説明

光学活性なカバラクトン類の合成

【課題】光学活性カバラクトン類の工業的に有利な製法の提供。
【解決手段】光学活性エポキシドにアルキニルボラン存在下、プロピオール酸エステルを反応させて光学活性アルコールを得、次いでこれにアルカリ金属アルコキシドを反応させる一般式(5)


(式中、R1、R2は、それぞれアルキル基等を示し、RとRが一緒になって、アルキレンジオキシ基を形成してもよい。R4はアルキル基を示す。)で表される光学活性ジヒドロカバイン類の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬又はその中間体として有用な光学活性カバラクトン類の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
カバラクトン類は、カバ(学名:Piper Methysticum Forst.、別名:ヤンゴーナ)から抽出されるα−ピロン構造を有する化合物である。カバラクトン類は、優れた鎮静、鎮痛効果を有するほか(非特許文献1)、抗菌作用、神経保護作用、TNF−α産生抑制作用等を有することが知られている(特許文献1〜4)。
【0003】
カバラクトン類の合成法のうち、ラセミ体の合成法は多く報告されているが、光学活性なカバラクトン類の合成法としては、1)β−ケトエステルを不斉還元し、さらに炭素鎖を延長して再度β−ケトエステルとした後、環化する方法(非特許文献2、特許文献5)、2)光学活性なチアゾリジンチオンを用いる方法(非特許文献3)、3)キラルアルデヒドを原料として用いる方法(非特許文献4、5)、4)光学活性なアセチレンアルコールを原料として用いる方法(非特許文献6)、及び5)β−ケトエステルを用い、途中でリパーゼを用いて光学分割する方法(非特許文献7)が知られている。
【特許文献1】ドイツ公開 19716660号公報
【特許文献2】EP公開 523591号公報
【特許文献3】特表平5−502457号公報
【特許文献4】特開2001−316260号公報
【特許文献5】特開2005−507867号公報
【非特許文献1】Planta Med. 65, 507-510(1998)
【非特許文献2】Tetrahedron Lett., 37, 6503(1996)
【非特許文献3】Organic Lett. 6, 2317(2004)
【非特許文献4】Synlett., 2077(2005)
【非特許文献5】Eur. J. Org. Chem., 2575(2005)
【非特許文献6】Tetrahedron Lett., 47, 8599(2006)
【非特許文献7】Tetrahedron Lett., 47, 8655(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの従来の光学活性カバラクトン類の合成法には、高価な不斉還元触媒を使用する(非特許文献2、特許文献5)、出発原料が特殊でかつ高価である(非特許文献3)、反応工程数が長く、反応が煩雑である(非特許文献4、5)、出発原料の合成が困難で、反応工程も長い(非特許文献6)、リパーゼによる光学分割では収率が低くなる(非特許文献7)等の欠点がある。
従って、本発明は、安価な原料から短い反応工程数により、効率良く、光学活性なカバラクトン類を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者は、光学活性なカバラクトン類の工業的に有利な製造法について種々検討した結果、安価に入手可能な光学活性エピハロヒドリンから得られる光学活性エポキシドを用いれば短い工程で効率良く光学活性なカバラクトン類が製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、一般式(1)
一般式(1)
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、R1及びR2は、それぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基又は水酸基を示すか、R1とR2が一緒になって、アルキレンジオキシ基を形成してもよい。*は光学活性中心部位を示す。)
で表される光学活性エポキシドにアルキニルボランの存在下、次式(2)
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、R3はアルキル基又はアリール基を示す。)
で表されるプロピオール酸エステルを反応させて一般式(3)
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、R1、R2、R3及び*は前記と同じ。)
で表される光学活性アルコールを得、次いでこれに次式(4)
【0013】
【化4】

【0014】
(式中、R4はアルキル基を示し、Mはアルカリ金属原子を示す。)
で表されるアルカリ金属アルコキシドを反応させることを特徴とする一般式(5)
【0015】
【化5】

【0016】
(式中、R1、R2、R4及び*は前記と同じ。)
で表される光学活性ジヒドロカバイン類の製造法を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、一般式(6)
【0018】
【化6】

【0019】
(式中、R1及びR2は、それぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基又は水酸基を示すか、R1とR2が一緒になって、アルキレンジオキシ基を形成してもよく、R5はアルキル基又はアリール基を示し、*は光学活性中心部位を示す。)
で表される光学活性エポキシドにアルキニルボランの存在下、次式(2)
【0020】
【化7】

【0021】
(式中、R3はアルキル基又はアリール基を示す。)
で表されるプロピオール酸エステルを反応させて一般式(7)
【0022】
【化8】

【0023】
(式中、R1、R2、R3、R5及び*は前記と同じ。)
で表される光学活性アルコールを得、次いでこれに次式(4)
【0024】
【化9】

【0025】
(式中、R4はアルキル基を示し、Mはアルカリ金属原子を示す。)
で表されるアルカリ金属アルコキシドを反応させて一般式(8)
【0026】
【化10】

【0027】
(式中、R1、R2、R4、R5及び*は前記と同じ。)
で表される光学活性ジヒドロカバイン類を得、これを酸化して一般式(9)
【0028】
【化11】

【0029】
(式中、R1、R2、R4、R5及び*は前記と同じ。)
で表される光学活性スルホキシドを得、次いでこれを加熱脱硫することを特徴とする一般式(10)
【0030】
【化12】

【0031】
(式中、R1、R2、R4及び*は前記と同じ。)
で表される光学活性カバイン類の製造法を提供するものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、安価かつ入手が容易な原料から、短い反応工程で、かつ効率良く、光学活性カバラクトン類が製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明方法のうち、光学活性ジヒドロカバイン類の製造法を、エピハロヒドリンからの反応式として示せば、次のとおりである。
【0034】
【化13】

【0035】
(式中、X1及びX2はそれぞれハロゲン原子を示し、R1、R2、R3、R4及び*は前記と同じ。)
【0036】
以下、本反応を反応工程毎に説明する。
【0037】
まず、一般式(a)で表されるベンジル誘導体に式(b)で表される光学活性ハロヒドリンを反応させて一般式(c)で表される光学活性ハロヒドリン(c)を得る。
【0038】
1及びR2は、それぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基又は水酸基を示すか、R1とR2が一緒になってアルキレンジオキシ基を形成してもよい。ここで、アルキル基としては、炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖アルキル基が挙げられ、特に炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。当該アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。また、アルコキシ基としては、炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖アルコキシ基が挙げられ、特に炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましい。当該アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0039】
1及びX2で表されるハロゲン原子としては、塩素原子又は臭素原子が好ましい。X1としては特に臭素原子が好ましく、X2としては塩素原子が好ましい。
【0040】
式(b)の光学活性エピハロヒドリンとしては、(S)−エピハロヒドリン及び(R)−エピハロヒドリンのいずれか一方が用いられる。
【0041】
ベンジル誘導体(a)と光学活性エピハロヒドリン(b)との反応は、通常のグリニャール反応に準じて行えばよい。すなわち、ベンジル誘導体(a)と光学活性エピハロヒドリンとを、不活性溶媒中、0〜100℃で10分〜5時間程度反応させればよい。反応溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒等が用いられる。
【0042】
得られた光学活性ハロヒドリン(c)に塩基を反応させれば、光学活性エポキシド(1)が得られる。用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の無機塩基が挙げられる。反応は、不溶性溶媒中、0〜100℃で1時間〜48時間程度行えばよい。反応溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が用いられる。
【0043】
得られた光学活性エポキシド(1)に、アルキニルボランの存在下、プロピオール酸エステル(2)を反応させれば、光学活性アルコール(3)が得られる。
【0044】
また、プロピオール酸エステル(2)のエステル残基であるR3としては、アルキル基又はアリール基が挙げられる。ここでアルキル基としては、炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基が挙げられる。当該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜6のシクロアルキル基が挙げられる。アリール基としては、炭素数6〜14のアリール基、例えばフェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、メチルナフチル基等が挙げられる。
【0045】
反応はアルキニルボランの存在下に行なわれる。当該アルキニルボランは、n−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)等のアルキルリチウムと三フッ化ホウ素エーテル錯体とから調製することができる。当該アルキニルボランは、反応液中で生成させることもできる。反応は、例えば、プロピオール酸エステル(2)、n−ブチルリチウム、三フッ化ホウ素エーテル錯体及び光学活性エポキシド(1)を不活性溶媒中、−80℃〜100℃で30分〜24時間程度攪拌することにより行なわれる。反応溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒等が用いられる。
【0046】
得られた光学活性アルコール(3)にアルカリ金属アルコキシド(4)を反応させることにより、光学活性ジヒドロカバイン類(5)が得られる。アルカリ金属アルコキシド(MOR4)のアルキル基(R4)としては、炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、炭素数3〜8のαシクロアルキル基等が挙げられる。このうち、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基が特に好ましい。当該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。またアルカリ金属(M)としてはナトリウム、カリウム等が挙げられる。
【0047】
光学活性アルコール(3)とアルカリ金属アルコキシド(4)との反応は、例えばアルコール又は不活性溶媒中、0〜100℃で1〜48時間攪拌することにより行なわれる。アルコール溶媒としてはアルコキシドの製造に用いたアルコールが好ましい。
【0048】
光学活性カバイン類の製造法を、エピハロヒドリンから反応式として示せば次のとおりである。
【0049】
【化14】

【0050】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、M、X2及び*は前記と同じ)
【0051】
以下、本反応を反応工程毎に説明する。
【0052】
まず、一般式(d)で表されるベンジルチオエーテルに光学活性エピハロヒドリン(b)を反応させて光学活性エポキシド(6)を得る。式(d)中、R5で示されるアルキル基としては、炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基が挙げられる。当該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜6のシクロアルキル基が挙げられる。アリール基としては、炭素数6〜14のアリール基、例えばフェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、メチルナフチル基等が挙げられる。これらのR5のうちアリール基が好ましく、特にフェニル基が好ましい。当該ベンジルチオエーテル(d)は、例えばベンジルアルコールにジフェニルジスルフィド等のジスルフィド類を、トリブチルホスフィン等のホスフィンの存在下に0〜100℃で30分〜24時間反応させることにより容易に得ることができる。
【0053】
ベンジルチオエーテル(d)と光学活性エピハロヒドリン(d)との反応は、n−ブチルリチウム、LDA等の塩基の存在下に行うのが好ましい。反応は、例えば不活性溶媒中、0〜100℃で30分〜48時間行なえばよい。反応溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒等が用いられる。
【0054】
得られた光学活性エポキシド(6)にアルキニルボランと、プロピオール酸エステルを反応させれば光学活性アルコール(7)が得られる。次いで、この光学活性アルコール(7)にアルカリ金属アルコキシド(4)を反応させれば、光学活性ジヒドロカバイン類(8)が得られる。これらの反応は、前記の光学活性エポキシド(1)から光学活性ジヒドロカバイン類(5)を得る反応と同様にして行なわれる。
【0055】
次いで得られた光学活性ジヒドロカバイン類(8)を酸化すれば、光学活性スルホキシド(9)が得られる。この酸化反応に用いられる酸化剤としては、過酸類が好ましく、例えばm−クロル過安息香酸、過酸化水素、過ヨウ素酸ナトリウム等が用いられる。反応は、光学活性ジヒドロカバイン類(8)及び酸化剤を不活性溶媒中、−20℃〜40℃で30分〜24時間攪拌すればよい。反応溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が用いられる。
【0056】
得られた光学活性スルホキシド(9)を加熱脱硫すれば光学活性カバイン類(10)が得られる。反応にあたって炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等を少量添加するのが好ましい。この反応は、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒等の溶媒中、80℃〜150℃に30分〜24時間加熱することにより行なわれる。
【0057】
本発明方法においては、目的物は反応混合物から、抽出、洗浄、再結晶、各種クロマトグラフィー等の通常の手段により単離、精製することができる。
【0058】
本発明方法によれば、医薬品等として有用な光学活性カバラクトン類が、比較的安価な光学活性エピハロヒドリンから短い工程で、収率良く、かつ高い光学純度で得られる。得られる光学活性カバラクトン類は、(R)体、又は(S)体である。
【実施例】
【0059】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0060】
実施例1(光学活性ジヒドロカバインの合成)
(i)光学活性クロロヒドリン合成
アルゴンガス雰囲気下、ヨウ化銅82mg(0.43mmol)にテトラヒドロフラン3mLを加え、0℃に冷却し、ベンジルマグネシウムブロミド2.8mL(2.81mmol)を滴下し撹拌した。反応混合物にテトラヒドロフラン1mLに溶解した(S)−エピクロロヒドリン200mg(2.16mmol)を滴下し、2時間撹拌した。反応混合物に塩化アンモニウム水溶液を加えて反応停止させた後、水層をジエチルエーテルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下で留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ジエチルエーテル:n−へキサン=1:1)で分離し、油状物の光学活性クロロヒドリン326mg(収率81.9%)を得た。
【0061】
S体 収率 81.9%
[α]D22−22.8°(C 0.95 CHCl3
R体 収率 67.0%
[α]D26+22.5°(C 1.51 CHCl3
【0062】
【化15】

【0063】
(ii)光学活性エポキシドの調整
アルゴンガス雰囲気下、(i)で得た光学活性クロロヒドリン215mg(1.17mmol)をジエチルエーテル3.5mLに溶解し、少量の水酸化ナトリウムを粉末状にして加え、一昼夜室温で撹拌した。反応混合物に塩化アンモニウム水溶液を加えて反応停止させた後、水層をジエチルエーテルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下で留去し、残渣を薄層クロマトグラフィー(ジエチルエーテル:n−ヘキサン=1:3)で分離し、油状物の光学活性エポキシド97mg(収率56.0%)を得た。
【0064】
S体 収率 56.0%
[α]D23−21.6°(C 1.03 CHCl3
R体 収率 47.9%
[α]D24+19.5°(C 0.82 CHCl3
【0065】
【化16】

【0066】
(iii)光学活性アルコールの合成
アルゴンガス雰囲気下、プロピオール酸エチル0.13mL(1.26mmol)をテトラヒドロフラン1.8mLに溶解し、−78℃に冷却した反応混合物に、n−ブチルリチウム0.9mL(1.42mmol)を滴下し、20分後三フッ化ホウ素エーテル錯塩0.13mL(0.50mmol)を滴下し、10分後、(ii)で得た光学活性エポキシド124mg(0.838mmol)をテトラヒドロフラン1.7mLに溶解したものを滴下し、1.5時間撹拌した。反応混合物に塩化アンモニウム水溶液を加えて反応停止させた後、水層をジエチルエーテルで抽出し、飽和食塩水でジエチルエーテル層を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下で留去し、残渣を薄層クロマトグラフィー(ジエチルエーテル:n−ヘキサン=1:1)で分離し、油状物の光学活性アルコール171mg(収率82.9%)を得た。
【0067】
S体 収率 82.9%
[α]D21−15.5°(C 1.86 CHCl3
R体 収率 79.5%
[α]D26+13.6°(C 1.35 CHCl3
【0068】
【化17】

【0069】
(iv)ジヒドロカバインの合成
アルゴンガス雰囲気下、(iii)で得た光学活性アルコール171mg(0.695mmol)を乾燥メチルアルコール1.4mLに溶解し、メチルアルコール25mLに金属ナトリウム50mgを溶解し調整したナトリウムメトキシド2.8mLを滴下し、室温で一昼夜撹拌した。氷水に酢酸数滴を加えたものに反応混合物をあけて約pH4を確認した。水層をジエチルエーテルで抽出し、炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水でジエチルエーテル層を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下で留去し、残渣を薄層クロマトグラフィー(ジエチルエーテル:n−ヘキサン=10:1)で分離し、結晶物の光学活性ジヒドロカバイン134mg(収率83.2%)を得た。
【0070】
S体 収率 83.2%
[α]D27+46.7°(C 1.30 CHCl3
[α]D27+29.4°(C 1.32 EtOH)
[α]D29+28.3°(C 1.33 MeOH)
mp.60.0〜61.3℃
R体 収率 73.7%
[α]D23−49.1°(C 0.66 CHCl3
[α]D24−30.5°(C 1.60 EtOH)
[α]D20−29.9°(C 0.67 MeOH)
mp.59.2〜60.6℃
【0071】
【化18】

【0072】
実施例2(光学活性4−メトキシジヒドロカバインの合成)
(i)光学活性なクロロヒドリンの合成
アルゴンガス雰囲気下、テトラヒドロフラン4mLにヨウ化銅82mg(0.43mmol)を分散させ、0℃とした。4−メトキシベンジルマグネシウムクロリド10mL(2.50mmol)さらに(S)−エピクロロヒドリン200mg(2.16mmol)を滴下し、0℃で1時間攪拌した。反応混合物に塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、ジエチルエーテルで抽出後、飽和食塩水でジエチルエーテル層を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ジエチルエーテル:n−ヘキサン=1:1)にて分離し、油状物のクロロヒドリンを380mg(収率82.0%)得た。
【0073】
S体 収率82.0%
[α]D25−22.0°(C 2.19 CHCl3
R体 収率60.5%
[α]D26+22.6°(C 1.25 CHCl3
【0074】
【化19】

【0075】
(ii)光学活性なエポキシドの合成
アルゴンガス雰囲気下、(i)で得たクロロヒドリン380mg(1.77mmol)をジエチルエーテル8mLに溶解し、少量の水酸化ナトリウムを細かく砕いて加え、一昼夜攪拌した。反応混合物に塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、ジエチルエーテルで抽出後、飽和食塩水でジエチルエーテル層を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ジエチルエーテル:n−ヘキサン=1:3)にて分離し、油状物のエポキシドを245mg(収率77.7%)得た。
【0076】
S体 収率77.7%
[α]D24−19.0°(C 0.90 CHCl3
R体 収率83.5%
[α]D23+18.3°(C 1.06 CHCl3
【0077】
【化20】

【0078】
(iii)光学活性なアルコールの合成
アルゴンガス雰囲気下、プロピオール酸エチル0.22mL(2.06mmol)をテトラヒドロフラン5mLに溶解し、−78℃に冷却した反応混合物に、n‐ブチルリチウム1.5mL(2.34mmol)滴下し、10分間攪拌後に三フッ化ホウ素エーテル錯塩を0.2mL(0.83mmol)滴下し、さらに10分攪拌後に(ii)で得たエポキシドを245mg(1.38mmol)滴下し、攪拌した。30分後に塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、ジエチルエーテルで抽出後、飽和食塩水でジエチルエーテル層を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ジエチルエーテル:n−ヘキサン=2:1)にて分離し、油状物のアルコールを328mg(収率86.3%)得た。
【0079】
S体 収率86.3%
[α]D25−14.9°(C 0.89 CHCl3
R体 収率82.3%
[α]D25+13.5°(C 1.33 CHCl3
【0080】
【化21】

【0081】
(iv)光学活性な4−メトキシジヒドロカバインの合成
アルゴンガス雰囲気下、(iv)で得たアルコール60mg(0.217mmol)を乾燥メチルアルコール0.5mLに溶解し、メチルアルコール25mLに金属ナトリウム50mgを溶解して調整したナトリウムメトキシド1mLを滴下し、室温で一昼夜攪拌した。氷水約50mLに酢酸を少量加えたものに反応混合物をあけて約pH4を確認した。水層をジエチルエーテルで抽出後、炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水でジエチルエーテル層を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下で留去した。残渣を薄層クロマトグラフィー(ジエチルエーテル:n−ヘキサン=10:1)にて分離し、4−メトキシジヒドロカバインの白色結晶を41mg(収率72.0%)得た。
【0082】
S体 収率72.0%
mp:103.2〜104.3℃
[α]D25+33.8°(C 0.77 CHCl3
[α]D26+17.5°(C 0.78 C25OH)
R体 収率81.4%
mp:103.3〜104.5℃
[α]D24−33.8°(C 0.72 CHCl3
[α]D24−17.9°(C 0.71 C25OH)
文献値
mp:89〜90℃
[α]D20+20°(C 0.08 CHCl3
【0083】
【化22】

【0084】
実施例3(光学活性メチスチシンの合成)
【0085】
(i)スルフィドの合成
アルゴンガス雰囲気下、ヘリオアルコール1001mg(6.58mmol)をテトラヒドロフラン20mLに溶解し、ジフェニルジスルフィド2158mg(9.87mmol)を加え、0℃でトリ−n−ブチルホスフィン3.30mL(13.2mmol)を滴下し、1時間撹拌した。反応混合物に純水を加えて反応を停止させた後、水層をジエチルエーテルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジエチルエーテル:n−ヘキサン=1:10)にて分離し、結晶物としてスルフィド1574mg(収率98.0%)を得た。
【0086】
【化23】

【0087】
(ii)エポキシドの合成
アルゴンガス雰囲気下、(i)で得たスルフィド321mg(1.33mmol)をテトラヒドロフラン4mLに溶解し、−78℃に冷却した反応混合物にn−ブチルリチウム1.6mL(2.66mmol)を滴下し、1時間撹拌した。(S)−エピクロロヒドリン185mg(2.00mmol)をテトラヒドロフラン3.0mLに溶解して滴下し、一昼夜常温で撹拌した。反応混合物に塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止させた後、水層をジエチルエーテルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジエチルエーテル:n−ヘキサン=1:10)で分離し、油状物としてエポキシド362mg(収率 91.0%)を得た。
【0088】
S体 収率91.0%
[α]D25−21.6°(C3.62,CHCl3
R体 収率95.6%
[α]D28+20.0°(C3.56,CHCl3
※旋光度の値は−SPhがジアステレオマーなので意味はない。
【0089】
【化24】

【0090】
(iii)アルコールの合成
アルゴンガス雰囲気下、プロピオール酸エチル0.18mL(1.74mmol)をテトラヒドロフラン2mLに溶解し、−78℃に冷却した反応混合物に、n−ブチルリチウム1.85mL(2.90mmol)を滴下し、10分後に三フッ化ホウ素エーテル錯塩0.2mL(0.67mmol)を滴下し、さらに10分後(ii)で得たエポキシド348mg(1.16mmol)をテトラヒドロフラン6mLに溶解して滴下し、90分間撹拌した。反応混合物に塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止させた後、水層をジエチルエーテルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジエチルエーテル:n−ヘキサン=1:1)、薄層クロマトグラフィー(ジエチルエーテル:塩化メチレン=1:20)にて分離し、油状物としてアルコール305mg(収率66.1%)を得た。
【0091】
R体 収率66.1%
[α]D24+5.75°(C2.40,CHCl3
S体 収率65.5%
[α]D23−4.21°(C2.92,CHCl3
※旋光度の値は−SPhがジアステレオマーなので意味はない。
【0092】
【化25】

【0093】
(iv)ラクトンの合成
アルゴンガス雰囲気下、(iii)で得たアルコール305mg(0.77mmol)を乾燥メチルアルコール4mLに溶解後、メチルアルコール25mLに金属ナトリウム50mgを溶解し調整したナトリウムメトキシド3mLを滴下して、室温で5時間撹拌した。氷水に酢酸数滴を加えたものに反応混合物をあけて約pH4を確認した。水層を塩化メチレンで抽出し、炭酸水素ナトリウム、飽和食塩水で塩化メチレン層を洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を減圧下で留去した。残渣を薄層クロマトグラフィー(ジエチルエーテル:塩化メチレン=1:20)にて分離し、結晶物としてラクトン200mg(収率 68.0%)を得た。
【0094】
R体 収率68.0%
[α]D25+24.3°(C2.00,CHCl3
S体 収率64.3%
[α]D25−26.9°(C1.52,CHCl3
※旋光度の値は−SPhがジアステレオマーなので意味はない。
【0095】
【化26】

【0096】
(v)光学活性スルホキシドへの酸化
アルゴンガス雰囲気下、(iv)で得たラクトン167mg(0.43mmol)を塩化メチレン3.3mLに溶解し、0℃に冷却した反応混合物にm−クロル過安息香酸97mg(0.43mmol)を加え撹拌した。1時間後、反応混合物にチオ硫酸ナトリウムを加えて反応を停止させた後、水層を塩化メチレンで抽出し、炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下で留去した。残渣を薄層クロマトグラフィー(ジエチルエーテル:塩化メチレン=1:2)にて分離し、結晶としてスルホキシド128mg(収率 73.7%)を得た。
【0097】
R体 収率73.7%
S体 収率62.0%
【0098】
【化27】

【0099】
(vi)光学活性メチスチシンの合成
アルゴンガス雰囲気下、(v)で得たスルホキシド137mg(0.34mmol)を無水トルエン2.7mLに溶解し、炭酸カルシウム小さじ1杯を加えて加熱環流した。1時間後、反応混合物に純水を加えて反応を停止させた後、水層をジエチルエーテルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下留去した。残渣を薄層クロマトグラフィー(ジエチルエーテル:塩化メチレン=1:40)にて分離し、結晶としてメチスチシン59.0mg(収率 63.1%)を得た。
【0100】
R体 収率63.1%
mp.143.5〜144.1℃
[α]D25+106.4°(C0.59,CHCl3
[α]D26+86.5°(C0.59,C25OH)
[α]D27+93.2°(C1.18,CH2Cl2
S体 収率57.6%
mp.143.9〜144.5℃
[α]D28−105.9°(C0.54,CHCl3
[α]D26−86.2°(C0.54,C25OH)
[α]D27−95.6°(C0.54,CH2Cl2
【0101】
【化28】

【0102】
実施例4(光学活性カバインの合成)
(i)光学活性なエポキサイドの合成
Arガス雰囲気下、市販のベンジルフェニルスルフィド311mg(1.56mmol)をテトラヒドロフラン3mLに溶解し、−78℃に冷却した反応混合物に、n−ブチルリチウム1.2mL(2.03mmol)を滴下した。1時間後に(R)−エピクロロヒドリン176mg(1.9mmol)をテトラヒドロフラン3mLに溶解したものを滴下し、6時間撹拌した。
反応混合物に塩化アンモニウム水溶液を加え反応を停止し、水層をジエチルエーテルで抽出後、飽和食塩水でジエチルエーテル層を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下で除去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジエチルエーテル:n−へキサン=1:4)にて分離し、油状物の光学活性エポキシドを357mg(収率89.6%)得た。
【0103】
R体 (収率89.6%)
〔α〕D22+16.4°(C 3.53 CHCl3
S体 (収率83.1%)
〔α〕D29−27.2°(C 2.23 CHCl3
※旋光度の値は−SPhがジアステレオマーなので意味はない。
【0104】
【化29】

【0105】
(ii)アルコール体の合成
Arガス雰囲気下、プロピオール酸エチル205mg(2.09mmol)をテトラヒドロフラン3.5mLに溶解し、−78℃に冷却した。反応混合物に、n−ブチルリチウムを滴下し、10分後にBF3・Et2O 0.18mLを加え、さらに10分後、(i)で得たエポキシド357mg(1.40mmol)をテトラヒドロフラン3.5mLに溶解したものを滴下し、1時間半撹拌した。反応混合物に塩化アンモニウム水溶液を加え反応を停止した。水層をエーテルで抽出し、飽和食塩水でジエチルエーテル層を洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジエチルエーテル:n−へキサン=1:1)にて分離し、油状物のアルコール体を355mg(収率71.9%)得た。
【0106】
S体(収率71.9%)
〔α〕D28−6.67°(C 3.55 CHCl3
R体(収率82.8%)
〔α〕D24+3.51°(C 3.64 CHCl3
※旋光度の値は−SPhがジアステレオマーなので意味はない。
【0107】
【化30】

【0108】
(iii)ラクトンの合成
Arガス雰囲気下、常温で、(ii)で得たアルコール体355mg(1.0mmol)を乾燥メチルアルコール5.3mLに溶解し、メチルアルコール25mLに金属ナトリウム50mgを溶解し、調整したナトリウムメトキシド3.5mLを加え、五時間撹拌した。氷水に酢酸数滴を加えたものに反応混合物をあけて約pH4を確認したのち水層を塩化メチレンで抽出し、炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で塩化メチレン層を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジエチルエーテル:n−へキサン=4:1)にて分離し、ラクトンの結晶253mg(収率74.4%)を得た。
【0109】
S体(収率74.4%)
〔α〕D28−39.1°(C 2.53 CHCl3
R体(収率75.9%)
〔α〕D26+29.7°(C 1.40 CHCl3
※旋光度の値は−SPhがジアステレオマーなので意味はない。
【0110】
【化31】

【0111】
(iv)スルホキシドへの酸化
Arガス雰囲気下、(iii)で得たラクトン253mg(0.74mmol)を塩化メチレン7.6mLに溶解し、0℃に冷却した。反応混合物に、m−クロル過安息香酸166mgを加え、2時間半撹拌した。反応混合物にチオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、反応を停止させた後、水層を塩化メチレンで抽出し、塩化メチレン層を炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を減圧下で除去した。
残渣を薄層クロマトグラフィー(ジエチルエーテル:塩化メチレン=1:1)にて分離し、スルホキシドの結晶205mg(収率77.4%)を得た。
【0112】
【化32】

【0113】
(v)光学活性なカバインの合成
Arガス雰囲気下、(iv)で得たスルホキシド205mg(0.58mmol)をトルエン6.2mLに溶解し、炭酸カルシウムを少量加え、1時間加熱還流した。反応混合物に水を加え反応を停止し、水層をジエチルエーテルで抽出し、ジエチルエーテル層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を減圧下で留去した。残渣を薄層クロマトグラフィー(ジエチルエーテル:塩化メチレン=1:20)にて分離し、カバインの結晶116mg(収率88.0%)を得た。
【0114】
S体(収率88.0%)
〔α〕D26−123.1°(C 1.16 CHCl3
〔α〕D25−102.0°(C 0.57 EtOH)
mp.114.5〜117.5℃
R体(収率77.2%)
〔α〕D27+121.9°(C 0.80 CHCl3
〔α〕D25+103.5°(C 0.98 EtOH)
mp.114.3〜116.3℃
【0115】
【化33】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、R1及びR2は、それぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、
ニトロ基、アミノ基又は水酸基を示すか、R1とR2が一緒になって、アルキレンジオキシ基を形成してもよい。*は光学活性中心部位を示す。)
で表される光学活性エポキシドにアルキニルボランの存在下、次式(2)
【化2】

(式中、R3はアルキル基又はアリール基を示す。)
で表されるプロピオール酸エステルを反応させて一般式(3)
【化3】

(式中、R1、R2、R3及び*は前記と同じ。)
で表される光学活性アルコールを得、次いでこれに次式(4)
【化4】

(式中、R4はアルキル基を示し、Mはアルカリ金属原子を示す。)
で表されるアルカリ金属アルコキシドを反応させることを特徴とする一般式(5)
【化5】

(式中、R1、R2、R4及び*は前記と同じ。)
で表される光学活性ジヒドロカバイン類の製造法。
【請求項2】
一般式(1)で表される光学活性エポキシドが、一般式(a)
【化6】

(式中、X1はハロゲン原子を示し、R1及びR2は前記と同じ。)
で表されるベンジル誘導体に次式(b)
【化7】

(式中、X2はハロゲン原子を示し、*は前記と同じ。)
で表される光学活性エピハロヒドリンを反応させて一般式(c)
【化8】

(式中、R1、R2、X2及び*は前記と同じ。)
で表される光学活性ハロヒドリンを得、次いでこれに塩基を反応させることにより得られるものである請求項1記載の製造法。
【請求項3】
一般式(6)
【化9】

(式中、R1及びR2は、それぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基又は水酸基を示すか、R1とR2が一緒になって、アルキレンジオキシ基を形成してもよく、R5はアルキル基又はアリール基を示し、*は光学活性中心部位を示す。)
で表される光学活性エポキシドにアルキニルボランの存在下、次式(2)
【化10】

(式中、R3はアルキル基又はアリール基を示す。)
で表されるプロピオール酸エステルを反応させて一般式(7)
【化11】

(式中、R1、R2、R3、R5及び*は前記と同じ。)
で表される光学活性アルコールを得、次いでこれに次式(4)
【化12】

(式中、R4はアルキル基を示し、Mはアルカリ金属原子を示す。)
で表されるアルカリ金属アルコキシドを反応させて一般式(8)
【化13】

(式中、R1、R2、R4、R5及び*は前記と同じ。)
で表される光学活性ジヒドロカバイン類を得、これを酸化して一般式(9)
【化14】

(式中、R1、R2、R4、R5及び*は前記と同じ。)
で表される光学活性スルホキシドを得、次いでこれを加熱脱硫することを特徴とする一般式(10)
【化15】

(式中、R1、R2、R4及び*は前記と同じ。)
で表される光学活性カバイン類の製造法。
【請求項4】
一般式(6)で表される光学活性エポキシドが、一般式(d)
【化16】

(式中、R1、R2及びR5は前記と同じ。)
で表されるベンジルチオエーテルに次式(b)
【化17】

(式中、X2はハロゲン原子を示し、*は前記と同じ。)
で表される光学活性エピハロヒドリンを反応させることにより得られるものである請求項3記載の製造法。

【公開番号】特開2008−189624(P2008−189624A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−28093(P2007−28093)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【Fターム(参考)】