説明

光学測定装置

【課題】試料溶液が微量であっても蛍光測定が可能であって、より正確な測定を行うことができる光学測定装置を提供する。
【解決手段】この光学測定装置1は、光源部2と、励起光伝送部3と、蛍光伝送部4と、試料溶液を保持する試料保持面5aを有する試料保持部5と、試料溶液から発せられる蛍光の周波数成分を検出する光検出部6と、を備えてなり、励起光伝送部3は、励起光を励起光入射側端面30aに入射させ、その光を伝送して励起光出射側端面30bから試料溶液に照射する励起光伝送ファイバー30を有し、蛍光伝送部4は、試料溶液が発する蛍光を蛍光入射側端面40aに入射させ、その光を伝送して蛍光出射側端面40bから光検出部6に放射する蛍光伝送ファイバー40を有し、試料保持面5aは、励起光出射側端面30bと蛍光入射側端面40aが揃えて配置されて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料溶液の蛍光測定に用いられる光学測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、試料溶液の成分や濃度を調べるために、光源部から光(励起光)を試料溶液に照射し、試料溶液から発せられる蛍光を伝送し、その周波数成分を検出するすることにより測定するような光学測定装置が用いられている。測定に際しては、試料保持のための試料セル(キュベット)に所要量の試料溶液を注入することで、蛍光測定を行うことが広く行われている。
【0003】
これに対して、本願出願人は、試料セルを必要とせず、試料溶液が微量であっても蛍光測定が可能となるような光学測定装置を特許文献1において提案している。この光学測定装置は、柱状をなす基部材とガイド部材とを有する試料保持部を備えており、蛍光を伝送する光ファイバーの入光面(蛍光入射側端面)が基部材の上端面に位置しており、ガイド部材はこの入光面を跨いで取り付けられている。この光学測定装置は、ピペットによって滴下された試料溶液を、基部材の上端面とガイド部材により形成する空間に適正に保持することにより、正確な蛍光測定が迅速にできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−22065公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、これまでの光学測定装置では、光源部からの励起光は空中を通って試料溶液に照射され、試料溶液から発せられる蛍光は、励起光の照射の向きとほぼ垂直な向きに発したものが検出され測定されるのが一般的である。
【0006】
しかし、励起光は、試料溶液とその外界との界面などで反射又は散乱されるので、一部がバックグランドとして蛍光に混ざって測定される。そのため、通常、励起光を水溶液(希釈溶媒のみの溶液)に照射して測定するバックグランド測定を前もって行い、試料溶液の測定結果からそのバックグランド測定結果を差し引いて、励起光の入射による影響を取り除くバックグランド処理が行われる。よって、バックグランド処理後において、バックグランドの強度が少なければ、それだけ正確な試料溶液の測定結果を得ることができる。
【0007】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、試料溶液が微量であっても蛍光測定が可能であって、より正確な測定を行うことができる光学測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の光学測定装置は、試料溶液に照射する励起光を発する光源部と、励起光を伝送する励起光伝送部と、蛍光を伝送する蛍光伝送部と、前記試料溶液を保持する試料保持面を有する試料保持部と、前記試料溶液から発せられる蛍光の周波数成分を検出する光検出部と、を備えてなり、前記励起光伝送部は、前記励起光を励起光入射側端面に入射させ、その光を伝送して励起光出射側端面から前記試料溶液に照射する励起光伝送ファイバーを有し、前記蛍光伝送部は、前記試料溶液が発する蛍光を蛍光入射側端面に入射させ、その光を伝送して蛍光出射側端面から前記光検出部に放射する蛍光伝送ファイバーを有し、前記試料保持面は、前記励起光出射側端面と前記蛍光入射側端面が揃えて配置されて形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の光学測定装置は、請求項1に記載の光学測定装置において、前記試料保持部は、前記試料保持面の中央近傍を跨ぐように曲げて形成され、前記試料保持面との間に前記試料溶液を保持する空間を形成するガイド部材を更に有することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の光学測定装置は、請求項1又は2に記載の光学測定装置において、前記励起光伝送ファイバーは複数設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の光学測定装置は、請求項3に記載の光学測定装置において、前記蛍光伝送ファイバーは複数設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の光学測定装置は、請求項4に記載の光学測定装置において、前記複数の蛍光伝送ファイバーは、それらの蛍光出射側端面が直線状の列をなすように設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の光学測定装置は、請求項5に記載の光学測定装置において、前記複数の蛍光伝送ファイバーの端に取り付けられるコネクタは、直方体形状をなし、光前記検出部の所定の箇所に嵌め合わされていることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の光学測定装置は、請求項3〜6のいずれか1項に記載の光学測定装置において、前記光源部は、発する光の波長が互いに異なり、光量が制御可能な複数種類の発光ダイオードを有して構成され、前記複数の励起光伝送ファイバーは、各々の発光ダイオードに対応するようにして複数の励起光伝送ファイバー束に分けられ、前記複数種類の発光ダイオードのそれぞれから発する光は、前記試料溶液の中で互いに混合されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光学測定装置によれば、励起光出射側端面から試料溶液に照射される励起光の向きが、蛍光入射側端面に入射される光線の向きとほぼ逆であるので、蛍光入射側端面に直接入射する励起光はなく、試料溶液とその外界との界面などによって励起光が反射又は散乱しても、蛍光入射側端面に入射する励起光は僅かになる。その結果、より正確な蛍光測定を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る光学測定装置1を示すもので、筐体を切り欠いて内部を見えるようにした概略側面図である。
【図2】同上の光学測定装置1の内部を説明するための拡大概略側面図である。
【図3】同上の光学測定装置1の試料保持部5の拡大概略平面図である。
【図4】同上の光学測定装置1のガイド部材52を変形した試料保持部5を示すものであって、(a)が拡大概略側面図、(b)が拡大概略平面図である。
【図5】同上の光学測定装置1における試料溶液Sの状態を示すものであって、(a)が図2と直交する方向の拡大概略側面図、(b)が平面図である。
【図6】同上の光学測定装置1の使用方法を示す概略側面図である。
【図7】同上の光学測定装置1’の蛍光出射側端面40b近傍を示すものであって、(a)が拡大概略側面図、(b)が(a)と直交する方向の拡大概略側面図、(c)が拡大概略底面図である。
【図8】同上の光学測定装置1’の励起光出射側端面30bと蛍光入射側端面40aの配置を模式的に示す平面図である。
【図9】同上の光学測定装置1(又は1’)の光源部2とその近傍の励起光伝送部3を変形した形態を示す拡大概略側面図である。
【図10】図9で示す形態における試料溶液Sの特性と発光ダイオード20A、20B、20C・・・の光量との関係の例を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための好ましい形態を説明する。本発明の実施形態に係る光学測定装置1は、蛍光測定によって試料溶液Sを分析するものであって、図1に示すように、基本的構成として、光源部2と励起光伝送部3と蛍光伝送部4と試料保持部5と光検出部6とを備えている。なお、図中の符号1aは筐体、1bは仕切り板、1cは試料保持部5を支持する基台、7は光検出部6からの出力信号を処理する信号処理部、8は光源部2や光検出部6などに電力を供給する電源部を示している。
【0018】
光源部2は、試料溶液Sに照射する光(励起光)を発するものである。具体的には、発光ダイオードやレーザダイオードなどが用いられ、励起光は、例えば、紫外線又は青色などの可視光線のナローバンドの光である。
【0019】
励起光伝送部3は、励起光を伝送するものであって、図2に示すように、複数の励起光伝送ファイバー30、30、・・・から構成されている。励起光伝送ファイバー30は、光源部2が発する励起光を一方の端面である励起光入射側端面30aに入射させ、その光を伝送して他方の端面である励起光出射側端面30bから試料溶液Sに照射する。
【0020】
蛍光伝送部4は、蛍光を伝送するものであって、1本の蛍光伝送ファイバー40から構成されている。蛍光伝送ファイバー40は、試料溶液Sが発する蛍光を一方の端面である蛍光入射側端面40aに入射させ、その光を伝送して他方の端面である蛍光出射側端面40bから光検出部6に放射するものである。
【0021】
励起光伝送ファイバー30と蛍光伝送ファイバー40はそれぞれ、コアとクラッドの2層を有する光ファイバーである。励起光伝送ファイバー30と蛍光伝送ファイバー40はそれぞれ、端面が通常は円形であり、所定の角度(例えば、20度程度以内)の光が入射又は出射される。また、励起光伝送ファイバー30は細く、蛍光伝送ファイバー40は励起光伝送ファイバー30に比べて太い。励起光伝送ファイバー30と蛍光伝送ファイバー40のそれぞれの具体的な直径は、後述の試料保持面5aの大きさなどに応じて適宜決められるが、例えば、励起光伝送ファイバー30が100μm〜200μm程度、蛍光伝送ファイバー40が1mm程度とすることが可能である。また、励起光伝送ファイバー30、30、・・・の本数も、試料保持面5aの大きさなどに応じて適宜決められる。なお、本図面では、コアとクラッドの境目の線は省略している。
【0022】
試料保持部5は、基部材51とガイド部材52から構成されている。基部材51は、励起光伝送ファイバー30、30、・・・と蛍光伝送ファイバー40が、励起光出射側端面30bと蛍光入射側端面40aの近傍で、同方向に配列するように束ねられて樹脂等の固着材Fにより互いに隙間なく接着され、両端面30b、40aが揃えて配置されることにより、柱状(例えば、直径が2mm程度の円柱状)に形成されている。すなわち、励起光伝送部3と蛍光伝送部4は、一部が試料保持部5を兼用している。そして、励起光出射側端面30bと蛍光入射側端面40aは、図3に示すように、試料溶液Sを保持する試料保持面5aを形成する。また、蛍光入射側端面40aが試料保持面5aの中央に、励起光出射側端面30bがその周りに配置される。なお、両端面30b、40aを揃えるには、束ねられて接着された励起光伝送ファイバー30、30、・・・と蛍光伝送ファイバー40の端を研削などすればよい。
【0023】
蛍光伝送ファイバー40は、図2に示すように、その端にコネクタ4Aが取り付けられ、コネクタ4Aは光検出部6の所定の箇所(図2では省略)に嵌め合わされる。
【0024】
また、試料保持部5のガイド部材52は、試料保持面5aの上方にその中央近傍を跨ぐように曲げて形成されている。つまり、ガイド部材52は、試料保持面5aに対向する側が狭い幅の曲面になっている。その曲面は、通常、略円弧状のものである。そうすることにより、試料保持面5aとガイド部材52との間には、試料溶液Sを保持する空間が形成される。
【0025】
ガイド部材52は、より具体的には、図2に示すように、線材(断面の直径が例えば200μm程度)とし、直径が2mm程度の略半円状に形成することができる。線材のガイド部材52は、基部材51の外側面に螺旋状に巻き付けることにより、それらに固定することができる。また、ガイド部材52は、図4に示すように、基部材51の外側面に嵌め合わせるような筒状部分52aを設け、試料保持面5aの上方に跨ぐように形成された部分52bと一体に成形したものとすることもできる。
【0026】
このガイド部材52を用いると、試料溶液Sは、後述のようにピペットPによって試料保持面5aに滴下されたときにガイド部材52を伝って落下し、図5に示すように、ガイド部材52と試料保持面5aとにより形成された空間に表面張力によって保持される。こうして容易に迅速な測定が可能になり、また、保持される試料溶液Sは安定した形状に保たれるので、正確な測定をすることができる。なお、試料溶液Sの形状は、粘度などによって変わる。
【0027】
また、迅速さや正確さは損なわれ易いが、光学測定装置1が特に簡易さや廉価を特長とする場合などでは、ガイド部材52を省略することも場合によっては可能である。
【0028】
光検出部6は、蛍光伝送部4の蛍光伝送ファイバー40の蛍光出射側端面40bから放射される蛍光の周波数成分を検出するものである。光検出部6は、蛍光伝送ファイバー40の端に取り付けられたコネクタ4Aが所定の箇所に嵌め合わされることにより、スリット61(例えば、幅が20μm〜50μm程度で長さが1mm程度)に向かって蛍光が放射される(図2参照)。蛍光は、スリット61を通過することによって各周波数成分に分けられる(分光する)。そして、その蛍光の周波数成分は、分光検出器62において電気信号に変換されることでその強度が検出される。
【0029】
以上の構成の光学測定装置1の使用方法の例について簡単に説明する。試料溶液Sは、微量な一定量がピペットPによって、図6に示すように、試料保持部5の試料保持面5aに滴下される。そして、試料保持面5aに保持された試料溶液Sに、励起光伝送ファイバー30、30、・・・、・・・、・・・を通して光源部2からの励起光が照射される。そうすると、試料溶液Sがその成分に応じた蛍光を発し、その蛍光は蛍光伝送ファイバー40を通って光検出部6まで伝送される。光検出部6は、伝送された蛍光の各周波数成分の大きさを検出する。こうして、光学測定装置1は、試料溶液Sの成分を特定したり濃度を検出したりすることができる。光検出部6からの出力信号は、信号処理部7によって処理され、表示部(図示せず)に2次元のグラフ(例えば、横軸が周波数で縦軸が強度)などが表示されたり、バックグランド処理が行われたりする。
【0030】
このような光学測定装置1は、励起光出射側端面30bから試料溶液Sに照射される励起光の向きが、蛍光入射側端面40aに入射される光線の向きとほぼ逆であるので、蛍光入射側端面40aに直接入射する励起光はなく、試料溶液とその外界との界面やガイド部材52などによって励起光が反射又は散乱しても、蛍光入射側端面40aにバックグランドとして入射する励起光は僅かである。その結果、より正確な蛍光測定を行うことができ、また、光学測定装置1が正確さよりも簡易さや迅速さを特長とするような場合などでは、バックグランド処理を省略することも可能になる。
【0031】
次に、蛍光伝送部4を複数の蛍光伝送ファイバー40、40、・・・で構成するようにした光学測定装置1’について説明する。光学測定装置1’の蛍光伝送ファイバー40は、細いものが用いられる。蛍光伝送ファイバー40は、具体的には、励起光伝送ファイバー30と同じ光ファイバーを用いればよい。そうすると、励起光伝送ファイバー30と蛍光伝送ファイバー40を区別することなく試料保持部5の基部材51を形成することができるので、製造が容易になり、また、励起光伝送ファイバー30と蛍光伝送ファイバー40の振り分けを容易に変更できる。
【0032】
蛍光伝送ファイバー40、40、・・・、・・・の蛍光出射側端面40b、40b、・・・は、図7に示すように、直線状の列をなすように設けられているのが好ましい。これは、蛍光出射側端面40bの列が、図7(c)に示すように、光検出部6のスリット61の長さ方向と平行になるようにするためである。そうすると、スリット61を通過せず各周波数成分を検出するため使われない光の量が少なくなるので、蛍光出射側端面40b、40b、・・・の総面積、すなわち、蛍光入射側端面40a、40a、・・・の総面積が小さくて済むようになる。それにより、小さな面積の試料保持面5aにおいて励起光出射側端面30b、30b、・・・又は蛍光入射側端面40a、40a、・・・を増加させたり配置の自由度を増したりすることが可能になる。蛍光出射側端面40bの列がスリット61と平行になるようにするには、それらの相対的な位置が固定されるように、コネクタ4Aが直方体形状をなすようにして、同様に直方体形状をなすようにした光検出部6の所定の箇所に嵌め合わせるようにすればよい。
【0033】
試料保持面5aを構成する励起光出射側端面30b、30b、・・・と蛍光入射側端面40a、40a、・・・の配置の仕方について、図8に基づいて説明する。図8では、蛍光入射側端面40aを黒丸、励起光出射側端面30bを白丸で示している。蛍光入射側端面40a、40a、・・・は、各々を互いに隣接させ、図8(a)に示すように、試料保持面5aにおける中央付近に集中させて配置させたり、図8(b)に示すように、試料保持面5aにおける中央付近において直線状の列をなすように配置させたりすることができる。従って、複数の励起光出射側端面30b、30b、・・・は、蛍光入射側端面40a、40a、・・・を取り囲むように配置する。これは、試料保持面5aの中央付近の直上は試料溶液Sに高さが有り試料溶液Sの量が多いため、蛍光入射側端面40a、40a、・・・に入射する蛍光の量も多くなるからである。蛍光入射側端面40a、40a、・・・を直線状の列をなすように配置させる場合には、平面視において、試料保持面5aの上方のガイド部材52に対して蛍光入射側端面40aの列が直交したり平行に(ガイド部材52に隠れるように)したりすることができる。
【0034】
また、これらのかわりに、試料保持面5aを構成する蛍光入射側端面40a、40a、・・・は、各々を互いに隣接させずに、図8(c)に示すように、試料保持面5aにおいて分散するように配置させることも可能である。これにより、蛍光を試料溶液S全体から蛍光入射側端面40a、40a、・・・に入射させることができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態に係る光学測定装置について説明したが、本発明は、実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。
【0036】
また、上述した光学測定装置1(又は1’)の光源部2の詳細な形態として次に述べる形態も可能である。すなわち、光源部2に発光ダイオードを用いた場合、光源部2を、図9に示すように、発する光の波長が互いに異なる複数種類の発光ダイオード20A、20B、20C、・・・を有して構成されるようにすることができる。そして、発光ダイオード20A、20B、20C、・・・の各々に対応するようにして、励起光伝送部3を構成する複数の励起光伝送ファイバー30、30、・・・を複数の励起光伝送ファイバー束30A、30B、30C、・・・に分ける。そして、例えば、励起光伝送ファイバー束30Aを構成する励起光伝送ファイバー30、30、・・・の全ての励起光入射側端面30aを、発光ダイオード20Aに対面させて、それからの励起光を入射させる。他の励起光伝送ファイバー束30B、30C、・・・も同様である。励起光伝送ファイバー束30A、30B、30C、・・・のそれぞれは、2本以上の励起光伝送ファイバー30、30、・・・から構成されるのが好ましいが、場合によっては、1本の励起光伝送ファイバー30から構成されることも可能である。
【0037】
複数種類の発光ダイオード20A、20B、20C、・・・のそれぞれは、光量が制御可能である。光量の安定した制御のためには、発光ダイオード20A、20B、20C、・・・に流す電流を制御して行うのが好ましい。発光ダイオード20A、20B、20C、・・・のそれぞれから発する光は、試料保持部5の試料保持面5aの励起光出射側端面30bから照射され、試料溶液Sの中で互いに混合される。
【0038】
このようにすると、例えば、図10に示す例のように、試料溶液Sの吸光曲線CSに合うように、発光ダイオード20A、20B、20C・・・の光量CA、CB、CC、・・・を制御して光を試料溶液Sに照射すると、光量の合計が作る曲線は吸光曲線CSに近いものとなる。そうすると、より適正な蛍光を発生させて、より正確な蛍光測定に寄与することができる。好ましくは、種々の吸光曲線CSに対応し易くするために、発光ダイオード20A、20B、20C・・・の種類を多く(例えば、10以上に)して、なるべく光の波長を近接させたものを多く用意する。試料溶液Sに測定すべき物質が複数種類以上含まれる場合など、吸光曲線CSが複雑になっても対応可能である。また、必要でない光の波長のものは、光量が零に制御される。
【0039】
なお、図10は、吸光曲線CSの吸光度の最大値を1として、また、光量CA、CB、CCのうちの最大値を1として、それぞれを正規化している。また、図10においては、試料溶液Sの吸光曲線CSの吸光度は、波長が約630〜640nmに最大値が有り、発光ダイオード20Aは光の中心波長が約660nm、発光ダイオード20Bは光の中心波長が約635nm、発光ダイオード20Cは光の中心波長が約585nmのものとしている。図10では、これら3種類の光の合計により試料溶液Sの吸光曲線CSに近い曲線を作っている。
【符号の説明】
【0040】
1 光学測定装置
2 光源部
20A、20B、20C 発光ダイオード
3 励起光伝送部
30 励起光伝送ファイバー
30a 励起光入射側端面
30b 励起光出射側端面
30A、30B、30C 励起光伝送ファイバー束
4 蛍光伝送部
40 蛍光伝送ファイバー
40a 蛍光入射側端面
40b 蛍光出射側端面
4A 蛍光伝送ファイバーのコネクタ
5 試料保持部
5a 試料保持面
51 基部材
52 ガイド部材
6 光検出部
61 スリット
62 分光検出器
S 試料溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料溶液に照射する励起光を発する光源部と、
励起光を伝送する励起光伝送部と、
蛍光を伝送する蛍光伝送部と、
前記試料溶液を保持する試料保持面を有する試料保持部と、
前記試料溶液から発せられる蛍光の周波数成分を検出する光検出部と、
を備えてなり、
前記励起光伝送部は、前記励起光を励起光入射側端面に入射させ、その光を伝送して励起光出射側端面から前記試料溶液に照射する励起光伝送ファイバーを有し、
前記蛍光伝送部は、前記試料溶液が発する蛍光を蛍光入射側端面に入射させ、その光を伝送して蛍光出射側端面から前記光検出部に放射する蛍光伝送ファイバーを有し、
前記試料保持面は、前記励起光出射側端面と前記蛍光入射側端面が揃えて配置されて形成されていることを特徴とする光学測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学測定装置において、
前記試料保持部は、前記試料保持面の中央近傍を跨ぐように曲げて形成され、前記試料保持面との間に前記試料溶液を保持する空間を形成するガイド部材を更に有することを特徴とする光学測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光学測定装置において、
前記励起光伝送ファイバーは複数設けられていることを特徴とする光学測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光学測定装置において、
前記蛍光伝送ファイバーは複数設けられていることを特徴とする光学測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光学測定装置において、
前記複数の蛍光伝送ファイバーは、それらの蛍光出射側端面が直線状の列をなすように設けられていることを特徴とする光学測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光学測定装置において、
前記複数の蛍光伝送ファイバーの端に取り付けられるコネクタは、直方体形状をなし、光前記検出部の所定の箇所に嵌め合わされていることを特徴とする光学測定装置。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1項に記載の光学測定装置において、
前記光源部は、発する光の波長が互いに異なり、光量が制御可能な複数種類の発光ダイオードを有して構成され、
前記複数の励起光伝送ファイバーは、各々の発光ダイオードに対応するようにして複数の励起光伝送ファイバー束に分けられ、
前記複数種類の発光ダイオードのそれぞれから発する光は、前記試料溶液の中で互いに混合されることを特徴とする光学測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−33035(P2013−33035A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−145372(P2012−145372)
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【出願人】(300074101)株式会社イマック (27)
【Fターム(参考)】