説明

光学材料用硬化性組成物及びその硬化物

【課題】本発明の目的は高い耐熱性、透明性を有し、成形性が良く、外観が良好でひずみのない硬化物を与える光学材料用硬化性組成物、および硬化物を提供することにある。
【解決手段】SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、1分子中に少なくともSiH基を2個含有する化合物、ヒドロシリル化触媒、および(D)成分としてアセチレンアルコール類を必須成分とする硬化性組成物で、(D)成分の100℃での重量減少率が10%以内であることを特徴とする光学材料用硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は高温で充填でき、短時間の硬化で成形可能であり、高い耐熱性、透明性を有し、外観が良好で複屈折のバラつきの少ない硬化物を与える光学材料用硬化性組成物、および硬化物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、デジタルカメラや携帯電話に付属のカメラ用のレンズや光ファイバ等の光学材料用高分子材料には、高い透明性と硬度が要求されており、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン系樹脂など熱可塑性樹脂が使用されてきた。近年、小型化や低コスト化を目的とし、レンズユニットと受光センサーユニットを半田リフロー工程により一括で製造する方法が導入されつつあるが、250度を超える温度履歴がかかることもあり、これまで使用されてきた熱可塑性樹脂では限界が生じており、耐熱性の高い熱硬化性樹脂が注目されており、例えば耐熱変色性に優れたシロキサン骨格を含有する熱硬化性樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。
【0003】
レンズの成形においては、複屈折など光学特性の均一性が重要であり、均一に硬化させることが求められている。しかし、特許文献1に記載の樹脂組成物を使用して等温で成形した場合、複屈折のバラつきが発生しやすかった。
【0004】
また、熱硬化性樹脂の成形では、充填時の温度を硬化温度より下げて行う、すなわち昇温、冷却を行う成形方法が取られることがある(特許文献2)。昇温、冷却を行う成形方法では、成形サイクルタイムの観点から、充填温度と硬化温度の差が小さいことが望ましい。しかしながら、特許文献1に記載の樹脂組成物では、低温での硬化が早く充填可能な温度が低いため、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−84437
【特許文献2】特開2010−89293
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は高温で充填でき、短時間の硬化で成形可能であり、高い耐熱性、透明性を有し、外観が良好で複屈折のバラつきの少ない硬化物を与える光学材料用硬化性組成物、および硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記事情に鑑み、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、本発明は、以下の構成を有するものである。
【0008】
即ち本発明は、
1). (A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(B)1分子中に少なくともSiH基を2個含有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、および(D)下記一般式(I):
【0009】
【化1】

【0010】
(式中Rはアルキル基またはアリール基であり、それぞれのR1はつながっていてもよい。R2は水素基、アルキル基またはアリール基である。)であらわされる化合物を必須成分とする硬化性組成物で、(D)成分の分子量が130以上であることを特徴とする光学材料用硬化性組成物。
【0011】
2). 一般式(I)におけるRが水素基であることを特徴とする1)に記載の光学材料用硬化性組成物。
【0012】
3). (D)成分の100℃での重量減少率が10%以内であることを特徴とする1)〜2)のいずれか一項に記載の光学材料用硬化性組成物。
【0013】
4).(D)成分が2−フェニル−3−ブチン−2−オール、3,7,11−トリメチル−1−ドデシン−3−オールのうちから選ばれる少なくとも1種の化合物である1)〜3)のいずれか一項に記載の光学材料用硬化性組成物。
【0014】
5). (A)成分がSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を(A)成分1gあたり1mmol以上含有することを特徴とする1)に記載の光学材料用硬化性組成物。
【0015】
6). (B)成分が鎖状および/または環状ポリシロキサン骨格を含有する化合物であることを特徴とする1)に記載の光学材料成形用硬化性組成物。
【0016】
7). 老化防止剤を含有することを特徴とする1)〜6)のいずれか一項に記載の光学材料用硬化性組成物。
【0017】
8). 離型剤を含有することを特徴とする1)〜7)のいずれか一項に記載の光学材料用硬化性組成物。
【0018】
9). 1)〜8)のいずれかに記載の硬化性組成物を硬化させてなる硬化物。
【0019】
10). 9)に記載の硬化物を使用した光学部品。
【0020】
11). 10)に記載の光学部品を使用した光学モジュール。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高温で充填でき、短時間の硬化で成形可能であり、高い耐熱性、透明性を有し、外観が良好で複屈折のバラつきの少ない硬化物を与える光学材料用硬化性組成物を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に記載する。
【0023】
((A)成分)
(A)成分はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物である。
(A)成分は、有機骨格部分と、その有機骨格部分に共有結合するSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基とからなるものが好ましい。上記SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基は、有機骨格のどの部位に共有結合していてもよい。
【0024】
まず、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基について述べる。(A)成分の炭素−炭素二重結合としてはSiH基と反応性を有するものであれば特に制限されないが、下記一般式(II)で示される炭素−炭素二重結合が反応性の点から好適である。
【0025】
【化2】

【0026】
(式中Rは水素原子あるいはメチル基を表す。)また、原料の入手の容易さからは、Rは水素原子であることがより好ましい。
【0027】
硬化物の耐熱性が高いという点からは一般式(III)が好適である。
【0028】
【化3】

【0029】
(式中Rは水素原子あるいはメチル基を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよい。)また、原料の入手の容易さからは、Rは水素原子であることがより好ましい。
【0030】
炭素−炭素二重結合は置換基を介して(A)成分の骨格部分に共有結合していても良く、置換基としては、構成元素としてC、H、N、O、S、ハロゲンから選ばれる原子のみを含むものが好ましい。置換基の例としては、次のものが挙げられる。
【0031】
【化4】

【0032】
【化5】

【0033】
また、これらの置換基の2つ以上が共有結合によりつながって置換基を構成していてもよい。
【0034】
以上のような骨格部分に共有結合する基の例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、メタクリル基、2−ヒドロキシ−3−(アリルオキシ)プロピル基、2−アリルフェニル基、3−アリルフェニル基、4−アリルフェニル基、2−(アリルオキシ)フェニル基、3−(アリルオキシ)フェニル基、4−(アリルオキシ)フェニル基、2−(アリルオキシ)エチル基、2、2−ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3−アリルオキシ−2、2−ビス(アリルオキシメチル)プロピル基、下記に示すものが挙げられる。
【0035】
【化6】

【0036】
次に有機骨格部分について述べる。(A)成分の有機骨格としては特に限定はなく、有機重合体骨格、または有機単量体骨格を用いればよい。
【0037】
有機重合体骨格の例としては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアリレート系、ポリカーボネート系、飽和炭化水素系、不飽和炭化水素系、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系、ポリアミド系、フェノール−ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)、ポリイミド系等を挙げることができる。
【0038】
特に、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系が耐熱性および透明性の点から好適である。
【0039】
有機単量体の例としては、エタン、プロパン、イソブタンといった脂肪族鎖状化合物や、シクロペンタン、ジシクロペンタン、ノルボルナンといった脂肪族環状化合物、あるいは、エポキシ系、オキセタン系、フラン系、チオフェン系、ピロール系、オキサゾール系、イソオキサゾール系、チアゾール系、イミダゾール系、ピラゾール系、フラザン系、トリアゾール系、テトラゾール系、ピラン系、チイン系、ピリジン系、オキサジン系、チアジン系、ピリダジン系、ピリミジン系、ピラジン系、ピペラジン系、イソシアヌレート系といった複素環化合物がある。ここで、複素環とは、環状骨格中にヘテロ元素を有する環状の化合物であれば特に限定されない。ただし、環を形成する原子にSiが含まれるものは除かれる。また、環を形成する原子数は特に制限はなく、3以上であればよい。入手性からは、10以下であることが好ましい。
【0040】
有機単量体からなる(A)成分の具体例として、ブタジエン、イソプレン、オクタジエン、デカジエン等の脂肪族鎖状ポリエン化合物系、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の脂肪族環状ポリエン化合物系、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン等の置換脂肪族環状オレフィン化合物系等、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,1,2,2−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、トリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ジビニルベンゼン類(純度50〜100%のもの、好ましくは純度80〜100%のもの)、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、
【0041】
【化7】

【0042】
【化8】

【0043】
等が挙げられる。
【0044】
上記した(A)成分としては、耐熱性をより向上し得るという観点から、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を(A)成分1gあたり0.1mmol以上含有するものが好ましく、さらに、1gあたり0.5mmol以上含有するものが好ましく、1mmol以上含有するものが特に好ましい。
【0045】
(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数は、平均して1分子当たり少なくとも2個あればよいが、力学強度をより向上したい場合には2を越えることが好ましく、3個以上であることがより好ましい。(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数が1分子内当たり1個以下の場合は、(B)成分と反応してもグラフト構造となるのみで架橋構造とならない。
【0046】
力学的耐熱性が高いという観点および原料液の糸引き性が少なく成形性、取扱い性、充填性が良好であるという観点からは、(A)成分は分子量が900未満のものが好ましく、700未満のものがより好ましく、500未満のものがさらに好ましい。
【0047】
良好な作業性を得るためには、(A)成分は23℃における粘度が100Pa・s未満のものが好ましく、50Pa・s未満のものがより好ましく、30Pa・s未満のものがさらに好ましい。ここでの粘度はE型粘度計によって測定した値を指す。
【0048】
(A)成分としては、着色特に黄変の抑制の観点からはフェノール性水酸基および/あるいはフェノール性水酸基の誘導体を有する化合物の含有量が少ないものが好ましく、フェノール性水酸基および/あるいはフェノール性水酸基の誘導体を有する化合物を含まないものが好ましい。本発明におけるフェノール性水酸基とはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等に例示される芳香族炭化水素核に直接結合した水酸基を示し、フェノール性水酸基の誘導体とは上述のフェノール性水酸基の水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、アセトキシ基等のアシル基等により置換された基を示す。
【0049】
得られる硬化物の着色が少なく、耐光性が高いという観点からは、(A)成分としてはビニルシクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、トリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテル、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンが好ましく、トリアリルイソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテル、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンが特に好ましい。
【0050】
特に(A)成分としては耐熱変色性が高いという観点から下記一般式(IV)で表されるイソシアヌル酸誘導体が特に好ましい。
【0051】
【化9】

【0052】
(式中Rは炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよい。)で表される化合物が好ましい。
【0053】
上記一般式(IV)のRとしては、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、炭素数1〜30の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1〜20の一価の有機基であることがより好ましく、炭素数1〜10の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいRの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基等が挙げられる。
【0054】
上記のような一般式(IV)で表される化合物の好ましい具体例としては、トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノフェニルイソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
【0055】
耐熱変形性・屈折率が高いという観点からは、(A)成分としては下記一般式(V)で表されるジビニルベンゼン類、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、およびそれらのオリゴマーや、ビスフェノールAジアリルエーテルや、ビス〔4−(2−アリルオキシ)フェニル〕スルホン、フェノールノボラック樹脂等の芳香環含有エポキシ樹脂に結合するグリシジル基の一部あるいは全部をアリル基に置換したものが好ましい。
【0056】
【化10】

【0057】
(式中、Rは炭素数1〜50の一価の酸素、窒素、硫黄、あるいはハロゲン原子で置換されていてもよい有機基を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよい。)。
【0058】
上記一般式(V)のRとしては、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、複数の芳香環をもつことが好ましい。
耐光性が高いという観点からは、(A)成分としては脂環式化合物が好ましい。具体的には、ビニルシクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルネンなどが挙げられる。
(A)成分は、単独又は2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0059】
((B)成分)
次に、(B)成分について説明する。
(B)成分は1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物であれば特に限定されず、例えば鎖状ポリオルガノシロキサン、環状ポリオルガノシロキサン、網目状ポリオルガノシロキサンやポリオルガノシロキサンと有機化合物を一部反応させたもの等を使用できる。
【0060】
硬化物の硬度が高いという観点からは鎖状ポリオルガノシロキサン、および/または環状ポリオルガノシロキサン骨格を含有するのが好ましい。
【0061】
上記鎖状ポリオルガノシロキサンの具体的な例としては、下記一般式(VI)
【0062】
【化11】

【0063】
(式中、それぞれのR、Rは、水素あるいは炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR、Rは異なっていても同一であってもよいが、少なくとも2個は水素である。nは1〜1000の数を表す。)で表される化合物が挙げられる。
、Rとしては、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、炭素数1〜20の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1〜15の一価の有機基であることがより好ましく、炭素数1〜10の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいR、Rの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、メトキシ基、エトキシ基、ビニル基、アリル基、グリシジル基等が挙げられる。
【0064】
上記環状ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、下記一般式(VII)
【0065】
【化12】

【0066】
(式中、Rは水素あるいは炭素数1〜6の有機基を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよいが、少なくとも2個は水素である。nは2〜10の数を表す。)で表される、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサン等が挙げられる。なお、上記一般式(VII)におけるRは、C、H、Oから構成される炭素数1〜6の有機基であることが好ましく、炭素数1〜6の炭化水素基であることがより好ましい。Rは入手性、耐熱性の観点より特にメチル基であるものが好ましく、硬化物の強度が高くなるという観点より特にフェニル基であるものが好ましい。また、nは3〜10の数であることが好ましい。
【0067】
一般式(VII)で表される環状ポリオルガノシロキサンの好ましい具体例としては、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
【0068】
(B)成分の分子量は特に制約はなく任意のものが好適に使用できるが、硬化性組成物の流動性をより制御しやすいという観点からは低分子量のものが好ましく用いられる。この場合、好ましい分子量の下限は50であり、好ましい分子量の上限は100000、より好ましくは10000、さらに好ましくは3000である。
【0069】
(A)成分と良好な相溶性を有するという観点、および(B)成分の揮発性が低くなり得られる組成物からのアウトガスの問題が生じ難いという観点からは、(B)成分は、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個以上含有する有機化合物(B1)と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するポリオルガノシロキサン(B2)を、ヒドロシリル化反応して得ることができる化合物であることが好ましい。
【0070】
((B1)成分)
(B1)成分は、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個以上含有する有機化合物である。(B1)成分としては上記した(A)成分である、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機系化合物と同じもの(B11)を用いることができる。(B11)成分を用いると得られる硬化物の架橋密度が高くなり機械的強度の強い硬化物となりやすい。
【0071】
その他、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する有機系化合物(B12)も用いることができる。(B12)成分を用いると得られる硬化物が低弾性となりやすい。
【0072】
(B12)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の結合位置は特に限定されず、分子内のどこに存在してもよい。また、(B12)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては特に限定されないが、(A)成分で説明した官能基が好ましい。
【0073】
(B12)成分の化合物は、重合体系の化合物と単量体系化合物に分類でき、それぞれの骨格は(A)成分で説明した骨格が好ましい。
【0074】
耐熱変色性が高いという観点からは、(B1)成分として、上述した一般式(IV)
【0075】
【化13】

【0076】
の骨格を有する化合物が好ましい。
屈折率が高いという観点からは、(B1)成分として、上述した一般式(V)
【0077】
【化14】

【0078】
の骨格を有する化合物が好ましい。
【0079】
耐光性が高いという観点からは、(B1)成分として脂環式化合物が好ましい。
(B1)成分は、単独又は2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0080】
((B2)成分)
(B2)成分は1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するポリオルガノシロキサンであれば特に限定されない。それぞれの化合物の具体的な例としては上記(B)成分で説明したものが挙げられる。
(B2)成分は、単独又は2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0081】
(予備反応)
炭素−炭素二重結合を1分子中に1個以上含有する有機系化合物(B1)成分と1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するポリオルガノシロキサン(B2)成分を反応させて(B)成分である1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物を得るための反応について説明する。
【0082】
(B1)成分と(B2)成分とをヒドロシリル化反応させる場合の、(B1)成分と(B2)成分の混合比率は、1分子中に2個以上SiH基が残る範囲であれば、特に限定されない。
【0083】
得られる硬化物の強度を考えた場合、(B1)成分中のSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合のモル数(X)と、(B2)成分中のSiH基のモル数(Y)との比は、Y/X≧2であることが好ましく、Y/X≧3であることがより好ましい。
【0084】
ヒドロシリル化させる場合には適当な触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば後述する(C)成分を用いることができる。
【0085】
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるため好ましい添加量の下限は、(B2)成分のSiH基1モルに対して10−10モル、より好ましくは10−8モルであり、好ましい添加量の上限は(B2)成分のSiH基1モルに対して10−1モル、より好ましくは10−2モルである。
【0086】
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能であり、例としてトリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレート等の1、2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対しての好ましい添加量の下限は、10−2モル、より好ましくは10−1モルであり、好ましい添加量の上限は10モル、より好ましくは10モルである。
【0087】
反応時の触媒混合方法としては、各種方法をとることができるが、(B1)成分にヒドロシリル化触媒を混合したものを、(B2)成分に混合する方法が好ましい。(B1)成分と(B2)成分との混合物にヒドロシリル化触媒を混合する方法では反応の制御が困難な場合がある。また、(B2)成分とヒドロシリル化触媒を混合したものに(B1)成分を混合する方法では、ヒドロシリル化触媒の存在下(B2)成分が混入している水分と反応性を有するため、変質することがある。
【0088】
反応温度としては種々設定できるが、好ましい温度範囲の下限は30℃、より好ましくは50℃であり、好ましい温度範囲の上限は200℃、より好ましくは150℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなる傾向があり、反応温度が高いと工業的に不利な場合がある。反応は一定の温度で行ってもよく、また必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。
【0089】
反応時間、反応時の圧力も必要に応じ種々設定できる。反応時間については特に限定されない。経済的な面からは、好ましくは20時間以内、さらに好ましくは10時間以内である。圧力も特に限定されないが、特殊な装置が必要になったり、操作が煩雑になったりする、という面から、好ましくは大気圧〜5MPa、さらに好ましくは大気圧〜2MPaである。
【0090】
ヒドロシリル化反応の際に溶媒を使用してもよい。使用できる溶剤はヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1, 2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。溶媒は2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、クロロホルムが好ましい。使用する溶媒量も適宜設定できる。
【0091】
合成の反応後に溶媒及び/又は未反応の化合物を除去してもよい。除去する方法としては、例えば、減圧脱揮が挙げられる。減圧脱揮する場合、低温で処理することが好ましい。この場合の好ましい温度の上限は120℃であり、より好ましくは100℃である。高温で処理すると増粘等の変質を伴いやすい。
【0092】
また、貯蔵安定性を向上させるためには窒素、アルゴンの様な不活性ガス雰囲気下、10℃以下での保存が好ましく、0℃以下の保存が特に好ましく、−10℃以下の保存がさらに好ましい。
【0093】
以上のような反応から得られる(B)の例としては、トリアリルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジビニルベンゼンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ビスフェノールAジアリルエーテルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物や、ビス〔4−(2−アリルオキシ)フェニル〕スルホンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物がより好ましい。
(B)成分は、単独又は2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0094】
((C)成分)
次に(C)成分であるヒドロシリル化触媒について説明する。
(C)成分のヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されないが、例えば、白金の単体;アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの;塩化白金酸;塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体;白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH=CH(PPh、Pt(CH=CHCl);白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMeSiOSiMeVi)、Pt[(MeViSiO));白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh4、Pt(PBu);白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)、Pt[P(OBu))(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、a、bは、整数を示す。);ジカルボニルジクロロ白金;カールシュテト(Karstedt)触媒;白金−炭化水素複合体(例えばアシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号及び第3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体);白金アルコラート触媒(例えばラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒)等が挙げられる。さらに、塩化白金−オレフィン複合体(例えばモディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体)も本発明において有用である。
【0095】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)、RhCl、RhAl、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・2HO、NiCl、TiCl等が挙げられる。
【0096】
これらの中では、触媒活性の点から、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0097】
(C)成分の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるため好ましい添加量の下限は、成分(B)のSiH基1モルに対して10−8モル、より好ましくは10−7モルであり、好ましい添加量の上限は成分(B)のSiH基1モルに対して10−1モル、より好ましくは10−2モルである。
【0098】
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能である。助触媒としては、例えば、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。
【0099】
助触媒の添加量は特に限定されないが、上記ヒドロシリル化触媒1モルに対して、下限10−2モル、上限10モルの範囲が好ましく、より好ましくは下限10−1モル、上限10モルの範囲である。
((D)成分)
次に(D)成分について説明する。
【0100】
(D)成分は下記一般式(I)
【0101】
【化15】

【0102】
(式中Rはアルキル基またはアリール基であり、それぞれのR1はつながっていてもよい。R2は水素基、アルキル基またはアリール基である。)で表され、分子量が130以上の化合物である。分子量が130以上の化合物を使用することで、110℃以下での硬化が抑制され、高温で充填することができ、短時間で複屈折のばらつきの少ない硬化物を作成することができる。
【0103】
(D)成分としては、上記条件に適し、樹脂に相溶するものであれば特に限定されず、2−フェニル−3−ブチン−2−オール、3,7,11−トリメチル−1−ドデシン−3−オール、1,1−ジシクロへキシル−2−プロピン−1−オール、1−テトラデシン−3−オール、1,1,1−トリフルオロ−2−フェニル−3−ブチン−2−オール、1−(3,4−ジメトキシフェニル)−2−プロピン−1−オール、2−(2−フルオロフェニル)−3−ブチン−2−オール、2−(3−フルオロフェニル)−3−ブチン−2−オール、2−(4−フルオロフェニル)−3−ブチン−2−オール等が例示される。
【0104】
室温での貯蔵安定性の観点から、一般式(I)におけるRは水素基であることが好ましい。
【0105】
成形時の金型汚染の観点から、(D)成分は100℃での重量減少率が10%以内である化合物であるのが好ましい。ここで、重量減少率とは窒素ガスを50mL/分で流し、10℃/分で昇温してTGA測定したとき、25℃を基準とした際の重量減少率で規定される。重量減少率が10%より大きい化合物を用いたとき、成形時の揮発分により金型が汚染されることがある。
【0106】
樹脂との相溶性の観点からは、(D)成分は23℃で液状であることが好ましい。23℃で固体の化合物を用いると、樹脂に溶解させるために、加熱や、長時間の撹拌が必要になることがある。
【0107】
添加量の観点からは、一般式(I)におけるRがアリール基であることが好ましい。Rがアリール基のものを用いると、添加重量部が少なくても効果が得られる。好ましい具体例としては、2−フェニル−3−ブチン−2−オール、2−(2−フルオロフェニル)−3−ブチン−2−オール、2−(3−フルオロフェニル)−3−ブチン−2−オール、2−(4−フルオロフェニル)−3−ブチン−2−オール等が挙げられる。
入手性の観点からは2−フェニル−3−ブチン−2−オール、3,7,11−トリメチル−1−ドデシン−3−オールが好ましい。
【0108】
(D)成分は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0109】
(D)成分の添加量は、(C)成分であるヒドロシリル化触媒1molに対し、10−1〜10モルの範囲が好ましく、より好ましくは1〜200モルの範囲である。
【0110】
(その他の添加物)
(老化防止剤)
本発明の光学材料用硬化性組成物には老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤としては、ヒンダートフェノール系等一般に用いられている老化防止剤の他、クエン酸やリン酸、硫黄系老化防止剤等が挙げられる。
【0111】
ヒンダードフェノール系老化防止剤としては、チバスペシャリティーケミカルズ社から入手できるイルガノックス1010をはじめとして、各種のものが用いられる。
【0112】
硫黄系老化防止剤としては、メルカプタン類、メルカプタンの塩類、スルフィドカルボン酸エステル類や、ヒンダードフェノール系スルフィド類を含むスルフィド類、ポリスルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、スルホニウム化合物、チオアルデヒド類、チオケトン類、メルカプタール類、メルカプトール類、モノチオ酸類、ポリチオ酸類、チオアミド類、スルホキシド類等が挙げられる。
また、これらの老化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0113】
(離型剤)
本発明の光学材料用硬化性組成物には離型剤を添加してもよい。離型剤は、樹脂に相溶し、硬化物の透明性を損なわず、型からの離型性を向上させるものであれば特に限定されない。そのような離型剤としてはフッ素系化合物、シリコーン系化合物、長鎖炭化水素系化合物等が挙げられる。フッ素系化合物としては例えばパーフルオロアルキル含有オリゴマー、パーフルオロアルキルエチレンオキシド、パーフルオロアルケニルエチレンオキシド等が挙げられる。シリコーン系化合物としては、例えば炭素−炭素二重結合やSiH基など反応性の官能基を持つジメチルシリコーンやポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。長鎖炭化水素系化合物としては例えばステアリン酸誘導体、パルミチン酸誘導体などが挙げられる。
また、これらの離型剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0114】
(紫外線吸収剤)
本発明の光学材料用硬化性組成物には紫外線吸収剤を添加してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート等が挙げられる。
また、これらの紫外線吸収剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0115】
(無機フィラー)
本発明の光学材料用硬化性組成物には無機フィラーを添加してもよい。無機フィラーを添加すると、材料の高強度化や難燃性向上などに効果がある。無機フィラーとしては、微粒子のものが好ましく、アルミナ、水酸化アルミニウム、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ、疎水性超微粉シリカ、硫酸バリウム、蛍光体等を挙げることができる。
【0116】
フィラーを添加する方法としては、例えば、アルコキシシラン、アシロキシシラン、ハロゲン化シラン等の加水分解性シランモノマー又はオリゴマーや、チタン、アルミニウム等の金属アルコキシド、アシロキシド又はハロゲン化物等を、本発明の硬化性組成物に添加して、組成物中あるいは組成物の部分反応物中で反応させ、組成物中で無機フィラーを生成させる方法等も挙げることができる。
【0117】
(溶剤)
本発明の光学材料用硬化性組成物が高粘度である場合、溶剤に溶解して用いることも可能である。使用できる溶剤は特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(PGMEA)、エチレングリコールジエチルエーテル等のグリコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。
【0118】
溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、クロロホルムが好ましい。
【0119】
使用する溶媒量は適宜設定できるが、用いる硬化性組成物1gに対しての好ましい使用量の下限は0.1mLであり、好ましい使用量の上限は10mLである。使用量が少ないと、低粘度化等の溶媒を用いることの効果が得られにくく、また、使用量が多いと、材料に溶剤が残留して熱クラック等の問題となり易く、またコスト的にも不利になり工業的利用価値が低下する。
【0120】
これらの、溶媒は単独で使用してもよく、2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0121】
本発明の硬化性組成物には、その他、着色剤、貯蔵安定剤、難燃剤、難燃助剤、界面活性剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、アンチモン−ビスマス等のイオントラップ剤、チクソ性付与剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、消泡剤、可塑剤、反応性希釈剤、酸化防止剤、熱安定化剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、熱伝導性付与剤、物性調整剤等を本発明の目的および効果を損なわない範囲において添加することができる。
【0122】
硬化性組成物の調製方法は特に限定されず、種々の方法で調製可能である。各種成分を硬化直前に混合調製しても良く、全成分を予め混合調製した一液の状態で低温貯蔵しておいても良い。全成分を混合した後、反応制御条件や官能基の反応性の差の利用により組成物中の官能基の一部のみを反応させてもよい。物性改良の目的で熱可塑性樹脂等の添加剤を使用する場合は、これらの添加剤と硬化触媒である白金化合物を予め混合して貯蔵しておき、硬化直前にそれぞれの所定量を混合して調製してもよい。
【0123】
(硬化物)
本発明の硬化性組成物を硬化させる方法としては、特に限定されないが、各成分を単に混合するだけで反応させることもできるし、加熱して反応させることもできる。反応が速く、一般に耐熱性の高い材料が得られ易いという観点から、加熱して反応させる方法が好ましい。
【0124】
反応温度としては種々設定できるが、好ましい温度の下限は30℃、より好ましくは60℃、さらに好ましくは90℃である。好ましい温度の上限は300℃、より好ましくは250℃、さらに好ましくは200℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなる。反応温度が高いと着色や隆起することがある。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなる傾向があり、反応温度が高いと着色や隆起することがある。
【0125】
反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。一定の温度で行うより、多段階的あるいは連続的に温度を上昇させながら反応させた方が、樹脂充填時の作業性と硬化時間の短縮を両立できるという点で好ましい。
【0126】
反応時の圧力も必要に応じて種々設定でき、常圧、高圧又は減圧状態で反応させることもできる。
本発明の組成物を硬化させて得られる硬化物は、1mm厚のサンプルで波長400nmにおける光線透過率が80%以上であるのが好ましい。さらに、この硬化物を280℃3分間熱処理しても、波長400nmにおける光線透過率変化が10%以下で維持できるため、耐ハンダリフロー性があると考えられる。このような高い耐熱性により、光半導体やモジュール、光学部品の設計の自由度や応用先を増やすことができる。
【0127】
本発明の組成物を硬化させて得られる硬化物は、JIS K6253のタイプDデュロメータによる硬さ(ショアD)が50以上であることが好ましく、55以上がより好ましく、60以上が特に好ましい。ショアDによる硬さが高いと、機械的強度があり、カッターやドリルといった機械的加工が可能であることから、光学部品成型後に複雑な形状を付与したり、補正したりすることができる。
【0128】
本発明の組成物を硬化させて得られる硬化物は、30℃における線膨張係数が110ppm/K以下であることが好ましく、100ppm/K以下がより好ましい。線膨張係数を低くすることにより、光学部品の温度による焦点や収差のズレを小さく、部品を固定した際に熱履歴がかかったときの熱衝撃を小さくすることができる。
【0129】
(用途)
本発明の硬化性組成物は光学材料用に用いられる。ここでいう光学材料とは、可視光、赤外線、紫外線、X線、レーザーなどの光をその材料中を通過させる用途に用いる材料であり、具体的には下記のようなものが例示される。
【0130】
例えば、(デジタル)カメラや携帯電話や車載カメラ等のカメラ用レンズ、プロジェクションレンズ、f−θレンズ、ピックアップレンズ等の光学レンズ、光学フィルム、光学シート、ダイシングテープ、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、高電圧絶縁材料、層間絶縁膜、絶縁被覆材、コーティング材料(ハードコート、シート、フィルム、剥離紙用コート、光ディスク用コート、光ファイバ用コート等を含む)、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、ポッティング材料、光半導体封止材料、レジスト材料、液状レジスト材料、着色レジスト、ドライフィルムレジスト材料、ソルダーレジスト材料、カラーフィルター用材料、光造形、太陽電池用材料、表示材料、記録材料、複写機用感光ドラムに応用できる。
【実施例】
【0131】
以下に本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
【0132】
(合成例1)
2Lオートクレーブに1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン650g、トルエン600gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温105℃で加熱、攪拌した。トリアリルイソシアヌレート90g、トルエン110g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として0.03wt%含有)3.5gの混合溶液を10回に分けて分割添加した。滴下終了から6時間加熱撹拌した後、H−NMRでアリル基の反応率が95%以上であることを確認し、冷却により反応を終了した。冷却により反応を終了した。
【0133】
トルエン及び未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを60℃で2時間、80℃で2時間減圧脱揮し、無色透明の液体を得た。1H−NMRによりこのものは1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部とトリアリルイソシアヌレートのアリル基が反応したもの((β1)と称す。(β1)は混合物であるが、主成分として1分子中に9個のSiH基を含有する以下の化合物を含有する)であることがわかった。また、1,2−ジブロモエタンを内部標準に用いて1H−NMRによりSiH基価を求めたところ、9mmol/gであることがわかった。
【0134】
【化16】

【0135】
(実施例1〜3、比較例1)
表1に示される配合組成(配合量は重量部、(D)成分に関しては(C)成分に対する添加量)で硬化性組成物を調製した。
【0136】
(測定、試験)
(等温成形硬化物の作成)
135℃に予熱されたガラス上に上記組成で配合された硬化性組成物を3g滴下し、1mm厚みのシリコーンゴムシートをスペーサーとして上からガラスをかぶせた。8分間空気中で加熱し、透明な硬化物を得た。
【0137】
(複屈折)
王子計測機器株式会社製、KOBRA−CCDを用いて上記方法で作成した等温成形硬化物の面内の複屈折を測定した。複屈折のバラつきが50nm未満であるものを○、50nm以上であるものを×とした。
【0138】
(ゲル化時間)
所定温度(実測値)に熱したアズワン製ホットプレート上にアルミ箔を敷き、ここに樹脂組成物を1滴落とし、爪楊枝を用いて一定速度でかき混ぜた。硬化性組成物を落とした時点から硬化が始まるまでの時間をストップウォッチで計測し、ゲル化時間とした。ゲル化時間が長いほど、所定温度での硬化が遅く、樹脂の充填が行ないやすいといえる。
【0139】
(成形サイクル性)
硬化性組成物をサンプルとし、株式会社島津製作所製DSCを用いて、サンプル量15mg、窒素ガス30mL/分、昇温速度10℃/分で25℃〜350℃の温度範囲を測定し、下記式で各温度での反応率を求めた。反応率10%に達する温度を充填温度、80%に達する温度を硬化温度、充填温度と硬化温度の差をΔtとし、サイクル性を評価した。Δtが大きいほど金型の昇温、冷却に時間がかかり、成形サイクル性が悪いといえる。
(反応率)=(1秒ごとに求めた経時の発熱量の積算値)/(総発熱量)×100
また、5℃/分で昇温、冷却した際にかかる昇温、冷却時間の合計を昇温冷却時間とした。
【0140】
(SiH基価)
バリアン・テクノロジーズ・ジャパン・リミテッド製、300MHz NMR装置を用いた。(B)成分合成での反応追跡は、反応液を重クロロホルムで1%程度まで希釈したものをNMR用チューブに加えて測定し、未反応SiH基のピークまたは未反応炭素−炭素二重結合基由来のメチレン基のピークと、反応炭素−炭素二重結合基由来のメチレン基のピークから求めた。(B)成分の官能基価は、ジブロモエタン換算でのSiH基価(mmol/g)を求めた。
【0141】
(重量減少率)
株式会社島津製作所製、DTG−50を用いて、サンプル量6mg、窒素ガス50mL/分、昇温速度10℃/分で25℃〜300℃の温度範囲を測定し、25℃での重量を基準とした100℃での重量減少率を求めた。
【0142】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(B)1分子中に少なくともSiH基を2個含有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、および(D)下記一般式(I):
【化1】

(式中Rはアルキル基またはアリール基であり、それぞれのR1はつながっていてもよい。R2は水素基、アルキル基またはアリール基である。)であらわされる化合物を必須成分とする硬化性組成物で、(D)成分の分子量が130以上であることを特徴とする光学材料用硬化性組成物。
【請求項2】
一般式(I)におけるRが水素基であることを特徴とする請求項1に記載の光学材料用硬化性組成物。
【請求項3】
(D)成分の100℃での重量減少率が10%以内であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか一項に記載の光学材料用硬化性組成物。
【請求項4】
(D)成分が2−フェニル−3−ブチン−2−オール、3,7,11−トリメチル−1−ドデシン−3−オールのうちから選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学材料用硬化性組成物。
【請求項5】
(A)成分がSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を(A)成分1gあたり1mmol以上含有することを特徴とする請求項1に記載の光学材料用硬化性組成物。
【請求項6】
(B)成分が鎖状および/または環状ポリシロキサン骨格を含有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の光学材料成形用硬化性組成物。
【請求項7】
老化防止剤を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学材料用硬化性組成物。
【請求項8】
離型剤を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学材料用硬化性組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の硬化性組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項10】
請求項9に記載の硬化物を使用した光学部品。
【請求項11】
請求項10に記載の光学部品を使用した光学モジュール。

【公開番号】特開2012−107114(P2012−107114A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256516(P2010−256516)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】