説明

光学活性2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)−ペンタン酸エステルの製造方法

【課題】
プロキラルな入手容易な化合物から光学活性2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)−ペンタン酸エステルを製造する方法を提供する。
【解決手段】
5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エステルに、
当該エステル化合物を光学活性2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)−ペンタン酸エステルへと不斉還元する酵素であって配列番号1で示されるアミノ酸配列に代表されるアミノ酸配列等から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素を産生し、かつ当該酵素が依存する補酵素を再生する能力を有する酵素を産生する形質転換体又はその死菌化細胞を利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学活性2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)−ペンタン酸エステルの製造方法等に関する。光学活性2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)−ペンタン酸エステルは種々の医薬品、例えば、血糖及び血中脂質低下作用を有する糖尿病治療薬(例えば、特許文献1参照)等の有効成分の重要合成中間体である。
【背景技術】
【0002】
従来、光学活性2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)−ペンタン酸エステルを製造するには、p−メトキシフェネチルマグネシウムブロマイドと光学活性クリシド酸エステルとより化学合成する方法(例えば、特許文献1参照)等が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−37761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、光学活性グリシド酸エステルの原料である光学活性セリンが工業的に高価である等の問題点を有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、プロキラルな入手容易な化合物から光学活性2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)−ペンタン酸エステルを製造する方法を提供する。
【0006】
即ち、本発明は、
1. 5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エステルに、
当該エステル化合物を光学活性2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)−ペンタン酸エステルへと不斉還元する酵素であって下記のアミノ酸配列群の中から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素を産生し、かつ当該酵素が依存する補酵素を再生する能力を有する酵素を産生する形質転換体又はその死菌化細胞を作用させることを特徴とする光学活性2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)−ペンタン酸エステルの製造方法(以下、本発明製造方法と記すこともある。);
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、
(c)配列番号2で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列、
(d)配列番号2で示される塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列、
(e)配列番号1で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、および
(f)ヤマダジーマ属に属する微生物由来のアミノ酸配列;
2. 形質転換体が、下記より選ばれる単一もしくは複数のプラスミドを導入してなる形質転換体である前項1に記載の製造方法;
上記(a)から(f)のいずれかのアミノ酸配列をコードする塩基配列および上記(a)から(f)のいずれかのアミノ酸配列を有する酵素が依存する補酵素を再生する能力を有する酵素の塩基配列をそれぞれ独立して含有する複数のプラスミドまたは両塩基配列を独立もしく単一の塩基配列として含む単一のプラスミド。
3.形質転換体が大腸菌である前項1に記載の製造方法;
4.補酵素が、NADH/NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)もしくはNADPH/NADP(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)である前項1に記載の製造方法;
5.グルコースの存在下、形質転換体又はその死菌化細胞に2−オキソシクロアルカンカルボン酸エステルを作用させる前項1に記載の製造方法;
6.不斉還元する酵素が、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する酵素である前項1に記載の製造方法;
7.不斉還元する酵素が、配列番号2で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列を有する酵素である前項1に記載の製造方法等を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、光学活性2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)−ペンタン酸エステルを効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エステルとしては、例えば、式(1)

(式中、RはC1−C8のアルキル基を表す。)
で示される5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エステル等をあげることができる。5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エステルは、J. Am. Chem. Soc.、 (1936) 58, 2319-2322に記載の方法に準じて製造することができる。
光学活性2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)−ペンタン酸エステルとしては、前記の5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エステルのケトン部分を不斉還元して得られるヒドロキシ体又はその塩が例示される。具体的には、本発明製造方法において原料化合物として式(1)で示される5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エステルを用いる場合には、これに対応するヒドロキシ体である
式(2)

(式中、RはC1−C8のアルキル基を表し、*で示される炭素原子は不斉炭素原子を表す。)
で示される光学活性2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)−ペンタンエステルが製造される。
【0009】
本発明製造方法で用いられる形質転換体は、通常、(1)5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エステルを不斉還元して光学活性2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)−ペンタン酸エステルを生成する能力及び当該能力を有する酵素が依存する補酵素を再生する能力を有する酵素、または(2)5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エステルを不斉還元して光学活性2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)−ペンタン酸エステルを生成する能力を有する酵素及び当該酵素が依存する補酵素を再生する能力を有する酵素の2種類の酵素、を含有している(以下、前記(1)及び(2)の酵素を総じて本酵素と記すこともある。)。
【0010】
本形質転換体は、遺伝子工学的な手法を用いて作製すればよい。尚、このような形質転換体を作製する際に用いられる、5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エステルを不斉還元して光学活性2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)−ペンタン酸エステルを生成する能力を少なくとも有する酵素(以下、本還元酵素と記すこともある。)のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子(以下、本還元酵素遺伝子と記すこともある。)は、(1)天然に存在する遺伝子の中からクローニングされたものであってもよいし、(2)天然に存在する遺伝子であっても、このクローニングされた遺伝子の塩基配列において、その一部の塩基の欠失、置換又は付加が人為的に導入されてなる遺伝子(即ち、天然に存在する遺伝子を変異処理(部分変異導入法、突然変異処理等)を行ったものであってもよいし、(3)人為的に合成されたものであってもよい。
【0011】
ここで、前記(b)にある「アミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」や前記(d)にある「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列」には、例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する酵素が細胞内で受けるプロセシング、該酵素が由来する生物の種差、個体差、組織間の差異等により天然に生じる変異や、人為的なアミノ酸の変異等が含まれる。
前記(b)にある「(アミノ酸が)欠失、置換若しくは付加(された)」(以下、総じてアミノ酸の改変と記すこともある。)を人為的に行う場合の手法としては、例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAに対して慣用の部位特異的変異導入を施し、その後このDNAを常法により発現させる手法が挙げられる。ここで部位特異的変異導入法としては、例えば、アンバー変異を利用する方法(ギャップド・デュプレックス法、Nucleic Acids Res.,12,9441-9456(1984))、変異導入用プライマーを用いたPCRによる方法等が挙げられる。
前記で改変されるアミノ酸の数については、少なくとも1残基、具体的には1若しくは数個、又はそれ以上である。かかる改変の数は、5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エステルを光学活性2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)−ペンタン酸エステルに還元する能力を見出すことのできる範囲であればよい。
また前記欠失、置換若しくは付加のうち、特にアミノ酸の置換に係る改変が好ましい。当該置換は、疎水性、電荷、pK、立体構造上における特徴等の類似した性質を有するアミノ酸への置換がより好ましい。このような置換としては、例えば、1)グリシン、アラニン;2)バリン、イソロイシン、ロイシン;3)アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;4)セリン、スレオニン;5)リジン、アルギニン;6)フェニルアラニン、チロシンのグループ内での置換が挙げられる。
【0012】
本発明において「(アミノ酸が)欠失、置換若しくは付加(された)」には、例えば、2つの蛋白質間のアミノ酸配列に関する高い配列同一性(具体的には、少なくとも80%の配列同一性、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性)が存在している必要がある。また「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」には2つのDNA間の塩基配列に関する配列同一性(具体的には、少なくとも80%の配列同一性、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性)が存在している必要がある。
ここで「配列同一性」とは、2つのDNA又は2つの蛋白質間の配列の同一性及び相同性をいう。前記「配列同一性」は、比較対象の配列の領域にわたって、最適な状態にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。ここで、比較対象のDNA又は蛋白質は、2つの配列の最適なアラインメントにおいて、付加又は欠失(例えばギャップ等)を有していてもよい。このような配列同一性に関しては、例えば、Vector NTIを用いて、ClustalWアルゴリズム(Nucleic Acid Res.,22(22):4673-4680(1994)を利用してアラインメントを作成することにより算出することができる。尚、配列同一性は、配列解析ソフト、具体的にはVector NTI、GENETYX-MACや公共のデータベースで提供される解析ツールを用いて測定される。前記公共データベースは、例えば、ホームページアドレスhttp://www.ddbj.nig.ac.jpにおいて、一般的に利用可能である。
前記(d)にある「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」に関して、ここで使用されるハイブリダイゼーションは、例えば、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行(Cold Spring Harbor Laboratory press)に記載される方法や、「クローニングとシークエンス」(渡辺格監修、杉浦昌弘編集、1989年、農村文化社発行)に記載されているサザンハイブリダイゼーション法等の通常の方法に準じて行うことができる。また「ストリンジェントな条件下」とは、例えば、6×SSC(900mM NaCl、90mM クエン酸三ナトリウムを含む溶液。尚ここでは、NaCl175.3g、クエン酸三ナトリウム88.2gを含む溶液を水800mlで溶解し、10N NaClでpHを調製した後、全量を1000 mlとした溶液を20×SSCとする。)中で65℃にてハイブリッドを形成させた後、2×SSCで50℃にて洗浄するような条件(Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1-6.3.6)等を挙げることができる。洗浄ステップにおける塩濃度は、例えば、2×SSCで50℃の条件(低ストリンジェンシーな条件)から0.1×SSCで65℃までの条件(高ストリンジェンシーな条件)から選択することができる。洗浄ステップにおける温度は、例えば、室温(低ストリンジェンシーな条件)から65℃(高ストリンジェンシーな条件)から選択することができる。また、塩濃度と温度の両方を変えることもできる。
【0013】
本還元酵素遺伝子は、例えば、下記のような調製方法に準じて調製すればよい。
ヤマダジーマ・ファリノサ(Yamadazyma farinosa)等のヤマダジーマ属に属する微生物等から通常の遺伝子工学的手法(例えば、「新 細胞工学実験プロトコール」(東京大学医科学研究所制癌研究部編、秀潤社、1993年)に記載された方法)に準じてcDNAライブラリーを調製し、調製されたcDNAライブラリーを鋳型として、かつ適切なプライマーを用いてPCRを行うことにより、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、配列番号1で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、配列番号2で示される塩基配列を有するDNA等を増幅して本還元酵素遺伝子を調製する。
ここでヤマダジーマ・ファリノサ由来のcDNAライブラリーを鋳型として、かつ配列番号3に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号4に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いてPCRを行う場合には、配列番号2で示される塩基配列からなるDNAを増幅して本還元酵素遺伝子を調製することになる。
当該PCRの条件としては、例えば、4種類のdNTPを各々20μM、2種類のオリゴヌクレオチドプライマーを各々15pmol、Taqpolymeraseを1.3U及び鋳型となるcDNAライブラリーを混合した反応液を97℃(2分間)に加熱した後、97℃(0.25分間)‐50℃(0.5分間)‐72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで97℃(0.25分間)‐55℃(0.5分間)‐72℃(2.5分間)のサイクルを20回行い、さらに72℃で7分間保持する条件が挙げられる。
尚、当該PCRに用いるプライマーの5’末端側、及び/又は3’末端側には、制限酵素認識配列等を付加していてもよい。
上記のようにして増幅されたDNAを、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols in Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons, Inc. ISBNO-471-50338-X等に記載されている方法に準じてベクターにクローニングして組換ベクターを得ることができる。用いられるベクターとしては、具体的には、例えば、pUC119(宝酒造社製)、pTV118N(宝酒造社製)、pBluescriptII (東洋紡社製)、pCR2.1-TOPO(Invitrogen社製)、pTrc99A(Pharmacia社製)、pKK223-3(Pharmacia社製)等が挙げられる。このようにしてベクターに組み込んだ形態で本還元酵素遺伝子を調製すれば、後の遺伝子工学的手法における使用において便利である。
【0014】
5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エステルを不斉還元して光学活性2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)−ペンタン酸エステルを生成する能力を有する酵素が依存する補酵素を再生する能力を有する酵素(以下、本補酵素再生酵素遺伝子と記すこともある。)は、例えば、本補酵素再生酵素遺伝子が本還元酵素とは異なる酵素である場合には、下記のような調製方法に準じて調製すればよい。
バシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)等のバシラス属に属する微生物等から通常の遺伝子工学的手法に準じて染色体DNAを調製し、調製された染色体DNAを鋳型として、かつ適切なプライマーを用いてPCRを行うことにより、配列番号8で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、配列番号8で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、配列番号7で示される塩基配列を有するDNA等を増幅して本補酵素再生酵素遺伝子を調製する。
ここでバシラス・メガテリウム由来の染色体DNAを鋳型として、かつ配列番号5に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号6に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いてPCRを行う場合には、配列番号7で示される塩基配列からなるDNAを増幅して本補酵素再生酵素遺伝子を調製することになる。
当該PCRの条件としては、例えば、4種類のdNTPを各々20μM、2種類のオリゴヌクレオチドプライマーを各々15pmol、Taqpolymeraseを1.3U及び鋳型となるcDNAライブラリーを混合した反応液を97℃(2分間)に加熱した後、97℃(0.25分間)‐50℃(0.5分間)‐72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで97℃(0.25分間)‐55℃(0.5分間)‐72℃(2.5分間)のサイクルを20回行い、さらに72℃で7分間保持する条件が挙げられる。
尚、当該PCRに用いるプライマーの5’末端側、及び/又は3’末端側には、制限酵素認識配列等を付加していてもよい。
上記のようにして増幅されたDNAを、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols in Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons, Inc. ISBNO-471-50338-X等に記載されている方法に準じてベクターにクローニングして組換ベクターを得ることができる。用いられるベクターとしては、具体的には、例えば、pUC119(宝酒造社製)、pTV118N(宝酒造社製)、pBluescriptII (東洋紡社製)、pCR2.1-TOPO(Invitrogen社製)、pTrc99A(Pharmacia社製)、pKK223-3(Pharmacia社製)等が挙げられる。このようにしてベクターに組み込んだ形態で本還元酵素遺伝子を調製すれば、後の遺伝子工学的手法における使用において便利である。
【0015】
本形質転換体を調製する方法としては、例えば、(1)本還元酵素遺伝子と本補酵素再生酵素遺伝子との両遺伝子及び宿主細胞で機能可能なプロモーターが機能可能な形で接続されてなるDNAのような、本遺伝子が宿主細胞中で発現できるような単一な組換プラスミドを作製し、これを宿主細胞に導入することにより作製する方法、(2)本還元酵素遺伝子と本補酵素再生酵素遺伝子との両遺伝子のうちの一方の遺伝子及び宿主細胞で機能可能なプロモーターが機能可能な形で接続されてなるDNAのような、本遺伝子のうちの一方の遺伝子が宿主細胞中で発現できるような組換プラスミドを上記遺伝子毎に別々に作製し、これらを宿主細胞に導入することにより作製する方法等があげられる。さらに、一方の遺伝子又は両遺伝子を宿主細胞の染色体中に導入する方法も利用することができる。
尚、上記単一な組換プラスミドを宿主細胞に導入することにより作製する方法としては、例えば、プロモーター、ターミネーター等の発現制御に関わる領域をそれぞれの両遺伝子に連結して組換プラスミドを構築したり、ラクトースオペロンのような複数のシストロンを含むオペロンとして発現させるような組換プラスミドを構築する方法等をあげることができる。
ここで上記の組換プラスミドとしては、例えば、宿主細胞中で複製可能な遺伝情報を含み、自立的に増殖できるものであって、宿主細胞からの単離・精製が容易であり、宿主細胞中で機能可能なプロモーターを有し、検出可能なマーカーを持つ発現ベクターに、本酵素をコードする遺伝子が機能可能な形で導入されたものを好ましく挙げることができる。尚、発現ベクターとしては、各種のものが市販されている。
ここで、「機能可能な形で」とは、上記の組換プラスミドを宿主細胞に導入することにより宿主細胞を形質転換させた際に、本遺伝子(又は本遺伝子のうちの一方の遺伝子)が、プロモーターの制御下に発現するようにプロモーターと結合された状態にあることを意味する。プロモーターとしては、大腸菌のラクトースオペロンのプロモーター、大腸菌のトリプトファンオペロンのプロモーター、又は、tacプロモーターもしくはtrcプロモーター等の大腸菌内で機能可能な合成プロモーター等をあげることができる。またヤマダジーマ・ファリノサ、バシラス・メガテリウムにおいて本遺伝子の発現を制御しているプロモーターを利用してもよい。
また発現ベクターとしては、選択マーカー遺伝子(例えば、カナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等の抗生物質耐性付与遺伝子等)を含むベクターを用いると、当該ベクターが導入された形質転換体を当該選択マーカー遺伝子の表現型等を指標にして容易に選択することができる。
さらなる高発現を導くことが必要な場合には、本還元酵素及び/又は本補酵素再生酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子の上流にリボゾーム結合領域を連結してもよい。用いられるリボゾーム結合領域としては、Guarente L.ら(Cell 20, p543)や谷口ら(Genetics of Industrial Microorganisms, p202, 講談社)による報告に記載されたものを挙げることができる。
宿主細胞としては、原核生物(例えば、Escherichia属、Bacillus属、Corynebacterium属、Staphylococcus属、Streptomyces属)もしくは真核生物(例えば、Saccharomyces属、Kluyveromyces属、Aspergillus属)である微生物細胞、昆虫細胞又は哺乳動物細胞等を挙げることができる。例えば、本形質転換体の大量調製が容易になるという観点では、大腸菌等を好ましく挙げることができる。
本還元酵素及び/又は本補酵素再生酵素が宿主細胞中で発現できるようなプラスミドを宿主細胞に導入する方法としては、用いられる宿主細胞に応じて通常使われる導入方法であればよく、例えば、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols in Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons, Inc. ISBNO-471-50338-X等に記載される塩化カルシウム法や、「Methods in Electroporation:Gene Pulser /E.coli Pulser System」 Bio-Rad Laboratories, (1993)等に記載されるエレクトロポレーション法等をあげることができる。
宿主細胞において本還元酵素遺伝子及び/又は本補酵素再生酵素遺伝子が宿主細胞中で発現できるようなプラスミドが導入された形質転換体を選抜するには、前記の如く、例えば、ベクターに含まれる選択マーカー遺伝子の表現型を指標にして選抜すればよい。
プラスミドが導入された宿主細胞(即ち、形質転換体)が本還元酵素遺伝子及び本補酵素再生酵素遺伝子を保有していることは、例えば、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press等に記載される通常の方法に準じて、制限酵素部位の確認、塩基配列の解析、サザンハイブリダイゼーション、ウエスタンハイブリダイゼーション等を行うことにより、確認することができる。
【0016】
本形質転換体の培養は、微生物培養、昆虫細胞もしくは哺乳動物細胞の培養に使用される通常の方法によって行うことができる。例えば大腸菌の場合、適当な炭素源、窒素源およびビタミン等の微量栄養物を適宜含む培地中で培養を行う。培養方法としては、固体培養、試験管振盪式培養、往復式振盪培養、ジャーファーメンター(Jar Fermenter)培養、タンク培養等の液体培養のいずれの方法でもよく、好ましくは、通気撹拌培養法等の液体培養を挙げることができる。
培養温度は、本形質転換体が生育可能な範囲で適宜変更できるが、通常約10〜50℃、好ましくは約20〜40℃である。培地のpHは約6〜8の範囲が好ましい。培養時間は、培養条件によって異なるが通常約1日〜約5日が好ましい。
本形質転換体を培養するための培地としては、例えば、微生物等の宿主細胞の培養に通常使用される炭素源や窒素源、有機塩や無機塩等を適宜含む各種の培地を用いることができる。
炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、シュークロース等の糖類、グリセロール等の糖アルコール、フマル酸、クエン酸、ピルビン酸等の有機酸、動物油、植物油及び糖蜜が挙げられる。これらの炭素源の培地への添加量は培養液に対して通常0.1〜30%(w/v)程度である。
窒素源としては、例えば、肉エキス、ペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、大豆粉、コーン・スティープ・リカー(Corn Steep Liquor)、綿実粉、乾燥酵母、カザミノ酸等の天然有機窒素源、アミノ酸類、硝酸ナトリウム等の無機酸のアンモニウム塩、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸のアンモニウム塩、フマル酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム等の有機酸のアンモニウム塩及び尿素が挙げられる。これらのうち有機酸のアンモニウム塩、天然有機窒素源、アミノ酸類等は多くの場合には炭素源としても使用することができる。これらの窒素源の培地への添加量は培養液に対して通常0.1〜30%(w/v)程度である。
有機塩や無機塩としては、例えば、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄、マンガン、コバルト、亜鉛等の塩化物、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩及びリン酸塩を挙げることができる。具体的には、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、塩化コバルト、硫酸亜鉛、硫酸銅、酢酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸水素一カリウム及びリン酸水素二カリウムが挙げられる。これらの有機塩及び/又は無機塩の培地への添加量は培養液に対して通常0.0001〜5%(w/v)程度である。
さらに、tacプロモーター、trcプロモーター及びlacプロモーター等のアロラクトースで誘導されるタイプのプロモーターと、本酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子とが機能可能な形で接続されてなるDNAが導入されてなる形質転換体の場合には、本酵素の生産を誘導するための誘導剤として、例えば、isopropyl thio-β-D-galactoside(IPTG)を培地中に少量加えることもできる。
【0017】
本形質転換体の取得は、例えば、前記の培養により得られた培養物を遠心分離等により形質転換体を沈殿物として回収すればよい。必要に応じて、回収前に当該形質転換体を、例えば、100mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH7.0)等の緩衝液等を用いて洗浄してもよい。
【0018】
さらに本形質転換体から、その死菌化細胞を下記の方法により調製することもできる。
死菌化処理方法としては、例えば、物理的殺菌法(加熱、乾燥、冷凍、光線、超音波、濾過、通電)や、化学薬品を用いる殺菌法(アルカリ、酸、ハロゲン、酸化剤、硫黄、ホウ素、砒素、金属、アルコール、フェノール、アミン、サルファイド、エーテル、アルデヒド、ケトン、シアン及び抗生物質)をあげることができる。尚、これらの殺菌法のうちできるだけ本酵素の酵素活性を失活させず、かつ反応系への残留、汚染などの影響が少ない処理方法を各種の反応条件に応じて適宜選択することがよい。
【0019】
このようにして調製された形質転換体又はその死菌化細胞は、例えば、凍結乾燥細胞、有機溶媒処理細胞、乾燥細胞等の形態、あるいは、固定化された形態(固定化物)で利用してもよい。
【0020】
固定化物を得る方法としては、例えば、担体結合法(シリカゲルやセラミック等の無機担体、セルロース、イオン交換樹脂等に本形質転換体又はその死菌化細胞を吸着させる方法)及び包括法(ポリアクリルアミド、含硫多糖ゲル(例えばカラギーナンゲル)、アルギン酸ゲル、寒天ゲル等の高分子の網目構造の中に本形質転換体又はその死菌化細胞を閉じ込める方法)が挙げられる。
【0021】
続いて、本発明製造方法における反応について説明する。
本発明製造方法において5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エステルを光学活性2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)−ペンタン酸エステルに変換する反応は、5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エステルに本形質転換体又はその死菌化細胞を作用させることによって達成される。
当該反応は、通常、水の存在下で行われる。水は緩衝液の形態であってもよく、この場合に用いられる緩衝剤としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のリン酸アルカリ金属塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸のアルカリ金属塩が挙げられる。
尚、緩衝液を溶媒として用いる場合、その量は5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エステル1重量部に対して、通常、1〜300重量倍、好ましくは5〜100重量倍である。
当該反応に際しては、5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エステルを反応系内に連続又は逐次加えてもよい。
【0022】
反応温度は、本形質転換体又はその死菌化細胞に含まれた本酵素の安定性、反応速度の点から通常、0〜70℃程度、好ましくは約10〜40℃である。
反応pHとしては、反応が進行する範囲内で適宜変化させることができるが、例えば、5〜8をあげることができる。
【0023】
反応は、水の他に有機溶媒の共存下に行うこともできる。この場合の有機溶媒としては、例えば、t−ブチルメチルエーテル、ジイソプロプルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル類、トルエン、ヘキサン、シクロへヘキサン、ヘプタン、イソオクタン等の炭化水素類、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、t−ブチルアルコール等のアルコール類、ジメチルスルホキシド等の有機硫黄化合物、アセトン等のケトン類、アセトニトリル等のニトリル類及びこれらの混合物が挙げられる。
反応に使用する有機溶媒の量は、5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エステルに対して、通常、100重量倍以下であり、好ましくは70重量倍以下である。
【0024】
反応はさらに、例えば、NADH、NADPHのような補酵素を加えて通常行うことがよい。
反応に用いられる補酵素の量は、5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エステルに対して、通常、0.5重量倍以下、好ましくは0.1重量倍以下である。
【0025】
本発明製造方法における反応では、5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エステルの不斉的な還元反応において化学量論量の還元型補酵素(電子供与体)が消費された結果生じた酸化型補酵素(電子受容体)を、再び還元型補酵素(電子供与体)に変換する能力、即ち、5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エステルを不斉還元して光学活性2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)−ペンタン酸エステルを生成する能力を有する酵素が依存する補酵素を再生する能力、を有する酵素(即ち、本補酵素再生酵素)の利用が不可欠となる。この場合には、本補酵素再生酵素は、前記不斉的な還元反応を行う本還元酵素とは異なる酵素であってもよいし、また本還元酵素が補酵素再生酵素としての機能を合わせ持つものであってもよい。もちろん両者の組み合わせであってもよい。
ここで、「本還元酵素が補酵素再生酵素としての機能を合わせ持つもの」であることは、例えば、単離された本還元酵素を用いて酸化型補酵素(電子受容体)の存在下で、補酵素再生酵素の基質である再生系原料化合物を酸化させる反応を行うことにより還元型補酵素(電子供与体)を生じるか否かを調べることにより確認すればよい。
本補酵素再生酵素としては、例えば、グルコース脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、アルデヒド脱水素酵素、アミノ酸脱水素酵素及び有機脱水素酵素(リンゴ酸脱水素酵素等)等が挙げられる。中でも、グルコースを酸化することにより補酵素再生を行う補酵素再生酵素が好ましい。この場合に用いられるグルコースの量は、5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エステルに対して100モル倍以下、好ましくは10モル倍以下である。
【0026】
反応は、例えば、水、5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エステル、本形質転換体又はその死菌化細胞、及び必要に応じて補酵素、有機溶媒等を混合し、攪拌、振盪することにより行うことができる。
【0027】
反応の終点は、例えば、反応液中の原料化合物の存在量を液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等により追跡することにより決定することができる。反応時間の範囲としては、通常、5分間〜10日間、好ましくは30分間〜4日間の範囲をあげることができる。
【0028】
反応終了後は、酵素を使用して化合物を製造する方法において通常用いられる化合物の回収方法により目的物を採取すればよい。例えば、まず反応液をヘキサン、ヘプタン、tert−ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、トルエン等の有機溶媒で抽出する。必要に応じて反応液を濾過したり、又は遠心分離等の処理により不溶物を除去した後に前記抽出操作を行なえばよい。次に抽出された有機層を乾燥した後、濃縮物として目的物を回収することができる。目的物は、必要によりカラムクロマトグラフィー等によりさらに精製することができる。
【実施例】
【0029】
以下、製造例等により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0030】
実施例1 (本還元酵素遺伝子の調製)
(1−1)細胞内DNAの調製
500mlフラスコに培地(水100mlにグルコース2g、ポリペプトン0.5g、酵母エキス0.3g、麦芽エキス0.3g溶解し、2NのHClでpHを6に調整しをたもの)を100ml入れ、121℃で15分間滅菌した。ここに同組成の培地中で培養(30℃、48時間、振盪培養)したヤマダジーマ・ファリノサ(Yamadazyma farinosa)IFO193株の培養液を0.3ml加え、30℃で72時間振盪培養した。その後、得られた培養液を遠心し(8000rpm、10分)、生じた沈殿を集めた。この沈殿を0.85%食塩水50mlで洗浄して、1.8gの湿菌体を得た。
上記の菌体から、QIAprep Genomic-tip System (Qiagen社製)を用いて細胞内DNAを得た。
【0031】
(1−2)本還元酵素遺伝子を含有するプラスミドの調製(プラスミドpTrcRYFの構築)
配列番号3で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号4で示されるオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いて、前記(1−1)で調製された細胞内DNAを鋳型にして下記反応液組成、反応条件でPCRを行った。(ロシュ・ダイアグノスティック社製のExpand High Fidelity PLUS PCR Systemを使用)
【0032】
[反応液組成]
cDNAライブラリー原液 1μl
dNTP(各2.5mM-mix) 4μl
プライマー(50pmol/μl) 各0.4μl
5xbuffer(with MgCl) 10μl
Expand High Fidelity PLUS Taq polymerase 0.5μl (2.5U)
超純水 33.7μl
【0033】
[反応条件]
上記組成の反応液が入った容器をPERKIN ELMER−GeneAmp PCR System9700にセットし、94℃(2分間)に加熱した後、94℃(0.25分間)‐55℃(0.5分間)‐72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで94℃(0.25分間)‐55℃(0.5分間)‐72℃(1.0分間+5秒/サイクル)のサイクルを20回行い、さらに72℃で7分間保持した。
【0034】
その後、PCR反応液を一部とりアガロースゲル電気泳動を行ったところ、約1000bpのDNA断片のバンドが検出された。
残りのPCR反応液に2種類の制限酵素(NcoI及びXbaI)を加え、約1000bpのDNA断片を2重消化させ、次いで酵素消化されたDNA断片を精製した。
一方、プラスミドベクターpTrc99A(Pharmacia製)を2種類の制限酵素(NcoI及びXbaI)により2重消化させ、酵素消化されたDNA断片を精製した。
【0035】
これらの酵素消化させたDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションし、得られたライゲーション液でE.coli DH5αを形質転換した。
得られた形質転換体を50μg/mlのアンピシリンを含有するLB寒天培地で培養し、生育してきたコロニーの中から10コロニーを無作為に選抜した。この選抜したコロニーをそれぞれ50μg/mlのアンピシリンを含有する滅菌LB培地(2ml)に接種し、試験管中で振盪培養した(37℃、17時間)。それぞれの培養菌体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いてプラスミドを取り出した。取り出したプラスミドのそれぞれの一部をEcoRIとPstIとの2種類の制限酵素により2重消化した後、電気泳動して、取り出したプラスミドには4つのプラスミドに前記約1000bpのDNA断片が挿入されていることを確認した。(以下、このプラスミドをプラスミドpTrcRYFと記す。)
【0036】
実施例2 (本補酵素再生酵素遺伝子の調製)
(2−1)酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド等を還元型に変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子を調製するための準備
フラスコにLB培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、1%塩化ナトリウム)100mlを入れ、滅菌した。このようにして調製された培地に、Bacillus megaterium IFO12108株が前記組成の液体培地で予め培養された培養液0.3mlを接種し、これを30℃で10時間振盪培養した。
培養後、得られた培養液を遠心分離(15000×g、15分、4℃)することにより、菌体を回収した。回収された菌体を、50mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH7.0)30mlに懸濁し、この懸濁液を遠心分離(15000×g、15分、4℃)することにより、洗浄菌体を得た。
このようにして得られた洗浄菌体からQiagen Genomic Tip (Qiagen社製)を用い、それに付属するマニュアルに記載される方法に従って染色体DNAを精製した。
【0037】
(2−2)酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド等を還元型に変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子の調製(プラスミドpTrcGDHの構築)
The Journal of Biological Chemistry Vol.264, No.11, 6381-6385(1989)に記載された公知のBacillus megaterium IWG3由来のグルコース脱水素酵素のアミノ酸配列に基づいて配列番号5で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号6で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとを合成する。
配列番号5で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号6で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いて、前記(2−1)で精製された染色体DNAを鋳型にして以下の反応液組成、反応条件でPCRを行った。(ロシュ・ダイアグノスティック社製のExpand High Fidelity PCR Systemを使用)
【0038】
[反応液組成]
染色体DNA原液 1μl
dNTP(各2.5mM-mix) 0.4μl
プライマー(20pmol/μl) 各0.75μl
10xbuffer(with MgCl) 5μl
enz.expandHiFi (3.5x103U/ml) 0.375μl
超純水 41.725μl
【0039】
[PCR反応条件]
上記組成に反応液が入った容器をPERKIN ELMER−GeneAmp PCR System2400にセットし、97℃(2分間)に加熱した後、97℃(0.25分間)-55℃(0.5分間) -72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで97℃(0.25分間)-55℃(0.5分間)-72℃(2.5分間)のサイクルを20回、さらに72℃で7分間保持した。
【0040】
その後、PCR反応液の一部をとり、アガロースゲル電気泳動を行った結果、約950bpのDNA断片のバンドが検出された。
得られたPCR反応液とInvitrogen社製TOPOTMTA cloningキットVer.Eとを用いて、PCRによって得られた約950bpのDNA断片をpCR2.1−TOPOベクターの既存「PCR Product挿入サイト」にライゲーションし、そのライゲーション液でE.coli DH5αを形質転換した。
50μg/mlのアンピシリンを含有するLB寒天培地にX−gal4%水溶液30μl及び0.1M IPTG30μlを塗布し、そこに得られた形質転換体を接種し培養した。形成したコロニーのうち白いコロニーを1個とり、このコロニーを50μg/mlのアンピシリンを含有する滅菌LB培地(2ml)に接種し、試験管中で振盪培養した(30℃、24時間)。次いで培養菌体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いてプラスミドを取り出した。取り出したプラスミドの一部を制限酵素(EcoRI)で消化し、電気泳動することにより、該プラスミドには約950bpのDNA断片が挿入されていることを確認した。(以下、このプラスミドをプラスミドpSDGDH12と記す。)
次に、取り出されたプラスミドpSDGDH12を鋳型として、Dye Terminator Cycle sequencing FS ready Reaction Kit(パーキンエルマー製)を用いたシークエンス反応を行った後、得られるDNAの塩基配列をDNAシーケンサー373A(パーキンエルマー製)で解析した。その結果を配列番号7に示す。
【0041】
次に、配列番号7で示される塩基配列を基に配列番号9および配列番号10で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーを合成した。
【0042】
配列番号9および配列番号10で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、前記(2−1)で精製された染色体DNAを鋳型にして下記反応液組成、反応条件でPCRを行った。(ロシュ・ダイアグノスティック社製のExpand High Fidelity PCR Systemを使用)
【0043】
[反応液組成]
染色体DNA原液 1μl
dNTP(各2.5mM-mix) 0.4μl
プライマー(20pmol/μl) 各0.75μl
10xbuffer(with MgCl) 5μl
enz.expandHiFi (3.5x103U/ml) 0.375μl
超純水 41.725μl
【0044】
[PCR反応条件]
上記組成に反応液が入った容器をPERKIN ELMER−GeneAmp PCR System2400にセットし、97℃(2分間)に加熱した後、97℃(0.25分間)-55℃(0.5分間) -72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで97℃(0.25分間)-55℃(0.5分間)-72℃(2.5分間)のサイクルを20回、さらに72℃で7分間保持した。
【0045】
その後、PCR反応液を一部とりアガロースゲル電気泳動を行ったところ、約800bpのDNA断片のバンドが検出された。
残りのPCR反応液に2種類の制限酵素(NcoI及びBamHI)を加え、約800bpのDNA断片を2重消化させ、次いで酵素消化されたDNA断片を精製した。
一方、プラスミドベクターpTrc99A(Pharmacia製)を2種類の制限酵素(NcoI及びBamHI)により2重消化させ、酵素消化されたDNA断片を精製した。
【0046】
これらの酵素消化させたDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションし、得られたライゲーション液でE.coli DH5αを形質転換した。
得られた形質転換体を50μg/mlのアンピシリンを含有するLB寒天培地で培養し、生育してきたコロニーの中から10コロニーを無作為に選抜した。この選抜したコロニーをそれぞれ50μg/mlのアンピシリンを含有する滅菌LB培地(2ml)に接種し、試験管中で振盪培養した(37℃、17時間)。それぞれの培養菌体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いてプラスミドを取り出した。取り出したプラスミドのそれぞれの一部をNcoIとBamHIとの2種類の制限酵素により2重消化した後、電気泳動して、取り出したプラスミドには4つのプラスミドに前記約800bpのDNA断片が挿入されていることを確認した。(以下、このプラスミドをプラスミドpTrcGDHと記す。)
【0047】
実施例3 (本還元酵素遺伝子及び本補酵素再生酵素遺伝子を含有するプラスミドの調製:プラスミドpTrcGSRYFの構築)
配列番号11で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーと配列番号4で示されるオリゴヌクレオチドプライマーとをプライマーに、実施例1(1−2)で調製したプラスミドpTrcRYFを鋳型にして下記反応液組成、反応条件でPCRを行った。(ロシュ・ダイアグノスティック社製のExpand High Fidelity PLUS PCR Systemを使用)
【0048】
[反応液組成]
cDNAライブラリー原液 1μl
dNTP(各2.5mM-mix) 4μl
プライマー(50pmol/μl) 各0.4μl
5xbuffer(with MgCl) 10μl
Expand High Fidelity PLUS Taq polymerase 0.5μl (2.5U)
超純水 33.7μl
【0049】
[反応条件]
上記組成の反応液が入った容器をPERKIN ELMER−GeneAmp PCR System9700にセットし、94℃(2分間)に加熱した後、94℃(0.25分間)‐55℃(0.5分間)‐72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで94℃(0.25分間)‐55℃(0.5分間)‐72℃(1.0分間+5秒/サイクル)のサイクルを20回行い、さらに72℃で7分間保持した。
【0050】
その後、PCR反応液を一部とりアガロースゲル電気泳動を行ったところ、約1000bpのDNA断片のバンドが検出された。
残りのPCR反応液に2種類の制限酵素(BamHIとXbaI)を加え、約1000bpのDNA断片を2重消化させ、次いで酵素消化されたDNA断片を精製した。
【0051】
一方、実施例2(2−2)で調製したプラスミドpTrcGDHを2種類の制限酵素(BamHIとXbaI)で二重消化させ、酵素消化されたDNA断片を精製した。
それぞれの酵素消化されたDNA断片をT4 DNAリガーゼでライゲーションし、そのライゲーション液でE.coli DH5αを形質転換した。得られた形質転換体を50μg/mlのアンピシリンを含有するLB寒天培地で培養し、生育してきたコロニーから6コロニーを無作為に選抜した。この選抜したコロニーをそれぞれ50μg/mlのアンピシリンを含有する滅菌LB培地(2ml)に接種し、試験管中で振盪培養した(30℃、17時間)。それぞれの培養菌体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いてプラスミドを取り出した。取り出したプラスミドのそれぞれの一部をBamHIとXbaIの2種類の制限酵素で二重消化した後、電気泳動することによって、取り出したプラスミドは全て目的とする約1000bpのDNA断片が挿入されていることを確認した(以下、このプラスミドを以下プラスミドpTrcGSRYFと記す)。
【0052】
実施例4 (本還元酵素遺伝子及び本補酵素再生酵素遺伝子を含有する形質転換体の調製)
実施例3で調製されたpTrcGSRYFプラスミドを用いてE.coli HB101を形質転換した。得られた形質転換体を0.1mMのIPTGと50μg/mlのアンピシリンとを含有する滅菌LB培地(100ml)に接種し、振盪培養した(30℃、17時間)。得られた培養液を遠心分離し、湿菌体0.67gを得た。
【0053】
実施例5 (光学活性2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)−ペンタン酸エチルの製造方法(その1))
5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エチル3.0g、上記湿菌体0.67g、NAD+0.5mg、グルコース4.5g、100mMリン酸緩衝液(pH7.0)30mlを混合し、30℃で9時間攪拌した。なお、攪拌中は反応液のpHが7.0となるように2M炭酸ナトリウム水溶液を徐々に加えた。その後、反応液から0.5ml分取し、酢酸エチルを0.5ml添加した後、遠心分離し、有機層を得た。当該有機層から酢酸エチルを留去した後、下記条件で液体クロマトグラフィーによる含量分析及び光学純度分析に供試した。反応に用いた5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エチルの量に対して2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)−ペンタン酸エチルは84.5%生成していた。また下記条件で当該有機層中の2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)−ペンタン酸エチルの光学純度を測定した結果、(R)体が96.1 %e.e.であった。
(含量分析条件)
カラム:SUMIPAX ODS A−212(5μm、6mmΦ×15cm)
移動相:A液 0.1%トリフルオロ酢酸水溶液、B液 0.1%トリフルオロ酢酸アセトニトリル溶液
時間(分) A液(%):B液(%)
0 80:20
20 10:90
30 1:99
30.1 80:20
流量:1.0ml/分
カラム温度:40℃
検出:290nm
【0054】
(光学異性体分析条件)
カラム:CHIRALPAK AD(ダイセル化学工業社製)
移動相:ヘキサン/2−プロパノール/トリフルオロ酢酸=90/10/0.1
流量:0.5ml/分
カラム温度:40℃
検出:254nm
【0055】
実施例6 (光学活性2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)−ペンタン酸エチルの製造方法(その2))
プラスミドpTrcGSRYFを用いてE.coli HB101を形質転換した。得られた形質転換体を0.1mMのIPTGと50μg/mlのアンピシリンとを含有する滅菌LB培地(100ml)に接種し、振盪培養した(30℃、17時間)。得られた培養液を遠心分離し、湿菌体0.78gを得た。
5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エチル3.0g、上記湿菌体0.78g、NAD+0.5mg、グルコース4.5g、100mMリン酸緩衝液(pH7.0)30ml、酢酸ブチル3.4mlを混合し、30℃で9時間攪拌した。なお、攪拌中は反応液のpHが7.0となるように2M炭酸ナトリウム水溶液を徐々に加えた。その後、反応液から0.5ml分取し、酢酸エチルを1ml添加した後、遠心分離し、有機層を得た。当該有機層から酢酸エチルおよび酢酸ブチルを留去した後、下記条件で液体クロマトグラフィーによる含量分析及び光学純度分析に供試した。反応に用いた5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エチルの量に対して2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)−ペンタン酸エチルは90.3%生成していた。また下記条件で当該有機層中の2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)−ペンタン酸エチルの光学純度を測定した結果、(R)体が100 %e.e.であった。
(含量分析条件)
カラム:SUMIPAX ODS A−212(5μm、6mmΦ×15cm)
移動相:A液 0.1%トリフルオロ酢酸水溶液、B液 0.1%トリフルオロ酢酸アセトニトリル溶液
時間(分) A液(%):B液(%)
0 80:20
20 10:90
30 1:99
30.1 80:20
流量:1.0ml/分
カラム温度:40℃
検出:290nm
【0056】
(光学異性体分析条件)
カラム:CHIRALPAK AD(ダイセル化学工業社製)
移動相:ヘキサン/2−プロパノール/トリフルオロ酢酸=90/10/0.1
流量:0.5ml/分
カラム温度:40℃
検出:254nm
(R)−2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)−ペンタン酸エチルのNMR
H−NMR(CDCl):δppm:1.28(t、J=7.1Hz、3H)、1.59−1.86(m、4H)、2.51−2.67(m、2H)、2.76(d、J=5.7Hz、1H)、3.78(s、3H)、4.15−4.20(m、1H)、4.23(q、J=7.1Hz、2H)、6.82(dd、J=2.0、6.6Hz、2H)、7.09(dd、J=1.8、6.6Hz、2H).
【0057】
[配列表フリーテキスト]
配列番号3
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号4
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号5
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号6
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号9
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号10
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号11
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エステルに、
当該エステル化合物を光学活性2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)−ペンタン酸エステルへと不斉還元する酵素であって下記のアミノ酸配列群の中から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素を産生し、かつ当該酵素が依存する補酵素を再生する能力を有する酵素を産生する形質転換体又はその死菌化細胞を作用させることを特徴とする光学活性2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)−ペンタン酸エステルの製造方法。
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、
(c)配列番号2で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列、
(d)配列番号2で示される塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列、
(e)配列番号1で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、および
(f)ヤマダジーマ属に属する微生物由来のアミノ酸配列;
【請求項2】
形質転換体が、下記群より選ばれる単一もしくは複数のプラスミドを導入してなる形質転換体である請求項1記載の製造方法。
(a)から(f)のいずれかのアミノ酸配列をコードする塩基配列および(a)から(f)のいずれかのアミノ酸配列を有する酵素が依存する補酵素を再生する能力を有する酵素の塩基配列をそれぞれ独立して含有する複数のプラスミドまたは両塩基配列を独立もしくは単一の塩基配列として含む単一のプラスミド。
【請求項3】
形質転換体が大腸菌であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
補酵素が、NADH/NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)もしくはNADPH/NADP(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
グルコースの存在下、形質転換体又はその死菌化細胞に5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エステルを作用させることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
不斉還元する酵素が、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する酵素である請求項1記載の製造方法。
【請求項7】
不斉還元する酵素が、配列番号2で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列を有する酵素である請求項1記載の製造方法。

【公開番号】特開2007−68504(P2007−68504A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−261863(P2005−261863)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】