説明

光学式測距装置およびそれを搭載した電子機器

【課題】長距離を高精度に検出可能な小型の光学式測距装置を提供する。
【解決手段】受光レンズ40の下に配置された第1反射体43と受光素子33の上に配置された第2反射体41とによって受光軸を折り曲げることによって、受光レンズ40の下側の空間を有効に利用して焦点距離を大きく取ることができる。然も、測距モジュールの外部に光路変更手段を設ける場合よりも小型化することができる。こうして、長距離を高精度に検出可能な小型の光学式測距装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、物体までの距離を光学的に検出する光学式測距装置およびそれを搭載した電子機器に関し、特に長距離を高精度に検出可能な小型の光学式測距装置およびそれを搭載した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、図5に示すように、測定対象物にスポット光を照射し、その反射光を受光して、三角測距によって上記測定対象物までの距離を測定する測距装置が、多数提案されている。図5に示すような測距装置においては、発光レンズ2の中心を原点O(0,0)、発光軸をy軸、原点Oで発光軸5と直交する軸をx軸として、点A(0,−d)に配置された発光素子1から出射された光束は、原点Oに配置された発光レンズ2によって略平行光束となり、測定対象物3上の点B(0,y)に光スポットを照射する。測定対象物3によって反射された光束は点C(L,0)に配置された受光レンズ4によって集光され、点Aからx軸方向に延在する線上に配置された位置検出素子(例えば、PSD:Position Sensitive Detector)6上の点D(L+l,−d)に結像されて受光スポットを形成する。
【0003】
ここで、上記受光レンズ4の中心である点Cを通るy軸に平行な線が位置検出素子6と交差する点を点E(L,−d)とすると、三角形OBCと三角形ECDとは相似形となる。したがって、位置検出素子6で受光スポットの位置を検出して辺ED(=l)を測定し、式(1)を演算することによって、

【0004】
測定対象物3までの距離yを検出することができる。これが、一般的な三角測距の原理である。
【0005】
上記位置検出素子6としては、上記PSDや複数のフォトダイオードが配置されたリニアセンサやイメージセンサ等が用いられ、位置検出素子6上に照射された受光スポットの光重心位置を検出する。
【0006】
ここで、上記位置検出素子6の検出分解能をΔlとすると、測定距離yの分解能Δyは式(2)で表すことができる。

【0007】
つまり、使用する位置検出素子6を選定すると位置検出素子6の検出分解能Δlが決まるので、測定距離yの分解能Δyは、発光レンズ2と受光レンズ4との間の距離L(以下、基線長と言う)と受光レンズ4の焦点距離dによって決まり、夫々が大きい程測定距離yの分解能Δyは小さくなるため距離検出分解能が高くなる。特に、遠方の測定対象物の距離を測定する場合には、測定距離yが大きくなるので、分解能Δyを小さくするためには基線長Lあるいは焦点距離dを大きくする必要がある。
【0008】
図6は、従来の光学式測距装置の概略構成を示す図である。リードフレーム11上に発光素子12と受光素子13とが所定の位置に実装され、夫々が透光性樹脂によって個別に封止されて発光側1次モールド体14および受光側1次モールド体15を形成している。両1次モールド体14,15は遮光性樹脂によって封止されて2次モールド体16を形成している。そして、発光レンズ17と受光レンズ18とが備えられたレンズホルダ19を2次モールド体16に嵌め合わせることによって、光学式測距装置が形成されている。
【0009】
このような従来の光学式測距装置による遠方の測定対象物の距離の測定は、図7に示すように、受光レンズ18の焦点距離dを大きくするか、図8に示すように、発光レンズ17と受光レンズ18との中心間距離である基線長Lを大きくすることによって、達成することができる。しかしながら、何れの場合も、光学式測距装置全体が大きくなり、高価になると共に、これらの光学式測距装置を搭載する電子機器にスペースが必要となり、扱いづらいものとなってしまう。
【0010】
このような問題に対処するため、特開平7‐98205号公報(特許文献1)に開示された距離計測装置、および、特開2011‐145115号公報(特許文献2)に開示された測距装置が提案されている。
【0011】
上記特許文献1の距離計測装置においては、図9に示すように、2つの受光レンズ22B,22Rと2つの光センサ23B,23Rを備えた測距モジュール21の外部に、測距対象物からの2経路の入射光の光束を中心軸に近づく方向に光路変更し、且つ第1レンズ22Bおよび第2レンズ22Rを通過させるように光路変更を行う2対のミラー24B,25B;24R,25Rでなる光路変更手段を備えている。こうして、基線長Bを大きくすることによって、精度の高い距離値を計測できるようにしている。
【0012】
また、上記特許文献2の測距装置においては、図10に示すように、一対の測距用レンズ26a,26bを有するレンズアレイ部材26と、一対の測距用レンズ26a,26bにより撮像素子27における撮像領域27a,27bの夫々に被写体像が形成されるように、各測距用レンズ26a,26bからの像形成光束を反射する一対の反射部材28a,28bを有するミラーアレイ部材28および中間ミラー部材29とを備えている。こうして、焦点距離を大きくし、且つ温度変化による基線長変化を相殺することによって、精度の高い距離値を計測できるようにしている。
【0013】
しかしながら、上記従来の距離計測装置および測距装置には以下のような問題がある。
【0014】
すなわち、特許文献1の距離計測装置においては、2つの受光レンズ22B,22Rと2つの光センサ23B,23Rを備えた測距モジュール21の外部に上記光路変更手段を備えている。したがって、上記光路変更手段によって光路を変更した後の光を受光レンズ22B,22Rで集光することになり、全光学系を含める本距離計測装置のサイズが大きくなってしまうという問題がある。
【0015】
また、特許文献2の測距装置においては、レンズアレイ部材26とミラーアレイ部材28とを組み合わせた光学系となっており、集光効果(曲面)を有するレンズ面は1面のみとなっている。そのため、測距用レンズ26a,26bのレンズ径(レンズの大きさ)に対して集光効果を期待できず、光量不足による測距精度低下となるおそれがある。その上、焦点距離の大きな光学系となるので、本測距装置のサイズが大きなものとなってしまうという問題がある。
【0016】
さらに、反射体として上記ミラーアレイ部材28と中間ミラー部材29とを配置しているため、それらの位置調整も難しく、上記位置調整が正しく行われない場合には、ミラーアレイ部材28における反射部材28a,28bの反射面28c,28dと中間ミラー部材29の反射面29a,29bとの間にはプラスチックス材料と空気との異なる媒質が存在するため、プラスチックス材料と空気との界面において減衰,屈折,表面反射等の光学上での不具合を生じる可能性があるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平7‐98205号公報
【特許文献2】特開2011‐145115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
そこで、この発明の課題は、長距離を高精度に検出可能な小型の光学式測距装置およびそれを搭載した電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、この発明の光学式測距装置は、
表面に配線が形成された基板上あるいはリードフレーム上に実装された発光素子と、
上記基板上あるいは上記リードフレーム上に実装されると共に、上記発光素子から出射されて測定対象物で反射された光によって形成される光スポットの位置を検出する受光素子と、
上記受光素子から出力された信号を処理する信号処理部と、
上記発光素子を透光性樹脂によって封止してなる発光側1次モールド部と、
上記発光側1次モールド部,上記受光素子および上記信号処理部を遮光性樹脂によって一体に封止してなる2次モールド部と、
上記発光素子から出射された光を上記測定対象物に向けて投光する発光レンズと、
上記測定対象物で反射された光を集光する受光レンズと、
上記発光レンズを含む発光側光学系と上記受光レンズを含む受光側光学系との間を遮光する遮光壁と、
上記受光レンズと上記受光素子との間に配置されると共に、上記受光レンズによって集光された光束の光軸の向きを変更して上記受光素子に導く第1反射面および第2反射面と
を備え
上記第1反射面と上記第2反射面との間には単一の媒質が存在している
ことを特徴としている。
【0020】
上記構成によれば、測定対象物で反射された光を集光する受光レンズと上記集光された光の光スポットの位置を検出する受光素子との間に配置された、第1反射面および第2反射面によって、上記受光レンズによって集光された光束の光軸の向きを変更して、上記受光素子に到達するようにしている。したがって、焦点距離および基線長を大きくとることができる。然も、発光・受光素子および発光・受光レンズを備えた測距モジュールの外部に光路変更手段を備える場合よりも小型化することができる。
【0021】
その結果、長距離を高精度に検出可能な光学式測距装置を、小型に構成することができる。
【0022】
さらに、上記第1反射面と上記第2反射面との間には単一の媒質が存在している。こうして、異なる媒質が存在している場合のように、異なる媒質の界面で発生する光の減衰,屈折,表面反射等の不具合を無くすことができる。
【0023】
また、1実施の形態の光学式測距装置では、
上記第1反射面は、上記受光レンズによって集光された光束の光軸の向きを上記発光レンズの側に変更し、
上記第2反射面は、上記第1反射面からの光束の光軸の向きを上記受光素子の側に変更する。
【0024】
この実施の形態によれば、上記第1反射面は、上記受光レンズによって集光された光束の光軸の向きを上記発光レンズの側に変更するようにしている。したがって、上記受光レンズの下部領域を用いて上記光軸の向きを変更することができ、本光学式測距装置をさらに小型化することができる。
【0025】
また、1実施の形態の光学式測距装置では、
上記第2反射面は、第2反射体の一面を構成しており、
上記第2反射体は、上記受光レンズと一体に形成されている。
【0026】
この実施の形態によれば、上記第2反射面を有する第2反射体は、上記受光レンズと一体に形成するようにしている。したがって、上記受光レンズで受光された光束の光軸の向きを上記受光素子に到達するように変更するための特別な付加部材や付加工程を必要とせず、安価に本発明の光学式測距装置を形成することができる。
【0027】
さらに、上記第2反射体を上記受光レンズと一体に形成しているので、上記受光レンズと上記第2反射体との位置精度を金型レベルの高い精度で配置することができる。したがって、特許文献2の測距装置のごとく、レンズアレイ部材および撮像素子とは別体にミラーアレイ部材および中間ミラー部材を備える場合よりも、上記第2反射体と上記受光素子との位置調整が容易であり、本光学式測距装置を高精度化することができ、尚且つ、小型化を図ることができる。
【0028】
また、1実施の形態の光学式測距装置では、
上記第2反射面は、第2反射体の一面を構成しており、
上記第2反射体は、上記発光レンズおよび上記受光レンズを保持するレンズホルダと一体に形成されている。
【0029】
この実施の形態によれば、上記第2反射面を含む第2反射体は、上記発光レンズおよび上記受光レンズを保持するレンズホルダと一体に形成される。したがって、上記受光レンズで受光された光束の光軸の向きを上記受光素子に到達するように変更するための特別な付加部材や付加工程を、不要にすることができる。したがって、安価に本光学式測距装置を形成することが可能になる。
【0030】
さらに、上記第2反射体を上記レンズホルダと一体に形成しているので、上記レンズホルダと上記第2反射体との位置精度を金型レベルの高い精度で配置することができる。したがって、特許文献2の測距装置のごとく、レンズアレイ部材および撮像素子とは別体にミラーアレイ部材および中間ミラー部材を備える場合よりも、上記第2反射体と上記レンズホルダとの位置調整が容易であり、本光学式測距装置を高精度化することができ、尚且つ、小型化を図ることができる。
【0031】
また、1実施の形態の光学式測距装置では、
上記発光レンズおよび上記受光レンズと上記2次モールド部との間には、遮光性樹脂からなる上記遮光壁を含む反射体が設けられており、
上記第1反射面および上記第2反射面は、上記反射体に形成されている。
【0032】
この実施の形態によれば、上記第1反射面および上記第2反射面は、遮光性樹脂によって反射体を形成する際に、同時に形成することができる。したがって、上記第1反射面と上記第2反射面とを夫々個別に形成して組み立てる場合に比べて、両反射面の配置精度を高くすることができる。したがって、本光学式測距装置をさらに高精度化することができる。
【0033】
また、1実施の形態の光学式測距装置では、
上記受光素子および上記信号処理部を透光性樹脂によって封止してなる受光側1次モールド部を備え、
上記2次モールド部は、上記発光側1次モールド部と上記受光側1次モールド部とを上記遮光性樹脂によって一体に封止することによって、上記発光側1次モールド部,上記受光素子および上記信号処理部を上記遮光性樹脂によって一体に封止しており、
上記第1反射面は、上記基板あるいは上記リードフレームを介して上記受光側1次モールド部と一体に形成されている。
【0034】
この実施の形態によれば、上記第1反射面は、上記基板あるいは上記リードフレームを介して上記受光側1次モールド部と一体に形成されているので、上記第1反射面を上記受光側1次モールド部と同時に形成することができる。したがって、上記受光レンズで受光された光束の光軸の向きを上記受光素子に到達するように変更するための特別な付加部材や付加工程を、不要にすることができる。したがって、安価に本光学式測距装置を形成することが可能になる。
【0035】
また、1実施の形態の光学式測距装置では、
上記第1反射面は、第1反射体の一面を構成しており、
上記受光側1次モールド部と上記第1反射体とは互いに分離しており、
上記受光側1次モールド部と上記第1反射体との間には遮光部が形成されている。
【0036】
この実施の形態によれば、上記受光側1次モールド部と上記第1反射体とは互いに分離しており、両者の間には遮光部が形成されている。そのため、上記第1反射体の内部に侵入して内部反射によって上記受光素子に入射されるノイズ光を低減することができ、本光学式測距装置の高精度化を図ることができる。
【0037】
また、1実施の形態の光学式測距装置では、
上記遮光部は、上記2次モールド部を構成している上記遮光性樹脂の一部でなる。
【0038】
この実施の形態によれば、上記受光側1次モールド部と上記第1反射体との間に形成されている遮光部を、上記2次モールド部を構成している上記遮光性樹脂の一部で形成している。こうして、上記遮光部形成用の追加部材を必要とせず、安価に本光学式測距装置を形成することができる。
【0039】
さらに、上記受光側1次モールド部と上記第1反射体との間に隙間なく上記遮光部を形成することができ、上記第1反射体内に侵入したノイズ光の上記受光素子への入射を効果的に防止することが可能になる。
【0040】
また、この発明の電子機器は、
上記この発明の光学式測距装置を搭載したことを特徴としている。
【0041】
上記構成によれば、長距離を高精度に検出可能な小型の光学式測距装置を搭載しているので、人までの距離を検出してオフ制御を行うパソコンやサニタリ機器、スクリーンまでの距離を検出してフォーカスを制御するプロジェクタ、壁までの距離を検出して衝突防止を行う自走型ロボット、人間の手までの距離を計測して制御を行う非接触スイッチ等の電子機器の高機能化を図ることができる。
【発明の効果】
【0042】
以上より明らかなように、この発明の光学式測距装置は、測定対象物で反射された光を集光する受光レンズと、上記集光された光の光スポットの位置を検出する受光素子との間に、第1反射面および第2反射面を配置したので、上記第1反射面および上記第2反射面によって、上記受光レンズによって集光された光束の光軸の向きを、上記受光素子に到達するように変更することができる。したがって、焦点距離および基線長を大きくとることができる。然も、発光・受光素子および発光・受光レンズを備えた測距モジュールの外部に光路変更手段を備える場合よりも小型化することができる。すなわち、この発明によれば、長距離を高精度に検出可能な光学式測距装置を小型に構成することができる。
【0043】
さらに、上記第1反射面と上記第2反射面との間には単一の媒質が存在するようにしている。したがって、異なる媒質が存在している場合のように、異なる媒質の界面で発生する光の減衰,屈折,表面反射等の不具合を無くすことができ、長距離の検出精度を、さらに高精度化することができる。
【0044】
また、この発明の電子機器は、長距離を高精度に検出可能な小型の光学式測距装置を搭載しているので、人までの距離を検出してオフ制御を行うパソコンやサニタリ機器、スクリーンまでの距離を検出してフォーカスを制御するプロジェクタ、壁までの距離を検出して衝突防止を行う自走型ロボット、人間の手までの距離を計測して制御を行う非接触スイッチ等の電子機器の高機能化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明の光学式測距装置における第1実施の形態の縦断面図である。
【図2】第1変形例の光学式測距装置の縦断面図である。
【図3】第2変形例の光学式測距装置の縦断面図である。
【図4】この発明の光学式測距装置における第2実施の形態の縦断面図である。
【図5】三角測距の原理を示す図である。
【図6】従来の光学式測距装置の概略構成を示す図である。
【図7】図6に示す光学式測距装置において受光レンズの焦点距離を大きくする場合の変形例を示す図である。
【図8】図6に示す光学式測距装置において基線長を大きくする場合の変形例を示す図である。
【図9】特許文献1の距離計測装置を示す図である。
【図10】特許文献2の測距装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0047】
・第1実施の形態
図1は、本実施の形態の光学式測距装置における縦断面図である。
【0048】
図1に示すように、リードフレーム31上に発光素子32と受光素子33とが搭載されている。そして、発光素子32と受光素子33とが個別に透光性樹脂で封止されて、発光側1次モールド部34と受光側1次モールド部35とを形成している。ここで、受光素子33は、受光スポットの位置を検出して位置情報を出力することができる信号処理部が内蔵された1チップ化された素子である。
【0049】
さらに、上記両1次モールド部34,35は遮光性樹脂で封止されて2次モールド部36を形成している。この2次モールド部36(遮光性樹脂体)における発光素子32の上方と受光素子33の上方との所定の位置には窓37,38が形成されている。そして、発光レンズ39および受光レンズ40が設けられると共に、受光素子33の受光面に対して略45度の傾斜面を有する第2反射体41が備えられたレンズホルダ42が、2次モールド部36の上方を覆うように2次モールド部36に係止されている。
【0050】
ここで、上記受光側1次モールド部35における受光素子33に関して発光素子32側とは反対側の表面には、受光レンズ40の受光軸に対して略45度の傾斜面を有する第1反射体43が設けられている。そして、第1反射体43は、2次モールド部36における窓38から受光レンズ40側に突出している。以下、受光側1次モールド部35を第1反射体付受光側1次モールド部35とも言う。
【0051】
そして、上記レンズホルダ42が2次モールド部36に係止された場合には、発光レンズ39は、2次モールド部36の窓37を介して発光素子32と発光軸を共有するように配置される。また、受光レンズ40は、2次モールド部36の窓38から突出している第1反射体43の反射面と対向するように配置される。また、第2反射体41は、その反射面が、1反射体43の反射面と対向するように、且つ窓38を介して受光素子33の受光面と対向するように配置される。
【0052】
また、上記レンズホルダ42には、発光レンズ39の下側空間と受光レンズ40の下側空間とを光学的に分離するための遮光壁44が形成されており、2次モールド部36の遮光性樹脂と協働して、発光素子32からの発光光束が直接受光側へ侵入するのを防いでいる。
【0053】
上記構成を有する光学式測距装置は、上記発光素子32から出射された発光光束が、発光レンズ39によって略平行光束とされて、測定対象物(図示せず)に向って出射される。そして、上記測定対象物によって反射された光が受光レンズ40によって集光されると共に、受光レンズ40の受光軸に対して略45度の傾斜面を有する第1反射体43と受光素子33の受光面に対して略45度の傾斜面を有する第2反射体41との互いに対向する反射面で受光軸の向きが変更されて、受光素子33に入射される光路を形成している。
【0054】
このように、上記受光レンズ40の下に配置された第1反射体43と受光素子33の上に配置された第2反射体41とによって受光軸を折り曲げることによって、受光レンズ40の下側の空間を有効に利用して焦点距離を大きく取ることができる。また、発光素子32と受光素子33との間隔が従来と同じであるとすると、発光レンズ39と受光レンズ40との間隔である基線長を大きくとることができる。然も、特許文献1の距離計測装置のごとく、発光・受光素子および発光・受光レンズを備えた測距モジュールの外部に上記光路変更手段を備える場合よりも小型化することができる。したがって、長距離を高精度に検出可能な小型の光学式測距装置を提供することができるのである。
【0055】
また、図1に示すように、上記第1反射体43は、受光レンズ40の受光軸を発光側光学系の方向へ反射するように形成されている。こうすることによって、受光レンズ40の下側の空間をより有効利用できるので、効果的に本光学式測距装置を小型化できる。
【0056】
また、図1に示すように、上記第1反射体43は、受光側1次モールド部35と一体に形成されている。つまり、トランスファー成形によって受光素子33を透光性樹脂で1次モールドする際に、同時に第1反射体43を形成することができるのである。一般に、リードフレーム上に実装された発光素子や受光素子はエポキシ樹脂等の透光性樹脂によって封止されて1次モールド体を形成されるが、このトランスファー成形時に受光素子33に隣接して第1反射体43を同時に上記1次モールド体と一体に形成することによって、第1反射体43形成用の特別な付加部材や付加工程を必要とせずに、安価に本光学式測距装置を形成することができる。
【0057】
また、図1に示すように、上記第2反射体41は、射出成形によって透光性樹脂からなる受光レンズ40を形成する際に同時に且つ一体に形成されている。アクリルやポリカーボネート樹脂等の透光性樹脂による射出成形によって、発光レンズ39、受光レンズ40および第2反射体41が形成され、それに続いてこれらの成形体がABS(acrylonitrile butadiene styrene copolymer)樹脂やPPS(ポリフェニレンスルファイド)樹脂等の遮光性樹脂による2色成形によって一体化されて、レンズホルダ42が形成される。このように、第2反射体41を受光レンズ40と一体に形成することによって、第2反射体41形成用の特別な付加部材や付加工程を必要とせず安価に本発明の光学式測距装置を形成することができる。
【0058】
さらに、上記第1反射体43を受光側1次モールド部35に形成すると共に、第2反射体41を受光レンズ40と一体に形成することによって、受光素子33と第1反射体43との位置精度および受光レンズ40と第2反射体41との位置精度を、金型レベルの高い精度で配置することができる。したがって、例えば受光レンズ40と第1反射体43との位置を合わせれば、第1反射体43と第2反射体41との位置および第2反射体41と受光素子33との位置は必然的に決まるため、特許文献2の測距装置のごとく、レンズアレイ部材および撮像素子とは別体にミラーアレイ部材および中間ミラー部材を備える場合よりも、受光レンズ40と第1反射体43および第2反射体41と受光素子33の位置調整が容易であり、本光学式測距装置を高精度化することができ、尚且つ、小型化を図ることができるのである。
【0059】
また、上記受光レンズ40と第1反射体43および第2反射体41と受光素子33の位置調整を行う場合に、第1反射体43の反射面と第2反射体41の反射面との間に存在する媒質は単一の空気のみであるため、異なる媒質の界面における光の減衰,屈折,表面反射等の不具合を生じることはない。
【0060】
図2は、本実施の形態における第1変形例の光学式測距装置を示す縦断面図である。本変形例については、図1との比較において異なる部分のみについて説明する。
【0061】
本変形例においては、上記受光素子33を透光性樹脂で封止してなる受光側1次モールド部45と、受光レンズ40の受光軸に対して略45度の傾斜面を有すると共に透光性樹脂でなる第1反射体46とを分離して構成している。第1反射体46は、リードフレーム31を含んで構成されており、受光側1次モールド部45と第1反射体46との間には、2次モールド部36を形成する遮光性樹脂が介在している。ここで、発光側1次モールド部34と受光側1次モールド45との間の遮光性樹脂を第1遮光部47とし、受光側1次モールド部45と第1反射体46との間の遮光性樹脂を第2遮光部48とする。
【0062】
図1に示す光学式測距装置の場合と同様に、上記第1反射体46はトランスファー成形によって受光側1次モールド部45と同時に形成することによって、リードフレーム31を介して受光側1次モールド部45と一体に形成されることが好ましい。
【0063】
このように形成された本変形例において、上記受光レンズ40によって集光された受光光束は第1反射体46で反射されるが、一部の光束は透光性樹脂でなる第1反射体46内へ侵入する。この侵入光は第1反射体46内のリードフレーム31や第1反射体46の側壁および底面等によって反射を繰り返すが、受光素子33を封止する受光側1次モールド部45と第1反射体46との間には遮光性樹脂(2次モールド)によって形成された第2遮光部48があるため、受光側1次モールド45内へ侵入することはない。
【0064】
したがって、上記第1反射体46内へ侵入した光がノイズ光成分となることを防止することができ、図1に示す光学式測距装置よりもさらに高精度化することが可能になる。
【0065】
図3は、本実施の形態における第2変形例の光学式測距装置を示す縦断面図である。本変形例については、図2に示す第1変形例との比較において異なる部分のみについて説明する。
【0066】
本変形例においては、第2反射体49を、上記レンズホルダ42における発光レンズ39の下側空間と受光レンズ40の下側空間とを光学的に分離する遮光壁で構成している。こうすることによって、発光レンズ39および受光レンズ40を遮光性樹脂による2色成形によって一体化してレンズホルダ42を形成する際に同時に形成することができる。したがって、第2反射体49形成用の特別な付加部材や付加工程を必要とせずに、安価に本光学式測距装置を形成することができる。
【0067】
さらに、上記受光レンズ40と第2反射体49との位置精度を、金型レベルの高い精度で配置することができる。したがって、図1および図2に示す光学式測距装置の場合と同様に、本光学式測距装置を高精度化することができる。
【0068】
また、上記第2反射体49は上記遮光性樹脂で形成されるため、第2反射体49内に受光光束が侵入することはない。したがって、第2反射体49内への侵入光が受光素子32に入射してノイズ光成分となることを確実に防止することができ、本光学式測距装置をさらに高精度化することができる。
【0069】
上記第1実施の形態およびその第1,第2変形例においては、受光素子33を、受光スポットの位置を検出して位置情報を出力することができるような信号処理部が内蔵された1チップ素子として説明している。当然ながら、この発明はこれに限定されるものではなく、受光スポットの位置を検出する位置検出素子(PSD,ラインセンサ,イメージセンサ,フォトダイオード)と、この位置検出素子からの信号を処理して位置情報を生成して出力する信号処理IC(集積回路)との2素子構成であってもよい。
【0070】
また、上記第1実施の形態およびその第1,第2変形例においては、発光素子32と受光素子33とはリードフレーム31上に実装されているとして説明しているが、表面に配線が形成された基板上に実装されていてもよい。
【0071】
尚、以下の実施の形態においては、受光素子は信号処理部内蔵型の1チップ素子であるとして、発光素子および受光素子はリードフレームに実装されているとして説明するが、受光素子は位置検出素子と信号処理ICとの2素子構成であり、発光素子および受光素子は基板上に実装されていても何ら差し支えない。
【0072】
・第2実施の形態
図4は、本実施の形態の光学式測距装置における縦断面図である。
【0073】
図4に示すように、リードフレーム51上に発光素子52と受光素子53とが搭載されている。そして、発光素子52が透光性樹脂で封止されて、発光側1次モールド部54を形成している。これに対し、受光素子53は、発光側1次モールド部54と共に、遮光性樹脂で封止されて2次モールド部55を形成している。
【0074】
そして、上記2次モールド部55(遮光性樹脂体)における発光素子52の上方と受光素子53の上方との所定の位置には窓56,57が形成されている。そして、この窓56を介して発光素子52から光が出射され、窓57を介して受光素子53に光が入射される。発光素子52と受光素子53との間は遮光性樹脂で遮蔽されており、遮光部58を形成している。
【0075】
ここで、本実施の形態においては、上記受光素子53を透光性樹脂で1次モールドしない場合を示しているが、上記実施の形態の場合と同様に受光素子53を透光性樹脂で1次モールドしても差し支えない。
【0076】
上記2次モールド部55上には反射体59が形成され、発光レンズ60および受光レンズ61が設けられたレンズフレーム62が、反射体59の上方と反射体59および2次モールド部55の側方とを覆うように2次モールド部55に係止されている。
【0077】
上記反射体59は射出成形によって遮光性樹脂で形成され、受光レンズ61の受光軸に対して略45度の傾斜面を有する第1反射面63と、受光素子53の受光面に対して略45度の傾斜面を有すると共に第1反射面63と対向している第2反射面64とが設けられている。そして、発光レンズ60および受光レンズ61が設けられたレンズフレーム62によって全体が係止されることによって、本光学式測距装置が形成されている。
【0078】
上記反射体59には、発光レンズ60の下側空間と受光レンズ61の下側空間とを光学的に分離するための遮光壁65が形成されており、2次モールド部55の遮光部58と協働して、発光素子52からの発光光束が直接受光側へ侵入するのを防いでいる。ここで、第2反射面64は、遮光壁65における受光側の側面に形成されている。
【0079】
上記構成を有する光学式測距装置は、上記発光素子52から出射された発光光束が、発光レンズ60によって略平行光束とされて、測定対象物(図示せず)に向って出射される。そして、上記測定対象物によって反射された光が受光レンズ61によって集光されると共に、受光レンズ61の受光軸に対して略45度の傾斜を有する第1反射面63と受光素子53の受光面に対して略45度の傾斜を有する第2反射面64で受光軸の向きが変更されて、受光素子53に入射される光路を形成している。
【0080】
このように、上記受光レンズ61の下に配置された第1反射面63と受光素子53の上に配置された第2反射面64とによって受光軸を折り曲げることによって、受光レンズ61の下側の空間を有効に利用して焦点距離を大きく取ることができる。また、発光素子52と受光素子53との間隔が従来と同じであるとすると、発光レンズ60と受光レンズ61との間隔である基線長を大きくとることができる。然も、特許文献1の距離計測装置のごとく、発光・受光素子および発光・受光レンズを備えた測距モジュールの外部に上記光路変更手段を備える場合よりも小型化することができる。したがって、長距離を高精度に検出可能な小型の光学式測距装置を提供することができるのである。
【0081】
また、図4に示すように、上記第1反射面63および第2反射面64は、反射体59形成時に同時に形成された一体部品であるため、両反射面63,64の位置精度を非常に高くすることができる。したがって、例えば受光レンズ61と第1反射面63との位置を合わせれば、第1反射面63と第2反射面64との位置および第2反射面64と受光素子53との位置は必然的に決まるため、本光学式測距装置をさらに高精度化させることができる。
【0082】
また、上記第1反射面63と第2反射面64との間に存在する媒質は単一の空気のみであるため、異なる媒質の界面における光の減衰,屈折,表面反射等の不具合を生じることはない。
【0083】
上記第1実施の形態および第2実施の形態における光学式測距装置は、以下のような電子機器に搭載されることによって、上記電子機器の高機能化に貢献するセンサ,非接触スイッチ,非接触コントローラ等として使用することができる。
【0084】
例えば、ノート型のパソコンのモニタ額縁部に搭載することによって、当該パソコンの前に人が居るか居ないかを高精度に検知して、人が居ない時にはモニタの電源を自動でオフすることによって、パソコンの省電力化をよりきめ細かく図ることができる。
【0085】
また、洋式便座等のサニタリ機器に搭載することによって、人の有無を検知して便器洗浄やサニタリ機器の動作を高精度に制御することができる。
【0086】
また、各種プロジェクタ(据え置き型や携帯型等)に搭載することによって、壁等のスクリーンまでの距離を高精度に検出して、高精度なフォーカス制御を行うことができる。
【0087】
また、ロボット掃除機に代表される各種自走型ロボットに搭載することによって、衝突防止用センサとして用いることができる。さらに、ドアや部屋の壁に設置することによって、手までの距離を検出してドアの開閉や部屋の照明を行う非接触スイッチとして用いることができる。さらに、調理家電や空調機器に設置することによって、手までの距離を検出して調理家電や空調機器を制御する非接触コントローラとして用いることができる。
【符号の説明】
【0088】
31,51…リードフレーム
32,52…発光素子
33,53…受光素子
34,54…発光側1次モールド部
35…第1反射体付受光側1次モールド部
36,55…2次モールド部
37,38,56,57…窓
39,60…発光レンズ
40,61…受光レンズ
41,49…第2反射体
42…レンズホルダ
43,46…第1反射体
44,65…遮光壁
45…受光側1次モールド部
47…第1遮光部
48…第2遮光部
58…遮光部
59…反射体
62…レンズフレーム
63…第1反射面
64…第2反射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に配線が形成された基板上あるいはリードフレーム上に実装された発光素子と、
上記基板上あるいは上記リードフレーム上に実装されると共に、上記発光素子から出射されて測定対象物で反射された光によって形成される光スポットの位置を検出する受光素子と、
上記受光素子から出力された信号を処理する信号処理部と、
上記発光素子を透光性樹脂によって封止してなる発光側1次モールド部と、
上記発光側1次モールド部,上記受光素子および上記信号処理部を遮光性樹脂によって一体に封止してなる2次モールド部と、
上記発光素子から出射された光を上記測定対象物に向けて投光する発光レンズと、
上記測定対象物で反射された光を集光する受光レンズと、
上記発光レンズを含む発光側光学系と上記受光レンズを含む受光側光学系との間を遮光する遮光壁と、
上記受光レンズと上記受光素子との間に配置されると共に、上記受光レンズによって集光された光束の光軸の向きを変更して上記受光素子に導く第1反射面および第2反射面と
を備え
上記第1反射面と上記第2反射面との間には単一の媒質が存在している
ことを特徴とする光学式測距装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学式測距装置において、
上記第1反射面は、上記受光レンズによって集光された光束の光軸の向きを上記発光レンズの側に変更し、
上記第2反射面は、上記第1反射面からの光束の光軸の向きを上記受光素子の側に変更する
ことを特徴とする光学式測距装置。
【請求項3】
請求項1あるいは請求項2に記載の光学式測距装置において、
上記第2反射面は、第2反射体の一面を構成しており、
上記第2反射体は、上記受光レンズと一体に形成されている
ことを特徴とする光学式測距装置。
【請求項4】
請求項1あるいは請求項2に記載の光学式測距装置において、
上記第2反射面は、第2反射体の一面を構成しており、
上記第2反射体は、上記発光レンズおよび上記受光レンズを保持するレンズホルダと一体に形成されている
ことを特徴とする光学式測距装置。
【請求項5】
請求項1あるいは請求項2に記載の光学式測距装置において、
上記発光レンズおよび上記受光レンズと上記2次モールド部との間には、遮光性樹脂からなる上記遮光壁を含む反射体が設けられており、
上記第1反射面および上記第2反射面は、上記反射体に形成されている
ことを特徴とする光学式測距装置。
【請求項6】
請求項1あるいは請求項2に記載の光学式測距装置において、
上記受光素子および上記信号処理部を透光性樹脂によって封止してなる受光側1次モールド部を備え、
上記2次モールド部は、上記発光側1次モールド部と上記受光側1次モールド部とを上記遮光性樹脂によって一体に封止することによって、上記発光側1次モールド部,上記受光素子および上記信号処理部を上記遮光性樹脂によって一体に封止しており、
上記第1反射面は、上記基板あるいは上記リードフレームを介して上記受光側1次モールド部と一体に形成されている
ことを特徴とする光学式測距装置。
【請求項7】
請求項6に記載の光学式測距装置において、
上記第1反射面は、第1反射体の一面を構成しており、
上記受光側1次モールド部と上記第1反射体とは互いに分離しており、
上記受光側1次モールド部と上記第1反射体との間には遮光部が形成されている
ことを特徴とする光学式測距装置。
【請求項8】
請求項7に記載の光学式測距装置において、
上記遮光部は、上記2次モールド部を構成している上記遮光性樹脂の一部でなる
ことを特徴とする光学式測距装置。
【請求項9】
上記請求項1から請求項8までの何れか一つに記載の光学式測距装置を搭載した
ことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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