説明

光学機器

【課題】電池の残容量が少なくなった状態での無駄な電力の消費をできるだけ少なくすることによって、防振機能をできるだけ長い時間の間使用できるようにする。
【解決手段】光学機器101は、振れを検出する振れ検出手段102a,102b,103a,103b,105と、像振れを抑制するよう動作する防振手段108a,108bと、振れ検出手段からの出力に基づいて防振手段を駆動する駆動手段115と、防振手段の動作開始後、所定時間の経過に応じて振れ検出手段への電源供給を継続したまま駆動手段への電源供給を停止させる制御手段104と、電源の状態を検出する電源検出手段116とを有する。制御手段は、電源検出手段により検出された電源の状態に応じて、所定時間を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像振れを抑制するための防振システムを有する光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
双眼鏡、撮像装置及び交換レンズ装置等の光学機器には、手振れ等の振れをジャイロセンサ等の振れセンサにより検出し、該振れセンサからの出力に基づいて像振れを抑制するようレンズ等の光学素子を駆動する防振システムが搭載されている。このような防振システムには、防振スイッチの操作に応じて動作を開始した後、再度防振スイッチが操作されることで、その動作を停止する機能を有するものがある。
【0003】
ただし、このような防振システムでは、その動作が開始された後に光学機器が観察や撮像に使用されずに単に携帯されているような状態が長時間続くと、その間も防振システムの動作が継続するため、無駄な電力が消費されてしまう。
【0004】
このため、防振システムの動作が開始された後、所定時間が経過することに応じて自動的に動作を停止させたりスタンバイモードに移行したりする省電力機能が設けられていることが多い。
【0005】
図8には、防振システムの省電力機能を示している。81aのタイミングで防振スイッチ(IS−SW)81がONされると、システムは、防振動作を行うためのISモード82に入る(82a)。そして、ISモード82中に、81bのタイミングで防振スイッチ81がOFFされると、システムはISモード82からスタンバイモード83に切り換わる(83a)。
【0006】
ここで、スタンバイモードは、振れセンサへの電源供給を維持したまま、光学素子を移動させる駆動回路への電源供給を遮断する状態をいう。ジャイロセンサ等の振れセンサは、一旦電源供給が遮断されると、電源供給が再開されても動作が安定するまでに長時間を要する。これは、センサ自体の初期不安定要因と、ハイパスフィルタや積分器の時定数によるキャパシタの充電時間を原因とする。
【0007】
このため、駆動回路への電源供給を遮断しても振れセンサへの電源供給を継続するスタンバイモードを設けることで、電力消費を抑えつつ、短時間での防振システムの安定した再動作を可能とする(特許文献1参照)。
【0008】
また、81cのタイミングで防振スイッチ81がONされると、システムは、ISモード82に入って(82b)防振動作を行う。ただし、防振スイッチ81がOFFされないまま所定時間(以下、IS時間という:例えば、5分)が経過すると、システムはISモード82からスタンバイモード83に切り換わる(83b)。
【0009】
そして、スタンバイモード83において、所定時間(以下、スタンバイ時間という:例えば、3分)が経過すると、システム(振れセンサ及び駆動回路の両方)への電源供給を遮断する。
【特許文献1】特開平7−199122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のような光学機器は、電池を電源として使用するものが多い。そして、防振システムがISモードにある状態ではもちろん、スタンバイモードにある状態でも、電池の電力が使用される。しかも、電池の残容量(電圧)が低下すると、電流が増加し、かつ内部抵抗も増加するため、電池の消耗がより速くなる。
【0011】
しかしながら、従来の防振システムでは、IS時間やスタンバイ時間が電池の残容量に関わらず固定されている。このため、特に電池の残容量が少ない状態でのスタンバイモードでは、電池の残容量が十分な状態に比べてより多くの無駄な電力を消費してしまう可能性がある。
【0012】
本発明は、電池の残容量が少なくなった状態での無駄な電力の消費をできるだけ少なくすることによって、防振機能をできるだけ長い時間の間使用できるようにした光学機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一側面としての光学機器は、振れを検出する振れ検出手段と、像振れを抑制するよう動作する防振手段と、振れ検出手段からの出力に基づいて防振手段を駆動する駆動手段と、防振手段の動作開始後、所定時間の経過に応じて振れ検出手段への電源供給を継続したまま駆動手段への電源供給を停止させる制御手段と、電源の状態を検出する電源検出手段とを有する。そして、制御手段は、電源検出手段により検出された電源の状態に応じて、所定時間を変更することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の他の一側面としての光学機器は、振れを検出する振れ検出手段と、像振れを抑制するよう動作する防振手段と、振れ検出手段からの出力に基づいて防振手段を駆動する駆動手段と、防振手段の動作開始後、所定時間の経過に応じて振れ検出手段及び駆動手段への電源供給を停止させる制御手段と、電源の状態を検出する電源検出手段とを有する。そして、制御手段は、電源検出手段により検出された電源の状態に応じて、所定時間を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電池の状態に応じて所定時間(例えば、ISタイマ時間やスタンバイタイマ時間)を変更することで、無駄な電力消費を抑え、防振機能を使用可能な時間を長くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0017】
図1には、本発明の実施例1である光学機器としての双眼鏡(観察機器)の構成を示す。101は双眼鏡であり、その内部には、以下に説明する観察時の手振れによる像振れを抑制するための防振システムを有する。
【0018】
102aは双眼鏡101のピッチ方向(垂直方向)の振れに応じた角速度信号を出力する角速度センサとしてのピッチジャイロであり、102bは双眼鏡のヨー方向(水平方向)の振れに応じた角速度信号を出力する角速度センサとしてのヨージャイロである。
【0019】
103a,103bはハイパスフィルタであり、それぞれピッチ及びヨージャイロ102a,102bから出力された角速度信号のうち手振れによって発生する周波数帯域(例えば、0.5〜30Hz)の成分を取り出す。
【0020】
ジャイロ102a,102b及びハイパスフィルタ103a,103bは、後述する電源回路114からの動作電源の供給に基づいて動作する。
【0021】
104は制御手段としての1チップマイクロコンピュータ(以下、単にマイクロコンピュータという)であり、電源回路114からの動作電源の供給に基づいて動作する。マイクロコンピュータ104内には、積分演算部105,パンニング処理部106及び制御信号生成部107が含まれる。また、マイクロコンピュータ104内には、電源検出手段としてのバッテリチェック部116と、タイマ部117とが含まれる。
【0022】
積分演算部105は、ハイパスフィルタ103a,103bを通してマイクロコンピュータ104に入力された角速度信号を、マイクロコンピュータ104内の不図示のA/D変換器を介して取り込み、積分演算をすることで、角変位信号に変換する。つまり、ジャイロ102a,102bからの出力に基づいて角変位信号を生成する。
【0023】
パンニング設定部106は、角速度信号と積分演算部105からの角変位信号とに基づいて、双眼鏡101がパンニングされている状態を検出する。パンニング状態が検出されると、積分処理部105のフィルタ特性を高周波側へシフトさせる。パンニング状態での角速度信号の周波数帯域は、手振れ状態に比べて低周波帯域となり、手振れ状態と同じフィルタ特性で処理すると、パンニング後の像の揺れ戻しが大きくなり、観察者に違和感を与える。このため、角速度信号のうちパンニング状態に特有な周波数帯域成分をカットすることで、違和感を低減する。
【0024】
制御信号生成部107は、パンニング設定部106を通った角変位信号から、像振れをキャンセルするように後述の可変頂角プリズム108a,108bを動作させるためのピッチ方向及びヨー方向への駆動量(以下、補正量という)を含む制御信号を生成する。
【0025】
この補正量は、マイクロコンピュータ104内の不図示のD/A変換器を介してデジタル信号として出力される。
【0026】
ジャイロ102a,102b、ハイパスフィルタ103a,103b、積分演算部105、パンニング設定部106及び制御信号生成部107により、振れ検出系(振れ検出手段)が構成される。
【0027】
可変頂角プリズム(以下、VAPという)108a,108bはそれぞれ、右眼用及び左眼用の防振手段として機能し、それぞれの眼によって観察される像振れを抑制する。
【0028】
VAPは、対向する2枚の透明板と、それらの外周部を取り囲む蛇腹状のフィルムと、これら透明板及びフィルムの内側に充填された高屈折率の透明液体とにより構成されている。少なくとも一方の透明板は、ピッチ軸及びヨー軸回りで回動可能な保持枠によって保持されている。保持枠とともに透明板が回動することで、2枚の透明板がなす角度(頂角)が変化し、VAPに入射して射出していく光束の向きを変化させる。これにより、観察される像の振れが抑制される。
【0029】
なお、右眼用VAP108aと左眼用VAP108bは不図示の駆動機構によって連結されている。そして、該駆動機構にピッチ方向用アクチュエータとヨー方向用アクチュエータからの駆動力を作用させることで、両VAP108a,108bをピッチ方向及びヨー方向に連動させることができる。各アクチュエータは、双眼鏡の本体に固定された電磁コイルと、駆動機構のうちVAP108a,VAP108bとともに移動する部材に固定された磁石及びヨークとにより構成されている。
【0030】
115はVAP108a,108bを駆動する駆動手段としてのVAP駆動系である。VAP駆動系115は、駆動部111a,111bと、位置検出器109a,109bと、比較器110a,110bとを有する。VAP駆動系も、後述する電源回路114からの動作電源の供給に基づいて動作する。
【0031】
位置検出器109a,109bはそれぞれ、VAP108a,108b(駆動機構)のピッチ方向及びヨー方向の位置(角度)を検出し、該位置に応じた信号を出力する。位置検出器109a,109bは、例えば、赤外線ダイオードとPSDセンサ(Position Sensitive Detector)とにより構成される。
【0032】
比較器110aは、ピッチ方向位置検出器109aからの位置信号と、制御信号生成部107からのピッチ方向制御信号とを比較する。比較器110bは、ヨー方向位置検出器109bからの位置信号と、制御信号生成部107からのヨー方向制御信号とを比較する。これら比較器110a,110bは、オペアンプにより構成され、上記位置信号と制御信号との差分信号を出力する。
【0033】
駆動部111aは、ピッチ方向用アクチュエータを含み、ピッチ方向比較器110aからのピッチ差分信号に基づいて、VAP108a,108bをピッチ方向に駆動する。駆動部111bは、ヨー方向用アクチュエータを含み、ヨー方向比較器110bからのヨー差分信号に基づいて、VAP108a,108bをヨー方向に駆動する。
【0034】
112は防振スイッチ(以下、ISスイッチ)であり、1回の操作ごとに防振開始信号(例えば、Highレベルの信号)と防振停止信号(例えば、Lowレベルの信号)とを交互に出力する。使用者は、該ISスイッチ112を操作することで、防振システムを動作させるか停止させるかを選択することができる。以下の説明において、ISスイッチ112における防振開始信号を出力させる操作をオンといい、防振停止信号を出力させる操作をオフという。
【0035】
113は電源供給源としての電池である。
【0036】
電源回路114は、電池113からの電圧を安定させ、上記各部に動作電源を供給する。
【0037】
バッテリ(BT)チェック部116は、電池113の電圧(以下、電池電圧という)をマイクロコンピュータ104内の不図示のA/D変換器を通じて取り込んで、電池113の残量(電池の状態)を検出する。
【0038】
ここで、電池(ここでは、アルカリ乾電池とする)113の放電特性を、図3に301で示す。双眼鏡101を使用している状態で、電池113はフル残量状態からの経過時間に応じて電池電圧が徐々に降下していく。したがって、電池電圧を検出することで、電池113の残量を判別することができる。
【0039】
タイマ部117は、BTチェック116による検出結果を受けて、所定時間としてのISタイマ時間又はスタンバイタイマ時間を設定する。ISタイマ時間及びスタンバイタイマ時間については後述する。また、タイマ部117は、該所定時間が経過したか否かを判別するための時間カウントも行う。
【0040】
次に、図2〜図5を用いて、防振システムで行われる処理について説明する。この処理は、マイクロコンピュータ104が、その内部の不図示のメモリに格納されたコンピュータプログラムに従って実行する。なお、このことは、後述する実施例2でも同じである。
【0041】
まず、図2には、防振システムに防振動作を行わせるISモードでの処理を示している。
【0042】
ステップ(図ではSと略記する)201で、ISスイッチ112がオンされると、マイクロコンピュータ104は防振動作の処理を開始する。
【0043】
ステップ202では、マイクロコンピュータ104は、電源回路114から、前述したようにジャイロ102a,102b、積分演算部105及び制御信号生成部107等により構成される振れ検出系と、VAP駆動系115とに電源供給を開始させる。
【0044】
次に、ステップ203では、マイクロコンピュータ104は、ISスイッチ112がオンされてから(つまりは防振動作開始後)の経過時間をカウントするためのタイマ部117内のカウンタをリセットする。
【0045】
そして、ステップ204では、マイクロコンピュータ104は、BTチェック部116に電池電圧を検出させ、検出された電池電圧(残量)に応じてISタイマ時間を設定する。このバッテリチェック処理及びISタイマ時間の設定について、図4のフローチャートを用いて説明する。
【0046】
ステップ401でバッテリチェックルーチンに入ると、マイクロコンピュータ104は、ステップ402において、BTチェック部116により検出された電池電圧が、図3に示す第3レベル以上か否かを判定する。第3レベルは、マイクロコンピュータ104の最低動作保証電圧を考慮して設定された閾値である。電池電圧が第3レベル以上であるときは防振動作を許可し、それを下回った場合は、ステップ406に進み、強制的に防振システム全体に対する電源供給を遮断する。そして、ステップ409に進んで、本処理を終了する。電池電圧が第3レベル以上である場合は、ステップ403に進む。
【0047】
ステップ403では、マイクロコンピュータ104は、電池電圧が、図3に示す第2レベル以上か否かを判定する。第2レベルは、第3レベルよりも高く設定されている。電池電圧が第2レベルより低い場合は、ステップ407に進み、タイマ部117に、省エネモード2用のISタイマ時間、例えば3分を設定させる。そして、ステップ409に進んで、本処理を終了する。一方、電池電圧が第2レベル以上である場合は、ステップ404に進む。
【0048】
ステップ404では、マイクロコンピュータ104は、電池電圧が、図3に示す第1レベル以上か否かを判定する。第1レベルは、第2レベルよりも高く設定されている。電池電圧が第1レベルより低い場合は、ステップ408に進み、タイマ部117に、省エネモード1用のISタイマ時間、例えば4分を設定させる。そして、ステップ409に進んで、本処理を終了する。一方、電池電圧が第1レベル以上である場合は、ステップ405に進む。
【0049】
ステップ405では、マイクロコンピュータ104は、タイマ部117に、通常モード用のISタイマ時間、例えば5分を設定させる。このように、ISタイマ時間は、電池113の残量が少ないほど短く設定される。そして、ステップ409に進み、本ルーチンを終了する。
【0050】
以上のバッテリチェックルーチンによって、電池電圧に応じたISタイマ時間の設定が完了すると、図2のステップ205において、防振システムの防振動作をスタートさせ、ステップ206においてタイマ部117のカウンタをカウントアップさせる。
【0051】
続いてステップ207では、マイクロコンピュータ104は、ISスイッチ112がオフされたか否かを判定する。オフされた場合は、ステップ209に進み、防振動作を停止(待機)させ、さらにステップ210にてスタンバイモードに移行する。
【0052】
スタンバイ(待機)モードでは、後述するように、ジャイロ102a,102b、積分演算部105及び制御信号生成部107等により構成される振れ検出系への電源供給を維持したまま、VAP駆動系115への電源供給を遮断(停止)する。
【0053】
一方、ISスイッチ112がオフされていない場合は、ステップ208に進む。ステップ208では、マイクロコンピュータ104は、タイマ部117のカウンタが、設定されたISタイマ時間(3分、4分又は5分)に到達したか否か、すなわちISタイマ時間が経過したか否かを判定する。
【0054】
ISタイマ時間が経過した場合は、ステップ209に進み、マイクロコンピュータ104は、防振動作を停止(待機)させ、さらにステップ210にてスタンバイモードに移行する。まだISタイマ時間が経過していなければ、ステップ206へ戻り、カウンタをカウントアップさせる。なお、ステップ206からステップ208を経て再びステップ206に戻るまでの処理時間は一定であるので、カウンタをカウントアップすることで時間が計測される。このことは、後述するスタンバイモードでも同じである。
【0055】
ステップ210でのスタンバイモードルーチンが終了すると、ステップ211に進み、マイクロコンピュータ104は本処理を終了する。
【0056】
次に、ステップ210で実行されるスタンバイモードルーチンの処理について、図5を用いて説明する。
【0057】
ステップ501でスタンバイモードに入ると、ステップ502において、マイクロコンピュータ104は、タイマ部117に、スタンバイモードに入ってからの経過時間をカウントするカウンタをリセットする。
【0058】
次に、ステップ503では、マイクロコンピュータ104は、振れ検出系に比べて消費電力が多いVAP駆動系115への電源供給を停止する。
【0059】
そして、ステップ504では、マイクロコンピュータ104は、図4に示したバッテリチェックルーチンでBTチェック部116に電池電圧を判定させ、電池電圧(電池113の残量)に応じたスタンバイタイマ時間を設定させる。
【0060】
スタンバイモードでのバッテリチェックルーチンでも、マイクロコンピュータ104は、基本的に前述したISモードでのバッテリチェックルーチンと同じ処理を行う。ただし、ステップ403で電池電圧が第2レベルより低い場合(省エネモード2の場合)は、ステップ407にて、マイクロコンピュータ104は、タイマ部117に、省エネモード2用のスタンバイタイマ時間、例えば1分を設定させる。
【0061】
また、ステップ404で電池電圧が第1レベルより低い場合(省エネモード1の場合)は、ステップ408にて、マイクロコンピュータ104は、タイマ部117に、省エネモード1用のスタンバイタイマ時間、例えば2分を設定させる。さらに、ステップ404で電池電圧が第1レベル以上である場合(通常モードの場合)は、ステップ405にて、マイクロコンピュータ104は、タイマ部117に、通常モード用のスタンバイタイマ時間、例えば3分を設定させる。
【0062】
このように、スタンバイタイマ時間も、ISタイマ時間と同様に、電池113の残量が少ないほど短く設定される。
【0063】
以上のバッテリチェックルーチンによって、電池電圧に応じたスタンバイタイマ時間の設定が完了すると、図5のステップ505において、防振システムのスタンバイ動作をスタートさせ、ステップ506においてタイマ部117のカウンタをカウントアップさせる。
【0064】
なお、ここでは、タイマ部117は、スタンバイモードに入った後の経過時間をカウントするが、この経過時間は、防振動作の開始後に前述したISタイマ時間が経過した後の経過時間である。このため、ステップ506でのカウンタのカウントアップは、防振動作の開始後(最初のステップ206でのカウントアップ)からの経過時間をカウントし続けることと同じ意味を持つ。
【0065】
続いてステップ507では、マイクロコンピュータ104は、ISスイッチ112がオンされたか否かを判定する。オンされた場合は、ステップ509に進み、スタンバイ動作を停止させる。そして、ステップ510において、スタンバイモードからISモードに移行する。これにより、図2のステップ202では、スタンバイモードで停止していたVAP駆動系115に対する電源供給を再開する。このとき、本来は電源供給が開始された後、出力が安定するまでに長時間を要する振れ検出系に対しては、スタンバイモードでも電源供給が継続されていたので、短時間のうちに精度の良い防振動作を開始することができる。
【0066】
一方、ステップ507において、ISスイッチ112がオンされていない場合は、ステップ508に進み、マイクロコンピュータ104は、タイマ部117のカウンタが設定されたスタンバイタイマ時間(1分、2分又は3分)に到達したか否か、すなわちスタンバイタイマ時間が経過したか否かを判定する。
【0067】
スタンバイタイマ時間に到達していない場合は、ステップ506に戻り、マイクロコンピュータ104は、タイマ部117にカウンタのカウントアップを行わせる。
【0068】
また、スタンバイタイマ時間に到達した場合は、ステップ511に進み、マイクロコンピュータ104は、スタンバイ動作を停止させる。そして、ステップ512において、振れ検出系及びVAP駆動系115を含む防振システムへの電源供給を停止させ、ステップ513で本ルーチンを終了する。
【0069】
以上説明した処理では、電池113の状態(残量)に応じてISタイマ時間(防振動作開始からスタンバイモードへの移行まで時間)及びスタンバイタイマ時間(スタンバイモード開始からからシステム全体への電源供給の停止までの時間)を変更する。これにより、電池113の無駄な電力消費(電池113の消耗)を抑え、防振システムによる防振動作が可能な時間を長くすることができる。
【実施例2】
【0070】
図6及び図7には、本発明の実施例2である光学機器の防振システムの処理を示している。なお、この処理は、実施例1で説明した双眼鏡101で行われるので、本実施例において実施例1と同じ構成要素については、実施例1と同符号を付して説明する。また、図6及び図7のうち、実施例1の図2及び図5に示したステップと同じステップについては、実施例1と同じステップ番号を付して説明に代える。
【0071】
図6には、防振システムに防振動作を行わせるISモードでの処理を示している。ステップ201〜ステップ208は、実施例1(図2)と同じである。
【0072】
防振動作の開始後、ISスイッチ112がオフされず、かつステップ208においてタイマ部117によるカウンタがISタイマ時間に到達していない場合は、ステップ601に進む。
【0073】
ステップ601及びステップ602では、マイクロコンピュータ104は、図4に示したフローチャートに従って、バッテリチェック処理とISタイマ時間の再設定(更新)とを行う。
【0074】
例えば、ステップ204のバッテリチェック処理で通常モード(電池電圧が第1レベル以上)と判定され、ISタイマ時間が5分と設定された後、ステップ601のバッテリチェック処理までに電池電圧が下がったとする。このとき、図4のステップ404で省エネモード1(電池電圧が第2レベル以上)であると判定されたとする。この場合、図4のステップ408で設定されるISタイマ時間を4分としておけば、ステップ602で、ISタイマ時間が5分から4分に更新される。ステップ601のバッテリチェック処理で、再度通常モードと判定された場合は、ISタイマ時間を5分のまま保持する。
【0075】
また、ステップ204のバッテリチェック処理で省エネモード1(電池電圧が第2レベル以上)と判定され、ISタイマ時間が4分と設定された後、ステップ601のバッテリチェック処理で省エネモード2(電池電圧が第3レベル以上)と判定されたとする。この場合、図4のステップ408で設定されるISタイマ時間を3分としておけば、ステップ602で、ISタイマ時間が4分から3分に更新される。ステップ601のバッテリチェック処理で、再度省エネモード1と判定された場合は、ISタイマ時間を4分のまま保持する。
【0076】
このように、ステップ204で設定されたISタイマ時間が経過するまでに電池電圧の再チェックを行い、電池電圧の変化(低下)に応じてISタイマ時間を変更(更新)することで、無駄な電力消費(電池の消耗)をより抑えることが可能になる。
【0077】
そして、マイクロコンピュータ104は、ISタイマ時間を更新(又は保持)した後、ステップ206に戻る。
【0078】
図7には、本実施例におけるスタンバイモードでの処理を示している。ステップ501〜ステップ510は、実施例1(図5)と同じである。
【0079】
スタンバイ動作の開始後、ISスイッチ112がオンされず、かつステップ508においてタイマ部117によるカウンタがスタンバイタイマ時間に到達していない場合は、ステップ701に進む。
【0080】
ステップ701及びステップ702では、マイクロコンピュータ104は、図4に示したフローチャートに従って、バッテリチェック処理とスタンバイタイマ時間の再設定(更新)とを行う。
【0081】
例えば、ステップ504のバッテリチェック処理で通常モード(電池電圧が第1レベル以上)と判定され、スタンバイタイマ時間が3分と設定された後、ステップ701のバッテリチェック処理までに電池電圧が下がったとする。このとき、図4のステップ404で省エネモード1(電池電圧が第2レベル以上)であると判定されたとする。この場合、図4のステップ408で設定されるスタンバイタイマ時間を2分としておけば、ステップ702で、スタンバイタイマ時間が3分から2分に更新される。ステップ701のバッテリチェック処理で、再度通常モードと判定された場合は、スタンバイタイマ時間を3分のまま保持する。
【0082】
また、ステップ504のバッテリチェック処理で省エネモード1(電池電圧が第2レベル以上)と判定され、スタンバイタイマ時間が2分と設定された後、ステップ701のバッテリチェック処理で省エネモード2(電池電圧が第3レベル以上)と判定されたとする。この場合、図4のステップ408で設定されるスタンバイタイマ時間を1分としておけば、ステップ702で、スタンバイタイマ時間が2分から1分に更新される。ステップ701のバッテリチェック処理で、再度省エネモード1と判定された場合は、スタンバイタイマ時間を2分のまま保持する。
【0083】
このように、ステップ504で設定されたスタンバイタイマ時間が経過するまでに電池電圧の再チェックを行い、電池電圧の変化(低下)に応じてスタンバイタイマ時間を変更(更新)することで、無駄な電力消費(電池の消耗)をより抑えることが可能になる。
【0084】
そして、マイクロコンピュータ104は、スタンバイタイマ時間を更新(又は保持)した後、ステップ506に戻る。
【0085】
以上説明したように、本実施例では、電池113の状態(残量)に応じて先に設定したISタイマ時間及びスタンバイタイマ時間が経過する前に、再度電池113の状態を検出し、その検出結果に応じてISタイマ時間及びスタンバイタイマ時間を変更する。これにより、電池113の状態を短い時間間隔で把握しながら、ISタイマ時間及びスタンバイタイマ時間を変更することができるので、電池の消耗をより効果的に抑えることができる。したがって、防振システムによる防振動作が可能な時間をより長くすることができる。
【0086】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【0087】
例えば、上記各実施例では、防振手段としてのVAPを用いた場合について説明したが、本発明は、レンズをシフトさせたり回転させたりする防振手段を用いる場合にも適用することができる。
【0088】
また、上記各実施例では、ISモードとスタンバイモードの両方において電源の状態(電池の残量)に応じてタイマ時間を変更する場合について説明したが、いずれか一方のモードにおいてのみタイマ時間を変更するようにしてもよい。
【0089】
さらに、上記各実施例では、電源の状態(電池の残量)を3つの段階に分け、段階ごとにタイマ時間を変更する場合について説明したが、電源の状態をより多くの段階に分けてもよいし、電池電圧に比例してタイマ時間を連続的に変更したりしてもよい。また、電池電圧の二乗に比例したタイマ時間を設定するようにしてもよい。
【0090】
さらに、上記各実施例では、双眼鏡について説明したが、本発明は、望遠鏡、デジタルスチルカメラ、交換レンズ及びビデオカメラ等の他の光学機器にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施例1である双眼鏡の構成を示す図。
【図2】実施例1におけるISモードでの処理を示すフローチャート。
【図3】電池の残量とタイマ時間の設定モードとの関係を示す図。
【図4】実施例1におけるバッテリチェック処理のフローチャート。
【図5】実施例1におけるスタンバイモードでの処理を示すフローチャート。
【図6】本発明の実施例2である双眼鏡におけるISモードでの処理を示すフローチャート。
【図7】実施例2におけるスタンバイモードでの処理を示すフローチャート。
【図8】双眼鏡における防振システムの動作を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0092】
101 双眼鏡
102a,102b ジャイロセンサ
103a,103b ハイパスフィルタ
104 マイクロコンピュータ
105 積分演算部
108a,108b VAP
112 防振スイッチ
113 電池
114 電源回路
115 VAP駆動系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振れを検出する振れ検出手段と、
像振れを抑制するよう動作する防振手段と、
前記振れ検出手段からの出力に基づいて前記防振手段を駆動する駆動手段と、
前記防振手段の動作開始後、所定時間の経過に応じて前記振れ検出手段への電源供給を継続したまま前記駆動手段への電源供給を停止させる制御手段と、
電源の状態を検出する電源検出手段とを有し、
前記制御手段は、前記電源検出手段により検出された前記電源の状態に応じて、前記所定時間を変更することを特徴とする光学機器。
【請求項2】
振れを検出する振れ検出手段と、
像振れを抑制するよう動作する防振手段と、
前記振れ検出手段からの出力に基づいて前記防振手段を駆動する駆動手段と、
前記防振手段の動作開始後、所定時間の経過に応じて前記振れ検出手段と前記駆動手段への電源供給を停止させる制御手段と、
電源の状態を検出する電源検出手段とを有し、
前記制御手段は、前記電源検出手段により検出された前記電源の状態に応じて、前記所定時間を変更することを特徴とする光学機器。
【請求項3】
前記制御手段は、前記電源の状態に応じて先に設定した前記所定時間が経過する前に、前記電源検出手段によって前記電源の状態を再度検出し、その検出結果に応じて前記所定時間を変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学機器。
【請求項4】
前記制御手段は、前記電源の状態としての電池の残量が少ないほど前記所定時間を短くすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の光学機器。

【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−42328(P2009−42328A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204918(P2007−204918)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】