデカンジオール等]等〕、C6〜20の脂環式骨格を有する2価アルコール[1,3−および1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等]、C8〜20の芳香脂肪族2価アルコール[キシリレングリコール、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン等];
【0025】
(D2)C3〜Mn500の3価〜8価またはそれ以上の多価アルコール
例えば、(シクロ)アルカンポリオールおよびそれらの分子内もしくは分子間脱水物[グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールおよびジペンタエリスリトール(以下それぞれGR、TMP、PE、SOおよびDPEと略記)、1,2,6−ヘキサントリオール、エリスリトール、シクロヘキサントリオール、マンニトール、キシリトール、ソルビタン、ジグリセリンその他のポリグリセリン等]、糖類およびその誘導体[ショ糖、グルコース、フラクトース、マンノース、ラクトース、グルコシド(メチルグルコシド等)等];
(D3)ポリエーテルポリオール
上記2価アルコール、もしくは3価〜8価またはそれ以上の多価アルコールのAO付加物(Mn150〜20,000)、ポリテトラメチレングリコール(Mn400〜10,000)、ポリエステルポリオール(Mn200〜20,000)、Mn200〜10,000の、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールおよび水添ポリイソプレンポリオール、並びにこれらのポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールおよび水添ポリイソプレンポリオールのAO1〜300モル付加物が含まれる。
【0026】
(D4)Sおよび芳香環含有(非脂肪族)ポリオール(Mn274〜5,000)
ビスフェノールSのAO付加物(付加モル数2〜40)、ビスチオフェノールSのAO付加物(付加モル数2〜40)等;
(D5)Sおよび脂環式骨格含有(非脂肪族)ポリオール(Mn286〜5,000)
水添ビスフェノールSのAO付加物(付加モル数2〜40)、水添ビスチオフェノールSのAO付加物(付加モル数2〜40)等;
(D6)S含有脂肪族ポリオール(Mn400未満)
ビス(ヒドロキシエチル)スルフィド、エチレンジチオールのEO付加物、チオグリセロールのPO付加物等;
【0027】
(D7)Sおよび芳香環含有(非脂肪族)ポリチオール(Mn290〜5,000)
ビスフェノールSのアルキレンスルフィド付加物(付加モル数2〜40)、ビスチオフェノールSのアルキレンスルフィド付加物(付加モル数2〜40)、およびそれらのAO付加物(付加モル数1〜40)等;
(D8)Sおよび脂環式骨格含有(非脂肪族)ポリチオール(Mn212〜5,000)
水添ビスフェノールSのアルキレンスルフィド付加物(付加モル数2〜40)、水添ビスチオフェノールSのアルキレンスルフィド付加物(付加モル数2〜40)、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアンおよびその多量体(付加モル数2〜40)、およびそれらのAO付加物(付加モル数1〜40)等;
(D9)S含有脂肪族ポリチオール(Mn400未満)
エチレンジチオール、プロピレンジチオール、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ジチオエリスリトール、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオプロピオネート等。
(D10)SH基とOH基をそれぞれ少なくとも1個有するもの(Mn400未満)
メルカプトアルコール(メルカプトエタノール、1−メルカプト−3−プロパノール、1−メルカプト−2−プロパノール、チオグリセロール等)等。
【0028】
(D)の使用量は、(C)100重量部に対して、硬化物の屈折率、靭性の観点から好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下、特に好ましくは20もしくはそれ以下〜50重量部である。
【0029】
ウレタン(メタ)アクリレート(I−3)の製造において、イソシアネート基と活性水素基(チオール基および/または水酸基)の当量比は、保存安定性の観点から好ましくは1:1.2〜1:0.8、より好ましくは1:1.1〜1:0.9、特に好ましくは1:1.05〜1:0.95である。
【0030】
(I−3)の製造条件は、特に限定されず、一般的なウレタン化反応の条件でよい。例えば、イソシアネート成分とチオールおよび/または水酸基含有成分を混合し、好ましくは40〜150℃、より好ましくは80〜120℃で、6〜20時間反応させて目的物を製造することができる。必要により、ウレタン化触媒[例えば金属化合物(例えば、ジブチルチンオキサイド、テトラブチルチタン等)、3級アミン(例えば、トリブチルアミン、テトラエチルエチレンジアミン等)]および溶剤(例えば、メチルエチルケトン、酢酸エチル等)を使用することもできる。ウレタン化触媒の使用量は、イソシアネート成分と活性水素基(チオール基および/または水酸基)含有成分の合計重量に基づいて金属化合物の場合は好ましくは5%以下、より好ましくは0.001〜1%であり、3級アミンの場合では好ましくは10%以下、より好ましくは0.1〜5%であり、また、溶剤の使用量は、イソシアネート成分と活性水素基(チオール基および/または水酸基)含有成分の合計重量に基づいて好ましくは5,000%以下、より好ましくは5〜1,000%である。
(I−3)の製造において、(A)、(B)および(C)を反応させる順序については
特に限定されることはなく、例えば、(B)と(C)を上記条件で反応させた後、(A)を反応させる方法、(A)、(B)および(C)を一括して同時に反応させる方法のいずれであってもよい。
【0031】
ウレタン化反応は、常圧、減圧または加圧のいずれでも行うことができる。ウレタン化反応の進行状況は、例えば反応系のNCO%およびチオール基価および/または水酸基価を測定することにより判断することができる。
(I−3)のMnは、硬化物の靭性の観点からより好ましくは500〜10,000、とくに好ましくは1,000〜8,000である。
【0032】
(I−4)エポキシ(メタ)アクリレート;
例えば、前記S含有脂肪族ジチオールおよび/またはS含有脂肪族ジオールのジ(チオ)グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸の反応生成物等が挙げられる。
上記ジチオールおよび/またはジオールのグリシジルエーテル化の条件は、特に限定されず、通常のグリシジルエーテル化の条件でよく、例えばジチオールおよび/またはジオールと(チオ)エピクロロヒドリンを反応させる。ジチオールおよび/またはジオールと(チオ)エピクロロヒドリンの当量比は反応性の観点から好ましくは1:1〜1:10である。例えば、S含有脂肪族ジチオールおよび/またはS含有脂肪族ジオールに(チオ)エピクロロヒドリンを配合し、アルカリ触媒(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)を加え、30〜80℃で2〜12時間反応させたのち、生成する塩を取り除くことで行うことができる。
ジ(チオ)グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸の反応は、特に限定されず、通常のエポキシ開環反応の条件でよい。ジ(チオ)グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸の当量比は、通常1:0.9〜1:2、反応性、保存安定性の観点から好ましくは1:1〜1:1.5である。例えば、ジ(チオ)グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸を配合し、触媒(例えばトリエチルアミン、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリフェニルホスフィン)を加え、50〜150℃で4〜20時間反応させることで行うことができる。
【0033】
これらの(I−1)〜(I−4)のうち好ましいものは、硬化物の靭性の観点から(I−1)、および特に好ましいものは(I−3)である。
【0034】
上記不飽和基含有化合物(I)は熱または紫外線により重合させて硬化物とすることができる。該硬化物の屈折率は、レンズの薄型化の観点から好ましくは1.53〜1.80、より好ましくは1.55〜1.70であり、アッベ数は、光の波長による屈折率の変化低減の観点(すなわちレンズにした場合の色収差の観点)から好ましくは30〜60、より好ましくは40〜58である。上記硬化条件は後述する樹脂組成物の硬化条件と同じである。
ここにおいて、硬化物の屈折率およびアッベ数は、アッベ屈折計(例えば多波長アッベ屈折計DR−M2、アタゴ社製)を用いて25℃で測定した値である。
【0035】
本発明の樹脂組成物における(I)以外の(メタ)アクリレート(II)には、下記の(II−1)〜(II−6)が含まれ、これらは1種単独でも2種以上の併用でもいずれでもよい。
(II−1)モノ(メタ)アクリレート
(i)C1〜30の脂肪族1価アルコールの(メタ)アクリレート
ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等;
(ii)C1〜30の脂肪族1価アルコールのAO1〜30モル付加物の(メタ)アクリレート
ラウリルアルコールのエチレンオキシド(以下、EOと略記)2モル付加物の(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールのプロピレンオキシド(以下、POと略記)3モル付加物の(メタ)アクリレート等;
(iii)C6〜30の[アルキル(C1〜20)]フェノール化合物のAO1〜30モル付加物の(メタ)アクリレート
フェノールのPO3モル付加物の(メタ)アクリレート、ノニルフェノールのEO1モル付加物の(メタ)アクリレート、p−クミルフェノールのEO1モル付加物の(メタ)アクリレート等;
(iv)C5〜30の脂環式1価アルコールの(メタ)アクリレート
テトラヒドロフルフリルアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等;
(v)水酸基含有(メタ)アクリレート
前記(A)のうちのモノ(メタ)アクリレートと同じものが挙げられる。
【0036】
(II−2)ジ(メタ)アクリレート
(i)ポリオキシアルキレン(分子量106〜Mn3,000)のジ(メタ)アクリレート
ポリエチレングリコール(以下、PEGと略記)(Mn400)、ポリプロピレングリコール(以下、PPGと略記)(Mn200)およびポリテトラメチレングリコール(以下、PTMGと略記)(Mn650)の各ジ(メタ)アクリレート等;
(ii)ビスフェノール化合物のAO2〜30モル付加物のジ(メタ)アクリレート
ビスフェノールA、−Fおよび−SのEO2モルおよびPO4モル付加物の各ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA、−Fおよび−SのEO4モル付加物の各ジ(メタ)アクリレート等;
(iii)C2〜30の脂肪族2価アルコールのジ(メタ)アクリレート
EG、NPGおよびHDの各ジ(メタ)アクリレート等;
(iv)C6〜30の脂環式骨格を有する2価アルコールのジ(メタ)アクリレート
ジメチロールトリシクロデカンのジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールのジ(メタ)アクリレートおよび水素化ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート等;
【0037】
(II−3)ポリ(n=3〜6またはそれ以上)(メタ)アクリレート
(i)C3〜40の多価(3価〜6価またはそれ以上)アルコールのポリ(メタ)アクリレート
TMPのトリ(メタ)アクリレート、TMPのPO3モルまたはEO3モル付加物のトリ(メタ)アクリレート、PEのトリ(メタ)アクリレート、PEのテトラ(メタ)アクリレート、PEのEO4モル付加物のテトラ(メタ)アクリレート、DPEのヘキサ(メタ)アクリレート等;
【0038】
(II−4)ポリエステル(メタ)アクリレート
多価(2〜4)カルボン酸、多価(2〜8またはそれ以上)アルコールおよび(メタ)アクリロイル基含有化合物のエステル化により得られる複数のエステル結合と末端に複数の(メタ)アクリロイル基を有する分子量286〜Mn4,000のポリエステル(メタ)アクリレート
多価(2〜4)カルボン酸としては、例えばC3〜20の脂肪族多価カルボン酸[例えばマロン酸、マレイン酸(無水物)、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、酸無水物の反応物(ジペンタエリスリトールと無水マレイン酸の反応物等)等]、C5〜30の脂環式多価カルボン酸[例えばシクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ(無水)フタル酸およびメチルテトラヒドロ(無水)フタル酸等]およびC8〜30の芳香族多価カルボン酸[例えばイソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸(無水物)およびトリメリット酸(無水物)等]が挙げられる。
【0039】
多価(2〜8またはそれ以上)アルコールとしては、前記(D)として例示したもののうちのポリオールが挙げられる。
(メタ)アクリロイル基含有化合物としては、C2〜30のもの、例えば(メタ)アクリル酸およびヒドロキシエチル(メタ)アクリレート挙げられる。
該ポリエステル(メタ)アクリレートの製造条件も前記(I−2)と同じでよい。
【0040】
(II−5)主鎖および/または側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するブタジエン重合体
例えばポリブタジエンジ(メタ)アクリレート(Mn500〜500,000)等;
(II−6)ジメチルポリシロキサンの主鎖および/または側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するシロキサン重合体
例えばジメチルポリシロキサンジ(メタ)アクリレート(Mn300〜20,000)等;
これらの(II)のうち樹脂組成物の取り扱い性、成形性、硬化物の靭性の観点から好ましいものは(II−2)および(II−4)であり、および特に好ましいものは(II−1)である。
【0041】
本発明の樹脂組成物中における不飽和基含有化合物(I)の配合量は好ましくは20〜70重量%であり、より好ましくは25〜60重量%である。20重量%以上であると屈折率が高くなり、また、十分な靭性が得られる。70重量%以下であると、粘度が高くならず取り扱い性が良好であり、泡残り等がなくレンズの機能を損ねることがない。
本発明の樹脂組成物における(II)の量は、(I)の重量に基づいて、組成物の取り扱い性、成形性、硬化物の靭性の観点から好ましくは40〜900重量%、より好ましくは70〜400重量%、特に好ましくは100〜250重量%である。
また、本発明の組成物における(I)と(II)の重量比は、屈折率、アッベ数、組成物の取り扱い性の観点から好ましくは70/30〜10/90、さらに好ましくは60/40〜20/80である。
【0042】
また、本発明の樹脂組成物には、硬化性の観点から、熱硬化触媒および/または光(カチオン)重合開始剤(III)を含有させることがより好ましい。これらは、単独でも2種以上併用してもよい。これらのうち、硬化速度、基板の変形の観点から光(カチオン)重合開始剤が好ましい。熱硬化触媒および/または光(カチオン)重合開始剤を加えたものは、熱および/または紫外線で硬化させることができる。
【0043】
熱硬化触媒(III−1)としては、過酸化物(t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等)およびアゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等)等が挙げられる。これらのうち本発明の樹脂組成物の安定性、反応性の観点から好ましいのは過酸化物、さらに好ましいのはt−ブチルパーオキシベンゾエート、メチルエチルケトンパーオキシドである。
【0044】
光重合開始剤(III―2)としては、ヒドロキシベンゾイル化合物(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等)、ベンゾイルホルメート化合物(メチルベンゾイルホルメート等)、チオキサントン化合物(イソプロピルチオキサントン等)、ベンゾフェノン(ベンゾフェノン等)、リン酸エステル化合物(1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等)、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。 これらのうち硬化物の着色抑制の観点から好ましいのは2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドである。
【0045】
光カチオン重合開始剤(III―3)としては、種々の光カチオン重合開始剤が使用できる。例えば、スルホニウム塩{トリフェニルスルホニウムホスフェート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート等};フルオロアンチモネート{トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルホニウム)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート等};ヨードニウム塩{例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウム テトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム テトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等};フェロセン{例えば、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe(II)ヘキサフルオロホスフェート、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe(II)ヘキサフルオロアンチモネート、2,4−シクロペンタジエン−1−イル}[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe(II)テトラフルオロボレート、2,4−シクロペンタジエン−1−イル}[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe(II)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等}が挙げられる。これらのうち好ましいのはスルホニウム塩、ヨードニウム塩であり、より好ましいのはスルホニウム塩である。
【0046】
熱硬化触媒および光(カチオン)重合開始剤の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、硬化性、耐光性の観点からそれぞれ好ましくは0.1〜20%、より好ましくは0.3〜10%、特に好ましくは0.5〜5%である。
【0047】
本発明の組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により種々の添加剤(IV)を含有させてもよい。(IV)には、離型剤(IV−1)、消泡剤(IV−2)、レベリング剤(IV−3)、シランカップリング剤(IV−4)、チクソトロピー性付与剤も
しくは増粘剤(IV−5)、スリップ剤(IV−6)、酸化防止剤(IV−7)および紫外線吸収剤(IV−8)が含まれ、これらは1種でも2種以上の併用でもよい。
(IV)全体の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常20%以下、好ましくは0.1〜5%である。
【0048】
離型剤(IV−1)としては、ナフタレンスルホン酸塩[アルカリ金属(NaおよびK等、以下同じ。)塩、アンモニウム塩等]のホルマリン縮合物(Mw2,000〜10,000)、ポリスチレンスルホン酸塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩等)、ポリアクリル酸塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩等)(Mw2,000〜10,000)、ポリ(2〜4)カルボン酸(マレイン酸/グリセリン/モノアリルエーテル共重合体等)塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩等)、カルボキシメチルセルロース(Mn1,000〜10,000)およびポリビニルアルコール(Mn1,000〜100,000)、脂肪族アルコール(C4〜30)、アルキル(C1〜30)フェノール、脂肪族(C4〜30)アミンおよび脂肪族(C4〜30)アミド等のAO(C2〜4)付加物(モル数1〜30)、C4〜30の脂肪酸(ラウリン酸、ステアリン酸等)と多価(2〜6またはそれ以上)アルコールのモノエステル化合物、C4〜30の脂肪酸のアルカリ金属塩、C4〜30の脂肪族アルコールおよび脂肪族アルコールのAO(C2〜4)1〜30モル付加物の硫酸エステルアルカリ金属塩、アルキル(C1〜30)フェノールスルホン酸のアルカリ金属塩、C4〜30の脂肪族アルコールおよび脂肪族アルコールのAO(C2〜4)1〜30モル付加物のモノまたはジリン酸エステルの塩(アルカリ金属塩、4級アンモニウム塩等)、C4〜30の脂肪族アミン塩酸塩、トリエタノールアミンとC4〜30の脂肪酸のモノエステルの無機酸(塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸等)塩、C4〜30の4級アンモニウム(ブチルトリメチルアンモニウム、ジエチルラウリルメチルアンモニウム、ジメチルジステアリルアンモニウム等)の無機酸(上記に同じ)塩等が挙げられる。
(IV−1)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常10%以下、好ましくは0.05〜5%である。
【0049】
消泡剤(IV−2)としては、C1〜6の低級アルコール(メタノール、ブタノール等)、C8〜18の高級アルコール(オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール等)、C10〜20の高級脂肪酸(オレイン酸、ステアリン酸等)、C11〜30の高級脂肪酸エステル(グリセリンモノラウレート)、リン酸エステル(トリブチルホスフェート等)、金属石けん(ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム等)、ポリエーテル[PEG(Mn200〜10,000)、PPG(Mn200〜10,000)等]、シリコーン(ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル等)および鉱物油系(シリカ粉末を鉱物油に分散させたもの)等が挙げられる。
(IV−2)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常3%以下、好ましくは0.01〜2%である。
【0050】
レベリング剤(IV−3)としては、PEG型非イオン界面活性剤(ノニルフェノールEO1〜40モル付加物、ステアリン酸EO1〜40モル付加物等)、多価アルコール型非イオン界面活性剤(ソルビタンパルミチン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸トリエステル等)、フッ素含有界面活性剤(パーフルオロアルキルEO1〜50モル付加物、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベタイン等)、変性シリコーンオイル[(IV−2)以外のもの、例えばポリエーテル変性シリコーンオイルおよび(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル]等が挙げられる。
(IV−3)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常3%以下、好ましくは0.1〜2%である。
【0051】
シランカップリング剤(IV−4)としては、アミノ基含有シランカップリング剤(γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等)、ウレイド基含有シランカップリング剤(ウレイドプロピルトリエトキシシラン等)、ビニル基含有シランカップリング剤(ビニルトリエトキシシラン等]、メタクリレート基含有シランカップリング剤(γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等)、エポキシ基含有シランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等)、イソシアネート基含有シランカップリング剤(γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等)、ポリマー型シランカップリング剤(ポリエトキシジメチルシロキサン等)、カチオン型シランカップリング剤[N−(N−ベンジル−β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等]等が挙げられる。
(IV−4)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常10%以下、好ましくは0.5〜7%である。
【0052】
チクソトロピー性付与剤もしくは増粘剤(IV−5)としては、無機チクソトロピー性付与剤(ベントナイト、炭酸カルシウム等)および有機チクソトロピー性付与剤(水添ヒマシ油ワックス、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸アルミニウム、重合アマニ油等)が挙げられる。
(IV−5)の使用量は本発明の組成物の全重量に基づいて、通常20%以下、好ましくは0.5〜10%である。
【0053】
スリップ剤(IV−6)としては、高級脂肪酸エステル(ステアリン酸ブチル等)、高級脂肪酸アミド(エチレンビスステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等)、金属石けん(ステアリン酸カルシウム、オレイン酸アルミニウム等)、ワックス[パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス等)等]およびシリコーン(例えばジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、およびフルオロシリコーンオイル)等が挙げられる。
(IV−6)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常5%以下、好ましくは0.01〜2%である。
【0054】
酸化防止剤(IV−7)としては、ヒンダードフェノール化合物〔トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル〕およびアミン化合物(n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミノメチルメタクリレート等)が挙げられる。
(IV−7)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常3%以下、好ましくは0.005〜2%である。
【0055】
紫外線吸収剤(IV−8)としては、ベンゾトリアゾール化合物[2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等]、トリアジン化合物〔2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール〕、ベンゾフェノン(2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン等)、シュウ酸アニリド化合物(2−エトキシ−2’−エチルオキサリック酸ビスアニリド等)が挙げられる。
(IV−8)の使用量は、本発明の樹脂組成物の全重量に基づいて、通常3%以下、好ましくは0.005〜2%である。
上記(IV−1)〜(IV−8)の間で添加剤が同一で重複する場合は、それぞれの添加剤が該当する添加効果を奏する量を他の添加剤としての効果に関わりなく使用するのではなく、他の添加剤としての効果も同時に得られることをも考慮し、使用目的に応じて使用量を調整するものとする。
【0056】
本発明の樹脂組成物は、前記(I)、(II)および必要により他の上記成分を配合し、例えば20〜90℃で均一に混合撹拌することで製造できる。配合の順番は特に限定されず、全組成物を同時に一括配合しても、分割して逐次的に配合してもよい。
本発明の樹脂組成物の粘度は、塗工時の温度において、好ましくは500〜5,000mPa・sである。塗工時における粘度がこの範囲内であると、成形物に泡が残らずレンズ機能を損なわない。上記の粘度に調整するために、必要に応じて溶剤で希釈することができる。溶剤の使用量は、該組成物の重量に基づいて通常2,000%以下、好ましくは10〜500%である。
【0057】
該溶剤としては、本発明の組成物中の樹脂分を溶解するものであれば特に限定されない。具体的には、C7〜10の芳香族炭化水素(例えばトルエン、キシレン)、C4〜10のエステル(例えば酢酸エチル、酢酸ブチル)、エーテルエステル(例えばジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、C4〜10のエーテル(例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン)、C3〜10のケトン(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、C1〜10のアルコール(例えばメタノール、エタノール、n−およびi−プロパノール)、C3〜6のアミド(例えばジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン)、C2〜4のスルホキシド(例えばジメチルスルホキシド)、水、およびこれらの2種以上の混合溶剤が挙げられる。
これらの溶剤のうち取り扱いの観点から好ましいのは沸点が70〜100℃の、エステル、ケトンおよびアルコール、より好ましいのは酢酸エチル、メチルエチルケトン、i−プロパノールおよびこれらの混合物である。
【0058】
本発明の樹脂組成物は、特に限定されないが、例えば次の方法で塗工、成形することができる。本発明の樹脂組成物を予め20〜50℃に温調し、例えばフレネルレンズ形状を施した金型にディスペンサー等を用いて塗工後厚み50〜150μmで塗工し、上記金型に充填した樹脂組成物の上から透明基板を空気が入らないように加圧積層し、基板上から紫外線を照射して該組成物を硬化させた後に、金型から離型しフレネルレンズシートを得る。
【0059】
本発明の樹脂組成物は熱および/または紫外線により硬化させることができる。とくに(III−1)を含有させた場合は熱によって、また(III−2、3)を含有させた場
合は紫外線によって効率的に硬化させることができる。
熱により硬化させる場合は、組成物の保存安定性、硬化物の着色抑制の観点から好ましくは50〜200℃、より好ましくは80〜180℃のオーブンで1分〜20時間加熱処理することが望ましい。溶剤を含んでいる場合は硬化する前に、溶剤を完全に除去することが望ましい。除去方法は特に限定されないが、好ましくは50〜100℃の熱風を15分〜2時間塗布面に当てて除去する。
本発明の組成物は、熱重合開始剤と光重合開始剤を併用して含有させた場合は、硬化させるエネルギーとして熱および紫外線を併用することができる。
紫外線により硬化させる場合は、紫外線照射装置は特に限定されないが、種々の紫外線照射装置(例えばアイグランデージ、アイグラフィック社製)を使用できる。使用するランプとしては、例えば高圧水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。紫外線の照射量は、硬化物の可撓性の観点から好ましい上限は10,000mJ/cm2、さらに好ましくは5,000J/cm2、組成物の硬化性の観点から好ましい下限は10mJ/cm2、さらに好ましくは100mJ/cm2である。
【0060】
上記のようにして本発明の樹脂組成物を硬化させた後の硬化物の屈折率(25℃)は、好ましくは1.54以上、さらに好ましくは1.55〜1.60またはそれ以上である。屈折率がこの範囲であるとフレネルレンズシート、レンチキュラーレンズ等を作製した場合に十分な短焦点化が可能となる。
該硬化物のアッベ数は好ましくは40〜60であり、さらに好ましくは43〜58である。アッベ数がこの範囲であるとレンズにした場合色収差の少ない(すなわち、光の波長による屈折率の変化が小さい)良好なレンズとなる。
【0061】
本発明の樹脂組成物は、例えば、フレネルレンズまたはレンチキュラーレンズの形状を有する型の表面に塗布して該紫外線硬化型樹脂組成物の層を設け、その層の上に硬質透明基板を加圧積層し、次いでその状態で該基板側から紫外線を照射して、該組成物を硬化させた後、硬化物を型から離型することにより、フレネルレンズあるいはレンチキュラーレンズ等の透過型スクリーンが得られる。硬質透明基板としては、メチルメタクリレート(共)重合物、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等が挙げられる。
【0062】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。以下において部は重量部、%は重量%を表す。 また、屈折率およびアッベ数は、アッベ屈折計(多波長アッベ屈折計DR−M2、アタゴ社製)を用いて測定した。
【0063】
合成例1
撹拌機、冷却管、滴下漏斗および温度計を備えた四つ口フラスコにトリメチレンジチオール2.7部、プロピレンスルフィド111部を配合し、0℃以下に冷却しながらトリメチルアミン5.9部をゆっくり滴下した後、室温で12時間、撹拌しながら反応させて、チオール成分(x1)を得た。(x1)のMn、S含量(%)、屈折率(25℃)を表1に示す。
次に(x1)100部にIPDI 14.7部を加え、100℃で4時間反応させた後、2−ヒドロキシエチルアクリレート7.7部、ジブチルチンオキシド0.01部を加え、70℃で8時間反応させ、ウレタンアクリレート(U1)を得た。(U1)のMn、S含量、および(U1)の単独重合物の屈折率(25℃)、Tg、アッベ数(25℃)を表2に示す。該単独重合物のTgは下記方法で測定した。
(Tg測定方法)
ウレタンアクリレート100部に、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン3部、メチルエチルケトン50部を加え、均一混合した後、離型処理した容器に厚さ1mmになるように注型し、減圧乾燥機で80℃、約20mmHgで4時間かけてメチルエチルケトンを除去する。その後、UV照射機(メタルハライドランプ)で1,000mJ/cm2の紫外線を照射し、硬化させる。得られたフィルムを幅5mm、長さ50mmの短冊状に切断し、粘弾性スペクトル測定装置[Lheogel E−4000、ユービーエム社製]で10Hzの条件でTgを測定する。
【0064】
合成例2
合成例1と同じ容器に二硫化炭素90部、臭化ナトリウム5部、メチルエチルケトン120部を仕込んだ後、120部のPOを20℃以下に保ちながら滴下した後、40℃で5時間熟成させた。減圧下で、メチルエチルケトンおよび過剰の二硫化炭素を留去した後、ろ過して、ヘテロ環化合物を得た。ヘテロ環化合物200部、トリメチレンジチオール15.9部、トリフルオロメタンスルホン酸62.9部を仕込み、60℃で5時間カチオン開環重合反応させた。80℃で3時間熟成させた後、トルエン250部を加えて溶解させ、さらにイオン交換水250部を加えて撹拌後静置した。上層のトルエン層をデカンテーションした後、トルエンを減圧下で留去して、チオカーボネート系重合体(ポリジチオカーボネートジチオール)(x2)を得た。(x2)のMn、S含量(%)、屈折率(25℃)を表1に示す。
次に(x2)100部にXDI27.4部を加え、100℃で4時間反応させた後、2−ヒドロキシエチルアクリレート11.3部、ジブチルチンオキシド0.01部を加え、70℃で4時間反応させ、ウレタンアクリレート(U2)を得た。(U2)のMn、S含量、および(U2)の単独重合物の屈折率(25℃)、Tg、アッベ数(25℃)を表2に示す。
【0065】
合成例3
合成例1と同じ容器に合成例2で得られた(x2)100部を入れ、過塩素酸アルミニウム9水塩(アルキレンオキシド付加反応触媒、以下同じ。)0.06部を投入し、混合系内を窒素で置換した後、減圧下(約20mmHg)、100℃にて1時間脱水を行った。次いでPO 33.8部を95℃にて導入した。得られたポリジチオカーボネートジオール(x3)のMn、S含量(%)、屈折率(25℃)、を表1に示す。
次に(x3)133.8部、ビス(メルカプトエチル)スルフィド15.0部、にIPDI 64.7部を加え、100℃で4時間反応させた後、2−ヒドロキシエチルアクリレート11.3部、ジブチルチンオキシド0.01部を加え、70℃で4時間反応させ、ウレタンアクリレート(U3)を得た。(U3)のMn、S含量、および(U3)の単独重合物の屈折率(25℃)、Tg、アッベ数(25℃)を表2に示す。
【0066】
比較合成例1
合成例1と同じ容器にPTMG(Mn1,000)100部、ビス(メルカプトエチル)スルフィド15.4部、XDI56.4部を加え、100℃で4時間反応させた後、2−ヒドロキシエチルアクリレート23.2部、ジブチルチンオキシド0.01部を加え、70℃で4時間反応させ、比較のウレタンアクリレート(U4)を得た。(U4)のMn、S含量、および(U4)の単独重合物の屈折率(25℃)、Tg、アッベ数(25℃)を表2に示す。
【0067】
比較合成例2
合成例1と同じ容器にビスフェノールS100部を入れ、過塩素酸アルミニウム9水塩0.06部を投入し、混合系内を窒素で置換した後、減圧下(約20mmHg)、100℃にて1時間脱水を行った。次いでEO80.7部を95℃にて導入した。次にIPDI203.7部を加え、100℃で4時間反応させた後、2−ヒドロキシエチルアクリレート106.4部、ジブチルチンオキシド0.01部を加え、70℃で4時間反応させ、比較のウレタンアクリレート(U5)を得た。(U5)のMn、S含量、および(U5)の単独重合物の屈折率(25℃)、Tg、アッベ数(25℃)を表2に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
実施例1〜6
(U1)〜(U3)を表3に示す配合比(重量比)に従って配合し、本発明の樹脂組成物(実施例1〜6)を得た。それぞれの35℃での粘度をBL型粘度計(東京計器社製)にて測定した。また、それぞれの樹脂組成物を用いて、硬化後の厚みが50μとなるような膜を調製し、紫外線を1,000mJ/cm2 照射して硬化物を得た後、25℃での屈折率、アッベ数を測定した。結果を表4に示す。
【0071】
比較例1〜4
(U4)、(U5)を表3に示す配合比(重量比)に従って配合し比較の樹脂組成物(比較例1〜4)を得た。以下実施例1〜6と同様に行い、25℃での屈折率、アッベ数を測定した。結果を表4に示す。
【0072】
試験例
実施例1〜5および比較例1〜4の樹脂組成物を用いて下記試験法に従いフレネルレンズを作製し、基板との密着性、金型からの離型性および耐傷性の試験を行った。結果を表4に示す。
【0073】
(試験法)
表3に示した紫外線硬化性樹脂組成物を35℃に温度調節し、予めクロムメッキを施したフレネルレンズの金型(50cm×50cm)にディスペンサーを用いて50〜150μmの厚みに塗工し、メチルメタクリレート系共重合物からなる厚さ2mmの基板(住友化学社製:スミペックスHT)を、上記金型に充填した樹脂組成物の上から空気が入らないように加圧積層し、メタルハライドランプを用いて紫外線を1,000mJ/cm2照射して硬化させた後に、金型から離型しフレネルレンズ(硬化物)を得た。離型時の離型性および得られたフレネルレンズの性能を次の方法で評価した。
【0074】
(i)離型性:フレネルレンズ作製時の金型からの離型の難易度
(評価基準)
○:金型からの離型が容易である
×:金型から離型が困難で離型時に変形する
(ii)泡かみ:フレネルレンズ中の気泡の有無
(評価基準)
○:気泡がない
×:気泡がある
(iii)密着性:紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物と基板との密着性
硬化物表面にナイフで1mm幅に碁盤目(10×10)を入れ、セロハンテープを貼り付け90度剥離。この時基板からの硬化物の剥離状態を観察した。
(評価基準)
○:すべての碁盤目が剥離しない
×:1個以上の碁盤目が剥離する
(iv)耐傷性:フレネルレンズの傷のつき易さ
(評価基準)
○:爪で引っかいたとき跡が残らない
×:爪で引っかいたとき跡が残る
(v)復元性
フレネルレンズに爪を押し付けて跡をつけ30分後にその跡の復元状態を観察した。
(評価基準)
○:爪の跡が残らない
×:爪の跡が残る
【0075】
【表3】

【0076】
ライトアクリレートTHF−A:テトラヒドロフルフリルアクリレート
(共栄社化学社製)
アロニックスM−110:パラクミルフェノールEO変性(EO1モル付加物)アクリ
レート (東亜合成社製)
アロニックスM−5710:2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート
(東亜合成社製)
ネオマーBA−641:ビスフェノールAのEO変性(EO4モル付加物)ジアクリ
レート (三洋化成工業社製)
ライトアクリレートEG:エチレングリコールジメタクリレート
(共栄社化学社製)
MPSMA:[ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド]
(住友精化社製)
イルガキュア184:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
(チバガイギー社製)
【0077】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の光学レンズ用樹脂組成物は、プリズムシート、コリメーターレンズ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、後反射レンズ、ホログラム等の表面に微細構造を有する
光学レンズ用組成物として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
S原子および2個以上の不飽和基を有し、S含量が分子量に対して20〜60%であり、かつ単独重合物のガラス転移温度が25℃以下である不飽和基含有化合物(I)、および(I)以外の(メタ)アクリレート(II)を必須成分として含有する光学レンズ用樹脂組成物。
【請求項2】
(I)が、水酸基含有(メタ)アクリレート(A)、ポリイソシアネート(B)、並びにS含有脂肪族ポリチオールおよび/またはS含有脂肪族ポリオール(C)から形成されるウレタン(メタ)アクリレートである請求項1記載の組成物。
【請求項3】
(C)が、ポリチオエーテル、ポリチオカーボネートジチオール、ポリジチオカーボネートジチオール、ポリトリチオカーボネートジチオールおよびそれらのアルキレンオキシド付加物の群から選ばれる少なくとも1種である請求項2記載の組成物。
【請求項4】
(I)と(II)の重量比が70/30〜10/90である請求項1〜3のいずれか記載の組成物。
【請求項5】
さらに、熱硬化触媒および/または光(カチオン)重合開始剤を含有させてなる請求項1〜4のいずれか記載の組成物。
【請求項6】
さらに、離型剤、消泡剤、レベリング剤、シランカップリング剤、チクソトロピー性付与剤もしくは増粘剤、スリップ剤、酸化防止剤および紫外線吸収剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有させてなる請求項1〜5のいずれか記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載の組成物を硬化させてなる硬化物。

【公開番号】特開2006−72346(P2006−72346A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227261(P2005−227261)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】