説明

光学機器用取付アタッチメント

【課題】 ハーフ型ヘルメットに強固に取り付けることができ、しかも、脱着が容易で、したがって、取り付けられた光学機器を確実に調整することができる光学機器用取付アタッチメントを提供する。
【解決手段】 光学機器600をハーフ型ヘルメットに装着するためのアタッチメント10であって、ヘルメットの前面に当接し、下部をフック状に形成されてヘルメットの前縁部に係合するアタッチメント前部20と、フック状に形成されてヘルメットの後縁部に係合するアタッチメント後部30と、ヘルメットの上面に沿って前後方向に延び、アタッチメント前部20とアタッチメント後部30とを連結するストラップ40と、アタッチメント前部20に設けられ、光学機器600を調整自在に保持する調整機構50とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ヘルメット・マウント・ディスプレイ(HMD:Helmet Mounted Display)などの光学機器を、特にハーフ型ヘルメットに装着するための取付アタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、使用者の頭部のみを主として覆うハーフ型ヘルメットに様々な光学機器を装着するための取付アタッチメントが存在する。この取付アタッチメントのヘルメットへの固定方法は、次の2種類のものが代表的である。
【0003】
まず第1の種類は、ヘルメットに孔あけし、この孔あけした部分に、光学機器を保持する取付アタッチメントを直接固定するものである。この種類の固定方法では、ヘルメットの加工が必要であるうえ、取付アタッチメントの脱着自体が面倒であるという不都合がある。また、この種類の取付アタッチメントは、ヘルメットに強固に固定されるという利点があるものの、取り付けられた光学機器の角度や位置を調整できないものが殆どである。
【0004】
第2の種類は、クリップ状の締結手段、あるいは、ネジで挟み込むタイプの締結手段を備えた取付アタッチメントをヘルメットの縁部に挟んで固定するものである。この種類の固定方法では、脱着は簡単であるが、保持力が小さいために、使用中に引っ掛けたりした場合に取付アタッチメントがずれてしまうという不都合があった。また、この種類の取付アタッチメントは、装着時の振動などによってもずれることがあり、取り付けられた光学機器の角度や位置を維持することが難しいという不都合もある。
【0005】
なお、この種の従来技術として、ヘルメットの側部にケースを設けるとともに、そのケースから前後方向に摺動可能なスライド部材を設け、このスライド部材に設けられた第1の球継手と、画像表示部に設けられた第2の球継手とを介して、前記スライド部材と画像表示部とを連結軸で連結したヘッドマウントディスプレイがある(例えば、特許文献1参照)。また、この従来技術に用いられている球継手(ボールジョイント)として、ベアリング内に設けた略球状の球頭部となった内球リングを弾性体で軸線方向に押圧するようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された発明の場合、使用者の頭の側部で光学機器等を支持するため、光学機器の重量によっては、取付けられた光学機器の角度や位置を維持することが難しく、また、使用中に引っ掛けて光学機器がずれてしまうという不都合がある。この特許文献1の発明に上記特許文献2に記載された発明を適用して光学機器の位置を維持しようとしても、特許文献2の発明では複雑な構造の球継手となり、特許文献1の発明での使用は難しい。
【特許文献1】特開2006−319440号公報
【特許文献2】特開2002−139023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、ハーフ型ヘルメットに強固に取り付けることができ、しかも、脱着が容易で、したがって、取り付けられた光学機器を確実に調整することができる光学機器用取付アタッチメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明に係る光学機器用取付アタッチメントは、光学機器をハーフ型ヘルメットに装着するためのアタッチメントであって、前記ヘルメットの前面に当接し、下部をフック状に形成されて前記ヘルメットの前縁部に係合するアタッチメント前部と、フック状に形成されて前記ヘルメットの後縁部に係合するアタッチメント後部と、前記ヘルメットの上面に沿って前後方向に延び、前記アタッチメント前部と前記アタッチメント後部とを連結するストラップと、前記アタッチメント前部に設けられ、前記光学機器を調整自在に保持する調整機構とを備えることを特徴とする。
【0009】
かかる構成よれば、光学機器をハーフ型ヘルメットに強固に取り付けることができ、しかも、脱着が容易で、したがって、取り付けられた光学機器を確実に調整することができる。
【0010】
上記アタッチメント前部のフック状に形成された部分は、前記ヘルメットの前縁部に後面から2点支持すべく前記前縁部に沿って離隔して配置された一対の前側フック状部分を具備することが可能である。かかる構成によれば、アタッチメント前部の装着安定性が向上する。
【0011】
上記一対の前側フック状部分のそれぞれは、前記前側フック状部分の開き角度が約65°±5°になるように形成されることが可能である。かかる構成によれば、汎用のヘルメットへの脱着が容易であり、この角度範囲内であると、装着安定性を向上させることができる。
【0012】
上記アタッチメント後部は、前記ヘルメットの後縁部に前面から2点支持すべく前記後縁部に沿って離隔して配置された複数の後ろ側フック状部分とを具備することが可能である。かかる構成によれば、アタッチメント後部の装着安定性を向上させることができる。
【0013】
上記複数の後ろ側フック状部分は、前記ヘルメットの後縁部の曲線に沿うように、互いに角度を付けて配置されることが可能である。かかる構成によれば、ヘルメットへの脱着が容易であり、装着安定性を向上させることができる。
【0014】
上記ストラップは、前記アタッチメント前部および前記アタッチメント後部のうちの少なくとも一方に形成されたスリットを通してループ状に掛け回され、該ループ状の対向する面に設けられた面ファスナにより、長さ調整自在に締結されることが可能である。かかる構成によれば、様々なサイズのヘルメットへの適用が容易であり、また、ストラップの弾性の程度に応じて使用者がアタッチメント前部とアタッチメント後部との間の締結力を任意に調整することができる。
【0015】
上記ストラップは、前側に保持される前記光学機器の配線を、前記ストラップの長手方向に沿って後側に取り回す際にその中途で拘束するための拘束部を具備することが可能である。かかる構成によれば、使用者の前方に配される光学機器の配線を使用者の邪魔にならないように後方に取り回し、固定することが容易である。
【0016】
上記拘束部は、たとえば、前記ストラップの幅方向両側に延び、両側に延びた端部を互いに重ね合わせて前記配線を拘束し、重ね合わせ部分に設けられた面ファスナで締結されるように構成されることが可能である。
【0017】
上記調整機構は、前記光学機器の前後方向移動、左右方向移動、上下方向移動、左右方向旋回、および上下方向旋回の少なくともいずれか1つを調整可能に構成されることが可能である。かかる構成によれば、光学機器を最大で5自由度で調整することが可能である。
【0018】
上記調整機構は、たとえば、前後方向に延び、前記光学機器に固定されるラック部材と、該ラック部材のいずれかのラック歯に選択的に係合可能に配置されたラッチ部材と、該ラッチ部材を前記ラック歯に係合する方向に付勢する付勢手段とを具備することが可能である。かかる構成によれば、使用者は、ラッチ部材を操作することにより簡単に光学機器の前後方向位置を調整することができる。
【0019】
上記調整機構は、たとえば、前記光学機器に回動自在に固定され、前記アタッチメント前部に形成された左右方向の第1のスリットに挿通され、該第1のスリットに沿って移動自在に構成された第1の偏芯軸と、該第1の偏芯軸に連結された第1の操作レバーとを具備することが可能である。この場合、上記調整機構は、前記第1の操作レバーの回転操作によって前記第1の偏芯軸を回転させ、該第1の偏芯軸と前記第1のスリットとの摩擦係合により、該第1のスリットに対する前記第1の偏芯軸の位置を固定するように構成されることが可能である。かかる構成によれば、使用者は、光学機器を操作することにより簡単にその左右方向位置を調整することができる。
【0020】
上記調整機構は、たとえば、前記光学機器に回動自在に固定され、前記左右調整機構に形成された上下方向の第2のスリットに挿通され、該第2のスリットに沿って移動自在に構成された第2の偏芯軸と、該第2の偏芯軸に連結された第2の操作レバーとを具備することが可能である。この場合、上記調整機構は、前記第2の操作レバーの回転操作によって前記第2の偏芯軸を回転させ、該第2の偏芯軸と前記第2のスリットとの摩擦係合により、該第2のスリットに対する前記第2の偏芯軸の位置を固定するように構成されることが可能である。かかる構成によれば、使用者は、光学機器を操作することにより簡単にその上下方向位置を調整することができる。
【0021】
上記調整機構は、たとえば、上下方向に延び、前記光学機器との間に設けた上下軸を、その軸回りの回動自在に摩擦支持して構成されることが可能である。かかる構成によれば、使用者は、光学機器を操作することにより簡単にその左右旋回角度を調整することができる。
【0022】
上記調整機構は、たとえば、左右方向に延び、前記光学機器との間に設けた左右軸を、その軸回りの回動自在に摩擦支持して構成されることが可能である。かかる構成によれば、使用者は、光学機器を操作することにより簡単にその上下旋回角度を調整することができる。
【発明の効果】
【0023】
上記発明によれば、ハーフ型ヘルメットに強固に取り付けることができ、しかも、脱着が容易で、したがって、取り付けられた光学機器を確実に調整することができる光学機器用取付アタッチメントを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本願発明に係る光学機器用取付アタッチメントについて添付の図面を参照しながら具体的に説明する。
【0025】
なお、本明細書および特許請求の範囲における「前」、「後ろ」、「上」、「下」、「右」、および「左」などの方向を示す用語は、使用者が本願発明にかかる光学機器用アタッチメントを装着した通常の状態における通常の姿勢での相対的な方向を示しているだけであって、絶対的な方向を指し示すものではないことを注記しておく。
【0026】
図1に左前方からの斜視図を示すように、本願発明の実施の形態に係る光学機器用取付アタッチメント10は、アタッチメント前部20、アタッチメント後部30、ストラップ40、および調整機構50を備えている。
【0027】
図2にハーフ型ヘルメット700(二点鎖線で示す)への装着例を示すように、アタッチメント前部20は、ヘルメット700の前面に当接されるベース部分210と、該ベース部分210から下方へ延び、ヘルメット700の前縁部に係合する前側フック部220とを備えている。また、アタッチメント後部30は、フック状に形成され、ヘルメット700の後縁部に係合するように構成されている。ストラップ40は、ヘルメット700の上面に沿って前後方向に延び、アタッチメント前部20とアタッチメント後部30とを連結している。さらに、調整機構50は、アタッチメント前部20に設けられ、光学機器600を調整自在に保持している。
【0028】
本実施の形態にかかる調整機構50は、後で詳述するように、非常の大きな範囲で光学機器600の位置や角度を調整できる機能を有しており、これによって、光学機器600として有効視野範囲が広いものを採用することができ、したがって、光学機器用取付アタッチメント10の装着ずれを大きな範囲で許容することができるという利点を有している。
【0029】
まず、アタッチメント前部20について詳述する。図3も参照して、アタッチメント前部20のベース部分210は、ABSなどの軽量な合成樹脂から形成された板状部材であり、これが当接されるヘルメット700の前面形状に応じて湾曲した形状をなしている。ベース部分210の上部には、左右方向のスリット212が形成され、このスリット212に内側(後ろ側)からストラップ40の前端部が挿通されている。挿通されたストラップ40は、ループ状に掛け回され、リベット止めされている。
【0030】
ベース部分210の下部には、左右にそれぞれ1つずつの前側フック状部分220が設けられている。前側フック状部分220は、所定の弾性を備えた金属板からなり、下方へ延び、そして、後方へ屈曲されて全体をフック状に形成されている。このように、前側フック状部分220は、比較的大きなサイズであって、しかも所定の弾性を備えているため、種々のタイプのハーフ型ヘルメット700に安定して装着可能となっている。
【0031】
また、図4に示すように、前側フック状部分220の開き角度は、この角度に限定されるものではないが、65°±5°とされており、これによって、汎用のハーフ型ヘルメットの殆どにおいて最も安定してヘルメット700に係合するようになっている。また、各前側フック状部分220の先端部には、ゴムなどの軟質の合成樹脂から形成されたキャップ222が被せられており、これによって係合するヘルメット700との摩擦係数を向上させている。
【0032】
また、本実施の形態においては、図3に示すように、2つの前側フック状部分220が、左右に相互に適長離隔して配置された2点支持構造となっており、これによって湾曲した前縁部を有するヘルメット700に安定して装着されることができるようになっている。なお、ベース部分210の前述したような湾曲形状も、これらの前側フック状部分220のヘルメット前縁部との密着性および装着安定性を向上させる結果となっている。
【0033】
次に、アタッチメント後部30について詳述する。図5も参照して、アタッチメント後部30は、金属板からなり、その下部を前方に屈曲され、先端部が2つに分岐して上方へさらに屈曲された全体としてフック状部分302として構成されている。アタッチメント後部30の上部306は、上方へ延び、その上端部には、左右方向のスリット304が形成され、このスリット304に内側(前側)からストラップ40の後端部が挿通されている。挿通されたストラップ40は、ループ状に掛け回され、対向する面に設けられた面ファスナ402a,402b(図6も参照)により脱着可能とされている。
【0034】
図5に示すように、このアタッチメント後部30も2点支持構造を有するべく、2つの後ろ側フック状部分302は、左右に相互に適長離隔して配置された構成となっており、これによって湾曲した後縁部を有するヘルメット700(そのサイズを半径Rで示す)に安定して装着されるようになっている。さらに、2つの後ろ側フック状部分302は、ヘルメット700の後縁部の曲線に沿うように互いに角度を付けて配置されており、これによって、さらなる装着安定性の向上を図っている。このように、2つの後ろ側フック状部分302は、上部306との間にヘルメット700の後縁部を挟む込むように保持することができる。
【0035】
図1、図2、および図4に示すように、ストラップ40は、ヘルメット700の上面に沿って前後方向に延びている。ストラップ40は、或る程度の可撓性を有する、たとえばナイロン系の素材から形成され、ヘルメット700の頂上部から後部までに至る大部分に、前述した面ファスナ402aが貼り付けられる面ファスナ402bが設けられている。このように、前後方向の非常に長い領域に面ファスナ402bが設けられているので、ストラップ40は、後部で非常に大きな長さ調整自由度があり、また、連結するアタッチメント前部20とアタッチメント後部30との間のテンションも、使用者の好みに応じて調整し易くなっている。
【0036】
図6に示すように、ストラップ40の中途、本実施の形態においては、ヘルメット700の頂上部分には、左右方向にそれぞれ延びるフラップ状のケーブル固定バンド404,406が設けられている。ケーブル固定バンド404,406は、前側に保持される光学機器600の配線602(図1および図2を参照)をストラップ40の長手方向に沿って後ろ側に取り回す際にその途中で固定するためのものである。ケーブル固定バンド404,406は、互いに折り重ねてストラップ40の上面との間で配線を保持する(折り重ねた状態は、図2を参照)。ケーブル固定バンド404,406は、相互に貼り付き、また、前述の面ファスナ402bにも貼り付く面ファスナ404a,406aが設けられている。
【0037】
このようなケーブル固定バンド404,406は、ヘルメット700の頂上部分だけでなく、ストラップ40の長手方向に沿った任意の位置に、任意の個数設けることが可能であり、単に配線602を固定するためでなく、配線602の余剰部分を束ねて固定するためにも利用されることが可能である。
【0038】
図2に戻って、本実施の形態にかかる調整機構50は、前後移動機構510、左右旋回機構530、上下旋回機構550、上下移動機構570、および左右移動機構590を備えており、5自由度を確保している。各機構510〜590は、ここで示したのとは逆の順にアタッチメント前部20のベース部分210から前方および下方に延び、先端の前後移動機構510の下面に光学機器600が固定される構成となっている。
【0039】
光学機器600は、本実施の形態においては、前述したようなヘルメット・マウント・ディスプレイ(HMD)であるが、このほか、暗視装置、暗視スコープ、フラッシュ・ライトなどの任意の種々の光学機器であることが可能である。
【0040】
本実施の形態における光学機器600は、HMDの例であるので、使用時には、装着した使用者の左右いずれかの眼800の直前に配置される(図2参照)。この光学機器600の筐体の上面には、前後移動機構510のゲート状の支持部512が固定されている。支持部512には、その操作部514aを前方へ延ばしたラッチ部材514が左右方向の回動軸516に回動自在に支持されている。前後方向に延びたラック部材518は、ラッチ部材514の下側に配置されており、後端部で、隣接する左右旋回機構530に連結されている(図9参照)。
【0041】
前後移動機構510は、図8に模式図で示すような単純なラッチ機構であり、ラック部材518の上面には、前後方向に複数のラック歯518aが形成されている。ラッチ部材514は、その後端部をいずれかのラック歯518aに噛み合うように下方へ向けられて形成され、付勢手段としてのねじりコイルバネ511(実際のバネの例は、図11および図14を参照)によりラック歯518aに噛み合う方向に付勢されている。なお、付勢手段としてはこのように相互に噛み合う方向に付勢できるものであれば、任意の手段を採用することが可能である。
【0042】
以上のような前後移動機構510の構成により、図7に示すように、使用者がラッチ部材514の操作部514aを下方へ押すことにより(図7中の白抜き矢符を参照)、光学機器600をラック歯518aの形成範囲内で、且つ、ラック歯518aの形成間隔で前後方向に調整することができる(図9も参照)。なお、本実施の形態においては、9段階の調整が可能としてある。
【0043】
次に、左右移動機構590について詳述する。左右移動機構590は、図10および図11に示すように、アタッチメント前部20のベース部分210に直接取り付けられており、次のような構造により、ベース部分210に対して左右方向移動を実現する。
【0044】
ベース部分210の中央部には、左右方向のスリット214が形成されており、さらに図12の右側断面図も参照して、左右移動機構590は、全体として前後方向にその厚みが薄い箱状をなしており、この箱状をなすケーシング592の内部には、操作レバー594が配置されている。該操作レバー594は、ケーシング592の左右両端面に形成された開口592aからそれぞれ十分に突出する長さを有しており、これら両先端部がそれぞれ操作部594aとなっている。本実施の形態においては、操作レバー594の全長は、8cm程度としてある。
【0045】
操作レバー594の中央部には、前後方向にピン状の回動軸596が前方から貫通し、スリット214の位置に対応して配置されている。ベース部分210の後ろ側からは、スリット214の幅寸法と同じ寸法の直径を有した偏芯スライドナット598が嵌合し、回転軸596にネジ止め固定されている。偏芯スライドナット598は、回転軸596の回転中心(図12において一点鎖線で示す)に対して偏芯した形状をなしている。より具体的に、本実施の形態においては、偏芯スライドナット598は、回転軸596の回転中心に対して所定角度傾倒した柱状部分を有し、この柱状部分にてスリット214に嵌合している。
【0046】
図12における偏芯スライドナット598の回転位置では、偏芯スライドナット598は、スリット214内を左右方向に自由に移動することができる。つまり、左右移動機構590全体が左右方向に自由に移動することができる。
【0047】
この状態から、たとえば、使用者が、図10に矢符で示すような方向に操作レバー594を操作することにより、これと共に回転軸596が回転する。このとき、回転軸596には、これに偏芯した偏芯スライドナット598が固定されているので、回転軸596と共に回転させられる偏芯スライドナット598は、スリット214内でこじられるような状態となり、スリット214内で摩擦力が増大する。これによって、左右移動機構590の左右方向位置が固定される。
【0048】
なお、図10および図11に示す参照符号591は、ストッパ部であり、操作レバー594の回転角度範囲を規定している。これによって、操作レバー594が必要以上に回されることがなく、操作レバー594の回し過ぎによる故障の可能性を低減することができる。
【0049】
左右移動機構590の左右方向調整範囲(図11を参照)は、スリット214の長さによって規定されるが、単なる調整用の目的であれば、使用者の片側の眼800の範囲程度でよい。しかしながら、本実施の形態においては、両眼の範囲に亘って大きく左右移動可能なように構成してあり、これによって、たとえば、使用者の利き目に応じてどちらの眼800の位置でも配置できるようになっている。
【0050】
次に、図13および図14を参照して、上下移動機構570について詳述する。上下移動機構570は、上述した左右移動機構590の前面に、角度調整アダプタ570Aを介して取り付けられている。角度調整アダプタ570Aは、ヘルメット700の後ろ側に傾倒した前面に取り付けられるベース部分210および左右移動機構590に対して、上下移動機構570を、使用者の通常使用時にほぼ上下方向に沿って配置されるようにするものである(たとえば、図2を参照)。しかしながら、この角度調整アダプタ570Aは、左右移動機構590のケーシング592(図12参照)の形状、あるいは、上下移動機構570自体のケーシング572の形状により代用することも可能であることは言うまでもない。本実施の形態においては、上下移動機構570の構造を左右移動機構590の構造と共通化するために、このような角度調整アダプタ570Aを配置しただけであり、したがって、上下移動機構570の構造において、左右移動機構590と同様の部分は、図示を省略、あるいは、同様の参照符号を付してその詳細な説明を省略している。
【0051】
そのため、本実施の形態においては、上下移動機構570が上下方向にスライドするためのスリットは、角度調整アダプタ570Aの前面に形成されており、ここでは図示は省略されている。
【0052】
また、本実施の形態においては、図13および図14に示すように、上下移動機構570は、左右移動機構590の前面に相互の回動軸をほぼ一致させた配置構成とされ、これによって、使用者は、たとえば、2つの操作レバー574,594を片手で同時に操作し、上下および左右方向調整を同時に行なうことも可能である。また、本実施の形態においては、手前側の操作レバー574を後ろ側の操作レバー594に対して若干短くしておくことにより、使用者は手探りでどちらの操作レバーを操作しているのかを分かり易くしてある。さらに、2つの操作レバー574,594は、同一方向への回転で調整の固定あるいは解除するように構成してあるので、誤操作の可能性も低くなっている。
【0053】
次に、図15および図16を参照して、左右旋回機構530について詳述する。左右旋回機構530は、前後移動機構510の上面後端部に設けられている。図16に示すように、左右旋回機構530は、上下方向の旋回軸532を備えており、該旋回軸532の下端部は、前後移動機構510に固定されている。旋回軸532の上部は、左右旋回機構530の適宜の部材により摩擦支持されている。これにより、光学機器600を保持している前後移動機構510を旋回軸532と共に、所定の摩擦力を介して左右旋回可能に支持している。本実施の形態においては、左右にそれぞれ40°の旋回ができるように構成されており、45°が許容範囲に設定されている。
【0054】
次に、図17を参照して、上下旋回機構550について詳述する。上下旋回機構550は、箱形のケーシング552を備え、該ケーシング552は、上下移動機構510の下端部に固定されている。ケーシング552は、その内部に左右方向の旋回軸554を摩擦支持している。該旋回軸554には、左右旋回機構530が固定されている。これにより、光学機器600を保持している前後移動機構510および左右旋回機構530と共に、所定の摩擦力を介して上下旋回可能に支持している。本実施の形態においては、光学機器600が水平の状態から、手前に25°(許容範囲は30°まで)、上方向に60°(許容範囲は90°まで)の旋回ができるように構成されている。
【0055】
したがって、図17に示すように、上下旋回方向への調整機能を有すると共に、使用者が光学機器600の非使用時には、上端位置まで光学機器600を上旋回して跳ね上げた位置で固定しておくことができ、非使用時の視界が確保される。
【0056】
以上のように、本実施の形態にかかる光学機器用取付アタッチメント10は、アタッチメント前部20とアタッチメント後部30を長さ調整可能なストラップ40で連結した簡易な構成であるので、光学機器600を取り外すことなく、また、光学機器用取付アタッチメント10自体の分解の必要もなく、ヘルメット700を着脱することができる構成となっている。
【0057】
また、本実施の形態にかかる光学機器用取付アタッチメント10は、非常に大きな調整範囲を有しているので、光学機器600としてより精度の低いものを採用することも可能であり、また、使用者の視力など、使用者の個体差にも柔軟に適応することができる。
【0058】
また、光学機器用取付アタッチメント10全体として、金属の使用を、前後のフック部分、ヒンジ部分、ネジ類に留めてあるので、軽量化を図ることができ、使用者への負担が軽減される。また、金属の使用が少ないことから、たとえば、地雷探知などの用途に使用する際にも、磁気製品への影響を小さくすることができるという利点も有している。
【0059】
さらには、簡易な構成のアタッチメント後部30は、簡単にストラップから取り外すことが可能であるので、ヘルメット700の形状や種類に応じたものに交換するのも容易である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本願発明に係る光学機器用取付アタッチメントは、ハーフ型ヘルメットに強固に取り付けることができ、しかも、脱着が容易で、したがって、取り付けられた光学機器を確実に調整することができる光学機器用取付アタッチメントを提供する用途に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本願発明の実施の形態に係る光学機器用取付アタッチメントの全体構成を示す左前方からの斜視図である。
【図2】図1に示した光学機器用取付アタッチメントのハーフ型ヘルメットへの取り付け例を示す左側面図である。
【図3】図2に示した光学機器用取付アタッチメントのアタッチメント前部のヘルメット前部への取り付け方法を示す斜視図である。
【図4】図2に示した光学機器用取付アタッチメントの前側フック部の構成を示す側面図である。
【図5】図2に示した光学機器用取付アタッチメントのアタッチメント後部のヘルメット後部への取り付け方法を示す斜視図である。
【図6】図2に示した光学機器用取付アタッチメントのストラップの構成を示すヘルメットの左後方からの斜視図である。
【図7】図2に示した光学機器用取付アタッチメントの前後移動調整機構の構成を示す左前方からの斜視図である。
【図8】図7に示した前後移動機構の詳細構成を示す模式的左側面図である。
【図9】図2に示した光学機器用取付アタッチメントの左右移動機構の構成を示す左側面図である。
【図10】図2に示した光学機器用取付アタッチメントの左右移動機構の構成を示す左前方からの斜視図である。
【図11】図10に示した左右移動機構による光学機器用取付アタッチメントの左右移動を示す正面図である。
【図12】図10に示した左右移動機構の内部構成を示す右側断面図である。
【図13】図2に示した光学機器用取付アタッチメントの上下移動機構の構成を示す左前方からの斜視図である。
【図14】図13に示した上下移動機構による光学機器用取付アタッチメントの上下移動を示す正面図である。
【図15】図2に示した光学機器用取付アタッチメントの左右旋回機構の構成を示す左前方からの斜視図である。
【図16】図15に示した左右旋回機構による光学機器用取付アタッチメントの左右旋回を示す平面図である。
【図17】図2に示した光学機器用取付アタッチメントの上下旋回機構(跳ね上げ機能を兼ねる)の構成を示す右側面図である。
【符号の説明】
【0062】
10 光学機器用取付アタッチメント
20 アタッチメント前部
30 アタッチメント後部
40 ストラップ
50 調整機構
210 ベース部分
220 前側フック状部分
302 後ろ側フック状部分
402a,402b 面ファスナ
404,406 ケーブル固定バンド
404a,406a 面ファスナ
510 前後移動機構
511 ねじりコイルバネ(付勢手段)
514 ラッチ部材
518 ラック部材
518a ラック歯
530 左右旋回機構
532 旋回軸
550 上下旋回機構
554 旋回軸
570 上下移動機構
574 操作レバー
576 回動軸
590 左右移動機構
594 操作レバー
596 回動軸
598 偏芯スライドナット
600 光学機器
602 (光学機器の)配線
700 ハーフ型ヘルメット
800 使用者の眼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学機器をハーフ型ヘルメットに装着するためのアタッチメントであって、
前記ヘルメットの前面に当接し、下部をフック状に形成されて前記ヘルメットの前縁部に係合するアタッチメント前部と、
フック状に形成されて前記ヘルメットの後縁部に係合するアタッチメント後部と、
前記ヘルメットの上面に沿って前後方向に延び、前記アタッチメント前部と前記アタッチメント後部とを連結するストラップと、
前記アタッチメント前部に設けられ、前記光学機器を調整自在に保持する調整機構と
を備えることを特徴とする光学機器用取付アタッチメント。
【請求項2】
前記アタッチメント前部のフック状に形成された部分は、前記ヘルメットの前縁部に後面から2点支持すべく前記前縁部に沿って離隔して配置された一対の前側フック状部分を具備していることを特徴とする請求項1記載の光学機器用取付アタッチメント。
【請求項3】
前記一対の前側フック状部分のそれぞれは、該前側フック状部分の開き角度が約65°±5°になるように形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の光学機器用取付アタッチメント。
【請求項4】
前記アタッチメント後部は、前記ヘルメットの後縁部に前面から2点支持すべく前記後縁部に沿って離隔して配置された複数の後ろ側フック状部分を具備していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光学機器用取付アタッチメント。
【請求項5】
前記複数の後ろ側フック状部分は、前記ヘルメットの後縁部の曲線に沿うように、互いに角度を付けて配置されていることを特徴とする請求項4記載の光学機器用取付アタッチメント。
【請求項6】
前記ストラップは、前記アタッチメント前部および前記アタッチメント後部のうちの少なくとも一方に形成されたスリットを通してループ状に掛け回され、該ループ状の対向する面に設けられた面ファスナにより、長さ調整自在に締結されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の光学機器用取付アタッチメント。
【請求項7】
前記ストラップは、前側に保持される前記光学機器の配線を、前記ストラップの長手方向に沿って後側に取り回す際にその中途で拘束するための拘束部を具備していることを特徴とする請求項6記載の光学機器用取付アタッチメント。
【請求項8】
前記拘束部は、前記ストラップの幅方向両側に延び、両側に延びた端部を互いに重ね合わせて前記配線を拘束し、重ね合わせ部分に設けられた面ファスナで締結されるように構成されていることを特徴とする請求項7記載の光学機器用取付アタッチメント。
【請求項9】
前記調整機構は、前記光学機器の前後方向移動、左右方向移動、上下方向移動、左右方向旋回、および上下方向旋回の少なくともいずれか1つを調整可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の光学機器用取付アタッチメント。
【請求項10】
前記調整機構は、前後方向に延び、前記光学機器に固定されるラック部材と、該ラック部材のいずれかのラック歯に選択的に係合可能に配置されたラッチ部材と、該ラッチ部材を前記ラック歯に係合する方向に付勢する付勢手段とを具備していることを特徴とする請求項9記載の光学機器用取付アタッチメント。
【請求項11】
前記調整機構は、前記光学機器に回動自在に固定され、前記アタッチメント前部に形成された左右方向の第1のスリットに挿通され、該第1のスリットに沿って移動自在に構成された第1の偏芯軸と、該第1の偏芯軸に連結された第1の操作レバーとを具備し、該第1の操作レバーの回転操作によって前記第1の偏芯軸を回転させ、該第1の偏芯軸と前記第1のスリットとの摩擦係合により、該第1のスリットに対する前記第1の偏芯軸の位置を固定するように構成されていることを特徴とする請求項9または10記載の光学機器用取付アタッチメント。
【請求項12】
前記調整機構は、前記光学機器に回動自在に固定され、前記左右調整機構に形成された上下方向の第2のスリットに挿通され、該第2のスリットに沿って移動自在に構成された第2の偏芯軸と、該第2の偏芯軸に連結された第2の操作レバーとを具備し、該第2の操作レバーの回転操作によって前記第2の偏芯軸を回転させ、該第2の偏芯軸と前記第2のスリットとの摩擦係合により、該第2のスリットに対する前記第2の偏芯軸の位置を固定するように構成されていることを特徴とする請求項11記載の光学機器用取付アタッチメント。
【請求項13】
前記調整機構は、前記光学機器との間に設けた上下軸を、その軸回りの回動自在に摩擦支持して構成してあることを特徴とする請求項9乃至12のいずれかに記載の光学機器用取付アタッチメント。
【請求項14】
前記調整機構は、前記光学機器との間に設けた左右軸を、その軸回りの回動自在に摩擦支持して構成してあることを特徴とする請求項9乃至13のいずれかに記載の光学機器用取付アタッチメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−260798(P2009−260798A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109114(P2008−109114)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年度、防衛省、試作研究契約、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】