説明

光学ローパスフィルタ及びデジタルカメラ

【課題】静止画および動画いずれの撮影モードにおいてもモアレや偽色が低減され、高精度で小型化が実現できる。
【解決手段】第1の分離素子と、第2の分離素子とが、光の進行する順に並んで配置されており、前記光の光軸を中心として180°回転させる回転駆動部と、を有し、前記第1の分離素子は、入射する光のうち、第1の偏光成分の光と、前記第1の偏光成分の光と直交する第2の偏光成分の光と、に分離距離L(>0)だけ隔て分離し、前記第2の分離素子は、入射する光のうち、前記第1の偏光成分の光と、前記第2の偏光成分の光と、に分離距離L(>0)だけ隔て分離し、前記回転駆動部により、前記第1の分離素子に対し前記第2の分離素子を回転させることにより、前記第2の分離素子から出射する前記第1の偏光成分の光と前記第2の偏光成分の光との分離距離を、Lと、Lとに切り換えることを特徴とする光学ローパスフィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ローパスフィルタ及びこの光学ローパスフィルタを有するデジタルカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ、デジタルカメラ等の撮像機器には、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサが用いられており、画素ごとに外部信号として入る光の明暗の量を電荷の量に変換、即ち、光電変換をし、その電気信号を順次処理することによってデジタル画像を生成する。このようなイメージセンサは、イメージセンサにおける画素ピッチよりも細かい空間周波数を有する画像の撮像においては、サンプリングによる歪みが生じ、本来の画像と異なる模様(モアレ)や偽色が発生することが知られている。
【0003】
このようなモアレや偽色を防止するために、ビデオカメラ、デジタルカメラ等の撮像機器において、光学ローパスフィルタ(OLPF:Optical Low Pass Filter)を用いて画像の撮像を行っている。OLPFは、具体的には、水晶などの複屈折板を有し、入射する2次元画像を水平方向または/および垂直方向に僅かな距離だけ分離させることによって、イメージセンサ(撮像素子)に入射する画素ピッチの周波数(サンプリング周波数)付近をカットする機能を有し、モアレや偽色の現象を生じさせない工夫が施されている。
【0004】
このようなOLPFでは、撮像に必要な画素ピッチに合わせて、入射する2次元画像を特定の距離だけ分離させるものであるが、静止画と動画との間で、撮像に必要な画素数が異なることから画素ピッチも異なり、このため、分離させる適切な距離がそれぞれ異なる。よって、例えば、静止画及び動画の双方に対応するためには、分離する距離(以下、「分離距離」という。)を適切に制御することが要求される。特に、静止画だけでなく動画も撮影できるデジタルカメラについては、静止画及び動画の双方において、高精度の画質が要求される。例えば、デジタル一眼レフカメラにおいて、静止画では、1000万画素以上の画質であるのに対し、動画では、フルHD(HD:High Definition)対応であっても約200万画素と大きく異なる。よって、これらのモードに対応した適切なモアレや偽色の現象の低減が要求される。
【0005】
このように、静止画と動画との間で分離距離を変化させる方法として、カメラの光路中に、分離距離が異なる静止画用のOLPF素子と動画用のOLPF素子とを入れ換えることにより、モアレを解消する光学的ローパスフィルタが開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4306022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の光学的ローパスフィルタは、静止画対応のOLPF素子と動画対応のOLPF素子の2種類を備える必要がある。そのため、光路中にいずれか一方のOLPF素子を出し入れする機械的機構を備える必要があり、更に、2種類のOLPF素子を収納等するスペースが要求されるため、高い信頼性を得ることが困難であるとともに、小型化することが困難であるという問題を有している。
【0008】
このため、小型で容易に入射する光線の分離距離を切り換えることが可能な光学ローパスフィルタ及び、この光学ローパスフィルタを用いたデジタルカメラが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1の分離素子と、第2の分離素子とが、光の進行する順に並んで配置されており、前記第1の分離素子または前記第2の分離素子のいずれか一方、または双方に設けられた、前記光の光軸を中心として180°回転させる回転駆動部と、を有し、前記第1の分離素子は、入射する光のうち、第1の偏光成分の光と、前記第1の偏光成分の光と直交する第2の偏光成分の光と、に分離距離L(>0)だけ隔て分離し、前記第2の分離素子は、入射する光のうち、前記第1の偏光成分の光と、前記第2の偏光成分の光と、に分離距離L(>0)だけ隔て分離し、前記回転駆動部により、前記第1の分離素子に対し前記第2の分離素子を相対的に0°から180°へと回転させることにより、前記第2の分離素子から出射する前記第1の偏光成分の光と前記第2の偏光成分の光との分離距離を、L+Lに相当するLと、|L−L|に相当するLとに切り換えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記分離距離Lと前記分離距離Lとの比が、1.3〜3の範囲であり、L>Lであるとともに、10μm≦L≦32μmであり、かつ、2μm≦L≦10μmであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記分離距離Lと前記分離距離Lと、が略等しいことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記第1の分離素子は、厚さd、厚さ方向と異常光屈折率軸方向とがなす角度がθとなり、常光屈折率no1、異常光屈折率ne1を有する複屈折性材料からなり、前記分離距離Lが下記の(1)式で与えられ、
【0013】
【数1】

前記第2の分離素子は、厚さd、厚さ方向と異常光屈折率軸方向とがなす角度がθとなり、常光屈折率no2、異常光屈折率ne2を有する複屈折性材料からなり、前記分離距離Lが下記の(2)式で与えられることを特徴とする。
【0014】
【数2】

また、本発明は、前記第2の分離素子の後段に、偏光変換素子、第3の分離素子、第4の分離素子が、光の進行する順に並んで配置されており、前記第3の分離素子または前記第4の分離素子のいずれか一方、または双方に設けられた、前記光の光軸を中心として180°回転させる他の回転駆動部を有し、前記偏光変換素子は、入射する前記第1の偏光成分の光および前記第2の偏光成分の光、をそれぞれ、前記第1の偏光成分の光の成分と前記第2の偏光成分の光の成分との比が3:7〜7:3の割合の範囲となる光に変調し、前記第3の分離素子及び前記第4の分離素子は、前記偏光変換素子からの光を、前記第1の分離素子及び前記第2の分離素子により分離した方向に対し垂直方向に分離するものであって、前記第3の分離素子は、入射する光のうち、前記第1の偏光成分の光と、前記第2の偏光成分の光と、に分離距離L(>0)だけ隔て分離し、前記第4の分離素子は、入射する光のうち、前記第1の偏光成分の光と、前記第2の偏光成分の光と、に分離距離L(>0)だけ隔て、前記他の回転駆動部により、前記第3の分離素子に対し前記第4の分離素子を相対的に0°から180°へと回転させることにより、前記第4の分離素子から出射する前記第1の偏光成分の光と前記第2の偏光成分の光との分離距離を、L+Lに相当するLMXと、|L−L|に相当するLSXとに切り換えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記分離距離Lと前記分離距離Lとの比が、1.3〜3の範囲であり、LMX>LSXであるとともに、10μm≦LMX≦32μmであり、かつ、2μm≦LSX≦10μmであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、前記分離距離Lと前記分離距離Lと、が略等しいことを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、前記第3の分離素子は、厚さd、厚さ方向と異常光屈折率軸方向とがなす角度がθとなり、常光屈折率no3、異常光屈折率ne3を有する複屈折性材料からなり、前記分離距離Lが下記の(3)式で与えられ、
【0018】
【数3】

前記第4の分離素子は、厚さd、厚さ方向と異常光屈折率軸方向とがなす角度がθとなり、常光屈折率no4、異常光屈折率ne4を有する複屈折性材料からなり、前記分離距離Lが下記の(4)式で与えられることを特徴とする。
【0019】
【数4】

また、本発明は、前記第2の分離素子の後段に、偏光分離素子、第3の分離素子が、光の進行する順に並んで配置されており、前記偏光変換素子は、入射する前記第1の偏光成分の光および前記第2の偏光成分の光、をそれぞれ、前記第1の偏光成分の光の成分と前記第2の偏光成分の光の成分との比が3:7〜7:3の割合の範囲となる光に変調し、前記第3の分離素子は、前記偏光変換素子からの光を、前記第1の分離素子及び第2の分離素子により分離した方向に対し垂直方向に分離するものであって、前記第3の分離素子は、入射する光のうち、前記第1の偏光成分の光と、前記第2の偏光成分の光と、に分離距離L(>0)だけ隔て分離することを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、前記第2の分離素子の後段に、第3の分離素子、第4の分離素子が、光の進行する順に並んで配置されており、前記第3の分離素子または前記第4の分離素子のいずれか一方、または双方に設けられた、前記光の光軸を中心として180°回転させる他の回転駆動部を有し、前記第3の分離素子及び前記第4の分離素子は、前記偏光変換素子からの光を、前記第1の分離素子及び第2の分離素子により分離した方向に対し所定の角度方向に分離するものであって、前記第3の分離素子は、入射する光のうち、第3の偏光成分の光と、前記第3の偏光成分の光と直交する第4の偏光成分の光と、に分離距離L(>0)だけ隔て分離し、前記第4の分離素子は、入射する光のうち、前記第3の偏光成分の光と、前記第4の偏光成分の光と、に分離距離L(>0)だけ隔て分離し、前記他の回転駆動部により、前記第3の分離素子に対し前記第4の分離素子を相対的に0°から180°へと回転させることにより、前記第4の分離素子を出射する前記第3の偏光成分の光と前記第4の偏光成分の光との分離距離を、L+Lと、|L−L|とに切り換えることを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、前記所定の角度は、45°であることを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、前記記載の光学ローパスフィルタと、前記光学ローパスフィルタを介した光が入射するイメージセンサと、を有し、前記イメージセンサにより静止画と動画とを撮像できるデジタルカメラにおいて、前記静止画を撮像するときは前記分離距離Lとなり、前記動画を撮像するときは前記分離距離Lとなるように回転駆動部を制御することを特徴とする。
【0023】
また、本発明は、前記記載の光学ローパスフィルタと、前記光学ローパスフィルタを介した光が入射するイメージセンサと、を有し、前記イメージセンサにより静止画と動画とを撮像できるデジタルカメラにおいて、前記静止画を撮像するときは前記分離距離LSXとなり、前記動画を撮像するときは前記分離距離LMXとなるように回転駆動部を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、小型で容易に入射する光線の分離距離を切り換えることが可能な光学ローパスフィルタ及びこの光学ローパスフィルタを用いたデジタルカメラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施の形態における光学ローパスフィルタの説明図
【図2】第1の実施の形態における他の光学ローパスフィルタの説明図
【図3】第2の実施の形態における光学ローパスフィルタの説明図(1)
【図4】第2の実施の形態における光学ローパスフィルタの説明図(2)
【図5】第2の実施の形態における他の光学ローパスフィルタの説明図(1)
【図6】第2の実施の形態における他の光学ローパスフィルタの説明図(2)
【図7】第3の実施の形態における光学ローパスフィルタの説明図(1)
【図8】第3の実施の形態における光学ローパスフィルタの説明図(2)
【図9】第3の実施の形態における他の光学ローパスフィルタの説明図(1)
【図10】第3の実施の形態における他の光学ローパスフィルタの説明図(2)
【図11】第4の実施の形態における光学ローパスフィルタの説明図(1)
【図12】第4の実施の形態における光学ローパスフィルタの説明図(2)
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を実施するための形態について、以下に説明する。
【0027】
〔第1の実施の形態〕
第1の実施の形態における光学ローパスフィルタについて、図1に基づき説明する。
【0028】
本実施の形態における光学ローパスフィルタ10は、画像を撮像するためのCCD、CMOS等のイメージセンサにおいて、画像となる光が入射する側に設置されるものであり、第1の分離素子11、第2の分離素子12及び回転駆動部21を有している。第1の分離素子11及び第2の分離素子12は、互いに直交する偏光の光を分離する機能を有している。回転駆動部21は、第2の分離素子12を入射光の光軸を中心に180°回転駆動させることのできるものである。尚、光の入射方向をZ軸方向とし、第1の分離素子11及び第2の分離素子12の面はXY面となるように設置されており、外部からの光はこの順に入射するものとする。
【0029】
第1の分離素子11及び第2の分離素子12は、例えば、複屈折性材料から構成されており、この場合、厚さ(Z軸)方向に対して斜め方向に異常光屈折率軸を有する。具体的に、第1の分離素子11及び第2の分離素子12を構成する材料としては、結晶材料として、水晶、イットリウム・オルトバナデート(YVO)結晶、方解石(カルサイト:CaCO)やルチル(TiO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)などが挙げられる。また、樹脂材料であれば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、セルロース系プラスチックス、ポリオレフィンなどが挙げられる。また、複屈折性が得られる高分子液晶を含む液晶材料であってもよい。
【0030】
また、第1の分離素子11及び第2の分離素子12は、厚さ方向に対して斜め方向に異常光屈折率軸を有する複屈折性材料から構成されるものに限らない。例えば、入射する光のうち第1の偏光の光に対して厚さ方向に屈折率が一様になっているとともに、第1の偏光と直交する第2の偏光の光に対して厚さ方向に屈折率の分布が傾斜を有する材料を用いて、一方の偏光の光を屈折させる分離素子であってもよい。
【0031】
さらに、第1の偏光の光に対して回折することなく直進透過し、第2の偏光の光に対して回折する偏光性回折格子からなる分離素子であってもよい。偏光性回折格子としては、例えば、断面が周期的凹凸を有する回折格子の凸部に相当する材料として常光屈折率n、異常光屈折率n(n≠n)となる複屈折性材料、そして凹凸を充填するように、凹部には屈折率nの等方性材料を有し、例えば、nとnとを略等しくすることで、常光屈折率の偏光の光を透過させ、異常光屈折率の偏光の光を回折させることができる。また、この場合、回折効率を高くするために、回折格子の断面形状がブレーズ形状またはブレーズ形状を階段状に近似した擬似ブレーズ形状あるとよい。尚、以下、第1の分離素子11、第2の分離素子12は、斜め方向に異常光屈折率軸を有する複屈折性材料から構成されるものとして説明する。
【0032】
本実施の形態における光学ローパスフィルタ10において、第1の分離素子11の厚さをd、常光屈折率をno1、異常光屈折率をne1、異常光屈折率軸11aと入射する光が進行する方向(第1の分離素子11の厚さ方向)であるZ軸方向とがなす角度をθ、とするとき、第1の分離素子11における分離距離Lは、数1に示す式(1)で表すことができる。
【0033】
【数1】

また、第2の分離素子12の厚さをd、常光屈折率をno2、異常光屈折率をne2、異常光屈折率軸12aと入射する光が進行する方向(第2の分離素子12の厚さ方向)であるZ軸方向とがなす角度をθ、とするとき、第2の分離素子12における分離距離Lは、数2に示す式(2)で表すことができる。尚、本実施の形態における説明では、分離距離Lと分離距離Lとは互いに異なる値となるように設定されているものとするが、後述するように同じ値であってもよい。また、θとθは符号を有するものであって、ここでは、光が入射するZ軸方向を基準に、+Y方向の傾斜をプラス、−Y方向の傾斜をマイナスとして考える。
【0034】
【数2】

回転駆動部21は、第2の分離素子12を入射光の光軸(Z軸)を中心として、180°回転させることができるものであり、リング状の超音波モータ、回転駆動可能なモータ、バネ等の機構により構成されている。
【0035】
本実施の形態における光学ローパスフィルタは、回転駆動部21により、第1の分離素子11に対する第2の分離素子12の配置が、図1(a)に示す場合と図1(b)に示す場合となるように、切り換えることができる。
【0036】
図1(a)に示す場合において、第1の分離素子11及び第2の分離素子12は、ともに、Y軸方向の偏光成分の光を+Y軸方向に分離させることができるよう配置されている。即ち、X軸方向の偏光成分の光とY軸方向の偏光成分の光が含まれている光を第1の分離素子11に入射させると、X軸方向の偏光成分の光は、そのまま直進する。一方、Y軸方向の偏光成分の光はθの角度で屈折し、第1の分離素子11内を異常光屈折率軸11aに沿って進み、X軸方向の偏光成分の光に対し、+Y軸方向において、分離距離L離れた光路の光となる。このようにして、X軸方向の偏光成分の光とY軸方向の偏光成分の光とをY軸方向において分離距離L分離することができる。尚、本明細書においては、X軸方向の偏光成分の光には、X軸方向の直線偏光の光を含むものとし、Y軸方向の偏光成分の光には、Y軸方向の直線偏光の光を含むものとする。
【0037】
次に、これらの光が第2の分離素子12に入射すると、X軸方向の偏光成分の光は、そのまま直進し、Y軸方向の偏光成分の光はθの角度で屈折し、第2の分離素子12内を異常光屈折率軸12aに沿って進み、X軸方向の偏光成分の光に対し、さらに+Y軸方向において、分離距離L離れた光路の光となる。これにより、図1(a)に示す場合では、X軸方向の偏光成分の光は直進し、Y軸方向の偏光成分の光はY軸方向において、光路を分離距離L+L分離することができる。よって、CCD等のイメージセンサ40に、分離距離がL+Lとなる2つの分離した光を入射させることができる。
【0038】
次に、図1(b)に示すように、回転駆動部21により、第2の分離素子を入射光の光軸(Z軸)を中心に180°回転させる。図1(b)に示す場合では、X軸方向の偏光成分の光とY軸方向の偏光成分の光が含まれている光を第1の分離素子11に入射させると、X軸方向の偏光成分の光は、そのまま直進する。一方、Y軸方向の偏光成分の光はθの角度で屈折し、第1の分離素子11内を異常光屈折率軸11aに沿って進み、X軸方向の偏光成分の光に対し、+Y軸方向において分離距離L離れた光路の光となる。
【0039】
次に、これらの光が第2の分離素子12に入射すると、X軸方向の偏光成分の光は、そのまま直進し、Y軸方向の偏光成分の光はθの角度で屈折し、第2の分離素子12内を異常光屈折率軸12aに沿って進み、X軸方向の偏光成分の光に対し、−Y軸方向において、分離距離L離れた光路の光となる。これにより、図1(b)に示す場合では、X軸方向の偏光成分の光は直進し、Y軸方向の偏光成分の光はY軸方向において、光路を分離距離|L−L|分離することができる。尚、第1の分離素子11での分離距離Lと第2の分離素子12での分離距離Lについて、L>Lの場合も考えられるので、CCD等のイメージセンサ40に、分離距離が|L−L|となる2つの分離した光を入射させることができる。
【0040】
このようにして、回転駆動部21において、第2の分離素子12を180°回転させるか否かにより、X軸方向の偏光成分の光とY軸方向の偏光成分の光とが含まれる光をY軸方向において、イメージセンサ40に入射する光を分離距離がL+Lとなる場合と|L−L|となる場合とに、容易に切り換えることができる。
【0041】
前述したように、通常のデジタルカメラの場合では、動画撮像モードと静止画撮像モードとの画素数は異なる。よって、画素ピッチの長い動画モードの場合においては、第1の分離素子11及び第2の分離素子12を図1(a)に示すような配置にすることにより、分離距離がL+L(=L)と長くなるように設定し、画素ピッチの短い静止画モードの場合においては、回転駆動部21により第1の分離素子11及び第2の分離素子12を図1(b)に示すような配置にすることにより、分離距離が|L−L|(=L)と短くなるように設定することができる。
【0042】
尚、本実施の形態においては、第1の分離素子11及び第2の分離素子12は、分離される各々の光の光量が、略1:1となることが好ましい。
【0043】
また、上記説明では、第1の分離素子11と第2の分離素子12との厚さを異なる厚さとすること等により、第1の分離素子11における分離距離Lと第2の分離素子12における分離距離Lとが異なる場合について説明したが、図2に示すように、第1の分離素子11と第2の分離素子12の厚さを同じ厚さとすることにより、分離距離Lと分離距離Lとを等しくすることも可能である。この場合、回転駆動部21により、第2の分離素子12が回転していない状態と、180°回転させた状態とに切り換えることにより、図2(a)に示すように、X軸方向の偏光成分の光とY軸方向の偏光成分の光とを2×L分離させた状態と、図2(b)に示すように、X軸方向の偏光成分の光とY軸方向の偏光成分の光とが分離していない状態とに、切り換えることができる。
【0044】
尚、被写体によっては、静止画、動画に関係なくモアレや偽色が発生しない場合もあって、分離距離が0であることで高い解像度が得られるので、このような場合においては、分離距離Lと分離距離Lとを等しいことが好ましく、分離距離L(=0)のときはモアレや偽色が無い画像を撮影する場合、分離距離L(>0)のときはモアレや偽色が有る画像を撮影する場合、として切り替えることもできる。これは、後述する、分離距離LSX(=0)と分離距離LMX(>0)との関係、分離距離LSY(=0)と分離距離LMY(>0)との関係についても同様に、モアレや偽色が無い画像と有る画像を撮影する場合の切り替えとしても適用できる。
【0045】
また、上記説明では、本実施の形態における光学ローパスフィルタに入射する光は、X軸方向の偏光成分の光とY軸方向の偏光成分の光が含まれている光であればよく、例えば、円偏光の光等であってもよい。また、第2の分離素子12に回転駆動部21を設けた構成について説明したが、第1の分離素子11に回転駆動部を設けた構成であってもよく、更には、第1の分離素子11及び第2の分離素子12の各々に回転駆動部を設けた構成であってもよい。
【0046】
次に、デジタル一眼レフカメラの画素数に合わせた具体的な分離距離について説明する。デジタル一眼レフカメラにおいては、静止画像について約1000万画素〜約3000万画素に対応した光学ローパスフィルタ機能に加え、動画像についてフルHD画像やHD画像に対応した約100万画素〜約200万画素に最適な光学ローパスフィルタ機能に切り替えることにより、モアレや偽色を低減することが求められている。また、デジタル一眼レフカメラに用いられるCCD、CMOS等のイメージセンサ(撮像素子)の大きさは、フォーサーズサイズの約17.3mm×13.0mmから、APS−Cサイズの約23.4mm×16.7mm、そして、35mmフィルムに相当する約36mm×24mmのサイズ等が用いられる。
【0047】
これより、静止画に適用する画素間隔としては、約2μm〜約10μm程度の範囲となり、一方、フルHD画像やHD画像の動画に適用する画素間隔としては、約10〜約32μm程度の範囲となる。このように、分離距離が長くまた、広い範囲で可変できるように、第1の分離素子11、第2の分離素子12を設計する。ここで、静止画用の分離距離をL、動画用の分離距離をLとするとき、L>Lであるとともに、Lが2〜10μm程度の分離距離を有し、Lが10〜32μmの分離距離を有するとよい。尚、本実施の形態では、上述したように、分離距離Lは|L−L|に相当する値であり、分離距離LはL+Lに相当する値である。
【0048】
また、第1の分離素子11により発生する分離距離Lと、第2の分離素子12によって発生する分離距離Lは、L>Lであっても、L<Lであっても、また、L=Lであってもよい。また、分離距離L>0であるとき、LとLのうち、小さい方の分離距離を基準にしたとき、大きい方の分離距離の比が1.3〜3の範囲であるように、数1に示す式(1)及び数2に示す式(2)を調整することが好ましい。尚、分離距離L>0であって、第1の分離素子11と第2の分離素子12が同じ材料、異常光屈折率軸11a、12aの方向が平行(θ=θ)またはZ軸を基準に対称(|θ|=|θ|)である場合、厚さd、dの比を1.3〜3の範囲で調節するとよい。
【0049】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態は、1次元方向に光を分離する光学ローパスフィルタであるのに対し、第2の実施の形態は、2次元方向に光を分離する光学ローパスフィルタである。
【0050】
図3及び図4に基づき、本実施の形態における光学ローパスフィルタについて説明する。本実施の形態における光学ローパスフィルタは、第1の実施の形態における光学ローパスフィルタに、更に、同様の構成の光学ローパスフィルタを設け、偏光変換素子を組み合わせた構成のものである。
【0051】
具体的には、本実施の形態における光学ローパスフィルタは、第1の分離素子11、第2の分離素子12、偏光変換素子131、第3の分離素子113、第4の分離素子114、第1の回転駆動部121、第2の回転駆動部122を有している。尚、第1の分離素子11、第2の分離素子12及び第1の回転駆動部121は、第1の実施の形態における第1の分離素子11、第2の分離素子12及び回転駆動部21と同様のものである。
【0052】
このようにして、第1の分離素子11および第2の分離素子12により第1の光学ローパスフィルタ10が構成され、第3の分離素子113および第4の分離素子114により第2の光学ローパスフィルタ110が構成される。
【0053】
また、第3の分離素子113及び第4の分離素子114は、第1の分離素子11及び第2の分離素子12と同様の材料等により構成されており、第2の回転駆動部122により第4の分離素子114を入射光の光軸を中心として180°回転させることが可能である。
【0054】
本実施の形態における光学ローパスフィルタにおいては、厚さdを有する第3の分離素子113が、Z軸方向を基準に+X方向の傾斜で角度θとなる異常光屈折率軸を有し、厚さdを有する第4の分離素子114が、Z軸方向を基準に+X方向の傾斜で角度θとなる異常光屈折率軸を有する。また、第3の分離素子113の厚さをd、常光屈折率をno3、異常光屈折率をne3、異常光屈折率軸113aと入射する光が進行する方向(第3の分離素子113の厚さ方向)であるZ軸方向とがなす角度をθ、とするとき、分離距離Lは、数3に示す式(3)で表すことができる。
【0055】
【数3】

また、第4の分離素子114の厚さをd、常光屈折率をno4、異常光屈折率をne4、異常光屈折率軸114aと入射する光が進行する方向(第4の分離素子114の厚さ方向)であるZ軸方向とがなす角度をθ、とするとき、分離距離Lは、数4に示す式(4)で表すことができる。また、ここでも、分離距離Lと分離距離Lとは、互いに等しく設定されるものであってもよく、互いに異なるように設定されるものであってもよい。そして、θとθも符号を有するものであって、ここでは、光が入射するZ軸方向を基準に、+X方向の傾斜をプラス、−X方向の傾斜をマイナスとして考える。
【0056】
【数4】

ここで、厚さd、dおよび角度θ、θは、任意に与えることができるが、ここでは、θとθの符号が異なり、|θ|=|θ|、|θ|=|θ|とする。さらに、d=d、d=dとする。つまり、第3の分離素子113および第4の分離素子114は、第1の分離素子11および第2の分離素子12と同じ構成を有し、第1の分離素子11および第2の分離素子12に対してZ軸方向に90°回転して配置されるものと同等のものとして説明する。
【0057】
また、偏光変換素子131は、第2の分離素子12を透過したX軸方向の偏光成分(第1の偏光成分)の光と、Y軸方向の偏光成分(第2の偏光成分)の光について、それぞれ、第1の偏光成分の光と第2の偏光成分とが略同一となる光に変換する機能を有する。具体的には、入射する可視光領域の光に対して、広帯域の1/2波長板となる機能を有するかまたは、広帯域の1/4波長板となる機能を有するものであればよい。つまり、広帯域の1/2波長板の場合、好ましくは、入射する偏光成分の光の振動方向を45°の奇数倍の角度回転する偏光成分の光に変換し、広帯域の1/4波長板の場合、好ましくは、入射する偏光成分の光を円偏光の光に変換するものである。また、偏光変換素子131を出射する光のうちX軸方向の光の成分とY軸方向の光の成分との比が略同一とは、可視光領域の光について、7:3〜3:7の範囲であればよく、6:4〜4:6が好ましく、5:5の比率に近づくほどより好ましい。
【0058】
偏光変換素子131は、広帯域の1/2波長板、広帯域の1/4波長板とする場合、例えば、光が入射する方向と直交する面と平行に光学軸を有し、光学軸が厚さ方向に揃った複屈折性材料からなる波長板を、光学軸が交差するように複数枚重ねて構成されるものであってもよい。また、光学軸方向が厚さ方向を軸に螺旋している波長板を1枚で構成するかまたは、複数枚重ねるように構成されるものであってもよい。波長板の材料としては例えば、水晶、LiNbOなどの無機材料や樹脂や液晶、高分子液晶などの有機材料から構成される。
【0059】
次に、本実施の形態における光学ローパスフィルタの動作について説明する。図3及び図4は、本実施の形態における光学ローパスフィルタに入射する光の経路及び偏光状態を示す模式図である。
【0060】
第2の回転駆動部122は、第4の分離素子114を入射光の光軸(Z軸)を中心として、180°回転させることができるものであり、リング状の超音波モータ、回転駆動可能なモータ、バネ等の機構により構成されている。
【0061】
本実施の形態における光学ローパスフィルタは、第1の回転駆動部121及び第2の回転駆動部122により、第1の分離素子11に対する第2の分離素子12の配置及び第3の分離素子113に対する第4の分離素子114の配置が、図3に示す場合と図4に示す場合となるように、切り換えることができる。尚、図3及び図4における左端の図は、イメージセンサ40に照射される分離した光のスポットのイメージ(XY平面)を示すものであり、後述する図5〜図12においても同様に表示する。
【0062】
最初に、図3に示す場合について説明する。尚、図3(a)は、本実施の形態における光学ローパスフィルタをYZ面から見た図であり、図3(b)は、XZ面から見た図である。図3に示す場合において、X軸方向の偏光成分の光とY軸方向の偏光成分の光が含まれている光を第1の分離素子11に入射させた場合、X軸方向の偏光成分の光は、そのまま直進する。一方、Y軸方向の偏光成分の光はθの角度で屈折し、第1の分離素子11内を異常光屈折率軸11aに沿って進み、X軸方向の偏光成分の光に対し、+Y軸方向において、分離距離L分離した光路の光となる。
【0063】
次に、これらの光が第2の分離素子12に入射した場合、X軸方向の偏光成分の光は、そのまま直進し、Y軸方向の偏光成分の光はθの角度で屈折し、第2の分離素子12内を異常光屈折率軸12aに沿って進み、X軸方向の偏光成分の光に対し、さらに+Y軸方向において、分離距離L分離した光路の光となる。
【0064】
よって、第1の光学ローパスフィルタ10では、X軸方向の偏光成分の光とY軸方向の偏光成分の光とをY軸方向において、L+L分離することができる。ここで、分離距離L+Lは分離距離LMYである。尚、分離距離LMYの'M'は動画モード、'Y'は、分離方向がY軸方向を意味し、後述するが、'S'は静止画モード、'X'は、分離方向がX軸方向を意味する。尚、本実施の形態における分離距離LMYは、第1の実施の形態における分離距離Lに相当するものであり、本実施の形態における分離距離LSYは、第1の実施の形態における分離距離Lに相当するものである。
【0065】
この後、偏光変換素子131により、第2の分離素子12を透過したX軸方向の偏光成分(第1の偏光成分)の光と、Y軸方向の偏光成分(第2の偏光成分)の光について、それぞれ、X軸方向の偏光成分(第1の偏光成分)の光とY軸方向の偏光成分(第2の偏光成分)の光とが略同一の光量となる光に変換する。例えば、円偏光の光等に変換する。
【0066】
次に、これらの光が第3の分離素子113に入射すると、Y軸方向の偏光成分の光は、そのまま直進する。一方、X軸方向の偏光成分の光はθの角度で屈折し、第3の分離素子113内を異常光屈折率軸113aに沿って進み、X軸方向の偏光成分の光に対し、+X軸方向において、分離距離L分離した光路の光となる。
【0067】
次に、これらの光が第4の分離素子114に入射すると、Y軸方向の偏光成分の光は、そのまま直進し、X軸方向の偏光成分の光はθの角度で屈折し、第4の分離素子114内を異常光屈折率軸114aに沿って進み、X軸方向の偏光成分の光に対し、さらに+X軸方向において、分離距離L分離した光路の光となる。
【0068】
よって、第2の光学ローパスフィルタ110により、X軸方向の偏光成分の光とY軸方向の偏光成分の光とをX軸方向において、L+L分離することができる。尚、ここで、分離距離L+Lは分離距離LMXである。
【0069】
このようにして、本実施の形態における光学ローパスフィルタに入射した光は、直進する光と、Y軸方向においてL+L離れた光路の光と、X軸方向においてL+L離れた光路の光と、Y軸方向においてL+L離れ、かつ、X軸方向においてL+L離れた光路の光の4つに分離することができる。よって、CCD等のイメージセンサ40に、上記4つの分離した光を入射させることができる。
【0070】
次に、図4に示すように、第1の回転駆動部121により、第2の分離素子を入射光の光軸(Z軸)を中心に180°回転させ、同様に、第2の回転駆動部122により、第4の分離素子を入射光の光軸(Z軸)を中心に180°回転させた場合について説明する。尚、図4(a)は、本実施の形態における光学ローパスフィルタをYZ面から見た図であり、図4(b)は、XZ面から見た図である。図4に示す場合では、X軸方向の偏光成分の光とY軸方向の偏光成分の光が含まれている光を第1の分離素子11に入射させると、X軸方向の偏光成分の光は、そのまま直進する。一方、Y軸方向の偏光成分の光はθの角度で屈折し、第1の分離素子11内を異常光屈折率軸11aに沿って進み、X軸方向の偏光成分の光に対し、+Y軸方向において分離距離L離れた光路の光となる。
【0071】
次に、これらの光が第2の分離素子12に入射した場合、X軸方向の偏光成分の光は、そのまま直進し、Y軸方向の偏光成分の光はθの角度で屈折し、第2の分離素子12内を異常光屈折率軸12aに沿って進み、X軸方向の偏光成分の光に対し、−Y軸方向において、分離距離L離れた光路の光となる。
【0072】
よって、第1の光学ローパスフィルタ10により、X軸方向の偏光成分の光とY軸方向の偏光成分の光とをY軸方向において、|L−L|分離することができる。尚、ここで、分離距離|L−L|は分離距離LSYである。
【0073】
この後、偏光変換素子131により、第2の分離素子12を透過したX軸方向の偏光成分(第1の偏光成分)の光と、Y軸方向の偏光成分(第2の偏光成分)の光について、それぞれ、X軸方向の偏光成分(第1の偏光成分)の光の成分とY軸方向の偏光成分(第2の偏光成分)の光の成分が略同一の光量となる光に変換する。
【0074】
次に、これらの光が第3の分離素子113に入射すると、Y軸方向の偏光成分の光は、そのまま直進する。一方、X軸方向の偏光成分の光はθの角度で屈折し、第3の分離素子113内を異常光屈折率軸113aに沿って進み、X軸方向の偏光成分の光に対し、+X軸方向において、分離距離L離れた光路の光となる。
【0075】
次に、これらの光が第4の分離素子114に入射すると、Y軸方向の偏光成分の光は、そのまま直進し、X軸方向の偏光成分の光はθの角度で屈折し、第4の分離素子114内を異常光屈折率軸114bに沿って進み、X軸方向の偏光成分の光に対し、−X軸方向において、分離距離L離れた光路の光となる。よって、第2の光学ローパスフィルタ110により、X軸方向の偏光成分の光とY軸方向の偏光成分の光とをX軸方向において、|L−L|分離することができる。尚、ここで、分離距離|L−L|は分離距離LSXである。
【0076】
このようにして、本実施の形態における光学ローパスフィルタに入射した光は、直進する光と、Y軸方向において|L−L|離れた光路の光と、X軸方向において|L−L|離れた光路の光と、Y軸方向において|L−L|離れ、かつ、X軸方向において|L−L|離れた光路の光の4つに分離することができる。よって、CCD等のイメージセンサ40に、上記4つの分離した光を入射させることができる。
【0077】
以上より、第1の回転駆動部121において、第2の分離素子12を180°回転させるとともに、かつ、第2の回転駆動部121において、第4の分離素子114を180°回転させるか否かにより、X軸方向及びY軸方向における分離距離を容易に切り換えることができる。
【0078】
前述したように、通常のデジタルカメラの場合では、動画撮像モードと静止画撮像モードとの画素数は異なる。よって、画素ピッチの長い動画モードの場合においては、第1の分離素子11から第4の分離素子114を図3に示すような配置にすることにより、分離距離が長くなるように設定し、画素ピッチの短い静止画モードの場合においては、第1の回転駆動部121及び第2の回転駆動部122により第1の分離素子11から第4の分離素子114を図4に示すような配置にすることにより、分離距離が短くなるように設定することができる。
【0079】
また、第1の実施の形態と同様に、図5及び図6に示すように、第1の分離素子11と第2の分離素子12の厚さを同じ厚さ、第3の分離素子113と第4の分離素子114の厚さを同じ厚さとすることにより、分離距離Lと分離距離Lとを等しくし(L=L)、分離距離Lと分離距離Lとを等しく(L=L)することも可能である。この場合、第1の回転駆動部121及び第2の回転駆動部122により、第2の分離素子12及び第4の分離素子114を回転させない状態と、180°回転させた状態とに切り換えることにより制御することができる。尚、図5及び図6における左端の図は、イメージセンサ40に照射される分離した光のスポットのイメージを示すものである。
【0080】
図5に示すように、第2の分離素子12及び第4の分離素子114を回転させていない状態では、X軸方向の偏光成分の光は直進し、Y軸方向の偏光成分の光は、第1の分離素子11と第2の分離素子12によりY軸方向に2×L離れた光路の光となる。この後、偏光変換素子131により円偏光等の光となり、更に、Y軸方向の偏光成分の光は直進し、X軸方向の偏光成分の光は、第3の分離素子113と第4の分離素子114によりX軸方向に2×L離れた光路の光となる。これにより、4つの光路に分離することができる。尚、図5(a)は、本実施の形態における光学ローパスフィルタをYZ面から見た図であり、図5(b)は、XZ面から見た図である。
【0081】
一方、図6に示すように、第1の回転駆動部121及び第2の回転駆動部122により、第2の分離素子12及び第4の分離素子114を180°回転させた状態では、X軸方向の偏光成分の光は直進し、Y軸方向の偏光成分の光は、第1の分離素子11により一旦はL離れた光路の光となるが、第2の分離素子12により元に戻り、分離していない状態と同一の状態となる。この後、偏光変換素子131により円偏光の光等となり、更に、Y軸方向の偏光成分の光は直進し、X軸方向の偏光成分の光は、第3の分離素子113により一旦はL離れた光路の光となるが、第4の分離素子114により元に戻り、分離していない状態と同一の状態となる。これにより、本実施の形態における光学ローパスフィルタに入射した光は分離していない状態で、CCD等のイメージセンサ40に入射する。尚、図6(a)は、本実施の形態における光学ローパスフィルタをYZ面から見た図であり、図6(b)は、XZ面から見た図である。
【0082】
尚、第2の分離素子12に第1の回転駆動部121を設け、第4の分離素子114に第2の回転駆動部122を設けた構成について説明したが、第1の分離素子11に第1の回転駆動部を設け、第3の分離素子113に第2の回転駆動部を設けた構成であってもよい。また、第1の分離素子11、第2の分離素子12、第3の分離素子113、第4の分離素子114の各々に回転駆動部を設けた構成であってもよい。
【0083】
このように分離方向を直交させる理由は、イメージセンサの画素が2次元に配列しているため、配列される2つの直交する方向に対してモアレや偽色を低減するために、画素の配列方向に合わせて分離させるためである。また、分離距離は画素のピッチとカットする空間周波数によって異なり、画素形状が正方形の場合は、X軸方向への分離距離とY軸方向の分離距離を同じにすることが効果的である。例えば縦長の画素(Y軸方向の1画素の長さ>X軸方向の1画素の長さ)のイメージセンサの場合は、X軸方向のモアレや偽色の防止が優先される。そのため、X軸方向とY軸方向との分離距離が異なったり、また、分離する4点を結んでできる四角形が正方形に限らず、平行四辺形であったりしてもよい。
【0084】
また、第1の実施形態と同様に、分離距離LSY、LMY、および分離距離LSX、LMXは、LMY>LSYの関係および、LMX>LSXの関係を満たし、LSY、LSXが2〜10μm程度の分離距離を有し、LMY、LMXが10〜32μmの分離距離を有するとよい。さらに、分離距離LSY>0であるとき、LMY/LSYが1.3〜3であり、分離距離LSX>0であるとき、LMX/LSXが1.3〜3となるように、各分離素子の複屈折性材料、厚さ、異常光屈折率軸の角度を調整するとよい。尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
【0085】
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
【0086】
〔第3の実施の形態〕
次に、第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態は、第2の実施の形態とは異なる方法で、2次元方向に光を分離する光学ローパスフィルタである。
【0087】
図7及び図8に基づき、本実施の形態における光学ローパスフィルタについて説明する。本実施の形態における光学ローパスフィルタは、第1の実施の形態における光学ローパスフィルタに、偏光変換素子と分離素子とを設けたものである。
【0088】
具体的には、本実施の形態における光学ローパスフィルタは、第1の分離素子11、第2の分離素子12、偏光変換素子131、第3の分離素子213、回転駆動部21を有している。尚、第1の分離素子11、第2の分離素子12及び回転駆動部21は、第1の実施の形態における第1の分離素子11、第2の分離素子12及び回転駆動部21と同様のものである。また、偏光変換素子131は、第2の実施の形態における偏光変換素子131と同様のものである。また、第3の分離素子213は、第1の分離素子11及び第2の分離素子12と同様の材料等により構成されている。
【0089】
次に、本実施の形態における光学ローパスフィルタの動作について説明する。図7及び図8は、本実施の形態における光学ローパスフィルタに入射する光の経路及び偏光状態を示す模式図である。
【0090】
本実施の形態における光学ローパスフィルタは、回転駆動部21により、第1の分離素子11に対する第2の分離素子12の配置が、図7に示す場合と図8に示す場合となるように、切り換えることができる。尚、図7及び図8における左端の図は、イメージセンサ40に照射される分離した光のスポットのイメージを示すものである。
【0091】
最初に、図7に示す場合について説明する。尚、図7(a)は、本実施の形態における光学ローパスフィルタをYZ面から見た図であり、図7(b)は、XZ面から見た図である。図7に示す場合において、X軸方向の偏光成分の光とY軸方向の偏光成分の光が含まれている光を第1の分離素子11に入射させた場合、X軸方向の偏光成分の光は、そのまま直進する。一方、Y軸方向の偏光成分の光はθの角度で屈折し、第1の分離素子11内を異常光屈折率軸11aに沿って進み、X軸方向の偏光成分の光に対し、+Y軸方向において、分離距離L離れた光路の光となる。
【0092】
次に、これらの光が第2の分離素子12に入射した場合、X軸方向の偏光成分の光は、そのまま直進し、Y軸方向の偏光成分の光はθの角度で屈折し、第2の分離素子12内を異常光屈折率軸12aに沿って進み、X軸方向の偏光成分の光に対し、さらに+Y軸方向において、分離距離L離れた光路の光となる。
【0093】
これにより、X軸方向の偏光成分の光とY軸方向の偏光成分の光とをY軸方向において、L+L分離することができる。
【0094】
この後、偏光変換素子131により、第2の分離素子12を透過したX軸方向の偏光成分(第1の偏光成分)の光と、Y軸方向の偏光成分(第2の偏光成分)の光について、それぞれ、X軸方向の偏光成分(第1の偏光成分)の光とY軸方向の偏光成分(第2の偏光成分)の光とが略同一の光量となる光に変換する。
【0095】
次に、これらの光が第3の分離素子213に入射すると、Y軸方向の偏光成分の光は、そのまま直進する。一方、X軸方向の偏光成分の光はθの角度で屈折し、第3の分離素子213内を異常光屈折率軸213aに沿って進み、X軸方向の偏光成分の光に対し、+X軸方向において、分離距離L離れた光路の光となる。よって、X軸方向の偏光成分の光とY軸方向の偏光成分の光とをX軸方向において分離距離L分離することができる。
【0096】
このようにして、本実施の形態における光学ローパスフィルタに入射した光は、直進する光と、Y軸方向においてL+L離れた光路の光と、X軸方向においてL離れた光路の光と、Y軸方向においてL+L離れ、かつ、X軸方向においてL離れた光路の光の4つに分離することができる。よって、CCD等のイメージセンサ40に、上記4つに分離した光を入射させることができる。
【0097】
次に、図8に示すように、回転駆動部21により、第2の分離素子12を入射光の光軸(Z軸)を中心に180°回転させた場合について説明する。尚、図8(a)は、本実施の形態における光学ローパスフィルタをYZ面から見た図であり、図8(b)は、XZ面から見た図である。図8に示す場合では、X軸方向の偏光成分の光とY軸方向の偏光成分の光が含まれている光を第1の分離素子11に入射させると、X軸方向の偏光成分の光は、そのまま直進する。一方、Y軸方向の偏光成分の光はθの角度で屈折し、第1の分離素子11内を異常光屈折率軸11aに沿って進み、X軸方向の偏光成分の光に対し、+Y軸方向において分離距離L離れた光路の光となる。
【0098】
次に、これらの光が第2の分離素子12に入射した場合、X軸方向の偏光成分の光は、そのまま直進し、Y軸方向の偏光成分の光はθの角度で屈折し、第2の分離素子12内を異常光屈折率軸12aに沿って進み、X軸方向の偏光成分の光に対し、−Y軸方向において、分離距離L離れた光路の光となる。これにより、X軸方向の偏光成分の光とY軸方向の偏光成分の光とをY軸方向において、|L−L|分離することができる。
【0099】
この後、偏光変換素子131により、第2の分離素子12を透過したX軸方向の偏光成分(第1の偏光成分)の光と、Y軸方向の偏光成分(第2の偏光成分)の光について、それぞれ、X軸方向の偏光成分(第1の偏光成分)の光とY軸方向の偏光成分(第2の偏光成分)の光とが略同一の光量となる光に変換する。
【0100】
次に、これらの光が第3の分離素子213に入射すると、Y軸方向の偏光成分の光は、そのまま直進する。一方、X軸方向の偏光成分の光はθの角度で屈折し、第3の分離素子213内を異常光屈折率軸213aに沿って進み、X軸方向の偏光成分の光に対し、+X軸方向において、分離距離L離れた光路の光となる。よって、X軸方向の偏光成分の光の光路とY軸方向の偏光成分の光の光路とをX軸方向において分離距離L分離することができる。
【0101】
このようにして、本実施の形態における光学ローパスフィルタに入射した光は、直進する光と、Y軸方向において|L−L|離れた光路の光と、X軸方向においてL離れた光路の光と、Y軸方向において|L−L|離れ、かつ、X軸方向においてL離れた光路の光の4つに分離することができる。よって、CCD等のイメージセンサ40に、上記分離した光を入射させることができる。
【0102】
以上より、第1の回転駆動部121において、第2の分離素子12を180°回転させるか否かにより、Y軸方向における分離距離を容易に切り換えることができる。
【0103】
前述したように、通常のデジタルカメラの場合では、動画撮像モードと静止画撮像モードとの画素数は異なる。よって、画素ピッチの長い動画モードの場合においては、第1の分離素子11から第3の分離素子213を図7に示すような配置にすることにより、分離距離が長くなるように設定し、画素ピッチの短い静止画モードの場合においては、回転駆動部21により第1の分離素子11から第3の分離素子213を図8に示すような配置にすることにより、分離距離が短くなるように設定することができる。
【0104】
また、第1の実施の形態と同様に、図9及び図10に示すように、第1の分離素子11と第2の分離素子12の厚さを同じ厚さとすることにより、分離距離Lと分離距離Lとを等しくする(L=L)ことも可能である。この場合、回転駆動部21により、第2の分離素子12を回転させない状態と、180°回転させた状態とに切り換えることにより制御することができる。尚、図9及び図10における左端の図は、イメージセンサ40に照射される分離した光のスポットのイメージを示すものである。
【0105】
図9に示すように、第2の分離素子12を回転させていない状態では、X軸方向の偏光成分の光は直進し、Y軸方向の偏光成分の光は、第1の分離素子11と第2の分離素子12によりY軸方向に2×L離れた光路の光となる。この後、偏光変換素子131により円偏光の光等となり、更に、Y軸方向の偏光成分の光は直進し、X軸方向の偏光成分の光は、第3の分離素子213によりX軸方向にL離れた光路の光となる。これにより、4つの光路に分離することができる。
【0106】
一方、図10に示すように、回転駆動部21により、第2の分離素子12を180°回転させた状態では、X軸方向の偏光成分の光は直進し、Y軸方向の偏光成分の光は、第1の分離素子11により一旦はL離れた光路の光となるが、第2の分離素子12により元に戻り、分離していない状態と同一な状態となる。この後、偏光変換素子131により円偏光の光等となり、更に、Y軸方向の偏光成分の光は直進し、X軸方向の偏光成分の光は、第3の分離素子213によりL離れた光路の光となる。これにより、2つの光路に分離することができる。
【0107】
尚、第2の分離素子12に回転駆動部121を設けた構成について説明したが、第1の分離素子11に回転駆動部を設けた構成であってもよく、また、第1の分離素子11、第2の分離素子12の各々に回転駆動部を設けた構成であってもよい。
【0108】
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
【0109】
〔第4の実施の形態〕
次に、第4の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第2の実施の形態において、偏光変換素子131を有しない構成のものであって、第2の光学ローパスフィルタ310は、第2の光学ローパスフィルタ110と同様の構成にものであって、第1の光学ローパスフィルタ10に対して、Z軸を中心として45°回転した位置となるように配置する。尚、この角度が45°であれば、分離する光量の比が1:1に近づき好ましいが、この角度に限らず、分離する光の光量が略同一となる角度の範囲で設定することができる。以下は、45°回転したものとして説明する。
【0110】
具体的には、本実施の形態における光学ローパスフィルタは、第1の分離素子11、第2の分離素子12、第3の分離素子313、第4の分離素子314、第1の回転駆動部121、第2の回転駆動部122を有している。尚、第1の分離素子11、第2の分離素子12及び第1の回転駆動部121は、第1の実施の形態における第1の分離素子11、第2の分離素子12及び回転駆動部21と同様のものである。
【0111】
また、第3の分離素子313及び第4の分離素子314は、第1の分離素子11及び第2の分離素子12と同様の材料等により構成されている。
【0112】
次に、本実施の形態における光学ローパスフィルタの動作について説明する。図11及び図12は、本実施の形態における光学ローパスフィルタに入射する光の経路及び偏光状態を示す模式図である。尚、図11及び図12における左端の図は、イメージセンサ40に照射される分離した光のスポットのイメージを示すものである。
【0113】
第2の回転駆動部122は、第4の分離素子314を入射光の光軸(Z軸)を中心として、180°回転させることができるものである。
【0114】
本実施の形態における光学ローパスフィルタは、第1の回転駆動部121及び第2の回転駆動部122により、第1の分離素子11に対する第2の分離素子12の配置及び第3の分離素子313に対する第4の分離素子314の配置が、図11に示す場合と図12に示す場合となるように、切り換えることができる。
【0115】
最初に、図11に示す場合について説明する。図11に示す場合において、X軸方向の偏光成分の光とY軸方向の偏光成分の光が含まれている光を第1の分離素子11に入射させた場合、X軸方向の偏光成分の光は、そのまま直進する。一方、Y軸方向の偏光成分の光はθの角度で屈折し、第1の分離素子11内を異常光屈折率軸11aに沿って進み、X軸方向の偏光成分の光に対し、+Y軸方向において、分離距離L分離した光路の光となる。尚、図11(a)は、本実施の形態における光学ローパスフィルタをYZ面から見た図であり、図11(b)は、XZ面から見た図である。
【0116】
次に、これらの光が第2の分離素子12に入射した場合、X軸方向の偏光成分の光は、そのまま直進し、Y軸方向の偏光成分の光はθの角度で屈折し、第2の分離素子12内を異常光屈折率軸12aに沿って進み、X軸方向の偏光成分の光に対し、さらに+Y軸方向において、分離距離L分離した光路の光となる。
【0117】
よって、第1の光学ローパスフィルタ10では、X軸方向の偏光成分の光とY軸方向の偏光成分の光とをY軸方向において、L+L分離することができる。
【0118】
次に、これらの光が第3の分離素子313に入射すると、X軸方向に対し+45°の偏光成分の光(第3の偏光成分の光)は、そのまま直進する。一方、X軸方向に対し−45°の偏光成分の光(第4の偏光成分の光)はθの角度で屈折し、第3の分離素子313内を異常光屈折率軸に沿って進み、X軸方向に対し+45°の偏光成分の光に対し、分離距離L分離した光路の光となる。
【0119】
次に、これらの光が第4の分離素子314に入射すると、X軸方向に対し+45°の偏光成分の光は、そのまま直進する。一方、X軸方向に対し−45°の偏光成分の光はθの角度で屈折し、第4の分離素子314内を異常光屈折率軸に沿って進み、X軸方向に対し+45°の偏光成分の光に対し、さらに分離距離L分離した光路の光となる。
【0120】
よって、第2の光学ローパスフィルタ310により、X軸方向に対し+45°の偏光成分の光とX軸方向に対し−45°の偏光成分の光とを分離距離L+L分離することができる。
【0121】
このようにして、本実施の形態における光学ローパスフィルタに入射した光は、直進する光と、Y軸方向においてL+L離れた光路の光と、X軸方向に対し45°の方向においてL+L離れた光路の光と、Y軸方向においてL+L離れ、かつ、X軸方向に対し45°の方向においてL+L離れた光路の光の4つに分離することができる。よって、CCD等のイメージセンサ40に、上記分離した光を入射させることができる。
【0122】
次に、図12に示すように、第1の回転駆動部121により、第2の分離素子を入射光の光軸(Z軸)を中心に180°回転させ、第2の回転駆動部122により、第4の分離素子314を入射光の光軸(Z軸)を中心に180°回転させた場合について説明する。尚、図12(a)は、本実施の形態における光学ローパスフィルタをYZ面から見た図であり、図12(b)は、XZ面から見た図である。
図12に示す場合では、X軸方向の偏光成分の光とY軸方向の偏光成分の光が含まれている光を第1の分離素子11に入射させると、X軸方向の偏光成分の光は、そのまま直進する。一方、Y軸方向の偏光成分の光はθの角度で屈折し、第1の分離素子11内を異常光屈折率軸11aに沿って進み、X軸方向の偏光成分の光に対し、+Y軸方向において分離距離L分離した光路の光となる。
【0123】
次に、これらの光が第2の分離素子12に入射した場合、X軸方向の偏光成分の光は、そのまま直進し、Y軸方向の偏光成分の光はθの角度で屈折し、第2の分離素子12内を異常光屈折率軸12aに沿って進み、X軸方向の偏光成分の光に対し、−Y軸方向において、分離距離L分離した光路の光となる。
【0124】
よって、第1の光学ローパスフィルタ10により、X軸方向の偏光成分の光とY軸方向の偏光成分の光とをY軸方向において、|L−L|分離することができる。
【0125】
次に、これらの光が第3の分離素子313に入射すると、X軸方向に対し+45°の偏光成分の光は、そのまま直進する。一方、X軸方向に対し−45°の偏光成分の光はθの角度で屈折し、第3の分離素子313内を異常光屈折率軸に沿って進み、X軸方向に対し+45°の偏光成分の光に対し、分離距離L分離した光路の光となる。
【0126】
次に、これらの光が第4の分離素子314に入射すると、X軸方向に対し+45°の偏光成分の光は、そのまま直進する。一方、X軸方向に対し−45°の偏光成分の光はθの角度で屈折し、第4の分離素子314内を異常光屈折率軸に沿って進み、X軸方向に対し+45°の偏光成分の光に対し、分離距離|L−L|分離した光路の光となる。
【0127】
よって、第2の光学ローパスフィルタ310により、X軸方向に対し+45°の偏光成分の光とX軸方向に対し−45°の偏光成分の光とを分離距離|L−L|分離することができる。
【0128】
このようにして、本実施の形態における光学ローパスフィルタに入射した光は、直進する光と、Y軸方向においてL+L離れた光路の光と、X軸方向に対し45°の方向において|L−L|離れた光路の光と、Y軸方向においてL+L離れ、かつ、X軸方向に対し45°の方向において|L−L|離れた光路の光の4つに分離することができる。よって、CCD等のイメージセンサ40に、上記分離した光を入射させることができる。
【0129】
以上より、第1の回転駆動部121において、第2の分離素子12を180°回転させ、かつ、第2の回転駆動部122において、第4の分離素子314を180°回転させるか否かにより、X軸方向及びY軸方向において分離距離を切り換えることができる。尚、上記以外の内容については、第2の実施の形態と同様である。
【0130】
また、本実施の形態において第2の光学ローパスフィルタは、第2の実施の形態をもとに説明したが、これに限らず、第3の実施の形態をもとにしたものであってもよい。即ち、第3の実施の形態に係る第3の分離素子を、Z軸を中心として45°回転した位置となるように配置するものであってもよい。この場合、X軸方向に対し45°の方向における分離距離がLであって、光路を4つに分離することができる。
【実施例】
【0131】
(実施例1)
実施例1では、第1の実施形態に係る光学ローパスフィルタ10について説明する。第1の分離素子11と第2の分離素子12として、厚さ方向に対して異常光屈折率軸が45°傾いた水晶を用いる。第1の分離素子11となる水晶は、厚さ約2.05mm、第2の分離素子12となる水晶は、厚さ約1.11mmとする。そして、第1の分離素子11は、厚さをZ軸方向として、YZ平面において異常光屈折率軸が+Y軸方向に45°傾くようにして配置するとともに、第2の分離素子12は、YZ平面において異常光屈折率軸が+Y軸方向に45°傾くようにして配置することで、光学ローパスフィルタ10を得る。尚、水晶は、波長546nmの光に対する常光屈折率が1.546、異常光屈折率が1.555である。このとき、第1の分離素子11における分離距離Lは、約12.0μmであり、第2の分離素子12における分離距離Lは、約6.5μmである。
【0132】
そして、光学ローパスフィルタ10の第1の分離素子11側から、Z軸方向に沿って可視光領域でランダムな偏光の光を入射する。回転駆動部21により第2の分離素子12が回転されていない状態では、互いに直交する第1の偏光成分の光と第2の偏光成分の光とがY軸方向に分離し、分離距離が約18.5μmとなる。また、回転駆動部21により第2の分離素子12が180°回転した状態では、第2の分離素子12は、異常光屈折率軸が−Y軸方向に45°傾くように配置されるため、第1の偏光成分の光と第2の偏光成分の光がY軸方向に分離し、分離距離が約5.5μmとなり、回転駆動部21により第2の分離素子12を180°回転させていない状態と比べて短くなる。そして、この光学ローパスフィルタをデジタル一眼レフカメラの撮像素子の前面に配置し、回転駆動部21を制御することにより、動画及び静止画においてモアレ、偽色が低減される画像を撮影することができる。
【0133】
(実施例2)
実施例2では、第2の実施形態に係る光学ローパスフィルタについて説明する。第1の光学ローパスフィルタ10および第2の光学ローパスフィルタ110は、実施例1の光学ローパスフィルタ10と同じものを用いる。次に、偏光変換素子131として、可視光領域の波長の光に対して1/4波長板と略等しい位相差を発生する複屈折性材料を用いる。なお、偏光変換素子131は、光学軸が偏光変換素子131面に平行し、厚さ方向に揃ったものを使用する。
【0134】
次に、第1の光学ローパスフィルタ10、偏光変換素子131、そして、第2の光学ローパスフィルタ110の順に、厚さ方向をZ軸方向に揃えて配置するが、第2の光学ローパスフィルタ110は、第1の光学ローパスフィルタ10に対して、Z軸を回転軸として90°回転した位置に相当するように配置する。これにより、第1の光学ローパスフィルタ10では、Y軸方向に光が分離し、第2の光学ローパスフィルタ110では、X軸方向に光が分離するようにする。また、偏光変換素子131は、その光学軸がXY平面においてX軸方向(またはY軸方向)を基準に45°の角度となるように配置する。
【0135】
そして、第1の光学ローパスフィルタ10側から、Z軸方向に沿って可視光領域でランダムな偏光の光を入射する。第1の回転駆動部121及び第2の回転駆動部122により、第2の分離素子12及び第4の分離素子114を回転させていない状態では、X軸方向とY軸方向に分離して4点の光となって、これらの方向の分離距離はいずれも約18.5μmとなる。また、第1の回転駆動部121及び第2の回転駆動部122により、第2の分離素子12及び第4の分離素子114を180°回転させた状態では、X軸方向とY軸方向に分離して4点の光となって、これらの方向の分離距離はいずれも約5.5μmとなる。そして、この光学ローパスフィルタをデジタル一眼レフカメラの撮像素子の前面に配置し、第1の回転駆動部121及び第2の回転駆動部122を制御することにより、動画及び静止画においてモアレ、偽色が低減される画像を撮影することができる。
【0136】
(実施例3)
実施例3では、第3の実施形態に係る光学ローパスフィルタについて説明する。第1の光学ローパスフィルタ10は、実施例1の光学ローパスフィルタ10と同じものを用いる。また、偏光変換素子131は、実施例2と同じものを用いる。第3の分離素子213は、厚さ方向に対して異常光屈折率軸が45°傾いた、厚さ約0.94mmの水晶を用いる。
【0137】
次に、第1の光学ローパスフィルタ10、偏光変換素子131、そして、第3の分離素子213の順に、厚さ方向をZ軸方向に揃えて配置する。第3の分離素子213は、異常光屈折率軸が+X軸方向に45°傾斜するように配置し、偏光変換素子131は、その光学軸がXY平面においてX軸方向(またはY軸方向)を基準に45°の角度となるように配置する。
【0138】
そして、第1の光学ローパスフィルタ10側から、Z軸方向に沿って可視光領域でランダムな偏光の光を入射する。回転駆動部21により第2の分離素子12が回転されていない状態では、X軸方向とY軸方向に分離して4点の光となり、X軸方向の分離距離が約5.5μm、Y軸方向の分離距離が約18.5μmとなる。また、回転駆動部21により第2の分離素子12が180°回転している状態では、X軸方向とY軸方向に分離して4点の光となって、これらの方向の分離距離はいずれも約5.5μmとなる。そして、この光学ローパスフィルタをデジタル一眼レフカメラの撮像素子の前面に配置し、回転駆動部21を制御することにより、動画及び静止画においてモアレ、偽色が低減される画像を撮影することができる。
【0139】
また、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0140】
以上のように、本発明は、静止画および動画の両方を撮影でき、これらの撮影モードに応じて適切にモアレの現象を低減させることができるとともに、機械的可動部が無く、高い精度で小型化が実現できるデジタルカメラを実現することができる。
【符号の説明】
【0141】
10 (第1の)光学ローパスフィルタ
11 第1の分離素子
11a 異常光屈折率軸
12 第2の分離素子
12a 異常光屈折率軸
21 回転駆動部
40 イメージセンサ
110 第2の光学ローパスフィルタ
113 第3の分離素子
113a 異常光屈折率軸
114 第4の分離素子
114a 異常光屈折率軸
121 第1の回転駆動部
122 第2の回転駆動部
131 偏光変換素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の分離素子と、第2の分離素子とが、光の進行する順に並んで配置されており、前記第1の分離素子または前記第2の分離素子のいずれか一方、または双方に設けられた、前記光の光軸を中心として180°回転させる回転駆動部と、を有し、
前記第1の分離素子は、入射する光のうち、第1の偏光成分の光と、前記第1の偏光成分の光と直交する第2の偏光成分の光と、に分離距離L(>0)だけ隔て分離し、
前記第2の分離素子は、入射する光のうち、前記第1の偏光成分の光と、前記第2の偏光成分の光と、に分離距離L(>0)だけ隔て分離し、
前記回転駆動部により、前記第1の分離素子に対し前記第2の分離素子を相対的に0°から180°へと回転させることにより、前記第2の分離素子から出射する前記第1の偏光成分の光と前記第2の偏光成分の光との分離距離を、L+Lに相当するLと、|L−L|に相当するLとに切り換えることを特徴とする光学ローパスフィルタ。
【請求項2】
前記分離距離Lと前記分離距離Lとの比が、1.3〜3の範囲であり、
>Lであるとともに、10μm≦L≦32μmであり、かつ、2μm≦L≦10μmであることを特徴とする請求項1に記載の光学ローパスフィルタ。
【請求項3】
前記分離距離Lと前記分離距離Lと、が略等しいことを特徴とする請求項1に記載の光学ローパスフィルタ。
【請求項4】
前記第1の分離素子は、厚さd、厚さ方向と異常光屈折率軸方向とがなす角度がθとなり、常光屈折率no1、異常光屈折率ne1を有する複屈折性材料からなり、前記分離距離Lが下記の(1)式で与えられ、
【数1】

前記第2の分離素子は、厚さd、厚さ方向と異常光屈折率軸方向とがなす角度がθとなり、常光屈折率no2、異常光屈折率ne2を有する複屈折性材料からなり、前記分離距離Lが下記の(2)式で与えられ、
【数2】

ることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光学ローパスフィルタ。
【請求項5】
前記第2の分離素子の後段に、偏光変換素子、第3の分離素子、第4の分離素子が、光の進行する順に並んで配置されており、前記第3の分離素子または前記第4の分離素子のいずれか一方、または双方に設けられた、前記光の光軸を中心として180°回転させる他の回転駆動部を有し、
前記偏光変換素子は、入射する前記第1の偏光成分の光および前記第2の偏光成分の光、をそれぞれ、前記第1の偏光成分の光の成分と前記第2の偏光成分の光の成分との比が3:7〜7:3の割合の範囲となる光に変調し、
前記第3の分離素子及び前記第4の分離素子は、前記偏光変換素子からの光を、前記第1の分離素子及び前記第2の分離素子により分離した方向に対し垂直方向に分離するものであって、
前記第3の分離素子は、入射する光のうち、前記第1の偏光成分の光と、前記第2の偏光成分の光と、に分離距離L(>0)だけ隔て分離し、
前記第4の分離素子は、入射する光のうち、前記第1の偏光成分の光と、前記第2の偏光成分の光と、に分離距離L(>0)だけ隔て、
前記他の回転駆動部により、前記第3の分離素子に対し前記第4の分離素子を相対的に0°から180°へと回転させることにより、前記第4の分離素子から出射する前記第1の偏光成分の光と前記第2の偏光成分の光との分離距離を、L+Lに相当するLMXと、|L−L|に相当するLSXとに切り換えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光学ローパスフィルタ。
【請求項6】
前記分離距離Lと前記分離距離Lとの比が、1.3〜3の範囲であり、
MX>LSXであるとともに、10μm≦LMX≦32μmであり、かつ、2μm≦LSX≦10μmであることを特徴とする請求項5に記載の光学ローパスフィルタ。
【請求項7】
前記分離距離Lと前記分離距離Lと、が略等しいことを特徴とする請求項5に記載の光学ローパスフィルタ。
【請求項8】
前記第3の分離素子は、厚さd、厚さ方向と異常光屈折率軸方向とがなす角度がθとなり、常光屈折率no3、異常光屈折率ne3を有する複屈折性材料からなり、前記分離距離Lが下記の(3)式で与えられ、
【数3】

前記第4の分離素子は、厚さd、厚さ方向と異常光屈折率軸方向とがなす角度がθとなり、常光屈折率no4、異常光屈折率ne4を有する複屈折性材料からなり、前記分離距離Lが下記の(4)式で与えられ、
【数4】

ることを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の光学ローパスフィルタ。
【請求項9】
前記第2の分離素子の後段に、偏光分離素子、第3の分離素子が、光の進行する順に並んで配置されており、
前記偏光変換素子は、入射する前記第1の偏光成分の光および前記第2の偏光成分の光、をそれぞれ、前記第1の偏光成分の光の成分と前記第2の偏光成分の光の成分との比が3:7〜7:3の割合の範囲となる光に変調し、
前記第3の分離素子は、前記偏光変換素子からの光を、前記第1の分離素子及び第2の分離素子により分離した方向に対し垂直方向に分離するものであって、
前記第3の分離素子は、入射する光のうち、前記第1の偏光成分の光と、前記第2の偏光成分の光と、に分離距離L(>0)だけ隔て分離することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光学ローパスフィルタ。
【請求項10】
前記第2の分離素子の後段に、第3の分離素子、第4の分離素子が、光の進行する順に並んで配置されており、前記第3の分離素子または前記第4の分離素子のいずれか一方、または双方に設けられた、前記光の光軸を中心として180°回転させる他の回転駆動部を有し、
前記第3の分離素子及び前記第4の分離素子は、前記偏光変換素子からの光を、前記第1の分離素子及び第2の分離素子により分離した方向に対し所定の角度方向に分離するものであって、
前記第3の分離素子は、入射する光のうち、第3の偏光成分の光と、前記第3の偏光成分の光と直交する第4の偏光成分の光と、に分離距離L(>0)だけ隔て分離し、
前記第4の分離素子は、入射する光のうち、前記第3の偏光成分の光と、前記第4の偏光成分の光と、に分離距離L(>0)だけ隔て分離し、
前記他の回転駆動部により、前記第3の分離素子に対し前記第4の分離素子を相対的に0°から180°へと回転させることにより、前記第4の分離素子を出射する前記第3の偏光成分の光と前記第4の偏光成分の光との分離距離を、L+Lと、|L−L|とに切り換えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光学ローパスフィルタ。
【請求項11】
前記所定の角度は、45°であることを特徴とする請求項10に記載の光学ローパスフィルタ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の光学ローパスフィルタと、
前記光学ローパスフィルタを介した光が入射するイメージセンサと、を有し、
前記イメージセンサにより静止画と動画とを撮像できるデジタルカメラにおいて、
前記静止画を撮像するときは前記分離距離Lとなり、前記動画を撮像するときは前記分離距離Lとなるように回転駆動部を制御することを特徴とするデジタルカメラ。
【請求項13】
請求項5から8のいずれかに記載の光学ローパスフィルタと、
前記光学ローパスフィルタを介した光が入射するイメージセンサと、を有し、
前記イメージセンサにより静止画と動画とを撮像できるデジタルカメラにおいて、
前記静止画を撮像するときは前記分離距離LSXとなり、前記動画を撮像するときは前記分離距離LMXとなるように回転駆動部を制御することを特徴とするデジタルカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−232650(P2011−232650A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104352(P2010−104352)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】