説明

光学材料で充填されたセルを持った透明な光学要素

光学材料で充填されたセル(1)を持った透明な光学要素が提案される。それは高い透明度を持つ。要素のセルはランダムに変化するレベル(h,...,h)に満たされ、そしてその変化は知覚可能な光学不良を起こさないように適合させられる。これを行なうために、セルの充填レベルは、セルを通過する光線(R,...,R)によって経験される位相のずれが、波長(1)の4分の1より小さい二乗平均平方根偏差を持つように適合させられる。このような要素は特に眼科用レンズでありうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学材料で充填されたセルを持った透明な光学要素と、さらにそのような方法からもたらされるタイプの要素に関わる。
【背景技術】
【0002】
分離され、要素の表面に平行に並べられたセルのセットを形成することによって、透明な光学要素を製造することが知られている(特許文献1)。それぞれのセルは適切な光学材料で充填され、それにより充填されたセルのセットは要素に要求される光学機能を授ける。例えば、セルに含まれる材料が可変的な屈折率を持つ時、要素の機能は光学パワー(屈折力)でありうる。光学材料が吸収性である場合には、それは太陽光に対する防備でもあり、または、偏光性である場合にはコントラストを強化しうる。別個のセルの使用は、要素の表面に沿った要素の光学機能の強度を容易に変えることを可能にする。任意選択で、セルに含まれる光学材料は、要素の光学機能が電気的コマンドによって制御されうるように電気活性物質でもありうる。
【0003】
このような透明な光学要素の製造のための方法は、特に、異なった光学機能を持った最終的な要素を得るために、セルを備えた同じベース要素を使うことを可能にするので、有利である。これらの異なった機能は、材料、またはセルに含まれる材料を変更することによって得られる。従って、非常に多数の最終的な光学要素のために、セルを持った1つの同じベース要素モデルを使うことができる。そして、それは、大量スケールで製造され、それぞれの光学要素の原価を減らすことに貢献する。
【0004】
このような方法は、未来のそのユーザによって光学要素を容易にカスタマイズすることを可能にするので、やはり有利である。そのカスタマイズは、特にそのユーザのために決定された特性に応じて、要素のセルに含まれる光学材料を適合させることによって実行される。このようなカスタマイズは、特に、光学要素が特定の眼鏡の装用者のために意図された眼科用レンズである時に適切である。
【0005】
さて、このような要素のセルを光学材料で充填することは、この要素の表面上に均一で一様な周期的な変化を作り出す可能性がある。例えば光学材料が液体である時、充填が実行されるそれぞれのセルの開口断面においてメニスカスが生じううる。セルを充填することに関連付けられる他の現象も、均一な、または周期的な変化を起こしうる。この時、このような変化は、たとえわずかであるとしても、光学要素の透明度を減らす光拡散をもたらしうるし、その変化が周期的であるならば、例えばゴースト像のような、像における不良を招来する。
【0006】
本発明の意味の範囲では、この要素を通して観察される像がコントラストの顕著な損失なしに認知される時、光学要素は透明であると考えられる。換言すれば、像と要素の観測者との間の、透明な光学要素の介入は、像の品質を顕著に減らさない。特に、回折は、光波が物質的に制限されている時に観察される光散乱の現象として定義される(非特許文献1)。均一な変化が要素上に存在しているならば、それは光回折を起こす。この回折の結果として、光の点は、もはや光学要素を通して点であるとして認知されない。結果としての巨視的な拡散、あるいは非コヒーレントな拡散は、光学要素のセル構造の乳状の(ミルキーな)外観または拡散ハローを生じる。特に点光源は、光学要素を通して光の円板(ディスク)として、または1つ以上の光のリングに取り囲まれるように現出する。これは要素を通して観測される像のコントラストを損なうことになる。このコントラストの損失は、先に定義されたような透明度の減少に類似している。回折物体が周期的に配列される時、格子効果が生じ、回折次数を現出させる。これらの回折次数は好ましくない像を引き起こし、そして像のコントラストを、従って要素の透明度を減じる。たとえこれらの好ましくない像に分布した光エネルギーの割合が小さいとしても、点光源の像はその時、暗いバックグラウンドに対して視覚的に容易に識別される小さな好ましくないスポットによって取り囲まれる。
【0007】
このような透明度の減少は、とりわけ、光学要素が眼科用レンズ、特に眼鏡レンズである時には好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】フランス特許第2872259号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】J−P. PEREZ − Optique, Fondements et applications − 7thedition − DUNOD − 2004年10月, p.262
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って本発明の目的は、要素に対して透明度の増加したレベルを得ることを可能にするような、光学材料で充填されたセルを持った光学要素を製造するための方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
それは、以下の段階、
/1/前記要素の表面(S1)に平行に並べられた別個のセルのセットを有するベース光学要素を得る段階であって、それぞれのセルは、開口断面が要素の表面に平行であるという状態で開口しているような、段階と、
/2/このセルのために決定され、そして要素の表面に垂直な方向に沿って測定された平均の充填レベルにまで、それぞれのセルの内側に光学材料を導入する段階と、
を有する方法に適用される。
【0012】
本発明によれば、セルの平均の充填レベルのランダムまたは疑似ランダム変化は、要素の少なくともいくつかのセルの間で自発的に導入される。
【0013】
さらに、各セルの間の充填レベルの変化は、要素の表面に垂直な前記方向に沿ってセルを通過する可視光線それぞれに対する位相のずれが、波長(λ)の4分の1より小さい二乗平均平方根偏差を持つように決定される。
【0014】
本発明の意味の範囲では、セルの充填レベルのランダムまたは疑似ランダム変化は、光学要素の表面の範囲にわたって均一な外観を持たない変化を意味する。特に、それは明白な周期的特徴を持たない。このような変化はデジタル処理で決定されうる。そしてそれは、たとえ製造されたそれぞれの光学要素に対するランダムな変化に相当するとしても、疑似ランダムとしてみなされる。
【0015】
セルのこのような充填レベルにおけるランダムまたは疑似ランダム変化の導入は、本発明の第1の特徴によれば、セルの非常に均一な充填に関連する現象を起こしうる何らかの光拡散を防止するか、またはこの拡散を、光学要素の使用と矛盾しないレベルに減らす。このように、ランダムまたは疑似ランダム変化を持ったセルの充填は、周期的な充填からもたらされる格子によって作られた順序を制限することを可能にする。これは、より大きな立体角にわたって光エネルギーを広げることに特に起因して、ゴースト像の形成を回避することを可能にする。結果として、このような光学要素を通して伝達されたイメージは、光点が拡散ハローに変えられるのに従って、透明度に関して改善される。
【0016】
セルの充填レベルはまた、開口断面における光学材料の表面が平らでないか、または要素の表面に平行でない時の、セルの平均の充填レベルをも意味する。実際に、それぞれのセルの開口断面の光学材料の表面は、特に光学材料の特性に依存した可変的な形状を持ちうる。例えば、その表面は、光学材料が粉末である場合には粒状であり、光学材料が液体である場合には凹形または凸形のメニスカスであり、あるいはジェルである場合には傾斜しうる。そして、セルの充填レベルは、要素の表面に垂直な方向に沿って測定される、開口断面における光学材料の表面の平均の高さによって決定され、開口断面の広がりにわたって平均される。
【0017】
最終的に、φで表される、特定の大きさの「二乗平均平方根偏差」は、以下の式による通常的な方法で定義される統計量Δrmsを意味する。
【0018】
【数1】

【0019】
ここで、φは大きさφのi番目の測定値を表現し、Nは測定数であり、そしてΦはその測定値から見積もられる大きさφの平均値である。既知の方法において、このように定義された二乗平均平方根偏差Δrmsは、測定Nの数が十分に大きい時の大きさφの標準偏差であると考えられる。本発明の枠組みの中では、大きさφは、要素の表面に垂直に要素のセルの1つを通過する可視光線の光線に対する位相のずれである。それぞれの測定値iは、問題のセルが変化する時のこの位相のずれの値である。それはセルの充填レベルに依存する。量Δrmsを計算するために考慮されるべき測定数Nは、3より大きいいくつかでありうる。特に、Δrmsは6、10または20に等しいNに対して計算されうる。
【0020】
本発明の第2の特徴によれば、光学要素の異なったセルに対応する位相のずれが、波長(λ)の4分の1より小さい二乗平均平方根偏差を持つ。二乗平均平方根偏差に課されたこの制約の結果として、セルの充填レベルの変化は、コントラストの損失が知覚可能でないように、光波面の顕著な局所的変形を導入しない。そして光学要素は、高い光学品質と透明度のレベルを持つ。
【0021】
好ましくは、光学要素のセルを通過する光線の位相のずれは、波長(λ)の4分の1、8分の1、または14分の1より小さい二乗平均平方根偏差を持つ。最後のケースでは、要素を通して点光源によって発せられる光エネルギーの約68%が、エアリーディスクに集中される。このディスクは、当技術分野の当業者に知られている方法で要素の光学的拡散を特徴付ける。そして点光源は、満足な方法で、光学要素を通して光の点であると認知される。
【0022】
本発明の第1の改良によれば、この方法は以下の段階、
/3/それぞれのセルの開口断面の上に延在するシール材料の部分を使ってセルをシールする段階
をも有することができる。
【0023】
そして、本発明によるセルを充填は、このようなセルのシールによって取り外せないように完了され、また要素を製造する引き続く何らかの段階およびその使用の間に、変化しない状態を維持する。従って、本発明の実行の結果として得られる要素の透明性は、恒久的である。
【0024】
段階/3/は、セルセットの上に透明なフィルムを配置する段階を有し、このフィルムは各セル間に位置した分離壁に固定される。この方法では、要素のすべてのセルが
簡単かつ速やかな単一の段階においてシールされる。
【0025】
本発明の第2の改良によれば、前記ベース光学要素は、セルのセット自体を組み込む層状構造を有することができる。そして前記層状構造は、段階/2/の後に前記光学要素の基板の上に固定されうる。段階/2/が実行される間、前記層状構造は、特に平坦な一様な形状を持つことができ、そのことが一層速やかに光学材料をセルに挿入することを可能にする。
【0026】
本発明が適用される透明な光学要素は、どんなものでもよい。それはレンズ、特に光学測定装置のレンズまたはバイザー(日よけ)、保護またはスポーツ用マスクのレンズ、ヘルメットバイザーなどでありうる。眼科用レンズの製造への本発明の適用は特に有利である。眼科用レンズは、装用者の視力を矯正し、視覚快適さを改善し、または装用者に対するより高度な安全性を提供するために、装用者の目の前に配置されることを意図される何らかの光学素子を意味する。これはコンタクトレンズ、眼球インプラント、または1対の眼鏡のフレームに組み込むのに適した眼科用眼鏡レンズでありうる。
【0027】
本発明は、この要素の表面に平行に並べられた別個のセルのセットを有し、それぞれのセルが、要素の表面に垂直な方向に沿ったこのセルに対して測定された平均の充填レベルにまで光学材料で充填される、透明な光学要素をも提案する。本発明によれば、セルの平均の充填レベルは、要素の少なくともいくつかのセルの間にランダムまたは疑似ランダム変化を持つ。さらに、異なったセルの間の充填レベルの変化は、要素の表面に垂直な前記方向に沿ってセルを通過する可視光線それぞれに対する位相のずれが、波長(λ)の4分の1より小さい二乗平均平方根偏差を持つ。好ましくは、二乗平均平方根偏差は、波長(λ)の8分の1より小さいく、有利には波長(λ)の14分の1より小さい。
【0028】
このような透明な光学要素は、特に前述のような方法を使うことによって製造されうる。
【0029】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照する、非限定的な実施形態の以下の説明から明白になることであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による光学要素の断面図である。
【図2】充填レベルの決定を示すいくつかのセルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
これらの図面においては、明瞭性の理由から、表示された異なる要素の寸法は実際の寸法および寸法の関連事項に対応していない。本発明による実際の光学要素に対応する寸法は、与えられた説明から本発明を再現することができるように、以下に例として与えられる。さらに、記載された方法の段階と、言及される当業者に知られた光学原理は、詳細に与えられない、ということが理解され、必要に応じて、これらの事柄に関して利用できる多くの文献の1つに参照がなされうる。
【0032】
図1に示すように、例えば図面の平面に垂直な平面において円形形状を持った眼鏡レンズブランクは、凸形表面S1と凹形表面S2を持つことができる。このブランクは、全体的に10として参照される。表面S1およびS2は平行、または異なる曲率を持ちうる。これらの一方または両方は平らでもありうる。ブランク10は、その将来的な装用者によって選択される眼鏡フレームの眼科用レンズシートの寸法に切断されるよう意図される。そして得られる最終的な光学要素は眼鏡レンズである。
【0033】
ブランク10は、表面S1の上に平行に並べられたセル1のセットを備える。セル1は、表面S1の上にネットワークを形成する壁2によって分離されている。壁2は、Nで表される、表面S1に垂直な方向に平行に延在する。ブランク10は、基板3、およびセル1が形成される層状構造4を有することができる。基板3は、眼科分野で一般的に使われている何らかの透明な材料で構成されうる。この材料は、特に、無機材料、有機材料、または複合材料でありうる。構造4は、例えば接着によって基板3と接合される。それは、セル1が、当技術分野の当業者に知られた方法を使って、選択的放射と樹指の溶解と組み合わせることによって部分的に形成されうるように、リソグラフィ用樹指から部分的に作られうる。その代わりに、セル1は基板3の上に直接形成されうる。
【0034】
好ましくは、そして特にセルセットを搭載することを意図した最終的な光学要素の表面が平らでない時、本発明の方法は、この構造が基板3に付けられる前に、層状構造4により実行される。そして構造4は平らな一様な形状を持ち、それによりセル1を活性物質で充填することをより容易にしうる。そして、本発明が実行されるベース光学要素は、基板3なしに層状構造4によって構成される。一般に、ベース光学要素はセルセット、および任意選択で、一時的または恒久的でありうる基板を有する。
【0035】
それぞれのセル1は、その軸が方向Nに平行であるという状態で、実質的に円筒状の形状、およびどんな断面をも持ちうる。それは構造4の一側に最初に開いており、それはすべてのセルについて同じである(図1の右側を参照)。従って、それは、その充填を容易にするために、セルの高さの全体にわたってセルの断面と等しくありうる開口断面を持つ。例を通して、セル1は、図2でdで表され、50から200μm(マイクロメートル)の間からなる、表面S1に平行な寸法と、方向Nに沿って測定される2から50μmの間からなる高さhと、を持つことができる。壁2の厚さeは、1から20μmの間からなりうる。
【0036】
光学材料はセル1に挿入される。それは同一でもよいし、あるいは、最終的なレンズに対して求められる光学機能に応じて、異なったセル間で変化させることができる。それぞれのセルに挿入されるこの材料の量は監視される。これは方向Nに沿って測定されるセルの充填レベルを定義し、種々の方法で決定されうる。例えば、セルの充填レベルは、充填の際にリアルタイムで光学的に監視されうる。好ましい方法では、それぞれのセルの充填レベルは、例えばそのセルに挿入するために光学材料の量を制御するコンピュータを使って、デジタル処理で決定される。
【0037】
セル1のそれぞれの充填レベルは、連続的または不連続な方法で変化しうる。例えば、光学材料は、それぞれ1つの同じ基本の体積を持った多数の部分の形態で、それぞれのセルに挿入されうる。そして、その充填レベルは、それらのセルに挿入される部分の数を変えることによって、異なったセル間で容易に変えることができる。このように得られる充填レベルの変化は、多数の基本の体積である。例えば、この基本の体積は0.1から50ピコリットル(picolitre)の間からなりうる。100μmに等しい直径dの円形断面を持ったセル1に対して、6ピコリットルの基本の体積は、セルの平均の充填レベルに対して約0.76μmの変化に対応する。
【0038】
本発明の特に速やかな実施形態によれば、光学材料は、物質をスプレーするノズルを使うことによってそれぞれのセルに挿入されうる。「インクジェットノズル」または「インクジェットヘッド」と呼ばれるこのようなノズルは、商業的に入手可能であって、またデジタル処理で制御されうる。それは、光学材料が液体またはジェルである時に、特に適切である。ノズルは、XY移動システムを使ってセルセット1の前で移動され、内部の光学材料の要求される量をスプレーするために決定されたセルの開口断面の前にある際に動作させられる。
【0039】
図2は層状構造4の断面図であり、セル1の充填レベルの変化を示す。セルの開口断面における光学材料の表面は異なった形を持ちうる。例えば光学材料が液体である時、この表面は、より大きな、またはより小さな曲率を持った凸形または凹形でありうる。この場合、セルの充填レベルは、hからhで表されるレベルに対する図2に示すように、液体の表面の平均の高さに対応する。
【0040】
異なったセルに挿入される光学材料の量は、ランダムまたは疑似ランダムの方法で要求されるように変えられ、それによってセルの充填レベルは、結果として1つのセルから他のものまでランダムに変化する。
【0041】
方向Nに平行なセル1を通過する可視光線に対する平均の位相のずれが、今考慮されることになる。図2において、R,...,Rは、示されたセル1を通過する光線を示す。φと表記される、セルiを通過する光線の平均の位相のずれは、2πΔn・h/λに等しい。ここで、λは光の波長を示し、そしてhはセルiの平均の充填レベルである。Δnはセルiに含まれる光学材料の波長λに対する屈折率nと、このセル上に配置される材料6の屈折率との間の差である(図2参照)。Δrmsで表され、添え字iで識別されるいくつかのセル1から式1によって計算されたこれらの位相のずれの二乗平均平方根偏差は、約2πΔn・hrms/λに等しい。ここで、hrmsは充填レベルの二乗平均平方根偏差を表す。このようなΔrmsの見積もりの妥当性のための条件は、もしその光学材料が異なったセル間で変化するならば、相対的な値において光学材料の屈折率nの変化よりも充填レベルの変化が大きいということである。例として、波長λは緑色に対応して0.55nmと取られうる。セル1に含まれる光学材料の平均の屈折率nは、この波長に対して1.52に等しくありうるし、また材料6のそれは1.50に等しくありうる。この時Δnは0.02に等しい。
【0042】
本発明によれば、セル1の充填レベルは、二乗平均平方根偏差Δrmsがπ/2より小さくあり、π/4またはπ/7より小さくさえあるように、すなわち波長(λ)の4分の1より小さくあり、波長の8分の1または波長の14分の1より小さくさえあるように、制御された方法で変化する。この最後のケースは、上記見積もられた数値に対してhrms<1.96μmの結果となる。今、大部分の寸法の連続的な統計分布に対して、二乗平均平方根偏差Δrmsは、寸法の最大変化の2分の1から7分の1の間からなる。つまり、ΔrmsはΔmax/7からΔmax/2の間からなる。換言すれば、Δmaxが2Δrmsから7Δrmsの間からなる。現在のケースでは、1.96μmから6.86μmの間からなるΔmaxに対する値が得られる。セル1の充填レベルの変化に対するこのような最大値は、それぞれのセル1に同時に挿入される光学材料の単位部分に対する6ピコリットルの基本の体積を使って達成されうる。実際に基本の体積は、上述のようにセルの充填レベルの0.76μmの変化に対応する。
【0043】
Δnが0.15に等しくなるように光学材料と材料6が選択される時、上述のように得られるΔmaxに対する値は、物質をスプレーするためのノズルの使用とも両立できる。
【0044】
たった今記載した方法でセル1が光学材料により充填されると、それぞれのセルをシールするために、透明なフィルムが、壁2上に固定することによってセル1のセットの上に配置されうる。このシールフィルムは図において5と参照される。それは壁2の上部に加熱シールされうるが、好ましくは接着剤の中間層6を使って構造4上に接着される。使われる接着剤は、一般にPSAとして知られている感圧力性の接着剤でありうる。それは好ましくは、セル1の開口断面に配分するのに十分な流動性をもち、一方でセルの充填レベルにおける変化を埋め合わせる。そして、任意選択で、このようにシールフィルム5と共に組み立てられた構造4は、接着剤6、従って組立体を永久に固定するために、紫外線にさらされうる。
【0045】
層状構造4をブランク10の恒久的な基板3と共に組み立てる前にセル1が充填される時、構造4は例えば接着によって基板3上に固定される。
【0046】
たった今詳細に記載してきた本発明の実施が、種々の方法で変更されうる一方で、少なくともいくつかのその利点を維持する、ということが理解される。
【0047】
最終的に、セルに挿入される光学材料は、どんなタイプのものでもよく、特に、セルを持った光学要素において現状で既に使用されているタイプの1つであってもよい、ということが明示される。
【符号の説明】
【0048】
1 セル
2 壁
3 基板
4 層状構造
5 シールフィルム
6 中間層
10 ブランク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学材料で充填されたセルを持った透明な光学要素の製造方法であって、以下の段階、
/1/前記要素の表面(S1)に平行に並べられた別個のセル(1)のセットを有するベース光学要素(4)を得る段階であって、それぞれのセルは、開口断面が要素の表面に平行であるという状態で開口しているような、段階と、
/2/このセルのために決定され、そして要素の表面に垂直な方向に沿って測定された平均の充填レベル(h,...,h)にまで、それぞれのセル(1)の内側に光学材料を導入する段階と、
を有し、
セルの平均の充填レベル(h,...,h)のランダムまたは疑似ランダム変化は、要素の少なくともいくつかのセル(1)の間で自発的に導入されることを特徴とし、
要素の異なったセルの間の充填レベル(h,...,h)の変化は、要素の表面に垂直な前記方向(N)に沿ってセル(1)を通過する可視光線(R,...,R)それぞれに対する位相のずれが、波長(λ)の4分の1より小さい二乗平均平方根偏差を持つように決定されることを特徴とする方法。
【請求項2】
充填レベル(h,...,h)の変化は、要素の表面に垂直な前記方向(N)に沿ってセル(1)を通過する可視光線(R,...,R)それぞれに対する位相のずれが、波長(λ)の8分の1より小さい、好ましくは波長(λ)の14分の1より小さい二乗平均平方根偏差を持つように決定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
セルのそれぞれの充填レベル(h,...,h)はデジタル処理で決定されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記光学材料は、段階/2/において、それぞれ1つの同じ基本の体積を持った倍数の部分の形態でそれぞれのセル(1)の中に挿入され、そして充填レベル(h,...,h)の変化は、要素の異なるセル(1)に導入される部分の数を変化させることによって作られることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記基本の体積は0.1から50ピコリットルの間からなることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記光学材料は、段階/2/において、物質をスプレーするためのノズルを使ってそれぞれのセル(1)の中に挿入されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
さらに以下の段階、
/3/それぞれのセルの開口断面の上に延在するシール材料の部分を使ってセル(1)をシールする段階、
を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
/3/は、セルセット(1)の上に透明なフィルム(5)を配置する段階を有し、前記フィルムは各セル間に位置した分離壁(2)に固定されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記透明な光学要素はレンズを構成することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記透明な光学要素は眼科用眼鏡レンズを構成することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ベース光学要素は、セル(1)のセット自体を組み込む層状構造(4)を有し、そして前記層状構造は、段階/2/の後に前記光学要素の基板(3)の上に固定されることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
要素の表面(S1)に平行に並べられた別個のセル(1)のセットを有し、それぞれのセルが、要素の表面に垂直な方向に沿って該セルに対して測定された平均の充填レベル(h,...,h)にまで光学材料で充填される、透明な光学要素であって、
セルの平均の充填レベル(h,...,h)が、要素の少なくともいくつかのセル(1)の間にランダムまたは疑似ランダム変化を持つことを特徴とし、
異なったセルの間の充填レベル(h,...,h)の変化は、要素の表面に垂直な前記方向(N)に沿ってセル(1)を通過する可視光線(R,...,R)それぞれに対する位相のずれが、前記光の波長(λ)の4分の1より小さい二乗平均平方根偏差を持つように適合させられていることを特徴とする要素。
【請求項13】
充填レベル(h,...,h)の変化は、要素の表面に垂直な前記方向(N)に沿ってセル(1)を通過する可視光線(R,...,R)それぞれに対する位相のずれが、波長(λ)の8分の1より小さい、好ましくは波長(λ)の14分の1より小さい二乗平均平方根偏差を持つように適合させられることを特徴とする請求項12に記載の要素。
【請求項14】
充填レベル(h,...,h)の変化は、1つの同じ基本の体積の倍数であることを特徴とする請求項12または13に記載の要素。
【請求項15】
前記基本の体積が0.1から50ピコリットルの間からなることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
セルセット(1)の上に配置され、そしてそれぞれのセルをシールするために各セル間に位置した分離壁(2)を固定された透明なフィルム(5)をさらに有することを特徴とする請求項12から15のいずれか1項に記載の要素。
【請求項17】
レンズを構成することを特徴とする請求項12から16のいずれか1項に記載の要素。
【請求項18】
眼科用眼鏡レンズを構成することを特徴とする請求項17に記載の要素。
【請求項19】
基板(3)と、セル(1)が内部に形成される層状構造(4)とを有し、前記層状構造は前記基板上に固定されることを特徴とする請求項12から18のいずれか1項に記載の要素。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−517067(P2010−517067A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545984(P2009−545984)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【国際出願番号】PCT/FR2008/050065
【国際公開番号】WO2008/099117
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(505425373)エシロール アンテルナシオナル (コンパニー ジェネラレ ドプテイク) (74)
【Fターム(参考)】