説明

光学情報読取装置

【課題】消費電流をより一層低減する。
【解決手段】本発明の光学情報読取装置1は、情報コードを光学的に読み取って文字や記号等の情報に変換するものにおいて、読み取り時に消費する電力を可変できる電気回路構成を備え、読み取り速度等の読み取り性能を最大に上げる第1の読取モードを備え、そして、受光センサ4の駆動クロックを低下させて消費電流を少なくした読取モードであって、読み取り速度等の読み取り性能が前記第1の読取モードよりも劣る第2の読取モードを備えたところに特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーコードや2次元コード等の情報コードを光学的に読み取って文字や記号等の情報に変換する光学情報読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の光学情報読取装置である例えばバーコードハンディターミナルの中には、バッテリーや電池駆動タイプのものがあり、このようなタイプのバーコードハンディターミナルでは、連続して使用できる連続使用時間を長くすることが近年重視されており、消費電流を抑える対策が施されている。消費電流を抑える対策を施したバーコードハンディターミナルの一例として、特許文献1に記載された構成が知られている。
【特許文献1】実開平5−12922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載された構成においては、バーコードハンディターミナルが不動作状態のときに、CPUの駆動クロックを低速(100kHz)にしてスリープ状態にし、バーコードハンディターミナルが動作状態のときには、CPUの駆動クロックを高速(10MHz)にするクロック変換回路を設けている。しかし、上記構成の場合、バーコードハンディターミナルが動作状態のときは、消費電流が低減されないので、消費電流抑制効果が不十分であった。
【0004】
これに対して、バーコードハンディターミナルが動作状態の場合にも、CPUの駆動クロックを低速にする低速動作モードを設け、CPUの駆動クロックを高速にする高速動作モードと低速動作モードを適宜切り替えることにより、動作状態の場合の消費電流を低減するようにした構成が知られている。しかし、バーコードハンディターミナルの連続使用時間をより一層長くすることが強く要望されており、消費電流を更に抑制する対策が求められている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、消費電流をより一層抑制することができる光学情報読取装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光学情報読取装置は、情報コードを光学的に読み取って文字や記号等の情報に変換するものにおいて、読み取り時に消費する電力を可変できる電気回路構成と、読み取り速度等の読み取り性能を最大に上げる第1の読取モードと、受光センサの駆動クロックを低下させて消費電流を少なくした読取モードであって、読み取り速度等の読み取り性能が前記第1の読取モードよりも劣る第2の読取モードとを備えたところに特徴を有する。
【0007】
上記構成によれば、受光センサの駆動クロックを低下させて消費電流を少なくした第2の読取モードを備えたので、この第2の読取モードを実行して情報コードを読み取ることにより、消費電流をより一層抑制することができる。
【0008】
また、上記構成の場合、前記受光センサの駆動クロックを変化させるに際しては、前記受光センサに内蔵されるクロック倍数回路の設定値を変化させるように構成されていることが好ましい。
【0009】
更に、前記受光センサが露光中または画像取り込み中に、前記読取モードが切り替えられたときには、その作業を強制終了し、溜まった電荷を吐き出すように構成されていることがより一層好ましい。
【0010】
更にまた、前記読取モードを切り替えるときには、CPUの駆動クロックも変化させるように構成することが良い。また、前記読取モードを切り替えるときには、照明手段に流す電流も変化させることも良い構成である。更に、前記読取モードを切り替えるスイッチ等の切替手段を備えることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を2次元コードやバーコード等を読み取る機能を有するハンディターミナルに適用した一実施例について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施例のハンディターミナル1の電気的構成を示すブロック図である。この図1に示すように、ハンディターミナル1は、CPU2と、クロック発生器3と、受光センサ4と、FPGA5と、メモリ6と、LCD7と、キーボード(切替手段)8と、ブザー9と、照明LED(照明手段)10とを備えて構成されている。
【0012】
CPU2は、ハンディターミナル1の動作全般を制御する機能を有しており、メモリ6に記憶されているプログラム(ソフトウエア)に従って動作する。FPGA5は、ソフトウエアをハードウエア化した回路である。クロック発生器3は、基準クロックを発生してCPU2へ与える。CPU2の内部には、上記基準クロックに基づいて周波数が異なる2種類のCPU2駆動用の駆動クロック(例えば100MHzと200MHz)を生成すると共に、2種類の駆動クロックのいずれを使用するかを切り替えるクロック周波数切替回路(図示しない)が設けられている。
【0013】
受光センサ4は、CCDやCMOSセンサ等のエリアセンサとその駆動回路等を備えて構成されており、CPU2により駆動制御される。CPU2は、受光センサ4へ例えば6MHzのクロック信号を与えると共に、このクロック信号をそのまま(1倍で)駆動クロックとして使用するか、それとも例えば8倍して駆動クロックとして使用するかを指定する指令信号を与える。受光センサ4内には、CPU2からの指令信号に応じてクロック信号を1倍または8倍するクロック倍数回路11が設けられている。尚、クロック倍数回路11は例えばPLLで構成されている。
【0014】
上記受光センサ4は、2次元コードやバーコード等の情報コードを撮影して、撮影した画像信号(画像データ)をCPU2へ出力するように構成されている。CPU2は、受光センサ4からの画像データを取り込み、この画像データをメモリ6に記憶すると共に、上記データに含まれる情報コードを解析してデコードするように構成されている。デコード結果は、上記メモリ6に記憶されると共に、データ出力部(図示しない)を介して外部の機器(レジスタやホストコンピュータ等)へ出力される。尚、メモリ6は、ROM、RAM、フラッシュメモリ等で構成されている。
【0015】
LCD7は、CPU2により表示制御されるものであり、種々の情報(上記でコード結果を含む)が表示される。キーボード8は、トリガースイッチや各種の操作スイッチを備えて構成されており、これらスイッチのスイッチ信号はCPU2に与えられる。
【0016】
また、CPU2は、ブザー9を駆動制御すると共に、照明LED10を駆動制御する。この場合、CPU2は、ブザー9に流す電流の大きさと、照明LED10に流す電流の大きさをそれぞれ可変可能なように、例えば大小2段階に切り替えることが可能なように構成されている。尚、照明LED10は、読取対象の情報コードを照明するための照明手段である。また、上記構成の場合、CPU2、受光センサ4、照明LED10、ブザー9等により、読み取り時に消費する電力を可変できる電気回路構成が構成されている。
【0017】
次に、上記構成のハンディターミナル1には、情報コードを光学的に読み取るときの動作モードとして、通常モード(このモードが読み取り速度等の読み取り性能を最大に上げる第1の読取モードに対応する)と、低消費モード(このモードが消費電流を少なくして読み取り速度等の読み取り性能が第1の読取モードよりも劣る第2の読取モードに対応する)とが設定可能なように構成されている。
【0018】
これら2つのモードは、図3(a)に示すように、LCD7の画面に表示した状態で、キーボード8の各種の操作スイッチを操作することにより選択設定することが可能である。尚、この図3(a)の選択画面は、作業メニュー画面(初期画面)において、読取モードの切替作業を選択すると、この画面になる。また、デフォルトは、通常モードである。
【0019】
ここで、低消費モードを選択すると、LCD7の画面が図3(b)に示すような画面に代わり、受光センサ4の駆動クロック(センサクロック)と、CPU2の駆動クロック(CPUクロック)と、照明LED10の明るさと、ブザー9の音の大きさとを選択する画面となり、キーボード8の各種の操作スイッチを操作することにより選択設定することが可能である。
【0020】
受光センサ4の駆動クロックは、速い(例えば48MHz)、または、遅い(例えば6MHz)のいずれかを選択することができる。尚、デフォルトは、遅いである。CPU2の駆動クロックは、速い(例えば200MHz)、または、遅い(例えば100MHz)のいずれかを選択することができる。尚、デフォルトは、遅いである。
【0021】
照明LED10の明るさは、明るい(照明LED10への通電電流の大きさを大きくした)、または、暗い(照明LED10への通電電流の大きさを小さくした)のいずれかを選択することができる。尚、デフォルトは、暗いである。そして、ブザー9の音の大きさは、大きい(ブザー9への通電電流の大きさを大きくした)、または、小さい(ブザー9への通電電流の大きさを小さくした)のいずれかを選択することができる。尚、デフォルトは、小さいである。また、上記した4つの選択は、各別に選択することが可能である。
【0022】
次に、図2のフローチャートに従って、ハンディターミナル1の読取動作の制御について説明する。まず、図2ステップS10において、読取モードとして低消費モード(低消費電力モード)が選択されているか否かを判断する。ここで、低消費モードが選択されている場合には、ステップS10にて「YES」へ進み、更に、受光センサ4の駆動クロックが遅いに選択設定されていると、ステップS20へ進み、受光センサ4のクロック倍数回路(PLL)11において周波数の倍数を1倍(即ち、6MHz)に設定する。これにより、受光センサ4の駆動クロックが6MHzに設定される。尚、受光センサ4の駆動クロックが早いに選択設定されているときは、このステップS20を実行しない。
【0023】
続いて、CPU2の駆動クロックが遅いに選択設定されていると、ステップS30へ進み、CPU2の駆動クロック(内部クロック)を100MHzに設定する。尚、CPU2の駆動クロックが早いに選択設定されているときは、このステップS30を実行しない。また、図2のフローチャートに図示はしないが、照明LED10の明るさが暗いに選択設定されているときは、照明LED10への通電電流の大きさを小さく設定する。更に、ブザー9の音の大きさが小さいに選択設定されているときは、ブザー9への通電電流の大きさを小さく設定する。
【0024】
そして、ステップS40へ進み、受光センサ4により情報コードを露光(撮影)する。このとき、照明LED10を点灯して情報コードを照明する。続いて、ステップS50へ進み、受光センサ4により露光した画像を取り込み、取り込んだ画像信号(画像データ)をCPU2へ送り、CPU2でデコードする。
【0025】
この後、ステップS60へ進み、デコードが成功したか否かを判断し、ここで、デコードが成功しておれば、「YES」へ進み、読取処理を終了する。これに対して、デコードが失敗した場合は、ステップS60にて「NO」へ進み、ステップS10へ戻り、再び読取処理を実行する。
【0026】
一方、ステップS10において、低消費モードが選択されていない場合(通常モードが選択されている場合)には、「NO」へ進み、ステップS70へ進み、受光センサ4のクロック倍数回路(PLL)11において周波数の倍数を8倍(即ち、48MHz)に設定する。これにより、受光センサ4の駆動クロックが48MHzに設定される。
【0027】
続いて、ステップS80へ進み、CPU2の駆動クロック(内部クロック)を200MHzに設定する。また、図2のフローチャートに図示はしないが、照明LED10の明るさを明るく(通常)するために、照明LED10への通電電流の大きさを大きく設定する。更に、ブザー9の音の大きさを大きく(通常)するために、ブザー9への通電電流の大きさを大きく設定する。そして、ステップS40へ進み、以下、読取モードを通常モードに設定した状態で、前述した処理(受光センサ4による撮影やデコード等)を実行するように構成されている。
【0028】
また、本実施例においては、受光センサ4が露光中または画像取り込み中に、読取モードが切り替えられたとき(即ち、通常モードから低消費モードへ、または、低消費モードから通常モードへ切り替えられたとき)には、その作業を強制終了し、溜まった電荷を吐き出すように制御する構成となっている。この制御について、図4を参照して説明する。
【0029】
まず、図4(a)は、受光センサ4による露光動作と画像取り込み動作とデコード動作とが順に実行される様子を示すタイムチャートであり、この場合、露光動作からデコード動作までの一連の動作が2回実行されている。尚、図4中に示すレジスタは、受光センサ4に内蔵されるクロック倍数回路11の周波数の倍数の設定値を格納するためのものであり、読取モードを変更するときにCPU2により書き換えられる。そして、レジスタの内容を示す信号は、レジスタの内容が変化しないときにハイレベルとなり、レジスタの内容が変化したときにこれを検知してロウレベルとなる。
【0030】
さて、図4(b)に示すように、画像取り込み動作中において、時刻t1で読取モードが変更されたとすると、ここで、画像取り込み動作を中断し、受光センサ4に溜まった電荷を吐き捨てる吐き出し処理を実行する。そしてこの後は、切り替えた(変更した)読取モードでもって最初の露光動作からデコード動作までの一連の動作を実行するように構成されている。
【0031】
尚、露光中または画像取り込み中に、読取モードが切り替えられて、そのまま露光または画像取り込みが続けられると、取り込まれた画像データに異常が発生し、デコードが正常に実行されなくなる問題点が発生するおそれがある。これに対して、上記したように中断及び吐き出し制御を実行すると、このような問題点を解消することができる。
【0032】
このような構成の本実施例によれば、読取モードとして、通常モード(第1の読取モード)の外に、受光センサ4の駆動クロックを低下させて消費電流を少なくした低消費モード(第2の読取モード)を切り替え可能なように備える構成としたので、第2の読取モードに切り替えてこのモードを実行して情報コードを読み取ることにより、消費電流を一層抑制することができ、消費電力を一層少なくすることができる。
【0033】
特に、上記実施例の場合、低消費モードを実行するときに、受光センサ4の駆動クロックを低下させて消費電流を少なくしたので、消費電流ひいては消費電力をかなり少なくすることができる。具体的には、受光センサ4の駆動クロックを48MHzから6MHzに、即ち、1/8に低下させることにより、消費電流を1/3程度に少なくすることができる。更に、上記実施例においては、CPU2の駆動クロックも、200MHzから100MHzに低下させており、これにより、低消費モード実行時の消費電力を、通常モード実行時の消費電力の約50%程度に小さくすることができる。
【0034】
この結果、更に、照明LED10に流す電流を少なくしたりすることにより、ハンディターミナル1の連続使用時間を、通常モードしかない構成に比べて、2倍以上に延ばすことが可能になる。
【0035】
尚、上記実施例においては、照明LED10の明るさを暗くするに際して、照明LED10に流す電流を少なくしたが、これに代えて、照明LED10として複数個のLEDを使用している場合には、点灯させるLEDの個数を少なくするように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施を示すハンディターミナルのブロック図
【図2】フローチャート
【図3】(a)は読取モードを選択する画面を示す図、(b)は低消費モードの詳細を選択する画面を示す図
【図4】(a)は露光、画像取出し、デコードの各動作を説明する図、(b)は画像取出し中に読取モードを変更した場合の各動作を説明する図
【符号の説明】
【0037】
図面中、1はハンディターミナル(光学情報読取装置)、2はCPU、3はクロック発生器、4は受光センサ、7はLCD、8はキーボード(切替手段)、9はブザー、10は照明LED(照明手段)、11はクロック倍数回路を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報コードを光学的に読み取って文字や記号等の情報に変換する光学情報読取装置において、
読み取り時に消費する電力を可変できる電気回路構成と、
読み取り速度等の読み取り性能を最大に上げる第1の読取モードと、
受光センサの駆動クロックを低下させて消費電流を少なくした読取モードであって、読み取り速度等の読み取り性能が前記第1の読取モードよりも劣る第2の読取モードとを備えたことを特徴とする光学情報読取装置。
【請求項2】
前記受光センサの駆動クロックを変化させるに際しては、前記受光センサに内蔵されるクロック倍数回路の設定値を変化させるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の光学情報読取装置。
【請求項3】
前記受光センサが露光中または画像取り込み中に、前記読取モードが切り替えられたときには、その作業を強制終了し、溜まった電荷を吐き出すように構成されていることを特徴とする請求項1記載の光学情報読取装置。
【請求項4】
前記読取モードを切り替えるときには、CPUの駆動クロックも変化させることを特徴とする請求項1記載の光学情報読取装置。
【請求項5】
前記読取モードを切り替えるときには、照明手段に流す電流も変化させることを特徴とする請求項1記載の光学情報読取装置。
【請求項6】
前記読取モードを切り替えるスイッチ等の切替手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の光学情報読取装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−148889(P2007−148889A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343813(P2005−343813)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】